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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】タイヤ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/04 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B60S3/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023105008
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】角田 和輝
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-71946(JP,A)
【文献】特開2012-144077(JP,A)
【文献】特許第6876848(JP,B1)
【文献】米国特許第7937793(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0344759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が敷き詰められ、洗浄液が貯留される洗浄槽を有し、
前記洗浄槽の内部に前記粉粒体および前記洗浄液が入っている状態で、前記洗浄槽の内部に車両を通過させてその車両のタイヤから汚染物質を除去する構成としたことを特徴とするタイヤ洗浄装置。
【請求項2】
前記タイヤ洗浄装置は前記洗浄槽を2槽有し、
前記洗浄槽は、車両の左タイヤが通る部分および右タイヤが通る部分にそれぞれ配置され、車両の中央部分が通る部分に配置されない構成とした請求項1記載のタイヤ洗浄装置。
【請求項3】
前記タイヤ洗浄装置は前記2槽の洗浄槽の間に配置される汚染液貯留槽を有し、
前記洗浄槽には新たな洗浄液の供給口が設けられており、
前記汚染液貯留槽には汚染液の排出口が設けられており、
前記洗浄槽の内部の洗浄液が当該洗浄槽の上方から前記汚染液貯留槽の内部へ流れ込む構成とした請求項2記載のタイヤ洗浄装置。
【請求項4】
新たな洗浄液の前記供給口は前記洗浄槽の下部に向けられ、
供給する新たな洗浄液によって前記洗浄槽の底部に敷き詰められた前記粉粒体を攪拌し、前記洗浄槽の底部に堆積した汚染物質を浮上させる構成とした請求項3記載のタイヤ洗浄装置。
【請求項5】
新たな洗浄液の前記供給口は、前記洗浄槽の左右両側または左右一方側の側面に、前記洗浄槽の長手方向に沿って設けられている請求項3または4記載のタイヤ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工事現場などに出入りするダンプトラックなどの車両のタイヤを洗浄するタイヤ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場、産業廃棄物処理施設、焼却炉などに出入りするダンプトラックなどの車両のタイヤには様々な汚染物質が付着している。
【0003】
例えば、焼却炉から施設外に出る車両のタイヤには、焼却灰などが付着している場合があり、焼却灰にはダイオキシンなどの汚染物質が含まれていることがある。そのような汚染物質がタイヤに付着した状態で車両が施設外に出ると、汚染物質が施設の周辺の外部環境中に拡散し、外部環境を悪化させてしまうおそれがある。
【0004】
また、例えば、焼却灰のリサイクル工場などに焼却灰を運び込む際に、前記汚染物質がタイヤに付着した状態の車両が当該リサイクル工場などに入ると、リサイクル工場内の道路などに汚染物質をまき散らすこととなり、当該リサイクル工場内の環境を汚染してしまうおそれがある。
【0005】
そのため、建設工事現場、産業廃棄物処理施設、焼却炉などにダンプトラックなどの車両が出入りする際は、その入口または出口において、車両のタイヤを洗浄し、タイヤから汚染物質を除去する必要がある。
【0006】
このような車両のタイヤを洗浄する装置がいくつか市販されている。例えば、運転手がダンプトラックを走行させて洗浄装置のローラー部分の上にタイヤを乗せた後(いわゆる位置決めした後)、運転手が洗浄装置の起動ボタンを押して、ローラーの上でタイヤを回転させ、タイヤの回転によって生じる遠心力によってタイヤから汚染物質を落下させる装置がある。また、前記ローラーを回転させるとともに、洗浄装置に備えられたシャワーからタイヤに向かって水を噴射し、噴射された水によってタイヤの汚染物質を洗い流す装置もある。さらに前記シャワーから水ではなくエアーを噴射する装置もある。
【0007】
なお、タイヤ洗浄装置として、下記のような発明が開示されている。
下記特許文献1に記載されたトラックなどの泥落とし装置は、洗浄処理部と泥水処理部と給水部から構成され、洗浄処理部では通過するトラックなどに対してシャワーの作用により泥を落とすよう構成され、泥水処理部では洗浄処理部で発生した泥水から泥を回収するよう構成され、給水部は泥水処理部などから洗浄用水を洗浄処理部に循環するよう構成されている。この装置によれば、泥の落ちが悪い、周囲に粉塵が舞うなどの従来技術の課題を解決することができるとされている。
【0008】
下記特許文献2に開示された自走車両の高速タイヤ洗滌装置は、内部で自走車両が進退移動可能な水槽部を備え、この水槽部の中間域は前記車両のタイヤの下半分ほどが浸漬可能な水深を形成する槽底を成し、かつ、この中間域の槽底に至る当該水槽部の前後に位置する出入口側は水深が逓次的に変化する進退スロープに形成されている一方、この水槽部の両側部には、円周上に複数の散水ノズルを有する散水ホィールが配設されており、この散水ホィールにより、湛水状態の水槽部に進入してくる前記車両のタイヤの外周面に対し、洗浄水を高圧噴射してタイヤの付着泥土を全周的に洗滌除去可能にするというものである。この装置によれば、自走車両におけるタイヤの接地面およびタイヤ側面を全周的に道路を汚さない状態に効率的に洗滌できるとされている。
【0009】
