(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B31B 50/59 20170101AFI20240228BHJP
B31D 5/00 20170101ALI20240228BHJP
B31B 100/00 20170101ALN20240228BHJP
B31B 120/70 20170101ALN20240228BHJP
【FI】
B31B50/59
B31D5/00
B31B100:00
B31B120:70
(21)【出願番号】P 2019067175
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】荒内 隆志
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-017709(JP,U)
【文献】特開平08-057553(JP,A)
【文献】特開2006-315205(JP,A)
【文献】特開2002-086244(JP,A)
【文献】特開2014-172080(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00700833(EP,A1)
【文献】米国特許第03007377(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/00
B31D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形装置を用いてシート状部材から成るブランクをプレス成形することにより、ブランク成形体を成形する工程を経て、容器を製造する方法であって、
前記ブランク成形体は底部とこの底部から起立する周壁部とを有し、前記周壁部は、平坦に形成される平面状部分と、前記起立する方向へ延びる線状の折り曲げ部に沿って前記周壁部を折り曲げることにより形成される襞状部分とを有し、
前記ブランクは、前記底部に対応する底面相当部と前記周壁部に対応する周壁相当部とを有し、前記周壁相当部は、前記平面状部分に対応する平面状部分形成領域と前記襞状部分に対応する襞状部分形成領域とを有し、
前記プレス成形装置は、前記ブランクの前記底面相当部を押圧する押圧手段と、前記押圧手段の押圧方向に沿って伸び前記周壁部の外面を規定する成形面を備えると共に、前記押圧方向に沿う一方側及び他方側が開口する成形空間とを有し、
前記成形空間の前記一方側に、第1の前記ブランクを配置する第1の工程、
前記押圧手段で第1の前記ブランクの前記底面相当部を前記成形空間の前記一方側から前記他方側へ押圧することにより、前記底面相当部を前記成形空間内へ押し込む第2の工程、
前記底面相当部を前記成形空間内へ押し込むことにより、前記周壁相当部を前記成形面に接触させて前記底面相当部に対し起立させると共に、前記襞状部分形成領域において前記起立する方向へ延びる線状の折り曲げ部に沿って前記周壁相当部を折り曲げることにより前記襞状部分を形成して、前記平面状部分と前記襞状部分とを含む前記周壁部が形成された第1の前記ブランク成形体を得る第3の工程、
第1の前記ブランク成形体が前記成形空間内に保持された状態で、前記成形空間の前記一方側に、第2の前記ブランクを配置する第4の工程、
前記第2の工程及び前記第3の工程を行うことにより、第1の前記ブランク成形体に積み重なるように、第2の前記ブランク成形体を形成する第5の工程、並びに、
前記第4の工程及び前記第5の工程を反復することにより、後続して成形される前記ブランク成形体の底部により、先行して成形され前記成形空間内に保持された前記ブランク成形体の前記周壁部を押圧して、前記ブランク成形体を前記成形空間内の前記一方側から前記他方側へ移動させる第6の工程、を含み、
前記第3の工程において、前記ブランク成形体の周壁部は、前記襞状部分の少なくとも一部における前記底部からの高さが、前記平面状部分の前記底部からの高さよりも大きくなるように形成され、
前記第6の工程において、後続して成形される前記ブランク成形体の底部は、先行して成形された前記ブランク成形体の襞状部分に優先的に接触する、容器の製造方法。
【請求項2】
前記ブランク成形体の周壁部は、前記底部の中心軸に対し互いに回転対象となる位置に前記襞状部分が配置されるように成形され、前記各襞状部分は、前記底部からの高さが、前記平面状部分の前記底部からの高さよりも大きい部分を含む、請求項1記載の容器の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などのシート状部材から成る容器の製造方法に関し、特に、周壁部に平坦な平面状部分と、周壁部を折り曲げて形成した襞状部分とを有する容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙等のシート状部材から成り、底部と周壁部とを有し上面が開口する容器は、例えば食品の収納用として広く使用されている。このような容器を製造するための技術が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1が対象とする容器は、上部が開口し、円形の底部とこの底部から起立する周壁部とを有し、周壁部に、起立方向に延びる線状の折り曲げ部で折り曲げて形成した多数の襞が一定間隔で配置された形状を有している。この襞付きの容器は、従来、プレス成形装置を用いてプレス成形法により製造される。
