(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】難溶性飲料製品
(51)【国際特許分類】
B65D 85/816 20060101AFI20240228BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B65D85/816
A23L2/00 J
A23L2/66
(21)【出願番号】P 2019115439
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】藤重 英治
(72)【発明者】
【氏名】山本 達平
(72)【発明者】
【氏名】杉本 健二
(72)【発明者】
【氏名】梶田 修司
(72)【発明者】
【氏名】永住 誠次
(72)【発明者】
【氏名】松岡 進
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0111101(US,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2013-0006221(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368518(US,A1)
【文献】特開2005-350090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/816
B65D 85/72
B65D 23/04
A23L 2/00
A23L 2/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容しかつ前記内容物を外部に取り出し可能な口部を有する収容部と、前記口部に冠着することにより前記収容部を密封するキャップとにより形成された容器を備え、前記キャップを開栓した後に、再度、前記キャップを前記口部に冠着させることにより前記収容部を密封できるように構成された難溶性飲料製品であって、
前記容器は、底部が閉じられた胴部と、前記胴部の上端側に連続している肩部と、前記肩部の中心部に上側に延びて連続している口頸部とを有するとともに、前記キャップを開栓した場合に形状を維持できる所定の剛性を有する金属製の缶であり、
前記胴部は、中心軸線方向での全体に亘って外径が一定の凹凸のない円筒状を成し、前記肩部は、上側で次第に小径になる円錐状もしくは凸曲面状を成し、前記口頸部は、上端部が前記口部とされた円筒状を成し、かつ
前記容器の内部に撹拌用の部材が設けられておらず、
前記収容部は、少なくとも前記胴部によって構成され、
前記内容物は、所定の液体に溶解もしくは混合して飲用され、かつ前記液体に対する難溶性の粉粒体であり、
前記収容部の内部容積は、前記収容部に入れられている前記粉粒体の量に相当する容積と、前記粉粒体の量に応じて予め定められた前記液体の量に相当する容積と、前記収容部に前記粉粒体の量に応じた前記液体を注入した場合における前記液体の量の20%以上85%以下となる前記液体と前記粉粒体との混合物を流動させて擾乱状態とする撹拌用の余裕空間に相当する容積とを合成した容積に設定さ
れ、
前記胴部は、外径が66mmの円筒状をなし、かつ
前記口頸部は、外径が38mmの円筒状をなしている
ことを特徴とする難溶性飲料製品。
【請求項2】
請求項1に記載の難溶性飲料製品であって、
前記内容物は、平均粒径が40μm以上1200μm以下の粉粒体である
ことを特徴とする難溶性飲料製品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の難溶性飲料製品であって、
前記容器の内部に内圧を増加させかつ増加量を上限値を50kPaで下限値を7kPaとして窒素ガスが充填されている
ことを特徴とする難溶性飲料製品。
【請求項4】
請求項3に記載の難溶性飲料製品であって、
前記キャップは、前記口部の外径以上に形成された円板状の天板部と、前記天板部の外周縁から前記胴部側に垂下して形成された円筒状のスカート部とによって構成され、前記スカート部の上端に前記スカート部の周方向に並んで形成された複数のベントスリットを備えている
ことを特徴とする難溶性飲料製品。
