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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】検査装置およびワイヤハーネス製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H01R43/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020063035
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163595
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 匡志
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220212(JP,A)
【文献】特開平01-107933(JP,A)
【文献】特開平02-030081(JP,A)
【文献】特開2017-112027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0143578(US,A1)
【文献】特開平07-045350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0101570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタに電線の端子が正常に挿入されているか否かを検査する検査装置であって前記電線の端子が挿入された前記コネクタを前記電線の引張方向に静止するように把持するコネクタ把持部と前記電線の引張方向と直交する方向から前記電線を把持する電線把持部と、を有する検査装置と、
第2コネクタに端子が挿入されていない第2電線を第2把持力で把持し、前記第2コネクタに前記第2電線の端子を挿入可能に設けられる第2電線把持部と、
を備え、
前記コネクタ把持部又は前記電線把持部は、前記コネクタまたは前記電線を把持した状態で前記電線に引張負荷を印加可能に設けられ、
前記検査装置は、前記コネクタ把持部又は前記電線把持部が前記コネクタまたは前記電線を把持する把持力と、前記コネクタまたは前記電線から前記コネクタ把持部又は前記電線把持部が受ける引張方向の力と、を検出可能に配置される力触覚センサ素子を有し、
前記検査装置は、前記第2コネクタに対する前記第2電線の端子の挿入の正否を検査し、
前記力触覚センサ素子は、前記第2把持力、および前記第2電線の端子が前記第2コネクタに挿入される場合の前記第2電線から前記第2電線把持部に作用する挿入方向の力を検出する、
ワイヤハーネス製造装置
【請求項2】
前記力触覚センサ素子は、前記電線把持部が前記電線を把持する把持方向と直交する方向、かつ前記引張方向と直交する方向に前記電線把持部が前記電線から作用する力をさらに検出する、
請求項1に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項3】
前記電線把持部は、前記電線を挟んで対向して配置される2つの面を有し、
前記力触覚センサ素子は、前記2つの面が夫々前記把持力で押圧し合った場合に、前記2つの面のうちの片方の面に前記電線から作用する力を検出可能に配置される、
請求項1又は2に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項4】
前記力触覚センサ素子は前記電線との間に所定部材を介して配置される、
請求項1から3のうち何れか一項に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項5】
前記検査装置は、前記コネクタ把持部又は前記電線把持部が前記電線に前記引張負荷を印加させた場合に、前記力触覚センサ素子により検出された力に基づき、前記コネクタに前記電線の端子が正常に挿入されているか否かを判定する判定部を更に有する
請求項1から4のうち何れか一項に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項6】
前記判定部は、所定時刻において前記力触覚センサ素子により検出された前記引張方向の力に基づいて前記判定を行う、
請求項5に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項7】
前記判定部は、第2所定時刻からの所定期間において前記力触覚センサ素子により継続的に検出された前記引張方向の力に基づいて前記判定を行う、
請求項5に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項8】
前記判定部は、前記力触覚センサ素子により検出された前記把持力に基づいて前記判定を行う、
請求項5から7のうち何れか一項に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項9】
前記電線把持部は、手動により前記電線を把持可能に設けられ、前記電線を把持した状態で手動により前記引張負荷を前記電線に印加可能に設けられる、
請求項5から8のうち何れか一項に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項10】
前記力触覚センサ素子は、検出可能な荷重方向が3方向である力センサ素子を含む、
請求項1から9のうち何れか一項に記載のワイヤハーネス製造装置
【請求項11】
前記力触覚センサ素子により検出された力に基づき、前記第2コネクタに対する前記第2電線の端子の挿入の正否を判定する第2判定部を更に備える、
請求項1から10のうち何れか一項に記載のワイヤハーネス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置およびワイヤハーネス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の端部に圧着された圧着端子がコネクタのハウジングに挿入された状態のワイヤハーネスが開発されている(例えば特許文献1-4)。また、これらの文献には、圧着端子がコネクタのハウジングに正常に挿入されているか否かを検査する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-180851号公報
