(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】音響調整パネル及びそれを設置した室内構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/99 20060101AFI20240228BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240228BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E04B1/99 E
E04B1/99 H
G10K11/16 130
G10K15/00 M
(21)【出願番号】P 2019069557
(22)【出願日】2019-03-31
【審査請求日】2022-03-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成30年7月20日発行のTCM Journal 2018 summer、第47号、第5頁に掲載することによって公開。 2.平成30年6月25日発行のACe建設業界、2018年6月号、第36~41頁に掲載することによって公開。 3.平成30年9月14日発行の戸田技報、建築第146号、第70~77頁に掲載することによって公開。 4.平成30年10月16日に建築会館にて開催された第64回建築生産技術研究発表会において発表することによって公開。 5.平成31年3月14日に学校法人東京音楽大学のウェブサイトの新キャンパスプロジェクト欄のオーケストラルームページ(http://www.tokyo-ondai.ac.jp/d/orchestra-room.html)に掲載することによって公開。 6.平成31年1月8日、24日及び25日に学校法人東京音楽大学、中目黒・代官山キャンパスにて開催された「東京音楽大学新キャンパス」見学会において説明及び資料を配付することによって公開。 7.平成31年3月30日に学校法人東京音楽大学、中目黒・代官山キャンパスにて開催された東京音楽大学、中目黒・代官山キャンパス見学会において説明及び資料を配付することによって公開。 8.平成31年1月31日に施工した施設を竣工後に学校法人東京音楽大学に引き渡すことによって公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】高野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】八里 直輝
(72)【発明者】
【氏名】金光 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】青木 亜美
(72)【発明者】
【氏名】井上 瑞紀
(72)【発明者】
【氏名】河野 利幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】浦波 寛弥
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-031543(JP,A)
【文献】実開平06-063703(JP,U)
【文献】実公昭32-001043(JP,Y1)
【文献】特開2003-091286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/99
G10K 11/16
G10K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板材に孔部を穿設して構成される音響調整パネルにおいて、
前記平板材に、その長さ方向両端部を除き、その長さ方向全長に亘って複数の幅員の異なる帯状の有孔領域を形成すると共に、その長さ方向全長に亘って複数の幅員の異なる帯状の無孔領域を形成し、前記有孔領域の間に前記無孔領域を介在させたことを特徴とする音響調整パネル。
【請求項2】
前記有孔領域は、孔部の口径が異なる複数種類の有孔配列から構成したことを特徴とする請求項1に記載の音響調整パネル。
【請求項3】
複数種類の前記有孔配列において、各々の有孔配列中における孔部を同一ピッチで形成したことを特徴とする請求項2に記載の音響調整パネル。
【請求項4】
室内の天井面又は壁面に、請求項1乃至3
の何れか1項に記載の音響調整パネルを適宜設置したことを特徴とする室内構造。
【請求項5】
前記音響調整パネルは、上下反転して設置するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の室内構造。
【請求項6】
