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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】保護素子および保護回路
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/06 20060101AFI20240228BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20240228BHJP
   H01H 85/08 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01H85/06
H01H37/76 F
H01H37/76 Q
H01H85/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019210841
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2020092085
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2018220365
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】向 幸市
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201313(JP,A)
【文献】特開2010-165685(JP,A)
【文献】特開2014-203624(JP,A)
【文献】特開2007-059295(JP,A)
【文献】特開2017-174654(JP,A)
【文献】特開2004-193000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/06
H01H 37/76
H01H 85/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部が、第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
【請求項2】
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路を導通する第2導通部と、
を更に有し、
前記第1導通部が、前記第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
【請求項3】
前記第1ヒューズエレメントが、第2ヒューズエレメントの熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1ヒューズエレメントの熱特性および前記第2ヒューズエレメントの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
前記第1ヒューズエレメントの長さが前記第2ヒューズエレメントの長さよりも長いか、前記第1ヒューズエレメントの幅方向断面積が前記第2ヒューズエレメントの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率が前記第2ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率よりも小さい、請求項に記載の保護素子。
【請求項5】
前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、請求項に記載の保護素子。
【請求項6】
前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、請求項に記載の保護素子。
【請求項7】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部が、第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護回路。
【請求項8】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記複数の保護素子を構成する各保護素子は、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路とを導通する第2導通部と、
を更に有し、
前記第1導通部が、前記第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護回路。
【請求項9】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
複数の前記第1電極部と外部回路との間に配設された複数の第1接続部と、
複数の前記第2電極部と外部回路との間に配設された複数の第2接続部と、
を更に備え、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントに接続された前記第1接続部は、当該保護素子の前記第2ヒューズエレメントに接続された前記第2接続部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1接続部の熱特性および前記第2接続部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護回路。
【請求項10】
前記第1ヒューズエレメントが、前記第2ヒューズエレメントの熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1ヒューズエレメントの熱特性および前記第2ヒューズエレメントの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、請求項に記載の保護回路。
【請求項11】
前記第1ヒューズエレメントの長さが前記第2ヒューズエレメントの長さよりも長いか、前記第1ヒューズエレメントの幅方向断面積が前記第2ヒューズエレメントの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率が、前記第2ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率よりも大きい、請求項10に記載の保護回路。
【請求項12】
前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、請求項に記載の保護回路。
