(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20240228BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E04B1/64 Z
E04H9/14 Z
(21)【出願番号】P 2019191440
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217102(JP,A)
【文献】特開2013-151854(JP,A)
【文献】特開2017-095999(JP,A)
【文献】国際公開第02/044501(WO,A1)
【文献】特開2008-088791(JP,A)
【文献】特開2017-002637(JP,A)
【文献】特開2016-211285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04H 9/00-9/16
E06B 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に沿って延び、少なくとも前記外壁と前記建物の基礎との間の隙間を覆った止水シートと、
前記止水シートを前記建物に対して前記隙間を覆った状態で保持する保持手段と、
前記保持手段は、前記止水シートの長手方向の両端部に設けられる取付部と、前記建物の隅部に設けられ、前記止水シートの長手方向の両端部を保持する第一支柱と、を有し、
前記第一支柱は、前記外壁に沿って延びた二つの壁部と、前記壁部はL字状に構成され、前記壁部から屋外側に突出した引掛部と、を有し、
前記取付部は、前記引掛部に対応する開口部と、
を備えた、止水装置。
【請求項2】
前記隙間から前記建物内への浸水を抑制する水切りを備え、
前記止水シートは、前記水切りと前記隙間と前記基礎とを一体に覆った、請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記外壁に沿って延び当該外壁に固定された磁性部材と、前記止水シートの上端部を間に挟んだ状態で前記磁性部材に固定されたマグネットと、を有した、請求項1または2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記外壁に固定された被吸着部材と、前記止水シートの上端部に設けられ前記被吸着部材に吸着された吸着部材と、を有した、請求項1または2に記載の止水装置。
【請求項5】
前記保持手段は、前記第一支柱と前記長手方向に間隔をあけて設けられた第二支柱と、前記第一支柱と前記第二支柱との間に亘り前記止水シートの上端部を保持した梁部と、を有した、請求項
1に記載の止水装置。
【請求項6】
前記止水シートは、前記外壁および前記基礎に沿って延びた第一部分と、前記第一部分から前記基礎の設置面に沿って延びた第二部分と、を有し、
前記保持手段は、前記第二部分を前記設置面に向けて押圧する押圧部材を有した、請求項1~
5のうちいずれか一つに記載の止水装置。
【請求項7】
前記磁性部材は、前記外壁に沿って細長く延びた長方形状の帯板状に構成される、
請求項3に記載の止水装置。
【請求項8】
前記押圧部材は、複数設けられ、前記押圧部材同士が互いに接する、
請求項
6に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁と基礎との間の隙間から建物内への浸水を抑制する水切りを備えた止水装置が、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の止水装置では、例えば、豪雨や、河川の氾濫等の水害発生時において、建物内への浸水をより抑制することのできる新規な構成が得られれば、有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、建物内への浸水をより抑制することが可能な新規な構成の止水装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の止水装置は、例えば、建物の外壁に沿って延び、少なくとも前記外壁と前記建物の基礎との間の隙間を覆った止水シートと、前記止水シートを前記建物に対して前記隙間を覆った状態で保持する保持手段と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、例えば、止水シートおよび保持手段によって少なくとも外壁と基礎との間の隙間を覆うことができるため、隙間から建物内への浸水を抑制することができる。また、例えば、止水シートが水圧によって押圧されることにより、基礎の屋外側の面や外壁の屋外側の面等と密着し、ひいては止水シートによって隙間が塞がれる。これにより、建物内への浸水をより抑制することができる。
【0008】
また、上記止水装置では、例えば、前記隙間から前記建物内への浸水を抑制する水切りを備え、前記止水シートは、前記水切りと前記隙間と前記基礎とを一体に覆っている。このような構成によれば、例えば、止水シートによって水切りや、隙間、基礎に設けられうる換気口等を一体に覆うことができるため、建物内への浸水をより一層抑制することができる。