【請求項5】
請求項1ない
し4のいずれか一項に記載の難溶性飲料製品であって、
前記粉粒体は、プロテイン粉末またはその顆粒を含む
ことを特徴とする難溶性飲料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体に粉ミルクやプロテインなどを溶解もしくは混合させて飲用する難溶性飲料製品に関し、特に飲用時に液体に溶解もしくは混合させる飲料製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携行性や長期保存性などの要求から、粉体もしくは粒体(以下、粉粒体と記す)として取り扱われ、飲食する際に水や牛乳などの液体に溶解もしくは分散・混合させる飲料製品が従来、知られている。粉ミルクやプロテインなどがその例である。
【0003】
これらの飲料品(飲料物)は、液体に溶解もしくは混合させたものではなく、粉粒体となっているので、液体に溶解もしくは混合させて商品化させた場合と比較して製造過程での加熱による栄養分の分解・損失が少なく、また沈殿物が生じないように溶解させるなどの必要がなく、その結果、高濃度で需要者に提供することができる。
【0004】
この種の飲料製品の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された乳児用ミルクは、哺乳瓶、乳首、滅菌した水、発熱剤などを一つのケースに入れてキットとしたものであり、必要な場所で、必要な時に、飲用可能なミルクを得られるように構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、混合した後に飲用する材料を一体化した撹拌容器セットが記載されている。その材料は、液体と液状の混合材料とであり、液体は上端部を液密状態に閉じた主容器に収容されている。その主容器の上端側には内部に充分な容積を持った蓋体が取り付けられており、混合材料を液密状態に収容した混合材料収容容器がその蓋体の内部に収容されている。そして、蓋体の上端部が注ぎ口となっており、その注ぎ口を閉じるキャップが蓋体に、開閉自在に設けられている。この特許文献2に記載されている撹拌容器セットでは、主容器の開口端を閉じているシールもしくはキャップを除去して、混合材料(具体的にはライム)を主容器内の液体(具体的にはアルコール)に投入し、その状態で蓋体で主容器を閉じた後、蓋体で閉じた主容器をシェーカとして揺することにより、液体と混合材料とを撹拌・混合するように構成されている。このようにして得られた飲料は、注ぎ口から適宜のグラスなどに注いで飲用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-30198号公報
【文献】特開2000-237068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているように、飲用するときに、粉粒体を液体に溶解もしくは混合する飲料製品は、飲用時の濃度を高くすることができる。しかしながら、粉ミルクやプロテインなどを液体に溶解もしくは混合させて飲用する飲料品は、水などに溶解しにくく、例えば液体に投入した場合に液面に浮いてしまったり、粒子同士が集合していわゆる「ダマ」になってしまったり、あるいは沈殿物となって固まったりする。
【0008】
特許文献1に記載されたキットは、粉ミルクを溶けやすくするために、粉ミルクと水とを哺乳瓶に注入した状態で、加熱剤によって加熱するように構成されている。しかしながら、このような構成は、粉ミルクのみならず、厨房あるいは給湯室にある整備を、形を変えてケースに納めた構成に相当し、大型化するなど携行性に劣る可能性がある。また、充分な部品もしくは整備を備えている半面、高コストになるから用途が限られる可能性が高く、さらには再使用のために洗浄が必須になるなど利便性もしくは簡便性に欠ける可能性がある。例えば、運動の直後に飲用することが好ましいとされているプロテインなどは、余暇の延長として行うエキササイズに伴って飲用するものであるから、濃度や味などに対する嗜好性が強い上に疲労感のある状態で飲用するために簡便性が高いことが要求される。そのため、プロテインなども粉末もしくは粒体として用意しておき、飲用時に水や牛乳などに溶解もしくは混合させることになるが、特許文献1に記載されているような構成では、携行性や簡便性などの点で、主目的である運動もしくはエキササイズに適さず、実用に供することが困難である。