【請求項13】
前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、請求項に記載の保護回路。
【請求項14】
前記第1接続部の長さが前記第2接続部の長さよりも長いか、および/または、前記第1接続部の幅方向断面積が前記第2接続部の幅方向断面積よりも小さい、請求項に記載の保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子および保護回路に関し、例えば、二次電池の充放電回路において二次電池と充電器との間に接続される保護素子および保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保護回路は、携帯電話や携帯型コンピュータなど、二次電池が搭載された様々なモバイル機器に実装されている。従来の保護回路が実装されたモバイル機器として、例えば、蓄電装置(二次電池)と、複数の保護回路と、第1、第2の出力端子とを有し、前記保護回路は、直列接続された二個のヒューズエレメントをそれぞれ有し、前記第1、第2の出力端子に外部回路を接続したときに、前記蓄電装置から前記外部回路に供給される放電電流と、前記外部回路から前記蓄電装置に供給される充電電流とが、前記複数の保護回路内の直列接続された二個のヒューズエレメントを通って流れるように構成された二次電池装置がある(特許文献1)。
【0003】
この二次電池装置は、一端がヒューズエレメント同士の接続点に接続されたヒーターを有し、各ヒーターの他端には、それぞれ整流素子の一端が接続され、前記各整流素子の他端には、スイッチ素子が接続されており、スイッチ素子が導通すると、そのスイッチ素子と各整流素子とを通って、各保護回路のヒーターに電流が流れるように構成されている。また、この二次電池装置では、保護回路のヒーターの端子同士を接続する電流経路の途中に整流素子が少なくとも二個挿入されており、短絡電流が流れ、片方のヒューズエレメントが溶断した状態で、二個の保護回路のヒーターの端子間に電圧差が生じても、少なくとも一個の整流素子が逆バイアスされるようになっている。従って、一の保護回路のヒーターの端子から、他の保護回路のヒーターの端子には電流は流れ込まず、それによる残存電流が生じないようになっている。
【0004】
また、従来の保護素子として、通電経路の入力となる複数の電極間に複数のヒューズエレメントが配設され、通電された発熱体の発熱による上記ヒューズエレメントの溶断によって電流が遮断される保護素子が提案されている。この保護素子では、上記複数のヒューズエレメントのうち特定のヒューズエレメントが接続されている特定の通電経路から通電があった場合に、他のヒューズエレメントが上記特定のヒューズエレメントよりも先に溶断するように、上記複数のヒューズエレメントの溶断時間が制御可能に構成されている。そして、上記特定のヒューズエレメントが接続されている特定の電極は、上記複数の電極のうち、必ず通電がある通電経路の入力となる電極であり、上記特定のヒューズエレメントの溶断時間が他のヒューズエレメントの溶断時間よりも長くなるように、上記複数のヒューズエレメントのそれぞれから上記発熱体までの距離に差があるように構成されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-193000号公報
【文献】特開2010-165685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の保護回路では、系全体として過電流を防止するために、複数のヒーターに一対一対応させた複数の整流素子(ダイオード)を実装しなければならず、装置構成が複雑であり、また、製造性が良好とは言えず、製造コストが掛かるという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2の保護素子では、一の保護素子内で、「必ず最後に溶断するヒューズエレメント」を特定することができる構成とし、少なくともそのヒューズエレメントが接続されている通電経路から通電があった場合には、その他の全てのヒューズエレメントを先に溶断することで、発熱抵抗体の発熱を停止するのみであり、並列接続された複数の保護回路における過電流や過電圧を防止することを課題としておらず、また、過電流や過電圧を防止するのに十分とは言えない。
【0008】
加えて、近年、モバイル機器の更なる高性能化、高機能化が進んでいることから、二次電池の充電容量の更なる増大に伴い、過電流や過電圧を確実に防止できる安全性の高い保護回路が求められている。
【0009】
本発明の目的は、従来よりも簡単な装置構成で、過電流や過電圧を確実に防止して安全性を向上することができ、加えて良好な製造性とコスト低減を実現することができる保護素子および保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されている、保護素子。
[2]前記第1ヒューズエレメントが、第2ヒューズエレメントの熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1ヒューズエレメントの熱特性および前記第2ヒューズエレメントの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[1]に記載の保護素子。
[3]前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントは、ヒューズエレメントであり、
前記第1ヒューズエレメントの長さが前記第2ヒューズエレメントの長さよりも長いか、前記第1ヒューズエレメントの幅方向断面積が前記第2ヒューズエレメントの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率が前記第2ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率よりも小さい、上記[2]に記載の保護素子。
[4]前記第1電極部が、第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の保護素子。
[5]前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、上記[4]に記載の保護素子。
[6]前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路を導通する第2導通部と、
