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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240228BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20240228BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F9/24 L
G01R31/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022058591
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023149823
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥大
(72)【発明者】
【氏名】萩野 貴大
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-279297(JP,A)
【文献】特開2000-026097(JP,A)
【文献】特開2010-150001(JP,A)
【文献】特開2020-181308(JP,A)
【文献】国際公開第2007/091491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 13/00-15/06
G01R 31/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットを持ち上げるためのフォークを備えたフォークリフトにおいて、
前記フォークリフトは、
所定の検出エリアに存在する物体を検出する測域センサと、
前記測域センサを制御する制御装置と、
前記測域センサと前記制御装置とを接続する複数本の信号線とを備え、
前記測域センサは、前記制御装置から1本の前記信号線のみを介して信号が入力されているときは、前記フォークリフトの一部が存在しないように設定されている第1エリアを前記検出エリアとして設定し、前記制御装置からいずれの前記信号線を介しても信号が入力されていないときは、前記フォークリフトの一部が存在するように設定されている第2エリアを前記検出エリアとして設定し、
前記制御装置は、1本の前記信号線のみに信号を出力したとき、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出しなかった場合は、その信号線は断線していないと判定し、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出した場合は、その信号線は断線していると判定する
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
パレットを持ち上げるためのフォークを備えたフォークリフトにおいて、
前記フォークリフトは、
所定の検出エリアに存在する物体を検出する測域センサと、
前記測域センサを制御する制御装置と、
前記測域センサと前記制御装置とを接続する複数本の信号線とを備え、
前記測域センサは、前記制御装置からいずれの前記信号線を介しても信号が入力されていないときは、前記フォークリフトの一部が存在しないように設定されている第1エリアを前記検出エリアとして設定し、前記制御装置から1本の前記信号線のみを介して信号が入力されているときは、前記フォークリフトの一部が存在するように設定されている第2エリアを前記検出エリアとして設定し、
前記制御装置は、1本の前記信号線のみに信号を出力したとき、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出した場合は、その信号線は断線していないと判定し、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出しなかった場合は、その信号線は断線していると判定する
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項3】
前記測域センサは、前記制御装置から2本以上の前記信号線を介して信号が入力されているときは、障害物を検出するために前記第1エリアよりも広く設定されている障害物検出用エリアを前記検出エリアとして設定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
前記測域センサは、
前記制御装置から前記信号線を介して信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力された信号の組み合わせに応じたエリアを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記エリアを前記検出エリアとして設定するエリア設定部と、を備え、
前記制御装置は、
前記信号線に信号を出力する出力部と、
