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特許7444514強力サポート設置・盛替え補助器具とその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】強力サポート設置・盛替え補助器具とその使用方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 25/06 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
E04G25/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023186420
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520512052
【氏名又は名称】株式会社鳶浩工業
(74)【代理人】
【識別番号】100208731
【弁理士】
【氏名又は名称】真々田 忠博
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩二
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0096553(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0082966(KR,A)
【文献】実開平05-038183(JP,U)
【文献】特開平04-060058(JP,A)
【文献】特開平06-049997(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162829(JP,U)
【文献】特開2009-062729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 25/00-25/08
E04G 9/00-19/00
E04G 23/08
E04G 21/24-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬用ハンドルと回動可能な一対のゴムタイヤを備えた台座上に、
摺動して上下方向に伸縮可能に配置した上柱管と下柱管を備え、
前記上柱管は最上部にサポート上部おさえ、前記下柱管は上部にサポート固定クランプと最下部にサポート下部おさえを備えた、
強力サポート設置・盛替え補助器具。
【請求項2】
前記下柱管は上部ラチェット機構及びハンドルを有する下部ラチェット機構を備え、
前記下部ラチェット機構の前記ハンドルを持ち上げることで前記上柱管を上方へ押し上げて固定し、前記下部ラチェットを最下位まで下げることで前記下部ラチェットを解除すると共に前記上部ラチェットを解除することにより前記上柱管を下降させることからなる、請求項1に記載の強力サポート設置・盛替え補助器具。
【請求項3】
前記下部ラチェット機構は下部ラチェットハンドルを下げることでラチェットを解除し、前記上部ラチェット機構はハンドル目通し孔にシノ工具を差し込み、前記シノ工具を下げることでラチェットを解除することからなる、
請求項2に記載の強力サポート設置・盛替え補助器具。
【請求項4】
前記上柱管は最上部に更に抜け止め・引っ掛けピンを備え、台座にはアンカー玉収納ポケット、運搬ハンドル付け根には工具差しを有する、
請求項3に記載の強力サポート設置・盛替え補助器具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の強力サポート設置・盛替え補助器具を用い、
建てた状態の強力サポートに前記強力サポート設置・盛替え補助器具を建てかけ、
前記強力サポートの下位管の上部をサポート固定クランプで締付けて固定し、
前記強力サポートの上部をサポート上部おさえ、下部をサポート下部おさえで押さえ、抜け止め・引っ掛けピンで強力サポートの上柱を固定して強力サポートと強力サポート設置・盛替え補助器具とを一体化し、
運搬用ハンドル側に傾斜させてゴムタイヤを回動させて強力サポートを運搬することからなる、
前記強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法。
【請求項6】
請求項5に記載された強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法にしたがって強力サポートを所定位置まで運搬するにあたり、
前記上部ラチェット機構と前記下部ラチェット機構のラチェットを解除して強力サポート設置・盛替え補助器具の長さを縮め、これにより強力サポートの上位管を下位管内に収納して長さを短く保持して運搬することからなる、
前記強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法。
【請求項7】
請求項1に記載の強力サポート設置・盛替え補助器具を用い、