前記音響調整パネルを、隣接する音響調整パネルと所定の傾斜角度をもって連結するようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンサートホール、映画館、劇場、音楽レッスン室、放送スタジオ、視聴覚室等の施設において、室内の音響環境を向上又は改善するために、室内の天井面、壁面等に設置される音響調整パネル及びそれを設置した室内構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンサートホール、映画館、劇場、音楽レッスン室、放送スタジオ、視聴覚室等の施設、特に、室内の音響環境が重要となる施設においては、室内で発生する音源の音量レベル、周波数特性等を考慮して、天井面、壁面等の吸音、反射、拡散特性を適切に調整すると共に、残響音、フラッターエコー、ブーミング等の音響障害を適切に防止して、室内の音響環境を向上又は改善するようにしている。
【0003】
例えば、高周波数帯域の音を吸収する高域吸音パネル4、中周波数帯域の音を吸収する中域吸音パネル5、音を種々角度に反射、拡散する音拡散パネル6,7を、室内1の壁面3に適宜選択して縦横に配置することによって、室内1を適切な音響環境に調整する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
又、対向する有孔ボード材1,1によって画成された空間に不織布部材2を充填して、所定周波数帯域の音を吸収又は反射するように調整した音響調整パネル材を構成し、室内の壁面Wにこの音響調整パネル材を適宜配置することによって、室内を適切な音響環境に調整する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-158750号公報
【文献】実用新案登録第3135263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の方法では、高域吸音パネル4、中域吸音パネル5、音拡散パネル6,7は、表面に不織布4c、板状体5bを張設して構成したものであって、その内部構造及び不織布4c、板状体5bの材料等を適宜選択することによって、吸音、反射及び拡散性能を変化させることができるものの、そのためには、多数種類のパネルを作製しなければならず、又、それら性能を微妙に変化させるのは困難であった。
【0007】
一方、上記特許文献2の方法では、充填する不織布部材2の材料、有孔ボード材1の材料及び孔部11の口径及びピッチ等を適宜選択することによって、音響調整パネル材の吸音、反射、拡散性能を変化させることができるものの、そのためには、特許文献1の方法と同様に、多数種類の音響調整パネル材を作製しなければならず、又、それら性能を微妙に変化させるのは困難であった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたものであって、多数種類の音響調整パネルを作製しなくても、吸音、反射及び拡散性能を適切に、又、微妙に変化させることができる音響調整パネルを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、又、この音響調整パネルを設置することによって、室内の音響環境を従来になく最適化することができる室内構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の音調調整パネルは、平板材に孔部を穿設して構成される音響調整パネルにおいて、前記平板材に、その長さ方向両端部を除き、その長さ方向全長に亘って複数の幅員の異なる帯状の有孔領域を形成すると共に、その長さ方向全長に亘って複数の幅員の異なる帯状の無孔領域を形成し、前記有孔領域の間に前記無孔領域を介在させたことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記有孔領域は、孔部の口径が異なる複数種類の有孔配列から構成したことを特徴とする。
【0012】
又、複数種類の前記有孔配列において、各々の有孔配列中における孔部を同一ピッチで形成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の室内構造は、室内の天井面又は壁面に、前記音響調整パネルを適宜設置したことを特徴とする。
【0014】
ここで、前記音響調整パネルは、上下反転して設置するようにしてもよい。
【0015】
さらに、前記音響調整パネルを、隣接する音響調整パネルと所定の傾斜角度をもって連結するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の音響調整パネルによれば、多数種類の音響調整パネルを作製しなくとも、吸音、反射及び拡散性能を適切に、又、微妙に変化させることができる。