【0004】
図15は、容器を製造するためのプレス成形装置を示す断面図である。
【0005】
プレス成形装置1は、押圧部3及び駆動軸4を含む雄型2と、円筒形状の成形面7を備え、一方側6a及び他方側6bが開口する成形空間6を有する雌型5とを含む。
【0006】
雄型2の押圧部3は、駆動軸4により、成形空間6の連通方向に沿って進退可能に構成される。雌型5は、一方側6aにテーパ状の案内面8aを持つ雌型主部8と、雌型主部8に連接して成形空間6を他方側6bへ伸ばすための延長部9A、9Bを備える。
【0007】
雌型主部8の案内面8a、及び、雌型5の成形面7には、製造する容器の襞形状に対応した溝部m2~m5が、一方側6aから他方側6bまで連通するように形成されている。そして、雄型2における雌型主部8の案内面8aに対応する部分にも、同様の溝部m1が形成されている。
【0008】
尚、図示は省略するが、雄型を雌型に対し接近・離隔させるための移動手段が設けられる。又、雄型及び雌型それぞれを加熱するためヒータと、このヒータの動作を制御するための制御手段が設けられる。
【0009】
このプレス成形装置1を用いた襞付き容器の製造は、以下のような工程で行われる。
【0010】
始めに、ヒータで、雄型2及び雌型5を適温に加熱した状態とする。
【0011】
次に、雌型5における成形空間6の一方側6aにブランクを配置する。ブランクは、製造する容器の形状及び大きさに合わせて成形されたシート状部材であり、通常は、同時に複数個の容器を製造するため、複数枚のブランクを積層した状態で用いる。
【0012】
続いて、移動手段で雄型2を雌型5に接近する方向へ移動させ、雄型2と雌型5との間にブランクを挟んだ状態とし、必要に応じこの状態を一定時間保持することにより、ブランクにおける周壁部に相当する部分に、溝部m1、m2の溝形状を転写させる。
【0013】
引き続き、雄型2と雌型5との間にブランクを挟んだ状態で、雄型2の駆動軸4により、押圧部3を成形空間6へ向かって移動させ、ブランクを成形空間6内へ押圧する。これにより、ブランクにおける底部に相当する部分が成形空間6内へ押し込まれると同時に、周壁に相当する部分が成形面7に接触することで起立する。その際、成形面の溝部m3により案内されて、周壁部が、起立する方向へ延びる線状の折り曲げ部に沿って折り曲げられ、多数の襞状部分が形成された第1のブランク成形体が成形される。
【0014】
引き続き、雄型2を雌型5から離隔させ、第1のブランク成形体を成形空間6内に保持した状態で、成形空間6の一方側6aに、第2のブランクを配置する。そして、前述の工程を再度実行して、第1のブランク成形体に積み重なるように、第2のブランク成形体を形成する。
【0015】
以上の工程を何度か反復することにより、成形空間6内にブランク成形体が蓄積されるが、この時、後続して成形されるブランク成形体の底部により先行して成形されたブランク成形体の周壁部が押圧される結果、ブランク成形体は成形空間6内を一方側6aから他方側6bへ移動することになる。又、各ブランク成形体は、成形空間6内を移動する間に成形面7によって加熱処理され、形状が固定化される。そしてブランク成形体は最終的に雌型5の他方側6bから、完成した襞付き容器として排出される。
【0016】
尚、特許文献1では、雌型主部8に延長部9A、9Bを連接して、ブランク成形体の形状固定化に要する加熱時間を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図16は従来の容器の製造に用いられるブランクの平面図であり、
図17は従来の異なる形状の容器の製造に用いられるブランクの平面図であり、
図18は
図16のブランクを用いて製造した従来の容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図であり、
図19は
図17のブランクを用いて製造した従来の容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【0019】
特許文献1記載の技術が製造対象とする容器は、底部が円形であり、周壁部は全周にわたり一定間隔で襞が形成された形状を有するものである。この技術を用いて、
図16に示すような、外周縁が円弧状の部分52aと直線状の部分52bとを組み合わせた形状であるブランク50を用いて、