【0009】
また、上記止水装置では、例えば、前記保持手段は、前記外壁に沿って延び当該外壁に固定された磁性部材と、前記止水シートの上端部を間に挟んだ状態で前記磁性部材に固定されたマグネットと、を有する。このような構成によれば、例えば、磁性部材およびマグネットによって止水シートの上端部が外壁に対して下方に垂れ下がるのを抑制できる。よって、例えば、止水シートが隙間を覆う位置に留まりやすい。また、例えば、外壁に沿って延びた磁性部材によって止水シートの上端部およびマグネットを、磁性部材の上下方向の範囲内で建物に対して移動可能に保持することができる。これにより、例えば、止水シートが水圧によって下方に引っ張られた場合の移動が許容され、ひいては基礎の屋外側の面や外壁の屋外側の面等と密着して隙間を塞ぐことができる。
【0010】
また、上記止水装置では、例えば、前記保持手段は、前記外壁に固定された被吸着部材と、前記止水シートの上端部に設けられ前記被吸着部材に吸着された吸着部材と、を有する。このような構成によれば、例えば、被吸着部材および吸着部材によって止水シートの上端部が外壁に対して下方に垂れ下がるのを抑制できる。よって、例えば、止水シートが隙間を覆う位置に留まりやすい。
【0011】
また、上記止水装置では、例えば、前記保持手段は、前記建物の隅部に設けられ、前記止水シートの長手方向の端部を保持した第一支柱を有している。このような構成によれば、例えば、第一支柱を利用して建物の出隅(隅部)において止水シートの端部を保持することができる。これにより、例えば、止水シートが出隅に沿って取り回されて止水シートの下端部と設置面との間に隙間が生じてしまうといった不都合が抑制されやすい。
【0012】
また、上記止水装置では、例えば、前記保持手段は、前記第一支柱と前記長手方向に間隔をあけて設けられた第二支柱と、前記第一支柱と前記第二支柱との間に亘り前記止水シートの上端部を保持した梁部と、を有している。このような構成によれば、例えば、第一支柱と第二支柱との間に亘った梁部を利用して止水シートを保持することができる。これにより、例えば、止水シートの上端部が建物に対して下方に垂れ下がるのが抑制され、ひいては止水シートが隙間を覆う位置に留まりやすい。
【0013】
また、上記止水装置では、例えば、前記止水シートは、前記外壁および前記基礎に沿って延びた第一部分と、前記第一部分から前記基礎の設置面に沿って延びた第二部分と、を有し、前記保持手段は、前記第二部分を前記設置面に向けて押圧する押圧部材を有している。このような構成によれば、例えば、押圧部材によって止水シートの第二部分が風で捲れたりするのが抑制され、ひいては止水シートが隙間を覆う位置に留まりやすい。また、例えば、押圧部材によって第二部分と設置面とが密着し、ひいては第二部分と設置面との間の隙間から建物側への水の浸入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建物内への浸水をより抑制することが可能な新規な構成の止水装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態の止水装置の例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の止水装置の例示的かつ模式的なXZ断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の一部の例示的かつ模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、変形例の止水装置の一部の例示的かつ模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0017】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0018】
[実施形態]
図1は、実施形態の止水装置1の斜視図であり、
図2は、
図1のXZ断面図である。
図1,2に示されるように、止水装置1は、例えば、建物100の外壁101と基礎102との間の隙間110や、基礎102に設けられうる不図示の換気口等から建物100内への浸水を抑制するものである。止水装置1は、隙間110や基礎102の屋外側に止水シート10を設置することにより、簡易的かつ迅速に止水することができる。建物100は、例えば、住宅や、ビル、車庫、工場、倉庫、店舗等の建築構造物である。
【0019】
以下の説明では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、止水シート10(第一シート10A)の長手方向(横幅方向)に沿うとともに、建物100の奥行方向(前後方向)に沿う。Y方向は、止水シート10(第一シート10A)の厚さ方向に沿うとともに、建物100の幅方向(左右方向)に沿う。Z方向は、止水シート10(第一シート10A)の高さ方向(縦幅方向)に沿うとともに、建物100の高さ方向(上下方向)に沿う。