下記特許文献3に開示された洗浄装置は、車両のタイヤ、タイヤハウスおよび車体底部を洗浄する洗浄装置であり、車両のタイヤが走行可能でかつ洗浄水を貯留可能な貯留部と、この貯留部を走行する車両のタイヤ、タイヤハウスおよび車体底部に向けて洗浄水を噴射する噴射手段と、前記貯留部に貯留された洗浄水を排出する排水部と、前記貯留部を加熱する加熱手段とを具備している。この装置によれば、貯留部を加熱する加熱手段を備えるため、温度が低い環境であっても貯留部に貯留された液体の氷結を防止でき、適切にタイヤを洗浄できるとされている。
【0010】
下記特許文献4に開示された車のタイヤに付着する土砂の除去装置は、車のタイヤを強制的に振動させて、タイヤに付着する土砂を除去するように構成されてなる車のタイヤに付着する土砂の除去装置であって、車の走行路に水を蓄えられる洗浄池が配設されており、この洗浄池の底面には、車の走行方向に交差して複数状の振動溝が設けられており、振動溝が、洗浄池を走行する車のタイヤを強制的に振動させて、振動溝で振動されるタイヤに付着する土砂が洗浄池の水に除去されて洗浄されるように構成されている。この装置によれば、設備コストを低減して、車のタイヤに付着する土砂を綺麗に除去し、次々と工事現場から出ていく車のタイヤを能率よく綺麗にすることができるとされている。
【0011】
下記特許文献5に開示された構造体は、前後方向に連結するための受け金具と係合突起とを具備した所要の長さと幅とを有する枠主体内に、該枠主体上を走行する車輛のタイヤに捻りと変成を与え、タイヤの溝内等に付着している泥土を除去するための捻り付与部材を枠主体の前又は後の側枠部材を基準として、当該側枠部材に対して角度が45°~65°範囲内となるよう所要の間隔を存して取付けて構成している。この構造体によれば、タイヤに付着した泥土を動力を必要とせずに簡単かつ容易にできる泥土除去装置用の構造要素として、あるいは簡易舗道や簡易橋梁用の構造要素として使用することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2000-71946号公報
【文献】特開2006-256596号公報
【文献】特開2016-22766号公報
【文献】特開平8-34321号公報
【文献】特開平11-291875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の市販されているローラーを備えた洗浄装置には、自動でローラーを回転させるタイプと、自動でローラーを回転させないタイプがある。
【0014】
自動でローラーを回転させるタイプの洗浄装置は、ダンプトラックがローラーの上で自らタイヤを回転させなくても、モーターがローラーを回転させるため、ダンプトラックの運転手がアクセルを踏む必要がなく、容易に洗浄できるという利点がある。しかし、ローラーを回転させるために電力が必要になり、ランニングコストがかかるという不都合がある。特に、ダンプトラックは前輪が2輪、後輪が4輪であることが多く、計6輪のタイヤを回転させなければならないため、ローラーを回転させるために必要な電力が少なくない。
【0015】
他方、自動でローラーを回転させないタイプの洗浄装置は、ローラーを回転させるための電力が不要であるという利点がある。しかし、ダンプトラックの運転手がローラーの上でアクセルを踏んでタイヤを回転させなければならず、自動でローラーを回転させるタイプの洗浄装置と比べると、手間が必要であるという不都合がある。また、一般的にダンプトラックは後輪駆動であり、アクセルを踏んだとしても後輪しか回転させることができないため、前輪のタイヤの洗浄ができないという不都合もある。
【0016】
また、前述のような市販されているローラーを備えた装置は、ダンプトラックのタイヤの泥汚れを想定したものがほとんどである。トレーラーや一般車両などのダンプトラック以外の車両は、タイヤの位置がダンプトラックと異なるため、ローターの上にすべてのタイヤを載せることができず、タイヤを洗浄することが困難であるという問題がある。
【0017】
さらに、ダンプトラックのタイヤにシャワーから洗浄水を噴きつけて洗浄する装置は、その洗浄装置を設置する際に多大な労力がかかるという不都合がある。具体的には、設置地面の下に深さ1.5m程度の広大な穴を掘った後、その穴の内部に大容量の水槽を設置し、その後、その水槽の上にローラーを備えた橋を架けるという手順を踏むことが多い。このような広大な穴を掘る作業に労力と時間がかかるという問題があった。
【0018】
この水槽を用いた洗浄装置では、水槽内の水をシャワーから噴射してタイヤを洗浄し、洗浄に用いられた汚れた水がダンプトラックの下にある水槽内に落下するシステムであり、水槽内の水を循環利用している。そのため、水槽内の水を循環利用するにつれて、シャワーから噴射される洗浄水自体に汚染物質が含まれた状態になる。そのような汚れた洗浄水でタイヤを洗浄すると、洗浄水中の汚染物質がタイヤに付着し、タイヤに付着した洗浄水が乾燥することによって、洗浄水に含まれていた汚染物質がタイヤにこびり付くという不都合がある。
【0019】
さらに、洗浄水を循環利用するにつれて水槽以内にスラリーが堆積するため、所定時間が経過した時点で、水槽内のスラリーを掻き出し、掻き出したスラリーを脱水しなければならないないという手間がかかる。
【0020】
また、前述のローラーを用いた洗浄装置や洗浄水を噴射するタイプの洗浄装置では、オペレーターが洗浄装置を操作しなければならず(例えば起動、停止ボタンの操作など)、それらの操作が面倒であるという問題もある。さらに、洗浄を行うためには、ダンプトラックが洗浄装置の上で一度停車し、その後発車しなければならず、手間や時間がかかるという問題もある。
【0021】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、車両のタイヤの洗浄効果が高いタイヤ洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0023】
(第1の態様)
粉粒体が敷き詰められ、洗浄液が貯留される洗浄槽を有し、
前記洗浄槽の内部に前記粉粒体および前記洗浄液が入っている状態で、前記洗浄槽の内部に車両を通過させてその車両のタイヤから汚染物質を除去する構成としたことを特徴とするタイヤ洗浄装置。