を更に有し、
前記第1導通部が、前記第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の保護素子。
[7]前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、上記[6]に記載の保護素子。
[8]並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されている、保護回路。
[9]前記第1ヒューズエレメントが、前記第2ヒューズエレメントの熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1ヒューズエレメントの熱特性および前記第2ヒューズエレメントの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[8]に記載の保護回路。
[10]前記第1ヒューズエレメントの長さが前記第2ヒューズエレメントの長さよりも長いか、前記第1ヒューズエレメントの幅方向断面積が前記第2ヒューズエレメントの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1ヒューズエレメントを形成する材料の抵抗率が、前記第2ヒューズエレメントを形成する材料の抵抗率よりも大きい、上記[9]に記載の保護回路。
[11]前記第1電極部が、前記第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[8]~[10]のいずれかに記載の保護回路。
[12]前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、上記[11]に記載の保護回路。
[13]前記複数の保護素子を構成する各保護素子は、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路とを導通する第2導通部と、
を更に有し、
前記第1導通部が、前記第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[8]~[12]のいずれかに記載の保護回路。
[14]
前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、上記[13]に記載の保護回路。
[15]複数の前記第1導通部と前記外部回路との間に配設された複数の第1接続部と、
複数の前記第2導通部と前記外部回路との間に配設された複数の第2接続部と、
を更に備え、
前記複数の保護素子の各々の前記第1導通部に接続された前記第1接続部は、当該保護素子の前記第2導通部に接続された前記第2接続部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1接続部の熱特性および前記第2接続部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、上記[8]~[14]のいずれかに記載の保護回路。
[16]前記第1接続部の長さが前記第2接続部の長さよりも長いか、および/または、前記第1接続部の幅方向断面積が前記第2接続部の幅方向断面積よりも小さい、上記[15]に記載の保護回路。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも簡単な装置構成で、過電流や過電圧を確実に防止して安全性を向上することができ、加えて良好な製造性とコスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図2図2は、図1の切断線II-IIにおける保護素子の断面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図5図5は、図4の切断線V-Vにおける保護素子の断面図である。
図6図6は、本発明の第4実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図7図7は、本発明の第5実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図8図8は、本発明の第6実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図9図9は、図8の切断線IX-IXにおける保護素子の断面図である。
図10図10は、本発明の第7実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。
図11図11は、図10の切断線XI-XIにおける保護素子の断面図である。
図12図12は、本発明の第8実施形態に係る保護回路の構成を概略的に示す平面図である。
図13図13は、図12の保護回路の動作を説明する回路図であり、遮断動作前の状態を示す。
図14図14は、図12の保護回路の動作を説明する回路図であり、遮断動作後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図であり、図2は、図1の切断線II-IIにおける保護素子の断面図である。
図1および図2に示すように、保護素子10は、基板11と、基板11上で直列接続された第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aと、第1ヒューズエレメント12Aと第2ヒューズエレメント13Aとの間に接続されたヒーター14と、第1ヒューズエレメント12Aの第2ヒューズエレメント13Aとは反対側に接続された第1電極部15Aと、第2ヒューズエレメント13Aの第1ヒューズエレメント12Aとは反対側に接続された第2電極部16Aと、第1ヒューズエレメント12Aと第2ヒューズエレメント13Aとの間に接続され、且つヒーター14と直列接続された第3電極部17と、第1電極部15Aと外部回路とを導通する第1導通部18Aと、第2電極部16Aと外部回路を導通する第2導通部19Aとを有する。そして、この保護素子10は、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池(図13図14参照)に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断されるように構成されている。保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加される場合の構成及び動作については、後述する。
