(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】蛍光体基板の製造方法、発光基板の製造方法及び照明装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240228BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240228BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240228BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240228BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/28 D
H01L23/12 501B
H01L23/48 Y
H01L33/00 H
(21)【出願番号】P 2018244547
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小西 正宏
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】中野 浩昌
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168559(JP,A)
【文献】特開2012-227292(JP,A)
【文献】特開2016-4770(JP,A)
【文献】特開2015-38963(JP,A)
【文献】国際公開第2006/038543(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/092598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/28
H01L23/12
H01L23/48
H01L33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に複数の発光素子が搭載される蛍光体基板の製造方法であって、
絶縁基板の一面に、前記複数の発光素子に接合される回路パターンを形成する形成工程と、
前記形成工程の後に、前記回路パターンにおける前記複数の発光素子に接合される部分以外の部分を覆うように前記絶縁基板の一面に蛍光体塗料を塗布する塗布工程と、
を含み、
前記塗布工程は、前記複数の発光素子に接合される部分を除き前記発光素子が搭載されたときに前記発光素子と前記絶縁基板との間の領域となる領域にも前記蛍光体塗料を塗布するとともに、電極対の上面が前記電極対の周囲に隣接して設けられた前記蛍光体塗料の上面よりも低くなるように、前記蛍光体塗料を塗布する、蛍光体基板の製造方法。
【請求項2】
前記回路パターンの厚み方向外側に向く面は、同一の平面とされている、
請求項1に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項3】
前記塗布工程は、スクリーン印刷法により行われる、
請求項1又は2に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項4】
一面に複数の発光素子が搭載される蛍光体基板の製造方法であって、
絶縁基板の一面に、前記複数の発光素子に接合される複数の電極対を有する回路パターンを形成する形成工程と、
前記形成工程の後に、前記回路パターンを覆うように前記絶縁基板の一面に蛍光体塗料を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に、前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料を除去し、前記複数の電極対の上面を露出させる露出工程と、
を含み、
前記塗布工程は、前記発光素子が搭載されたときに前記発光素子と前記絶縁基板との間の領域となる領域にも前記蛍光体塗料を塗布し、
前記露出工程では、前記複数の電極対上を除き前記発光素子と前記絶縁基板との間の領域に設けられた前記蛍光体塗料は除去せず、電極対の上面が前記電極対の周囲に設けられた前記蛍光体塗料の上面よりも低くなるように、前記蛍光体塗料を除去する、蛍光体基板の製造方法。
【請求項5】
前記形成工程の後かつ前記塗布工程の前に、前記回路パターンの厚み方向外側に向く面における前記上面以外の部分が前記上面よりも前記絶縁基板側に近くなるように、前記回路パターンをエッチングする工程、
を含む請求項4に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項6】
前記露出工程では、像が形成されているマスクを用いた写真現像法により前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料を除去し、前記上面を露出させる、
請求項4又は5に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項7】
前記露出工程では、レーザー照射装置により前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料にレーザー光を照射して除去し、前記上面を露出させる、
請求項4又は5に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項8】
前記発光素子は、LEDが組み込まれ、チップサイズにパッケージされたCSPとされている、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項9】
前記形成工程では、前記絶縁基板の他面に導電性のパターンを形成する、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の蛍光体基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法により前記蛍光体基板を製造した後に、複数の前記電極対の前記上面にそれぞれ複数の発光素子を接合させて、前記蛍光体基板に前記複数の発光素子を搭載する搭載工程、
を含む発光基板の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁基板は、100℃以上300℃以下の範囲において、1.0×10
10Paよりも大きく1.0×10
11Paよりも小さい貯蔵弾性率とされ、
前記搭載工程では、リフロー工程により前記複数の電極対の前記上面にそれぞれ複数の発光素子を接合させる、
請求項
10に記載の発光基板の製造方法。
