(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】プロセスチーズ類とその製造方法、及び食品
(51)【国際特許分類】
A23C 19/082 20060101AFI20240228BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240228BHJP
【FI】
A23C19/082
A23L5/00 K
(21)【出願番号】P 2019121614
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 絢子
(72)【発明者】
【氏名】増島 修平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 啓
(72)【発明者】
【氏名】阿部 忠博
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-153791(JP,A)
【文献】特開2000-210016(JP,A)
【文献】特開2016-019486(JP,A)
【文献】特開2016-195553(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114027363(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩とを含み、
固形分の含有量が52~62質量%であり、
前記固形分に対して、前記アセチル化デンプンの含有量が8~33質量%であり、
前記アセチル化デンプンが酢酸デンプンを含み、前記アセチル化デンプンの総質量に対して前記酢酸デンプンの含有量が60質量%以上であり、
前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上である、プロセスチーズ類。
【請求項2】
さらに、ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質の少なくとも一方を含み、
前記固形分に対して、ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質の合計の含有量が0.4~8質量%である、請求項1に記載のプロセスチーズ類。
【請求項3】
前記固形分に対して、乳タンパク質の含有量が10~48質量%である、請求項1又は2に記載のプロセスチーズ類。
【請求項4】
ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩とを含み、
固形分の含有量が52~62質量%であり、
前記アセチル化デンプンが酢酸デンプンを含み、前記アセチル化デンプンの総質量に対して前記酢酸デンプンの含有量が60質量%以上であり、
前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上であり、下記の耐熱試験方法で測定される形状保持率が40%以上である、プロセスチーズ類。
(耐熱試験方法)
一辺が10mmの立方体としたプロセスチーズ類を、100℃の水蒸気中で15分間加熱した直後に、加熱後の高さ(単位:mm)を測定し、下記式(1)により形状保持率(単位:%)を求める。
形状保持率=加熱後の高さ/10×100・・・(1)
【請求項5】
10℃における硬度が3×10
4~13×10
4Paである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセスチーズ類。
【請求項6】
ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩と、水とを含み、固形分に対して、前記アセチル化デンプンの含有量が8~33質量%であり、
前記アセチル化デンプンが酢酸デンプンを含み、前記アセチル化デンプンの総質量に対して前記酢酸デンプンの含有量が60質量%以上であり、
前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上である原料組成物を、加熱溶融し、得られた加熱乳化物を冷却して
、固形分の含有量が52~62質量%であるプロセスチーズ類を得る、プロセスチーズ類の製造方法。
【請求項7】
前記加熱乳化物の80℃における粘度が60000mPa・s以下であり、かつ前記プロセスチーズ類の10℃における硬度が3×10
4~13×10
4Paである、請求項6に記載のプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項8】
前記冷却後に切断加工する、請求項6又は7に記載のプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセスチーズ類を含む、食品。
【請求項10】
加熱用食品である、請求項9に記載の食品。