【0015】
基板11は、絶縁性を有する材質のものであれば特に制限されず、例えば、セラミックス基板やガラスエポキシ基板のようなプリント配線基板に用いられる基板の他、ガラス基板、樹脂基板、絶縁処理金属基板等を用いることができる。なお、これらの中で、耐熱性に優れ、熱良伝導性の絶縁基板であるセラミックス基板が好適である。
【0016】
第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aは、本実施形態では一体で形成されており、導電性の3つの支持体21,22,23を介して、第1電極部15A、第2電極部16Aおよび第3電極部17に支持されている。
第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aは、別部材で構成されてもよい。また、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aの形状は、薄片状であるが、これに限られず、棒状であってもよい。
【0017】
第1ヒューズエレメント12Aは、第2ヒューズエレメント13Aの熱特性とは異なる熱特性を有し、第1ヒューズエレメント12Aの熱特性および第2ヒューズエレメント13Aの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含んでいる。熱抵抗(K/W)は、熱の伝わり易さを意味し、熱抵抗が大きい程熱を伝え難い(熱抵抗[K/W]=長さ[m]/{断面積[m]×熱伝導率[W/(m・K)]})。また、熱容量(J/K)は、単位温度上昇させるために必要な熱量、すなわち温度変化のし易さを意味し、熱容量が大きい程温度変化し難い。よって、例えば(1)第1ヒューズエレメント12Aの熱抵抗が、第2ヒューズエレメント13Aの熱抵抗よりも大きいか、(2)第1ヒューズエレメント12Aの熱容量が、第2ヒューズエレメント13Aの熱容量よりも小さいか、あるいは(3)上記(1)~(2)の双方を満たすことが好ましい。
【0018】
具体的には、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aは、例えば、薄片形状を有する。本実施形態では、第1ヒューズエレメント12Aの長さが第2ヒューズエレメント13Aの長さよりも長い。この場合、第1ヒューズエレメント12Aの熱抵抗が第2ヒューズエレメント13Aの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断される。
【0019】
第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aを構成する材料は、従来からヒューズ材料として使用されている種々の低融点金属を用いることができる。低融点金属としては、SnSb合金、BiSnPb合金、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、SnAg合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を挙げることができる。第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aを構成する材料は、同一であるのが好ましいが、異なっていてもよい。
【0020】
ヒーター14は、基板11上に配置され、且つ第3電極部17の直下に配置されている。ヒーター14と第3電極部17との間には絶縁層24が配置されている。ヒーター14は、一方の端部がヒーター引き出し電極部14Aと接続され、他方の端部が引き回し電極部17Aを介して第3電極部17と接続されている。
【0021】
ヒーター14は、例えば、酸化ルテニウムやカーボンブラック等の導電材料と、水ガラス等の無機系バインダや熱硬化性樹脂等の有機系バインダとからなる抵抗ペーストを塗布し、必要に応じて焼成することによって形成される。また、ヒーター14としては、酸化ルテニウムやカーボンブラック等の薄膜を、印刷、メッキ、蒸着、スパッタの工程を経て形成してもよく、これらフィルムの貼付や積層等によって形成してもよい。
【0022】
第1電極部15A、第2電極部16Aおよび第3電極部17は、それぞれ、溶融した第1ヒューズエレメント12Aあるいは第2ヒューズエレメント13Aが流れ込むこととなる電極である。これら第1電極部15A、第2電極部16Aおよび第3電極部17を構成する材料は、特に制限されず、溶融状態の第1ヒューズエレメント12Aあるいは第2ヒューズエレメント13Aと濡れ性が良好である金属が挙げられる。例えば、第1電極部15A、第2電極部16Aおよび第3電極部17を構成する材料として、銅等の金属単体や、少なくとも表面がAg、Ag-Pt、Ag-Pd、Au等から形成されているものを用いることができる。第1電極部15Aおよび第2電極部16Aは、それぞれ、はんだ部25,26を介して後述の第1接続部および第2接続部と接続される。また、第3電極部17は、はんだ部27を介して不図示の第3接続部に接続される。ヒーター引き出し電極部14Aおよび引き回し電極部17Aを構成する材料としては、第1電極部15A、第2電極部16Aおよび第3電極部17と同様に、銅等の金属単体や、少なくとも表面がAg、Ag-Pt、Ag-Pd、Au等から形成されているものを用いることができる。また、ヒーター引き出し電極部14Aは、はんだ部27を介して後述のスイッチング素子と接続される。
【0023】
第1導通部18Aおよび第2導通部19Aは、例えばスルーホールであり、基板11に形成された貫通孔の内周面に導体が充填されて形成される。第1導通部18Aおよび第2導通部19Aを構成する材料としては、銀、銅、タングステン、またはこれらの合金などが挙げられる。第1導通部18Aおよび第2導通部19Aは、外部回路と導通可能な構成であれば、スルーホール以外の構成であってもよい。また、保護素子10は、第1導通部18Aおよび第2導通部19Aを有さない構成であってもよい。
【0024】
図3は、本発明の第2実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。第2実施形態に係る保護素子は、第1,第2ヒューズエレメントの構成が異なること以外は、第1実施形態に係る保護素子と同じであるので、重複する部分の説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。
【0025】
