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特許7444608スマートステアリング制御を有する舗装機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】スマートステアリング制御を有する舗装機械
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240228BHJP
   B62D 9/00 20060101ALI20240228BHJP
   E01C 19/48 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D9/00
E01C19/48 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019535290
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018014093
(87)【国際公開番号】W WO2018136549
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】15/873,206
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/447,153
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517392089
【氏名又は名称】ゴマコ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ファー,トーマス・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブーマン,レイモンド・ジェイ・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】シェーディング,チャド
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0189031(US,A1)
【文献】特開2001-225744(JP,A)
【文献】特開2000-148247(JP,A)
【文献】特開2009-190662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0195013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 7/09
E01C 19/48
B62D 7/14
B62D 7/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールキャリアが備えるツールが処理を施す対象である経路であって、曲線部分を含む経路に関する情報を外部から取得し、
前記曲線部分の曲率中心を特定し、
前記曲線部分を前記ツールが処理するための処理時間を計算し、
前記ツールが前記曲線部分を処理する際に、
ツールキャリアの第1のトラックから前記曲率中心までのベクトルに基づいて前記第1のトラックの向きである第1角度を設定し、
前記処理時間中に前記第1のトラックの向きを前記第1角度に動かし、
ツールキャリアの第2のトラックから前記曲率中心までのベクトルに基づいて前記第2のトラックの向きである第2角度を設定し、
前記処理時間中に前記第2のトラックの向きを前記第2角度に動かし、
ツールキャリアの第3のトラックから前記曲率中心までのベクトルに基づいて前記第3のトラックの向きである第3角度を設定し、
前記処理時間中に前記第3のトラックの向きを前記第3角度に動かすように構成され、
前記経路は、前記曲線部分に続く曲率が一定でない曲線を含み、
前記コンピュータ装置は、
前記曲率が一定でない曲線を前記ツールが処理するための第2の処理時間を計算し、
前記ツールが前記曲率が一定でない曲線を処理する際に、
前記第2の処理時間中に前記曲率が一定でない曲線に沿ってツールを移動させるために、前記第1角度から前記第1のトラックの向きを滑らかに変更するための第1トラック関数を設定し、
前記第2の処理時間中に前記曲率が一定でない曲線に沿ってツールを移動させるために、前記第2角度から前記第2のトラックの向きを滑らかに変更するための第2トラック関数を設定し、
前記第2の処理時間中に前記曲率が一定でない曲線に沿ってツールを移動させるために、前記第3角度から前記第3のトラックの向きを滑らかに変更するための第3トラック関数を設定するように構成される、
コンピュータ装置。
【請求項2】
ツールキャリアが備えるツールにより経路を舗装する方法であって、
曲線部分と、前記曲線部分に続く曲率が一定でない曲線と、を含む前記経路に関する情報を外部から取得し、
前記曲線部分の曲率中心を特定し、
前記ツールが前記曲線部分を処理する際に、
ツールキャリアの第1のトラックから前記曲率中心までのベクトルに基づいて第1角度を設定し、