【0020】
また、以下の説明では、便宜上、X方向は前方、X方向の反対方向は後方とも称され、Y方向は左方、Y方向の反対方向は右方とも称され、Z方向は上方、Z方向の反対方向は下方とも称される場合がある。なお、以下の説明では、設置面120とは建物100の基礎102に隣接した面を意味する便宜上の文言であり、地面や、床面、コンクリート面等とも称される。
【0021】
また、以下の説明では、隙間110を介して一方の空間から他方の空間へ雨水等の水が浸入する可能性がある場合の他方の空間(下流側)が屋内側と定義され、一方の空間(上流側)が屋外側と定義される。すなわち、屋内側とは、止水シート10によって水の浸入を防止(阻止、抑制)したい側であり、屋外側とは、浸入可能性のある水が流れてくる側のことである。
【0022】
図2に示されるように、基礎102は、例えば、設置面120に少なくとも一部が埋まった状態に設けられている。基礎102のZ方向の上面には、不図示の複数のパッキンを介して土台103が固定されている。本実施形態では、例えば、基礎102と土台103との間には、パッキンが存在しない部分でZ方向の隙間としての第一通路110aが設けられている。
【0023】
第一通路110aは、X方向に延びており、床下の換気を行うための空気通路(換気通路)として機能する。すなわち、第一通路110aは、隙間110と床下の空間とを連通している。言い換えると、第一通路110aは、外壁101と基礎102との間の隙間110の一部を構成している。
【0024】
また、土台103の屋外側の面には、複数の縦胴縁104や透湿防水シート105等を介して外壁101が固定されている。本実施形態では、例えば、外壁101と透湿防水シート105との間には、縦胴縁104が存在しない部分でX方向の隙間としての第二通路110bが設けられている。
【0025】
第二通路110bは、Z方向に延びており、外壁101と屋内側(透湿防水シート105側)との換気を行うための空気通路(換気通路)として機能する。すなわち、第二通路110bは、隙間110と屋内側の空間とを連通している。言い換えると、第二通路110bは、外壁101と基礎102との間の隙間110の一部を構成している。
【0026】
本実施形態では、第一通路110aおよび第二通路110bを介した空気の移動によって床下や屋内側における湿気を屋外側に排出することができる。その結果、床下や屋内側の空間の結露を軽減することができ、ひいては当該空間における木材が腐って耐久性が低下したり、カビが発生したりするのを抑制することができる。また、本実施形態では、第一通路110aおよび第二通路110bを含む隙間110が、止水装置1によって覆われている。
【0027】
図1,2に示されるように、止水装置1は、例えば、止水シート10と、水切り20と、保持手段30と、を備えている。水切り20は、建物100の外壁101(外周)に沿って延びており、上述した土台103(
図2参照)に固定されている。水切り20は、隙間110内において第一通路110aを屋外側から覆うとともに第二通路110bを下方から覆っている。これにより、隙間110から建物100内への浸水を抑制している。
【0028】
止水シート10は、外壁101の屋外側の面101aと基礎102の屋外側の面102aとを覆っている。止水シート10は、隙間110を含む建物100の下方の所定領域を閉塞可能な高さおよび長さを有している。止水シート10は、例えば、建物100の外壁101(外周)に沿って横長な長方形状の薄板状に構成されている。
【0029】
止水シート10は、遮水性を有しており、隙間110の防水シートとして機能する。また、止水シート10は、可撓性を有しており、屈曲可能である。止水シート10の素材は、樹脂や、ゴム、表面を樹脂でコーティングした布とすることができ、好適には透明な材料によって構成される。また、止水シート10は、例えば、水圧Wpによって押圧されることにより変形可能(伸縮可能)な素材で構成されてもよい。
【0030】
また、止水シート10は、例えば、第一シート10A(
図1参照)や、第二シート10B等の複数の部品(分割体)の組み合わせによって構成されている。第一シート10A、および第二シート10Bは、建物100の外壁101(外周)に沿って並んでいる。止水シート10は、第一シート10Aおよび第二シート10Bを含む複数の部品(分割体)によって建物100の略全周を囲っている。
【0031】
止水シート10の長さは、例えば、建物100における隣接した二つの出隅107の間の間隔と略同じである。言い換えると、止水シート10は、建物100の出隅107の数に対応して分割されている。本実施形態では、第一シート10Aは、X方向に隣接した二つの出隅107の間の隙間110を覆い、第二シート10Bは、入隅106を含むY方向に隣接した二つの出隅107の間の隙間110を覆っている。
【0032】