図3に示すように、第2実施形態において、第1ヒューズエレメント12Bの幅が第2ヒューズエレメント13Bの幅よりも小さくてもよい。この場合、第1ヒューズエレメント12Bの幅方向断面積が、第2ヒューズエレメント13Bの幅方向断面積よりも小さく、第1ヒューズエレメント12Bの熱抵抗が第2ヒューズエレメント13Bの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Bおよび第2ヒューズエレメント13Bに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Bが第2ヒューズエレメント13Bよりも先に遮断される。
【0026】
第1ヒューズエレメント12Bの長さは、第2ヒューズエレメント13Bの長さと同じであるが、これに限られず、第1ヒューズエレメント12Bの長さが、第2ヒューズエレメント13Bの長さよりも長くてもよい。これにより、第1ヒューズエレメント12Bの熱抵抗を第2ヒューズエレメント13Bの熱抵抗よりも更に大きくすることができる。
【0027】
図4は、本発明の第3実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図であり、図5は、図4の切断線V-Vにおける保護素子の断面図である。第3実施形態に係る保護素子は、第1,第2ヒューズエレメントの構成が異なること以外は、第1実施形態に係る保護素子と同じである。
【0028】
図4および図5に示すように、第3実施形態において、第1ヒューズエレメント12Cの厚さが、第2ヒューズエレメント13Cの厚さよりも小さくてもよい。第1ヒューズエレメント12Cの厚さは、例えば0.1mm、第2ヒューズエレメント13Cの厚さは、例えば0.2mmである。本構成でも、第1ヒューズエレメント12Cの幅方向断面積が、第2ヒューズエレメント13Cの幅方向断面積よりも小さく、第1ヒューズエレメント12Cの熱抵抗が第2ヒューズエレメント13Cの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Cおよび第2ヒューズエレメント13Cに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Cが第2ヒューズエレメント13Cよりも先に遮断される。
【0029】
第1ヒューズエレメント12Cの長さは、第2ヒューズエレメント13Cの長さと同じであるが、これに限られず、第1ヒューズエレメント12Cの長さが、第2ヒューズエレメント13Cの長さよりも長くてもよい。また、第1ヒューズエレメント12Cの幅は、第2ヒューズエレメント13Cの幅と同じであるが、これに限られず、第1ヒューズエレメント12Cの幅が、第2ヒューズエレメント13Cの幅よりも小さくてもよい。これにより、第1ヒューズエレメント12Cの熱抵抗を第2ヒューズエレメント13Cの熱抵抗よりも更に大きくすることができる。
【0030】
図6は、本発明の第4実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。第4実施形態に係る保護素子は、第1,第2ヒューズエレメントの構成が異なること以外は、第1実施形態に係る保護素子と同じである。
【0031】
図6に示すように、第4実施形態において、第1ヒューズエレメント12Dは、同一形状の複数のヒューズエレメント12dを有し、第2ヒューズエレメント13Dは、同一形状の複数のヒューズエレメント13dを有し、更に、第1ヒューズエレメント12Dを構成するヒューズエレメントの数が、第2ヒューズエレメント13Dを構成するヒューズエレメントの数よりも少なくてもよい。本構成でも、複数のヒューズエレメント12dの幅方向断面積の合計が、複数のヒューズエレメント13dの幅方向断面積の合計よりも小さく、第1ヒューズエレメント12Dの熱抵抗が第2ヒューズエレメント13Dの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Dおよび第2ヒューズエレメント13Dに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Dが第2ヒューズエレメント13Dよりも先に遮断される。
【0032】
第1ヒューズエレメント12Dの長さは、第2ヒューズエレメント13Dの長さと同じであるが、これに限られず、第1ヒューズエレメント12Dの長さが第2ヒューズエレメント13Dの長さよりも長くてもよい。また、第1ヒューズエレメント12Dを構成するヒューズエレメント12dの幅は、第2ヒューズエレメント13Dを構成するヒューズエレメント13dの幅と同じであるが、これに限られず、ヒューズエレメント12dの幅が、ヒューズエレメント13dの幅よりも小さくてもよい。更に、第1ヒューズエレメント12Dの厚さは、第2ヒューズエレメント13Dの厚さよりも小さくてもよい。これにより、第1ヒューズエレメント12Dの熱抵抗を第2ヒューズエレメント13Dの熱抵抗よりも更に大きくすることができる。
【0033】
図7は、本発明の第5実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図である。第5実施形態に係る保護素子は、第1,第2ヒューズエレメントの構成が異なること以外は、第1実施形態に係る保護素子と同じである。
【0034】
図7に示すように、本第5実施形態において、第1ヒューズエレメント12Eを形成する材料の熱伝導率が、第2ヒューズエレメント13Eを形成する材料の熱伝導率よりも小さくてもよい。本構成でも、第1ヒューズエレメント12Eの熱抵抗が第2ヒューズエレメント13Eの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Eおよび第2ヒューズエレメント13Eに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Eが第2ヒューズエレメント13Eよりも先に遮断される。
【0035】
第1ヒューズエレメント12Eの長さは、第2ヒューズエレメント13Eの長さと同じであるが、これに限られず、第1ヒューズエレメント12Eの長さが、第2ヒューズエレメント13Eの長さよりも長くてもよい。また、第1ヒューズエレメント12Eの幅は、第2ヒューズエレメント13Eの幅と同じであるが、これに限られず、第1ヒューズエレメント12Eの幅が、第2ヒューズエレメント13Eの幅よりも小さくてもよい。更に、第1ヒューズエレメント12Eの厚さは、第2ヒューズエレメント13Eの厚さよりも小さくてもよい。これにより、第1ヒューズエレメント12Eの熱抵抗を第2ヒューズエレメント13Eの熱抵抗よりも更に大きくすることができる。
