(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】冷暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240228BHJP
F24D 3/18 20060101ALI20240228BHJP
F24D 3/00 20220101ALI20240228BHJP
【FI】
F24F5/00 101Z
F24D3/18
F24D3/00 B
(21)【出願番号】P 2019062162
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】506122073
【氏名又は名称】エア・ウォーター北海道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】中村 好伸
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-002474(JP,A)
【文献】特許第5508777(JP,B2)
【文献】特公平08-006944(JP,B2)
【文献】特開2016-057014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24D 3/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環する冷媒回路を有するヒートポンプと、
循環液が循環する液回路を有し、上記循環液の熱により室内の空調を行う室内空調機と、
上記冷媒回路を循環する冷媒と上記液回路を循環する循環液との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
上記液回路を循環する循環液を加熱するために、上記循環液に供給するための熱を発生するガス加熱器とを備え、
上記ヒートポンプは、上記冷媒回路における冷媒の循環サイクルを冷却サイクルと加熱サイクルで切換える切換手段を有し、
上記液回路が上記ガス加熱器を通過
し、上記液回路において上記ガス加熱器に対して後述するバイパス路よりも上流側に配置された液循環ポンプの駆動により、上記液回路を循環する循環液が上記ガス加熱
器により直接的に加熱されるよう構成され、
少なくとも上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路を循環する循環液を、上記ガス加熱器の導入側から導出側へバイパスするバイパス路をさらに備え、
上記バイパス路と上記液回路の分岐点に、
少なくとも上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路を循環する循環液が上記バイパス路を流れるよう制御手段により制御される、電磁弁または電動ボールバルブによる三方弁が配置されている
ことを特徴とする冷暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地域においてエネルギー効率のよい暖房運転を実現し、夏場の冷房運転も可能とする冷暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
北海道や東北地方などの寒冷地の住宅では、セントラル給湯暖房がよく用いられる。このようなセントラル給湯暖房は、灯油ボイラ方式が一般的で、その他ガスボイラ方式や電気ボイラ方式も一部に用いられる。灯油の価格変動が大きく、CO2の削減には電気が有効であることから、冷媒と熱交換して温水を循環させるヒートポンプ方式に対する注目度が上がっている。
【0003】
ところが、ヒートポンプ式の電気給湯暖房機は、外気温が一定以下に下がると、成績係数(COP)が低くなり、暖房出力が低下する。寒冷地においては十分な成績係数を得られないレベルまで外気温が低下することがある。このため、ヒートポンプ式の電気給湯暖房機だけでは、最も寒気の厳しい時期に十分な暖房をまかなうことができない。
【0004】
そこで、本出願人は、ヒートポンプ式給湯暖房機とガス加熱式給湯暖房機を組み合わせ、環境温度に基づいて的確に切り換え運転を行なうハイブリッド型の給湯暖房装置として、下記の特許文献1に示すものを開発し、開示した。
また、本出願人は、冷房運転を実現するヒートポンプ式給湯システムに関する先行技術文献として、下記の特許文献2を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5508777号公報
【文献】特開2008-249248号公報
【0006】
上記特許文献1には、下記の記載がある。