なお、止水シート10のZ方向の高さは、例えば、設置面120から上方に向けてどの範囲を止水シート10によって覆い防水するかに基づいて設定されている。出隅107および入隅106は、隅部の一例である。
【0033】
また、止水シート10は、例えば、第一部分11と、第二部分12と、をそれぞれ有している。第一部分11は、止水シート10のうち、外壁101および基礎102に沿って延びた部分である。第一部分11は、止水シート10の上端部10aと、長手方向の両端部10cの一部と、を有している。第一部分11は、保持手段30のマグネット32によって外壁101に固定されている。第一部分11は、ベース部等とも称される。
【0034】
第二部分12は、止水シート10のうち、第一部分11の下端部から設置面120に沿って延びた部分である。第二部分12は、止水シート10の下端部10bと、長手方向の両端部10cの一部と、を有している。第二部分12は、保持手段30の押圧部材35によって設置面120に固定されている。第二部分12は、折り返し部や、延長部等とも称される。
【0035】
また、第二部分12は、例えば、設置面120に固定された犬走り40と面している。犬走り40は、平坦状に構成され、設置面120とXY平面に並んだ露出面40aを有している。言い換えると、犬走り40は、設置面120の一部を構成している。本実施形態では、第二部分12が犬走り40と押圧部材35との間に挟まれることにより、例えば、第二部分12が凹凸状の設置面120(地面、アスファルト)と押圧部材35との間に挟まれるような場合と比べて、止水性能の低下が抑制されている。
【0036】
図3は、
図1の一部の分解斜視図である。
図3に示されるように、保持手段30は、例えば、スチール板31と、マグネット32と、コーナー柱33と、取付部34と、押圧部材35と、を有している。保持手段30は、止水シート10の上端部10aや、下端部10b、長手方向の両端部10c等を建物100に対して保持(固定)することにより、止水シート10を隙間110を覆う位置(状態、姿勢)に留めている。
【0037】
スチール板31は、例えば、建物100の外壁101(外周)に沿って細長く延びた長方形状の帯板状に構成されている。スチール板31は、隙間110(水切り20)の上方に離間した状態で、ねじやアンカー等の結合具や、接着剤、両面テープ等によって外壁101に固定されている。スチール板31は、磁性部材の一例である。なお、磁性部材は、この例には限定されず、例えば、スチールシート等であってもよい。
【0038】
マグネット32は、止水シート10の上端部10aに設けられている。本実施形態では、複数のマグネット32が、止水シート10の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。マグネット32は、例えば、円板状に構成され、止水シート10に設けられうるポケット部に収容されている。なお、マグネット32は、この例には限定されず、例えば、止水シート10の長手方向に沿って延びたマグネットバー等であってもよい。
【0039】
止水シート10の上端部10aは、マグネット32の吸着力によって、スチール板31ひいては外壁101に固定される。本実施形態では、このマグネット32の吸着力によって、止水シート10の上端部10aが外壁101に対して下方に垂れ下がるのが抑制され、ひいては止水シート10の上端部10aを隙間110(水切り20)よりも上方に保持することができる。
【0040】
また、本実施形態では、例えば、止水シート10の上端部10aおよびマグネット32が、スチール板31のZ方向の範囲内で建物100に対して移動可能に保持されている。これにより、例えば、止水シート10が水圧Wp(
図2参照)によって下方に引っ張られた場合の移動が許容され、ひいては基礎102の屋外側の面102aや外壁101の屋外側の面101a等と密着して隙間110を塞ぐことができる。
【0041】
押圧部材35は、止水シート10の下端部10bに設けられている。押圧部材35は、止水シート10のうち犬走り40(設置面120)に沿って折り返された第二部分12を犬走り40に向けて押圧している。押圧部材35は、例えば、止水シート10の長手方向に並んだ複数の板状のフラットバーであり、金属材料によって構成されている。押圧部材35は、重り部材等とも称される。
【0042】
押圧部材35は、止水シート10の第二部分12を犬走り40に密着させた状態で保持する。これにより、止水シート10が風で捲れたりするのが抑制され、ひいては止水シート10を建物100に対して隙間110を覆う位置に留めることができる。また、例えば、止水シート10と犬走り40との間の隙間から建物100側への水の浸入を抑制することができる。
【0043】
図3に示されるように、コーナー柱33は、例えば、建物100の出隅107に対応して設けられている。コーナー柱33は、止水シート10の長手方向の両端部10cを保持可能である。本実施形態では、コーナー柱33が止水シート10の両端部10cを保持することにより、例えば、止水シート10が出隅107に沿って取り回されて第二部分12と設置面120との間に隙間が生じてしまうといった不都合が抑制されている。コーナー柱33は、第一支柱の一例である。