【請求項11】
加熱済み食品である、請求項9に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロセスチーズ類、前記プロセスチーズ類の製造方法、及び前記プロセスチーズ類を含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロセスチーズ類は、ナチュラルチーズに水、溶融塩等を配合して加熱溶融し、乳化し、これを所定の形状として冷却、固化することにより製造される。
例えばチーズ入りの焼成食品や油ちょう食品など、加熱工程を経て製造される食品に使用されるプロセスチーズ類にあっては、加熱工程を経ても形状の変化が少ない耐熱保形性が求められる。
【0003】
プロセスチーズ類に耐熱保形性を付与するために、溶融塩として、クリーミング効果が高いピロリン酸塩などのリン酸塩を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-182655号公報
【文献】特開2011-244791号公報
【文献】特開2015-211687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、食品添加物への関心が高まり、リン酸塩の使用量が少ない、又はリン酸塩不使用の食品が求められる場合がある。
本発明は、リン酸塩の使用量が少なくても耐熱保形性に優れたプロセスチーズ類、その製造方法、及び前記プロセスチーズ類を含む食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩とを含み、固形分に対して、前記アセチル化デンプンの含有量が8~33質量%であり、前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上である、プロセスチーズ類。
[2] さらに、ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質の少なくとも一方を含み、固形分に対して、ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質の合計の含有量が0.4~8質量%である、[1]のプロセスチーズ類。
[3] 固形分に対して、乳タンパク質の含有量が10~48質量%である、[1]又は[2]のプロセスチーズ類。
[4] 前記アセチル化デンプンが酢酸デンプンを含む、[1]~[3]のいずれかのプロセスチーズ類。
[5] ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩とを含み、前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上であり、下記の耐熱試験方法で測定される形状保持率が40%以上である、プロセスチーズ類。
(耐熱試験方法)
一辺が10mmの立方体としたプロセスチーズ類を、100℃の水蒸気中で15分間加熱した直後に、加熱後の高さ(単位:mm)を測定し、下記式(1)により形状保持率(単位:%)を求める。
形状保持率=加熱後の高さ/10×100・・・(1)
[6] 10℃における硬度が3×104~13×104Paである、[1]~[5]のいずれかのプロセスチーズ類。
[7] ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩と、水とを含み、固形分に対して、前記アセチル化デンプンの含有量が8~33質量%であり、前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上である原料組成物を、加熱溶融し、得られた加熱乳化物を冷却してプロセスチーズ類を得る、プロセスチーズ類の製造方法。
[8] 前記加熱乳化物の80℃における粘度が60000mPa・s以下であり、かつ前記プロセスチーズ類の10℃における硬度が3×104~13×104Paである、[7]のプロセスチーズ類の製造方法。
[9] 前記冷却後に切断加工する、[7]又は[8]のプロセスチーズ類の製造方法。
[10] 前記[1]~[6]のいずれかのプロセスチーズ類を含む、食品。
[11] 加熱用食品である、[10]の食品。
[12] 加熱済み食品である、[10]の食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リン酸塩の使用量が少なくても耐熱保形性に優れたプロセスチーズ類、及び前記プロセスチーズ類を含む食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のプロセスチーズの、耐熱試験後の写真である。
【
図2】実施例2のプロセスチーズの、耐熱試験後の写真である。
【
図3】実施例3のプロセスチーズの、耐熱試験後の写真である。
【
図4】実施例4のプロセスチーズの、耐熱試験後の写真である。