【請求項12】
請求項
10又は
11に記載の発光基板の製造方法により製造された発光基板の前記発光素子が発光可能となるように、前記発光素子を発光させるための電力を供給する電源を前記発光基板に取り付ける工程、
を含む照明装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体基板の製造方法、発光基板の製造方法及び照明装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光素子(LED素子)が搭載された基板を備えるLED照明器具が開示されている。このLED照明器具は、基板の表面に反射材を設けて、発光効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているLED照明装置は、そもそも、反射材を利用してLED照明器具が発光する光を発光素子が発光する光と異なる発光色の光に調整することができない。さらに、特許文献1には、LED照明器具の具体的な構成について明確に開示されていない。
【0005】
本発明は、一面に複数の発光素子が搭載される蛍光体基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の蛍光体基板の製造方法は、一面に複数の発光素子が搭載される蛍光体基板の製造方法であって、絶縁基板の一面に、前記複数の発光素子に接合される回路パターンを形成する形成工程と、前記形成工程の後に、前記回路パターンにおける前記複数の発光素子に接合される部分以外の部分を覆うように前記絶縁基板の一面に蛍光体塗料を塗布する塗布工程と、を含む。
【0007】
本発明の第2態様の蛍光体基板の製造方法は、第1態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記回路パターンの厚み方向外側に向く面は、同一の平面とされている。
【0008】
本発明の第3態様の蛍光体基板の製造方法は、第1又は第2態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記塗布工程は、スクリーン印刷法により行われる。
【0009】
本発明の第4態様の蛍光体基板の製造方法は、一面に複数の発光素子が搭載される蛍光体基板の製造方法であって、絶縁基板の一面に、前記複数の発光素子に接合される複数の電極対を有する回路パターンを形成する形成工程と、前記形成工程の後に、前記回路パターンを覆うように前記絶縁基板の一面に蛍光体塗料を塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料を除去し、前記複数の電極対の上面を露出させる露出工程と、を含む。
【0010】
本発明の第5態様の蛍光体基板の製造方法は、第4態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記形成工程の後かつ前記塗布工程の前に、前記回路パターンの厚み方向外側に向く面における前記上面以外の部分が前記上面よりも前記絶縁基板側に近くなるように、前記回路パターンをエッチングする工程、を含む。
【0011】
本発明の第6態様の蛍光体基板の製造方法は、第4又は第5態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記露出工程では、像が形成されているマスクを用いた写真現像法により前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料を除去し、前記上面を露出させる。
【0012】
本発明の第7態様の蛍光体基板の製造方法は、第4又は第5態様の蛍光体基板の製造方法であって、前露出工程では、レーザー照射装置により前記前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料にレーザー光を照射して除去し、前記上面を露出させる。
【0013】
本発明の第8態様の蛍光体基板の製造方法は、第4又は第5態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記露出工程では、研磨により前記複数の電極対上の前記蛍光体塗料を除去し、前記上面を露出させる。
【0014】
本発明の第9態様の蛍光体基板の製造方法は、第1~第8態様のいずれか一態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記発光素子は、LEDが組み込まれ、チップサイズにパッケージされたCSPとされている。
【0015】
本発明の第10態様の蛍光体基板の製造方法は、第1~第9態様のいずれか一態様の蛍光体基板の製造方法であって、前記形成工程では、前記絶縁基板の他面に導電性のパターンを形成する。
【0016】
本発明の第1態様の発光基板の製造方法は、第1~第10態様のいずれか一態様に記載の蛍光体基板の製造方法により前記蛍光体基板を製造した後に、前記複数の電極対の前記上面にそれぞれ複数の発光素子を接合させて、前記蛍光体基板に前記複数の発光素子を搭載する搭載工程、を含む。
【0017】
本発明の第2態様の発光基板の製造方法は、第1態様の発光基板の製造方法であって、前記絶縁基板は、100℃以上300℃以下の範囲において、1.0×1010Paよりも大きく1.0×1011Paよりも小さい貯蔵弾性率とされ、前記搭載工程では、リフロー工程により前記複数の電極対の前記上面にそれぞれ複数の発光素子を接合させる。
【0018】
本発明の照明装置の製造方法は、第1又は第2態様の発光基板の製造方法により製造された発光基板の前記発光素子が発光可能となるように、前記発光素子を発光させるための電力を供給する電源を前記発光基板に取り付ける工程、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1~第10態様の蛍光体基板の製造方法は、一面に複数の発光素子が搭載される蛍光体基板を製造することができる。
【0020】
また、本発明の第1及び第2の発光基板の製造方法は、一面に複数の発光素子が搭載されている蛍光体基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1B】第1実施形態の発光基板及び蛍光体基板の底面図である。
【
図1C】
図1Aの1C-1C切断線により切断した、第1実施形態の発光基板の部分断面図である。
【
図2A】第1実施形態の蛍光体基板(蛍光体層を省略)の平面図である。
【
図2B】第1実施形態の蛍光体基板の平面図である。
【
図3A】第1実施形態の発光基板の製造方法における第1工程の説明図である。