【文献】特開2004-185852号公報
【文献】特開2017-126412号公報
【文献】特許第5338685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1-2に係る検査技術は、コネクタ保持部の他に複数の部材やバネを経由してコネクタへの電線の挿入の正否を検査している。よって、検査装置の構造は複雑となる。また、コネクタのハウジングに挿入された電線を手動で引っ張って検査する場合、電線を引っ張る力にばらつきが生じるものと考えられる。よって、引っ張り力が過大であるとコネクタ挿入部が劣化する不都合が生じる可能性がある。また、逆に、引っ張り力が過少であると例えば特許文献1においては、コネクタホルダの変位が過少となる。よって、コネクタホルダの移動を検知する位置検出部のスイッチが入らず、その結果として挿入状態が正常であったとしても異常があると誤判定される可能性がある。よって、再検査が必要となることがある。そこで、手動で正しく検査するためには、把持力が一定以上であることを確認することが考えられる。しかしながら、電線の把持を手動で行う場合、作業者の感覚に任せて電線に力を作用させることになる。よって、正確な把持力を電線に作用させたか否かを確認することは困難と考えられる。よって、このような検査技術による検査結果の精度は低いと考えられる。
【0005】
本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、電線の端部に圧着された圧着端子がコネクタのハウジングに正常に挿入されているか否かの検査の精度を向上させ、かつ構造が簡易な検査技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち本発明の一側面に係る検査装置は、コネクタに電線の端子が正常に挿入されているか否かを検査する検査装置であって、前記電線の端子が挿入された前記コネクタを前記電線の引張方向に静止するように把持するコネクタ把持部と、前記電線の引張方向と直交する方向から前記電線を把持する電線把持部と、を備え、前記コネクタ把持部又は前記電線把持部は、前記コネクタまたは前記電線を把持した状態で前記電線に引張負荷を印加可能に設けられ、前記コネクタ把持部又は前記電線把持部が前記コネクタまたは前記電線を把持する把持力と、前記コネクタまたは前記電線から前記コネクタ把持部又は前記電線把持部が受ける引張方向の力と、を検出可能に配置される力触覚センサ素子を有する。
【0008】
当該構成によれば、把持力が触覚センサ素子によって検出される。よって、コネクタ把持部またはコネクタ又が所定の把持力でコネクタまたは電線を実際に把持しているか確認することができる。よって、例えば作業者の検査の習熟度が不足しているために、電線を把持する力が弱く、引張負荷が正しく電線に印加されないことは防止される。また、電線を引っ張った時に電線からコネクタ把持部又は電線把持部に作用する引張方向の力だけではなく、把持力を含めて合否判定を行うことができる。よって、検査精度は向上する。
【0009】
また、当該構成によれば、電線を引っ張った時にコネクタまたは電線からコネクタ把持部又は電線把持部に作用する引張方向の力を簡易な構造により検出することができる。よって、コネクタまたは電線からコネクタ把持部又は電線把持部に作用する引張方向の力に部品同士の摩擦や摺動抵抗、部品の劣化等による荷重ロスが混ざることは抑制される。よって、コネクタまたは電線からコネクタ把持部又は電線把持部に作用する引張方向の力の検出精度は向上する。よって、検査精度は向上する。また、構造が簡易となるため、検査装置の製造が容易となる。
【0010】
また、当該構成によれば、把持力と引張負荷を制御することにより、コネクタ・電線・端子の種類に応じて電線を引っ張る力を簡易に変更することができる。つまり、コネクタ・電線・端子の種類に応じて検査装置を作り直すことは抑制されるため、ワイヤハーネスの製造ラインの構築に要する費用は節減される。また、コネクタ・電線・端子の種類に応じてコネクタまたは電線からコネクタ把持部又は電線把持部に作用する引張方向の力の大きさに関する判定基準を変更することで、コネクタ・電線・端子の種類の変更に簡易に対応して検査を行うことができる。
【0011】
また、当該構成によれば、コネクタ把持部又は電線把持部によりコネクタ又は電線は把持される。そして、コネクタ把持部又は電線把持部は、電線に引張負荷を印加させることで、電線を引っ張ることができる。よって、引張負荷が例えば装置によって制御される場合、手動で電線を引っ張って電線がコネクタのハウジングに正常に挿入されているか否かを検査する場合と比較して、電線を引っ張る力の大きさのばらつきは抑制される。よって、検査精度は向上する。
【0012】
上記一側面に係る検査装置において、前記力触覚センサ素子は、前記電線把持部が前記電線を把持する把持方向と直交する方向、かつ前記引張方向と直交する方向に前記電線把持部が前記電線から作用する力をさらに検出してもよい。
【0013】
当該構成によれば、電線が電線把持部の中央から外れて把持されていることを検出することができる。よって、電線の把持位置を電線把持部の中央に修正することができる。よって、電線に対して所望の通りの把持力及び引張負荷を作用させることができる。よって、検査精度は向上する。
【0014】
上記一側面に係る検査装置において、前記電線把持部は、前記電線を挟んで対向して配置される2つの面を有し、前記力触覚センサ素子は、前記2つの面が夫々前記把持力で押圧し合った場合に、前記2つの面のうちの片方の面に前記電線から作用する力を検出可能に配置されてもよい。
【0015】
当該構成によれば、装置をより簡易な構造とすることができる。
【0016】
上記一側面に係る検査装置において、前記力触覚センサ素子は前記電線との間に所定部材を介して配置されてもよい。
【0017】
当該構成によれば、電線を把持する際に電線と接触することにより生じる衝撃から力触覚センサ素子を保護することができる。よって、力触覚センサ素子の故障は防止されるため、検査に影響が及ぶことは抑制される。また、所定部材の形状を電線の把持が容易な形状へと変更するができる。よって、少ない把持力であっても効率的に電線の把持が可能となる。よって、把持力を生成する検査装置の動力は節減される。
【0018】