【
図5】実施例5のプロセスチーズの、耐熱試験後の写真である。
【
図6】比較例1のプロセスチーズの、耐熱試験後の写真である。
【
図7】実施例4のプロセスチーズを、油ちょうした後の写真である。
【
図8】実施例5のプロセスチーズを、油ちょうした後の写真である。
【
図9】実施例4のプロセスチーズを、水に浸漬した後の写真である。
【
図10】実施例5のプロセスチーズを、水に浸漬した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、固形分とは、固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出した値である。
本明細書における水分含有量は、常圧加熱乾燥法により測定した値である。
本明細書における乳タンパク質の含有量は、サンドイッチELISA法により測定できる。
乳タンパク質におけるカゼイン:ホエイタンパク質の比は、ISO17997-1(IDF29-1)(Milk - Determination of casein-nitrogencontent - Indirect method (Reference method))に基づき決定される。
本明細書において、ホエイタンパク質の含有量は固形分換算の値である。
本明細書において、卵白由来タンパク質の含有量は固形分換算の値である。
【0010】
本明細書において、「プロセスチーズ類」とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、及び公正競争規約で定めるプロセスチーズ、チーズフード、または乳等を主要原料とする食品の規格のうちいずれかに該当するものであって、一般にプロセスチーズ類あるいはプロセスチーズ様食品とされるものをすべて包含するものとする。
乳等省令において、プロセスチーズは、以下のように定められている。
「1種以上のナチュラルチーズを用いて食品衛生法で認められている添加物を添加するか又は添加せず粉砕し、混合し、加熱溶融し、乳化してつくられるもので乳固形分が40%以上のものをいう。乳固形分が40%未満のものはチーズフードに分類される。」
また公正競争規約において、プロセスチーズは、以下のように定められている。
「プロセスチーズは、乳固形分(乳脂肪と乳蛋白質の総量)を40%以上含み、ナチュラルチーズ以外の添加成分として、脂肪量調整のためのクリーム、バター、バターオイルを含有することができる。水を含んでもよい。その他の添加成分として、味、香り、栄養成分、機能性および物性を付与する目的の食品を、製品の固形分重量の1/6以内で含有することができる。該その他の添加成分として前記クリーム、バター、バターオイル以外の乳等を添加する場合は、製品中における乳糖含量が5質量%を超えない範囲、かつ、製品の固形分重量の1/6以内とする。
チーズフードは、1種以上のナチュラルチーズ又はプロセスチーズを用いて、食品衛生法で認められている添加物を添加するか、又は添加せず粉砕し、混合し、加熱溶融してつくられるもので、製品中にチーズ分51質量%以上を含むものをいう。
【0011】
<プロセスチーズ類>
本実施形態のプロセスチーズ類は、ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩とを含む。
[ナチュラルチーズ]
本実施形態におけるナチュラルチーズは、乳等省令において定められる「ナチュラルチーズ」である。ただし、ナチュラルチーズの原料である乳は、乳等省令で定義される乳(生乳、牛乳、特別牛乳、生やぎ乳、生めん羊乳、殺菌やぎ乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳等)のほかに、水牛の乳、ラクダの乳など、チーズの原料として公知の動物一般の乳も含むことができる。
ナチュラルチーズの種類は特に限定されない。プロセスチーズ類の製造に用いられる公知のナチュラルチーズを使用できる。
具体例としては、モッツァレラ、ストリング、エダム(ソフトエダム)、ステッペン、サムソー、マリボー、エグモント、チルジット、ダンボー、ロックフォール、ブルー、クリームハバティ等の半硬質チーズ;エダム(ハードエダム)、ゴーダ、チェダー、エメンタール、グリィエール、プロボローネ等の硬質チーズ;パルメザン、グラナ、パルミジャーノレッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノ、スブリンツ等の特別硬質チーズ等が挙げられる。
これらのうち、製造上の調整及びチーズ組織の適正化が容易である点で、半硬質チーズまたは硬質チーズが好ましい。
ナチュラルチーズは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
[アセチル化デンプン]
