(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】抵抗体材料、抵抗体材料の製造方法及び電流検出用抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/032 20060101AFI20240228BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20240228BHJP
H01C 17/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01C1/032
H01C13/00 J
H01C17/02
(21)【出願番号】P 2019174434
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 玲那
(72)【発明者】
【氏名】粂田 賢孝
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 忠彦
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-075714(JP,A)
【文献】特開2004-119561(JP,A)
【文献】特開2006-270078(JP,A)
【文献】特開2016-069724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/00-1/16
H01C 7/00
H01C 11/00-13/02
H01C 17/02
C22C 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と、マンガンと、を含有し、
表面にマンガンの酸化膜が形成され
ており、
前記酸化膜の厚さが70nm以上であり、
前記酸化膜の厚さが抵抗体材料全体の厚みに対して1%以下である、
抵抗体材料。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗体材料であって、
前記酸化膜はMnOを含む、抵抗体材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抵抗体材料であって、
前記抵抗体材料の全質量比でマンガンを6質量%以上35質量%以下含む、抵抗体材料。
【請求項4】
銅と、マンガンと、を含有し、表面にマンガンの酸化膜が形成されており、前記酸化膜の厚さが70nm以上であり、前記酸化膜の厚さが抵抗体材料全体の厚みに対して1%以下である抵抗体材料の製造方法であって、
前記銅と、
前記マンガンと、を含有する抵抗体材料に、酸素濃度が30ppm以下の雰囲気において、490℃以上750℃以下で10分間以上60分間以下の熱処理を行う、抵抗体材料の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の抵抗体材料の製造方法であって、
前記酸素濃度は、5ppm以上30ppm以下である、抵抗体材料の製造方法。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の抵抗体材料の製造方法であって、
前記熱処理は、酸素濃度が30ppm以下の窒素雰囲気で行われる、抵抗体材料の製造方法。
【請求項7】
銅と、マンガンと、を含有し、表面にマンガンの酸化膜が形成され
ており、前記酸化膜の厚さが70nm以上であり、前記酸化膜の厚さが抵抗体材料全体の厚みに対して1%以下である、
抵抗体材料からなる抵抗体を備えた電流検出用抵抗器。
【請求項8】
請求項
7に記載の電流検出用抵抗器であって、
前記酸化膜はMnOを含む、電流検出用抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗体材料、抵抗体材料の製造方法及び電流検出用抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流検出用途に用いられる抵抗器には、一般的に、銅-マンガン系合金、銅-ニッケル系合金、ニッケル-クロム系合金、鉄-クロム系合金などの抵抗体材料が用いられている。抵抗体材料としては、抵抗値が低く、抵抗温度係数(TCR)が低いなどの理由から、銅-マンガン系合金が用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、銅-マンガン系合金は、銅-ニッケル系合金、ニッケル-クロム系合金に比べて耐熱性に劣る。このため、抵抗器の使用可能温度の上限を規制するなどの対策を講じる必要があった。
【0005】
また、銅-マンガン系合金は、発熱により表面の劣化が進行しやすく、表面の劣化に伴って抵抗値の変動が生じやすい。このため、抵抗体材料の表面に保護膜を形成するなどして表面劣化への対策が必要であった。
【0006】
