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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】複式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20240228BHJP
   B43K 24/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B43K24/12
B43K24/14 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023126681
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2022年12月10日~11日に大牟田文化会館(福岡県大牟田市不知火町2丁目10-2)にて開催された全国高等専門学校デザインコンペティション2022で公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 デザコン2022有明Official book(発売日2023年6月9日、出版日2023年6月15日、一般社団法人全国高等専門学校連合会編 株式会社建築資料研究社出版)の122頁で公開。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】青木 良浩
(72)【発明者】
【氏名】白田 陽彩人
(72)【発明者】
【氏名】猪股 暖生
(72)【発明者】
【氏名】佐々 優華
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206152(JP,A)
【文献】特開2015-180558(JP,A)
【文献】特開2006-305887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端に摺動コマがそれぞれ連結された複数の筆記体と、
前記各筆記体を軸方向に挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の外周面に螺旋状の案内溝が設けられた回転軸体と、
前記回転軸体を回転可能に内部に収納し、前記挿通部に対応する領域に、軸方向に延在されたスライド孔が設けられると共に、前記挿通部に対応する領域よりも後端側の内周面に、前記各摺動コマが摺動可能な円筒カムが設けられた胴体部と、
前記スライド孔に対して軸方向に移動可能に配設され、前記スライド孔を介して前記胴体部の外側に配置される外側部材と、前記スライド孔を介して前記胴体部の内側に配置される内側部材とを連結することにより構成され、かつ、前記案内溝に挿入される案内突起部を有する移動部材とを備え、
前記移動部材を前記スライド孔に沿って移動させることにより、前記胴体部の内周面に沿って前記回転軸体と共に前記各筆記体が回動し、前記各摺動コマが前記円筒カムに沿って摺動することにより、前記各筆記体が前記円筒カムに沿って軸方向に移動し、前記各筆記体のうちの1つの先端が選択的に他の先端よりも先端側に突出される
ことを特徴とする複式筆記具。
【請求項2】
前記各筆記体は、付勢部材により後端側に付勢されていることを特徴とする請求項1記載の複式筆記具。
【請求項3】
前記円筒カムは、
周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部と、
前記カム平坦部の両端側から先端側に尖形するように延設された一対のカム斜面と、
前記一対のカム斜面の先端が繋がる所定幅のカム頂部と、
少なくとも前記カム平坦部の両端部に設けられ、前記摺動コマが着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部とを有し、
前記カム平坦部の両端部において、前記カム平坦部と前記一対のカム斜面とは、前記カム底部を介して繋がっている
ことを特徴とする請求項1記載の複式筆記具。
【請求項4】
前記スライド孔に対する前記移動部材の位置に応じて、前記各筆記体のうちいずれが先端側から突出するかが決定されていることを特徴とする請求項1記載の複式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち替えなくても筆記体の先端を繰り出すことができる複式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在一般的に使用されている複式筆記具は、特許文献1に代表されるような、個々の筆記体を選択し、その筆記体後部に連結された突起部を筆記具後部より押し出すことで筆記体の先端を繰り出す方式と、特許文献2に代表されるような、前軸部と後軸部を逆方向に回転させ、筆記体後部に連結された摺動コマを、後軸内に設けたカム斜面に沿って滑らすことで筆記体に往復運動を与え、目的の筆記体の先端を繰り出す回転方式がある。しかし、いずれの方式も筆記体の繰り出しの際に、一度筆記具を持ち替える必要があった。