【0009】
一方、特許文献2に記載されているように、液体を入れてある主容器をシェーカとして使用できる構成であれば、液体と混合材料とを混ぜたり、混合材料を液体中に分散させたりすることが容易である。しかしながら、液体に混ぜ合わせるべき混合材料を、主容器とは別の容器に液密状態に収容するとともに、その別容器を主容器に組み込んだ構成になっているので、構造が複雑で必要以上に大型化し、また高コストになる可能性が高い。さらに、液体を主容器に入れた構成になっているから、混合材料を液体に混ぜ合わせた後の濃度や量を調整することができない。結局、特許文献2に記載された構成を、粉ミルクやプロテインなどの粉粒体として用意された材料を液体に溶解もしくは混合させて飲用する飲料品に適用するとしても、携行性や簡便性、さらにはコストなどの点で実用に供し得ない可能性が多分にある。
【0010】
なお、フリーズドライ製法などによって粉粒状に加工し、シート材によって細長いいわゆるスティック状に包装したコーヒーなどの製品が従来知られている。この種の商品は、液体に溶解もしくは混合する粉粒状の材料を、携行が容易になるようにスティック状に包装しただけであるから、液体に溶解もしくは混合するための容器や撹拌・混合のための手段を別途、用意する必要がある。結局は、運動直後など、溶解もしくは混合のための器具あるいは設備が用意されていない場所での飲用時に液体に溶解もしくは混合して使用する製品としては、携行性あるいは簡便性などの点で、実用に供することは困難である。
【0011】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、携行性に優れ、また液体に対する溶解もしくは混合が容易であり、さらには飲用時での濃度調整が容易であるなどの簡便性に優れた難溶性飲料製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するために、内容物を収容しかつ前記内容物を外部に取り出し可能な口部を有する収容部と、前記口部に冠着することにより前記収容部を密封するキャップとにより形成された容器を備え、前記キャップを開栓した後に、再度、前記キャップを前記口部に冠着させることにより前記収容部を密封できるように構成された難溶性飲料製品であって、前記容器は、底部が閉じられた胴部と、前記胴部の上端側に連続している肩部と、前記肩部の中心部に上側に延びて連続している口頸部とを有するとともに、前記キャップを開栓した場合に形状を維持できる所定の剛性を有する金属製の缶であり、前記胴部は、中心軸線方向での全体に亘って外径が一定の凹凸のない円筒状を成し、前記肩部は、上側で次第に小径になる円錐状もしくは凸曲面状を成し、前記口頸部は、上端部が前記口部とされた円筒状を成し、かつ前記容器の内部に撹拌用の部材が設けられておらず、前記収容部は、少なくとも前記胴部によって構成され、前記内容物は、所定の液体に溶解もしくは混合して飲用され、かつ前記液体に対する難溶性の粉粒体であり、前記収容部の内部容積は、前記収容部に入れられている前記粉粒体の量に相当する容積と、前記粉粒体の量に応じて予め定められた前記液体の量に相当する容積と、前記収容部に前記粉粒体の量に応じた前記液体を注入した場合における前記液体の量の20%以上85%以下となる前記液体と前記粉粒体との混合物を流動させて擾乱状態とする撹拌用の余裕空間に相当する容積とを合成した容積に設定され、前記胴部は、外径が66mmの円筒状をなし、かつ前記口頸部は、外径が38mmの円筒状をなしていることを特徴とするものである。
本発明では、前記内容物は、平均粒径が40μm以上1200μm以下の粉粒体であってよい。
本発明では、前記容器の内部に内圧を増加させかつ増加量を上限値を50kPaで下限値を7kPaとして窒素ガスが充填されていてよい。
本発明では、前記キャップは、前記口部の外径以上に形成された円板状の天板部と、前記天板部の外周縁から前記胴部側に垂下して形成された円筒状のスカート部とによって構成され、前記スカート部の上端に前記スカート部の周方向に並んで形成された複数のベントスリットを備えていてよい。
