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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】緻密化セルロース複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B27K5/00 F
B27K5/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019559084
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018059366
(87)【国際公開番号】W WO2018197222
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】17168238.8
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508374139
【氏名又は名称】エー・テー・ハー・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】ETH ZUERICH
(73)【特許権者】
【識別番号】519381333
【氏名又は名称】エーエムペーアー、 アイトゲネスシシェ マテリアルプリューフング- ウント フォルシュングスアンシュタルト
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】シュニーダー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブルガート、インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ゼークメール、ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】ケップリンガー、トビアス
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077740(JP,A)
【文献】特開2004-330141(JP,A)
【文献】特開2006-001270(JP,A)
【文献】米国特許第04693757(US,A)
【文献】特表2019-514032(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108699420(CN,A)
【文献】特開2018-062167(JP,A)
【文献】特表2015-529582(JP,A)
【文献】特開昭60-079952(JP,A)
【文献】特開昭55-101404(JP,A)
【文献】矢野浩之,高強度木質材料,Cellulose Commun.,Vol. 10, No. 1,2003年,第22-27頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K1/00-9/00
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)木材のリグノセルロース材料を用意するステップと、
(b)前記リグノセルロース材料を脱リグニン化して脱リグニン化材料を得て、前記脱リグニン化を、前記リグノセルロース材料中のリグニンが除去され、また前記リグノセルロース材料の繊維配向の維持が前記脱リグニン化材料において維持されるような形で行うステップと、
(c)前記脱リグニン化材料を緻密化して緻密化材料を得るステップとを含み、
前記緻密化材料の密度が750-1150kg/m3であり、
前記緻密化は、1-1000Hzの周波数を特徴とする横振動でもって行われる
ことを特徴とする緻密化材料を得るための方法。
【請求項2】
前記脱リグニン化ステップは、前記リグノセルロース材料を、
・少なくとも1種の酸、又は、
・アルカリ性若しくは酸性条件、又は、
・少なくとも1種の塩基、で処理することを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱リグニン化ステップは、溶液が浸透したリグノセルロース材料を20-90℃で定温放置することを含む
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記緻密化は、前記脱リグニン化材料が事前に定めた緻密化度又は最大緻密化度になるまで間隔をおいて圧縮力を加えることにより段階的に行われる
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記緻密化は、セルロース繊維の長手方向に対して垂直であり且つ木片の年輪を横断する方向、又は、セルロース繊維の長手方向に対して垂直であり且つ木片の年輪の接線に揃う方向で行われる
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記緻密化ステップを行う前に、前記脱リグニン化材料の少なくとも2つの平行に揃ったセルロース繊維を含み脱リグニン化又は緻密化リグノセルロース材料のまとまりがある一片である単位を、前記単位の繊維が互いに平行に又は様々に配向される形で組み合わせる