更にまた、近年の電子機器などの高性能化に伴って、電子機器などに用いられる電流検出用の抵抗器に対しても、更なる高電力化、高精度化への要求が高まっている。
【0007】
そこで、本発明は、抵抗体材料の耐熱性を向上させるとともに、抵抗体材料の表面の劣化に対する耐性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様としての抵抗体材料は、銅と、マンガンと、を含有し、表面にマンガンの酸化膜が形成されており、前記酸化膜の厚さが70nm以上であり、前記酸化膜の厚さが抵抗体材料全体の厚みに対して1%以下である。
【発明の効果】
【0009】
この態様によれば、銅とマンガンとを含有する抵抗体材料の表面に、マンガンの酸化膜が形成されていることにより、当該抵抗体材料の耐熱性を向上させることができる。これにより、抵抗体材料を用いた抵抗器の使用可能温度の上限を高めることができる。ひいては、抵抗器の定格電力を高めることができる。
【0010】
また、この態様によれば、使用による抵抗体表面の劣化に対する耐性を向上させることができる。これにより、抵抗体材料から形成される抵抗体の表面の劣化に起因する抵抗体の抵抗値の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る抵抗体を説明するための平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る抵抗体の抵抗を測定する抵抗測定装置を説明するための分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る電流検出用抵抗器の一例を説明する平面図である。
【
図5】
図5は、評価測定のために作製した抵抗体を説明するための平面図である。
【
図6】
図6は、供試体の表面分析の結果を説明するための図である。
【
図7】
図7は、供試体の表面分析の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[抵抗体材料]
本発明の実施形態に係る抵抗体材料について説明する。本実施形態に係る抵抗体材料は、銅と、マンガンと、を含有し、表面にマンガンの酸化膜が形成されている。
【0013】
抵抗体材料は、抵抗体材料の全質量比でマンガンを6質量%以上35質量%以下含む。抵抗体材料の全質量比でマンガンの含有量が6質量%未満であると、マンガンの酸化膜が形成されにくく、良好な厚さの酸化膜が得られない可能性がある。
【0014】
また、マンガンの含有量が35質量%を超えると、得られる抵抗体材料の体積抵抗率が要求値よりも高くなる。また、抵抗体材料が硬くなり加工性が低下する。
【0015】
抵抗体材料には、銅とマンガン以外に、アルミニウム、錫、ニッケル、クロムなどが含まれていてもよい。抵抗体材料として汎用性が高い上に、マンガン酸化膜が形成されやすこと、また、体積抵抗率及び抵抗温度係数(TCR)を要求値に設計しやすいという観点では、抵抗体材料の一例として、マンガニンを用いることができる。
【0016】
抵抗体材料の表面に形成される酸化膜の厚さは、70nm以上とすることができる。
【0017】
酸化膜の厚さが、70nm未満であると、抵抗体材料を用いて作製される抵抗体の、使用による抵抗体表面の劣化に対して、所望とする耐性を確保することができない。また、酸化膜の厚さに特に制限はないが、酸化膜の厚さによっては、剥がれが生じるおそれがある。このため、酸化膜の厚さは、2000nmを超えないことが好ましい。
【0018】
また、酸化膜を形成することによる抵抗材料の抵抗温度特性(TCR)への影響を抑制する観点から、酸化膜の厚さは、抵抗体材料全体の厚みに対して、1%以下の厚みとすることが好ましい。これにより、抵抗体材料のTCRを100ppm/℃以下にすることができ、固定抵抗器としての特性を満足することができる。
【0019】
以上の抵抗体材料によれば、銅とマンガンとを含有する抵抗体材料の表面に、マンガンの酸化膜が形成されていることにより、当該抵抗体材料の耐熱性を向上させることができる。これにより、抵抗体材料を用いた抵抗器の使用可能温度の上限を高めることができる。ひいては、抵抗器の定格電力を高めることができる。
【0020】
[抵抗体材料の製造方法]
続いて、本発明の実施形態に係る抵抗体材料の製造方法について説明する。本実施形態に係る抵抗体材料の製造方法は、銅とマンガンとを含有する抵抗体材料に、酸素濃度が30ppm以下の雰囲気において、490℃以上750℃以下で10分間以上60分間以下の熱処理を行うというものである。
【0021】
熱処理における酸素濃度は、好ましくは、5ppm以上30ppm以下であり、酸素濃度が30ppm以下の窒素雰囲気で行われることがより好ましい。
【0022】
この熱処理の温度条件は、490℃以上750℃以下とすることができる。
【0023】