前記出力部が1本の前記信号線のみに信号を出力したときに、前記測域センサによる前記フォークリフトの一部の検出結果に基づいて、その信号線が断線しているか否かを判定する断線判定部と、を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測域センサに接続された信号線の断線を検出するフォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測域センサを備えたフォークリフトが記載されている。このフォークリフトは、測域センサにより得られた距離データを観測点群に座標変換し、観測点群から直線を構成する点群を抽出し、直線を構成する点群を開口部(フォークの差込口)の幅に相当する距離で分断された3つの点群にクラスタリングし、3つの点群クラスタのうち左右または中央のクラスタから開口部の側壁の位置を検出し、開口部の側壁の2点からパレットの前面の左右中心位置を特定するように構成されている。
【0003】
ところで、複数本の信号線を介して入力される信号に基づいて、物体を検出する検出エリアが設定されるように構成された測域センサが知られている。このような構成によれば、測域センサの用途やフォークリフトの動作に応じて柔軟に検出エリアを切り替えることができる。
【0004】
しかしながら、断線検出機能を備えていない測域センサに接続された信号線が断線した場合は、所望の検出エリアが正しく設定されたか否かを判定することができず、誤った検出エリアに存在する物体を検出し、誤った検出結果に基づいてフォークリフトが動作するという問題があった。
【0005】
そのため、測域センサが断線検出機能を備えていない場合であっても、信号線が断線しているか否かを判定できるフォークリフトが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-178567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、測域センサが断線検出機能を備えていない場合であっても、測域センサに接続された信号線が断線しているか否かを判定できるフォークリフトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のフォークリフトは、パレットを持ち上げるためのフォークを備えたフォークリフトにおいて、前記フォークリフトは、所定の検出エリアに存在する物体を検出する測域センサと、前記測域センサを制御する制御装置と、前記測域センサと前記制御装置とを接続する複数本の信号線とを備え、前記測域センサは、前記制御装置から1本の前記信号線のみを介して信号が入力されているときは、前記フォークリフトの一部が存在しないように設定されている第1エリアを前記検出エリアとして設定し、前記制御装置からいずれの前記信号線を介しても信号が入力されていないときは、前記フォークリフトの一部が存在するように設定されている第2エリアを前記検出エリアとして設定し、前記制御装置は、1本の前記信号線のみに信号を出力したとき、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出しなかった場合は、その信号線は断線していないと判定し、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出した場合は、その信号線は断線していると判定することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明のフォークリフトは、パレットを持ち上げるためのフォークを備えたフォークリフトにおいて、前記フォークリフトは、所定の検出エリアに存在する物体を検出する測域センサと、前記測域センサを制御する制御装置と、前記測域センサと前記制御装置とを接続する複数本の信号線とを備え、前記測域センサは、前記制御装置からいずれの前記信号線を介しても信号が入力されていないときは、前記フォークリフトの一部が存在しないように設定されている第1エリアを前記検出エリアとして設定し、前記制御装置から1本の前記信号線のみを介して信号が入力されているときは、前記フォークリフトの一部が存在するように設定されている第2エリアを前記検出エリアとして設定し、前記制御装置は、1本の前記信号線のみに信号を出力したとき、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出した場合は、その信号線は断線していないと判定し、前記測域センサが前記フォークリフトの一部を検出しなかった場合は、その信号線は断線していると判定することを特徴とする。
【0010】
また、前記測域センサは、前記制御装置から2本以上の前記信号線を介して信号が入力されているときは、障害物を検出するために前記第1エリアよりも広く設定されている障害物検出用エリアを前記検出エリアとして設定することが好ましい。
【0011】