[0037]
この給湯暖房装置は、ヒートポンプ式給湯暖房機1と、ガス加熱式給湯暖房機2を組合わせ、主運転をヒートポンプ式給湯暖房機1で行い、ヒートポンプ式給湯暖房機1で十分に暖房運転がまかなえない程度に環境温度が低下したときに、ガス加熱式給湯暖房機2に切り換え運転を行ってヒートポンプ式給湯暖房機1の運転を停止するようにしたものである。
[0050]
一方、外気の環境温度が低下してヒートポンプ式給湯暖房機1の暖房能力が低下してくると、ヒートポンプ式給湯暖房機1から排水されてガス加熱式給湯暖房機2に導入される循環水の水温が第2の設定温度よりも低くなる。このとき、ガス加熱式給湯暖房機2の第2加熱制御手段16は、ガスバーナ9を着火するよう制御してガス加熱を行い、ガス加熱式給湯暖房機2による循環水の加熱を開始する。
【0007】
上記特許文献2には、下記の記載がある。
[0010]
室内空気熱交換器15は,室内の冷房運転を行う空気調和機Yに設けられたものであって,該空気調和機Yには,一般的な空気調和機の室内機が有するその他の構成要素が設けられている。
また,ヒートポンプサイクル1には,圧縮機11で圧縮された冷媒とブラインとの間で熱交換を行う床暖房用熱交換器31(加熱サイクル用熱交換器の一例)と,圧縮機11から流出した冷媒と水との間で熱交換を行う風呂追い焚き用熱交換器41(加熱サイクル用熱交換器の一例)と,圧縮機11から流出した冷媒を水加熱用熱交換器12と床暖房用熱交換器31及び風呂追い焚き用熱交換器41とに分配する冷媒分配弁18とが接続されている。
[0025]
このように,ヒートポンプ式給湯システムXでは,冷房運転の排熱,即ち室内空気熱交換器15で暖められた冷媒の熱を利用して,水加熱用熱交換器12における水の加熱を行うことができる。・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1記載の給湯暖房装置は、あくまで給湯暖房用であって夏場の冷房に対応していない。寒冷地であっても、夏場の短期間に冷房を必要とする時期があり、このようなときは、暑さをがまんするか、扇風機でしのぐ以外に方法がなかった。
上記特許文献1記載の給湯暖房装置において、仮に、冷媒の逆サイクル運転が可能な冷暖房ヒートポンプを適用しようとすると、つぎの問題が生じる。第1に、ガス加熱式給湯暖房機2には、管路に温水を流すのが前提であり、安価な熱動弁が使われる。このため、そのまま冷水を流すと弁が作動しないことになる。第2に、冷暖房ヒートポンプの冷房運転を行うと、ガス加熱式給湯暖房機2に冷水が流れることになる。そうすると、ガス加熱式給湯暖房機2に結露が発生する。結露が発生すると、燃焼管路や電子部品の寿命が縮む。また、漏電のリスクが高まり、最悪は火災が発生するおそれもある。
【0009】
上記特許文献2記載のヒートポンプ式給湯システムは、ヒートポンプによる冷房運転の排熱を水の加熱に利用しようとするものであり、冷房を主体としたシステムである。そのため、ヒートポンプを暖房運転するという思想がなく、上述した弁や結露の課題を解決しうるものではない。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するため、つぎの目的をもってなされたものである。
寒冷地において熱効率のよい暖房を実現しながら、夏場の冷房運転にも対応できる冷暖房装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の冷暖房装置は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
冷媒が循環する冷媒回路を有するヒートポンプと、
循環液が循環する液回路を有し、上記循環液の熱により室内の空調を行う室内空調機と、
上記冷媒回路を循環する冷媒と上記液回路を循環する循環液との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
上記液回路を循環する循環液を加熱するために、上記循環液に供給するための熱を発生するガス加熱器とを備え、
上記ヒートポンプは、上記冷媒回路における冷媒の循環サイクルを冷却サイクルと加熱サイクルで切換える切換手段を有し、
上記液回路が上記ガス加熱器を通過し、上記液回路において上記ガス加熱器に対して後述するバイパス路よりも上流側に配置された液循環ポンプの駆動により、上記液回路を循環する循環液が上記ガス加熱器により直接的に加熱されるよう構成され、
少なくとも上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路を循環する循環液を、上記ガス加熱器の導入側から導出側へバイパスするバイパス路をさらに備え、