【0036】
このように、第1ヒューズエレメント12A~12Eおよび第2ヒューズエレメント13A~13Eが、ヒューズエレメントであり、第1ヒューズエレメント12Aの長さが第2ヒューズエレメント13Aの長さよりも長いか、第1ヒューズエレメント12B(12C、12D)の断面積が第2ヒューズエレメント13B(13C、13D)の断面積よりも小さいか、および/または、第1ヒューズエレメント12Eを形成する材料の熱伝導率が、第2ヒューズエレメント13Eを形成する材料の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。これにより、第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)および第2ヒューズエレメント13A(13B、13C、13D、13E)に過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)が第2ヒューズエレメント13A(13B、13C、13D、13E)よりも確実に先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる。
【0037】
図8は、本発明の第6実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図であり、図9は、図8の切断線IX-IXにおける保護素子の断面図である。第6実施形態に係る保護素子は、第1,第2電極部の構成が異なること以外は、第1実施形態に係る保護素子と同じである。
【0038】
図8および図9に示すように、本第6実施形態において、第1電極部15Bが、第2電極部16Bの熱特性とは異なる熱特性を有し、第1電極部15Bの熱特性および第2電極部16Bの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、(1)第1電極部15Bの熱抵抗が、第2電極部16Bの熱抵抗よりも大きいか、(2)第1電極部15Bの熱容量が、第2電極部16Bの熱容量よりも小さいか、あるいは(3)上記(1)~(2)の双方を満たすことが好ましい。第1電極部15Bおよび第2電極部16Bの熱特性の意味は、上記第1実施形態にて説明した第1,第2ヒューズエレメントの熱特性の意味と同様である。
【0039】
本実施形態では、第1電極部15Bを形成する材料の熱伝導率が、第2電極部16Bを形成する材料の熱伝導率よりも小さい。この場合、第1電極部15Bの熱抵抗が第2電極部16Bの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる。
【0040】
図10は、本発明の第7実施形態に係る保護素子の構成を概略的に示す平面図であり、図11は、図10の切断線XI-XIにおける保護素子の断面図である。第7実施形態に係る保護素子は、第1,第2導通部の構成が異なること以外は、第1実施形態に係る保護素子と同じである。
【0041】
図10および図11に示すように、第6実施形態において、第1導通部18Bが、第2導通部19Bの熱特性とは異なる熱特性を有し、第1導通部18Bの熱特性および第2導通部19Bの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、(1)第1導通部18Bの熱抵抗が、第2導通部19Bの熱抵抗よりも大きいか、(2)第1導通部18Bの熱容量が、第2導通部19Bの熱容量よりも小さいか、あるいは(3)上記(1)~(2)の双方を満たすことが好ましい。第1導通部18Bおよび第2導通部19Bの熱特性の意味は、上記第1実施形態にて説明した第1,第2ヒューズエレメントの熱特性の意味と同様である。
【0042】
本実施形態では、第1導通部18Bの幅が第2導通部19Bの幅よりも小さい。この場合、第1導通部18Bの幅方向断面積が、第2導通部19Bの幅方向断面積よりも小さく、第1導通部18Bの熱抵抗が第2導通部19Aの熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断される。
【0043】
また、第1導通部18Bを形成する材料の熱伝導率が、第2導通部19Bを形成する材料の熱伝導率よりも小さくてもよい。これにより、第1導通部18Bの熱抵抗を第2導通部19Bの熱抵抗よりも更に大きくすることができる。第1導通部18Bを形成する材料の熱伝導率が第2導通部19Bを形成する材料の熱伝導率よりも小さい場合、第1導通部18Bの幅は、第2導通部19Bの幅よりも小さい方が好ましいが、第2導通部19Bの幅と同じであってもよい。
【0044】
このように、第1導通部18Bの幅方向断面積が第2導通部19Bの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、第1導通部18Bを形成する材料の熱伝導率が第2導通部19Bを形成する材料の熱伝導率よりも小さいことにより、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも確実に先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる。
【0045】
[保護回路の構成]
図12は、本発明の第8実施形態に係る保護回路の構成を概略的に示す平面図である。本第8実施形態では、保護回路が、上記第1実施形態の保護素子10を複数備えている場合を例に挙げて説明する。
【0046】
図12に示すように、保護回路1は、並列接続された複数の保護素子10,10,10と、複数の第1電極部15A,15A,15Aと外部回路との間に配設された複数の第1接続部31,31,31と、複数の第2電極部16A,16A,16Aと外部回路との間に配設された複数の第2接続部32,32,32とを更に備えている。
【0047】
第1接続部31,31,31は、それぞれ複数のはんだ部25,25,25を介して第1電極部15A,15A,15Aに接続されている。また、第2接続部32,32,32は、それぞれ複数のはんだ部26,26,26を介して第2電極部16A,16A,16Aに接続されている。複数の第1接続部31,31,31および複数の第2接続部32,32,32は、例えば、基板上に実装される回路パターンである。複数の第1接続部31,31,31および複数の第2接続部32,32,32を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば銅または銅合金が挙げられる。