上記一側面に係る検査装置において、前記コネクタ把持部又は前記電線把持部が前記電線に前記引張負荷を印加させた場合に、前記力触覚センサ素子により検出された力に基づき、前記コネクタに前記電線の端子が正常に挿入されているか否かを判定する判定部を更に備えてもよい。
【0019】
当該構成によれば、人間の感覚に頼らず合否判定を行うことができる。よって、検査の安定性は向上する。
【0020】
上記一側面に係る検査装置において、前記判定部は、所定時刻において前記力触覚センサ素子により検出された前記引張方向の力に基づいて前記判定を行ってもよい。
【0021】
コネクタに対して正しく端子が挿入された電線を引っ張る場合、コネクタまたは電線からコネクタ把持部または電線把持部に作用する引張方向の力は、瞬間的に上昇することになる。よって、当該構成によれば、コネクタに対して正しく挿入されている電線を検出することができる。
【0022】
上記一側面に係る検査装置において、前記判定部は、第2所定時刻からの所定期間において前記力触覚センサ素子により継続的に検出された前記引張方向の力に基づいて前記判定を行ってもよい。
【0023】
当該構成によれば、力触覚センサ素子により検出される引張方向の力の時間変化を含めて合否判定することができる。よって、瞬間的に上昇した引張方向の力に基づいて合否判定を行う場合と比較して誤検出は抑制される。
【0024】
上記一側面に係る検査装置において、前記判定部は、前記力触覚センサ素子により検出された前記把持力に基づいて前記判定を行ってもよい。
【0025】
当該構成によれば、引張方向の力だけではなく、把持力を含めて合否判定を行うことができる。よって、正しく電線を把持できていない状態で電線を引っ張ったことで電線がコネクタに正しく挿入されていないと誤判定されることは抑制される。よって、検査精度は向上する。
【0026】
上記一側面に係る検査装置において、前記電線把持部は、手動により前記電線を把持可能に設けられ、前記電線を把持した状態で手動により前記引張負荷を前記電線に印加可能に設けられてもよい。
【0027】
当該構成によれば、手動で電線を引っ張った場合に、適正な力で把持した状態で電線を引っ張ったか否かを人間の感覚に頼らず、力触覚センサ素子により検出された把持力および引張方向の力に基づいて判定することができる。よって、検査精度が向上する。
【0028】
上記一側面に係る検査装置において、前記力触覚センサ素子は、検出可能な荷重方向が3方向である力センサ素子を含んでもよい。
【0029】
当該構成によれば、引張負荷が印加された電線から把持部に作用する引張方向の力と、
把持力と、および把持方向と直交する方向及び引張方向と直交する方向の力との3方向の力を一つの素子で検出することができる。よって、検査装置をコンパクトにすることができる。
【0030】
また、本発明の一側面に係るワイヤハーネス製造装置は、第2コネクタに端子が挿入されていない第2電線を第2把持力で把持し、前記第2コネクタに前記第2電線の端子を挿入可能に設けられる第2電線把持部と、上記一側面に係る検査装置であって、前記第2コネクタに対する前記第2電線の端子の挿入の正否を検査する検査装置を備え、前記力触覚センサ素子は、前記第2把持力、および前記第2電線の端子が前記第2コネクタに挿入される場合の前記第2電線から前記第2電線把持部に作用する前記挿入方向の力をさらに検出してもよい。
【0031】
当該構成によれば、第2電線の端子が第2コネクタに挿入されることでワイヤハーネスを製造することができる。また、第2把持力が弱いと第2電線が第2コネクタに挿入される時に第2電線が第2把持部に対して滑ることになる。しかしながら、当該構成によれば、第2電線の端子が第2コネクタに挿入される場合の、第2把持力が力触覚センサ素子によって検出される。よって、第2把持力が所望の通り第2電線に作用しているか確認することができ、その結果として第2電線が第2把持部に対して滑ることは防止される。よって、ワイヤハーネスの製造不良は低減される。
【0032】
また、当該構成によれば、ワイヤハーネスが製造されることと並行して、第2電線から第2把持部に作用する挿入方向の力が検出されることで、第2電線が第2コネクタに正常に挿入されているか否かの挿入検査を行うことができる。よって、製造工数は削減可能となる。また、第2電線の端子が第2コネクタに挿入された後に、第2電線の端子が第2コネクタに正常に挿入されているか否かの引張検査を検査装置により行うことで、ワイヤハーネスの製造不良はより高精度に検出可能となる。また、挿入検査において不合格と判定された場合、引張検査を実施せずに検査対象のワイヤハーネスを製造不良と判定することができる。よって、引張検査まで含めた製造工数は短縮可能となる。また、第2把持部を第1把持部で代替する場合、ワイヤハーネスの製造、挿入検査、及び引張検査を一台の検査装置で行うことができる。このような検査装置は利便性が高いといえる。
【0033】
上記一側面に係るワイヤハーネス装置において、前記力触覚センサ素子により検出された力に基づき、前記第2コネクタに対する前記第2電線の端子の挿入の正否を判定する第2判定部を更に備えてもよい。
【0034】
当該構成によれば、人間の感覚に頼らず挿入の正否判定を行うことができる。よって挿入検査の精度は向上する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電線の端部に圧着された圧着端子がコネクタのハウジングに正常に挿入されているか否かの検査の精度を向上させ、かつ構造が簡易な検査技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施形態に係る検査装置の概要を示している。
図2図2は、電線の圧着端子がコネクタのハウジングに正常に挿入されているか否かを検査する場合の動作の概要を示している。
図3図3は、検査方法のフローチャートの一例を示している。
図4図4は、3軸センサユニットにより検出される力の時間的変化の一例である。
図5図5は、変形例に係る検査装置の概要を例示している。
図6図6は、電線がコネクタに正常に挿入される場合の3軸センサユニットにより検出される力の時間的変化の一例である。
図7図7は、変形例に係る検査装置の概要を例示している。
図8図8は、把持部材の変形例の一例を示している。
図9図9は、変形例に係る検査装置の概要を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0038】