熱処理の温度条件が490℃未満であると、抵抗体材料を用いて作製される抵抗体の、使用による抵抗体表面の劣化に対して、所望とする耐性を確保し得る厚さのマンガンの酸化膜を形成することができない。
【0024】
また、熱処理の温度条件が750℃を超えると、酸化膜が厚く形成できるものの、抵抗体材料が柔らかくなり加工性が低下する。
【0025】
熱処理の時間条件は、10分間以上60分間以下とすることができる。熱処理の時間が10分間未満であると、抵抗体表面の劣化に対して所望とする耐性を確保し得る厚さのマンガンの酸化膜を形成することができない。また、熱処理の時間が60分間を超えると、酸化膜が厚くなり過ぎて、抵抗温度係数(TCR)が要求値よりも高くなる。
【0026】
本実施形態で使用される「温度条件」及び「時間条件」の用語は、以下のように規定される。すなわち、「温度条件」とは、所定の昇温速度で昇温して到達した温度を示す。温度条件の「490℃以上750℃以下」は、この到達温度を示す。また、「時間条件」とは、到達温度を保持する時間を示す。熱処理の時間条件の「10分間以上60分間以下」は、この保持時間を示す。
【0027】
以上の熱処理を行うことにより、抵抗体材料の表面に、厚さ70nm以上のマンガンの酸化膜を形成することができる。マンガンの酸化膜により、抵抗体材料を用いて作製される抵抗体の表面の劣化に対する耐性を向上させることができる。
【0028】
抵抗体材料の表面の劣化に対する耐性を向上させる方法としては、これまでも、例えば、銅及びマンガンのほかに、錫及び/又はアルミニウムなどを加えて熱処理を施すことによって、抵抗体材料の表面に錫及び/又はアルミニウムの酸化膜を形成する方法などが提案されてきた。
【0029】
しかし、銅及びマンガンのほかに錫及び/又はアルミニウムを含む合金からなる抵抗体材料の場合、抵抗体材料の内部において錫及び/又はアルミニウムが斑を形成していることがあり、これまでよりも一層高い要求温度下においては、抵抗値が不安定になったり、熱応力の違いなどから斑部分にクラックを生じたりすることがあった。
【0030】
これに対して、発明者らは、MnO、Mn3O4、MnO2、Mn2O3等の酸化膜に着目し、鋭意検討を重ねた結果、上述のマンガン酸化膜の中でも、特に、MnOが、抵抗体の変色として現れる抵抗体の劣化の防止に寄与していることを見出した。
【0031】
本実施形態においては、抵抗体材料の表面に、抵抗体材料の成分であるマンガンの酸化膜を形成したことにより、銅及びマンガンのほかに錫及び/又はアルミニウムなどの他の金属を添加した場合に比べて、抵抗体の劣化による抵抗値の変動を抑制することができる。特に、抵抗体の劣化防止には、マンガンの酸化膜に、MnOが存在していることが重要であると考えられる。
【0032】
さらにまた、本実施形態に係る抵抗体材料の製造方法によって得られる酸化膜は、抵抗体材料を用いて作製される抵抗体の表面の劣化に対する耐性を向上するだけでなく、抵抗体の曲げ或いは切断によっても剥離することがなく安定であるため、抵抗体の塑性加工の自由度を高めることができるという利点も有する。
【0033】
[抵抗体の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る抵抗体材料から作製された抵抗体10の一例を説明するための平面図である。
【0034】
抵抗体10は、長尺状の本体部11と、該本体部11の長さ方向の両端である一対の通電接続部12とを有する。通電接続部12には、電流配線との接続のための貫通孔14aが形成されている。
【0035】
また、本体部11における一対の通電接続部12の間には、本体部11より延出された一対の検出端子接続部13が形成されている。
【0036】
検出端子接続部13は、通電接続部12の配置方向に延在し本体部11と離間した一対の第1端子部13aと、それぞれの第1端子部12aと本体部11とを接続する第2端子部13bとからなり、電圧を検出するための端子を構成している。
【0037】
ここで、本体部11と通電接続部12と検出端子接続部13は、本実施形態に係る抵抗体材料により一体形成されたものである。
【0038】
抵抗体10の製造方法の一例としては、抵抗体材料を所定の厚さの板状に加工し、このシートを複数枚重ねたものに対して、ワイヤーから放電しつつ、所定の抵抗体形状にカットするワイヤーカット加工を適用することができる。或いは、所定の抵抗体形状の金型に当てて荷重により型抜きするプレス加工を適用することができる。
【0039】
ワイヤーカット加工は、複数の板材を重ねて加工できるため効率的である。また、ワイヤーカット加工は、プレス加工のように荷重をかけた型抜き加工と違い、加工歪みが生じにくく、抵抗値などの特性への影響も低い。このため、ワイヤーカット加工を用いることが好ましい。
【0040】
図2は、抵抗体10の抵抗値を測定する抵抗値測定装置30を説明するための分解斜視図である。