図18に示すような、底部54から起立する周壁部55が、平坦に形成された平面状部分56と周壁部55を折り曲げて形成した襞状部分57とを有する形状である容器53を製造する場合、或いは
図17に示すような、外周縁が半円状の部分62aと直線状の部分62bとを組み合わせた形状であるブランク60を用いて、
図19に示すような、底部64から起立する周壁部65が平面状部分66と襞状部分67とを有する形状の容器63を製造する場合、成形工程において、平面状部分56(66)が変形したり潰れたりするという問題があった。その理由を、
図16のブランク50から
図18の容器53を製造する場合を例にして説明する。
【0020】
図20は
図16のブランクを用いて成形したブランク成形体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図であり、
図21は従来の製造方法の問題点を説明するためのプレス成形装置の部分拡大断面図である。
【0021】
ブランク50をプレス加工することで
図20に示すようなブランク成形体58が得られる。
図16に示す従来のブランク50は、周壁に相当する部分52の周縁部から、底部に相当する部分51までの間隔寸法が、円弧状の部分52aでも直線状の部分52bでも同一寸法d1となるように設定されている。これによりブランク成形体58は、平面状部分56と襞状部分57とが同じ高さとなるように設計される。このブランク成形体58は、形状固定化のため成形空間内に加熱状態で貯留され、後続のブランク成形体の底部が先行するブランク成形体の周壁部を押圧することによって、成形空間内を移動する。このとき、
図21に示すように、ブランク成形体58が設計通りに成形されず、周壁部55の高さが均一にならなかったり、ブランク成形体58の姿勢が適正でなかったりした場合、押圧力が比較的強度(座屈強度)が低い平面状部分56に作用する場合がある。これにより、平面状部分56に変形が発生すると、歩留まりが低下する。
【0022】
図17に示す従来のブランク60をプレス加工して
図19に示す容器63を製造する場合も同様であり、ブランク60は、周壁に相当する部分62の周縁部から、底部に相当する部分61までの間隔寸法が、半円状の部分62aでも直線状の部分62bでも同一寸法d2となるように設定されている。そのため、成形工程で得られるブランク成形体は平面状部分と襞状部分とが同じ高さとなるように設計されるので、上記と同様の理由により、平面状部分66に変形が発生して、歩留まりが低下するという問題がある。
【0023】
又、特許文献1のように、雌型主部8に延長部9A、9Bを連接してブランク成形体の形状固定化に要する加熱時間を確保するようにした場合には、成形空間6内には複数のブランク成形体が貯留され、成形空間6の他方側6b付近に貯留されるブランク成形体の上には多数のブランク成形体が積み重なることになるので上側に位置するブランク成形体からの押圧の繰り返しによっても変形が生じやすくなる。そこで、歩留まりを上げるために延長部9A、9Bの連接個数を減らして成形空間6内でのブランク成形体の停留時間を長くすることで加熱時間を長く取ることも考えられるが、そうするとブランク成形体の形成に要する時間と加熱時間とのバランスが悪くなり、容器1個あたりの製造に要する時間が長くなるので、容器の生産性が低下する。
【0024】
本発明は、生産性を低下させることなくブランク成形体にこのような潰れや変形が生じるのを防止して歩留まりを向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の容器の製造方法は、プレス成形装置を用いてシート状部材から成るブランクをプレス成形することにより、ブランク成形体を成形する工程を経て、容器を製造する方法であって、ブランク成形体は底部とこの底部から起立する周壁部とを有し、周壁部は、平坦に形成される平面状部分と、起立する方向へ延びる線状の折り曲げ部に沿って周壁部を折り曲げることにより形成される襞状部分とを有し、ブランクは、底部に対応する底面相当部と周壁部に対応する周壁相当部とを有し、周壁相当部は、平面状部分に対応する平面状部分形成領域と襞状部分に対応する襞状部分形成領域とを有し、プレス成形装置は、ブランクの底面相当部を押圧する押圧手段と、押圧手段の押圧方向に沿って伸び周壁部の外面を規定する成形面を備えると共に、押圧方向に沿う一方側及び他方側が開口する成形空間とを有し、成形空間の一方側に、第1のブランクを配置する第1の工程、押圧手段で第1のブランクの底面相当部を成形空間の一方側から他方側へ押圧することにより、底面相当部を成形空間内へ押し込む第2の工程、底面相当部を成形空間内へ押し込むことにより、周壁相当部を成形面に接触させて底面相当部に対し起立させると共に、襞状部分形成領域において起立する方向へ延びる線状の折り曲げ部に沿って周壁相当部を折り曲げることにより襞状部分を形成して、平面状部分と襞状部分とを含む周壁部が形成された第1のブランク成形体を得る第3の工程、第1のブランク成形体