【0024】
(作用効果)
第1の態様のタイヤ洗浄装置によれば、車両が洗浄槽の内部を通行する過程で、洗浄槽内に貯留された洗浄液によってタイヤに付着した汚染物質が洗い流されるとともに、車両のタイヤが洗浄槽内に敷き詰められた粉粒体と擦れ合うことによって汚染物質が剥離される。
【0025】
このように洗浄液と粉粒体を用いることで、車両のタイヤに付着した汚染物質の除去効果を高めることができる。
【0026】
(第2の態様)
前記タイヤ洗浄装置は前記洗浄槽を2槽有し、
前記洗浄槽は、車両の左タイヤが通る部分および右タイヤが通る部分にそれぞれ配置され、車両の中央部分が通る部分に配置されない構成とした前記第1の態様のタイヤ洗浄装置。
【0027】
(作用効果)
タイヤ洗浄装置の洗浄槽を1槽だけにした場合、何台もの車両が洗浄槽を通過するにつれて、洗浄槽に敷き詰められた粉粒体が洗浄槽の内部で移動する可能性がある。特に、車両のタイヤが通る部分(洗浄槽が1槽のみからなる場合において、洗浄槽の左側部分および右側部分)の粉粒体が少なくなり、それ以外の部分(例えば洗浄槽の中央部分)に粉粒体が集まるおそれがある。このような粉粒体の移動が生じると、タイヤと擦れ合う粉粒体が少なくなるため、車両のタイヤに付着した汚染物質を除去する効果が低下するおそれがある。
【0028】
本態様では車両の中央部分が通る部分に洗浄槽を配置しない構成としている。このような構成にすることで、洗浄槽内の粉粒体が車両のタイヤの通る部分から遠く離れた車両の中央部分が通る部分に集まることを防ぐことができる。その結果、複数台の車両が洗浄槽を通過した場合であっても、粉粒体の移動箇所が制約されるため、洗浄力の低下を抑止できる。
【0029】
(第3の態様)
前記タイヤ洗浄装置は前記2槽の洗浄槽の間に配置される汚染液貯留槽を有し、
前記洗浄槽には新たな洗浄液の供給口が設けられており、
前記汚染液貯留槽には汚染液の排出口が設けられており、
前記洗浄槽の内部の洗浄液が当該洗浄槽の上方から前記汚染液貯留槽の内部へ流れ込む構成とした前記第2の態様のタイヤ洗浄装置。
【0030】
(作用効果)
車両が洗浄槽内を通過するにつれて、タイヤから取り除かれた汚染物質が洗浄槽の洗浄液内に溜まって洗浄液が汚れる。このような汚れた洗浄液を用いてタイヤを洗浄すると、洗浄液内の汚染物質がタイヤに付着し、洗浄後のタイヤに多くの汚染物質が付着している状態となる可能性がある。
【0031】
そこで、新たな洗浄液を洗浄槽に供給し、洗浄槽内の汚れた洗浄液を汚染液貯留槽に流し込み、汚染液貯留槽から汚染液を外部に排出する構成とした。このような構成にすることで、洗浄槽内の洗浄液を綺麗な状態に保つことができるため、洗浄液内の汚染物質がタイヤに付着するという不都合の発生を防ぐことができる。
【0032】
なお、第2の態様のように車両の中央部分が通る部分に洗浄槽を配置しないようにすると、当該部分がデッドスペースとなっている。本態様ではこのデッドスペースとなっている2槽の洗浄槽の間に汚染液貯留槽を設ける構成としている。
【0033】
仮に、2槽の洗浄槽の両サイド、すなわち左側に設置した洗浄槽の左側部分と、右側に設置した洗浄槽の右側部分にそれぞれ汚染液貯留槽を設けると、2槽の汚染液貯留槽を設ける必要が生じる。このように2槽の汚染液貯留槽を設けると、汚染液貯留槽の運搬や設置の労力が増えるとともに、イニシャルコストも高くなる。また、タイヤ洗浄装置全体が大型化し、広い設置面積が必要になるという不都合もある。そこで、2槽の洗浄槽の間に汚染液貯留槽を設け、前述のような各不都合の発生を防いでいる。
【0034】
また、洗浄槽内を車両が通過する際、車両の走行による揺れが車両のタイヤから洗浄槽内に伝わるため、その揺れによって洗浄槽の設置位置が次第にズレる可能性がある。本態様のように、2槽の洗浄槽の間に汚染液貯留槽を設けることにより、汚染液貯留槽が突っ張り部材のような役割を果たすため、洗浄槽の設置位置のズレの発生を抑止することができる。
【0035】
(第4の態様)
新たな洗浄液の前記供給口は前記洗浄槽の下部に向けられ、
供給する新たな洗浄液によって前記洗浄槽の底部に敷き詰められた前記粉粒体を攪拌し、前記粉粒体の内部の汚染物質を浮上させる構成とした前記第3の態様のタイヤ洗浄装置。
【0036】
(作用効果)
タイヤの洗浄によって車両のタイヤから剥がれ落ちた汚染物質は、タイヤの走行によって舞い上がった粉粒体とともに、次第に洗浄液内を重力によって落下し、洗浄槽の底部に堆積する。洗浄槽の底部の粉粒体に汚染物質が紛れ込んでいると、次回のタイヤ洗浄時に、その汚染物質がタイヤに付着してしまうおそれがある。
【0037】
そこで、第4の態様では、供給口を洗浄槽の下部に設けて、供給口から供給される新たな洗浄液によって洗浄槽の底部の粉粒体を攪拌し、粉粒体に紛れ込んだ汚染物質を浮上させる構成としている。汚染物質を浮上させることで、その汚染物質を汚染液貯留槽の内部へ導くことができるため、洗浄槽内の洗浄液に含まれる汚染物質の量を減らすことができる。その結果、タイヤ洗浄時におけるタイヤの再汚染を抑止できる。
【0038】
(第5の態様)
新たな洗浄液の前記供給口は、前記洗浄槽の左右両側または左右一方側の側面に、前記洗浄槽の長手方向に沿って設けられている前記第3または第4の態様のタイヤ洗浄装置。
【0039】
(作用効果)
洗浄槽の内部を車両が通過すると、車両のタイヤが通った部分の粉粒体が少なくなり、その周辺部分(洗浄槽の左側および右側)に粉粒体が飛散する。その結果、洗浄槽の内部において、敷き詰められた粉粒体の層(以下、「粉粒体層」という)の厚み(高さ方向の長さ)が場所によって大きく異なる事態の生じるおそれがある。そして、次に通過する車両のタイヤの洗浄において、車両のタイヤが通過する部分の粉粒体層の厚みが薄いと、車両のタイヤを十分に洗浄できないという問題がある。
【0040】
そこで、本態様では、新たな洗浄液の前記供給口を洗浄槽の左右両側または左右一方側の側面に、前記洗浄槽の長手方向に沿って設けている。前記供給口から新たな洗浄液を供給すると、車両の通行によって左右両側に飛散していた粉粒体の一部を洗浄槽の中央部に戻すことができるため、洗浄槽内の粉粒体層の厚みの違いを是正するができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、車両のタイヤの洗浄効果が高いタイヤ洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第一実施例に係るタイヤ洗浄装置の平面図である。