ツールキャリアの第2のトラックから前記曲率中心までのベクトルに基づいて第2角度を設定し、
ツールキャリアの第3のトラックから前記曲率中心までのベクトルに基づいて第3角度を設定し、
前記曲率が一定でない曲線を前記ツールが処理するための処理時間を計算し、
前記ツールが前記曲率が一定でない曲線を処理する際に、
前記処理時間中に前記曲率が一定でない曲線に沿ってツールを移動させるために、前記第1角度から前記第1のトラックの向きを滑らかに変更するための第1トラック関数を設定し、
前記第1のトラックの向きを前記第1トラック関数に従って動かし、
前記処理時間中に前記曲率が一定でない曲線に沿ってツールを移動させるために、前記第2角度から前記第2のトラックの向きを滑らかに変更するための第2トラック関数を設定し、
前記第2のトラックの向きを前記第2トラック関数に従って動かし、
前記処理時間中に前記曲率が一定でない曲線に沿ってツールを移動させるために、前記第3角度から前記第3のトラックの向きを滑らかに変更するための第3トラック関数を設定し、
前記第3のトラックの向きを前記第3トラック関数に従って動かす、
ことを含む、方法。
【請求項3】
前記ツールが前記経路に含まれる前記曲率が一定でない曲線に続く直線部分を処理する際に、
記直線部分によって定義される前記第1のトラックの向きである第4角度を設定し、
前記直線部分によって定義される前記第2のトラックの向きである第5角度を設定し、
前記直線部分によって定義される前記第3のトラックの向きである第6角度を設定する、
ことを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記処理時間が経過した後、前記第1のトラックの向きを前記第4角度に移行させ、
前記処理時間が経過した後、前記第2のトラックの向きを前記第5角度に移行させ、
前記処理時間が経過した後、前記第3のトラックの向きを前記第6角度に移行させる、
ことを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記経路に含まれる前記曲率が一定でない曲線に続く第2の曲線部分の第2の曲率中心を特定し、
前記ツールが前記第2の曲線部分を処理する際に、
前記第1のトラックから前記第2の曲率中心までのベクトルに基づいて前記第1のトラックの向きである第4角度を設定し、
前記第2のトラックから前記第2の曲率中心までのベクトルに基づいて前記第2のトラックの向きである第5角度を設定し、
前記第3のトラックから前記第2の曲率中心までのベクトルに基づいて前記第3のトラックの向きである第6角度を設定する、
ことを更に含む請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理時間が経過した後、前記第1のトラックの向きを前記第4角度に移行させ、
前記処理時間が経過した後、前記第2のトラックの向きを前記第5角度に移行させ、
前記処理時間が経過した後、前記第3のトラックの向きを前記第6角度に移行させる、
ことを更に含む請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本明細書で開示される発明概念の実施形態は、概して、プログラム可能な制御のために構成された舗装機械およびテクスチャ加工機械を対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002] いくつかの舗装およびテクスチャ加工プロジェクトは、非常に小さな半径の曲面の周りのスリップフォーミング(slipforming)および/またはテクスチャ加工(texturing)を必要とし得る。1つまたは複数の半径、直線部分、スパイラル、または自由形状の曲線要素を含み得る曲面の正確な形状に関係なく、舗装機械がこれらの曲線要素に従って縁石(または溝)をうまくスリップフォーム(slipform)またはテクスチャ加工するためにタイトまたは可変な曲線の周りで機械を操縦することが可能でなければならない。例えば、機械を曲線要素に向かって反時計回り(または左回転)方向に操縦し、縁石金型または他のツールを曲面の所望の位置に適用する。機械レイアウトごとに、直線位置から曲線に入るために左フロントトラックを70度、リアトラックを10度回転させる必要があるなど、左フロントトラックをリアトラックよりも曲線要素の半径に近い反時計回りに操縦する。ステアリングコントローラは、フルドライブ、たとえば10度/秒で最大トラック角で回転しようと試み得る。この場合、左フロントトラックが所望の位置に到達するまでに7秒かかり得る。2つのトラックが同期されていない場合、両方のトラックは2秒で20度の回転位置に到達し、標的経路要素は維持されない。リアトラックが10のときに左フロントラックが35度になるようにトラックの回転を比例配分する別の解決策でも、標的経路要素を維持することはできない。
【0003】