§1 適用例
図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、実施形態に係る検査装置100の概要を示している。図1に示されるように検査装置100は、把持部2A、2Bを備える。把持部2A、2Bは、検査対象の電線52を挟み込んで把持可能なように配置されている。また、把持部2A、2Bは、電線52を挟み込んだ状態で+X方向へ移動可能である。把持部2A、2Bにより電線52を挟み込む力、すなわち電線52の引張方向と直交する方向に電線を把持する力(本開示の「把持力」の一例)と、電線52を挟み込んだ状態で+X方向へ移動する動力は、駆動部(図示しない)により制御される。このようにして、電線52の圧着端子がコネクタ50のハウジングに正常に挿入されているか否かを確認するための引っ張り検査を行うことができる。また、検査装置100は、3軸センサユニット4A、4Bを備える。3軸センサユニット4A、4Bは、検出可能な荷重方向が3方向である力センサ素子を備える。よって、3軸センサユニット4A、4Bは、電線52が+X方向に引っ張られている場合に、自身に作用するX方向、Y方向、及びZ方向の力を検出することができる。
【0039】
このような検査装置100によれば、把持部2A、2Bが電線52を把持する把持力が3軸センサユニット4A、4Bによって検出される。よって、把持部2A、2Bが所定の把持力で電線52を実際に把持しているか確認することができる。よって、電線52を把持する力が弱く、引張負荷が正しく電線52に印加されないことは防止される。また、電線52を引っ張った時に電線52から把持部2A、2Bに作用する引張方向の力だけではなく、把持力を含めて合否判定を行うことができる。よって、検査精度は向上する。
【0040】
§2 構成例
[ハードウェア構成]
図1は、本実施形態に係る検査装置100の概要を示している。なお、以降において、図1における縦方向をX方向、奥行き方向をY方向、横方向をZ方向とする。図1に示されるように検査装置100は、把持部2A、2Bを備える。把持部2A、2Bは、X方向に伸びる検査装置100の中心軸に対して対称に設けられている。なお、把持部2A、2Bは、本開示の「電線把持部」の一例である。
【0041】
また、検査装置100は、3軸センサユニット4A、4B(以降、3軸センサユニット4ともいう)を備える。3軸センサユニット4A、4Bは、把持部2A、2Bの夫々に設けられる。3軸センサユニット4A、4Bは、自身に作用するX方向、Y方向、及びZ方向の力を検出する。なお、3軸センサユニット4A、4Bのセンシング部は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサである。また、3軸センサユニット4A、4Bの互いに対向する部分は、XY方向に平行な
平面状の面3A、3Bを有する。そして、面3A、3Bに作用する力が3軸センサユニット4A、4Bによって検出される。3軸センサユニット4A、4Bのサイズは、電線52の寸法と比べて大き過ぎない小型であることが望ましい。すなわち、例えば3軸センサユニット4A、4Bのサイズは5mm以下が望ましい。なお、面3A、3Bは、本開示の「電線を挟んで対向して配置される2つの面」の一例である。
【0042】
また、検査装置100は、把持部2Aを+Z方向に、把持部2Bを-Z方向に移動させる動力を生成し、当該動力を把持部2A、2Bへ伝達する駆動部(図示しない)を備える。なお、駆動部としては例えばモータやロボットアームなどが挙げられる。このような動力が駆動部から把持部2A、2Bへ伝達されると、把持部2A、2Bは、3軸センサユニット4Aと3軸センサユニット4Bとの間に配置される電線52を所定の力で挟み込むことができる。また、駆動部は、把持部2A及び2BをX方向に移動させる動力も生成し、当該動力を把持部2A、2Bへ伝達する。このような動力が把持部2A、2Bに伝達されると、把持部2A、2Bは、把持している電線52を+X方向に引っ張ることができる。なお、Z方向の駆動力を生む駆動部と、X方向の駆動力を生む駆動部は、別々の駆動部であってもよい。
【0043】
また、検査装置100は、固定治具5を備える。固定治具5は、Z方向に対面する面15A、15Bを備える。また、固定治具5は、例えば自身をZ方向に貫通するボルト(図示しない)を有する。そして、ボルトが捻られることにより面15Aと面15Bとの間の距離が調節される。このような構造により、当該面15A、15Bの間に配置されるコネクタ50(詳細は後述する)を所定の力により挟み込むことでコネクタ50を固定治具5に固定することができる。なお、固定治具5は、本開示の「コネクタ把持部」の一例である。
【0044】
また、検査装置100は、CPU、メモリを備える。そして、メモリに記憶されるプログラムがロードされて実行されることにより、電線52の挿入の正否を判定する判定部を備える。検査装置100は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置を備える。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル形式の情報等が格納されている。また、検査装置100は、補助記憶装置に格納されたプログラムが主記憶装置の作業領域にロードされて実行されることで、電線52の挿入の正否を判定する判定部を備える。
【0045】
(動作例)
図2は、検査対象の電線52の圧着端子がコネクタ50のハウジングに正常に挿入されているか否かを検査する検査装置100の動作の概要を示している。また、図3は、検査方法のフローチャートの一例を示している。
【0046】
(S101)
ステップS101では、ハウジングに電線52の圧着端子が挿入されたコネクタ50が固定治具5の面15A、15Bの間に配置される。そして固定治具5のボルトが捻られることにより、コネクタ50が所定の力によりZ方向に挟み込まれる。このようにして検査装置100に対してコネクタ50は固定される。
【0047】
また、電線52を面3A、3Bにより所定の把持力で挟み込むために、駆動部により把持部2Aを+Z方向に、把持部2Bを-Z方向に移動させる動力が生成される。ここで、所定の把持力はコネクタの種類、電線や端子の種類などに応じて予め設定される。そして、当該動力が把持部2A、2Bに伝達される。このようにして、電線52は面3A、3BによりZ方向に挟み込まれる。また、所定の把持力で把持した状態は一定期間継続される