【0048】
複数の保護素子10,10,10を構成する複数の第1ヒューズエレメント12A,12A,12Aが同極に接続されており、複数の保護素子10,10,10の各々を構成する第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、当該保護素子における第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断されるように構成されている。
【0049】
また、本実施形態では、複数の保護素子10,10,10の各々を構成する第1ヒューズエレメント12Aに接続された第1接続部31は、当該保護素子10の第2ヒューズエレメント13Aに接続された第2接続部32の熱特性とは異なる熱特性を有している。そして、第1接続部31の熱特性および第2接続部32の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含んでいるのが好ましい。例えば、(1)第1接続部31の熱抵抗が、第2接続部32の熱抵抗よりも大きいか、(2)第1接続部31の熱容量が、第2接続部32の熱容量よりも小さいか、あるいは(3)上記(1)~(2)の双方を満たすことが好ましい。第1接続部31および第2接続部32の熱特性の意味は、上記第1実施形態にて説明した第1,第2ヒューズエレメントの熱特性の意味と同様である。
【0050】
本実施形態では、複数の第1接続部31,31,31の幅は、複数の第2接続部32,32,32の幅よりも小さい。この場合、第1接続部31の幅方向断面積が、第2接続部32の幅方向断面積よりも小さく、第1接続部31の熱抵抗が第2接続部32の熱抵抗よりも大きいため、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたとき、又は保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断される。
【0051】
尚、上述のように、第1接続部31は、はんだ部25を介し、かつ上記スルーホールや上記貫通孔を介して第1電極部15Aに接続されており、はんだ部25の形状、材料に因っては第1接続部31の熱特性に影響を与える場合があることから、第1接続部31の熱特性には、はんだ部25などの接合部材の熱特性を含むことができるものとする。同様に、第2接続部32の熱特性には、はんだ部26などの接合部材の熱特性を含むことができるものとする。接合部材の熱特性の意味は、上記第1実施形態にて説明した第1,第2ヒューズエレメントの熱特性の意味と同様である。
【0052】
図13及び図14は、図12の保護回路1の動作を説明する回路図であり、図13は遮断動作前の状態、図14は遮断動作後の状態を示す。
【0053】
保護回路1では、図13に示すように、例えば、複数の第1接続部31,31,31は、外部回路を介して並列接続点Aに接続され、且つ二次電池33,33の正極に接続されている。また、複数の第2接続部32,32,32は、外部回路を介して並列接続点Bに接続され、且つ充電器34の正極に接続されている。第3電極部17に接続されたヒーター14は、それぞれ、例えば二次電池33,33の負極および充電器34の負極の双方に接続されている。複数の第3電極部17の下流側には、FETなどのスイッチング素子35が設けられている。すなわち、複数の第3電極部の下流側に位置するヒーター14は、一方の端部がヒーター引き出し電極部14Aを介してスイッチング素子35と接続され、他方の端部が、引き回し電極部17Aと第3電極部17とを介して第1ヒューズエレメント12Aと第2ヒューズエレメント13Aに接続されている。
【0054】
二次電池33,33の充電時には、充電器34から外部回路を介して二次電池33,33に電力が供給される。また、二次電池の放電時には、二次電池33,33から外部回路に電力が供給される。このように、二次電池33,33の充電時および放電時のいずれの場合でも、第1ヒューズエレメント12Aと第2ヒューズエレメント13Aの双方に同一の電力が供給される。
【0055】
二次電池33,33の充電時あるいは放電時に、何らかの原因で過電流あるいは過電圧が生じた場合、第1接続部31の熱抵抗が第2接続部32の熱抵抗よりも大きいため、図14に示すように、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断される。複数の保護素子10,10,10の全ての保護素子で、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断されることで、二次電池33側の回路と充電器34側の回路とが分離される。これにより、ヒーター14を介して電流が逆流することが無く、複数の保護素子10,10,10とスイッチング素子35との間にダイオードなどの整流素子を設ける必要が無い。
【0056】
本実施形態では、複数の第1接続部31,31,31の長さは、複数の第2接続部32,32,32の長さと同じであるが、これに限られず、複数の第1接続部31,31,31の長さが、複数の第2接続部32,32,32の長さと異なっていてもよい。これにより、第1接続部31の熱抵抗を第2接続部32の熱抵抗よりも更に大きくすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、複数の第1接続部31,31,31の幅は、複数の第2接続部32,32,32の幅と異なっているが、これに限られない。複数の第1接続部31,31,31の幅が複数の第2接続部32,32,32の幅と同じである場合には、複数の第1接続部31,31,31の長さが複数の第2接続部32,32,32の長さと異なっていてもよい。
【0058】
また、保護回路1は、二次電池33,33の各々と接続され、且つスイッチング素子35に接続された不図示の検出素子を有していてもよい。この検出素子は、高電圧状態、特に過電圧となっているか否かを常時モニタし、高電圧状態となった場合にスイッチング素子35に制御信号を出力する。この場合、スイッチング素子35は、制御信号に応じて、ヒーター14に二次電池33からの電流を流すことで、当該ヒーター14を発熱させる。これにより、第1ヒューズエレメント12Aが、第2ヒューズエレメント13Aよりも先に溶断される。
【0059】