また、前記測域センサは、前記制御装置から前記信号線を介して信号が入力される入力部と、前記入力部に入力された信号の組み合わせに応じたエリアを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記エリアを前記検出エリアとして設定するエリア設定部と、を備え、前記制御装置は、前記信号線に信号を出力する出力部と、前記出力部が1本の前記信号線のみに信号を出力したときに、前記測域センサによる前記フォークリフトの一部の検出結果に基づいて、その信号線が断線しているか否かを判定する断線判定部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測域センサが断線検出機能を備えていない場合であっても、測域センサに接続された信号線が断線しているか否かを判定できるフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフトおよびパレットの側面図である。
図2】同実施形態に係るフォークリフトの一部、測域センサの検出エリア、およびパレットを示す平面図である。
図3】同実施形態に係るフォークリフトの概略構成を示すブロック図である。
図4】同実施形態に係る測域センサの検出エリアを示す模式図である。
図5】同実施形態に係る測域センサの検出エリアを示す模式図である。
図6】同実施形態に係るフォークリフトが行うセンタリング処理のフローチャートである。
図7】同実施形態に係るフォークリフトが行う断線判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るフォークリフトFを説明する。なお、図中の矢印で示す前後方向X、左右方向Y、および上下方向Zは、互いに直交する直線方向であって、フォークリフトFを基準としている。
【0015】
図1は、フォークリフトFおよびパレットPの側面図であり、図2は、フォークリフトFの一部(フォーク2)およびパレットPの平面図である。
図1に示すように、フォークリフトFは、車両本体1と、フォーク2と、リフト装置3と、サイドシフト装置4と、測域センサ5と、制御装置6と、信号線7,8とを備えた無人フォークリフトである。
【0016】
車両本体1は、パレットPおよび荷物Cを搬送するために、自車位置を推定するとともに所定の走行経路に沿って自律走行する。すなわち、車両本体1には、自車位置を推定する位置推定装置、および、自律走行する走行装置が含まれる。
【0017】
フォーク2は、パレットPを持ち上げるための爪である。フォーク2は、前後方向Xに延びており、パレットPに差し込まれる。図2に示すように、フォーク2は、左右方向Yにおいて間隔を空けて設けられた左右一対のフォーク2R,2Lにより構成されている。
【0018】
リフト装置3は、フォーク2を上下方向Zに移動(すなわち昇降)させる。リフト装置3は、フォーク2がパレットPに差し込まれる際に、フォーク2の前端とパレットPの差込口P1(図2参照)とが同一の水平面上に位置するように、フォーク2を上昇または下降させる。
【0019】
サイドシフト装置4は、フォーク2を左右方向Yに移動させる。サイドシフト装置4は、車両本体1の走行停止時に、フォーク2がパレットPに差し込み可能となるように、フォーク2を移動させる。
【0020】
測域センサ5は、レーザー光Lにより所定の検出エリアに存在する物体を検出し、その検出結果を出力する。本実施形態では、測域センサ5は、3つのリージョンR1~R3(図2参照)の検出エリアに存在する物体を同時に検出可能に構成されている。このような測域センサ5としては、例えば(株)北陽電機製の測域センサ(UST-05LN)を採用することができる。本実施形態では、測域センサ5は、制御装置6から1本の信号線7のみを介して信号が入力されているときは、フォークリフトFの一部が存在しないように設定されている第1エリアを第3リージョンR3の検出エリアとして設定し、制御装置6からいずれの信号線7を介しても信号が入力されていないときは、フォークリフトFの一部が存在するように設定されている第2エリアを第3リージョンR3の検出エリアとして設定するように構成されている。
【0021】
制御装置6は、測域センサ5を制御するとともに、測域センサ5による物体の検出結果に基づいて、車両本体1、リフト装置3、およびサイドシフト装置4を制御する。また、制御装置6は、測域センサ5との通信結果に基づいて、信号線7が断線しているか否かを判定する。具体的には、本実施形態では、制御装置6は、1本の信号線7のみに信号を出力したとき、測域センサ5が第3リージョンR3の検出エリアでフォークリフトFの一部を検出しなかった場合は、その信号線7は断線していないと判定し、測域センサ5がフォークリフトFの一部を第3リージョンR3の検出エリアで検出した場合は、その信号線7は断線していると判定する。
【0022】
信号線7は、測域センサ5と制御装置6とを接続し、検出エリアを指定するための信号を制御装置6から測域センサ5に伝達する。本実施形態では、フォークリフトFは、信号線7として、5本の信号線7A~7E(図3参照)を備えている。