【
図3B】第1実施形態の発光基板の製造方法における第2工程の説明図である。
【
図3C】第1実施形態の発光基板の製造方法における第3工程の説明図である。
【
図3D】第1実施形態の発光基板の製造方法における第4工程の説明図である。
【
図3E】第1実施形態の発光基板の製造方法における第5工程の説明図である。
【
図4】第1実施形態の発光基板の発光動作を説明するための図である。
【
図5】第1比較形態の発光基板の発光動作を説明するための図である。
【
図6】
図1Aの1C-1C切断線により切断した、第2実施形態の発光基板の部分断面図である。
【
図7A】第2実施形態の発光基板の製造方法における第1工程の説明図である。
【
図7B】第2実施形態の発光基板の製造方法における第2工程の説明図である。
【
図7C】第2実施形態の発光基板の製造方法における第3工程の説明図である。
【
図7D】第2実施形態の発光基板の製造方法における第4工程の説明図である。
【
図8A】第1変形例の発光基板及び蛍光体基板の底面図である。
【
図8B】第2変形例の発光基板及び蛍光体基板の底面図である。
【
図8C】第3変形例の発光基板及び蛍光体基板の底面図である。
【
図8D】第4変形例の発光基板及び蛍光体基板の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
≪概要≫
以下、本実施形態の一例を、第1実施形態及び第2実施形態に分けて説明する。まず、第1実施形態について説明する。次いで、第2実施形態について説明する。次いで、各実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において参照するすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
≪第1実施形態≫
以下、第1実施形態について説明する。まず、本実施形態の発光基板10の製造方法により製造される、すなわち、製造対象物としての発光基板10の構成及び機能について、
図1A~
図1Cを参照しながら説明する。次いで、本実施形態の発光基板10の製造方法について
図3A~
図3Eを参照しながら説明する。次いで、本実施形態の発光基板10の発光動作について
図4を参照しながら説明する。次いで、本実施形態の効果について
図4等を参照しながら説明する。
【0024】
<第1実施形態の製造対象物としての発光基板の構成及び機能>
図1Aは本実施形態の発光基板10の平面図(表面31から見た図)、
図1Bは本実施形態の発光基板10の底面図(裏面33から見た図)である。
図1Cは、
図1Aの1C-1C切断線により切断した発光基板10の部分断面図である。
本実施形態の発光基板10は、表面31及び裏面33から見て、一例として矩形とされている。また、本実施形態の発光基板10は、複数の発光素子20と、蛍光体基板30と、コネクタ、ドライバIC等の電子部品(図示省略)とを備えている。すなわち、本実施形態の発光基板10は、蛍光体基板30に、複数の発光素子20及び上記電子部品が搭載されたものとされている。
本実施形態の発光基板10は、コネクタを介して外部電源(図示省略)から給電されると、発光する機能を有する。そのため、本実施形態の発光基板10は、例えば照明装置(図示省略)等における主要な光学部品として利用される。
【0025】
〔複数の発光素子〕
複数の発光素子20は、それぞれ、一例として、フリップチップLED22(以下、LED22という。)が組み込まれたCSP(Chip Scale Package)とされている(
図1C参照)。複数の発光素子20は、
図1Aに示されるように、蛍光体基板30の表面31(一面の一例)に、表面31の全体に亘って規則的に並べられた状態で、蛍光体基板30に搭載されている。なお、本実施形態の各発光素子20が発光する光の相関色温度は、一例として3,018Kとされている。また、複数の発光素子20は、発光動作時に、ヒートシンク(図示省略)や冷却ファン(図示省略)を用いることで、蛍光体基板30を一例として常温から50℃~100℃に収まるように放熱(冷却)されている。ここで、本明細書で数値範囲に使用する「~」の意味について補足すると、例えば「50℃~100℃」は「50℃以上100℃以下」を意味する。そして、本明細書で数値範囲に使用する「~」は、「『~』の前の記載部分以上『~』の後の記載部分以下」を意味する。
【0026】
〔蛍光体基板〕
図2Aは、本実施形態の蛍光体基板30の図であって、蛍光体層36を省略して図示した平面図(表面31から見た図)である。
図2Bは、本実施形態の蛍光体基板30の平面図(表面31から見た図)である。なお、本実施形態の蛍光体基板30の底面図は、発光基板10を裏面33から見た図と同じである。また、本実施形態の蛍光体基板30の部分断面図は、
図1Cの部分断面図から発光素子20を除いた場合の図と同じである。すなわち、本実施形態の蛍光体基板30は、表面31及び裏面33から見て、一例として矩形とされている。
【0027】
本実施形態の蛍光体基板30は、絶縁層32(絶縁基板の一例)と、電極層34(回路パターンの一例)と、蛍光体層36と、裏面パターン層38(導電性のパターンの一例)とを備えている(
図1B、
図1C、
図2A及び
図2B参照)。なお、
図2Aでは蛍光体層36が省略されているが、蛍光体層36は、
図2Bに示されるように、一例として、絶縁層32及び電極層34の表面31における、後述する複数の電極対34A以外の部分に配置されている。
【0028】
また、蛍光体基板30には、
図1B及び
図2Aに示されるように、四つ角付近の4箇所及び中央付近の2箇所の6箇所に貫通孔39が形成されている。6箇所の貫通孔39は、蛍光体基板30及び発光基板10の製造時に位置決め孔として利用されるようになっている。あわせて、6箇所の貫通孔39は、(発光)灯具筐体への熱引き効果確保(基板反り及び浮き防止)のための取り付け用のネジ穴として利用される。なお、本実施形態の蛍光体基板30は、後述するように、絶縁板の両面に銅箔層が設けられた両面板(以下、マザーボードMBという。
図3A参照)を加工(エッチング等)して製造される。
【0029】
〈絶縁層〉
以下、本実施形態の絶縁層32の主な特徴について説明する。
形状は、前述のとおり、一例として表面31及び裏面33から見て矩形である。
材質は、一例としてビスマレイミド樹脂及びガラスクロスを含む絶縁材である。また、当該絶縁材にはハロゲン及びリンは含まれていない(ハロゲンフリー、リンフリー)。
厚みは、一例として100μm~200μmである。
縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、50℃~100℃の範囲において10ppm/℃以下である。また、別の見方をすると、縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、6ppm/Kである。この値は、本実施形態の発光素子20の場合とほぼ同等(90%~110%、すなわち±10%以内)である。
ガラス転移温度は、一例として、300℃よりも高い。
貯蔵弾性率は、一例として、100℃~300℃の範囲において、1.0×1010Paよりも大きく1.0×1011Paよりも小さい。
縦方向及び横方向の曲げ弾性率は、一例として、それぞれ、常態において35GPa及び34GPaである。
縦方向及び横方向の熱間曲げ弾性率は、一例として、250℃において19GPaである。
吸水率は、一例として、23℃の温度環境で24時間放置した場合に0.13%である。
比誘電率は、一例として、1MHz常態において4.6である。
誘電正接は、一例として、1MHz常態において、0.010である。
なお、本実施形態の絶縁層32はマザーボードMBの絶縁層の部分に相当するが、当該マザーボードMBには一例として利昌工業株式会社製のCS-3305Aが用いられる。
【0030】
〈電極層〉
本実施形態の電極層34は、絶縁層32の表面31側に設けられた金属層とされている。本実施形態の電極層34は一例として銅箔層(Cu製の層)とされている。別言すれば、本実施形態の電極層34は、少なくともその表面が銅を含んで形成されている。
電極層34は、絶縁層32に設けられたパターンとされ、コネクタ(図示省略)が接合される端子37と導通している。そして、電極層34は、コネクタを介して外部電源(図示省略)から給電された電力を、発光基板10の構成時の複数の発光素子20に供給するようになっている。そのため、電極層34の一部は、複数の発光素子20がそれぞれ接合される複数の電極対34Aとされている。すなわち、本実施形態の発光基板10の電極層34は、絶縁層32に配置され、各発光素子20に接続されている。
【0031】
また、前述のとおり、本実施形態の発光基板10における複数の発光素子20は表面31の全体に亘って規則的に並べられていることから、複数の電極対34Aも表面31の全体に亘って規則的に並べられている(
図2A参照)。電極層34における複数の電極対34A以外の部分を、配線部分34Bという。本実施形態では、
図1Cに示されるように、一例として、複数の電極対34Aは、配線部分34Bよりも絶縁層32(蛍光体基板30)の厚み方向外側に突出している。別言すると、電極層34における絶縁層32の厚み方向外側に向く面において、それぞれ各発光素子20が接合される上面(接合面34A1)は、接合面34A1以外の上面(非接合面34B1)よりも、絶縁層32の厚み方向外側に位置している。
なお、絶縁層32の表面31における電極層34が配置されている領域(第1配置領域と定義する。)は、一例として、絶縁層32の表面31の60%以上の領域(面積)とされている(
図2A参照)。また、第1配置領域の80%以上の領域は、絶縁層32の厚み方向において、絶縁層32における裏面パターン層38が配置されている領域(第2配置領域と定義する。)と重なっている。
【0032】
〈蛍光体層〉
本実施形態の蛍光体層36は、
図2Bに示されるように、一例として、蛍光体層36は、絶縁層32及び電極層34の表面31における、複数の電極対34A以外の部分に配置されている。すなわち、蛍光体層36は、電極層34における複数の電極対34A以外の領域に配置されている。別言すると、蛍光体層36の少なくとも一部は、表面31側から見て、各接合面34A1の周りを全周に亘って囲むように配置されている(
図1C及び
図2B参照)。そして、本実施形態では、絶縁層32の表面31における蛍光体層36が配置されている領域は、一例として、絶縁層32の表面31における80%以上の領域とされている。
なお、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面は、電極層34の接合面34A1よりも当該厚み方向外側に位置している(
図1C参照)。
【0033】
本実施形態の蛍光体層36は、一例として、後述する蛍光体とバインダーとを含む絶縁層とされている。蛍光体層36に含まれる蛍光体は、バインダーに分散された状態で保持されている微粒子とされ、各発光素子20の発光を励起光として励起する性質を有する。具体的には、本実施形態の蛍光体は、発光素子20の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある性質を有する。なお、バインダーは、例えば、エポキシ系、アクリレート系、シリコーン系等で、ソルダーレジストに含まれるバインダーと同等の絶縁性を有するものであればよい。
【0034】
(蛍光体の具体例)
ここで、本実施形態の蛍光体層36に含まれる蛍光体は、一例として、Euを含有するα型サイアロン蛍光体、Euを含有するβ型サイアロン蛍光体、Euを含有するCASN蛍光体及びEuを含有するSCASN蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の蛍光体とされている。なお、前述の蛍光体は、本実施形態の一例であり、YAG、LuAG、BOSその他の可視光励起の蛍光体のように、前述の蛍光体以外の蛍光体であってもよい。
【0035】
Euを含有するα型サイアロン蛍光体は、一般式:MxEuySi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-nで表される。上記一般式中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(ただし、LaとCeを除く)からなる群から選ばれる、少なくともCaを含む1種以上の元素であり、Mの価数をaとしたとき、ax+2y=mであり、xが0<x≦1.5であり、0.3≦m<4.5、0<n<2.25である。
【0036】
Euを含有するβ型サイアロン蛍光体は、一般式:Si6-zAlzOzN8-z(z=0.005~1)で表されるβ型サイアロンに発光中心として二価のユーロピウム(Eu2+)を固溶した蛍光体である。
【0037】
また、窒化物蛍光体として、Euを含有するCASN蛍光体、Euを含有するSCASN蛍光体等が挙げられる。
【0038】