このように、第1接続部31の長さが第2接続部32の長さよりも長いか、および/または、第1接続部31の幅方向断面積が第2接続部32の幅方向断面積よりも小さいことにより、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたとき、又は、保護回路1に接続された二次電池33に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも確実に先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる。
【0060】
本実施形態では、保護回路1は、上記第1実施形態の保護素子10を備えるが、これに限られず、上記第2~第7実施形態の保護素子を備えていてもよい。その場合にも、各保護素子に設けられた第1ヒューズエレメントの熱抵抗を第2ヒューズエレメントの熱抵抗よりも大きくすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、保護回路1において、第1接続部31の熱特性が第2接続部32の熱特性と異なるが、これに限られず、保護素子10が、上記第1~第7実施形態の構成を有している場合、第1接続部31の熱特性が第2接続部32の熱特性と同じであってもよい。例えば、複数の第1接続部31,31,31の幅方向断面積が、複数の第2接続部32,32,32の幅方向断面積と同じであってもよく、また、複数の第1接続部31,31,31の熱伝導率が複数の第2接続部32,32,32の熱伝導率と同じであってもよい。
【0062】
上述したように、上記実施形態によれば、第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)および第2ヒューズエレメント13A(13B、13C、13D、13E)に過電流が流れたとき、又は、保護回路1に接続されられた二次電池33に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)が第2ヒューズエレメント13A(13B、13C、13D、13E)よりも先に遮断されるように構成されているので、第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)にて、当該第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)の一方側の回路と他方側の回路とを遮断することができる。よって、並列接続された複数の保護素子10を備える保護回路を形成する場合、複数の保護素子10を構成する複数の第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)を同極に接続させることで、ダイオードなどの整流素子を設けること無く、過電流や過電圧を確実に防止することができる。したがって、保護素子10を従来よりも簡単な構成で、過電流や過電圧を確実に防止して安全性を向上することができ、加えて良好な製造性とコスト低減を実現することができる。
【0063】
また、上記実施形態によれば、並列接続された複数の保護素子10を備える保護回路において、複数の保護素子10を構成する複数の第1ヒューズエレメント12Aが同極に接続されており、複数の保護素子10の各々を構成する第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)および第2ヒューズエレメント13A(13B、13C、13D、13E)に過電流が流れたとき、又は、保護回路1に接続された二次電池33に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)が第2ヒューズエレメント13A(13B、13C、13D、13E)よりも先に遮断されるように構成されているので、第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)にて、当該第1ヒューズエレメント12A(12B、12C、12D、12E)の一方側の回路(例えば、二次電池側回路)と他方側の回路(例えば、充電器側回路)とを遮断することができる。よって、ダイオードなどの整流素子を複数設けること無く、過電流や過電圧を確実に防止することができる。したがって、保護回路1を従来よりも簡単な構成で、過電流や過電圧を確実に防止して安全性を向上することができ、加えて良好な製造性とコスト低減を実現することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、第1,第2ヒューズエレメント、第1,第2電極部、第1,第2導通部または第1,第2接続部の熱特性が互いに異なっているが、これに限られない。第1,第2ヒューズエレメント、第1,第2電極部、第1,第2導通部および/または第1,第2接続部の電気的な導体抵抗値(電気抵抗(Ω))が互いに異なっていてもよい。本構成によっても、第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、上記第1ヒューズエレメントが上記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成することができ、これにより上記と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 保護回路
10 保護素子
11 基板
12A 第1ヒューズエレメント
12B 第1ヒューズエレメント
12C 第1ヒューズエレメント
12D 第1ヒューズエレメント
12d ヒューズエレメント
12E 第1ヒューズエレメント
13A 第2ヒューズエレメント
13B 第2ヒューズエレメント
13C 第2ヒューズエレメント
13D 第2ヒューズエレメント
13d ヒューズエレメント
13E 第2ヒューズエレメント
14 ヒーター
14A ヒーター引き出し電極部
15A 第1電極部
15B 第1電極部
16A 第2電極部
16B 第2電極部
17 第3電極部
17A 引き回し電極部
18A 第1導通部
18B 第1導通部
19A 第2導通部
19B 第2導通部
21 支持体
22 支持体
23 支持体
24 絶縁層
25 はんだ部
26 はんだ部
27 はんだ部
31 第1接続部
32 第2接続部
33 二次電池
34 充電器
35 スイッチング素子
図1
図2
図3
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