【0044】
コーナー柱33は、例えば、ベース部33aと、台座部33bと、引掛部33cと、スペーサ33dと、を有している。台座部33bは、犬走り40に沿って延びた四角形状の板状に構成されている。台座部33bには、コーナー柱33を犬走り40に固定するねじやボルト等の結合具50(
図1参照)がZ方向に貫通する複数の開口部33b2が設けられている。
【0045】
また、台座部33bの上面33b1には、止水シート10の第二部分12(
図1参照)の一部が支持されている。第二部分12は、例えば、上面33b1に粘着式のテープや押圧部材35等によって固定されることにより、上面33b1と第二部分12との間の隙間から建物100側への水の浸入を抑制することができる。
【0046】
図3に示されるように、ベース部33aは、例えば、台座部33bの上面33b1に支持されている。ベース部33aは、出隅107における外壁101に沿って延びた二つの壁部33a1を有している。壁部33a1は、Z方向の視線では、出隅107に向けて開放された略L字状に構成されている。
【0047】
スペーサ33dは、例えば、外壁101と壁部33a1との間に介在されている。スペーサ33dの厚さは、水切り20の幅(屋外側への突出量)と略同じである。ベース部33aは、スペーサ33dを介して、外壁101に支持されている。
【0048】
引掛部33cは、例えば、壁部33a1から屋外側に突出している。壁部33a1には、それぞれ、Z方向に互いに間隔をあけて二つの引掛部33cが設けられている。引掛部33cは、例えば、頭部や軸部を有したスタッドボルト等によって構成され、略T字状の断面を有している。
【0049】
取付部34は、止水シート10の長手方向の両端部10cに設けられている。取付部34は、Z方向に沿って細長く延びた長方形状の帯板状に構成され、止水シート10の両端部10cを保持している。
【0050】
取付部34には、コーナー柱33の引掛部33cに対応して開口部34aが設けられている。開口部34aは、取付部34を厚さ方向(Y方向またはX方向)に貫通している。開口部34aは、例えば、丸穴部34a1と、スリット部34a2と、を有している。丸穴部34a1は、大径部や第一部分等とも称され、スリット部34a2は、小径部や第二部分等とも称される。
【0051】
スリット部34a2は、例えば、引掛部33cの軸部を収容可能でありかつ頭部を収容不能に構成されている。スリット部34a2は、丸穴部34a1の上方に位置されている。丸穴部34a1は、スリット部34a2と連通し、引掛部33cの頭部を収容可能に構成されている。
【0052】
したがって、ユーザーが止水シート10の取付部34を、引掛部33cの頭部と丸穴部34a1とが厚さ方向(Y方向またはX方向)に対向する位置まで持ち上げ、取付部34をコーナー柱33に近付けることで、引掛部33cの頭部が丸穴部34a1に挿入される。さらに、ユーザーが取付部34を下方へ押し下げることで、引掛部33cの軸部がスリット部34a2内に進入する。
【0053】
引掛部33cの軸部がスリット部34a2に進入した状態では、スリット部34a2の周縁部が引掛部33cの頭部と引っ掛かり、取付部34が引掛部33cに対して屋外側へ移動するのが抑制される。このように、引掛部33cと開口部34aとが互いに引っ掛った状態で、引掛部33cおよびその周囲の構造によって、止水シート10が隙間110(水切り20)を覆う位置から外れる(移動する)のが抑制される。
【0054】
次に、止水装置1の設置方法の一例について説明する。まず、ユーザーは、コーナー柱33を建物100に出隅107に設置するとともに、スチール板31を建物100の外壁101に固定する(S1)。S1は、第一工程の一例である。
【0055】
次に、ユーザーは、止水シート10を広げ、長手方向の両端部10cに設けられた取付部34をコーナー柱33の引掛部33cに引っ掛ける(S2)。S2は、第二工程の一例である。
【0056】
次に、ユーザーは、止水シート10の上端部10aを間に挟んだ状態で複数のマグネット32を長手方向に沿ってスチール板31に固定していく(S3)。S3は、第三工程の一例である。
【0057】
次に、ユーザーは、止水シート10の下端部10bを犬走り40(設置面120)に沿って折り返して第二部分12を形成し(S4)、押圧部材35によって第二部分12を犬走り40に密着させた状態で固定する(S5)。S4は、第四工程の一例であり、S5は、第五工程の一例である。
【0058】