【0041】
抵抗値測定装置30は、上述した抵抗体10が測定台20に固定ネジ14により組み付けられて構成されるものである。測定台20は、絶縁体から形成されており、測定台20には、一例として、銅の板材により形成された電流配線パターン21が固定されている。電流配線パターン21は、図示しない電源に接続されていることにより、抵抗体10の本体部11に電流Iが供給される。
【0042】
図2において破線で示されたプローブ突出部22には、測定台20に埋め込まれた電圧検出用プローブの先端23が突出して配置されている。抵抗体10を固定ネジ14で測定台20に固定することにより、抵抗体10の第1端子部13aが電圧検出用プローブの先端23に当接されるようになっている。
【0043】
これにより、図示しない電圧検出装置によって、本体部11における長さLdの部分に生じた電圧Vを検出することができる。
【0044】
ここで、本体部11の幅と厚みは一定に作製されているため、本体部11の断面積は、長手方向に沿って一様に断面積S(cm2)となっている。このため、抵抗体10の体積抵抗率ρは、検出端子接続部13間の電圧Vと、電流Iと、断面積S(cm2)と、検出端子接続部13間の長さLd(cm)とから、以下の式により算出され、導電率はその逆数として算出される。
ρ=(V/I)×(S/Ld) [Ω・cm]
【0045】
[電流検出用抵抗器]
次に、マンガンの酸化膜を形成した上述の抵抗体材料を適用可能な電流検出用抵抗器の一例について、
図3及び
図4を用いて詳細に説明する。
【0046】
図3は、電流検出用抵抗器100の一例を説明する平面図である。また、
図4は、
図3に示す電流検出用抵抗器100の側面図である。
【0047】
電流検出用抵抗器100は、上述した抵抗体材料から形成された板体を加工して得られるシャント抵抗器である。電流検出用抵抗器100は、本体部101と、第一接続部102と、第二接続部103と、第一起立部104と、第二起立部105とを有する。
【0048】
本体部101は、矩形状であり、回路基板の実装面から所定間隔離間して配置される。
【0049】
第一接続部102の一方の端部は、実装面に接続される。また、第一接続部102の他方の端部は、第一起立部104を介して本体部101に連結されている。第二接続部103の一方の端部は、実装面に接続される。また、第二接続部103の他方の端部は、第二起立部105を介して本体部101に連結されている。第一起立部104及び第二起立部105は、本体部101を実装面から離間させるように、本体部101の端部と第一接続部102及び第二接続部103とを連結する。
【0050】
また、第一接続部102及び第二接続部103は、
図4に示すように、めっき層106,107を備える。
【0051】
電流検出用抵抗器100は、上述の抵抗体材料から形成された板状の抵抗体をプレス加工により形成することができる。
【0052】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0053】
本実施形態に係る抵抗体10の形状は、
図1に説明されたものに限定されない。同様に、本実施形態に係る電流検出用抵抗器100の形状は、
図3及び
図4に説明されたものに限定されない。
【実施例】
【0054】
本発明の実施形態に係る抵抗体材料を作製し、この抵抗体材料から抵抗体を製造し、得られた抵抗体に対して各種測定を行い、抵抗器としての評価を行った。以下、供試体の製造方法及びその評価について説明する。
【0055】
[供試体の作製]
<供試体T1>
供試体T1は、抵抗体材料として、マンガニンを用いた。すなわち、抵抗体材料の全質量比で、マンガンを10~12質量%含み、ニッケルを1~4質量%含み、銅を84~89質量%含む抵抗体材料に酸化膜を形成する熱処理を行うことなく使用した。当該抵抗体材料を板状に形成し、その後、ワイヤーカット加工によって、
図1を用いて説明したものと同一形状の抵抗体を作製した。
【0056】
図5は、評価測定のために作製した抵抗体を説明するための平面図である。
図5には、供試体として作製した抵抗体の各部のサイズが記載されている。なお、抵抗体の厚みは0.12mmである。
【0057】
<供試体T2>
供試体T3は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、470℃で20分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0058】
<供試体T3>
供試体T3は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、490℃で10分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0059】
<供試体T4>