アセチル化デンプンは、デンプンの水酸基の一部をアセチル基に置換した分子構造を有する加工デンプンである。具体例としては、酢酸デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプンが挙げられる。特に、プロセスチーズ類の耐熱性の向上効果に優れる点で、酢酸デンプンが好ましい。
アセチル化デンプンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
プロセスチーズ類が、アセチル化デンプンとして、少なくとも酢酸デンプンを含むことが好ましい。アセチル化デンプンの総質量に対して、酢酸デンプンの含有量は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
【0013】
[溶融塩]
溶融塩は、クエン酸塩を含む。クエン酸塩としてはクエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸一カリウムが挙げられる。
溶融塩は、クエン酸塩以外の溶融塩を含んでもよい。例えば、酒石酸塩(酒石酸ナトリウム等)が挙げられる。
溶融塩は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。上記下限値以上であると望ましい風味と物性が得られやすい。
【0014】
本実施形態のプロセスチーズ類は、溶融塩としてクリーミング効果が高いリン酸塩を添加しなくても、又はリン酸塩の添加量が少なくても良好な耐熱保形性を達成できる。
溶融塩は、リン酸塩を含まないか、含む場合は少量であることが好ましい。リン酸塩としては、モノリン酸塩(オルトリン酸ナトリウム等)、ジリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム等)、ポリリン酸塩(ポリリン酸ナトリウム等)が例示できる。
溶融塩の総質量に対して、リン酸塩の含有量は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。0質量%でもよい。
【0015】
[ホエイタンパク質・卵白由来タンパク質]
本実施形態のプロセスチーズ類は、さらに、ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質の少なくとも一方を含むことが好ましい。両方を含んでもよい。
ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質はいずれも、プロセスチーズ類の製造工程中の加熱処理で熱凝固しやすい成分である。これらの成分は耐熱保形性の向上に寄与する。また、プロセスチーズ類を切断加工する際に、所望の形状に安定して加工しやすい加工適性の向上にも寄与する。
なお、ナチュラルチーズ由来の乳タンパク質は、ほぼカゼインタンパク質である。通常、ナチュラルチーズの乳タンパク質のうちホエイタンパク質が占める割合は3質量%以下である。
【0016】
本実施形態のプロセスチーズ類は、ホエイタンパク質を7質量%以上含む原料(以下、ホエイタンパク質含有原料ともいう。)を含むことが好ましい。
ホエイタンパク質含有原料としては、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、乳タンパク質濃縮物(TMP)、ミセル性カゼイン濃縮物(MCC)、ホエイパウダーが例示できる。
ホエイタンパク質含有原料に対するホエイタンパク質の含有量は、一般的に、WPCが30~85質量%、WPIが85~95質量%、TMPが15~17質量%、MCCが7~9質量%、ホエイパウダーが11~15質量%程度である。
ホエイタンパク質含有原料は、ホエイタンパク質を25質量%以上含むものがより好ましく、WPC、WPIがより好ましい。
ホエイタンパク質含有原料は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本実施形態のプロセスチーズ類は、卵白を91質量%以上含む原料(以下、卵白含有原料ともいう。)を含むことが好ましい。
卵白含有原料としては、卵白又は全卵が挙げられる。卵白含有原料は卵白粉末又は全卵粉末が好ましい。
卵白含有原料は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
[他の任意成分]
本実施形態のプロセスチーズ類は、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪原料、炭水化物原料、タンパク質原料、その他の成分を含んでもよい。
脂肪原料としては、植物性油脂(パーム油、ヤシ油、なたね油など)、動物性油脂(ラードなど)が例示できる。
炭水化物原料としては、水あめ、デキストリン、アセチル化デンプン以外のデンプン類などが例示できる。
タンパク質原料としては、大豆タンパク質、小麦タンパク質、カゼインタンパク質などが例示できる。