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
追加の改質ステップを前記ステップbの前及び/又は後に行う
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により得られ、
セルロース繊維及びミクロフィブリルがリグノセルロース材料の繊維配向において維持され、前記リグノセルロース材料のリグニンが除去され
ことを特徴とする脱リグニン化材料。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により得られ、
セルロース繊維がリグノセルロース材料の繊維配向において維持され、前記リグノセルロース材料のリグニンが除去され、緻密化材料の密度が前記脱リグニン化材料より上がり、前記緻密化材料の密度が750-1150kg/m3であり、
弾性係数は20-60GPaであり、
引張強さは100-300N/mm 2 である
ことを特徴とする緻密化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱リグニン化及び/又は緻密化されたセルロース材料並びにそのような複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
際立った機械的性質を有し且つ改質して新たな機能を持たせることができるセルロース複合材料が強く求められている。この分野における1つの科学的及び技術的に重要な発明はナノセルロースを作り出したことであった。ナノフィブリル及びナノ結晶に機能性を持たせることはもっと簡単であり、個々の要素は高い機械的性質を有する。しかしながら、これまでのところ、個々の単位の機械的性能を塊としての複合材料に移行させることは極めて困難である。必要な分解処理を木質構造体に行った後、繊維を再配向させてこれらを制御された形で集合させるのは困難な作業だからである。
【0003】
改質していない脱リグニン化セルロース繊維は、慣用のパルプ製造法でも得られる。しかしながら、この方法において、木質繊維は脱リグニン化中に分散し、上述したように、セルロース繊維の再配向は困難な作業である。
【0004】
無処理の木材において、セルロース繊維の配向は主に平行である。木質繊維の細胞壁はリグニン、セルロース及びヘミセルロースから成る。セルロース繊維は引張強さに寄与し、リグニンは圧縮強さ及び構造的完全性に寄与する。
【0005】
構造的完全性を維持するために、従来技術で語られる緻密化工程は、リグニンの一部だけを除去し、リグニンを樹脂で置き換えることを特徴とする。Shams et al.(Shams et al.,2005,J Wood Sci 51:234-238)及びYano et al(Yano et al,2001,J.Mater.Sci Letters 20:1125-1126)においては、樹脂を含浸させたスギ及びナンヨウスギのブロックをそれぞれリグニンの部分除去後に緻密化することで、高い密度と曲げ力への高い耐性を特徴とする複合材料を得た。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Shams et al.(Shams et al.,2005,J Wood Sci 51:234-238)
【文献】Yano et al(Yano et al,2001,J.Mater.Sci Letters 20:1125-1126)
【文献】H.G.Hirschberg:Handbuch Verfahrenstechnik und Anlagenbau.Springer Verlag 1999:p.436
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明で解決する根本的な問題は、繊維の配向が平行な、脱リグニン化及び緻密化された十分なサイズの(セルロース)材料を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術に記載の方法とは対照的に、本発明は、特には圧縮とせん断力との組み合わせにより製造した、ほぼリグニン非含有で高緻密化されたセルロース複合材料の製造に関する。脱リグニン化はパルプ製造法をベースにしているが、原材料、ここでは木材の構造的方向性を維持することを可能にする。これは、取扱い可能なサイズの木材ブロック全体を脱リグニン化することで達成され、次に第2ステップにおいて木材ブロックを強く緻密化することで、制御され且つ平行な繊維配向を有する極めてコンパクトで緻密化された材料を得る。
【0009】
用語及び定義
本発明の文脈において、用語「リグノセルロース材料」はリグニン、ヘミセルロース及びセルロースを含む材料に関し、セルロースはフィブリルを構成し、フィブリルは主に平行に配向される。リグノセルロース材料の典型例には、木質化植物から得られる材料、特には落葉樹又は針葉樹の木材が含まれる。落葉樹又は針葉樹は非組み換え又は遺伝子組み換えのものになり得る。
【0010】