Euを含有するCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式CaAlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。なお、本明細書におけるEuを含有するCASN蛍光体の定義では、Euを含有するSCASN蛍光体が除かれる。
【0039】
Euを含有するSCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。
【0040】
〈裏面パターン層〉
本実施形態の裏面パターン層38は、絶縁層32の裏面33側に設けられた金属層とされている。本実施形態の裏面パターン層38は一例として銅箔層(Cu製の層)とされている。
【0041】
裏面パターン層38は、
図1Bに示されるように、絶縁層32の長手方向に沿って直線状に並べられている複数の矩形部分38A(複数の電極の一例、以下、複数の部分38Aという。)の塊が短手方向において位相をずらしたよう隣接して並べられている層とされている。すなわち、本実施形態の裏面パターン層38は、複数の部分38Aを並べたパターンを形成している。
【0042】
なお、裏面パターン層38は、一例として、独立フローティング層とされている。すなわち、本実施形態の裏面パターン層38(を構成する複数の部分38A)は、表面31側の電極層34が有する複数の電極対34Aと電気的に接続していない、ダミー電極とさえている。また、本実施形態の第2配置領域の面積は、第1配置領域の面積よりも大きく設定されているが(
図1B及び
図2A参照)、第1配置領域の面積の90%~110%の面積に設定されている。
【0043】
以上が、本実施形態の製造対象物としての発光基板10及び蛍光体基板30の構成についての説明である。
【0044】
<第1実施形態の発光基板の製造方法>
次に、本実施形態の発光基板10の製造方法について
図3A~
図3Eを参照しながら説明する。本実施形態の発光基板10の製造方法は第1工程、第2工程、第3工程、第4工程及び第5工程を含んでおり、各工程はこれらの記載順で行われる。
【0045】
〔第1工程〕
図3Aは、第1工程の開始時及び終了時を示す図である。第1工程は、マザーボードMBの表面31に厚み方向から見て電極層34と同じパターン34C(回路パターンの他の一例)を、裏面33に裏面パターン層38を形成する工程である。すなわち、本工程は、絶縁層32の表面31に、複数の発光素子20に接合される複数の電極対34Aを有する電極層34及び裏面パターン層38を形成する工程(形成工程)である。本工程は、例えばマスクパターン(図示省略)を用いたエッチングにより行われる。
【0046】
〔第2工程〕
図3Bは、第2工程の開始時及び終了時を示す図である。第2工程は、パターン34の一部をハーフハッチ(厚み方向の途中までエッチング)する工程である。本工程が終了すると、結果的に、複数の電極対34Aと配線部分34Bとを有する電極層34が形成される。すなわち、本工程は、第1工程の後かつ後述する塗布工程の前に、電極層34の厚み方向外側に向く面における上面(接合面34A1)以外の部分(配線部分34B)が接合面34A1よりも絶縁層32側に近くなるように、電極層34をエッチングする工程である。本工程が終了すると、電極層34に複数の接合面34A1と複数の非接合面34B1とが形成される。本工程は、例えばマスクパターン(図示省略)を用いたエッチングにより行われる。
【0047】
〔第3工程〕
図3Cは、第3工程の開始時及び終了時を示す図である。第3工程は、絶縁層32の表面31、すなわち電極層34が形成された面の全面に蛍光体塗料36Cを塗布する工程である。別言すれば、本工程は、第2工程の後に、電極層34を覆うように絶縁層32の表面31に蛍光体塗料36Cを塗布する工程(塗布工程)である。本工程では、例えば、印刷により蛍光体塗料36Cを塗布する。この場合、蛍光体塗料36Cをすべての電極対34Aよりも厚く塗布する。別言すると、この場合、蛍光体塗料36Cを絶縁層32の厚み方向において、各接合面34A1を厚み方向の外側から覆うように(各接合面34A1が蛍光体塗料36Cで隠れるように)塗布する。
【0048】
〔第4工程〕
図3Dは、第4工程の開始時及び終了時を示す図である。第4工程は、蛍光体塗料36Cが硬化した蛍光体層36の一部を除去して、すべての電極対34Aの接合面34A1を露出させる工程である。すなわち、本工程は、第3工程の後に、複数の電極対34A上の蛍光体塗料36Cを除去し、複数の電極対34Aの各接合面34A1を露出させる工程(露出工程)である。
【0049】
ここで、蛍光体塗料36Cのバインダーが例えば熱硬化性樹脂である場合は、加熱により蛍光体塗料36Cを硬化させた後に2次元に走査可能なレーザー照射装置(図示省略)により蛍光体層36における各接合面34A1上の部分に選択的にレーザー光を照射する。その結果、蛍光体層36における各接合面34A1上の部分及び電極対34Aの各接合面34A1付近の部分がアブレーションされて(除去されて)、各接合面34A1が露出する。以上の結果、本実施形態の蛍光体基板30が製造される。すなわち、本実施形態の第1~第4工程をこれらの記載順で行う工程は、本実施形態の蛍光体基板30の製造方法である。
【0050】
なお、本工程は、上記の方法の他に、例えば、以下の方法により行ってもよい。
蛍光体塗料36Cのバインダーが例えばUV硬化性樹脂(感光性樹脂)である場合、各接合面34A1と重なる部分(塗料開口部)にマスクパターンをかけて、UV光を露光し、当該マスクパターン以外をUV硬化させ、非露光部(未硬化部)を樹脂除去液により取り除くことで、各接合面34A1を露出させる。その後、一般的には、熱をかけてアフターキュアを行う(写真現像法)。
また、蛍光体塗料36Cのバインダーが例えば熱硬化性樹脂である場合は、加熱により蛍光体塗料36Cを硬化させた後に蛍光体層36の表面を研磨する。その結果、蛍光体層36における各接合面34A1上の部分が除去されて、各接合面34A1が露出させる(研磨法)。なお、この方法(研磨方法)で第4工程が行われた場合、各接合面34A1は蛍光体層36の上面とは面一となる。そのため、この方法で第4工程が行われた場合、各接合面34A1と蛍光体層36の上面とが面一の形態の蛍光体基板(図示省略)が製造されることになる。
以上の結果、これらの方法によれば、本実施形態の蛍光体基板30が製造される。
【0051】
〔第5工程〕
図3Eは、第5工程の開始時及び終了時を示す図である。第5工程は、蛍光体基板30に複数の発光素子20を搭載する工程である。すなわち、本工程は、第1~第4工程により蛍光体基板30を製造した後に、複数の電極対34Aの各接合面34A1にそれぞれ複数の発光素子20を接合させて、蛍光体基板30に複数の発光素子20を搭載する工程(搭載工程)である。