その他の成分としては、プロセスチーズ類において公知の調味料、酸味料、溶融塩以外の乳化剤、pH調整剤、香料等が例示できる。
調味料としては、食塩、グルタミン酸ナトリウム、糖質類、エキス類、果汁、香辛料等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、乳酸等が挙げられる。
溶融塩以外の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、グリセライド類等が挙げられる。
pH調整剤としては、重曹、炭酸ナトリウム、クエン酸、乳酸等が挙げられる。
【0019】
[組成]
プロセスチーズ類の総質量(製品中の水分を含む)に対して、ナチュラルチーズの含有量は、特に限定されず、例えば1質量%以上でもよい。コスト抑制の点では少ない方が好ましく、風味の点では多い方が好ましい。上限は、ナチュラルチーズ以外の成分とのバランスの点で85質量%以下が好ましい。
【0020】
乳タンパク質に対して、溶融塩の含有量は4~30質量%が好ましく、6~25質量%がより好ましく、8~15質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると乳化性に優れ、上限値以下であると組織安定性に優れる。
乳タンパク質に対して、溶融塩由来のリン酸塩の含有量は3.2質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。ゼロでもよい。
【0021】
プロセスチーズ類の総質量に対して、固形分の含有量は52~62質量%が好ましく、54~60質量%がより好ましく、56~58質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると二次加工適性に優れ、上限値以下であると組織安定性に優れる。
【0022】
固形分に対して、乳タンパク質の含有量は10~48質量%が好ましく、12~40質量%がより好ましく、14~35質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると乳化性に優れ、上限値以下であると組織安定性に優れる。
乳タンパク質の含有量は、主に、ナチュラルチーズの含有量及びホエイタンパク質含有原料の配合量で調整できる。
【0023】
固形分に対して、アセチル化デンプンの含有量は8~33質量%が好ましく、9~32質量%がより好ましく、10~31質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると耐熱保形性の向上効果に優れる。上限値以下であると風味、口当たりに優れる。
【0024】
固形分に対して、ホエイタンパク質及び卵白由来タンパク質の合計の含有量は0.4~8質量%が好ましく、0.5~7質量%がより好ましく、0.6~6質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると耐熱保形性の向上効果に優れる。上限値以下であると風味、口当たりに優れる。
【0025】
プロセスチーズ類は、プロセスチーズまたはチーズフードであることが好ましく、プロセスチーズであることが特に好ましい。
プロセスチーズの場合、プロセスチーズの総質量に対して、ナチュラルチーズとアセチル化デンプンの合計の含有量は65~90質量%が好ましく、68~87質量%がより好ましく、70~85質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると耐熱保形性に優れ、上限値以下であると組織安定性に優れる。
【0026】
プロセスチーズの場合、プロセスチーズの固形分に対して、脂肪含量が32~73質量%、総タンパク含量が10~48質量%、炭水化物含量が8~39質量%、灰分含量が3~8質量%であることが好ましい。
チーズフードの場合、プロセスチーズの固形分に対して、脂肪含量が40~73質量%、総タンパク含量が16~39質量%、炭水化物含量が9~29質量%、灰分含量が3~6質量%であることが好ましい。
脂肪含量は酸アンモニア分解法、総タンパク質含量は燃焼法、灰分含量は、灰化法によりそれぞれ測定した値である。脂肪含量と総タンパク含量と炭水化物含量と灰分含量の合計は100質量%である。炭水化物含量は差し引き法により算出した値である。すなわち、全ての成分の合計から脂肪、タンパク質及び灰分の合計を減じた値を炭水化物含量とする。
また、プロセスチーズ類の固形分の成分組成(脂肪含量、総タンパク含量、炭水化物含量、灰分含量)は、原材料の成分規格値に基づいて算出することもできる。
【0027】
プロセスチーズ類の10℃における硬度は3×104~13×104Paが好ましく、5×104~11×104Paがより好ましい。上記範囲の下限値以上であると二次加工適性に優れ、上限値以下であると組織安定性に優れる。