図2図1のタイヤ洗浄装置をY方向から見た側面図である。
図3図1のX-X線断面図である。なお、遠方に見えるスロープの表示は省略する。
図4】本発明の第一実施例に係るタイヤ洗浄装置の概略システム図である。
図5】本発明の第一実施例に係るタイヤ洗浄装置の平面図の概略図であり、洗浄液や汚染液の流れを示したものである。スロープなどの表示を省略している。
図6】本発明の第一実施例に係るタイヤ洗浄装置の側面図であり、洗浄槽の内部を車両が通過している状態を示したものである。
図7】本発明の第二実施例に係るタイヤ洗浄装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る脱臭設備1の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきではない。
【0044】
(タイヤ洗浄装置1)
本発明の第一実施例に係るタイヤ洗浄装置1を図1図4に示す。タイヤ洗浄装置1は車両9のタイヤ8に付着した汚染物質を取り除いて綺麗なタイヤ8にする装置である。
【0045】
洗浄対象の車両9の種類は特に限定されず、ダンプトラック、トレーラー、ミキサー車、ユニック車、一般車両など様々な車両9に用いることができる。工事現場などで用いられる前述の車両9のタイヤ8はひどく汚れることも少なくないが、そのようなタイヤ8であってもこのタイヤ洗浄装置1を用いれば綺麗にすることができる。
【0046】
また、前輪8Aと後輪8Bの取り付け位置が車両9の種類(特に車両9の前後方向の長さ)によって異なるため、従来のローラー式洗浄装置ではローラーの位置が車両9のタイヤ8の位置と合わないことがあり、そのような場合は車両9のタイヤ8を洗浄することが困難であった。しかし、図示したタイヤ洗浄装置1は従来のようにローラーを用いるものではなく、車両9が洗浄槽2の内部を通り抜けることによってタイヤ8の汚染物質を落とすものであるため、前輪8Aと後輪8Bの取り付け位置が異なる車両9であってもタイヤ8を洗浄することができる。
【0047】
なお、車両9のタイヤ8に付着する汚染物質は場所によって異なるが、例えば焼却炉で生じた焼却灰、ダイオキシン、アスベストなどを挙げることができる。
【0048】
前記タイヤ洗浄装置1は、洗浄槽2、汚染液貯留槽3、スロープ4、濾過装置5、浄水槽6、ポンプ7を有する。以下、各部材について詳述する。
【0049】
(洗浄槽2)
車両9が洗浄槽2の内部を通り抜けることにより、車両9のタイヤ8に付着した汚染物質が取り除かれる。そのため、車両9のタイヤ8が通過する部分に洗浄槽2を設けることが好ましい。
【0050】
洗浄槽2の形状は特に限定されないが、図1図4に示す第一実施例の洗浄槽2は長方体の上面を省いた形状をしている。
【0051】
図1図3に示した第一実施例では洗浄槽2を2槽設けており、この洗浄槽2A、2Bを略平行に配置している。略平行とは、洗浄槽2A、2Bの軸心PT1、PT2が完全に平行となっている状態と、洗浄槽2A、2Bの長手方向LDの軸心PT1、PT2の角度が多少ズレつつも平行と見なせる程度の状態の両者を含む。具体的には、洗浄槽2A、2Bの平行度を±5mm以内にすることが好ましい。洗浄槽2A、2Bが平行な状態でなくなるにつれて、洗浄槽2の内部を車両9が通過する際に、洗浄槽2の内壁にタイヤ8が衝突するリスクが高くなるという不都合がある。なお、洗浄槽2A、2B間の間隙距離(例えば、図1において洗浄槽2Aの上端辺と洗浄槽2Bの下端辺の間の距離)は700~680mm程度にすることが好ましい。
【0052】
図1の長手方向LDの手前側FSから奥側BSに向けて車両9が通過する際は、車両9の左側のタイヤ8が洗浄槽2Aを通過し、右側のタイヤ8が洗浄槽2Bを通過する。反対に、図1の長手方向LDの奥側BSから手前側FSに向けて左側から右側に向けて車両9が通過する際は、その車両9の右側のタイヤ8が洗浄槽2Aを通過し、左側のタイヤ8が洗浄槽2Bを通過する。
【0053】
なお、図1図4の第一実施例では2槽の洗浄槽2を有しているが、洗浄槽2の数は2槽に限られるものではない。例えば、図7に示す第二実施例のように、図1図4の洗浄槽2A、2Bと汚染液貯留槽3が設けられた範囲全体をカバーするように、大きな洗浄槽2を1槽だけ設けるようにしてもよい。洗浄槽2の数を1槽だけにすると、部品点数を削減することができるため、タイヤ洗浄装置1のセッティングが容易であるという利点がある。他方、タイヤ洗浄装置1の内部の底部に敷き詰める粉粒体PGの量が増えてしまうという欠点もある。また、洗浄槽2の面積が広いため、タイヤ洗浄装置1の運転を続けるにつれて、洗浄槽2の幅方向WD中央部分に集まる粉粒体PGも少なくない。そのため、車両9のタイヤ8が通過する部分に残った粉粒体PGの量が少なくなり、タイヤ8の洗浄力が低下するという欠点もある。
【0054】
また、図示しないが、第一実施例のタイヤ洗浄装置1に相当するものを1セットと仮定した場合に、このようなセットを2つ用意し、それらを長手方向LDに直列に繋げた形態にしてもよい。このような2つのセットを直列に連ねたもの全体を1つのタイヤ洗浄装置1とした場合、タイヤ洗浄装置1の洗浄槽2の数は合計で4槽となる。このような4槽の洗浄槽2を有するタイヤ洗浄装置1においては、車両9が手前側FSの洗浄槽2を通った後でさらに奥側の洗浄槽2を通ることになるため、タイヤ8の洗浄力が高いという利点がある。他方、タイヤ洗浄装置1全体の長手方向LDの長さが長いため、タイヤ洗浄装置1を敷地が狭い場所に設置できないという欠点がある。
【0055】
以上のことから、タイヤ洗浄装置1の洗浄槽2の数は2つにすることが最も好ましい。
【0056】
また、洗浄槽2内の底部は、粉粒体PGを均一に敷き詰めやすくするため、平坦にすることが好ましい。また、洗浄槽2の長手方向LDの長さは、車両9のタイヤ8の全周を洗浄するために、車両9のタイヤ8の周長よりも長くすることが好ましい。また、洗浄槽2の幅方向WDの長さは、洗浄槽2の内部を車両9が通り抜けることができるように、タイヤ8の幅よりも長くする。