上記バイパス路と上記液回路の分岐点に、少なくとも上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路を循環する循環液が上記バイパス路を流れるよう制御手段により制御される、電磁弁または電動ボールバルブによる三方弁が配置されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の冷暖房装置は、ヒートポンプと室内空調機と第1熱交換器とガス加熱器を備えている。上記ヒートポンプは、冷媒が循環する冷媒回路を有する。上記室内空調機は、循環液が循環する液回路を有し、上記循環液の熱により室内の空調を行う。上記第1熱交換器は、上記冷媒回路を循環する冷媒と上記液回路を循環する循環液との間で熱交換を行う。上記ガス加熱器は、上記液回路を循環する循環液を加熱するために、上記循環液に供給するための熱を発生する。
上記ヒートポンプは、上記冷媒回路における冷媒の循環サイクルを冷却サイクルと加熱サイクルで切換える切換手段を有する。また、上記液回路が上記ガス加熱器を通過し、上記液回路において上記ガス加熱器に対して後述するバイパス路よりも上流側に配置された液循環ポンプの駆動により、上記液回路を循環する循環液が上記ガス加熱器により直接的に加熱されるよう構成されている。冬季には、上記ヒートポンプを加熱サイクルで運転する。上記加熱サイクルでは、上記第1熱交換器において、上記液回路を循環する循環液の加熱が行われる。上記液回路を循環する循環液が加熱されると、上記室内空調機では室内の暖房が行われる。寒冷期に外気温が下がってヒートポンプの暖房出力が低下してくると、上記ガス加熱器が発生する熱を上記液回路を循環する循環液に供給する。これにより出力不足を補い、上記室内空調機では引き続き室内の暖房を行うことができる。夏季には、上記ヒートポンプを冷却サイクルで運転する。上記冷却サイクルでは、上記第1熱交換器において、上記液回路を循環する循環液の冷却が行われる。上記液回路を循環する循環液が冷却されると、上記室内空調機では室内の冷房が行われる。上記冷却サイクルでは、上記液回路に冷却液が循環する。また、少なくとも上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路を循環する循環液を、上記ガス加熱器の導入側から導出側へバイパスするバイパス路をさらに備えている。上記バイパス路は、上記液回路を循環する循環液が上記ガス加熱器を経由しないようにバイパスする。このようにすることにより、上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときは、上記液回路を循環する循環液が上記ガス加熱器を経由するのが回避され、ガス加熱器での結露を防止する。これにより、燃焼管路や電子部品の劣化を防ぐとともに漏電リスクを低下させ、機器の寿命を延ばし、安全性を確保する。さらに、上記バイパス路と上記液回路の分岐点に、少なくとも上記ヒートポンプが上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路を循環する循環液が上記バイパス路を流れるよう制御手段により制御される、電磁弁または電動ボールバルブによる三方弁が配置されている。上記三方弁は、たとえば上記バイパス路の下流側の端部に設けられ、必要なタイミングで上記液回路から上記バイパス路に循環液の流れを切換え、上記液回路を循環する循環液が、上記ガス加熱器を経由しないようにバイパスする。上記必要なタイミングは、たとえば上記ヒートポンプが冷却サイクルで運転されて上記液回路に冷却液が流れるタイミングである。上記三方弁が電磁弁または電動ボールバルブによるものであるため、たとえば熱で作動する熱動弁を使うと、エネルギー効率が低下してしまうため、電磁弁や電動ボールバルブ等を用いることにより、エネルギー効率の低下を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した冷暖房装置の実施形態を示す構成図であり、ヒートポンプを加熱サイクルで運転する状態である。
【
図2】上記実施形態において、ヒートポンプを冷却サイクルで運転する状態である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1および
図2は、本発明が適用される冷暖房装置の実施形態を示す図である。
図1は、ヒートポンプ10を加熱サイクルで運転する状態である。
図2は、ヒートポンプ10を冷却サイクルで運転する状態である