【0023】
信号線8は、測域センサ5と制御装置6とを接続し、物体の検出結果を測域センサ5から制御装置6に伝達する。本実施形態では、フォークリフトFは、信号線8として、3本の信号線8A~8C(図3参照)を備えている。
【0024】
図2に示すように、パレットPは、フォーク2が差し込まれる2つの差込口P1と、パレットPの左端部と左右中心位置と右端部のそれぞれに設けられた複数のブロックP2とを有している。パレットPは、パレットPの左右中心位置に設けられるブロックP2を、2つの差込口P1を隔てる隔壁部P2Aとして備えている。
【0025】
図3に示すように、測域センサ5は、入力部51と、エリア設定部52と、記憶部53と、投光部55と、受光部56と、物体特定部57と、出力部58とを備えている。
【0026】
入力部51は、測域センサ5の検出エリアを設定するためのエリア設定信号を受信する。入力部51には、制御装置6から入力部51に接続されている信号線7を介して信号が入力される。本実施形態では、測域センサ5は、入力部51を構成する5つの入力端子51A~51Eを備えている。
【0027】
エリア設定部52は、入力部51に入力される信号の組み合わせに応じて、記憶部53に記憶されているエリアA1~A31を検出エリアとして設定する。入力部51に入力される信号の組み合わせと検出エリアとの関係を、次の表に示す。なお、表において、「入力信号1」~「入力信号5」は、「入力端子51A」~「入力端子51E」に入力される信号の状態を表しており、「オン」は信号が入力されている状態を表し、「オフ」は信号が入力されていない状態を表している。表に示すように、入力部51(入力端子51A~51E)に入力される信号の組み合わせに応じて、エリアA1~A31のいずれかが検出エリアとして設定される。
【表1】
【0028】
また、本実施形態では、エリア設定部52は、3つのリージョンR1~R3の検出エリアを設定するように構成されており、各リージョンR1~R3の検出エリアの設定は連携するように構成されている。すなわち、例えば、入力端子51Aに信号が入力されるとともに入力端子51B~51Eに入力されていないとき、エリア設定部52は、所定のエリアA1R1を第1リージョンR1の検出エリアとして設定し、所定のエリアA1R2を第2リージョンR2の検出エリアとして設定し、所定のエリアA1R3を第3リージョンR3の検出エリアとして設定する。
【0029】
記憶部53は、入力部51に入力された信号の組み合わせに応じた所定の検出エリア(エリアA1~A31)を記憶する。本実施形態では、記憶部53は、検出エリアとして、第1リージョンR1に属するエリアA1R1~A31R1と、第2リージョンR2に属するエリアA1R2~A31R2と、第3リージョンR3に属するエリアA1R3~A31R1を記憶している。エリアA1R1~A31R1,A1R2~A31R2は、図4を参照して説明し、エリアA1R3~A31R3は、図5を参照して説明する。
【0030】
投光部55は、フォークリフトFの前方を含む所定の範囲(例えば周囲270度の範囲)にレーザー光Lを投光し、受光部56は、その範囲に存在する物体で反射されたレーザー光Lを受光する。投光部55は、水平方向(走査方向)において所定のスキャン角度間隔(例えば0.5度)を空けてレーザー光Lの投光を繰り返す。
【0031】
物体特定部57は、投光部55で投光したレーザー光Lと受光部56で受光したレーザー光Lとの時間差や位相差に基づいて、レーザー光Lを投光した範囲に存在する物体の位置(測域センサ5を基準点とした物体までの距離および方向)を特定する。そして、物体特定部57は、物体の位置の特定結果と、エリア設定部52で設定された検出エリア(本実施形態では3つのリージョンR1~R3の検出エリア)とに基づいて、検出エリアに存在する物体を検出する。物体特定部57は、検出エリアでの物体の検出結果を、出力部58を介して制御装置6に送信する。
【0032】
出力部58は、測域センサ5による物体の検出結果を送信する。出力部58は、出力部58に接続されている信号線8に信号を出力する。本実施形態では、測域センサ5は、出力部58を構成する3つの出力端子58A~58Cを備えている。出力端子58Aは、第1リージョンR1の検出エリアでの物体の検出結果を出力し、出力端子58Bは、第2リージョンR2の検出エリアでの物体の検出結果を出力し、出力端子58Cは、第3リージョンR3の検出エリアでの物体の検出結果を出力する。
【0033】
また、図3に示すように、制御装置6は、記憶部61と、センサ制御部62と、出力部63と、入力部64と、フォーク制御部65と、断線判定部66と、報知部67とを備えている。
【0034】
記憶部61は、制御装置6の動作プログラムを記憶する。具体的には、記憶部61は、後述するセンタリング処理および断線処理判定を実行するためのプログラムを予め記憶している。
【0035】