【0017】
又、複数種類の前記有孔配列において、各々の有孔配列中における孔部を同一ピッチで形成すれば、特別な製作工程は必要がなく、従来の穿孔装置によって、従来と同様に製作することができる。
【0018】
本発明の室内構造によれば、室内の天井面、壁面等に本発明の音響調整パネル設置することによって、室内の音響環境を従来になく最適化することができる。
【0019】
又、天井面、壁面等に本発明の音響調整パネル設置したとき、従来の音響調整パネルに比較して、相対的に孔部の個数が少なく、しかも、全面に形成されていないから、外観上極めて簡潔な印象を与え、室内を意匠面でも良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の音響調整パネルの(A)は一実施例の正面図、(B)は他実施例の正面図である。
【
図2】音響調整パネルの平板材の断面構造を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す音響調整パネルを壁面に設置した状態を示す断面図である。
【
図4】従来の音響調整パネルにおける音の周波数に対する吸音率の関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の音響調整パネルにおける音の周波数に対する吸音率の関係を示すグラフである。
【
図6】レッスンルーム内における音のオクターブバンド中心周波数と平均吸音率との関係を示すグラフである。
【
図7】穿孔装置によって、従来の音響調整パネルに孔部を穿設する方法を示す説明図である。
【
図8】穿孔装置によって、本発明の音響調整パネルに孔部を穿設する方法を示す説明図である。
【
図9】従来の音響調整パネルを使用して壁面を構成することによって、音響環境が最適な室内を実現する場合の説明図である。
【
図10】本発明の音響調整パネルを使用して壁面を構成することによって、音響環境が最適な室内を実現する場合の説明図である。
【
図11】本発明の音響調整パネルを使用して壁面を構成する際において、室内の音響環境をより最適化する場合の説明図である。
【
図12】従来の音響調整パネルの(A)は一実施例の正面図、(B)は他実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の音響調整パネルの好適な実施形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明の音響調整パネル1は、
図1に示すように、適宜寸法の矩形状平板材2に、所定パターンで、帯状に有孔配列を有する有孔領域3を形成すると共に、帯状に無孔領域4を形成したものである。
【0023】
ここで、平板材2としては、カラマツ、ベイスギ、シナ、タモマサ、ナラマサ、サクラ等の天然木材から成る単板、MDF(中密度繊維板)、又は、
図2に示すように、これらを積層した合板を採用することができる。
又、吸音性能は若干劣るものの、合成樹脂又は金属から成る単板、又は合板を採用することもできる。
【0024】
本実施例においては、平板材2の寸法として、厚さ9mm、高さ600mm、長さ900mm,1200mm,1500mm,1800mm,2100mm,2400mmのものを採用した。
しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要に応じて種々寸法の平板材2を採用することができる。
【0025】
又、本実施例においては、有孔領域3を形成する、長さ方向に延長する有孔配列において、穿設された孔部5としては、口径6mm,8mm,9mm、長さ方向ピッチ20mmのものを形成した。
しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要に応じて種々口径及びピッチの孔部5を形成することができる。
【0026】
さらに、不燃性を向上させるために、平板材2の表面に難燃性塗料を塗布するようにしてもよい。
【0027】
従来の音響調整パネル101は、例えば、
図12(A)に示すように、矩形状の平板材102の略全表面領域に、口径9mmという大口径の孔部105Aをピッチ25mmで均一に形成して音響調整パネル101Aを、又は、
図12(B)に示すように、口径6mmという小口径の孔部105Bをピッチ25mmで均一に形成して音響調整パネル101Bを構成したものであった。
すなわち、従来の音響調整パネル101は、平板材102の略全表面領域に所定口径及び所定ピッチで孔部105を均一に形成したものであった。