が成形空間内に保持された状態で、成形空間の一方側に、第2のブランクを配置する第4の工程、第2の工程及び第3の工程を行うことにより、第1のブランク成形体に積み重なるように、第2のブランク成形体を形成する第5の工程、並びに、第4の工程及び第5の工程を反復することにより、後続して成形されるブランク成形体の底部により、先行して成形され成形空間内に保持されたブランク成形体の周壁部を押圧して、ブランク成形体を成形空間内の一方側から他方側へ移動させる第6の工程、を含み、第3の工程において、ブランク成形体の周壁部は、襞状部分の少なくとも一部における底部からの高さが、平面状部分の底部からの高さよりも大きくなるように形成され、第6の工程において、後続して成形されるブランク成形体の底部は、先行して成形されたブランク成形体の襞状部分に優先的に接触するものである。
【0026】
このように構成すると、第1~第6の工程を行うことで、底部と周壁部とを有するブランク成形体が連続的に形成される。第1~第3の工程で、シート状のブランクの底面相当部を成形空間内へ押し込み、周壁相当部を成形面に接触させて起立させ、その際、周壁相当部の襞状部分形成領域を折り曲げて襞状部分を形成することにより、平面状部分と襞状部分とを含む周壁部が形成される。第4~第6の工程で順次成形されるブランク成形体は、後続のブランク成形体の底部が先行するブランク成形体の周壁部を押圧することで、成形空間の一方側から他方側へ移動し、やがて他方側から排出される。ブランク成形体の周壁部は、襞状部分の少なくとも一部の底部からの高さが平面状部分の底部からの高さよりも大きくなるように形成されるので、後続のブランク成形体の底部は、先行するブランク成形体の襞状部分に優先的に接触する。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、ブランク成形体の周壁部は、底部の中心軸に対し互いに回転対象となる位置に襞状部分が配置されるように成形され、各襞状部分は、底部からの高さが、平面状部分の底部からの高さよりも大きい部分を含むものである。
【0028】
このように構成すると、平面状部分よりも高い部分を含む複数の襞状部分が、底部の中心軸に対し回転対称となる位置に配置される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、後続のブランク成形体の底部で先行するブランク成形体の周壁部を押圧する際に、比較的強度が高い襞状部分に優先的に押圧力を作用させ、比較的強度が低い平面状部分に押圧力が作用するのを回避又は抑制するので、ブランク成形体に潰れや変形が生じるのを防止して、歩留まりを向上させることができる。その際、基本的な製造工程の変更を伴わないから、生産性の低下を招くおそれがない。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、高さが大きい襞状部分が底部の中心軸に対し回転対称の位置に配置されるから、襞状部分による後続のブランク成形体の底部を支持する姿勢が安定化し、平面状部分の変形や潰れをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】(A)は、本発明の第1の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図である。
【
図2】
図1のブランクを用いて成形したブランク成形体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は積み重ねた状態の部分拡大正面図である。
【
図3】
図1のブランクを用いて製造した容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図4】本発明の製造方法の第1の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【
図5】本発明の製造方法の第2の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【
図6】本発明の製造方法の第3の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【
図7】本発明の製造方法の第4の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【
図8】本発明の製造方法の第5の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【
図9】本発明の製造方法の第6の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【
図10】(A)は、本発明の第2の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図である。
【
図11】