一体化された前記強力サポートを建付け位置に配置し、
前記強力サポートと前記強力サポート設置・盛替え補助器具が一体化した状態のままで、前記強力サポートの接地用底板を床スラブに固定することからなる、
前記強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法。
【請求項8】
請求項2~4のいずれかに記載の強力サポート設置・盛替え補助器具を用い、
一体化された前記強力サポートを建付け位置に配置し、
前記強力サポートと前記強力サポート設置・盛替え補助器具が一体化した状態のままで、前記強力サポートの接地用底板を床スラブに固定することからなる、
前記強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法。
【請求項9】
請求項8に記載された強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法を用いて強力サポートを床スラブに固定した後、
前記下部ラチェットハンドルを持ち上げることで前記強力サポート設置・盛替え補助器具の前記上柱管を上方へ伸ばすと共に強力サポート上位管も上方へ伸ばし、
前記強力サポートの係止用ピンで前記強力サポートの上位管を仮固定し、
次いで前記強力サポート設置・盛替え補助器具のサポート固定クランプを解除して前記強力サポートから隔離し、強力サポートの回転操作用ハンドルを用いて上位管の高さを微調整し、所定の補強強度まで強力サポートを伸長させたのちに、天井スラブに天板を固定することからなる
前記強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の解体工事現場において、解体重機などの重量物を支える強力サポートを、設置・盛替え、すなわち解体工事の進展に伴って下の階へ移し替え、必要な場所にこれを設置する作業を安全かつ容易に行うための補助器具とその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やデパート等の多層構造を有する大型高層ビルを解体工事する際には、その最上階又はその下階の床スラブに解体用重機を搬入し、上階から下階へ順次解体する工事が行われる。このような解体工事の場合、解体用の重機や、解体作業によって生じた解体物等の荷重を、既存建物の床スラブが支えることになる。しかし、床スラブの強度がこれらの荷重を支えることができない場合には、解体作業を安全に遂行するためには、床スラブの垂直方向の補強が必要となる。
【0003】
このような場合、床スラブが崩壊するのを防ぐための補強材としては、例えば特許文献1に記載されているような強力サポートと呼ばれる仮設支柱が使用される。これは、解体重機が解体作業を行う階から下の何階分かの床スラブを、多数の鋼製の強力サポートにより支持し、過大な荷重を既存の躯体フレームへ分散するものである。そして、上の階の解体終了後に取り外した強力サポートを、順次下の階へ盛替えて設置し高層ビル全階の解体を行っている。
【0004】
設置される強力サポートの設置間隔や本数は既存建物の床強度を考慮して決定されるが、通常は、補強が必要なフロアにおいては床スラブ6mに1本程度で、120cm程度の間隔で強力サポートが設置され、建物の床面積にもよるが1フロアに1000本以上を建てることが、通常は行われている。そして、このような補強は、重機が解体作業を行うフロアの下の3階分のフロアが対象となることが多い。
そして、これらの強力サポートは、建物解体作業の進行に伴い、解体の終わった階から順次下の階へ盛替えと設置が行われるため、例えば10階建の建物の場合、延べで1万本分の盛替えと設置作業が行われることになる。
【0005】
従来、これらの強力サポートの盛替えと設置作業は人力により行われてきた。しかし、使用される強力サポートは、長さが最大長さで326~606cm、重さで49~80kgあり、その運搬は作業員一人が1本を、或いは上位管と下位管に分離して担いで運び、床スラブへの固定は二人一組でアンカーボルトを打ち付けていた。
これらの作業は作業員にとって重労働であり、建築業界全体での人手不足の問題もあって、作業負担の軽減が強く求められていた。
【0006】
強力サポートの盛替えや設置作業の作業負担軽減を行う技術は、ほとんど報告されておらず、作業員の人力で行うのが通常である。特許文献2には、建物の解体作業の進捗に伴い、強力サポートを下階の補強に転用し盛替えを行うための、荷下ろし垂直リフトに関する発明が記載されている。
この垂直リフトを利用すれば、上の階から下の階へ強力サポートの移動は容易にできるとしても、下階における強力サポート集積場所から強力サポートを運搬して必要箇所に設置する作業は、依然として作業員の人力によっておこなうしかない現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3162829号