[0003] したがって、所望のツール位置に関してトラック回転を同期させ、経路トラッキングエラー(ツールが必要とされる場所と実際の場所との差)をより効果的に最小化することが望まれ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 本明細書に開示される発明概念の実施形態は、曲面に対応する経路に沿って1つまたは複数のツールを適用するように構成された舗装機械またはテクスチャ加工機械のスマートステアリング制御システム(スマートステアリングコントローラ、SSC)に関する。SSCは、機械の現在および将来の位置に対応して、手動オペレータまたは外部ソース(リモートまたは自動操作の場合など)から経路要素を継続的に受け得る。将来の位置は、現在の位置の直接的に前方、または機械が逆方向に移動している場合、現在の位置の後方にあり得る。現在の要素と将来の要素とを比較することにより、現在の位置を出て将来の位置に入るための予想完了時間を導出することができる(例えば、機械の速度に基づいて)。SSCは、所望の経路要素を維持し、現在の経路要素に対応する設定から将来の経路要素に対応する設定に機械の操縦可能なトラックの回転角度の調整を同期することにより、予想完了時間中の経路トラッキングエラーを最小限に抑える。このように、SSCは、機械が自動または手動の制御下にあり、経路面(直線、単一および複合半径、スパイラル、フリーフォーム)に関係なく、仮想タイロッドとして機能し、損傷を防ぎ、トラクション制御を強化し、機械のパワーを引き出し、その構成要素の動作寿命を維持する。
【0005】
[0005] 前述の概略的な説明および以下の詳細な説明は共に例示および説明にすぎず、特許請求の範囲を制限するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本明細書に開示される発明概念の例示的な実施形態を示し、概略的な説明とともに、その原理を説明するのに役立つ。
【0006】
[0006] 本明細書に開示される本発明の概念の実施形態の多数の利点は、添付の図面を参照することにより、当業者によりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書に開示される本発明の概念による舗装機械またはテクスチャ加工機械の例示的な実施形態の俯瞰図を示す。
図2図2は、図1のようなツールキャリアの概略図である。
図3図3は、動作中の図1のツールキャリアの図を示す。
図4A図4Aは、図1のツールキャリアの局所的に参照される座標参照系(CRF)の図を示す。
図4B図4Bは、図1のツールキャリアの短半径動作の図を示す。
図4C図4Cは、図1のツールキャリアの短半径動作の図を示す。
図4D図4Dは、図1のツールキャリアの短半径動作の図を示す。
図5図5は、図1のツールキャリアの逆動作の図を示す。
図6図6は、図1のツールキャリアの時計回りの動作の図を示す。
図7図7は、図1のツールキャリアの組み合わせ動作の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0007] 本明細書に開示される発明概念の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明概念は、その適用において、以下の説明によるまたは図面に示された構成要素の構造もしくは配置、またはステップ、または方法論に限定されないことを理解されたい。本発明の概念の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明の概念のより完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が述べられている。しかし、本開示の利益を有する当業者には、本明細書に開示された本発明の概念がこれらの特定の詳細なしで実施され得ることが明らかであろう。他の例では、本開示を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細に説明されない場合がある。本明細書に開示された本発明の概念は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実践または実行することができる。また、本明細書で使用される語法および用語は説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0009】
[0008] 本明細書で使用される参照番号に続く文字は、同じ参照番号(例えば、1、1a、1b)が付された先に説明された要素または特徴に類似するが必ずしも同一ではないこともあり得る特徴または要素の実施形態を参照することを意図する。そのような略記法は、便宜上の目的でのみ使用されており、特に断りのない限り、本明細書に開示された本発明の概念を限定するものと解釈されるべきではない。
【0010】
[0009] さらに、そうではないことが明示的に述べられていない限り、「または」は、包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。たとえば状況AまたはBは、Aは真(または存在する)およびBは偽(または存在しない)、Aは偽(または存在しない)およびBは真(または存在する)、並びにAおよびBの両方が真(または存在する)のうち、いずれかを満たすことを示す。