【0023】
本発明では、前記粉粒体は、プロテイン粉末またはその顆粒を含んでよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、液体に溶解させ、または液体と混合させて飲用する粉粒体が容器に収容されている。すなわち、飲用のための液体分が入っていないので、変敗防止などのための過度な殺菌が不要であり、また、飲用時に液体を加えて適度な濃度にすることにより、栄養分が高濃度の状態で飲用できる。言い換えると、飲用する液体分量に対する栄養分を高くすることができる。また、粉粒体と液体とを事前に混合したものと比較して携行性に優れている。
【0027】
さらに、収容部の内部容積が、粉粒体の量に相当する容積に加えて、粉粒体の量に応じて予め定められた液体の量に相当する容積と、収容部に入れた液体と粉粒体との混合物を流動させて擾乱状態とする攪拌用の余裕空間に相当する容積とを合成した容積に設定されている。したがって、容器に液体を注入し、その後、キャッピングすれば、容器をシェーカとして使用できる。すなわち、粉粒体と液体とを混合させるための専用のシェーカを携帯する必要がなく、その点においても携行性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態における難溶性飲料製品の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるキャップの一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態における難溶性飲料製品の製造方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態における難溶性飲料製品に溶液を注入し、その溶液と粉粒体とを混合させ、あるいは溶液に粉粒体を溶解させる手段を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態における難溶性飲料製品の一例を
図1に示してある。
図1に示す難溶性飲料製品1は、所定の液体に溶解もしくは混合して飲用する粉粒体2を密閉容器(以下、単に容器と記す)3に封入して構成されている。粉粒体2は、例えば、粉ミルクや、ホエイプロテイン、カゼインプロテイン、ソイプロテインなどのタンパク質やビタミンなどを含み、液体に対する溶解もしくは混合を促進するように所定の粒径の粉末もしくは粒体としてされている。その粒径(平均粒径)は、40μmから1200μm程度である。本発明においては、平均粒径は対象とする粉粒体2から所定量のサンプルを抽出し、そのサンプルにおける粉体もしくは粒体の粒径を電子顕微鏡で拡大して測定し、最も多い粒径を平均粒径としてある。容器3は、リシール機能のある容器であり、その一例はアルミニウム合板や表面処理鋼板などを素材とした金属缶やペットボトルなどである。容器3の一例を
図1に示してあり、粉粒体2などの内容物を収容し、かつその内容物を外部に取り出し可能な口部4を有する収容部5と、その口部4に密着することにより収容部5を密封するキャップ6とにより構成されている。
【0030】
収容部5は、円筒状に形成された胴部7と、その胴部7の一方の開口端(下端)を閉じる底蓋部8とにより構成されている。
図1に示す胴部7の外径は、約66mmであり、その下端部9の外径は、胴部7の外径よりも小さく形成され、他方の開口端である口部4の外径は、約38mmである。また、その下端部9に連なった大径の円筒状の部分(以下、大径部10と記す)から、口部4に連なりかつ外周面に雄ネジ部が形成された円筒状の部分(以下、口頸部11と記す)に向けて、外径が連続的に縮径した円錐状または凸曲面状の肩部12を備えており、その大径部10の内容積が約300mlとなっている。そして、下端部9を閉じるように円板状の底蓋部8が一体化されている。なお、本発明の実施形態における容器3は、胴部7と底蓋部8とを一体成形されたものであってもよく、その構成は限定されない。
【0031】