【0003】
そこで、筆記具を持ち替えなくても筆記体の先端を繰り出すことができる複式筆記具も提案されている(例えば、特許文献3参照)。この複式筆記具は、ペン軸の握り部に縦に筒溝を設け、握り部の軸筒内に内接回転する回転円筒を設け、その表面に筆記体の数と同数の頂点を円筒前方部に持つ三角山形に連続するガイド堀を形成し、筒溝を前後進する槓桿の先端をガイド堀に達せしめ、筒溝外に出した槓桿のノブを押して槓桿を前後進させガイド堀を辿らせることにより回転円筒を回転させるように構成されている。しかしながら、この複式筆記具は構造が複雑で、筆記体自体への加工も必要となるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭55-085882号公報
【文献】実開昭61-056091号公報
【文献】特開2000-108585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、持ち替えなくても筆記体の先端を繰り出すことができ、かつ、構造を簡素化することができる複式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複式筆記具は、後端に摺動コマがそれぞれ連結された複数の筆記体と、各筆記体を軸方向に挿通可能な挿通部を有し、挿通部の外周面に螺旋状の案内溝が設けられた回転軸体と、回転軸体を回転可能に内部に収納し、挿通部に対応する領域に、軸方向に延在されたスライド孔が設けられると共に、挿通部に対応する領域よりも後端側の内周面に、各摺動コマが摺動可能な円筒カムが設けられた胴体部と、スライド孔に対して軸方向に移動可能に配設され、案内溝に挿入される案内突起部を有する移動部材とを備え、移動部材をスライド孔に沿って移動させることにより、胴体部の内周面に沿って回転軸体と共に各筆記体が回動し、各摺動コマが円筒カムに沿って摺動することにより、各筆記体が円筒カムに沿って軸方向に移動し、各筆記体のうちの1つの先端が選択的に他の先端よりも先端側に突出されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複式筆記具によれば、回転軸体を胴体部の内部に回転可能に収納し、回転軸体の挿通部に各筆記体を挿通させると共に、挿通部の外周面に螺旋状の案内溝を設け、かつ、胴体部の挿通部に対応する領域にスライド孔を設けると共に、胴体部の挿通部に対応する領域よりも後端側の内周面に、各摺動コマが摺動可能な円筒カムを設け、スライド孔に配設した移動部材の案内突起部を案内溝に挿入するようにしたので、移動部材をスライド孔に沿って軸方向に移動させることにより、螺旋状の案内溝に従い、胴体部の内周面に沿って回転軸体と共に各筆記体を回動させることができる。これにより、各摺動コマが円筒カムに沿って摺動し、各筆記体が円筒カムに沿って軸方向に移動して、各筆記体のうちの1つの先端を選択的に他の先端よりも先端側に突出させることができる。よって、筆記具を持ち替えなくても、親指等で移動部材を軸方向に移動させることにより、簡単に筆記体の先端を繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る複式筆記具の外観構成を表わす図である。
図2図1に示した複式筆記具の構成を分解して表す図である。
図3図1に示した複式筆記具の移動体の構成を分解及び拡大して表す図である。
図4図1に示した複式筆記具のスライド孔及び移動部材の構成を拡大して表す図である。
図5図1に示した複式筆記部の後端側の内部構成を表す図である。
図6図5に示した円筒カムの構成を取り出して表す図である。
図7図5に示した円筒カムの位置関係を説明する図である。
図8図1に示した複式筆記具の動作を説明する図である。
図9図1に示した複式筆記具の動作を説明する他の図である。
図10図1に示した複式筆記具の動作を説明する更に他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る複式筆記具1の外観構成を表わすものである。図2は、複式筆記具1を分解して表す構成図である。図3は、図1に示した移動部材40の構成を分解及び拡大して表すものである。図4は、図1に示したスライド孔31及び移動部材40の構成を拡大して表すものである。図5は、複式筆記具1の後端側の内部構成を表すものである。図6は、図5に示した円筒カム32の構成を取り出して表すものである。図7は、図5に示した円筒カムの位置関係を説明するものである。
【0011】