【文献】特開2009-62729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、強力サポートの集積場所からこれを運搬して必要箇所に設置する盛替え作業をサポートする、簡単な構造の補助器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために提供する請求項1に係る強力サポート盛替え補助器具は、運搬用ハンドルと回動可能な一対のゴムタイヤを備えた台座上に、摺動して上下方向に伸縮可能に配置した上柱管と下柱管を備え、前記上柱管は最上部にサポート上部おさえ、前記下柱管は上部にサポート固定クランプと最下部にサポート下部おさえを備えた、強力サポート設置・盛替え補助器具である。
【0010】
また、請求項2~4の強力サポート設置・盛替え補助器具は、前記上柱管は上部ラチェット機構、前記下柱管はハンドルを有する下部ラチェット機構を備え、前記下部ラチェット機構の前記ハンドルを持ち上げることで前記上柱管を上方へ押し上げて固定し、前記下部ラチェットを最下位まで下げることで前記下部ラチャットを解除すると共に前記上部ラチェットを解除することにより前記上柱管を下降させることからなり(請求項2)、前記下部ラチェット機構は下部ラチェットハンドルを下げることでラチェットを解除し、前記上部ラチェット機構はハンドル目通し孔にシノ工具を差し込み、前記シノ工具を下げることでラチェットを解除することからなり(請求項3)、前記上柱管は最上部に更に抜け止め・引っ掛けピンを備え、台座にはアンカー玉収納ポケット、運搬ハンドル付け根には工具差しを有する(請求項4)。
【0011】
また、本発明における強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法は、請求項1~4に記載の強力サポート設置・盛替え補助器具を用い、建てた状態の強力サポートに前記強力サポート設置・盛替え補助器具を建てかけ、前記強力サポートの下位管の上部をサポート固定クランプで締付けて固定し、前記強力サポートの上部をサポート上部おさえ、下部をサポート下部おさえで押さえ、抜け止め・引っ掛けピンで強力サポートの上柱を固定して強力サポートと強力サポート設置・盛替え補助器具とを一体化し、運搬用ハンドル側に傾斜させてゴムタイヤを回動させて強力サポートを運搬することからなり(請求項5)、請求項5に記載された強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法を用いて強力サポートを所定位置まで運搬するにあたり、前記上部ラチェット機構と前記下部ラチェット機構のラチェットを解除して強力サポート設置・盛替え補助器具の長さを縮め、これにより強力サポートの上位管を下位管内に収納して長さを短く保持して運搬することからなり(請求項6)、請求項1~4に記載の強力サポート設置・盛替え補助器具を用い、一体化された前記強力サポートを建付け位置に配置し、前記強力サポートと前記強力サポート設置・盛替え補助器具が一体化した状態のままで、前記強力サポートの接地用底板を床スラブに固定することからなり(請求項7)、請求項7に記載された強力サポート設置・盛替え補助器具の使用方法を用いて強力サポートを床スラブに固定した後、前記下部ラチェットハンドルを持ち上げることで前記強力サポート設置・盛替え補助器具の前記上柱管を上方へ伸ばすと共に強力サポート上位管も上方へ伸ばし、前記強力サポートの係止用ピンで前記強力サポートの上位管を仮固定し、次いで前記強力サポート設置・盛替え補助器具のサポート固定クランプを解除して前記強力サポートから隔離し、強力サポートの回転操作用ハンドルを用いて上位管の高さを微調整し、所定の補強強度まで強力サポートを伸長させたのちに、天井スラブに天板を固定することからなる(請求項8)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の強力サポート設置・盛替え補助器具によれば、建物の解体により補強の必要のなくなったフロアの強力サポートに対し、上部フロアへの緊張力を緩めた状態で強力サポート設置・盛替え補助器具に固定・一体化できるので、強力サポートを上柱と下柱に分解することなくセットで運搬できる。このため、運搬後に再度強力サポートを組み立てる手間が省けるし、強力サポートの高さ調整を再度行う必要がない。また、強力サポートを所定箇所に運搬後に、強力サポート設置・盛替え補助器具と一体化した状態で安定的に立てておくことができるので、強力サポートが倒れないように保持するための要員が不要となり、強力サポートを床スラブに固定するために通常行われるアンカー打ちを、一人でおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の強力サポート設置・盛替え補助器具について、手押し車の進行方向の斜め前方から見た斜視図である。
図2】本発明の強力サポート設置・盛替え補助器具について、強力サポートと一体化した後に、手押し車の進行方向の斜め後方から見た斜視図である。