キャップ6は、口部4を閉じるように構成されたものであって、口部4の外径と同一、または口部4の外径よりも僅かに大径に形成された円板状の天板部13と、その天板部13の外周縁から胴部7側に垂下して形成された円筒状のスカート部14とにより構成されている。
【0032】
図2は、キャップ6の一例を説明するための図であり、天板部13の内面には、口部4に密着するように形成された合成樹脂製のライナー15が一体化されている。このライナー15は、円板状または環状に形成することができる。また、スカート部14の上端には、凹部16aと凸部16bとが周方向全体に亘って交互に繰り返しているナール部16が形成され、そのナール部16の凹部16aの上部には、キャップ6を開栓する際に収容部5の内部に充填されたガスを速やかに排出するための複数のベントスリット17が周方向に並んで形成されている。
【0033】
上記のように構成されたキャップ6は、ロールオンキャッピングによって口部4に取り付けられている。すなわち、キャップ6の粗形材を、そのライナー15が口部4に密着しかつスカート部14により口部4の外周を囲った状態に被せる。スカート部14の外周側からスカート部14と口頸部11とをローラ(図示せず)によって押圧することにより、口頸部11に形成された雄ネジ部に沿った螺旋状のねじ部をスカート部14に形成する。スカート部14の下端を、口頸部11側に屈曲させ、かつ周方向全体に亘って所定の間隔を空けたスリット18を形成することにより、キャップ6を開栓した場合に、スリット18を挟んで上側と下側とが破断され、スカート部14の一部(ピルファープルーフバンド部19)が収容部5に残るように構成されている。なお、
図1には、スカート部14にねじ部が形成された状態を図示しており、
図2には、スカート部14にねじ部を形成する以前の状態(すなわち、キャップ粗形材)を示している。
【0034】
そして、本発明の実施形態における容器3には、粉粒体2が収容されている。ここに示す例では、30gの粉粒体2が収容されている。
【0035】
本発明の実施形態における容器3は、液体に溶解または混合していない粉粒体2を収容したものであって、その容器3を開栓した後に、粉粒体2を溶解させまたは粉粒体2を混合させるための適量の液体を飲用者が注入し、その後、キャップ6により口部4を再度、閉じて、溶解や混合を促進させるために飲用者が容器3をシェーカとして使用するように構成されている。したがって、収容部5は、粉粒体2が収容される容積V1と、その粉粒体2を溶解もしくは混合させた溶液の量に相当する容積V2と、粉粒体2と液体との混合を促進させ、または液体への粉粒体2の溶解を促進させるために収容部5の内部を粉粒体2と液体とが十分に移動して擾乱状態となるように設定された撹拌用の余裕空間の容積V3とを合算した内容積を有している。
【0036】
なお、本発明者は、胴部7の外径が約66mmであり、口部4の外径が約38mmであり、総内容積が約280mlに形成された上記の肩部12を備えた金属缶に、15gの粉粒体2を収容し、液体を150mlから190ml入れた後に、キャップ6を取り付けて、容器3を揺することにより、飲用するのに十分なほど、粉粒体2が液体に溶解または混合したことを確認した。同様に、胴部7の外径が約66mmであり、口部4の外径が約38mmであり、大径部10の内容積が約350mlに形成された上記の肩部12を備えた金属缶に、20gの粉粒体2を収容し、液体を200mlから250ml入れた後に、キャップ6を取り付けて、容器3を揺することにより、飲用するのに十分なほど、粉粒体2が液体に溶解または混合したことを確認した。さらに、胴部7の外径が約66mmであり、口部4の外径が約38mmであり、大径部10の内容積が約450mlに形成された上記の肩部12を備えた金属缶に、30gの粉粒体2を収容し、液体を300mlから375ml入れた後に、キャップ6を取り付けて、容器3を揺することにより、飲用するのに十分なほど、粉粒体2が液体に溶解または混合したことを確認した。以上の実験結果から、上記の撹拌用の余裕空間の容積V3は、粉粒体2を溶解もしくは混合した液体の体積の20%から85%であることが好ましいことが分かった。