センサ制御部62は、センタリング処理および断線処理判定において検出エリアを切り替えるために、測域センサ5を制御する。センサ制御部62は、測域センサ5で所望の検出エリアが設定されるようにエリア設定信号を生成して、出力部63を介して測域センサ5に送信する。すなわち、センサ制御部62は、エリア設定信号を出力部63から出力させる。なお、測域センサ5でエリアA31を検出エリアとして設定する場合は、エリア設定信号は、いずれの信号線7にも信号が出力されないことによって表される信号である。
【0036】
また、センサ制御部62は、断線判定処理を行う際にエリア設定信号として第1エリア設定信号を生成して送信する。第1エリア設定信号は、測域センサ5の第3リージョンR3の検出エリアとして、エリアA15R3,A23R3,A27R3,A29R3,A30R3を設定するためのエリア設定信号であり、1本の信号線7のみに信号が出力されることによって表される信号である。
【0037】
出力部63は、測域センサ5の検出エリアを設定するためのエリア設定信号を送信する。出力部63は、出力部63に接続されている信号線7に信号を出力する。本実施形態では、制御装置6は、出力部63を構成する5つの出力端子63A~63Eを備えている。
【0038】
入力部64は、測域センサ5による物体の検出結果を受信する。入力部64には、測域センサ5から入力部64に接続されている信号線8を介して信号が入力される。本実施形態では、制御装置6は、入力部64を構成する3つの入力端子64A~64Cを備えている。入力端子64Aには、第1リージョンR1の検出エリアでの物体の検出結果が入力され、入力端子64Bには、第2リージョンR2の検出エリアでの物体の検出結果が入力され、入力端子64Cには、第3リージョンR3の検出エリアでの物体の検出結果が入力される。
【0039】
フォーク制御部65は、第1リージョンR1および第2リージョンR2の検出エリアでのパレットPの検出結果に基づいて、フォーク2を制御する。具体的には、フォーク制御部65は、サイドシフト装置4を制御することで、サイドシフト装置4を介して、パレットPに対するフォーク2の左右方向Yの位置を調整する。
【0040】
断線判定部66は、第3リージョンR3の検出エリアでのフォークリフトFの一部の検出結果に基づいて、信号線7が断線しているか否かを判定する。具体的には、断線判定部66は、出力部63が1本の信号線7のみ(すなわち信号線7A~7Eのいずれか)に信号を出力したときに、測域センサ5による第3リージョンR3の検出エリアでのフォークリフトFの一部の検出結果に基づいて、その信号線7が断線しているか否かを判定する。
【0041】
報知部67は、断線判定部66による断線の判定結果に基づき、信号線7が断線していると判定されたとき、メンテナンス作業者に対して、視覚的または聴覚的な手段により信号線7が断線していることを報知する。
【0042】
信号線7A~7Eは、制御装置6の出力端子63A~63Eと測域センサ5の入力端子51A~51Eとを接続し、信号線8A~8Cは、測域センサ5の出力端子58A~58Cと制御装置6の入力端子64A~64Cとを接続している。
【0043】
図4(A)および(B)を参照して、第1リージョンR1に属するエリアA1R1~A31R1と、第2リージョンR2に属するエリアA1R2~A31R2とを説明する。なお、図4中において、エリアA1R1~A31R1,A1R2~A31R2は、前後方向Xの寸法と左右方向Yの寸法の比を変更して模式的に表されている。
【0044】
図4(A)は、1~31番目のエリアA1R1~A31R1を示しており、図4(B)は、1~31番目のエリアA1R2~A31R2を示している。図4において、基準線SLは、測域センサ5から前方に所定の基準量だけ離れた位置を示しており、中心線CLは、フォーク2R,2Lの左右中心位置を示している。また、4~30番目のエリアA4R1~A30R1,A4R2~A30R2を示す符号は省略されている。
【0045】
エリアA1R1~A31R1は、パレットPの隔壁部P2Aの右端を検出するための検出エリアである。図4(A)に示すように、1番目のエリアA1R1は、測域センサ5の前方かつ右方に広がっている検出エリアであり、2番目以降のエリアA2R1~A31R1は、1番目のエリアA1R1を左方に所定量ずつ拡大した検出エリアである。
【0046】
エリアA1R2~A31R2は、パレットPの隔壁部P2Aの左端を検出するための検出エリアである。図4(B)に示すように、1番目のエリアA1R2は、測域センサ5の前方かつ左方に広がっている検出エリアであり、2番目以降のエリアA2R2~A31R2は、1番目のエリアA1R2を右方に所定量ずつ拡大した検出エリアである。
【0047】
図5(A)および(B)を参照して、第3リージョンR3に属するエリアA1R3~A31R3を説明する。エリアA1R3~A31R3のうち、15番目のエリアA15R3、23番目のエリアA23R3、27番目のエリアA27R3、29番目のエリアA29R3、30番目のエリアA30R3、および31番目のエリアA31R3は、信号線7が断線しているか否かを判定するための断線判定用エリアであり、その他は、障害物を検出するための障害物検出用エリアである。