図10のブランクを用いて成形したブランク成形体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図12】
図10のブランクを用いて製造した容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図13】(A)は、本発明の第3の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図である。
【
図14】(A)は、本発明の第4の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図である。
【
図15】容器を製造するためのプレス成形装置を示す断面図である。
【
図16】従来の容器の製造に用いられるブランクの平面図である。
【
図17】従来の異なる形状の容器の製造に用いられるブランクの平面図である。
【
図18】
図16のブランクを用いて製造した従来の容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図19】
図17のブランクを用いて製造した従来の容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図20】
図16のブランクを用いて成形したブランク成形体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図21】従来の製造方法の問題点を説明するためのプレス成形装置の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施の形態]
図1の(A)は、本発明の第1の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図であり、
図2は、
図1のブランクを用いて成形したブランク成形体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は積み重ねた状態の部分拡大正面図であり、
図3は、
図1のブランクを用いて製造した容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図であり、
図4は、本発明の製造方法の第1の工程の状態にある製造装置を示す断面図であり、
図5は、本発明の製造方法の第2の工程の状態にある製造装置を示す断面図であり、
図6は、本発明の製造方法の第3の工程の状態にある製造装置を示す断面図であり、
図7は、本発明の製造方法の第4の工程の状態にある製造装置を示す断面図であり、
図8は、本発明の製造方法の第5の工程の状態にある製造装置を示す断面図であり、
図9は、本発明の製造方法の第6の工程の状態にある製造装置を示す断面図である。
【0036】
この実施の形態において、容器30A(
図3参照)を製造するためのブランク10Aは、
図1に示すように、容器の底部に対応する底面相当部11と周壁部に対応する周壁相当部12とを有し、周壁相当部12は、平面状部分に対応する平面状部分形成領域12bと襞状部分に対応する襞状部分形成領域12aとを有する。本例では、端縁部が円弧状の部分が襞状部分形成領域12aであり、端縁部が直線状の部分が平面状部分形成領域12bである。そして、襞状部分形成領域12aと平面状部分形成領域12bとは、周壁相当部12を底面相当部11に対し起立させて底部と周壁部とを有するブランク成形体(
図2参照)を成形した状態において、襞状部分の少なくとも一部が平面状部分よりも高くなるように領域設定される。
【0037】
具体的には、
図1の(B)を参照して、襞状部分形成領域12aの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D1を、平面状部分形成領域12bの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D2より大きく設定する。従来のブランクでは、周壁相当部12の端縁部における円弧状の部分14は、底面相当部11の外縁部の円弧状部分13と点P1を共通の中心とする同心円であり、周壁相当部12の端縁部における直線状の部分は、底面相当部11の外縁部の直線状部分と平行となるように設定され、周壁相当部12の端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D2は一定である。これに対し本例のブランク10Aでは、襞状部分形成領域12aの端縁部となっている円弧部分の中心を、底面相当部11の外縁部の円弧状部分13上に設定し、半径を上記D1に設定するものとした。
【0038】
次に、このブランク10Aを用いた容器の製造方法について説明する。ここでは、