この複式筆記具1は、後端に摺動コマ11がそれぞれ連結された複数の筆記体10と、各筆記体10を軸方向に挿通可能な挿通部21を有する回転軸体20と、回転軸体20を回転可能に内部に収納する胴体部30とを備えている。
【0012】
各筆記体10は、例えば、軸方向に延在された本体部12をそれぞれ有し、後端には摺動コマ11がそれぞれ連結され、先端にはペン先13がそれぞれ設けられている。筆記体10としては、例えば、ボールペン筆記体、及び、シャープペンシル筆記体が挙げられ、いずれか1種により構成してもよく、混合して構成してもよい。筆記体10の数は特に限定されず、任意に設定することができる。なお、本実施の形態では、3本のボールペン筆記体を有する場合を例に挙げて説明する。
【0013】
各筆記体10は、例えば、ばね等の付勢部材14により後端側に個別にそれぞれ付勢されている。各付勢部材14は、例えば、先端が回転軸体20に係止され、後端が各摺動コマ11に当接されることにより、各筆記体10を個別に付勢している。なお、図示しないが、各付勢部材14の後端は、各筆記体10の後端側の外周に、外側に突出する突起を設け、この突起に係止するようにしてもよい。
【0014】
回転軸体20の挿通部21は、各摺動コマ11を後端側に突出させて各本体部12を軸方向に挿通可能とされている。挿通部21には、例えば、各本体部12を個別に挿通させる複数の挿通孔が設けられている。各挿通孔は、例えば、軸方向に延在され、周方向に沿って並べて設けられている。挿通部21の後端側には、例えば、各筆記体10の軸方向への移動を補助するための補助部材23が軸方向に延在して設けられている。補助部材23の外周面には、例えば、各筆記体10に個別に対応して、複数の補助溝24が軸方向にそれぞれ設けられている。また、挿通部21の外周面には、螺旋状の案内溝25が設けられている。
【0015】
胴体部30は、例えば、中空状であり、内部に回転軸体20を収納する収納部が設けられている。胴体部30には、回転軸体20の挿通部21に対応する領域に、軸方向に延在されたスライド孔31が設けられている。スライド孔31には、軸方向に移動可能に、移動部材40が配設されている。
【0016】
移動部材40は、例えば、スライド孔31を介して胴体部30の外側に配置される外側部材41と、スライド孔31を介して胴体部30の内側に配置される内側部材42とを連結することにより構成されている(図3参照)。外側部材41及び内側部材42の幅は、例えば、スライド孔31の幅よりも広く構成されている。外側部材41には、例えば、スライド孔31の幅よりも狭い連結突起部43が設けられている。内側部材42には、例えば、連結突起部43に対応して、連結突起部43を篏合させる連結孔44が設けられており、連結突起部43を連結孔44に篏合させることにより、外側部材41と内側部材42は連結されるようになっている。
【0017】
また、移動部材40は、回転軸体20の案内溝25に挿入される案内突起部45を有している。案内突起部45は、例えば、内側部材42の内側に突出して設けられている。案内突起部45の大きさは、例えば、案内溝25に対応した大きさに形成されている。これにより、移動部材40がスライド孔31に沿って軸方向に移動されると、案内突起部45の移動に伴い、案内突起部45の位置に案内溝25が対応するように回転軸体20が胴体部30の内周面に沿って回動するように構成されている。例えば、移動部材40をスライド孔31の中央部から後端側X1に移動させると、回転軸体20は螺旋状の案内溝25に応じて一方向Y1に回動し、移動部材40をスライド孔31の中央部から先端側X2に移動させると、回転軸体20は螺旋状の案内溝25に応じて一方向とは反対方向Y2に回動するようになっている(図4参照)。なお、図4では、後述するグリップ部52を省略して表している。
【0018】
また、胴体部30の挿通部21に対応する領域よりも後端側の内周面には、各摺動コマ11が摺動可能な円筒カム32が設けられている(図5,6参照)。円筒カム32は、例えば、後端側の内周面が内側に突出されることにより形成された段差部により構成されている。円筒カム32は、例えば、周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部32Aと、カム平坦部32Aの両端側から先端側に尖形するように延設された一対のカム斜面32Bと、一対のカム斜面32Bの先端が繋がる所定幅のカム頂部32Cと、少なくともカム平坦部32Aの両端部に設けられ、摺動コマ11が着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部32Dとを有している。カム平坦部32Aと一対のカム斜面32Bとは、例えば、カム平坦部32Aの両端部において、カム底部32Dを介して繋がっている。なお、図5では、後述する後端カバー体53を省略して表している。図6では、円筒カム32の構成を取りして表している。