【0057】
なお、洗浄槽2の長手方向LD奥側BSおよび長手方向LD手前側FSには、幅方向WDに延出する奥側壁BSWと手前側壁FSWがある。この奥側壁BSWと手前側壁FSWの高さは特に限定されるものではないが、例えば洗浄槽2の外壁OSの高さとほぼ同じ高さにすることができる。
【0058】
(粉粒体PG)
洗浄槽2内の底部には粉粒体PGが敷き詰められる。この粉粒体PGの種類は特に限定されるものではないが、粗粒珪砂、ガラス玉、SUS鋼球、セラミック球体ビーズなどを用いることが好ましい。このような種類の粉粒体PGを用いることにより、粉粒体PGがタイヤ8に付着したままで車両9が洗浄槽2内から外へ出ることを防ぐことができる。粉粒体PGがタイヤ8に付着したままの状態で車両9が洗浄槽2の外に出ると、洗浄槽2内に敷き詰めた粉粒体PGの量が少なるという不都合がある。またこの場合は洗浄槽2内から外に出た車両9のタイヤ8と粉粒体PGの間に汚染物質が挟まっていることがあるため、汚染物質の除去が十分でなくなるという不都合もある。なお、粉粒体PGの大きさ、重さ、調達コストなどの観点を総合的に考慮すると、特に粗粒珪砂を用いることが好ましい。
【0059】
粉粒体PGの大きさも特に限定されるものではないが、平均粒径0.8~4.8mmの粉粒体PGを用いることが好ましく、平均粒径1.7~4.8mmの粉粒体PGを用いることがより好ましい。粉粒体PGの平均粒径が0.8mmよりも小さいと、洗浄液Wの表面張力の作用によって粉粒体PGがタイヤ8に引っ付きやすいため、タイヤ8に粉粒体PGが付着した状態の車両9が洗浄槽2の外に出て行ってしまうおそれがある。他方、粉粒体PGの平均粒径が4.8mmよりも大きいと、粉粒体PGがタイヤ8のトレッド部の溝に挟まったまま抜け出なくなるおそれがあるため、タイヤ8の前記溝に粉粒体PGが挟まった状態の車両9が洗浄槽2の外に出て行ってしまうおそれがある。
【0060】
なお、粉粒体PGの粒径とは、投影円相当径(粒子の投影面積に等しい円の直径)をいい、各粒子の投影円相当径の平均値(平均粒径)のことをいう。この平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、商品LA-960V2シリーズ、株式会社堀場製作所製)を用いて粒度分布を測定し、累積体積が50%に相当する時の粒子径を平均粒径として定める。
【0061】
以上のように、粉粒体PGは、タイヤ8のトレッド部の溝に残りづらく、流動性の高いものを用いることが好ましい。
【0062】
なお、粉粒体PGは洗浄槽2内の底部に均一の厚さに敷き詰めることが好ましい。粉粒体PGを均一の厚さに敷き詰めることで、タイヤ8の洗浄効果を高めることができる。すなわち、車両9のタイヤ8が通過する部分に十分な量の粉粒体PGが敷き詰められていないと、粉粒体PGによるタイヤ8の洗浄効果が落ちてしまうため、車両9のタイヤ8が通過する部分に十分な量の粉粒体PGが敷き詰められていなければならない。他方、車両9のタイヤ8が洗浄槽2内のどこの部分を通過するかは、車両9のドライバー次第である。そのため、車両9のタイヤ8が洗浄槽2内のどの部分を通過しても十分な洗浄効果を発揮できるように、洗浄槽2内に粉粒体PGを均一の厚さに敷き詰めることが好ましい。なお、洗浄槽2内に粉粒体PGを均一の厚さに敷き詰めることで、粉粒体層PLに凸凹した部分がなくなるため、車両9が洗浄槽2の内部を通過するときの走行の安定性を高めることもできる。
【0063】
洗浄槽2内に粉粒体PGを敷き詰めて形成する粉粒体層PLの厚みPLHは特に限定されるものではないが、車両9が洗浄槽2内を通過したときに、車両9のタイヤ8のトレッド部が粉粒体層PLの内部に沈み込む程度の厚みPLHにすることが好ましい。具体的には、例えば粉粒体層PLの厚みPLHを80~120mmにすることが好ましく、90~100mmにすることがより好ましい。粉粒体層PLの厚みPLHが80mmよりも薄いと、タイヤ8のトレッド部の溝に十分な量の粉粒体PGが入り込まないおそれがあり、その結果タイヤ8の洗浄効果が落ちてしまうおそれがある。他方、粉粒体層PLの厚みPLHが120mmよりも厚いと、洗浄槽2の内部で車両9のタイヤ8が空回りして、車両9が進行しづらくなるおそれがある。
【0064】
以上のように、洗浄槽2内の底部に粉粒体PGを敷き詰め、その上に洗浄液Wを貯めた後に、車両9に洗浄槽2の内部を通過させる。そうすると、車両9が洗浄槽2内を通過するときに、車両9のタイヤ8が粉粒体層PLの内部に埋まりながら進み、そのようにしながら洗浄槽2内を車両9が進行する過程で、タイヤ8と粉粒体PGが擦れ合うことにより、タイヤ8に付着した汚染物質を粉粒体PGが擦れ落とす。また洗浄槽2内に貯留された洗浄液Wにもタイヤ8に付着した汚染物質を落とす効果があり、この粉粒体PGと洗浄液Wの相乗効果により、タイヤ8に付着した汚染物質を効果的に落とすことができる。なお、洗浄液Wを用いずに粉粒体PGだけを用いた場合、洗浄槽2内を車両9が通過したときに、タイヤ8によって粉粒体PGが巻き上げられ、巻き上げられた粉粒体PGが風に乗ってタイヤ洗浄装置1の外に拡散してしまうおそれがある。粉粒体PGとともに洗浄液Wを用いることにより粉粒体PGの拡散を防ぐことができる。
【0065】
(洗浄液W)
洗浄槽2の内部には洗浄液Wが貯留される。洗浄液Wの種類は特に限定されるものではなく、例えば水道水などの水、アルカリイオン水、界面活性剤などの洗浄用の薬剤が入った液体などを洗浄液Wとして用いることができる。ランニングコストを考慮すると水を用いることが好ましい。
【0066】
なお、タイヤ洗浄装置1の運搬を容易にするため、タイヤ洗浄装置1の設置現場に洗浄槽2を設置した後、洗浄槽2の内部に車両9を通行させる前に、前記洗浄液Wを洗浄槽2の内部に注入するようにすることが好ましい。
【0067】