本明細書におけるプロセスチーズ類の10℃における硬度は、クリープメーター等の物性測定器を用い、圧縮応力の最大値を測定して得られる値である。具体的には後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0028】
プロセスチーズ類の10℃におけるpHは5.2~5.8が好ましく、5.3~5.7がより好ましく、5.4~5.6がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると組織安定性に優れ、上限値以下であると風味に優れる。
【0029】
本実施形態によれば、ナチュラルチーズにアセチル化デンプンを配合し、クエン酸を含む溶融塩を用いることによって、クリーミング効果に優れる溶融塩であるリン酸塩の使用量が少なくても、又はリン酸塩不使用であっても、耐熱保形性に優れるプロセスチーズ類を実現できる。
例えば、ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩とを含み、前記溶融塩がクエン酸塩を含み、前記溶融塩の総質量に対して、クエン酸塩の含有量が60質量%以上であり、形状保持率が40%以上である、プロセスチーズ類が得られる。
形状保持率は、下記の耐熱試験方法で測定される値である。
(耐熱試験方法)
一辺が10mmの立方体としたプロセスチーズ類を、100℃の水蒸気中で15分間加熱した直後に、加熱後の高さ(単位:mm)を測定し、下記式(1)により形状保持率(単位:%)を求める。
形状保持率=加熱後の高さ/10×100・・・(1)
【0030】
<プロセスチーズ類の製造方法>
本実施形態のプロセスチーズ類は、ナチュラルチーズと、アセチル化デンプンと、溶融塩と、水とを含む原料組成物を、加熱乳化して加熱乳化物を得て、前記加熱乳化物を冷却してプロセスチーズ類を得る方法で製造できる。加熱乳化物を冷却する前に保温する工程を設けてもよい。
プロセスチーズ類が他の任意成分を含有する場合、加熱乳化前または加熱乳化の途中で、原料組成物に他の任意成分を添加する。
本実施形態のプロセスチーズ類の製造方法において、溶融塩としてリン酸塩を添加しなくてもよい。リン酸塩を添加しないでプロセスチーズ類を製造することにより、リン酸塩不使用のプロセスチーズ類が得られる。
【0031】
[加熱乳化工程]
原料組成物を加熱乳化する工程は、原料組成物を構成する各原料を乳化機に投入して加熱乳化する。加熱乳化は、原料組成物を撹拌しながら加熱処理を行う工程であり殺菌工程も兼ねる。加熱処理は、好ましくは直接または間接蒸気を用いて行われる。乳化機は、例えば、高速せん断型、ケトル型、2軸スクリューをもつクッカー型、サーモシリンダー型等の公知の乳化機を用いることができる。
【0032】
加熱乳化の条件は特に限定されない。例えば、回転数120~1500rpmで撹拌しながら、加熱して乳化するとともに、所定の加熱殺菌条件を満たしたら、乳化を終了させる。加熱温度は70℃以上が好ましく、80~90℃がより好ましい。
【0033】
本実施形態の製造方法によれば、加熱乳化物の粘度が低く、冷却固化後の硬度が高く、耐熱保形性に優れたプロセスチーズ類が得られる。
例えば、加熱乳化物の80℃における粘度が60000mPa・s以下であり、かつ冷却して固化した後の10℃における硬度が3×104~13×104Paである、プロセスチーズ類を製造できる。
加熱乳化物の粘度は、50000mPa・s以下が好ましく、40000mPa・s以下がより好ましい。加熱乳化物の粘度が前記上限値以下であれば、乳化のための撹拌及び充填工程がより容易で製造に適したものとなる。
加熱乳化物の粘度の下限は、加熱乳化物の取り扱い性の点では、3000mPa・s以上が好ましく、5000mPa・s以上がより好ましい。
加熱乳化物の粘度は、B型粘度計により測定した値である。
【0034】
[冷却固化工程]
加熱乳化工程で得られた加熱乳化物は、冷却して固化する工程では、所定の形状に成形し、得られた成形物を冷却することが好ましい。
冷却方法としては、例えば1~10℃の冷水に成形物を浸漬させて急冷する方法、冷蔵庫内で保管し冷却する方法、冷却した金属面に成形物の片面もしくは両面を接触させて急冷する方法等が挙げられる。冷却後に切断加工する工程を設けてもよい。
[保温工程]
乳化機から取り出した加熱乳化物を、積極的に冷却する前に、加熱乳化物の品温が急激に低下しないように保温する工程(保温工程)を設けてもよい。加熱乳化物を所定の形状に成形した後に、保温してもよい。保温工程では、加熱乳化物の品温が一定に維持されてもよく、徐々に低下してもよく、それらの組み合わせでもよい。保温工程における加熱乳化物の品温は乳化時の加熱温度以下であり、その差は40℃以内が好ましい。保温時間は、加熱乳化物を乳化機から取り出してから、冷却を開始するまでの時間であり、60~540分間が好ましく、120~240分間がより好ましい。保温時間が上記範囲の下限値以上であると、プロセスチーズ類の耐熱性向上効果に優れ、上限値以下であると風味、口当たりに優れる。