図15に示すプレス成形装置1が使用されるので、プレス成形装置1の構造に関する説明は省略する。尚、プレス成形装置1の押圧部3が、ブランク10Aの底面相当部11を押圧する押圧手段に相当する。又、ブランク10Aは、紙、プラスチックフィルム、金属箔などのシート状部材から成る。複数の製品を同時に製造する場合は、複数枚のブランク10Aを積層した状態で使用する。
【0039】
始めに、必要に応じ、ヒータ等で雄型2及び雌型5を適温に加熱した状態とする。
【0040】
次に、
図4に示すように、雌型5における成形空間6の一方側6aにブランク10Aを配置する(第1の工程)。
【0041】
続いて
図5に示すように、移動手段(不図示)で雄型2を雌型5に接近する方向へ移動させ(第2の工程)、雄型2と雌型5との間にブランク10Aを挟んだ状態とし、必要に応じこの状態を一定時間保持することにより、襞状部分形成領域12aに、溝部m1、m2の溝形状を転写させる。
【0042】
引き続き、雄型2と雌型5との間にブランク10Aを挟んだ状態で、雄型2の駆動軸4により、押圧部3を成形空間6へ向かって移動させ、ブランク10Aを成形空間6へ向かって押圧する。これにより、ブランク10Aの底面相当部11が成形空間6内へ押し込まれると同時に、周壁相当部12が成形面7に接触することで起立し、
図6に示すような第1のブランク成形体20Aが形成される。その際、成形面の溝部m3に案内されて、襞状部分形成領域12aが、起立する方向へ延びる線状の折り曲げ部に沿って折り曲げられ、その結果、
図2に示すように、平面状部分23と襞状部分24とを含む周壁部22が形成される(第3の工程)。
【0043】
このとき、ブランク10Aは、襞状部分形成領域12aの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D1を、平面状部分形成領域12bの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D2よりも大きくなるように設定したので、ブランク成形体20Aを成形した状態において、襞状部分24の少なくとも一部の高さH1が、平面状部分23の高さH2よりも高くなる(
図2の(B)参照)。
【0044】
引き続き、
図7に示すように、雄型2を雌型5から離隔させ、第1のブランク成形体20Aを成形空間6内に保持した状態で、成形空間6の一方側6aに、第2のブランク10Aを配置する(第4の工程)。
【0045】
そして、
図8に示すように、前述の工程を再度実行して、第1のブランク成形体20Aに積み重なるように、第2のブランク成形体20Aを形成する(第5の工程)。
【0046】
以上の工程を何度か反復することにより、
図9に示すように、成形空間6内に複数のブランク成形体20Aが蓄積される(第6の工程)。
【0047】
この時、後続して成形されるブランク成形体20Aの底部21により先行して成形されたブランク成形体20Aの周壁部22が押圧される結果、ブランク成形体20Aが成形空間6内を一方側6aから他方側6bへ移動する。本例では、
図2の(B)(C)に示すように、ブランク成形体20Aにおける襞状部分24の少なくとも一部の底部21からの高さH1を、平面状部分23の底部21からの高さH2よりも大きくなるように形成したので、後続して成形されるブランク成形体20Aの底部21は、先行して成形されたブランク成形体20Aの襞状部分24が優先的に接触することになる。これにより、後続のブランク成形体が先行するブランク成形体を押圧する際、押圧力は比較的強度(座屈強度)が高い襞状部分に優先的に作用し、比較的強度が低い平面状部分に作用するのを回避又は抑制することができる。その結果、ブランク成形体に潰れや変形が生じるのを防止して、歩留まりを向上させることができる。
【0048】
しかる後、各ブランク成形体は、成形空間6内を移動する間に成形面7によって加熱処理され、形状が固定化される。そしてブランク成形体は最終的に雌型5の他方側6bから排出され、
図3に示すような容器30Aが製造される。
【0049】
尚、本例では、ブランク成形体の押圧力に対する強度(座屈強度)が向上するから、雌型主部8に連接する延長部9A、9Bの個数を増やして、ブランク成形体の加熱時間を長くできるので、従来よりも低温での処理が可能となる。又、加熱温度を従来と同様とした場合においても、延長部9A、9Bの個数を増やすことでブランク成形体の形状固定化に要する加熱時間を確保できるので、ブランク成形体の形成に要する時間と加熱時間とのバランスが向上し、容器の生産性が向上する。
【0050】
[第2の実施の形態]
図10の(A)は、本発明の第2の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図であり、
図11は、
図10のブランクを用いて成形したブランク成形体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図であり、
図12は、
図10のブランクを用いて製造した容器を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【0051】