【0048】
図5(A)は、第3リージョンR3に属する障害物検出用エリアを示している。障害物検出用エリアは、フォーク2の近傍の領域となるように設定されている。なお、エリアA1R3~A14R3,A16R3~A22R3,A24R3~A26R3,A28R3は、同じ検出エリアであるため、図5(A)において、エリアA1R3以外の障害物検出用エリアを示す符号は省略されている。
【0049】
図5(B)は、第3リージョンR3に属する断線判定用エリアを示している。断線判定用エリアのうち、15番目、23番目、27番目、29番目、および30番目のエリアA15R3,A23R3,A27R3,A29R3,A30R3は、フォークリフトFの一部が必ず存在しないように設定されている第1エリアである。なお、エリアA15R3,A23R3,A27R3,A29R3,A30R3は、同じ検出エリアであるため、図5(B)において、エリアA30R3以外の第1エリアを示す符号は省略されている。また、断線判定用エリアのうち31番目のエリアA31R3は、フォークリフトFの一部(本実施形態ではフォーク2)が必ず存在するように設定されている第2エリアである。
【0050】
図6を参照して、センタリング処理の流れを説明する。センタリング処理は、パレットPにフォーク2が差し込まれていない状態において、フォーク2の前端と差込口P1とが同一の水平面上に位置するとともに、測域センサ5とパレットPが所定の基準量だけ離れているときに実行される。
まず、センサ制御部62は、作業変数である「n」の値を「1」にして、作業変数の初期化を行う(ステップS1)。
【0051】
次いで、センサ制御部62は、エリアAn(nは作業変数)を測域センサ5の検出エリアとして設定するための検出エリア設定信号を送信する(ステップS2)。センサ制御部62が検出エリア設定信号を送信することで、エリアAnに対応する信号が測域センサ5の入力部51に入力されるように、出力部63から信号線7に信号が出力される。
【0052】
次いで、フォーク制御部65は、測域センサ5が隔壁部P2Aの右端と左端を検出したか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、フォーク制御部64が、測域センサ5から入力端子64Aに入力される信号の有無に基づいて、測域センサ5が第1リージョンR1の検出エリアで物体(隔壁部P2Aの右端)を検出したか否かを判断し、測域センサ5から入力端子部64Bに入力される信号の有無に基づいて、測域センサ5が第2リージョンR2の検出エリアで物体(隔壁部P2Aの左端)を検出したか否かを判断する。
【0053】
なお、ステップS3での隔壁部P2Aの右端と左端を検出したか否かの判定は、隔壁部P2Aの右端と左端が同時に検出されたか否かの判定と同義ではない。すなわち、本センタリング処理において、隔壁部P2Aの右端および左端の一方のみが検出された場合は、その他方が検出されたときに、隔壁部P2Aの右端と左端を検出したと判定される。
【0054】
センサ制御部62は、隔壁部P2Aの右端と左端を検出していないとステップS3で判定された場合、「n」の更新を行う(ステップS4)。具体的には、センサ制御部62は、隔壁部P2Aの右端と左端の双方が検出されていない場合(右端と左端の一方のみが検出されている場合を含む)、「n」の値を「1」だけ増加させる。ステップS4で「n」の値が更新されると、ステップS2以降が繰り返される。したがって、エリアA1~Anで隔壁部P2Aの右端と左端が検出されていない場合は、エリアAn+1に対応するエリア設定信号が測域センサ5の入力部51に入力される。
【0055】
一方、フォーク制御部64は、隔壁部P2Aの右端と左端を検出しているとステップS3で判定された場合、隔壁部P2Aの左右中心位置を特定する(ステップS5)。具体的には、フォーク制御部64は、隔壁部P2Aの右端が検出された第1リージョンR1に属する検出エリアと隔壁部P2Aの左端が検出された第2リージョンR2に属する検出エリアとの中間部を、隔壁部P2Aの左右中心位置として特定する。
【0056】
そして、フォーク制御部64は、サイドシフト装置4を制御して、フォーク2R,2Lの左右中心位置が隔壁部P2Aの左右中心位置に近づくように、左右方向Yにおいてフォーク2を移動させる(ステップS6)。
【0057】
以上のようにして、センタリング処理では、センサ制御部62が右方および左方から隔壁部P2Aの右端と左端を検出するための検出エリア設定信号を送信し、隔壁部P2Aの右端と左端の検出結果に基づいてフォーク2R,2Lの左右中心位置が調整される。
【0058】
なお、1番目のエリアA1R1で隔壁部P2Aが検出された場合、エリアA1R1よりも右方に隔壁部P2Aの右端が存在する場合があるため、ステップS6の後にセンタリング処理が再び行われるように構成することが好ましい。同様に、1番目のエリアA1R2で隔壁部P2Aが検出された場合、エリアA1R2よりも左方に隔壁部P2Aの左端が存在する場合があるため、ステップS6の後にセンタリング処理が再び行われるように構成することが好ましい。