本工程は、蛍光体基板30の複数の電極対34Aの各接合面34A1にはんだペーストSPを印刷し、各接合面34A1に複数の発光素子20の各電極を位置合わせした状態で、一例として250℃の環境下ではんだペーストを溶かす。その後、はんだペーストSPが冷却された固化すると、各電極対34Aに各発光素子20が接合される。すなわち、本工程は、一例としてリフロー工程により行われる。
【0052】
以上が、本実施形態の発光基板10の製造方法についての説明である。
【0053】
<第1実施形態の発光基板の発光動作>
次に、本実施形態の発光基板10の発光動作について
図4を参照しながら説明する。ここで、
図4は、本実施形態の発光基板10の発光動作を説明するための図である。
【0054】
まず、複数の発光素子20を作動させる作動スイッチ(図示省略)がオンになると、コネクタ(図示省略)を介して外部電源(図示省略)から電極層34への給電が開始され、複数の発光素子20は光Lを放射状に発散出射し、その光Lの一部は蛍光体基板30の表面31に到達する。以下、出射された光Lの進行方向に分けて光Lの挙動について説明する。
【0055】
各発光素子20から出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射することなく外部に出射される。この場合、光Lの波長は、各発光素子20から出射された際の光Lの波長と同じままである。
【0056】
また、各発光素子20から出射された光Lの一部分の中のLED22自身の光は、蛍光体層36に入射する。ここで、前述の「光Lの一部分の中のLED22自身の光」とは、出射された光Lのうち各発光素子20(CSP自身)の蛍光体により色変換されていない光、すなわち、LED22自身の光(一例として青色(波長が470nm近傍)の光)を意味する。そして、LED22自身の光Lが蛍光体層36に分散されている蛍光体に衝突すると、蛍光体が励起して励起光を発する。ここで、蛍光体が励起する理由は、蛍光体層36に分散されている蛍光体が青色の光に励起ピークを持つ蛍光体(可視光励起蛍光体)を使用しているためである。これに伴い、光Lのエネルギーの一部は蛍光体の励起に使われることで、光Lはエネルギーの一部を失う。その結果、光Lの波長が変換される(波長変換がなされる)。例えば、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては(例えば、蛍光体に赤色系CASNを用いた場合には)光Lの波長が長くなる(例えば650nm等)。また、蛍光体層36での励起光はそのまま蛍光体層36から出射するものもあるが、一部の励起光は下側の電極層34に向かう。そして、一部の励起光は電極層34での反射により外部に出射する。以上のように、蛍光体による励起光の波長が600nm以上の場合、電極層34がCuでも反射効果が望める。なお、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては光Lの波長が前述の例と異なるが、いずれの場合であっても光Lの波長変換がなされることになる。例えば、励起光の波長が600nm未満の場合、電極層34又はその表面を例えばAg(鍍金)とすれば反射効果が望める。
【0057】
以上のとおり、各発光素子20が出射した光L(各発光素子20が放射状に出射した光L)は、それぞれ、上記のような複数の光路を経由して上記励起光とともに外部に照射される。そのため、蛍光体層36に含まれる蛍光体の発光波長と、発光素子20(CSP)におけるLED22を封止した(又は覆う)蛍光体の発光波長とが異なる場合、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長と異なる波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。例えば、、本実施形態の発光基板10は、発光素子20が出射した光(波長)と蛍光体層36より出射された光(波長)との合成光を照射する。
【0058】
以上が、本実施形態の発光基板10の発光動作についての説明である。
【0059】
<第1実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について図面を参照しながら説明する。
【0060】
〔第1の効果〕
第1の効果については、本実施形態を以下に説明する第1比較形態(
図5参照)と比較して説明する。ここで、第1比較形態(及び下記の第2比較形態)の説明において、本実施形態と同じ構成要素等を用いる場合は、その構成要素等に本実施形態の場合と同じ名称、符号等を用いることとする。
図5は、第1比較形態の発光基板10Aの発光動作を説明するための図である。第1比較形態の発光基板10A(複数の発光素子20を搭載する基板30A)は、蛍光体層36を備えていない点以外は、本実施形態の発光基板10(蛍光体基板30)と同じ構成とされている。
【0061】
第1比較形態の発光基板10Aの場合、各発光素子20から出射され、基板30Aの表面31に入射した光Lは、波長が変換されることなく反射又は散乱する。そのため、第1比較形態の基板30Aの場合、発光素子20が搭載された場合に発光素子20が発光する光と異なる発光色の光に調整することができない。すなわち、第1比較形態の発光基板10Aの場合、発光素子20が発光する光と異なる発光色の光に調整することができない。
【0062】
これに対して、本実施形態の場合、絶縁層32の厚み方向から見て、絶縁層32の表面31であって、各発光素子20との各接合面34A1の周囲には蛍光体層36が配置されている。そのため、各発光素子20から放射状に出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射して、蛍光体層36により波長変換されて、外部に照射される。この場合、各発光素子20から放射状に出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射して、蛍光体層36に含まれる蛍光体を励起させ、励起光を発生させる。
【0063】
したがって、本実施形態の蛍光体基板30の製造方法により製造された蛍光体基板30は、発光素子20が搭載された場合に、蛍光体基板30から発光される光Lを発光素子20が発光する光Lと異なる発光色の光に調整することができる。これに伴い、本実施形態の発光基板10の製造方法により製造された発光基板10は、蛍光体基板30から発光される光Lを発光素子20が発光する光Lと異なる発光色の光Lに調整することができる。別の見方をすると、本実施形態の発光基板10の製造方法により製造された発光基板10は、発光素子20が発光する光Lと異なる発光色の光Lを外部に照射することができる。