図10に示すブランク10Bは、
図17の従来のブランク60に対応するものであって、
図12に示す容器30Bを製造するためのものである。
【0052】
このブランク10Bも、周壁部に対応する周壁相当部12が、襞状部分に対応する襞状部分形成領域12a、12cと、平面状部分に対応する平面状部分形成領域12bとを含むものである。但し、本例の襞状部分形成領域は、端縁部が円弧状の領域(12a)と短い直線状の領域(12c)とを含んでいる。そして、襞状部分形成領域12a、12cと平面状部分形成領域12bとは、周壁相当部12を底面相当部11に対し起立させて底部と周壁部とを有するブランク成形体を成形した状態において、襞状部分の少なくとも一部が平面状部分よりも高くなるように設定される。具体的には、
図10の(B)を参照して、襞状部分形成領域12a、12cの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D3が、平面状部分形成領域12bの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D4よりも大きく設定される。従来のブランクでは、周壁相当部12の端縁部における円弧状部分14は、底面相当部11の外縁部の円弧状部分13と点Q1を共通の中心とする同心円であり、周壁相当部12の端縁部における直線状の部分は、底面相当部11の外縁部の直線状部分と平行となるように設定されている。これに対し本例のブランク10Bでは、襞状部分形成領域12aの端縁部における円弧部分は、その中心Q2が、底面相当部11の外縁部の円弧状部分13の中心Q1よりも外側となるように設定され、上記間隔寸法D3が間隔寸法D4よりも大きくなるように、半径Rを設定するものとした。
【0053】
このような設定により、ブランク成形体20B(
図11参照)を成形した状態において、襞状部分24の少なくとも一部を平面状部分23よりも高くすることが可能である。
【0054】
[第3の実施の形態]
図13の(A)は、本発明の第3の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図である。
【0055】
この例のブランク10Cは、底面相当部11における円弧状部分13の曲率を従来と変えることにより、襞状部分形成領域12aの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D5を、平面状部分形成領域12bの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D6よりも大きくなるように設定したものである。
【0056】
この構成によっても、ブランク成形体を成形した状態において、襞状部分の少なくとも一部を、平面状部分よりも高く形成することが可能である。
【0057】
[第4の実施の形態]
図14の(A)は、本発明の第4の実施の形態によるブランクの平面図、(B)はこのブランクの一部を拡大した平面図である。
【0058】
この例のブランク10Dは、端縁部が円弧状の襞状部分形成領域12aに隣接する平面状部分形成領域12dの端縁部を、底面相当部11に向かって湾曲させることによって、襞状部分形成領域12aの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D7が、平面状部分形成領域12dの端縁部から底面相当部11までの間隔寸法D8よりも大きくなるように設定したものである。
【0059】
この構成によっても、ブランク成形体を成形した状態において、襞状部分の少なくとも一部を、平面状部分よりも高く形成することが可能である。
【0060】
尚、図面には、平面状部分に対し周壁部を外側へ突出するように折り曲げて襞状部分を形成する場合について図示したが、反対に、周壁部を平面状部分より内側へ折り込んで襞状部分を形成してもよい。
【0061】
襞状部分は、底部の中心軸に対し回転対称となるように配置するのが好ましいが、容器の形状によっては、非対称に配置してもよい。
【0062】
襞状部分は、少なくとも一部が平面状部分よりも高ければよいが、全部を高くすることもできる。或いは、高い部分を間欠的に形成することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1…プレス成形装置
2…雄型
3…押圧部(押圧手段)
4…駆動軸
5…雌型
6…成形空間
6a…一方側
6b…他方側
7…成形面
10A~10D…ブランク
11…底面相当部
12…周壁相当部
12a、12c…襞状部分形成領域
12b、12d…平面状部分形成領域
20A、20B…ブランク成形体
21…底部
22…周壁部
23…平面状部分
24…襞状部分
30A、30B…容器
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。