図3】は、強力サポート設置・盛替え補助器具の上柱管上部の斜視図であり、上柱管ラチェット機構の全体を示すものである。
図4】は、上柱管にある上部ラチェット機構の拡大図であり、上部ラチェット機構の構造を示す。
図5】は、強力サポート設置・盛替え補助器具の下柱管下部の斜視図であり、下部ラチェット機構の全体を示すものである。
図6】は、下柱管にある下部ラチェット機構の拡大図であり、下部ラチェット機構の構造を示す。
図7】強力サポート設置・盛替え補助器具を用いて強力サポートを一体化した様子を示す。
図8】強力サポート設置・盛替え補助器具を用いて強力サポートを運搬する状態を示す。
図9】強力サポートを床スラブに固定する様子を示す。
図10】強力サポートを所定長さ伸長させた様子を示す。
図11】強力サポートの全体像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(強力サポート)
本発明で設置・盛替えの対象とする強力サポートは、一般に、図11に示されるものである。接地用底板100aを床スラブに固定し、上位管400を上方に伸ばして所定長さのところで係止用ピン500、600で固定し、その後に、回転操作用ハンドル300aを回転させてネジ筒200の回転上昇に伴って上位管400を上昇させて天井スラブに圧接させて天板400aを固定し、これにより上の階の天井スラブを支えて補強する。
補強に使用する階の高さや補強の強度に応じて、最大長さ326~606cm、重量で49~80kgの型式の物が選択されて使用されている。
【0015】
(強力サポート設置・盛替え補助器具の全体像)
図1図2は、本発明の強力サポート設置・盛替え補助器具の全体像を示すもので、図1が手押し車の進行方向の斜め前方からみた斜視図であり、上柱管1は殆どが下柱管2内に収納されている。図2はその進行方向の斜め後方からみた斜視図で、強力サポート設置・盛替え補助器具の上柱管1が伸長されている状態を示す。
いずれの図においても、下柱管2の上部には上部ラチェット機構3、中央部には下部ラチェット機構4が設置されており、下部ラチェット機構4には下部ラチェットハンドル4aが付けられている。また、下柱管2の中央部にはサポート固定クランプ5、下部にはサポート下部おさえ6、上柱管1の上部にはサポート上部おさえ7が設置されている。
台座8には運搬用ハンドル9、ゴムタイヤ10、アンカー玉収納ポケット11、工具差し17が設けられている。
なお、以下の図の強力サポートにおいては、簡便のため、下位管上部に形成されたネジ山の記載は省略している。
【0016】
(上部と下部のラチェット機構)
上部ラチェット機構については図3、4、下部ラチェット機構については図5、6に詳細を示している。
図5図6に示すように、この強力サポート設置・盛替え補助器具の上柱管を上方に伸長させる場合には、下部ラチャット機構4のハンドル4aを持ち上げて上柱管を上昇させることにより行う。下部ラチャット機構4のハンドル4aはラチェット構造になっているので、上柱管1を所望長さまで上方に伸ばして固定することができる。この上柱管1を下降させるためには、まず下部ラチェット機構4のハンドル4aを下げることで下部ラチェット4を解除し(図6)、次いで、上部ラチェット機構3についてはハンドル目通し穴13にシノ工具を差し込んで上部ラチェット3を解除すると上柱管1は下降する(図4)。上部ラチェット機構3の解除をシノ工具により行うのは、安全性の面から不用意なラチェット解除を防ぐためである。
【0017】
以下では、強力サポート設置・盛替え補助器具を用いて強力サポートを設置・盛替える作業を、その工程順に、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(強力サポートとの一体化)
図7は、強力サポート設置・盛替え補助器具を強力サポートと一体化した状態を示す。直立している強力サポートに強力サポート設置・盛替え補助器具を建てかける。そして、下柱管2の中央部にあるサポート固定クランプ5により強力サポートを締付けると共に、サポート上部押え7及びサポート下部押え8により強力サポートを固定する。更に抜け止め・管引っ掛けピン12を差し込むことにより、強力サポートを安定的に保持することができる。
【0019】
実際の解体工事現場では、解体の終わった階の強力サポートの緊張を緩め、立ったままの状態の強力サポートに対して強力サポート設置・盛替え補助器具を一体化することにより行うことができる。その後、解体工事の終わった階の高さに設定された強力サポートを、その上柱管を下柱管内に収納させて長さを短くしたままの状態で、上柱管と下柱管とを分離することなく一体化して運搬する。
このため、下の階に移動させた強力サポートに対して、分離された上柱管と下柱管とを再度組み立てることが必要なくなるので、強力サポートの設置・盛替え作業の作業効率を上げることができる。
【0020】
(強力サポートの運搬)