【0016】
〔全体構成〕
この冷暖房装置は、冷暖房の熱源を供給する手段として、ヒートポンプ10とガス加熱器20とを備えている。また、室内の冷暖房を行う手段として、室内空調機30と床暖房装置40とを備えている。また、熱源を供給する手段と冷暖房を行う手段のあいだで熱交換を行う第1熱交換器50を備えている。
【0017】
上記ヒートポンプ10で発生した熱を第1熱交換器50で熱交換して室内の冷暖房を行う。上記ガス加熱器20で発生した熱で室内の暖房を行う。上記ヒートポンプ10および上記ガス加熱器20を熱源とする暖房は、室内空調機30および床暖房装置40で行う。また、上記ヒートポンプ10を熱源とする冷房は、室内空調機30で行うようになっている。
【0018】
〔ヒートポンプ10〕
上記ヒートポンプ10は、冷媒回路11、圧縮機12、膨張弁13、空気熱交換器14、切換手段15を備えている。
【0019】
上記冷媒回路11は、冷媒として冷媒ガスが循環する。上記冷媒ガスとしては、たとえば、HFC-134a等の代替フロン系冷媒を用いることができる。上記冷媒ガスには、上記のもの以外に、プロパン等の炭化水素系冷媒や二酸化炭素冷媒などを用いることができる。
【0020】
上記圧縮機12は、上記冷媒回路11の経路に配置され、冷媒回路11を循環する冷媒ガスを圧縮する。上記圧縮機12で圧縮された冷媒ガスは、高温高圧となって上記冷媒回路11を循環し、後述する冷媒の循環サイクルにおいて冷房または暖房に寄与する。
【0021】
上記膨張弁13は、上記冷媒回路11の経路に配置され、冷媒回路11を循環する冷媒ガスを断熱膨張させる。上記膨張弁13で断熱膨張された冷媒ガスが上記冷媒回路11を循環し、後述する冷媒の循環サイクルにおいて冷房または暖房に寄与する。
【0022】
上記空気熱交換器14は、上記冷媒回路11の経路に配置され、後述する冷媒の循環サイクルにおいて、冷媒回路11を循環する冷媒ガスと空気との間で熱交換を行う。
【0023】
上記切換手段15は、上記冷媒回路11における冷媒の循環サイクルを冷却サイクルと加熱サイクルで切換える。上記循環サイクルの切換えは、制御手段81の制御により行うことができる。上記切換手段15として具体的には、第1ポート1,第2ポート2,第3ポート3,第4ポート4を有する四方切換弁を用いることができる。
【0024】
図1に示すように、上記加熱サイクルは、上記第1ポート1と第2ポート2を連通させ、上記第3ポート3と第4ポート4を連通させるよう、上記切換手段15を切換える。このとき、上記冷媒回路11は、圧縮機12、第3ポート3、第4ポート4、第1熱交換器50、膨張弁13、空気熱交換器14、第2ポート2、第1ポート1、圧縮機12の順に冷媒ガスが循環するように構成される。
【0025】
上記加熱サイクルでは、上述したように冷媒ガスを循環させることにより、圧縮機12で圧縮されて高温となった冷媒ガスの熱を第1熱交換器50で熱交換し、暖房に利用する。
【0026】
すなわち、圧縮機12で圧縮されて高温高圧となった冷媒ガスは、第3ポート3と第4ポート4を経由して第1熱交換器50に導入される。第1熱交換器50では、後述する液回路70を循環する循環液が高温の冷媒ガスと熱交換されて加熱される。加熱された循環液の熱が暖房に利用される。第1熱交換器50での熱交換で冷却された冷媒ガスは凝縮して液化する。液化した冷媒ガスは、膨張弁13で断熱膨張されて減圧され、気液二相状態となる。気液二相状態の冷媒ガスは、空気熱交換器14に導入されて外気からの熱を受ける。この外気との熱交換により、気液二相のうち液相が気化し、気体の冷媒ガスとなる。符号14Aは、空気熱交換器14に外気を送って熱交換を促進するファンである。上記気体の冷媒ガスは、第2ポート2と第1ポート1を経由してふたたび圧縮機12の吸引側に導入される。
【0027】
図2に示すように、上記冷却サイクルは、上記第2ポート2と第3ポート3を連通させ、上記第4ポート4と第1ポート1を連通させるよう、上記切換手段15を切換える。このとき、上記冷媒回路11は、圧縮機12、第3ポート3、第2ポート2、空気熱交換器14、膨張弁13、第1熱交換器50、第4ポート4、第1ポート1、圧縮機12の順に冷媒ガスが循環するように構成される。
【0028】
上記冷却サイクルでは、上述したように冷媒ガスを循環させることにより、膨張弁13で断熱膨張されて低温となった冷媒ガスの冷熱を第1熱交換器50で熱交換し、冷房に利用する。
【0029】