【0048】
ここで、3軸センサユニット4A、4Bでは、互いに押圧し合う面3A、3Bに作用するZ方向の力が検出される。そして、検出されたZ方向の力と所定の把持力との差異が許容範囲内であるか否かの判定が行われる。そして、検出されたZ方向の力と所定の把持力との誤差が許容範囲外である場合、駆動部は当該誤差が縮小する方向に動力を調整する。このような工程により、予め設定された所定の把持力により電線52を確実に挟み込むことができる。よって、検査精度は向上する。
【0049】
また、3軸センサユニット4A、4Bでは、面3A、3Bに作用するY方向の力が検出される。そして、検出されたY方向の力が許容範囲内であるか否かの判定が行われる。ここで、検出されたY方向の力が許容範囲外である場合、Y方向において電線52が面3A、3Bの中央から外れて把持されていることになる。このような場合、電線52の把持される位置が面3A、3Bの中心となるような修正を行う。このような修正を行うと、所望の把持力が電線52に作用することになるため検査精度は向上する。
【0050】
(S102)
ステップS102では、駆動部は、把持部2A及び把持部2BをX方向に規定の固定変位分(例えば1.5mm)移動させる動力を生成し、当該動力を把持部2A、2Bへ伝達
する。このような動力が把持部2A、2Bに伝達されると、電線52を把持している把持部2A、2Bは、電線52を+X方向に引っ張ることになる。また、把持部2A、2Bが電線52を引っ張っている場合、電線52から面3A、3Bに作用するX方向の力が3軸センサユニット4A、4Bによって検出される。なお、把持部2A、2Bから電線52への別の検査負荷の付与方法として、所定の引張荷重値になるまで徐々に引張荷重を上げていくような動力を駆動部は生成してもよい。
【0051】
(S103)
ステップS103では、把持部2A、2BがステップS101の初期状態から+X方向に1.5mm移動した時に、把持部2A、2Bの移動は停止される。なお、ステップS1
02において所定の引張荷重値になるまで徐々に引張荷重を上げていくような動力を駆動部が生成する場合、駆動部が生成する動力が所定の引張荷重となった場合に把持部2A、2Bの移動は停止されてもよい。
【0052】
(S104)
ステップS104では、3軸センサユニット4A、4Bにより検出された、電線52から面3A、3Bに作用するXYZ方向の力情報が記憶装置に記憶される。このように記憶装置にXYZ方向の力情報が記憶されることで、検査のトレーサビリティが向上する。よって、検査品質は向上する。また、判定部は、3軸センサユニット4A、4Bにより検出されXYZ方向の力情報を使用して電線52の挿入の正否を判定する。
【0053】
ところで、図4は、電線52の圧着端子が正常にコネクタ50のハウジングに挿入されている場合と挿入されていない場合において、3軸センサユニット4Aにより検出されるX方向の力Fxの時間的変化の一例を示している。(A)は、コネクタ50のハウジングに電線52の圧着端子が正常に挿入されている場合を示している。一方、(B)は、コネクタ50のハウジングに電線52の圧着端子が正常に挿入されていない場合を示している。
【0054】
図4(A)に示されているように、圧着端子がハウジングに正常に挿入されている場合、面3A、3Bで電線52を所定の把持力で挟み込んだ状態で+X方向に把持部2A、2Bを移動させると、3軸センサユニット4A、4Bにより検出されるFxは、ある時刻に
おいて急激に変化していることが認められる。このような理由として、正常に挿入できた場合はコネクタ50のランスに電線52の圧着端子の溝が引っかかることが挙げられる。よって電線52を引っ張っても電線52がコネクタ50から抜けないため、面3A、3Bにはコネクタ50側の向きに(-X方向)大きなせん断力Fxが作用することになる。また、このように急激に変化したX方向の力Fxは、把持部2A、2Bが+X方向に電線52を引っ張りながら移動している間も変化後の値を比較的維持していることが認められる。
【0055】
一方で、図4(B)に示されているように、圧着端子がハウジングに正常に挿入されていない場合、面3A、3Bで電線52を所定の把持力で挟み込んだ状態で+X方向に把持部2A、2Bを移動させると、3軸センサユニット4A、4Bにより検出されるX方向の力Fxは瞬間的にわずかに変化していることが認められる。このようにFxが瞬間的にわずかに変化する理由として、コネクタ50のランスへの電線52の引っ掛かりが不十分であり、電線52がコネクタ50から抜けることが考えられる。そして、このようにわずかに変化したX方向の力Fxは、把持部2A、2Bが+X方向に電線52を引っ張りながら移動するとすぐに元に戻ることが認められる。
【0056】
そこで、ステップS104における判定部は、把持部2A、2Bが電線52を+X方向に引張することを開始(S102)してから所定時間後のFxの瞬間的な変化の大きさが所定以上である場合に、電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定するものとする。
【0057】
または、判定部は、把持部2A、2Bが電線52を+X方向に引張(S102)した後、Fxが引張前の値よりも所定値以上離れた状態を継続的に維持している場合(本開示の「第2所定時刻」の一例)に、電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定してもよい。または、判定部は、把持部2A、2Bが電線52を+X方向に引張を開始(S102)してから所定時間以内(本開示の「第2所定時刻からの所定期間」の一例)にFxが所定の値を超えた場合、電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定してもよい。または、判定部は、把持部2A、2Bが電線52を引っ張る負荷が所定の値に到達するまでの間(本開示の「第2所定時刻からの所定期間」の一例)にFxが所定の値を超えた場合、電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定してもよい。
【0058】