洗浄槽2の内部に洗浄液Wをどの程度貯めるかについては適宜決めることができるが、洗浄槽2の内部を通行する車両9のタイヤ8の下部(洗浄槽2の底部に敷き詰められた粉粒体PGと接している部分)のショルダー部およびトレッド部が洗浄液Wに浸る程度まで洗浄液Wを溜めることが好ましい。具体的には、タイヤ8の下端からショルダー部までの高さが100mm程度であると想定した場合、洗浄槽2の底部に設けられた粉粒体層PLの上面から洗浄槽2に貯留された洗浄液Wの上面までの高さが100mm以上になるようにすることが好ましい。
【0068】
また、洗浄槽2の内部を車両9が通過した際に、洗浄槽2の内部の洗浄液Wや粉粒体PGがタイヤ洗浄装置1の外に溢れ出て、タイヤ洗浄装置1を設置した場所の周辺環境を汚染しないように留意しなければならない。そこで、図3に示したように、洗浄槽2内の洗浄液Wの液面WSの高さと比べて、洗浄槽2の幅方向WD外側の外壁OWの高さをある程度(例えば100mm程度)高くすることが好ましい。このように外壁OWの高さを高くすることで、洗浄槽2内の洗浄液Wが幅方向WD外側に漏れ出ることを防いでいる。
【0069】
他方、図3に示す第一実施例のように2槽の洗浄槽2の間に汚染液貯留槽3を設けた場合は、洗浄槽2の幅方向WD内側の内壁IWの高さを低くし、洗浄槽2の内部に貯留された洗浄液Wが洗浄槽2の内壁IWの上端部を越えて(オーバーフローして)、汚染液貯留槽3の内部に流れ込むようにすることが好ましい。図3に示す第一実施例では、内壁IWの高さを外壁OWの高さよりも100mm程度低くし、洗浄槽2の内部に貯留された洗浄液Wの液面WSの高さとほぼ同じ高さにしている。内壁IWの高さをこのようにすることで、洗浄槽2の内部に新たな洗浄液Wを供給したときに、洗浄槽2の内部にある汚染物質を含む洗浄液W(以下、「汚染液CL」という。)を汚染液貯留槽3に流し込むことができる。
【0070】
なお、図3に示すように、洗浄槽2の内壁IWの上端部をタイヤ洗浄装置1の幅方向WD中央側に突出させた注ぎ口SPを設けることが好ましい。この注ぎ口SPを設けることにより、洗浄槽2から汚染液貯留槽3へ汚染液CLを流し込むときに、その汚染液CLが洗浄槽2と汚染液貯留槽3の間の隙間などに漏れるなどの不都合の発生を防止できる。
【0071】
(洗浄液供給口2X)
図1図4に示す第一実施例のように、洗浄槽2には新たな洗浄液Wを供給する洗浄液供給口2Xを設けることが好ましい。洗浄槽2に新たな洗浄液Wを供給し、洗浄槽2内に貯留されていた古い洗浄液W(汚染液CL)を汚染液貯留槽3に排出する。洗浄槽2内にこのような洗浄液Wの流れを作ることで、車両9のタイヤ8を洗浄する際に用いる洗浄液Wを常に綺麗な状態に保つことができる。
【0072】
洗浄液供給口2Xを設ける位置は特に限定されないが、図3に示すように、洗浄槽2内の底部の粉粒体層PLと同じ高さに設けることが最も好ましい。洗浄液供給口2Xをこのような位置に設けることで、洗浄液供給口2Xから粉粒体層PLの内部に洗浄液Wを供給することができる。車両9のタイヤ8を洗浄することにより、タイヤ8に付着していた重量のある汚染物質が粉粒体層PLの内部に紛れ込んだ状態となるが、洗浄液供給口2Xから粉粒体層PLの内部に供給された洗浄液Wにより、粉粒体層PLの内部に紛れ込んでいた汚染物質を舞い上げることができる。舞い上がった汚染物質は洗浄液Wとともに、汚染液CLとして、洗浄槽2の上部から汚染液貯留槽3の上部へ流れ出る(洗浄槽2から排出される)ことになる。
【0073】
なお、粉粒体層PLが設けられた高さと同じ高さに洗浄液供給口2Xを設けるのではなく、粉粒体層PLの上面PUよりも少し上側の位置(例えば粉粒体層PLの上面PUから50mm程度高い位置までの範囲)に設けるようにしてもよい。洗浄液供給口2Xをこのような位置に設けたとしても、洗浄液供給口2Xの吹出口を粉粒体層PLに向けることで、洗浄液供給口2Xから供給された新たな洗浄液Wを粉粒体層PLの内部に届けることができ、汚染物質を舞い上げる効果を奏することができる。
【0074】
また、洗浄槽2の内部を車両9のタイヤ8が通り抜けると、車両9のタイヤ8が通った部分の粉粒体層PLの厚みPLHが薄くなり、車両9のタイヤ8が通った部分の周辺の部分の粉粒体層PLの厚みPLHが厚くなる。粉粒体層PLの厚みPLHが薄くなった部分に次に洗浄する車両9のタイヤ8が通ると、タイヤ8が通過する部分にある粉粒体PGの量が十分でないことから、タイヤ8のショルダー部と粉粒体PGが擦れ合わない状態となり、タイヤ8の洗浄を十分に行うことができないおそれがある。そこで、洗浄槽2の内部をタイヤ8が通過することによって、粉粒体層PLの厚みPLHが不均一になった状態から、当該粉粒体層PLの厚みPLHを元の均一な状態に戻すことが好ましい。
【0075】
粉粒体層PLの厚みPLHを均一な状態に戻すために、洗浄液供給口2Xから供給される洗浄液Wを用いることが好ましい。図3に示す第一実施例では、洗浄液供給口2Xを洗浄槽2の幅方向WDの外側と内側の両方に設けている。詳しくは、洗浄槽2Aの幅方向WD右側RSの内壁IWに内側洗浄液供給口2Xcを設け、洗浄槽2Aの幅方向WD左側LSの外壁OWに外側洗浄液供給口2Xbを設けている。同様に、洗浄槽2Bの幅方向WD左側LSの内壁IWに内側洗浄液供給口2Xcを設け、洗浄槽2Bの幅方向WD右側RSの外壁OWに外側洗浄液供給口2Xbを設けている。
【0076】
図1に示す実施例1では、これらの内側洗浄液供給口2Xcと外側洗浄液供給口2Xbは、洗浄槽2Bの内壁IWおよび外壁OWの長手方向LDの全長とほぼ同じ範囲に、長手方向LDに延出するように細長状に設けられている。なお、洗浄液供給口2Xの形態は図1のような形態に限られるものではなく、洗浄槽2Bの内壁IWおよび外壁OWの長手方向LDに、複数の点状の洗浄液供給口2Xを所定の間隔を空けながら設けてもよい。
【0077】
また、図1に示す実施例1では、内側洗浄液供給口2Xcと外側洗浄液供給口2Xbの両方を設けているが、内側洗浄液供給口2Xcと外側洗浄液供給口2Xbのどちらか一方だけを設けるようにしてもよい。ただし、粉粒体層PLの厚みPLHを元の均一な状態に戻すという効果を考慮すると、内側洗浄液供給口2Xcと外側洗浄液供給口2Xbの両方を設けることが最も好ましい。
【0078】