すなわち、圧縮機12で圧縮されて高温高圧となった冷媒ガスは、第3ポート3と第2ポート2を経由して空気熱交換器14に導入される。空気熱交換器14では、外気との熱交換により、高温高圧となった冷媒ガスを冷却する。冷却された高圧の冷媒ガスは、膨張弁13で断熱膨張されて減圧されて低温になる。低温になった冷媒ガスは、第1熱交換器50に導入される。第1熱交換器50では、後述する液回路70を循環する循環液が低温の冷媒ガスと熱交換されて冷却される。冷却された循環液の熱が冷房に利用される。第1熱交換器50での熱交換で加熱された冷媒ガスは、第4ポート4と第1ポート1を経由してふたたび圧縮機12の吸引側に導入される。
【0030】
冷却サイクルでは、液回路70に流れる冷却液の冷熱を冷房に利用するため、ガス加熱器20による加熱は行わない。
【0031】
〔第1熱交換器50〕
第1熱交換器50は、上記冷媒回路11を循環する冷媒ガスと液回路70を循環する循環液との間で熱交換を行う。
上述したように、上記ヒートポンプ10を加熱サイクルで運転したときは、高温の冷媒ガスとの熱交換で循環液が加熱され、その熱が暖房に利用される。
一方、上記ヒートポンプ10を冷却サイクルで運転したときは、低温の冷媒ガスとの熱交換で循環液が冷却され、その冷熱が冷房に利用される。
【0032】
〔ガス加熱器20〕
ガス加熱器20は、上記液回路70を循環する循環液を加熱するために、上記循環液に供給するための熱を発生する。
【0033】
具体的には、上記ガス加熱器20は、熱媒体循環路21(上記液回路70の一部)と、ガスバーナ23とを備えている。
上記熱媒体循環路21は、上記ガス加熱器20で加熱される熱媒体(この例では循環液とおなじ)が循環する。上記熱媒体としては、たとえば水を用いることができる。上記ガスバーナ23は、上記熱媒体循環路21の経路において、熱媒体循環路21を循環する熱媒体を加熱する。上記ガス加熱器20は標準仕様のものをそのまま使うことができる。
【0034】
このように、上記ガス加熱器20は、上記液回路70を循環する循環液を加熱するために、上記循環液に供給するための熱を発生する。ガスバーナ23の熱が、熱媒体循環路21および液回路70の循環液に移動するように構成されている。
【0035】
上記ガス加熱器20を利用した循環液の加熱は、上記ヒートポンプ10の加熱サイクルで暖房能力が不足するときに行うことができる。上記ガス加熱器20を利用した循環液の加熱を行うあいだ、上記ヒートポンプ10の加熱サイクルによる運転を停止することができる。上記ガス加熱器20による循環液の加熱の開始や、そのあいだのヒートポンプ10の停止は、制御手段81の制御により行うことができる。
【0036】
〔液回路70〕
上記液回路70は、循環液が循環する。上記循環液としては、水を用いることができる。
【0037】
上記液回路70の経路には液循環ポンプ71が配置されている。これにより、上記液回路70において上記循環液を循環させる。この例では、上記循環液は、図示の矢印A方向に循環する。
【0038】
上記液回路70は、上記第1熱交換器50を経由する。これにより上述したように、循環液が、ヒートポンプ10の冷媒ガスとの熱交換により加熱または冷却される。
上記液回路70は、上記ガス加熱器20を経由する。これにより上述したように、循環液が、ガス加熱器20により加熱される。
【0039】
上記液回路70には、上記循環液の熱を利用する冷暖房装置が設けられている。
【0040】
〔冷暖房装置〕
上記冷暖房装置として、この例では、室内空調機30と床暖房装置40が設けられている。
【0041】
上記室内空調機30は、上記循環液の熱により室内の空調を行う。上記室内空調機30は、第1導入路31、冷暖房器32、第1排出路33、第1三方弁34、ファン35を備えている。
【0042】
上記第1導入路31は、上記液回路70から分岐するよう設けられ、上記液回路70に流れる循環液を上記冷暖房器32に導入する。
【0043】
上記冷暖房器32は、上記液回路70から導入された循環液の熱により室内の空調を行う。上記ヒートポンプ10が加熱サイクルで運転されたときは、加熱された循環液が上記冷暖房器32に導入され、その熱が室内の暖房に利用される。上記ヒートポンプ10が冷却サイクルで運転されたときは、冷却された循環液が上記冷暖房器32に導入され、その熱が室内の冷房に利用される。つまり、上記室内空調機30による室内の空調は、暖房と冷房を少なくとも含む。
【0044】
上記ファン35は、上記冷暖房器32に導入された循環液の熱と室内の空気との熱交換を促進する。
【0045】
上記第1排出路33は、上記液回路70に合流するよう設けられ、上記冷暖房器32において暖房または冷房で熱交換された後の循環液を上記冷暖房器32から排出し、上記液回路70に戻す。