【0059】
次に、図7を参照して、断線判定処理の流れを説明する。断線判定処理は、例えば、上記のセンタリング処理の直前に実行される。
まず、センサ制御部62が、上述の第1エリアを測域センサ5の検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信する(ステップS11)。センサ制御部62が第1エリア設定信号を送信することで、出力部63からは1本の信号線7のみに信号が出力される。具体的には、次の箇条書きで示すように、信号線7A~7Eのうち1本の信号線に信号が出力され、他の信号線には信号が出力されない。
●センサ制御部62が、第1エリアであるエリアA30R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信した場合は、出力端子63Aから信号線7Aに信号が出力され、出力端子63B~63Eから信号線7B~7Eには信号が出力されない。
●センサ制御部62が、第1エリアであるエリアA29R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信した場合は、出力端子63Bから信号線7Bに信号が出力され、出力端子63A,63C~63Eから信号線7A,7C~7Eには信号が出力されない。
●センサ制御部62が、第1エリアであるエリアA27R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信した場合は、出力端子63Cから信号線7Cに信号が出力され、出力端子63A,63B,63D,63Eから信号線7A,7B,7D,7Eには信号が出力されない。
●センサ制御部62が、第1エリアであるエリアA23R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信した場合は、出力端子63Dから信号線7Dに信号が出力され、出力端子63A~63C,63Eから信号線7A~7C,7Eには信号が出力されない。
●センサ制御部62が、第1エリアであるエリアA15R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信した場合は、出力端子63Eから信号線7Eに信号が出力され、出力端子63A~63Dから信号線7A~7Dには信号が出力されない。
【0060】
次いで、断線判定部66は、測域センサ5が物体を検出したか否かを判断する(ステップS12)。具体的には、断線判定部66が、測域センサ5から入力端子64Cに入力される信号の有無に基づいて、測域センサ5が第3リージョンR3の検出エリアで物体(本実施形態ではフォーク2)を検出したか否かを判断する。
【0061】
第1エリアはフォークリフトFの一部が存在しないように設定されている検出エリアであるため、測域センサ5の検出エリアとして第1エリアが設定されている場合は、測域センサ5は、フォークリフトFの一部を検出することはない。したがって、断線判定部66は、測域センサ5が物体を検出しなかったとステップS12で判断した場合、ステップS11で信号の伝達に使用した信号線7(出力端子63A~63Eのうち信号を出力した端子に接続されている信号線7)が断線していないと判定する(ステップS13)。
【0062】
一方、第2エリアはフォークリフトFの一部が必ず存在するように設定されている検出エリアであるため、測域センサ5の検出エリアとして第2エリアが設定されている場合は、測域センサ5は、フォークリフトFの一部を検出する。この第2エリアは、いずれの信号線7を介しても測域センサ5に信号が入力されていないときに設定される検出エリアである。したがって、断線判定部66は、測域センサ5が物体を検出したとステップS12で判断した場合、ステップS11で出力端子63A~63Eのうち信号を出力した端子に接続されている信号線7が断線していると判定し(ステップS14)、報知部67は、信号線7が断線しているとの判定結果に基づき、断線を報知する(ステップS15)。
【0063】
以上のようにして、断線判定処理では、センサ制御部62が第1エリア設定信号を送信し、測域センサ5で物体が検出された場合に、信号線7が断線していると判定される。具体的には、次の箇条書きで示すように、信号線7A~7Eの断線が判定される。
●センサ制御部62がエリアA30R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信し、測域センサ5で物体が検出された場合は、信号線7Aが断線していると判定される。
●センサ制御部62がエリアA29R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信し、測域センサ5で物体が検出された場合は、信号線7Bが断線していると判定される。