本実施形態によれば、上述したS1~S5によって簡易的かつ迅速に止水シート10を設置して、隙間110から建物100内への浸水を抑制することができる。なお、設置面120に溜まった水が引いた場合には、例えば、上述したS1~S5の手順と逆の手順を行うことによって、止水装置1を撤去することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態では、例えば、止水装置1は、建物100の外壁101に沿って延び、少なくとも外壁101と建物100の基礎102との間の隙間110を覆った止水シート10と、止水シート10を建物100に対して隙間110を覆った状態(姿勢)で保持する保持手段30と、を備える。
【0060】
このような構成によれば、例えば、止水シート10および保持手段30によって少なくとも外壁101と基礎102との間の隙間110を覆うことができるため、隙間110から建物100内への浸水を抑制することができる。また、例えば、止水シート10が水圧Wpによって押圧されることにより、基礎102の屋外側の面102aや外壁101の屋外側の面101a等と密着し、ひいては止水シート10によって隙間110が塞がれる。これにより、建物100内への浸水をより抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、例えば、止水装置1は、隙間110から建物100内への浸水を抑制する水切り20を備え、止水シート10は、水切り20と隙間110と基礎102とを一体に覆っている。
【0062】
このような構成によれば、例えば、止水シート10によって水切り20や、隙間110、基礎102に設けられうる換気口等を一体に覆うことができるため、建物100内への浸水をより一層抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、例えば、保持手段30は、外壁101に沿って延び当該外壁101に固定されたスチール板31(磁性部材)と、止水シート10の上端部10aを間に挟んだ状態でスチール板31に固定されたマグネット32と、を有している。
【0064】
このような構成によれば、例えば、スチール板31およびマグネット32によって止水シート10の上端部10aが外壁101に対して下方に垂れ下がるのを抑制できる。よって、例えば、止水シート10が隙間110を覆う位置に留まりやすい。また、例えば、外壁101に沿って延びたスチール板31によって止水シート10の上端部10aおよびマグネット32を、スチール板31のZ方向の範囲内で建物100に対して移動可能に保持することができる。これにより、例えば、止水シート10が水圧Wp(
図2参照)によって下方に引っ張られた場合の移動が許容され、ひいては基礎102の屋外側の面102aや外壁101の屋外側の面101a等と密着して隙間110を塞ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態では、例えば、保持手段30は、建物100の出隅107(隅部)に設けられ、止水シート10の長手方向の両端部10c(端部)を保持したコーナー柱33(第一支柱)を有している。
【0066】
このような構成によれば、例えば、コーナー柱33を利用して建物100の出隅107において止水シート10の両端部10cを保持することができる。これにより、例えば、止水シート10が出隅107に沿って取り回されて止水シート10の下端部10b(第二部分12)と設置面120との間に隙間が生じてしまうといった不都合が抑制されやすい。
【0067】
また、本実施形態では、例えば、止水シート10は、外壁101および基礎102に沿って延びた第一部分11と、第一部分11から基礎102の設置面120に沿って延びた第二部分12と、を有し、保持手段30は、第二部分12を設置面120に向けて押圧する押圧部材35を有している。
【0068】
このような構成によれば、例えば、押圧部材35によって止水シート10の第二部分12が風で捲れたりするのが抑制され、ひいては止水シート10が隙間110を覆う位置に留まりやすい。また、例えば、押圧部材35によって第二部分12と設置面120とが密着し、ひいては第二部分12と設置面120との間の隙間から建物100側への水の浸入を抑制することができる。
【0069】
[変形例]
図4は、変形例の止水装置1Aの斜視図である。止水装置1Aは、上記実施形態の止水装置1と同様の構成を備えている。よって、止水装置1Aは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0070】
ただし、本変形例では、
図4に示されるように、建物100の入隅106にコーナー柱36が設けられるとともに当該コーナー柱36と離間して支柱38が設けられている点が、上記実施形態と相違している。コーナー柱36は、第二支柱または第一支柱の一例であり、支柱38は、第二支柱の一例である。
【0071】
コーナー柱36は、コーナー柱33と第二シート10Bの長手方向に間隔をあけて設けられている。コーナー柱36は、コーナー柱33と同様に、ベース部36aや、台座部36b等を有している。また、コーナー柱33とコーナー柱36との間には、ワイヤ37が掛け渡されている。ワイヤ37は、隙間110(水切り20)よりも上方に位置されている。ワイヤ37は、梁部の一例である。