【0028】
一方、本発明の音響調整パネル1は、
図1に示すように、矩形状の平板材2の表面に、口径9mm、口径8mm、口径6mmという大、中、小口径の孔部5A,5B,5Cを長さ方向ピッチ20mmで穿設した複数の有孔配列から形成される、帯状に形成した有孔領域3A、3B、3Cと、孔部を形成することなく、帯状に形成した無孔領域4とを区画、形成したものである。
【0029】
すなわち、本発明の音響調整パネル1は、平板材に穿孔して構成される音響調整パネルにおいて、前記平板材2に、所定パターンで、帯状に有孔配列を有する有孔領域3を形成すると共に、帯状に無孔領域4を形成したことを特徴とするものである。
【0030】
そして、前記有孔領域3は、孔部5の口径が異なる複数種類の有孔配列から構成し、特には、複数種類の前記有孔配列において、各々の有孔配列中における孔部5を長さ方向に同一ピッチで形成したことを特徴とするものである。
【0031】
具体的に、本発明の一実施例の音響調整パネル1Aは、平板材2として、
図2に示すように、シナ材2A及びスギ材2B,2Cを積層した合板であって、厚さ9mm、高さ600mm、長さ1500mmのものを採用したものである。
【0032】
そして、
図1(A)に示すように、矩形状の平板材2の表面に、大口径9mmの孔部5Aを長さ方向ピッチ20mmで帯状に形成した有孔領域3A1、3A2、中口径8mmの孔部5Bを長さ方向ピッチ20mmで帯状に形成した有孔領域3B1、3B2、小口径6mmの孔部5Cを長さ方向ピッチ20mmで帯状に形成した有孔領域3C1、3C2、及び、帯状に形成した無孔領域4A,4B,4C,4D,4Eを所定のパターンで形成してある。
【0033】
又、本発明の他実施例の音響調整パネル1Bも、
図2に示すように、音響調整パネル1Aと同様に、シナ材2A及びスギ材2B,2Cを積層した合板であって、厚さ9mm、高さ600mm、長さ1500mmの平板材2を採用したものである。
【0034】
そして、
図1(B)に示すように、矩形状の平板材2の表面に、大口径9mmの孔部5Aを長さ方向ピッチ20mmで帯状に形成した有孔領域3A1、3A2、中口径8mmの孔部5Bを長さ方向ピッチ20mmで帯状に形成した有孔領域3B1、3B2、3B3、小口径6mmの孔部5Cを長さ方向ピッチ20mmで帯状に形成した有孔領域3C1、3C2、及び、帯状に形成した無孔領域4A,4B,4C,4D,4Eを所定のパターンで形成してある。
【0035】
本発明の音響調整パネル1は、
図3に示すように、音楽レッスン室等の壁面11に支持部材12を介して設置され、壁面11と音響調整パネル1との間に空間13を画成しておくと共に、音響調整パネル1の裏面に吸音部材14を配置して、使用される。
【0036】
よって、音響調整パネル1の表面において所定周波数帯域の音は反射及び拡散されると共に、所定周波数帯域の音は孔部5を通過して、空間13及び吸音部材14によって吸収されることになる。
【0037】
ここで、従来の音響調整パネル101は、
図12(A)及び(B)に示すように、矩形状の平板材102の略全表面領域に、所定口径及び所定ピッチで孔部105を均一に形成したものであるから、その吸音、反射及び拡散性能等は、平板材102の材料、孔部105の口径及びピッチによって変化する。
【0038】
しかし、1枚の音響調整パネル101では、全表面領域で略均一な性能であって、
図4に示すように、音の周波数に対する吸音率も、所定の周波数において極値を有する特性を示すものとなる。
【0039】
一方、本発明の音響調整パネル1は、
図1(A)及び(B)に示すように、矩形状の平板材2の表面に、大、中、小口径の孔部5A,5B,5Cを長さ方向に所定ピッチで帯状に形成した複数の有孔領域3A、3B、3Cと、帯状に形成した複数の無孔領域4を、所定パターンで形成したものであるから、その吸音、反射及び拡散性能等は、平板材2の材料、孔部5の口径及びピッチ、さらに、有孔領域3及び無孔領域4のパターン如何によって、種々に変化させることができる。
【0040】
そして、1枚の音響調整パネル1において、有孔領域3A、3B、3C及び無孔領域4の夫々で異なる性能を有し、
図5に示すように、音の周波数に対する吸音率も、広い周波数帯域において高い値を有する特性を示すものとなる。
【0041】
又、パターンの異なる各音響調整パネル1A,1Bによっても、音の周波数に対する吸音率の関係は全く異なるものとなるから、これらの特性を考慮し、複数の音響調整パネル1を適宜配置することによって、
図6に示すように、レッスンルーム等の室内の音響環境を従来にないほど最適化することができる。
【0042】