また、判定部は、上記のようにFxの大きさにより電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定した場合であっても、Fzが所定の荷重値以上でない場合、又は所定の荷重範囲内でない場合には、電線52がコネクタ50に正常に挿入されていないと判定してもよい。なお、これらの判定基準は、記憶装置に予め記憶されておかれる。
【0059】
(S105)
ステップS105では、ステップS104において電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定部が判定した場合、コネクタ50に挿入された状態の電線52の引っ張り試験は合格と判定される。
【0060】
(S106)
ステップS106では、ステップS104において電線52がコネクタ50に正常に挿入されていないと判定部が判定した場合、コネクタ50に挿入された状態の電線52の引っ張り試験は不合格と判定される。
【0061】
[作用・効果]
上記のような検査装置100によれば、面3A、3Bが電線52を把持する把持力が3軸センサユニット4A、4BによってFzとして検出される。よって、面3A、3Bが所
定の把持力で電線52を実際に把持しているか確認することができる。よって、例えば作業者の検査の習熟度が不足しているために、電線52を把持する力が弱く、引張負荷が正しく電線52に印加されないことは防止される。また、電線52を引っ張った時に電線52から面3A、3Bに作用する引張方向の力Fxだけではなく、把持力に相当するFzを含めて合否判定を行うことができる。よって、検査精度は向上する。
【0062】
また、上記のような検査装置100によれば、電線52を引っ張った時に電線52から面3A、3Bに作用する引張方向の力Fxを簡易な構造により検出することができる。よって、電線52から面3A、3Bに作用する引張方向の力Fxに部品同士の摩擦や摺動抵抗等による荷重ロスが混ざることは抑制される。よって、電線52が引っ張られた時の引張方向の力Fxの検出精度は向上する。また、構造が簡易となるため、検査装置100の製造が容易となる。
【0063】
また、上記のような検査装置100によれば、把持力と引張負荷とが駆動装置により制御されているため、コネクタ50・電線52・端子の種類に応じて電線52を引っ張る力を簡易に変更することができる。つまり、コネクタ50・電線52・端子の種類に応じて検査装置100を作り直すことは抑制されるため、ワイヤハーネスの製造ラインの構築に要する費用は節減される。また、コネクタ50・電線52・端子の種類に応じて電線52から面3A、3Bに作用する引張方向の力Fxの大きさに関する判定基準を変更することで、コネクタ50・電線52・端子の種類の変更に簡易に対応して検査を行うことができる。
【0064】
また、上記のような検査装置100によれば、判定部により自動的に合否判定を行っている。よって、検査の安定性は向上する。また、コネクタ50に対して正しく端子が挿入された電線を引っ張る場合、電線52から面3A、3Bに作用する引張方向の力Fxは、図4(A)に示されるように瞬間的に上昇することになる。よって、所定時刻において通常時よりも変化の大きさが所定以上である場合に、電線52がコネクタ50に正常に挿入されていると判定することができる。また、3軸センサユニット4A、4Bにより検出される力は記憶装置に記憶される。よって、記憶装置に記憶された引張方向の力Fxの時間変化を含めて合否判定することができる。よって、所定時刻の引張方向の力Fxに基づいて合否判定を行う場合と比較して誤検出は抑制される。
【0065】
また、上記のような検査装置100によれば、固定治具5によりコネクタ50はX方向に固定される。また、面3A、3Bにより電線52は把持される。そして、面3A、3Bは、駆動装置から伝達された引張負荷を電線52に印加させることで、電線52を引っ張っている。よって、手動で電線52を引っ張って電線52がコネクタ50のハウジングに正常に挿入されているか否かを検査する場合と比較して、電線52を引っ張る力の大きさのばらつきは抑制される。よって、検査精度は向上する。
【0066】
また、上記のような検査装置100によれば、面3A、3Bに作用するXYZ方向の力Fx、Fy、Fzを一つの素子で検出することができる。よって、検査装置100をコンパクトにすることができる。
【0067】
なお、3軸センサユニット4は、把持部2A、2Bのうちの片方に設けられてもよい。そして、3軸センサユニット4は、面3A、3Bが夫々押圧し合った場合に、面3A、3Bのうちの片方の面に電線52から作用する力を検出してもよい。このような検査装置100によれば、装置をより簡易な構造とすることができる。
【0068】
§3 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点にお
いて本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0069】
<3.1>
図5は、変形例に係る検査装置100Aの概要を例示している。検査装置100Aは、検査装置100と同様の構成・機能を有する。ただし、変形例に係る検査装置100Aは、電線52Aの圧着端子が挿入されていないコネクタ50A(本開示の「第2コネクタ」の一例)を固定治具5が保持している。そして、面3A及び3Bにより電線52A(本開示の「第2電線」の一例)を所定の把持力(本開示の「第2把持力の一例」)で把持している。ここで、把持部2A、2B(本開示の「第2電線把持部」の一例)は、コネクタ50AからのX方向の距離が例えば1-10mm程度離れた場所に設けられる。このような
距離に把持部2A、2Bが設けられることで、電線52Aをコネクタ50Aへ挿入させる場合に電線52が屈曲して挿入が失敗することは抑制される。また、把持部2A、2Bとコネクタ50Aの端子が干渉することも抑制される。なお、把持部2A、2Bが設けられる位置は把持対象の電線52Aの太さなどに応じて変更されてもよい。そして、把持部2A、2Bが-X方向に移動するように駆動部は動力を生成して該把持部2A、2Bへ当該動力を伝達する。このような動作により、電線52Aの-X方向に位置する圧着端子はコネクタ50Aのハウジングに挿入される。そして、検査装置100Aに設けられる3軸センサユニット4A、4Bは、面3A、3Bにより電線52Aを把持する把持力(Fz)と、電線52Aの端子がコネクタ50Aに挿入される場合の電線52Aから面3A、3Bに作用する挿入方向の力(Fx)を検出する。