●センサ制御部62がエリアA27R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信し、測域センサ5で物体が検出された場合は、信号線7Cが断線していると判定される。
●センサ制御部62がエリアA23R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信し、測域センサ5で物体が検出された場合は、信号線7Dが断線していると判定される。
●センサ制御部62がエリアA15R3を検出エリアとして設定するための第1エリア設定信号を送信し、測域センサ5で物体が検出された場合は、信号線7Eが断線していると判定される。
【0064】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)制御装置6が1本の信号線7のみに信号を出力したとき、測域センサ5が第3リージョンR3の検出エリア(エリアA30R3等)でフォークリフトFの一部を検出しなかった場合は、信号線7を介して制御装置6から測域センサ5に信号が正常に伝達されている場合であるため、信号の伝達に用いた信号線7が断線していないと判定できる。一方、測域センサ5が第3リージョンR3の検出エリア(エリアA31R3)でフォークリフトFの一部を検出した場合は、信号線7を介して制御装置6から測域センサ5に信号が正常に伝達されていない場合であるため、信号線7が断線していると判定できる。したがって、測域センサ5が断線検出機能を備えていない場合であっても、測域センサ5に接続された信号線7が断線しているか否かを判定できる。
【0065】
(2)測域センサ5は、制御装置6から2本以上の信号線7を介して信号が入力されているときは、障害物を検出するために第1エリア(エリアA15R3等)よりも広く設定されている障害物検出用エリア(エリアA1R3等)を検出エリアとして設定する。この構成によれば、信号線7の断線判定を行わないときは、広い検出エリアで障害物の検出を図ることができる。
【0066】
(3)隔壁部P2Aが検出された第1リージョンR1および第2リージョンR2の検出エリアに基づいて隔壁部P2Aの左右中心位置を特定することができる。このため、差込口P1や隔壁部P2Aの幅が予め設定されていない場合であっても、その隔壁部P2Aの左右中心位置を簡易な構成で特定できる。また、隔壁部P2Aの右端および左端の双方を同程度の精度で検出できるため、パレットPでのレーザー光Lの反射率が低い場合であっても、その隔壁部P2Aの左右中心位置を簡易な構成で特定できる。
【0067】
(4)第1リージョンR1および第2リージョンR2の検出エリアが徐々に拡大されることで、パレットPでのレーザー光Lの反射率が低い場合であっても、隔壁部P2Aを確実に検出できる。また、隔壁部P2Aの幅が大きい場合は、隔壁部P2Aの幅が小さい場合に比べて、隔壁部P2Aの右端および左端を速やかに検出できる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0069】
・測域センサ5が、制御装置6からいずれの信号線7を介しても信号が入力されていないときは、フォークリフトFの一部が存在しないように設定されている第1エリアを検出エリアとして設定し、制御装置6から1本の信号線7のみを介して信号が入力されているときは、フォークリフトFの一部が存在するように設定されている第2エリアを検出エリアとして設定するように構成されていてもよい。この場合、制御装置6は、1本の信号線7のみに信号を出力したとき、測域センサ5がフォークリフトFの一部を検出した場合は、その信号線7は断線していないと判定し、測域センサ5がフォークリフトFの一部を検出しなかった場合は、その信号線7は断線していると判定するように構成されていればよい。このような構成でも、上記(1)の効果を奏することができる。
【0070】
・測域センサ5の配置や検出エリアを変更してもよい。また、測域センサ5の配置または検出エリアを変更することで、例えば、断線判定用エリアのうち31番目のエリアA31R3が、フォーク2以外のフォークリフトFの一部(例えばリフト装置3)が必ず存在するように設定されていてもよい。
【0071】
・フォークリフトFは、オペレータの操作により走行および荷役可能に構成された有人フォークリフトであっても、動作モードを切り替えることで有人フォークリフトとしても無人フォークリフトとしても動作する有人無人兼用フォークリフトであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 車両本体
2 フォーク
5 測域センサ
6 制御装置
7,7A~7E 信号線
51 入力部
52 エリア設定部
53 記憶部
63 出力部
66 断線判定部
A15R3,A23R3,A27R3,A29R3,A30R3 エリア(第1エリア)
A31R3 エリア(第2エリア)
F フォークリフト
P パレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7