従来の音響調整パネル101を作製するときは、例えば、
図7に示すように、平板材102を水平方向かつ長さ方向に搬送させつつ、穿孔装置21に直交方向に同一間隔で装着されたドリル22,22,・・・を間欠的に上下動させて、平板材102の略全面領域に均一に孔部を形成している。
【0043】
一方、本発明の音響調整パネル1を作製するときは、
図8に示すように、穿孔装置21に直交方向に同一間隔で装着されたドリル22,22,・・・の適宜位置のドリル22を離脱させると共に、適宜位置のドリル22の直径を異なるものに変更すれば、従来におけると同様の作製方法で、ドリル22,22,・・・を間欠的に上下動させて、平板材2に適宜パターンで有孔領域3及び無孔領域4を形成することができる。
【0044】
よって、本発明の音響調整パネル1は、特別な製作工程を必要とせず、従来の穿孔装置21を使用し、従来と同様に製作することができるので、製造コストが高額になるということはない。
【0045】
音楽レッスン室等の室内の音響環境を最適化するとき、従来の音響調整パネル101によれば、1枚の音響調整パネル101において単純な吸音、反射及び拡散性能を発揮するだけだから、
図9に示すように、多数種類の音響調整パネル101A,101B,101Cを使用しなければならず、しかも、微妙な音響調整は困難であった。
【0046】
一方、本発明の音響調整パネル1によれば、1枚の音響調整パネル1において、有孔領域3、無孔領域4毎に性能が異なり、複雑な吸音、反射及び拡散性能を発揮することができると共に、音の周波数に対する吸音率も広い周波数帯域において良好な値を有する特性を示すから、
図10に示すように、少数種類の音響調整パネル1を使用しても、音響環境を最適化することができ、又、微妙な音響調整も可能となる。
【0047】
又、本発明の音響調整パネル1によれば、
図10に示すように、1枚の音響調整パネル1を上下反転して使用することによって、又、上下反転して設置された各音響調整パネル1においても、異なる吸音、反射及び拡散性能を発揮することができるから、このような点も考慮すると、極めて多面的に、微妙な音響調整をすることが可能となる。
【0048】
さらに、
図9と
図10を対比すれば、容易に理解できるように、壁面に音響調整パネルを設置したとき、従来の音響調整パネル101では、孔部の個数が極めて多く、しかも、全面に及ぶことから、外観上で極めて煩雑な印象を与える。
【0049】
一方、本発明の音響調整パネル1では、相対的に孔部の個数が少なくなり、しかも、全面には及ばないことから、外観上で極めて簡潔な印象を与え、壁面及び室内を意匠的な面でも良好にすることができる。
【0050】
又、
図11に示すように、長さの相違する複数の音響調整パネル1を使用し、隣接する音響調整パネル1を所定角度傾斜させて連結すれば、音の吸収、反射及び拡散を適宜調整することができ、より音響環境を最適化することができる。
【0051】
さらに、微妙な音響調整をする場合には、
図11(A)に示す穿孔パターンの音響調整パネル1Bのみを、
図11(B)に示す穿孔パターンの音響調整パネル1Cに交換するようにしてもよい。
【0052】
よって、室内の天井面、壁面等に本発明の音響調整パネル設置することによって、室内の音響環境を従来になく最適化することができる室内構造が実現できる。
【0053】
上記実施形態においては、所定の穿孔パターンから成る有孔領域3及び無孔領域4を形成した2種類の音響調整パネル1A,1Bについて説明したが、他の適宜穿孔パターンから成る有孔領域3及び無孔領域4を形成した音響調整パネル1を構成しても良いこと、勿論である。
【0054】
又、音響調整パネル1の平板材2の材料及び寸法、孔部5の口径及びピッチ等も、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜選択することによって、より適切な音響調整パネル1を作製することもできる。
【0055】
さらに、上記実施形態では、音楽レッスン室の壁面に音響調整パネル1を設置する場合について説明したが、壁面だけではなく、天井面、柱面等に設置してもよい。
又、上記の如く、音楽レッスン室のみならず、コンサートホール、映画館、劇場、音楽レッスン室、放送スタジオ、視聴覚室等、室内の音響環境を向上又は改善する必要のある施設にも適用できること、勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 音響調整パネル
1A,1B 音響調整パネル
2 平板材
3 有孔領域
3A,3B,3C 有孔領域
4 無孔領域
4A,4B,4C,4D,4E 無孔領域
5 孔部
5A,5B,5C 孔部