供試体T4は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、490℃で20分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0060】
<供試体T5>
供試体T5は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、500℃で1分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0061】
<供試体T6>
供試体T6は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、500℃で5分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0062】
<供試体T7>
供試体T7は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、500℃で10分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0063】
<供試体T8>
供試体T8は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、500℃で20分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0064】
<供試体T9>
供試体T9は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、500℃で40分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0065】
<供試体T10>
供試体T10は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、500℃で60分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0066】
<供試体T11>
供試体T11は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、600℃で60分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0067】
<供試体T12>
供試体T12は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、650℃で60分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作成した。
【0068】
<供試体T13>
供試体T13は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、700℃で60分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作成した。
【0069】
<供試体T14>
供試体T14は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、750℃で60分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0070】
<供試体T15>
供試体T15は、銅とマンガンとを含む抵抗体材料に、熱処理として、800℃で60分間の熱処理を行い、自然冷却した後、供試体T1と同様の方法により抵抗体を作製した。
【0071】
[評価方法]
<抵抗体の外観の観察>
上述した供試体T1~T15について、250℃で1000時間の条件で熱放置試験を行って、試験前後の外観状態の変化を観察した。各供試体の色を目視観察し、試験前の色(赤褐色)から変化がなかったもの、或いは、変化があっても赤褐色が確認できたものについては合格(良)と判定し、赤褐色が確認できず黒色に変化したものを不合格(不可)と判定した。また総合判定として、変色が認められたものを不可と判定し、固定抵抗器として、優れているものを「優」、良好なものを「良」、特定はやや劣るが使用可能なものを「可」とした。評価結果を第1表に示す。
【0072】
<酸化膜及びその膜厚の測定>
日本電子株式会社製、製品名:オージェマイクロプローブ(型番:JAMP-9510F)を用いて、供試体として作製した抵抗体の元素比率を測定した。具体的には、抵抗体の最表面から厚さ方向に向けて、深さ約20nm毎に上記装置により表面分析を行った。検出された元素比率において、銅とマンガンの比率が逆転したときの深さが酸化膜の厚さに相当する。
【0073】
測定結果の一例として、供試体T1の表面分析の結果を
図6に示す。また、供試体T10の表面分析の結果を