【0011】
[0010] さらに、単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の概念の実施形態の要素および構成要素を説明するために使用される。これは単に便宜上および発明の概念の概括的な意味を与えるために行われ、単数形(「a」および「an」)は1つまたは少なくとも1つを含むことを意図し、単数形は、そうでないことを意味することが明らかでない限り複数形も含む。
【0012】
[0011] 最後に、本明細書で使用される「一実施形態」または「いくつかの実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の要素、特徴、構造、または特性が、本明細書に開示されている発明概念の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書のさまざまな箇所での「いくつかの実施形態」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではなく、開示された発明概念の実施形態は、本開示に必ずしも明示的に記載されていないかまたは本質的に記載されていない可能性のある他の特徴と共に、本明細書に明示的に記載または記載されているに等しい特徴の1つまたは複数、またはそのような特徴の2つ以上のサブコンビネーションの組み合わせを含み得る。
【0013】
[0012] 概して、本明細書で開示される本発明の概念の実施形態は、スマートステアリング制御(SSC)システムを対象とする。舗装機械またはテクスチャ加工機械のSSCは、機械の現在および将来の位置に対応する経路要素を受け取る。現在の要素と将来の要素とを比較することにより、現在の位置から将来の位置に至るための予想完了時間が導き出される。スマートステアリング制御システムは、機械の操縦可能なトラックの調整を現在の経路から将来の経路に同期させる。スマートステアリング制御システムは、仮想タイロッドとして機能し、損傷を防ぎ、トラクション制御を強化し、機械のパワーを引き出し、その構成要素の動作寿命を維持する。
【0014】
[0013] 図1を参照すると、本明細書に開示される発明概念によるツールキャリア100(例えば、1つ以上のツールを組み込む舗装(またはテクスチャ加工)機械)の例示的な実施形態は、操作プラットフォーム104を組み込んだシャーシ102を含み、操作プラットフォーム104から操作者は機械100の移動を制御し得る(ツールキャリアは手動または遠隔操作、または自律的に操作され得る)。ツールキャリア100は、機械に取り外し可能に取り付けられた1つまたは複数のツール106を含み、ツール106は、ジョブ要件に応じて機械100に着脱される。例えば、ツール106は、限定されるものではないが、縁石型、バリア型、トリマー、シリンダー、コンベヤー/オーガー(108)、噴霧器、トレンチャー、ミルまたは同様のグラインダー、プランター、グレーダーブレード、またはこれらのうちの1つまたは複数の組み合わせを含み得る。
【0015】
[0014] ツールキャリア100は、様々なモード(例えば、クラブステアリング、フロントオンリーまたはリアオンリー、協調ステアリング、逆回転ステアリング、ツールステアリング)のいずれかで、一連の操縦可能なクローラーまたはトラック110を介して一般的に推進および/または操縦され得る。各トラック110は、図1に示される動作構成および移送構造(図示せず)を含む様々な構成でトラック110を位置決めするためのアクチュエータ112に取り付けられ得る。これにより、フラットベッドトラックまたは同様の車両を介した効率的な移送のために機械の幅を最小化することができる。さらに、各トラック110は、360度の完全回転を通じてトラック110を関節運動させるように構成されたスルードライブまたは同様の回転アクチュエータ114を介してアクチュエータ112に取り付けられてもよい。このようにして、各トラックの個々の回転角度を調整することにより、ツールキャリア100を最適な精度で操縦することができる。各トラック110は、アクチュエータ112によって関節運動可能なピボットアーム112aを組み込むことができる(例えば、ピボットアーム112aおよびトラック110は、共通のz軸に対して一体に回転してもよいし、トラック110は、平行四辺形タイプまたは伸縮式/スライド式ピボットアームに取り付けられてもよい。)。ピボットアーム112aはさらに、線形アクチュエータを介してシャーシ102またはトラック110を(z軸に対して)「上」または「下」に上昇または下降させることにより、シャーシ102の勾配制御を提供するように構成され得る。
【0016】
[0015] 停止時にトラック110を回すと、フレームシフトが生じる場合がある。フレームシフトにより追加の経路トラッキングエラーが発生し、ツールの位置が不正確になる。移動中にトラック110を回転させることにより、フレームシフトによる経路トラッキングエラーが無視できる許容レベルに減少するように閉ループ制御がこうしたエラーを継続的に修正する。