図1に示す例では、容器3を350mlのアルミ缶とし、プロテインを30gとした場合、大径部10を満たすように水または牛乳などを供給することにより、撹拌用の余裕空間の容積V3が確保できるように構成されている。
【0037】
そのため、本発明の実施形態における容器3は、内容積が350mlの容器に限らず、例えば、下端部9の外径が約66mmであり、口部4の外径が約38mmであり、大径部10の内容積が約400mlであり、総内容積が450mlであり、40gの粉粒体2を収容した容器など、要求に応じた粉粒体2の分量に応じて容器の寸法を定めている。
【0038】
なお、本発明の実施形態における容器3は、収容部5を開栓した後に、再度、密封することができるように構成されていればよく、その密封する手段としては、ネジ構造に限らない。
【0039】
つぎに、上述した難溶性飲料製品1の製造方法、より具体的には、粉粒体2を容器3に充填し、かつ粉粒体2が充填された容器3をキャッピングして製品とする方法について説明する。
図3には、その製造方法を説明するための図を示してある。
図3(a)は、収容部5に粉粒体2を供給する工程を示す図であり、粉粒体2を収容部5に供給するためのノズル20が、口部4から挿入されている。ここに示す例では、粉粒体2を収容部5に供給する際に、収容部5の外部に粉粒体2が飛散することを抑制するために、ノズル20の開口端21を胴部7の下端部近傍まで挿入して粉粒体2を収容部5に供給している。この粉粒体2を供給する工程は、例えば、容器3を秤量器に載置した状態で実行され、空の状態の容器3の重量と、粉粒体2の目標供給量である重量との総重量に到達した時点で、粉粒体2の供給が停止させられる。または、収容部5に供給する予め計量した粉粒体2を用意し、その計量された粉粒体2をノズル20から収容部5に供給してもよい。
【0040】
粉粒体2を収容部5に供給した後に窒素を注入する。例えば、
図3(b)に示すように液体窒素を滴下する。これは、キャッピングした後に、温度変化などが原因となって、容器3が部分的に窪んで変形することや酸化を抑制するためであり、搬送地域の気温などの容器3が置かれる環境の変化に基づいた内圧の低下量を推測し、その内圧の低下量分、内圧を事前に増加させるように滴下させる液体窒素の量を定めることができる。例えば、粉粒体2を収容部5に供給した時の温度が20℃で、その後、外気温度が0℃程度まで低下するとした場合には、内圧が7kPa低下するため、外気温が0℃まで低下する環境に搬入するなどする場合には、容器3の内圧の下限値を7kPaに設定し、液体窒素の滴下量を定めればよい。すなわち、容器3の内圧は、滴下させる液体窒素の量によって調整されている。
【0041】
また、容器3の内圧が過剰に高いと、開栓時にベントスリット17から窒素ガスとともに粉粒体2が外部に飛散する可能性がある。そのため、粉粒体2が飛散しない程度の内圧を上限とすることが好ましい。本発明者による実験によれば、その内圧の上限値は、50kPa以下に定めることが好ましい。
【0042】
上記のように液体を注入した後に、ライナー15と口部4とが密着するようにキャップ6を口部4にロールオンキャッピングにより取り付ける。例えば、スカート部14をその外周側から成形ロールによって押圧することにより、
図3(c)に示すように口頸部11に形成された雄ネジ部に沿った螺旋状のねじ部をスカート部14に形成して一体化させるとともに、容器3を密封する。この際、液体窒素が気化することにより、収容部5の内部の酸素や水分が、ある程度、窒素ガスに置換されている。
【0043】
以上のようにして製造された本発明に係る製品1は、以下のようにして飲用される。先ず、容器3を開栓し、ついで
図4(a)に示すように、容器3に収容されている粉粒体2を溶解させ、あるいは拡散・混合させるための液体を容器3に注入する。容器3の内圧は、前述したように、窒素を注入してあることにより大気圧より幾分高圧になっているので、開栓時に容器3の内部の気体がベントスリット17から吹き出るが、容器3の内圧は、前述したように特には高圧にはならないように管理し設定しているので、内容物すなわち容器3の内部の粉粒体2が気体と共に吹き出ることは殆どない。また、容器3の内部には、粉粒体2を溶解させるための水分は入れてないので、保存時における変敗のおそれがなく、したがって製造過程で加熱することがないので、タンパク質やビタミンなどの成分が高濃度に維持されている。