図7に示す。両者を比較すると、供試体T10の結果には、銅とマンガンの比率の逆転が認められ、酸化膜が形成されている。
【0074】
なお、酸化膜及びその膜厚の測定は、抵抗体の外観が合格(良)判定だった供試体の一部について実施した。また、抵抗体の厚み(0.12mm)に対する酸化膜の厚みの割合を算出した。
【0075】
<抵抗温度係数(TCR)の測定>
抵抗温度係数(TCR)とは、抵抗体の温度変化による内部抵抗値の変化の割合を表すものであり、下記式により表される。
抵抗温度係数(ppm/℃)=(R-Ra)/Ra÷(T-Ta)×1000000
ここで、Ra:基準温度における抵抗値、Ta:基準温度、R:定常状態における抵抗値、T:定常状態になる温度である。本実施形態においては、基準温度は、25℃であり、定常状態になる温度は、60℃である。なお、マンガニンを使用した場合のTCRの許容範囲として、±100ppm/℃を「良」と「可」との境界に設定した。
【0076】
<抵抗体の抵抗値の変化率>
熱処理を実行した供試体T1~T15のうち、供試体T8(500℃、20分加熱した例)と、供試体T14(750℃、60分加熱した例)と、酸化膜を形成していない比較例としての供試体T1のそれぞれについて、所定温度に所定時間放置する熱放置試験を行って、その前後における抵抗値の変化率を測定した。
【0077】
抵抗値の変化率は以下の式で求めることができる。
抵抗値変化率(%)={(Rh-Ra)/Ra}×100
ここで、Raは、熱放置試験前における抵抗値であり、Rhは、熱放置試験後の抵抗値である。
【0078】
本評価では、1000時間に至っても抵抗値の変化率が±1.0%の範囲に納まるものを「良」とし、1000時間に満たない段階で抵抗値の変化率が±1.0%の範囲を超えるものを「不可」とした。
【0079】
具体的には、供試体T8と供試体T14と供試体T1とを、それぞれ複数セット用意した。そして、225℃にて放置時間を異ならせて、初期の抵抗値からの変化率を測定した。結果は、第2表に示される。
【0080】
[評価結果]
抵抗体の外観、酸化膜の状態、及び抵抗温度係数の測定結果を第1表に示す。また、抵抗体の熱放置試験前後における抵抗値の測定結果を第2表に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
第1表及び第2表の結果によれば、熱処理の温度条件を490℃以上750℃以下に設定し、処理時間を10分間以上60分間以下とすることにより、抵抗体材料の表面に70nm以上の酸化膜が形成できることがわかった。供試体T3では74nmの厚みの酸化膜が形成されている。製造ばらつきを考慮し、70nm以上の厚みで酸化膜が形成されていれば、変色を防止する効果があると考えられる。
【0084】
抵抗体の厚みと酸化膜の関係において、酸化膜を厚くした場合に抵抗温度特性(TCR)への影響が懸念される。この点、表1からわかるとおり、TCRを±100ppm/℃以下とするには、酸化膜の厚みが抵抗体全体の厚みに対して、1%以下であればよいことがわかる。なお、この厚みとは、抵抗体の一表面に形成される厚みである。つまり、例えば抵抗体の表裏面に酸化膜が形成された場合は、抵抗体全体の厚みに対して酸化膜の厚みは2%以下である。なお、TCR特性は劣るが、供試体T13、T14は、外観検査を満足しており、厳密な温度特性が要求されない用途においては、固定抵抗器として使用可能である。
【0085】
供試体T3、T4、T7~T14では、225℃で1000時間の熱放置試験の後でも外観の劣化が殆ど発生していない。また、供試体T8及びT14については、第2表に示すように、225℃で1000時間の熱放置試験の後においても、抵抗値の変化率が、±1.0%の範囲で安定している。
【0086】
以上のことから、本発明の実施形態に係る抵抗体材料によれば、銅とマンガンとを含有する抵抗体材料の表面に、マンガンの酸化膜が形成されていることにより、当該抵抗体材料の耐熱性を向上させることができる。これにより、抵抗体材料を用いた抵抗器の使用可能温度の上限を高めることができる。ひいては、抵抗器の定格電力を高めることができる。
【0087】
また、本発明の実施形態に係る抵抗体材料によれば、使用による抵抗体表面の劣化に対する耐性を向上させることができる。これにより、抵抗体材料から形成される抵抗体の表面の劣化に起因する抵抗体の抵抗値の変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 抵抗体
11 本体部
12 通電接続部
13 検出端子接続部
13a 第1端子部
13b 第2端子部
14 固定ネジ
14a 貫通孔
20 測定台
21 電流配線パターン
22 プローブ突出部
23 先端
30 抵抗値測定装置
100 電流検出用抵抗器
101 本体部
102 第一接続部
103 第二接続部
104 第一起立部
105 第二起立部
106,107 めっき層