【0017】
[0016] ツールキャリア100は、各トラック110の中心の位置およびツール106の位置を測定し、これらの位置をSSCに報告するための位置センサ116を含み得る。位置センサ116は、伸縮式または平行四辺形タイプのスイング脚/ピボットアーム用のスマートシリンダ、またはピボットアーム112またはトラック110の回転角度を測定する回転センサを含み得る。SSCは、ツールキャリア100の固有の機械パラメータ(例えば、ピボットアームの長さ、平行四辺形の形状、伸縮部材の格納/延長位置)とともに位置センサ116からのフィードバックを使用して、操縦および/または勾配制御を改善するためにトラックおよびツール位置を動的に計算することができる。SSCは、例えば、補助トラック118が追加または除去された場合(図4Aを参照)、ツール106が追加、変更、もしくは再配置された場合、またはピボットアーム112が回転してトラック110が再配置された場合(これにより、ツールキャリア100の重量分布、重心、および操縦特性が変化する可能性がある)など、機械パラメータの変化に基づいて計算を調整し得る。
【0018】
[0017] 図2を参照すると、ツールキャリア100aは、図1のツールキャリア100と同様に実装され、同様に動作することができる。ただし、ツールキャリア100aには、左フロント(LF)トラック110a、右フロント(RF)トラック110b、および中央に取り付けられたリア(RR)トラック110cが組み込まれ、各トラック110a~cは、トラックおよび/または旋回駆動装置/回転アクチュエータ114を駆動するためのオンボード電源120に結合されている。各トラック110a~cには、旋回駆動または回転アクチュエータ114と回転角度/位置センサ116とが組み込まれ得る。位置センサ116は、各トラック110a~cの回転角度、例えば所定の基準角度、例えば、直線舗装方向(128、図3)に平行な公称角度(130、図3)に対する回転角度と共に、トラック110a~cの位置をSSC122に報告することができる。SSC122は、事前にプログラムされた経路プロジェクト計画に対するツールキャリア100aの位置および構成、ならびに結果として生じる経路トラッキングエラー(例えば、ストリングライン(stringline)または仮想ガイドラインからの逸脱)を監視し得る。SSC122からの入力(ならびに例えば、機械の現在の幾何学的形状および/またはステアリングパラメータ)に基づいて、ステアリング制御システム124は、トラック110a~cの1つまたは複数を回転させることによりツールキャリア100aの移動方向を変更し得る。
【0019】
[0018] 図3を参照すると、ツールキャリア100bは、図2のツールキャリア100aと同様に実装され動作し得る。直線の縁石または側溝126の舗装または切断などの直線操作の場合、ツールキャリア100bは、手動で、遠隔で、または自動的に、直接前方に(たとえば、舗装方向128に平行に)進むことができ、各トラック110a~110cは公称角度130(例えば、舗装方向128に平行なゼロに近い角度であり、閉ループステアリングコントローラによるステアリングのミニまたはミクロ補正を可能にして、経路トラッキングエラーを最小化する角度)で整列される。異なる直線舗装方向128aに沿って、例えば初期舗装方向128に対してある角度で作業を継続するために、ツールキャリア100bは所定の点で停止し、各トラック110a~cを標的角度130aに合わせて回転させ、新しい舗装方向128aに沿って進行することができる。
【0020】
[0019] いくつかの実施形態では、第1の直線舗装方向128から第2の直線舗装方向128aへの移行は、前方ステアリングポイントを変更してツールキャリア100b全体を回転させ、ツール106の長手方向縁部を経路に接して維持することによって達成される。いくつかの実施形態では、第1の直線舗装方向128から第2の直線舗装方向128aへの移行は、ツールキャリア100bの向きを変えることなくトラック110a~cの向きを変えることによって達成される。そのような向きは、ツール106の向きを変えることを必要とし得る。
【0021】
[0020] しかしながら、ツールキャリア100bの特定の舗装またはテクスチャ加工作業は、曲面、例えば、約0.61m(2フィート)以下の短い半径134、複数の半径で定義される複合曲面、または継続的に変化する半径を含むスパイラルによって画定される曲面132の湾曲を含み得る。本開示の実施形態によるツールキャリア100bは、ツール位置の変更、および操作者によって提供されるツール速度と共に、経路要素からの経路要素へのトラック110a~110cの位置の変化に基づいて、ターゲットトラック角度130aおよびトラック回転速度を動的に予測および制御することにより、従来のアプローチよりも効率的にクロストラックエラーを排除することができる。
【0022】