【0064】
〔第2の効果〕
第1比較形態の場合、
図5に示されるように、各発光素子20の配置間隔に起因して外部に照射される光Lに斑が発生する。ここで、光Lの斑が大きいほど、グレアが大きいという。
これに対して、本実施形態の場合、
図2Bに示されるように、各接合面34A1の周囲を(全周に亘って)蛍光体層36に囲まれたうえで、さらに隣接する発光素子20同士の間にも蛍光体層36が設けられている。そのため、各接合面34A1の周囲(各発光素子20の周囲)からも励起光が発光される。
したがって、本実施形態の発光基板10の製造方法により製造された発光基板10は、第1比較形態に比べて、グレアを小さくすることができる。
特に、本効果は、蛍光体層36が絶縁層32の全面に亘って設けられている場合、具体的には、絶縁層32の表面31における蛍光体層36が配置されている領域が表面13の80%以上の領域のような場合に有効である。
【0065】
〔第3の効果〕
前述のとおり、本実施形態の蛍光体基板30と蛍光体基板30に配置された複数の発光素子20は、製造時の第5工程(搭載工程としてのリフロー工程)の際に、一例として250℃に加熱される(
図3E参照)。そのため、蛍光体基板30は熱膨張し、各発光素子20も熱膨張する。そして、前者と後者との熱膨張率の差に起因して、絶縁層32(蛍光体基板30)に反りが発生する。その結果、複数の発光素子20の実装不良が起こる虞がある。
しかしながら、絶縁層32の貯蔵弾性率は、リフロー工程が行われる温度を含む100℃以上300℃以下の範囲において、1.0×10
10Paよりも大きく1.0×10
11Paよりも小さい。すなわち、本実施形態の絶縁層32(蛍光体基板30)は、リフロー工程が行われる温度において、比較的、貯蔵弾性率が高く設定されている。
したがって、本実施形態の蛍光体基板30は、製造時の加熱に起因する反りの発生を抑制することができる。これに伴い、本実施形態によれば、製造不良が発生し難い。
【0066】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。また、以上が、第1実施形態についての説明である。
【0067】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態について説明する。以下、本実施形態における、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態の説明では、本実施形態において、第1実施形態の同等の部品、構成等を用いる場合、第1実施形態の場合と同じ名称、符号等を用いることにする。
【0068】
<第2実施形態の製造対象物としての発光基板の構成及び機能>
本実施形態の発光基板10の製造方法により製造される発光基板10の平面図は、第1実施形態の平面図である
図1Aを援用した図と同等である。また、本実施形態の発光基板10及び蛍光体基板30の底面図は、第1実施形態の底面図である
図1Bを援用した図と同等である。
しかしながら、本実施形態の発光基板10における
図1Aの1C-1C切断線により切断した部分断面図は、第1実施形態の場合と異なり、
図6のとおりである。本実施形態の場合、本実施形態の電極層34を構成する各電極対34Aの上面(接合面34A1)と、配線部分34Bの上面(非接合面34B1)とは、同一の平面を形成している。
本実施形態の発光基板10における第1実施形態の場合と異なる点は、以上である。
【0069】
<第2実施形態の発光基板の製造方法>
次に、本実施形態の発光基板10の製造方法について
図7A~
図7Dを参照しながら説明する。本実施形態の発光基板10の製造方法は第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を含んでおり、各工程はこれらの記載順で行われる。
【0070】
〔第1工程〕
図7Aは、第1工程の開始時及び終了時を示す図である。第1工程は、マザーボードMBの表面31に厚み方向から見て電極層34と同じパターン34C(回路パターンの他の一例)を、裏面33に裏面パターン層38を形成する工程である。すなわち、本工程は、絶縁層32の表面31に、複数の発光素子20に接合される複数の電極対34Aを有する電極層34及び裏面パターン層38を形成する工程(形成工程)である。本工程は、例えばマスクパターン(図示省略)を用いたエッチングにより行われる。
【0071】
〔第2工程〕
図7Bは、第2工程の開始時及び終了時を示す図である。第2工程は、絶縁層32の表面31、すなわち電極層34が形成された面の全面に蛍光体塗料36Cを塗布する工程である。別言すれば、本工程は、第1工程の後に、電極層34を覆うように絶縁層32の表面31に蛍光体塗料36Cを塗布する工程(塗布工程)である。本工程では、例えば、印刷により蛍光体塗料36Cを塗布する。この場合、蛍光体塗料36Cを電極層34よりも厚く塗布する。
【0072】
〔第3工程〕
図7Cは、第3工程の開始時及び終了時を示す図である。第3工程は、蛍光体塗料36Cが硬化した蛍光体層36の一部を除去して、すべての接合面34A1を露出させる工程である。すなわち、本工程は、第3工程の後に、複数の電極対34A上の蛍光体塗料36Cを除去し、複数の電極対34Aの各接合面34A1を露出させる工程(露出工程)である。
【0073】
ここで、蛍光体塗料36Cのバインダーが例えば熱硬化性樹脂である場合は、加熱により蛍光体塗料36Cを硬化させた後に2次元に走査可能なレーザー照射装置(図示省略)により蛍光体層36における各接合面34A1上の部分に選択的にレーザー光を照射する。その結果、蛍光体層36における各接合面34A1上の部分及び電極対34Aの各接合面34A1付近の部分がアブレーションされて(除去されて)、各接合面34A1が露出する。以上の結果、本実施形態の蛍光体基板30が製造される。すなわち、本実施形態の第1~第4工程をこれらの記載順で行う工程は、本実施形態の蛍光体基板30の製造方法である。
【0074】
本工程は、上記の方法の他に、例えば、以下の方法により行ってもよい。蛍光体塗料36Cのバインダーが例えばUV硬化性樹脂(感光性樹脂)である場合、乾燥により蛍光体塗料36Cを硬化させた後、マスクパターン(図示省略)を用いてUV光を露光し、非露光部分をエッチング溶液により除去する(写真現像法)。
【0075】
以上の説明では、第1工程、第2工程、第3工程をこれらの記載順で行うことで蛍光体基板30を製造すると説明したが、以下の方法により製造してもよい。例えば、第1工程(