【0044】
容器3に注入する液体は、飲用者の好みによって選択することができ、例えば、水道水、水素水、ミネラル水、イオン水などの水であってもよく、また牛乳、加工乳、乳飲料であってもよく、また湯などの加熱した液体であってもよい。またその量は、粉粒体2の量に応じて予め定めた量であることが好ましい。すなわち、飲用に適した濃度が予め定められており、容器3の内部に確保されている前述した内容積は、その注入される液体の量に適した容積となっている。なお、液体の好ましい注入量はある程度の幅をもって設定されているので、その範囲でも濃度の濃淡が生じるが、その範囲を超えて液体の量を加減することは、需要者の好みに応じて適宜行えばよい。
【0045】
上述した粉ミルクやプロテインなどの栄養分を摂取することを目的とした粉粒体2は、比較的液体に溶解しにくくまた液体に混合しにくい難溶性の粉粒体であり、さらに、プロテインの一種であるソイプロテインは、不溶性の固形物を含んでいる場合がある。そのため、本発明の実施形態における容器3は、リシール型の容器となっており、上記のように液体を注入した後に、再度、キャップ6を取り付けて、
図4(b)に示すようにキャッピングされた容器3を揺する。すなわち、容器3をシェーカとして使用する。その場合、上述した本発明に係る上記の容器3には、粉粒体2およびこれを溶解もしくは混合させる液体の量に応じた撹拌用の余裕空間が設けられているから、容器3を揺することによりその液体と粉粒体2との混合物が激しく流動して擾乱状態となる。その結果、粉粒体2を液体に容易に溶解させ、あるいは混合・分散させることができる。なお、撹拌用の余裕空間が小さい場合(例えば、粉粒体2を溶解もしくは混合した液体の体積の20%未満)には、液体がいわゆる塊になったまま移動して擾乱状態にならない割合が多くなり、そのため、粉粒体2のいわゆる「ダマ」を解消するのに要するシェーク回数が増大し、またシェーク時間が長くなってしまう。これとは反対に撹拌のための余裕空間が必要以上に大きい場合(例えば、粉粒体2を溶解もしくは混合した液体の体積の85%以上)には、液体のいわゆる塊が容器3の内面に衝突する頻度が低下していわゆる塊が解消されにくい。あるいは液体が乱流とならずに容器3の内部を往復流動する割合が多くなる。結局、液体の擾乱状態を生成しにくくなるので、撹拌用の余裕空間が小さい場合と同様に、粉粒体2のいわゆる「ダマ」を解消するのに要するシェーク回数が増大し、またシェーク時間が長くなってしまう。容器3を揺すった後、粉粒体2が溶解しまたは混合した飲料を、キャップ6を取り外して飲用する。
【0046】
一般的な飲料製品は、事前に粉粒体と液体とを混合させているため、保存性を向上させるために加熱殺菌が行われる。その結果、液体に混合された粉粒体の栄養分が分解して、その濃度が低下してしまう。それに対して、本発明の実施形態における難溶性飲料製品1は、粉粒体2の状態で容器3に収容されて保管され、飲用する直前に粉粒体2と液体とを混合させるように構成されているため、過度な加熱による殺菌が不要であり、高濃度の栄養分を摂取することができる。言い換えると、飲用時の栄養分の濃度を高くすることができる。
【0047】
また、本発明の実施形態における難溶性飲料製品1は、粉粒体2をシェーカを兼ねる容器3に収容したものであり低重量であるから、粉粒体2のための容器とシェーカとして使用するための容器とを別々に備えた構成のものと比較して携行性に優れている。特に、粉ミルクやプロテインなどの栄養分を摂取することを目的とした難溶性飲料製品1は、運動や活動などを行った後に摂取することが多いため、粉粒体2のみを収容した本発明の実施形態における難溶性飲料製品1は、そのような栄養分を摂取することを目的としかつ持ち運びする飲料製品として好適である。
【0048】