【0035】
プロセスチーズ類の最終製品の形状は特に限定されない。例えば、加熱乳化物をブロック状に成形して冷却して得られる、ブロック状のプロセスチーズ類を最終製品としてもよい。
加熱乳化物をシート状に成形して冷却して得られる、シート状のプロセスチーズ類を最終製品としてもよい。
加熱乳化物をブロック状又はシートに成形して冷却した、ブロック状又はシート状の成形物を、さらに切断加工して得られる切断加工品を最終製品としてもよい。切断加工品の形状は特に限定されないが、例えば、シュレッド状、ダイス状、棒状、スライス状、短冊状、粒状等が挙げられる。
粒状に切断加工する方法は、例えばブロック状の成形物をすりおろす方法、チョッパー、グラインダーなどの粉砕機を用いて細かく粉砕する方法を用いることができる。
【0036】
[後加工工程]
所望の形状に成形または切断加工したプロセスチーズ類を中間品として、さらに後加工を施して最終製品としてもよい。
例えば中間品を、公知の方法で燻煙処理して、スモークチーズを製造することができる。本実施形態の製造方法で得られる中間品は耐熱保形性に優れるため、燻煙処理時に加熱されても変形が生じ難い。例えばダイス状のスモークチーズの製造に好適であり、燻煙処理中の変形が少ないダイス状スモークチーズが得られる。また得られたダイス状スモークチーズは、耐熱保形性に優れる。
【0037】
<食品>
本実施形態のプロセスチーズ類は、そのまま喫食することもでき、プロセスチーズ類を含む食品(以下、チーズ入り食品ともいう。)の製造に用いることもできる。
特に耐熱保形性に優れるため、プロセスチーズ類が加熱(以下、二次加熱ともいう。)される工程を経て喫食できる状態となるチーズ入り食品に好適である。
本実施形態のチーズ入り食品は、加熱用食品でもよく、加熱済み食品でもよい。
【0038】
加熱用食品は、プロセスチーズ類を含み、プロセスチーズ類を二次加熱することなく製造した半製品であり、二次加熱することによって喫食できる状態となる食品である。例えば、チーズ入りコロッケの具材に衣を付けた状態の加熱用食品、これを冷凍させた加熱用の冷凍食品等が挙げられる。
このほかに、加熱用のチーズ使用料理(グラタン、パスタ、ピザ、チーズ入りつくね、チーズ入りハンバーグ、チーズ入りオムレツなど)、加熱用のチーズ入り油ちょう食品(チーズ入りカツ、チーズ入りてんぷらなど)が挙げられる。
【0039】
加熱済み食品は、プロセスチーズ類を含み、プロセスチーズ類を二次加熱する工程を経て製造した食品である。例えば、チーズ入りコロッケの具材に衣を付けた後に油ちょう(二次加熱)したチーズ入りコロッケ、油ちょう後のチーズ入りコロッケを冷凍した加熱済み冷凍食品等が挙げられる。
加熱済み食品として、畜肉又は魚肉練り製品(チーズ入りカマボコ、チーズ入りウィンナ一など)、二次加熱済みのチーズ使用料理(グラタン、パスタ、ピザ、チーズ入りつくね、チーズ入りハンバーグ、チーズ入りオムレツなど)、二次加熱済みのチーズ入り油ちょう食品(チーズ入りカツ、チーズ入りてんぷらなど)が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<測定方法・評価方法>
[乳化状態の評価]
製造直後の加熱溶融物又はプロセスチーズ類を、目視で観察し、組織が均一である場合を「良好」、不均一な組織が認められる場合を「不良」と判定した。
[粘度の測定]
製造直後の加熱乳化物を直ちに、80℃に保温した容器に移し、品温80℃での粘度を、B型粘度計(リオン社製品名:ビスコテスター、2号ロータ使用)を用いて測定した。
【0041】
[水分含有量の測定]
プロセスチーズ類(10℃)について、乾燥減量法による水分分析計(CEM Japan社製品名:SMART6)を用いて、水分含有量を測定した。
[pHの測定]
プロセスチーズ類(10℃)について、ポータブル型pHメータ(堀場製作所社製品名:LAQUAact D-50)を用いて、pHを測定した。
[硬度の測定]
プロセスチーズ類(10℃)を、縦40mm、横40mm、厚さ20mmの角注状に切断したサンプルについて、食品物性試験機(山電社製品名:クリープメータ)で、直径8mm、高さ22mmの円柱状プランジャーを用い、圧縮速度5mm/secで厚さ5mmになる位置まで圧縮したときの応力の最大値(単位:Pa)を測定した。3個のサンプルの測定値の平均を硬度とした。
【0042】
[耐熱保形性の評価・形状保持率の測定]
プロセスチーズ類(10℃)を、一辺が10mmの立方体に切断したサンプルについて、沸騰した温湯上に設置した蒸し器に入れることで、100℃の水蒸気中で15分間加熱する耐熱試験を行った。耐熱試験終了直後のサンプルの高さ(加熱後の高さ、単位:mm)を測定し、下記式(1)により形状保持率(単位:%)を求めた。8個のサンプルの形状保持率の平均値を測定結果とした。下記の基準で耐熱保形性を評価した。