図1図4に示す実施例1において、洗浄槽2の角部に設けられた角部洗浄液供給口2Xaに新たな洗浄液Wが供給される。角部洗浄液供給口2Xaに供給された新たな洗浄液Wは洗浄槽2の幅方向WDの左側LSと右側RSにそれぞれ分かれた後、洗浄槽2の幅方向WD両外側に洗浄槽2と隣接して設けられた洗浄液流通路10(例えばパイプ)の内部を長手方向LDに流れた後、内側洗浄液供給口2Xcおよび外側洗浄液供給口2Xbから洗浄槽2の内部にそれぞれ供給される。内側洗浄液供給口2Xcおよび外側洗浄液供給口2Xbから洗浄槽2の内部にそれぞれ供給された新たな洗浄液Wは、洗浄槽2の幅方向WD両側から幅方向WD中央側へ向かって流れるため、粉粒体PGを幅方向WD中央側へ戻す効果を奏する。その結果、車両9のタイヤ8の通行によって生じた粉粒体層PLの上面PUの凸凹を修正し、粉粒体層PLの上面PUを滑らか状態に、すなわち粉粒体層PLの厚みPLHを元のほぼ均一な状態に戻すことができる。
【0079】
(汚染液貯留槽3)
図1図4に示す第一実施例においては、2槽の洗浄槽2A、2Bの間であって、これらの洗浄槽2A、2Bとほぼ隣接する位置に汚染液貯留槽3が設けられている。
【0080】
汚染液貯留槽3の形状は特に限定されないが、図1図4に示す第一実施例の汚染液貯留槽3は長方体の上面を省いた形状をしている。
【0081】
汚染液貯留槽3は洗浄槽2内の汚染液CLを受け入れる槽であり、洗浄槽2内の汚染液CLが汚染液貯留槽3内にスムーズに流れ込むようにする必要がある。したがって、汚染液貯留槽3の幅方向WD両側の側壁SWの高さを洗浄槽2の内壁OWの高さとほぼ同じにするか、洗浄槽2の内壁OWの高さよりも低くすることが好ましい。
【0082】
また、洗浄槽2と汚染液貯留槽3の間に隙間が空いている場合、洗浄槽2から汚染液貯留槽3に汚染液CLが流れ込む過程で、その隙間に汚染液CLが漏出し、タイヤ洗浄装置1を設置した現場環境を汚染してしまうおそれがある。そのため、洗浄槽2と汚染液貯留槽3の間に隙間を開けず、密接させることが好ましい。なお、図3に示すように洗浄槽2に注ぎ口SPを設けた場合は、洗浄槽2内の汚染液CLがその注ぎ口SPを介して汚染液貯留槽3の内部に流れ込むため、洗浄槽2と汚染液貯留槽3の間に多少の隙間が空いていても差し支えがない。以上ことから、洗浄槽2と汚染液貯留槽3はほぼ隣接する位置に設置することが好ましいということができる。
【0083】
汚染液貯留槽3の長手方向LDの長さは洗浄槽2の長手方向LDの長さとほぼ同じにするか、洗浄槽2の長手方向LDの長さよりも長くすることが好ましい。汚染液貯留槽3の長手方向LDの長さは洗浄槽2の長手方向LDの長さよりも短いと、洗浄槽2から汚染液貯留槽3に汚染液CLが流れ出るときに、汚染液CLの受け皿となる部分のない箇所が生じるため、汚染液CLがタイヤ洗浄装置1の外側に漏出してしまうおそれがあるからである。なお、洗浄槽2と汚染液貯留槽3の長手方向LDにおける設置位置は、揃えて置く(すなわち同じ位置にする)ことが好ましい。例えば、洗浄槽2を長手方向LD奥側BSに寄せて配置し、汚染液貯留槽3を長手方向LD手前側FSに寄せて配置すると、洗浄槽2と汚染液貯留槽3の隣接していない箇所が生じ、そのような箇所では、汚染液CLがタイヤ洗浄装置1の外側に漏出する可能性があるからである。
【0084】
また、汚染液貯留槽3の幅方向WDの長さは任意に定めることができるが、車両9の両輪が各洗浄槽2A、2Bを通ることを考慮すると、車両9の両輪の間の長さ以下にすることが好ましい。
【0085】
汚染液貯留槽3の長手方向LD奥側BSおよび長手方向LD手前側FSには、幅方向WDに延出する奥側壁BSWと手前側壁FSWがある。この奥側壁BSWと手前側壁FSWの高さは特に限定されるものではないが、汚染液貯留槽3の幅方向WD両側の外壁とほぼ同じ高さにすることができる。
【0086】
(汚染液排出口3X)
図1に示すように、汚染液貯留槽3の奥側壁BSWには、汚染液貯留槽3から汚染液CLを排出するための汚染液排出口3Xが設けられている。この汚染液排出口3Xの位置は特に限定されず、汚染液貯留槽3の手前側壁FSWに設けるようにしてもよい。また、汚染液排出口3Xを設ける高さも特に限定されないが、汚染液貯留槽3の下部に設けることが好ましい。汚染液貯留槽3の下部に汚染液排出口3Xを設けることで、汚染液貯留槽3の下部に堆積した汚染物質を汚染液貯留槽3の外に排出しやすくなる。
【0087】
(スロープ4)
図1図2に示すように、洗浄槽2A、2Bの長手方向LDの手前側FSには、長手方向LDに起伏を設けた山状のスロープ4が設けられ、洗浄槽2A、2Bの長手方向LDの奥側BSにも、長手方向LDに起伏を設けた山状のスロープ4が設けられている。このスロープ4の凸部分(高さの高い部分)が洗浄槽2A、2Bの奥側壁BSWや手前側壁FSWのある部分とほぼ同じ箇所になるように配置されている。スロープ4の凸部分の路面は前記奥側壁BSWや手前側壁FSWの上端よりも上方に設けられており、車両9がこのスロープ4によって奥側壁BSWや手前側壁FSWを乗り越えることができるようになっている。スロープ4の路面に凹凸を設け、その凹凸によって車両9のタイヤ8が滑るスリップを防止することが好ましい。
【0088】
図1において、長手方向LDの手前側FSから奥側BSへ向かって車両9が通過する場合を考えると、車両9はスロープ4Au、4Buの坂道を上った後、スロープ4Ad、4Bdの坂道を下って洗浄槽2A、2Bの内部に入り、その洗浄槽2A、2Bを通り抜けた後、スロープ4Cd、4Ddの坂道を上り、スロープ4Cu、4Duの坂道を下るようになる。このようなスロープ4を設けることで、洗浄槽2A、2Bに奥側壁BSWや手前側壁FSWがあったとしても、洗浄槽2A、2Bの内部に入ったり、洗浄槽2A、2Bの内部から出たりすることができる。
【0089】
(濾過装置5)
図4に示すように、汚染液貯留槽3の汚染液排出口3Xから排出された汚染液CLは濾過装置5に供給される。そして、この濾過装置5内に備えられたフィルタによって汚染液CL中の汚染物質が除去され、浄化された浄化液が浄化液槽6へと排出される。
【0090】
この濾過装置5の種類は特に限定されるものではない。ただし、濾過効率に優れた装置を用いることが好ましく、濾過効率の観点を考慮すると、平坦な濾材をジグザグに(蛇腹状に)折り曲げつつ、筒状体の外周面に巻き付けて、円筒状に形成したプリーツフィルタを備えた濾過装置5を用いることが好ましい。