【0019】
カム底部32Dの数は、例えば、筆記体10の数に応じて決定され、筆記体10の数から1を引いた数のカム底部32Dが設けられる。例えば、筆記体10の数が3本の場合には、2個のカム底部32Dがカム平坦部32Aの両端部にそれぞれ設けられる。また、例えば、筆記体10の数が4本の場合には、2個のカム底部32Dがカム平坦部32Aの両端部にそれぞれ設けられ、1個のカム底部32Dがカム平坦部32Aの中央部に設けられる。カム頂部32C、及び、各カム底部32Dを軸方向から見たときの間隔は、それぞれ等間隔となるようにすることが好ましい。カム底部32Dが2個の場合には、例えば図7に示したように、軸中心Oとカム頂部32Cとを結ぶ線A1、及び、軸中心と各カム底部32Dとを結ぶ線A2,A3を軸方向から見たときに、各線のなす角が120°となるようにすることが好ましい。
【0020】
これにより、移動部材40をスライド孔31に沿って移動させて回転軸体20を回動させると、各摺動コマ11が円筒カム32に沿って摺動し、各筆記体10が円筒カム32に沿って軸方向に移動して、カム頂部32Cにより先端側に押圧された1つの筆記体10の先端が先端側に突出されるようになっている。
【0021】
また、各筆記体10のうちいずれが先端側から選択的に突出されるかは、スライド孔31に対する移動部材40の位置に応じて決定されている。例えば、筆記体10が3本の場合であれば、移動部材40をスライド孔31の先端側に移動させたときには、1つの筆記体10が先端側から突出され、移動部材40をスライド孔31の中央部に移動させたときには、他の1つの筆記体10が先端側から突出され、移動部材40をスライド孔31の後端側に移動させたときには、残りの1つの筆記体10が先端側から突出されるようになっている。すなわち、スライド孔31に対する移動部材40の位置と、先端側から突出される筆記体10とは、個別に対応して決定されている。
【0022】
この複式筆記具1は、外側を覆うカバー体50を備えていてもよい。カバー体50は、例えば、先端部を覆う先端カバー体51と、スライド孔31に対応する部分を覆うグリップ部52と、後端部を覆う後端カバー体53とを有している。グリップ部52には、スライド孔31に対応して、グリップスライド孔54が設けられている。移動部材40の外側部材41は、例えば、グリップスライド孔54及びスライド孔31を介して、グリップ部52の外側に配置されている。
【0023】
この複式筆記具1は、例えば、次のようにして用いられる。図8から図10は、複式筆記具1の動作を説明するための図である。また、図8から図10において、(A)は移動部材40の位置を表し、(B)は各筆記体10の位置を表している。図8から図10では、カバー体50を省略して表している。この複式筆記具1では、移動部材40をスライド孔31に沿って移動させることにより、各筆記体10のうちの1つの先端が選択的に他の先端よりも先端側に突出される。例えば、筆記体10が3本の場合には、まず、図8に示したように、移動部材40をスライド孔31の先端側に位置させると、各筆記体10のうちの1つ(第1の筆記体10Aと言う)が円筒カム32のカム頂部32Cにより押圧されて、先端のペン先(第1のペン先13Aと言う)が先端側から突出される。
【0024】
次に、図9に示したように、移動部材40をスライド孔31の中央部に移動させると、案内突起部45の位置に案内溝25が対応するように、回転軸体20が胴体部30の内周面に沿って一方向に回動すると共に、各筆記体10も一方向に回動する。これに伴い、カム頂部32Cにより先端側に押圧されていた第1の筆記体10Aは、一方のカム底部32Dの方に移動して先端側への押圧が解除され、付勢部材14により後端側に付勢される。これにより、円筒カム32のカム頂部32Cに位置していた1つの摺動コマ11(第1の摺動コマ11Aと言う)が円筒カム32に沿って摺動し、一方のカム斜面32Bを介して一方のカム底部32Dに移動する。第1の筆記体10Aは円筒カム32に沿って軸方向に後端側に移動する。
【0025】
また、他方のカム底部32Dに位置していた他の1つの摺動コマ11(第2の摺動コマ11Bと言う)は、回転軸体20に回動に伴い、円筒カム32に沿って摺動し、他方のカム斜面32Bを介してカム頂部32Cに移動する。これにより、他方のカム底部32Dに位置していた他の1つの筆記体10(第2の筆記体10Bと言う)は、円筒カム32に沿って軸方向に先端側に移動し、カム頂部32Cにより先端側に押圧されて先端のペン先(第2のペン先13Bと言う)が先端側から突出される。
【0026】