さらに、比較的粒径の小さい粉粒体2は、液体に浮遊しやすい。そのため、一般的には、粉ミルクやプロテインなどは、粉粒体と液体とを哺乳瓶やシェーカに入れて攪拌させている。言い換えると、粉粒体と液体とを溶解または混合させるための専用のシェーカが必要となる。それに対して、本発明の実施形態における飲料製品は、粉粒体2を収容している容器3がリシール可能な構成となっているから、その容器3に液体を注入し、その後、キャッピングすれば、容器3をシェーカとして使用できる。すなわち、粉粒体2と液体とを混合させるための専用のシェーカを携帯する必要がなく、その点においても携行性に優れている。言い換えると、本発明の実施形態における容器3は、粉粒体2を展示・販売および持ち運ぶための容器としての機能と、粉粒体2と液体とを混合させるなどのためのシェーカとしての機能とを兼備している。
【0049】
またさらに、本発明の実施形態における容器3は、従来知られている飲料缶と同様に構成することができるため、飲用した後は、従来知られている飲料缶と同様に破棄することができる。そのため、専用のシェーカのように洗浄するなどの手間がなく、さらに、不要となった(空となった)容器3を持ち運ぶなどの必要がないため、その点においても携行性に優れていると言い得る。
【0050】
上記の容器3は、金属缶によって構成されている。したがって、開栓した後であっても、形状を維持することができ、液体を注入する際のハンドリングが容易となり、また、容器3を揺する際のハンドリングが容易となる。また、内部に収容された粉粒体2には、外部から光が透過しにくく、その結果、粉粒体2の栄養分が低下することを抑制できる。さらに、金属製の容器3は、ポリエチレンテレフタレートを材料とした容器3と比較して、水分の透過量が少ないため、湿気などで粉粒体2が劣化することを抑制できる。
【0051】
また、上記の容器3の口部4の外径を大きく形成していることにより、液体を注入しやすく、さらに、金属製の缶であって外部から液体の注入量を確認できない場合であっても、口部4から内部を目視しながら液体を注入することができる。つまり、適量の液体を注入しやすい。この口部4の外径の大きさは、38mm以上に設定してよい。
【0052】
またさらに、胴部7の内面がなめらかに形成されているため、より具体的には、大径部10および口頸部11とが円筒状に形成され、かつ大径部10と口頸部11とに接続された肩部12が円錐状または凸曲面状に形成されているため、飲用する際の流動抵抗を低減することができ、その結果、液体に溶解していない粉末や、混合できていない粉末などが容器3の内部に残留することを抑制できる。すなわち、意図したとおりの栄養分を摂取することができる。
【0053】
さらに、上記のように容器3の内圧を高くすることにより、胴部7を比較的強く握ることができるため、開栓するためのキャップ6に作用させるトルクの反力を、容器3を変形させることなく十分に発生させることができる。またさらに、難溶性飲料製品1を出荷する際に、容器3に穴などの破損がないかを触圧試験によって確認できるため、製造工程を簡素化することができる。
【0054】
なお、本発明の実施形態における難溶性飲料製品は、上記のように構成された容器3に粉粒体2を収容したものに限らず、例えば、胴部7の壁面のうち適量の液体を注入した場合における液面に対応する位置を、内部を視覚で確認できるように可視光線の透過率が30%以上となる透明の材料とするなどしてもよい。もしくは、可視光線の透過率が30%以上となるポリエチレンテレフタレートによって容器3を形成してもよい。その場合には、粉粒体2が設けられている位置を遮光するためにマスキングなどによって覆うことが好ましい。また、胴部7の壁面のうち適量の液体を注入した場合における液面に対応する位置に計量線を印字することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…難溶性飲料製品、 2…粉粒体、 3…容器、 4…口部、 5…収容部、 6…キャップ、 7…胴部、 8…底蓋部、 9…下端部、 10…大径部、 11…口頸部、 12…肩部、 13…天板部、 14…スカート部、 15…ライナー、 16…ナール部、 16a…凹部、 16b…凸部、 17…ベントスリット、 18…スリット、 19…ピルファープルーフバンド部、 20…ノズル、 21…開口端、 V1…(粉粒体が収容される)容積、 V2…(粉粒体を溶解もしくは混合させた溶液の量に相当する)容積、 V3…(攪拌用の余裕空間の)容積。