【0091】
フィルタを有する濾過装置5によって除去された汚染物質は、脱水ケーキとして回収される。
【0092】
(浄化液槽6)
濾過装置5の後段に浄化液槽6を設け、濾過装置5で生成した浄化液(浄化された洗浄液W)を浄化液槽6の内部で貯留させることが好ましい。浄化液槽6の内部に貯留された浄化液は必要に応じて、洗浄液Wとして、洗浄液槽2の内部に供給されることになる。なお、タイヤ洗浄装置1を運転するにつれて、洗浄液Wの一部が自然に蒸発するため、洗浄液Wの量が少なくなる。そこで、適宜のタイミングで、自然蒸発に相当する分の洗浄液W(補充液RFという)を浄化液槽6に供給することが好ましい。
【0093】
(ポンプP)
図4に示すように、タイヤ洗浄装置1にポンプPを設けることが好ましい。図4に示す第一実施例では、ポンプP1によって、汚染液貯留槽3の内部の汚染液CLを濾過装置5に輸送しており、ポンプP2によって、浄化液槽6から洗浄槽2に洗浄液Wを輸送するようにしている。ポンプP1、P2のどちらか一方を省略し、1つのポンプによって、汚染液貯留槽3から濾過装置5への汚染液CLの輸送と、浄化液槽6から洗浄槽2への洗浄液Wの輸送を行うようにしてもよい。
【0094】
(タイヤ洗浄装置1の作動フロー)
次に、図1図4に示した第一実施例に係るタイヤ洗浄装置1の作動フローの概略を説明する。
【0095】
洗浄槽2の底部に粉粒体PGを敷き詰めた後で、洗浄槽2の内部に洗浄液Wを供給する。前述のように、粉粒体層PLの高さは、車両9が洗浄槽2内を通過したときに、車両9のタイヤ8の下部のショルダー部が粉粒体層PLに埋もれる程度にすることが好ましい。また、洗浄液Wの高さは、車両9のタイヤ8の下部のサイドウォール部またはビード部が洗浄液Wに埋もれる程度にすることが好ましい。粉粒体層PLや洗浄液Wの高さはこのようにすることで、タイヤ8に付着した汚染物質を除去する効果が高くなる。
【0096】
次に、車両9が洗浄槽2の内部を通過する。車両9が洗浄槽2の内部を通過する過程で、粉粒体PGと洗浄液Wの相乗効果により、タイヤ8に付着した汚染物質を効果的に除去する。
【0097】
タイヤ洗浄装置1の出口付近(例えばスロープ4Cu、4Duの辺り)に車両9の通行を検出するセンサ(図示しない)を配置しておくことが好ましい。そしてこのセンサによって洗浄槽2の内部を車両9が通行し終えたことを検知したときに、洗浄槽2の内部の洗浄液Wを入れ変える。具体的には、ポンプP2によって、新たな洗浄液Wを洗浄液供給口2Xから洗浄槽2の内部に供給する。そして、この新たな洗浄液Wの供給によって、洗浄槽2の内部にあった汚染物質(車両9のタイヤ8から除去したもの)を含む洗浄液Wを汚染液CLとして汚染液貯留槽3内に排出させる。
【0098】
汚染液貯留槽3内の汚染液CLは、ポンプP1によって濾過装置5に送られ、濾過装置5によって浄化処理される。浄化された洗浄液Wは浄化液槽6に送られて浄化液槽6の内部に貯留され、適宜のタイミングで再び洗浄槽2に供給される。
【0099】
このように洗浄液Wを循環利用することで、限りある資源を有効利用することができる。
【0100】
なお、洗浄槽2内の洗浄液Wの入れ替えは、車両9が数台通過した後に行ってもよいが、車両9のタイヤ8の洗浄効果を高めるために、車両9が1台通過するたびに洗浄槽2内の洗浄液Wの入れ替えを行うことが好ましい。
【0101】
(効果)
以上のようなタイヤ洗浄装置1は、以下のような効果を奏する。すなわち、(1)洗浄液Wと粉粒体PGの両方を用いてタイヤ8を洗浄するものであるため、その相乗効果により、高い洗浄効果を得ることができる。(2)従来技術のようにローラーを用いるものではないため、様々な種類の車両9のタイヤ8を洗浄することができる。(3)従来技術のようにローラーを用いるものではないため、タイヤ洗浄装置1を稼働させるために車両9の運転手がコントローラーを操作してローラーを回転させる必要がない。すなわち、車両9が洗浄槽2の内部を通過するだけで、タイヤ8を洗浄することができる。(4)従来技術のようにローラーを用いるものではなく、車両9が洗浄槽2の内部を通過するだけで、タイヤ8を洗浄することができるため、タイヤ8の洗浄にかかる時間を従来技術よりも短くすることができる。(5)従来技術のように、タイヤ洗浄装置1に下方にピットなどを構築する必要がなく、平地に洗浄槽2、汚染液貯留槽3、スロープ4等を設置するだけで済むため、設置が容易であり、移設も容易である。(6)洗浄槽2A、2Bの間に汚染液貯留槽3を設けた形態にすると、タイヤ洗浄装置1のフットプリントを小さくすることができる。また、必ずしも濾過装置5や浄化液槽6を洗浄槽2や汚染液貯留槽3の近くに置く必要がなく、各部材のレイアウトの自由度が高い。(7)焼却施設等の敷地の入口に設置することで、敷地の内部に入る車両9と敷地の外部に出る車両9の両者を同一のタイヤ洗浄装置1で洗浄することができる。
【符号の説明】
【0102】
1:タイヤ洗浄装置、2:洗浄槽、2X:洗浄液供給口、3:汚染液貯留槽、3X:汚染液排出口、4:スロープ、5:濾過装置、6:浄化液槽、7:ポンプ、8:タイヤ、8A:前輪、8B:後輪、9:車両、10:洗浄液流通路、LD:長手方向、FS:手前側、BS:奥側、WD:幅方向、LS:左側、RS:右側、HD:高さ方向、US:上側、DS:下側、W:洗浄液、CL:汚染液、RF:補充液、PG:粉粒体、PL:粉粒体層、SP:注ぎ口、PT:軸心、OW:外壁、IW:内壁、SW:側壁、FSW:手前側壁、BSW:奥側壁、GR:地面、WS:(洗浄液の)液面、PU:(粉粒体層の)上面
【要約】
【課題】車両のタイヤの洗浄効果が高いタイヤ洗浄装置を提供すること。
【解決手段】前記課題は、粉粒体PGが敷き詰められ、洗浄液Wが貯留される洗浄槽2を有し、前記洗浄槽2の内部に前記粉粒体PGおよび前記洗浄液Wが入っている状態で、前記洗浄槽2の内部に車両9を通過させてその車両9のタイヤから汚染物質を除去する構成のタイヤ洗浄装置1によって解決することができる。
【選択図】図1
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