【0072】
また、第二シート10Bの上端部10aには、引掛金具32Aが設けられている。本変形例では、引掛金具32Aがワイヤ37に引っ掛けられることにより、第二シート10Bの上端部10aが外壁101に対して下方に垂れ下がるのが抑制され、ひいては第二シート10Bの上端部10aを隙間110(水切り20)よりも上方に保持することができる。
【0073】
また、本変形例では、例えば、第二シート10Bの上端部10aおよび引掛金具32Aが、ワイヤ37に対してZ方向に移動可能に保持されている。これにより、第二シート10Bが水圧Wp(
図2参照)によって下方に引っ張られた場合の移動が許容され、ひいては基礎102の屋外側の面102aや外壁101の屋外側の面101a等と密着して隙間110を塞ぐことができる。
【0074】
また、第二シート10Bの長手方向の両端部10cには、取付部34が設けられている。本変形例では、取付部34がコーナー柱33,36の引掛部33cに引っ掛けられることにより、第二シート10Bが隙間110(水切り20)を覆う位置から屋外側に移動するのが抑制され、ひいては第二シート10Bとコーナー柱33,36との間の隙間から建物100側への水の浸入を抑制することができる。
【0075】
なお、第二シート10Bは、この例には限定されず、例えば、長手方向の両端部10cがコーナー柱33,36に粘着式のテープ等によって固定されてもよい。第二シート10Bの第二部分12は、押圧部材35によって犬走り40に固定されている。
【0076】
支柱38は、コーナー柱36と止水シート10の第三シート10Cの長手方向に間隔をあけて設けられている。支柱38は、コーナー柱36と同様に、ベース部38aや、台座部38b等を有している。また、支柱38とコーナー柱36との間には、スチール板31が掛け渡されている。スチール板31は、隙間110(水切り20)よりも上方に位置されている。スチール板31は、梁部の一例である。
【0077】
第三シート10Cの上端部10aは、マグネット32の吸着力によって、スチール板31ひいては外壁101に固定される。本変形例では、このマグネット32の吸着力によって、第三シート10Cの上端部10aが外壁101に対して下方に垂れ下がるのが抑制され、ひいては第三シート10Cの上端部10aを隙間110(水切り20)よりも上方に保持することができる。
【0078】
なお、第三シート10Cの上端部10aおよびマグネット32は、スチール板31のZ方向の範囲内で建物100に対して移動可能である。また、第三シート10Cの長手方向の両端部10cに設けられた取付部34がコーナー柱36および支柱38の引掛部33cに引っ掛けられることにより、第三シート10Cが隙間110(水切り20)を覆う位置から屋外側に移動するのが抑制される。また、第三シート10Cの第二部分12は、押圧部材35によって犬走り40に固定されている。
【0079】
また、第一シート10Aの上方には、取付板39が設けられている。取付板39は、建物100の外壁101に沿って細長く延びた長方形状の帯板状に構成されている。取付板39は、例えば、合成樹脂材料や金属材料等によって構成された板材であり、吸盤32Bが吸着される平滑な表面を有している。取付板39は、隙間110(水切り20)の上方に離間した状態で、ねじやアンカー等の結合具や、接着剤、両面テープ等によって外壁101に固定されている。取付板39は、被吸着部材の一例である。
【0080】
吸盤32Bは、第一シート10Aの上端部10aに設けられている。本変形例では、複数の吸盤32Bが、第一シート10Aの長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。吸盤32Bは、例えば、円盤状に構成され、紐などを介してあるいは直接係合(結合)などで止水シート10の上端部10aに固定されている。吸盤32Bは、吸着部材の一例である。
【0081】
第一シート10Aは、吸盤32Bの吸着力によって、取付板39ひいては外壁101に固定される。本変形例では、この吸盤32Bの吸着力によって、第一シート10Aの上端部10aが外壁101に対して下方に垂れ下がるのが抑制され、ひいては第一シート10Aの上端部10aを隙間110(水切り20)よりも上方に保持することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,1A…止水装置、10…止水シート、10a…上端部、10c…両端部(端部)、11…第一部分、12…第二部分、20…水切り、30…保持手段、31…スチール板(磁性部材、梁部)、32…マグネット、32B…吸盤(吸着部材)、33…コーナー柱(第一支柱)、35…押圧部材、36…コーナー柱(第二支柱、第一支柱)、37…ワイヤ(梁部)、38…支柱(第二支柱)、39…取付板(被吸着部材)、100…建物、101…外壁、102…基礎、106…入隅(隅部)、107…出隅(隅部)、110…隙間、120…設置面。