形状保持率=加熱後の高さ/10×100・・・(1)
(耐熱保形性の評価基準)
A:形状保持率の平均値が90%以上。
B:形状保持率の平均値が70%以上、90%未満。
C:形状保持率の平均値が50%以上、70%未満。
D:形状保持率の平均値が40%以上、50%未満。
E:形状保持率の平均値が40%未満。
【0043】
<原料>
表に示す原料は以下の通りである。
(ナチュラルチーズ)
ナチュラルチーズ混合物:チェダー86質量%とゴーダ14質量%の混合物、乳タンパク質含有量18質量%。
(アセチル化デンプン)
アセチル化デンプン(1):酢酸デンプン(東海澱粉社製)。
(比較デンプン)
ハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉社製)。
(ホエイタンパク質)
ホエイタンパク質濃縮物(フォンテラ社製)、乳タンパク質含有量80質量%、ホエイタンパク質含有量80質量%。
(卵白由来タンパク質)
卵白粉末:卵白粉末(太陽化学社製)、タンパク質含有78質量%。
(溶融塩)
溶融塩(1):クエン酸塩、昭和化工社製、クエン酸三ナトリウム(結晶)。
(他の任意成分)
調味料(1):食塩。
調味料(2):グルタミン酸ナトリウム。
酸味料:クエン酸。
香料:市販品。
【0044】
<実施例1~5、比較例1>
表1に示す配合でプロセスチーズを製造した。表1には製品(プロセスチーズ)の総質量に対する、ナチュラルチーズの含有量及び固形分の含有量を示す。また乳タンパク質に対する溶融塩の含有量を示す。また固形分の総質量に対する、乳タンパク質の含有量、アセチル化デンプンの含有量、ホエイタンパク質と卵白由来タンパク質の合計の含有量、及び他の任意成分の合計の含有量を示す。各例のプロセスチーズの固形分の成分組成を表2に示す。
【0045】
まず、表に示す配合の原料組成物を、試験溶融乳化釜(ステファン社製、万能高速カッター・ミキサーUMM/SK5型、カッティングアタッチメント使用)に投入した。この乳化釜ではスチームを吹き込んで加熱する。表に示す添加水の配合量は、スチームによって添加される水分も含んでいる。
次いで、回転数1000rpmで撹拌しながら、85℃に達するように加熱溶融を行った。85℃に達したら、スチームの吹き込みを停止し、60秒間撹拌することにより加熱殺菌した後、撹拌を停止し、加熱乳化物を得た。
製造直後の加熱乳化物について上記の方法で乳化状態を評価した。また上記の方法で粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
上記で得た加熱乳化物を、長さ270mm、幅90mm、深さ80mmの直方体の容器に充填して成形物(約75℃)とした。前記成形物を3時間保温して粗熱をとり、品温50℃の成形物を得た。これを庫内温度5℃の冷蔵庫内に入れて品温が10℃に達するまで冷却して、ブロック状のプロセスチーズを得た。
得られたプロセスチーズについて、上記の方法で水分含有量、pH、硬度、形状保持率を測定した。また上記の方法で乳化状態、耐熱保形性を評価した。結果を表1に示す。
各例において、形状保持率の測定に使用したサンプルの、耐熱試験の終了直後の写真を
図1~6に示す。
【0047】
実施例4、5で得られたプロセスチーズを4mmの立方体に切断してサンプルとした。各例について、サンプルを180℃に加熱した油(市販のサラダ油)の中で2分間素揚げ(油ちょう)した。油の中から取り出したサンプルの写真を
図7(実施例4)、
図8(実施例5)に示す。
実施例4、5のいずれも、油ちょう後のサンプル形状は角があり、油ちょうにおける耐熱保形性が良好であった。
【0048】
実施例4、5で得られたプロセスチーズを、縦30mm、横30mm、厚さ5mmの直方体に切断してサンプルとした。各例について、2枚のサンプルを50mLの水(10℃)の中に24時間浸漬した。浸漬開始から24時間後のサンプルの写真を
図9(実施例4)、
図10(実施例5)に示す。
実施例4、5のいずれも、浸漬後のサンプル形状は角があり、水中での保形性も良好であった。
【0049】
【0050】
【0051】
表1の結果に示されるように、実施例1~5では、リン酸塩を使用せずに耐熱保形性に優れるプロセスチーズが得られた。
実施例1~5は、比較例1と比べて、加熱乳化物の粘度が低いにもかかわらず、冷却した固化したプロセスチーズの硬度は高かった。
【0052】
<製造例1:スモークチーズの製造>
実施例1~5で得られたプロセスチーズを4mmの立方体に切断し、ジェネレーター方式の燻煙処理装置の燻煙室内の棚板上に載置し、市販の燻煙材を用いて燻煙処理を行った。60℃30分間を標準として燻煙し、スモークチーズを得た。各例で得られたスモークチーズはいずれも、処理前と比較して変形はみられず、優れた風味と問題のない物性を保持していた。