図7A参照)の後に、第2工程(
図7B参照)及び第3工程(
図7C参照)を行わずに、予め開口部が設定されたスクリーンマスク(図示省略)を用いてスクリーン印刷により蛍光体塗料36Cを塗布してもよい。この場合、スクリーンマスクにおける接合面34A1に重なる部分の蛍光体塗料開口部を根づまりさせておけばよい。
【0076】
〔第4工程〕
図7Dは、第4工程の開始時及び終了時を示す図である。第4工程は、蛍光体基板30に複数の発光素子20を搭載する工程である。すなわち、本工程は、第1~第4工程により蛍光体基板30を製造した後に、複数の電極対34Aの各接合面34A1にそれぞれ複数の発光素子20を接合させて、蛍光体基板30に複数の発光素子20を搭載する工程(搭載工程)である。
本工程は、蛍光体基板30の各接合面34A1にはんだペーストSPを印刷し、各接合面34A1に複数の発光素子20の各電極を位置合わせした状態ではんだペーストを溶かす。その後、はんだペーストSPが冷却された固化すると、各電極対34A(各接合面34A1)に各発光素子20が接合される。すなわち、本工程は、一例としてリフロー工程により行われる。
【0077】
以上が、本実施形態の発光基板10の製造方法についての説明である。
【0078】
<第2実施形態の発光基板の発光動作>
本実施形態の発光基板10の発光動作は、第1実施形態の場合(
図4を援用)と同様である。
【0079】
<第2実施形態の効果>
本実施形態の効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0080】
以上が、第2実施形態についての説明である。
【0081】
以上のとおり、本発明について前述の第1及び第2施形態を例として説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0082】
例えば、各実施形態の説明では、発光素子20の一例をCSPであるとした。しかしながら、発光素子20の一例はCSP以外でもよい。例えば、単にフリップチップを搭載したものでもよい。また、COBデバイスの基板自身に応用することもできる。
【0083】
また、各実施形態の説明では、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面は、電極層34の接合面34A1よりも当該厚み方向外側に位置しているとした(
図1C及び
図6参照)。しかしながら、前述の第1及び第3の効果の説明のメカニズムを考慮すると、蛍光体層36における絶縁層32の厚み方向外側の面が電極層34の接合面34A1と当該厚み方向において同じ又は接合面34A1よりも当該厚み方向内側の位置としても第1の効果を奏することは明らかである。
【0084】
また、各実施形態の説明では、蛍光体層36は、絶縁層32及び電極層34の表面31における、複数の電極対34A以外の部分に配置されているとした(
図2B参照)。しかしながら、前述の第1及び第3の効果の説明のメカニズムを考慮すると、蛍光体基板30の表面31における複数の電極対34A以外の部分の全域に亘って配置されていなくても第1の効果を奏することは明らかである。しかたがって、本実施形態の場合と異なる表面31の範囲に蛍光体層36が配置されている点のみ本実施形態の蛍光体基板30及び発光基板10と異なる形態であっても、当該形態は本発明の技術的範囲に属するといえる。
【0085】
また、各実施形態では、蛍光体基板30及び発光基板10を製造するに当たり、利昌工業株式会社製のCS-3305AをマザーボードMBとして用いると説明した。しかしながら、これは一例であり、異なるマザーボードMBを用いてもよい。例えば、利昌工業株式会社製のCS-3305Aの絶縁層厚、銅箔厚等の標準仕様にこだわるものではなく、特に銅箔圧は更に厚いものを用いてもよい。
【0086】
また、第1及び第2実施形態の製造方法により製造された発光基板10(その変形例も含む)を用いて、当該発光基板10の発光素子20が発光可能となるように、発光素子20を発光させるための電力を供給する電源を、当該発光基板10に取り付ける工程を行い、照明装置を製造してもよい。
【0087】
また、各実施形態では、裏面パターン層38は、表面31側の電極層34が有する複数の電極対34Aと電気的に接続していない、ダミー電極とさえているとして説明した。しかしながら、裏面パターン層38を例えばスルーホール(図示省略)を介して表面31の電極層34に接続し、裏面パターン層38を電極層34に電力を供給するための電気経路の一部として構成してもよい。
【0088】
また、本実施形態の裏面パターン層38は、一例として
図1Bのとおりであるとして説明した。しかしながら、裏面33の導電性のパターンは、本実施形態の裏面パターン層38と異なるパターンであってもよい。
例えば、
図8Aの第1変形例の蛍光体基板30B(発光基板10B)の裏面パターン層38Bのように、本発明の第2電極群が蛍光体基板30Bの長手方向に沿って配置された長尺体(複数の部分38B1)の組み合せであってもよい。
また、例えば、
図8Bの第2変形例の蛍光体基板30C(発光基板10C)の裏面パターン層38Cのように、本発明の第2電極群が蛍光体基板30Cの短手方向の一端から他端に沿って配置された長尺体(複数の部分38C1)の組み合せであってもよい。
また、例えば、
図8Cの第3変形例の蛍光体基板30D(発光基板10D)の裏面パターン層38Dのように、本発明の第2電極群が複数の矩形部分38D1で構成される複数の島状の塊と、複数の島状の塊以外の部分(蛍光体基板30Dの長手方向の一端から他端に亘りつつ短手方向の一端から他端に亘る網目状の部分30D2)との組み合せであってもよい。
以上のとおり、本発明の第2電極群は、パターンであればよい。
【0089】
また、本実施形態の蛍光体基板30の裏面33には、裏面パターン層38が配置されているとして説明した。しかしながら、
図8Dの変形例の蛍光体基板30A(発光基板10A)のように、裏面33に裏面パターン層38がなくてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 発光基板
20 発光素子
30 蛍光体基板
31 表面(一面の一例)
32 絶縁層(絶縁基板の一例)
33 裏面(他面の一例)
34 電極層(第1電極群の一例)
34A 電極対(複数の電極の一例)
34A1 接合面
34B 配線部分
34B1 非接合面
36 蛍光体層
38 裏面パターン層(第2電極群の一例)
38A 複数の矩形部分(複数の電極の一例)
L 光
MB マザーボード
SP はんだペースト