[0021] 閉ループシステムでは、SSCは、フロントおよびリアのエラー成分を識別し、そうしたエラー成分にステアリング権限(steering authority)を掛けて、仮想補正を決定することができる。仮想補正は、誤差1ミリメートル当たりの角度を含み得る。仮想補正は、ツールキャリア100bのフロントおよびリアに関連する有効な角度を提供するために瞬間的な標的角度に加えられる。フロントポイントとリアポイントの位置、およびそれらの有効な角度を指定すると、ラインとラインの交差関数が、有効な同期ポイントになる交差を計算する。次に、有効な同期ポイントを使用してすべてのトラック角度と推進速度が更新され、トラック110a~cが回転する。
【0023】
[0022] 概して図4A~4Eを参照すると、ツールキャリア100cは、図3のツールキャリア100bと同様に実装されて動作し得る。ただし、ツールキャリア100cのSSC(122、図2)は、ツールキャリア100cの任意の構成要素またはポイントを定義することができるローカル座標系を定義することができる。
【0024】
[0023] 例えば、特に図4Aを参照すると、ツールキャリア100cが小半径の曲面(132、図3)を反時計回りまたは左方向に舗装する場合、座標系は、ツール位置136、あるいは、ツール106の左リア隅に対応するリジッドマシンフレーム(RMF)の位置、またはシャーシ102に対して定義され得る。座標系の他のポイントは、ツール位置136の原点[0,0]に対する座標セット[x,y]に対応し得る。たとえば、3次元の現在および将来の経路要素間の動的勾配制御が経路に組み込まれている場合、または構成要素の相対的な高さが経路に不可欠である場合、座標セットにはz軸座標(図示せず)が含まれてもよい。トラック110a~cがツール106(およびツールキャリア100c)に対して固定位置に維持されると仮定すると、トラックは、座標点136a~c(ローカル座標[x,y]、[x, y]、および[x,y]によってそれぞれ定義され、シャーシ102の中点は、座標点136d([x,y])によって定義され得る。SSCは、ローカル座標系に基づいて共通の回転点(142、図4C)を定義することができる。SSCが経路全体にわたってトラック110a~cの移動をより効果的に予測するために、将来の経路要素(先読み点)138をy軸上の点またはベクトルとして(例えば、[x,y]で)定義することができる。yは0より大きいか0より小さいため、ツール位置136が曲面の現在の経路要素(132、図3)に対応する場合、将来の経路要素138は、将来の経路要素における曲面132の曲率(およびそれにより将来の経路要素での所望のトラック角)ならびに現在の経路から将来の経路に至る完了時間を動的に決定するために、SSCによって使用され得る。これらの決定に基づいて、SSCは、完了時間中に、共通回転点に関して、現在の経路要素に対応する現在の位置から将来の経路要素138に対応する将来の位置へのトラック110a~cの回転を同期させることができる。ツールキャリア100cが動作モードで再構成される場合、例えば、RFトラック110bがシャーシ102または他のトラック110a、110cに対して110d再配置される場合、ローカル座標系は、再配置されたトラック110dを新しいトラックポイント136eに関係づけ、それに応じてSSCはステアリングと回転計算を修正することができる。
【0025】
[0024] いくつかの実施形態では、将来の経路要素138および現在の点または現在の経路要素は、y軸上になくてもよい。そうした実施形態は、オフセット経路をプロットするか、もしくはオフセット経路を組み込むのに有用であり得る。たとえば、3Dデザインおよび3Dシステムは縁石を袋小路に配置し、続いて、縁石の縁部を使用して、3Dシステムが外側にオフセットし、縁石/道路から一定の距離に歩道を配置する。そして、3Dシステムは、提供された設計半径データを修正してオフセットを反映する。あるいは、3Dシステムは、修正された将来の経路要素138/現在の経路要素のx値で、縁石の縁部に関連付けられた提供されたアライメントデータを修正してもよい。これにより、システムは新しい機械制御ファイルのCAD/設計を追加することなく、オフセット形状を作成する。
【0026】
[0025] 特に図4Bを参照すると、ツールキャリア100cは、オペレータから(または外部から)受けた経路要素に従って、曲面132に入る前に直線経路(140)を舗装するように構成されてもよい。例えば、ツールキャリア100cは、ツール位置136が右側の直線経路140の端部と整列するポイントで舗装を開始することができる。直線経路140上のツール位置136の直前に、将来の経路要素138を選択することができる。したがって、各トラック110a~cは、舗装方向128に整列した公称角度130で維持される。
【0027】