【0046】
上記第1三方弁34は、暖房または冷房が必要なタイミングで上記液回路70から上記第1導入路31に循環液を流し、冷暖房器32による暖房または冷房を開始する。上記第1三方弁34の切換えによる上記暖房または冷房の開始や停止は、制御手段81の制御により行うことができる。
【0047】
上記床暖房装置40は、上記循環液の熱により床暖房を行う。上記床暖房装置40は、第2導入路41、床暖房ライン42、第2排出路43、第2三方弁44を備えている。
【0048】
上記第2導入路41は、上記液回路70から分岐するよう設けられ、上記液回路70に流れる循環液を上記床暖房ライン42に導入する。
【0049】
上記床暖房ライン42は、上記液回路70から導入された循環液の熱により床暖房を行う。上記ヒートポンプ10が加熱サイクルで運転されているときに、加熱された循環液が上記床暖房ライン42に導入され、床暖房を行う。
【0050】
上記第2排出路43は、上記液回路70に合流するよう設けられ、上記床暖房ライン42において床暖房で熱交換された後の循環液を上記床暖房ライン42から排出し、上記液回路70に戻す。
【0051】
上記第2三方弁44は、床暖房が必要なタイミングで上記液回路70から上記第2導入路41に循環液を流し、床暖房を開始する。上記第2三方弁44の切換えによる上記床暖房の開始や停止は、制御手段81の制御により行うことができる。
【0052】
〔弁〕
上記液回路70は、上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときに上記循環液が循環する部分には、熱動弁が存在しない。したがって、冷却された循環液が流れる可能性がある管路には、熱を発生しない電磁弁や電動ボールバルブを用いる。たとえば、上記室内空調機30には、冷却された循環液が流れることがあるため、熱動弁を使用せず、電磁弁や電動ボールバルブを用いる。上記床暖房装置40は、加熱された循環液しか流れず、冷却された循環液が流れることがないため、熱動弁を使用することができる。
【0053】
〔回避手段80〕
本実施形態では、少なくとも上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路70を循環する循環液が上記ガス加熱器20を経由するのを回避させる回避手段80をさらに備えている。
【0054】
上記回避手段80は、バイパス路90と第3三方弁91とを含んで構成される。上記バイパス路90は、上記液回路70を循環する循環液が、上記ガス加熱器20を経由しないようにバイパスする。つまり、上記バイパス路90は、上記液回路70が上記ガス加熱器20に入る導入側と、上記液回路70が上記ガス加熱器20から出る導出側とを連通させるものである。
【0055】
上記第3三方弁91は、上記液回路70から上記バイパス路90が分岐する分岐点(つまりバイパス路90の下流側の端部である)に設けられている。上記第3三方弁91は、必要なタイミングで上記液回路70から上記バイパス路90に循環液の流れを切換え、上記液回路70を循環する循環液が、上記ガス加熱器20を経由しないようにバイパスする。上記必要なタイミングは、上記ヒートポンプが冷却サイクルで運転されて上記液回路70に冷却液が流れるタイミングである。上記第3三方弁91の切換えによるバイパスの開始や停止は、制御手段81の制御により行うことができる。
【0056】
上記回避手段80により、上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときは、上記液回路70を循環する循環液が上記ガス加熱器20を経由するのを回避させることができる。したがって、上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときは、上記液回路70を循環する冷却された循環液が、上記ガス加熱器20を経由しない。これにより、ガス加熱器20での結露が防止される。
【0057】
また、上記実施形態では、上記液回路70において上記循環液を循環させる液循環ポンプ71は、上記ガス加熱器20に対して上記バイパス路90よりも遠い位置に配置されている。
【0058】
〔実施形態の効果〕
上記実施形態の冷暖房装置は、ヒートポンプ10と室内空調機30と第1熱交換器50とガス加熱器20を備えている。上記ヒートポンプ10は、冷媒が循環する冷媒回路11を有する。上記室内空調機30は、循環液が循環する液回路70を有し、上記循環液の熱により室内の空調を行う。上記第1熱交換器50は、上記冷媒回路11を循環する冷媒と上記液回路70を循環する循環液との間で熱交換を行う。上記ガス加熱器20は、上記液回路70を循環する循環液を加熱するために、上記循環液に供給するための熱を発生する。