天井スラブの補強から解体された階の強力サポートは、荷下ろし場(床スラブに穴を開け下階へロープ等を使って荷下ろしする開口部)に集積され、次の工程で使用される階へ荷下ろしされる。荷下ろしされた強力サポートは、荷受け場所から新たな設置場所へ、強力サポート設置・盛替え補助器具を用いて運ばれる。
その運搬に当たっては、図8に示すように、強力サポート設置・盛替え補助器具を強力サポートと一体化した後に、ゴムタイヤ10を軸に運搬用ハンドル9側に強力サポート設置・盛替え補助器具を傾けると、ゴムタイヤ10の回転により楽に強力サポートを運搬することができる。
【0021】
従来は作業員が担いで運搬していたことに比較すれば、圧倒的に少ない作業負担で、強力サポートを運搬することができる。
また、強力サポートの運搬に当たっては、強力サポート設置・盛替え補助器具の長さを縮めることで、強力サポートの下位管中に上位管を収納して運ぶことが、安全面からみて好ましい。
【0022】
これまでは、強力サポートは上記した通り49~80kgの重量があるので、上位管と下位管をセットで運ぶことは困難で、別々に分離して運搬することが多かった。しかし、強力サポート設置・盛替え補助器具を用いることで、強力サポートを上位管と下位管に分けることなくセットで運搬できる。また、セットのまま運搬できるので、再設置する際の組立作業を省略でき、強力サポートの設置・盛替え作業の効率を上げることができる。
【0023】
(強力サポートの設置)
強力サポートの設置は、強力サポートを強力サポート設置・盛替え補助器具と一体化した状態でおこなうことができる(図9を参照)。
すなわち、強力サポートを一体化した強力サポート設置・盛替え補助器具が所定箇所に到着したら、強力サポート設置・盛替え補助器具を起こして強力サポートを所定箇所に立てる。そこで、強力サポートの接地用底板100aの四隅にハンマードリルで削穴し、その穴にアンカーボルトを打ち込むことで固定して設置を行う。
【0024】
従来、この作業は作業員二人でペアになり、一方の作業員が強力サポートが倒れないように保持し、その間に他方の作業員がアンカーボルトを打ち込んでいた。本発明の強力サポート設置・盛替え補助器具を用いれば、強力サポートは安定的に立てて保持することができるので、一人の作業員が強力サポートの設置工程を担当することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
また、アンカー玉、ハンマー、シノ工具は運搬用ハンドルの付け根にある工具差し17(柄の部分を差して収納する筒)に収納可能となっている。
【0025】
(強力サポートによる補強)
所定箇所に設置した強力サポートによる補強も、強力サポート設置・盛替え補助器具を用いて簡単に行うことができる。
すなわち、抜け止め・引っ掛けピン12により強力サポートの上位管は強力サポート設置・盛替え補助器具の上柱管1と一体化しているので、強力サポート設置・盛替え補助器具の下部ラチェットハンドル4aを押し上げると、強力サポート設置・盛替え器具の上柱管1の上昇とともに強力サポートの上位管も上昇する。図10に示されるように、強力サポートの上位管を所定高さまで上昇させた後に、強力サポートの係止用ピン500、600を用いて強力サポートの上位管400を固定する。その後に、強力サポート設置・盛替え補助器具のサポート固定クランプ5を解除して強力サポートから隔離し、強力サポートの回転操作用ハンドル300aを用いてネジ筒200を回転させる。これにより強力サポートの高さを微調整することで、適度の強度で床スラブ又は梁を支えて補強することができる。
【0026】
(補強解除と設置・盛替え)
必要階の補強が済んだところで、強力サポートの緊張を緩め、上部及び下部ラチャット機構を解除することにより、次の場所への設置・盛替え作業に入ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 上柱管
2 下柱管
3 上位ラチェット機構
4 下部ラチェット機構
4a 下部ラチェットハンドル
5 サポート固定クランプ
6 サポート下部おさえ
7 サポート上部おさえ
8 台座
9 運搬用ハンドル
10 ゴムタイヤ
11 アンカー玉収納ポケット
12 抜け止め・引っ掛けピン
13 ハンドル目通し孔
14 ねじりコイルばね
15 ラチェット爪
16 ピン
17 工具差し
【要約】
【課題】
強力サポートの集積場所からこれを運搬して必要箇所に設置する設置又は盛替え作業をサポートする、簡単な構造の補助器具を提供することを目的とする。
【解決手段】
運搬用ハンドルと回動可能な一対のゴムタイヤを備えた台座上に、摺動して上下方向に伸縮可能に配置した上柱管と下柱管を備え、前記上柱管は最上部にサポート上部おさえ、前記下柱管は上部にサポートクランプと最下部にサポート下部おさえを備えた、強力サポート設置・盛替え補助器具により行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11