[0026] 特に図4Cを参照すると、ツール位置136が直線経路140を出て、小半径134と標的回転中心(共通回転点)142によって画定される短半径曲線経路132に入るように、ツールキャリア100cが前方に進む。SSC(122、図2)は、例えば位置センサ116からの入力に基づいて、現在の経路要素に対応するツール位置136の進行を監視することができる。ツール106将来の経路要素138の位置は、ツール106が短半径曲線経路132に進んでいることを示し得る。ツール106が短半径曲線経路132に入ると、現在の位置/向き110a~cで示される各トラックの将来の位置および向き144a~cは、各トラックから共通回転点142までの放射状ベクトル146a~cによって決定され得る。例えば、将来のツール位置に対応する将来の経路要素のそれぞれは、放射状ベクトル146a~cに垂直な各トラック110a~cの位置/向き144a~cに関連付けられてもよい。また、後方トラック110dがツール106と位置合わせされていない場合、径方向ベクトル146dに垂直な将来の位置/向き144dが含まれてもよい。同様に、均一に維持されていても維持されていなくてもよい機械速度に基づいて、短半径曲線経路132に沿った各将来の経路要素138への進入は、現在の経路要素に対する完了時間に関連付けられ得る。たとえば、図4Bは、ツール106が短半径の湾曲経路132に入る前の現在の経路要素ツール位置136に対応する開始時間t0を示し、図4Cは、ツール位置136が短半径曲線経路132に入る後続の時間tに対応する将来の経路要素を示す。次いで、LFおよびRFトラック110a~bが、後続の時間tに対応する将来の経路でそれらの位置および向き144a~bに対応する所望のトラック角度148a~bに回転する速度が、例えば、ツールキャリア100cの前進速度と、現在の経路要素と将来の経路要素との間のt-tによって定義される決定された完了時間とに基づいて決定され得る。
【0028】
[0027] 特に図4Dを参照すると、時間tにおいて、対応する将来の経路要素(図4Cの138)は、小半径曲線経路132上の現在のツール位置136に対応する現在の経路要素になり得る。同様に、ツール106aの更新された位置およびトラック144a~cの更新された位置/向きに基づいて、SSCは、将来のツール位置136a~bに対応する後続の将来の経路要素を受け、各将来の経路要素136a~bは、例えば、将来の時刻tおよびt(例えば、それぞれ150a~cおよび152a~c)におけるトラック110a~cの位置/向きに対応する。SSCは、将来の経路要素が現在の経路要素になるときの各将来の経路要素と、後続の経路要素との間の機械の速度と完了時間(たとえば、t-tおよびt-t)に基づいて、各トラックについて、時間t(位置/向き150a~c)およびt(位置/向き152a~c)でそれぞれトラックが将来の経路要素に到達するときに小半径曲線経路132を維持するように、必要な同期回転を計算する。
【0029】
[0028] 概して図5図7を参照すると、ツールキャリア100dは、図4A~Dのツールキャリア100cと同様に実装されて機能し得る。ただし、特に図5を参照すると、ツールキャリア100dのSCCは、時計回り(例えば、ツールキャリアの向きに対して「逆」)方向154に移動しながら、曲線経路要素を通してツールキャリアを同様に案内し、トラック110a~c(156a~c)の回転を将来の経路要素138a(ツール106c)に対応する位置/向き(158a~c)に同期させることができる。
【0030】
[0029] 特に図6を参照すると、ツールキャリア100dのSSCは、ツールキャリア100dが曲線経路要素166の周りを時計回りに前進するにときに、将来の経路要素138に対応する位置/向き162a~cにトラック110a~cの回転160a~cを同期させ得る。
【0031】
[0030] 特に図7を参照すると、ツールキャリア100dは、複数の半径134a~bおよび複数の共通回転点142a~bによって画定される曲線経路要素168の周りを進み得る。ツールキャリアのSSCは、曲面168に対する将来の経路要素の位置に依存して、第1の共通回転点142a(曲線経路要素168a)に基づいて、または第2の共通回転点142b(曲線経路要素168b)に基づいて、現在の経路要素(位置/向き148a~c)と将来の経路要素(位置/向き170a~c)との間でトラック110a~cの回転を同期させることができる。
【0032】
[0031] 本明細書に開示された発明概念およびそれらに付随する利点の多くは、開示された発明概念の実施形態の前述の説明によって理解され、構成要素の形態、構造、および配置は、本明細書に開示された本発明の概念の広い範囲から逸脱することなく、またはそれらの材料の利点のすべてを犠牲にすることなく、様々な変更を行うことができ、そして、様々な実施形態からの個々の特徴を組み合わせて、他の実施形態とすることができる。本明細書の前述の形態は、単に説明のための実施形態であり、特許請求の範囲の記載において、変更を包含および含むことを意図する。さらに、個々の実施形態のいずれかに関連して開示された特徴のいずれも、他の実施形態に組み込むことができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7