次いで、図10に示したように、移動部材40をスライド孔31の後端側に移動させると、案内突起部45の位置に案内溝25が対応するように、回転軸体20が胴体部30の内周面に沿って一方向に回動すると共に、各筆記体10も一方向に回動する。これに伴い、カム頂部32Cにより先端側に押圧されていた第2の筆記体10Bは、一方のカム底部32Dの方に移動して先端側への押圧が解除され、付勢部材14により後端側に付勢される。これにより、円筒カム32のカム頂部32Cに位置していた第2の摺動コマ11Bが円筒カム32に沿って摺動し、一方のカム斜面32Bを介して一方のカム底部32Dに移動する。第2の筆記体10Bは円筒カム32に沿って軸方向に後端側に移動する。
【0027】
また、他方のカム底部32Dに位置していた残りの1つの摺動コマ11(第3の摺動コマ11Cと言う)は、回転軸体20に回動に伴い、円筒カム32に沿って摺動し、他方のカム斜面32Bを介してカム頂部32Cに移動する。これにより、他方のカム底部32Dに位置していた残りの1つの筆記体10(第3の筆記体10Cと言う)は、円筒カム32に沿って軸方向に先端側に移動し、カム頂部32Cにより先端側に押圧されて先端のペン先(第3のペン先13Cと言う)が先端側から突出される。
【0028】
また、移動部材40をスライド孔31の後端側から中央部、又は、中央部から先端側に移動させると、案内突起部45の位置に案内溝25が対応するように回転軸体20が胴体部30の内周面に沿って一方向とは反対方向に回動し、上述したように動作して、第2の筆記体10B、又は、第1の筆記体10Aがカム頂部32Cにより先端側に押圧されて先端の第2のペン先13B、又は、第1のペン先13Aが先端側から突出される。このように、スライド孔31に対する移動部材40の位置を変えることにより、位置に対応する筆記体10の1つが先端側から突出される。
【0029】
このように本実施の形態によれば、回転軸体20を胴体部30の内部に回転可能に収納し、回転軸体20の挿通部21に各筆記体10を挿通させると共に、挿通部21の外周面に螺旋状の案内溝25を設け、かつ、胴体部30の挿通部21に対応する領域にスライド孔31を設けると共に、胴体部30の挿通部21に対応する領域よりも後端側の内周面に、各摺動コマ11が摺動可能な円筒カム32を設け、スライド孔31に配設した移動部材40の案内突起部45を案内溝25に挿入するようにしたので、移動部材40をスライド孔31に沿って軸方向に移動させることにより、螺旋状の案内溝25に従い、胴体部30の内周面に沿って回転軸体20と共に各筆記体10を回動させることができる。これにより、各摺動コマ11が円筒カム32に沿って摺動し、各筆記体10が円筒カム32に沿って軸方向に移動して、各筆記体10のうちの1つの先端を選択的に他の先端よりも先端側に突出させることができる。よって、筆記具を持ち替えなくても、親指等で移動部材40を軸方向に移動させることにより、簡単に筆記体10の先端を繰り出すことができる。
【0030】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、各構成要素について具体的に説明したが、各構成要素の具体的な構造や形状は異なっていてもよい。更に、上述した構成要素を全て備えていなくてもよく、他の構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…複式筆記具、10…筆記体、10A…第1の筆記体、10B…第2の筆記体、10C…第3の筆記体、11…摺動コマ、11A…第1の摺動コマ、11B…第2の摺動コマ、11C…第3の摺動コマ、12…本体部、13…ペン先、13A…第1のペン先、13B…第2のペン先、13C…第3のペン先、14…付勢部材、20…回転軸体、21…挿通部、23…補助部材、24…補助溝、25…案内溝、30…胴体部、31…スライド孔、32…円筒カム、32A…カム平坦部、32B…カム斜面、32C…カム頂部、32D…カム底部、40…移動部材、41…外側部材、42…内側部材、43…連結突起部、44…連結孔、45…案内突起部、50…カバー体、51…先端カバー体、52…グリップ部、53…後端カバー体、54…グリップスライド孔
【要約】
【課題】持ち替えなくても筆記体の先端を繰り出すことができ、かつ、構造を簡素化することができる複式筆記具を提供する。
【解決手段】複式筆記具1は、後端に摺動コマ11がそれぞれ連結された複数の筆記体10と、各筆記体10を軸方向に挿通可能な挿通部21を有し、挿通部21の外周面に螺旋状の案内溝25が設けられた回転軸体20と、回転軸体20を回転可能に内部に収納し、挿通部21に対応する領域に、軸方向に延在されたスライド孔31が設けられると共に、挿通部21に対応する領域よりも後端側の内周面に、各摺動コマ11が摺動可能な円筒カム32が設けられた胴体部30と、スライド孔31に対して軸方向に移動可能に配設され、案内溝25に挿入される案内突起部45を有する移動部材40とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10