【0070】
図6は、電線52Aの圧着端子がコネクタ50Aのハウジングに正常に挿入される場合の3軸センサユニット4A、4Bにより検出されるFxの時間的変化の一例である。図6に示されるように、電線52Aが正常にコネクタ50Aに挿入される時、Fxの値が一旦減少し、再度上昇していることがわかる。そこで、検査装置100Aの判定部(本開示の「第2判定部」の一例)は、図6に示されるような特徴的なFxの波形が3軸センサユニット4A、4Bにより検出された場合に電線52Aがコネクタ50Aに正常に挿入されたと判定するものとする。加えて、判定部は、3軸センサユニット4A、4Bにより検出されたFz(第2把持力に相当)が所定値以上である場合に、電線52Aがコネクタ50Aに正常に挿入されたと判定する。
【0071】
[作用・効果]
このような検査装置100Aによれば、電線52Aの端子がコネクタ50Aに挿入されることでワイヤハーネスを製造することができる。また、面3A、3Bにより電線52Aを掴む把持力が弱いと、電線52Aがコネクタ50Aに挿入される時に電線52Aが面3A、3Bに対して滑ることになる。しかしながら、このような検査装置100Aによれば、電線52Aの端子がコネクタ50Aに挿入される場合の把持力が3軸センサユニット4A、4Bによって検出される。よって、把持力が所望の通り電線52Aに作用しているか確認することができ、その結果として電線52Aが面3A、3Bに対して滑ることは防止される。よって、ワイヤハーネスの製造不良は低減される。
【0072】
また、このような検査装置100Aによれば、電線52Aから面3A、3Bに作用する挿入方向の力が検出される。よって、ワイヤハーネスが製造されることと並行して、電線52Aがコネクタ50Aに正常に挿入されているか否かの挿入検査を行うことができる。よって、製造工数は削減可能となる。また、電線52Aの端子がコネクタ50Aに挿入された後に、電線52Aの端子がコネクタ50Aに正常に挿入されているか否かの引張検査を上記の実施形態のように検査装置100により行うことで、ワイヤハーネスの製造不良
はより高精度に検出可能となる。また、挿入検査において不合格と判定された場合、引張検査を実施せずに検査対象のワイヤハーネスを製造不良と判定することができる。よって、引張検査まで含めた製造工数は短縮可能となる。また、ワイヤハーネスの製造、挿入検査、及び引張検査を一台の検査装置で行うことができる。このような検査装置は利便性が高いといえる。なお、ワイヤハーネスの製造及び挿入検査を検査装置100Aで行い、挿入検査後の引張検査を検査装置100で行ってもよい。
【0073】
<3.2>
図7は、変形例に係る検査装置100Bの概要を例示している。変形例に係る検査装置100Bは、把持部2Aの+Z方向の先端に把持部材6Aを備える。同様にして、検査装置100Bは、把持部2Bの-Z方向の先端に把持部材6Bを備える。把持部材6A、6Bは、Z方向において対向するように設けられる。また、把持部材6A、6Bは、対向する部分にXY方向に平行な平面を有する。また、把持部材6A、6Bは、夫々3軸センサユニット4A、4Bを覆うように設けられる。
【0074】
また、図8は、把持部材の変形例の一例を示している。図8に示される把持部材6Cは、Z方向において電線52を把持する部分が凹凸状となっている。このような形状によれば、電線52を容易に把持することができる。なお、把持部材6A、6B、6Cは、本開示の「所定部材」の一例である。
【0075】
<作用・効果>
上記のような検査装置100Bによれば、3軸センサユニット4A、4Bは電線52と直接繰り返し接触することにより生じる衝撃から保護される。よって、3軸センサユニット4A、4Bの故障は防止されるため、検査に影響が及ぶことは抑制される。また、電線52から3軸センサユニット4A、4Bに実質的に直接力が作用するため、3軸センサユニット4A、4Bにより検出される情報が本来の検出値から減衰・劣化することは抑制される。また、把持部材6Cの場合、少ない把持力であっても効率的に電線52の把持が可能となる。よって、把持力を生成する検査装置100Bの動力は節減される。また、検査装置100Bは、上記のような把持部材を備える形態に限らず、3軸センサユニット4A、4Bに電線52から実質的に直接力が作用するような形態であればよい。
【0076】
<3.3>
図9は、変形例に係る検査装置100Cの概要を例示している。変形例に係る検査装置100Cは、コネクタ50を把持する固定治具5Aの面15A、15Bにそれぞれ3軸センサユニット4A、4Bが設けられる。また、固定治具5Aは、駆動部により制御された所定の動力が伝達されることにより、電線52の引張方向(-X方向)へ移動する。よって、電線52を-X方向に引っ張ることができる。このような検査装置100Cによっても、検査装置100と同様の効果を奏する。
【0077】
<その他変形例>
上記の検査装置100に設けられる判定部は、検査装置100とは異なる装置に設けられてもよい。つまり、検査装置100がネットワークに接続可能な通信モジュールを備え、ネットワークを介して検査装置100と接続するサーバに3軸センサユニット4A、4Bにより検出されたデータが送信されてもよい。そして、サーバに判定部が設けられ、サーバにおいてコネクタ50に対する電線52の挿入の正否判定が行われてもよい。また、把持力を判定する部分と引っ張り方向の力を判定する部分とが別々に実行されてもよい。
【0078】
また、上記の検査装置100では、電線52の把持と引張は自動的に実行されていたが、電線52の把持と引張は手動により実行されてもよい。例えば手袋のような検査治具により電線52の把持と引張が手動で行われてもよい。そして、検査治具に3軸センサユニ
ットが設けられ、3軸センサユニットによって検出された把持力(Fz)と引っ張り方向の力(Fx)が検出されてもよい。また、検査治具には通信モジュールが設けられ、3軸センサユニットによって検出された把持力と引っ張り方向の力の情報が無線通信によりサーバへ送信されてもよい。そして、サーバにおいて把持力と引っ張り方向の力に基づいて合否判定が実行されてもよい。このような検査治具によれば、手動で電線52を引っ張った場合に、適正な力で把持した状態で電線52を引っ張ったか否かを人間の感覚に頼らず、3軸センサユニット4A、4Bにより検出された把持力Fzおよび引張方向の力Fxに基づいて判定することができる。よって、検査精度が向上する。また、触覚センサ素子は上記に開示された態様に限定されない。