上記ヒートポンプ10は、上記冷媒回路11における冷媒の循環サイクルを冷却サイクルと加熱サイクルで切換える切換手段15を有する。また、上記液回路が上記ガス加熱器を通過し、上記液回路70において上記ガス加熱器20に対して後述するバイパス路90よりも上流側に配置された液循環ポンプ71の駆動により、上記液回路70を循環する循環液が上記ガス加熱器により直接的に加熱されるよう構成されている。冬季には、上記ヒートポンプ10を加熱サイクルで運転する。上記加熱サイクルでは、上記第1熱交換器50において、上記液回路70を循環する循環液の加熱が行われる。上記液回路70を循環する循環液が加熱されると、上記室内空調機30では室内の暖房が行われる。寒冷期に外気温が下がってヒートポンプ10の暖房出力が低下してくると、上記ガス加熱器20が発生する熱を上記液回路70を循環する循環液に供給する。これにより出力不足を補い、上記室内空調機30では引き続き室内の暖房を行うことができる。夏季には、上記ヒートポンプ10を冷却サイクルで運転する。上記冷却サイクルでは、上記第1熱交換器50において、上記液回路70を循環する循環液の冷却が行われる。上記液回路70を循環する循環液が冷却されると、上記室内空調機30では室内の冷房が行われる。上記冷却サイクルでは、上記液回路70に冷却液が循環する。また、少なくとも上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路70を循環する循環液を、上記ガス加熱器20の導入側から導出側へバイパスするバイパス路90をさらに備えている。上記バイパス路90は、上記液回路70を循環する循環液が上記ガス加熱器20を経由しないようにバイパスする。このようにすることにより、上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときは、上記液回路70を循環する循環液が上記ガス加熱器20を経由するのが回避され、ガス加熱器20での結露を防止する。これにより、燃焼管路や電子部品の劣化を防ぐとともに漏電リスクを低下させ、機器の寿命を延ばし、安全性を確保する。さらに、上記バイパス路90と上記液回路70の分岐点に、少なくとも上記ヒートポンプ10が上記冷却サイクルで運転しているときに、上記液回路70を循環する循環液が上記バイパス路90を流れるよう制御手段81により制御される、電磁弁または電動ボールバルブによる第3三方弁91が配置されている。上記第3三方弁91は、たとえば上記バイパス路90の下流側の端部に設けられ、必要なタイミングで上記液回路70から上記バイパス路90に循環液の流れを切換え、上記液回路70を循環する循環液が、上記ガス加熱器20を経由しないようにバイパスする。上記必要なタイミングは、たとえば上記ヒートポンプ10が冷却サイクルで運転されて上記液回路70に冷却液が流れるタイミングである。上記第3三方弁91が電磁弁または電動ボールバルブによるものであるため、たとえば熱で作動する熱動弁を使うとエネルギー効率が低下してしまうため、電磁弁や電動ボールバルブ等を用いることにより、エネルギー効率の低下を防止している。
【0059】
◆まとめ
以上のように、本発明の冷暖房装置では、寒冷地において熱効率のよい暖房を実現しながら、夏場の冷房にも対応できる。また、冷房エアコンを別途取り付ける必要がないので、設備経費を節減できる。ヒートポンプの室外機と室内機が冷暖房を兼用して1台で済むため、外観がスッキリする。室内暖房はヒートポンプとガス加熱を切換え使用するので、外気温に関係なく強力な暖房ができる。
【0060】
◆変形例
上記実施形態では、循環液の熱を室内暖房に用いる例を示したが、これに限定するものではなく、浴室給湯装置や追い炊き装置等、各種の給湯設備に用いるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1:第1ポート
2:第2ポート
3:第3ポート
4:第4ポート
10:ヒートポンプ
11:冷媒回路
12:圧縮機
13:膨張弁
14:空気熱交換器
14A:ファン
15:切換手段
20:ガス加熱器
21:熱媒体循環路
23:ガスバーナ
30:室内空調機
31:第1導入路
32:冷暖房器
33:第1排出路
34:第1三方弁
35:ファン
40:床暖房装置
41:第2導入路
42:床暖房ライン
43:第2排出路
44:第2三方弁
50:第1熱交換器
70:液回路
71:液循環ポンプ
80:回避手段
81:制御手段
90:バイパス路
91:第3三方弁