【0079】
また、電線52を把持する部分は、面3A、3Bのように面同士で挟む形態に限定されない。例えば、電線52と接触する把持部2A、2Bの部分は、点や線であってもよい。また、固定治具5は、コネクタ50をZ方向から挟む形態に限定されず、電線52を引っ張る時にコネクタ50をX方向に静止させることのできるような形態であればよい。
【0080】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【0081】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<付記1>
コネクタ(50)に電線(52)の端子が正常に挿入されているか否かを検査する検査装置(100、100A、100B、100C)であって、
前記電線(52)の端子が挿入された前記コネクタ(50)を前記電線(52)の引張方向に静止するように把持するコネクタ把持部(5)と、
前記電線(52)の引張方向と直交する方向から前記電線(52)を把持する電線把持部(2A、2B)と、を備え、
前記コネクタ把持部(5)又は前記電線把持部(2A、2B)は、前記コネクタ(50)または前記電線(52)を把持した状態で前記電線(52)に引張負荷を印加可能に設けられ、
前記コネクタ把持部(5)又は前記電線把持部(2A、2B)が前記コネクタ(50)または前記電線(52)を把持する把持力(Fz)と、前記コネクタ(50)または前記電線(52)から前記コネクタ把持部(5)又は前記電線把持部(2A、2B)が受ける引張方向の力(Fx)と、を検出可能に配置される力触覚センサ素子(4A、4B)を有する、
検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記2>
前記力触覚センサ素子(4A、4B)は、前記電線把持部(2A、2B)が前記電線(52)を把持する把持方向と直交する方向、かつ前記引張方向と直交する方向に前記電線把持部(2A、2B)が前記電線(52)から作用する力(Fy)をさらに検出する、
付記1に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記3>
前記電線把持部(2A、2B)は、前記電線(52)を挟んで対向して配置される2つの面(3A、3B)を有し、
前記力触覚センサ素子(4A、4B)は、前記2つの面(3A、3B)が夫々前記把持力(Fz)で押圧し合った場合に、前記2つの面(3A、3B)のうちの片方の面に前記電線(52)から作用する力(Fx、Fy、Fz)を検出可能に配置される、
付記1又は2に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記4>
前記力触覚センサ素子(4A、4B)は前記電線(52)との間に所定部材(6A、6B、6C)を介して配置される、
付記1から3のうち何れか一項に記載の検査装置(100B)。
<付記5>
前記コネクタ把持部(5)又は前記電線把持部(2A、2B)が前記電線(52)に前記引張負荷を印加させた場合に、前記力触覚センサ素子(4A、4B)により検出された力(Fx、Fy、Fz)に基づき、前記コネクタ(50)に前記電線(52)の端子が正常に挿入されているか否かを判定する判定部を更に備える、
付記1から4のうち何れか一項に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記6>
前記判定部は、所定時刻において前記力触覚センサ素子(4A、4B)により検出された前記引張方向の力(Fx)に基づいて前記判定を行う、
付記5に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記7>
前記判定部は、第2所定時刻からの所定期間において前記力触覚センサ素子(4A、4B)により継続的に検出された前記引張方向の力(Fx)に基づいて前記判定を行う、
付記5に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記8>
前記判定部は、前記力触覚センサ素子(4A、4B)により検出された前記把持力(Fz)に基づいて前記判定を行う、
付記5から7のうち何れか一項に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記9>
前記電線把持部(2A、2B)は、手動により前記電線(52)を把持可能に設けられ、前記電線(52)を把持した状態で手動により前記引張負荷を前記電線(52)に印加可能に設けられる、
付記5から8のうち何れか一項に記載の検査装置。
<付記10>
前記力触覚センサ素子(4A、4B)は、検出可能な荷重方向が3方向である力センサ素子を含む、
付記1から9のうち何れか一項に記載の検査装置(100、100A、100B、100C)。
<付記11>
第2コネクタ(50A)に端子が挿入されていない第2電線(52A)を第2把持力で把持し、前記第2コネクタ(50A)に前記第2電線(52A)の端子を挿入可能に設けられる第2電線把持部(2A、2B)と、
付記1から10のうち何れか一項に記載の検査装置(100A)であって、前記第2コネクタ(50A)に対する前記第2電線(52A)の端子の挿入の正否を検査する検査装置(100A)を備え、
前記力触覚センサ素子(4A、4B)は、前記第2把持力(Fz)、および前記第2電線(52A)の端子が前記第2コネクタ(50A)に挿入される場合の前記第2電線(52A)から前記第2電線把持部(2A、2B)に作用する前記挿入方向の力(Fx)をさらに検出する、
ワイヤハーネス製造装置(100A)。
<付記12>
前記力触覚センサ素子(4A、4B)により検出された力に基づき、前記第2コネクタ(50A)に対する前記第2電線(52A)の端子の挿入の正否を判定する第2判定部を更に備える、
付記11に記載のワイヤハーネス製造装置(100A)。
【符号の説明】
【0082】
2A、2B :把持部
3A、3B :面
4、4A、4B :3軸センサユニット
5 :固定治具
6A、6B、6C :把持部材
15A、15B :面
50、50A :コネクタ
52、52A :電線
100、100A、100B、100C :検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9