本発明の文脈において、用語「脱リグニン化」はリグノセルロース材料からのリグニンの除去に関する。リグニンは、植物の木質化された部位、特には木材の細胞壁内のセルロースミクロフィブリル間に存在する分岐ポリマーである。リグニンポリマーは、脱リグニン化中に反応し得るエーテル結合としての幾つかの官能基、フェノールヒドロキシル基、脂肪族ヒドロキシル基、非置換又はメチル置換C2、C3、C5又はC6部分、不飽和部分及びエステル基を含有する。例えば、エーテルは求核攻撃により開裂し得て、カルボニル及びアルデヒド基は求核剤と反応し、ヒドロキシル基はイオン化し得て、あるいは-O-メチル基を脱メチル化して酸素イオンの求核攻撃を可能にし得る。さらに、共役付加、ホルムアルデヒド付加、エポキシド付加及びアルドール縮合反応は、リグニンの解重合に寄与し得る。これらの化学反応によってリグニンポリマーはより小さな部分へと解重合し、このより小さな部分はリグノセルロース材料から周りの溶液へと拡散する及び/又は幾つかの洗浄工程により除去される。
【0011】
本発明の文脈において、用語「脱リグニン化材料」は、リグノセルロース材料の脱リグニン化により得られる材料に関する。脱リグニン化材料はセルロースを含み、セルロースは、主に平行に配向された繊維を構成する。
【0012】
本発明の文脈において、用語「緻密化」は、脱リグニン化材料の圧縮に関する。脱リグニン化材料に垂直圧を半径又は接線方向で加えることで、空間の体積が減少する。事前に定めた脱リグニン化材料厚さ又は最大圧縮が達成されるまで圧力は印加する。さらに、横方向のせん断力を引き起こす横振動を加えることで、セルロース繊維及びフィブリルを追加で絡ませ得る。
【0013】
本発明の文脈において、用語「構造的完全性」は、リグノセルロース材料、脱リグニン化材料及び緻密化材料における長手方向での繊維の空間的配置に関する。木材の繊維は、主に平行に配向される。この平行揃えは、脱リグニン化及び緻密化中に維持される。
【0014】
本発明の文脈において、用語「緻密化材料」は、脱リグニン化材料の緻密化により得られる材料に関する。緻密化材料はセルロースを含み、セルロースは、主に平行に配向された繊維を構成する。緻密化材料の密度は400-1200kg/m3である。緻密化の最中に横振動を加えることで、セルロース繊維及びミクロフィブリルを追加で絡ませ得る。
【0015】
本発明の文脈において、用語「硬材」は、落葉樹の木材に関する。落葉樹は非組み換え又は遺伝子組み換えのものになり得る。落葉樹の非限定的な例はカエデ(Acer)種、カバノキ(Betula)種、ヨーロッパブナ(Fagus sylvatica)、アカガシ(Quercus)種、セイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)、ポプラ(Populus)種、セイヨウミザクラ(Prunus avium)、シナノキ(Tilia)種、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)、チーク(Tectona grandis)、ニレ(Ulmus)種、ペルシアグルミ(Juglans regia)、セイヨウシデ(Carpinus betulus)である。
【0016】
本発明の文脈において、用語「軟材」は針葉樹の木材に関する。針葉樹は非組み換え又は遺伝子組み換えのものになり得る。針葉樹の非限定的な例はベイマツ(Pseudotsuga menziesii)、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)、ドイツトウヒ(Picea abies)、オウシュウアカマツ(Pinus sylvestris)、ヨーロッパカラマツ(Larix decidua)、ベイスギ(Thuja plicata)、ヨーロッパモミ(Abies alba)、ストローブマツ(Pinus strobus)である。
【0017】
本発明の文脈において、用語「酸化剤」はリグニンを酸化させる物質に関する。そのような酸化処理は、ラッカーゼ等の酵素、真菌類又は水中のCl2、HClO、過酢酸(PAA)、NaOH、NaClO2、Na224、ClO2、HAc/H22若しくはO3等の化学物質、イオン性液体を用いる処理、あるいは触媒、例えばマンガン塩を使用する処理により達成される。
【0018】
本発明の文脈において、用語「半径方向」は、セルロース繊維の長手方向に対して垂直であり且つ木片の年輪を横断する方向に関する。
【0019】
本発明の文脈において、用語「接線方向」は、セルロース繊維の長手方向に対して垂直であり且つ木片の年輪の接線に揃う方向に関する。
【0020】
本発明の文脈において、用語「弾性係数」は弾性変形領域における応力/ひずみ曲線の傾きに関し、材料の弾性変形の尺度である。応力は引張試験における材料を変形させることができる断面あたりの力であり、ひずみはその元の長さに対する材料の伸びである。弾性係数のSI単位はパスカル(Pa)又はN/m2であり、実用単位はギガパスカル(GPa)である。導かれた引張試験において、負荷方向は長手方向であった。これはセルロース繊維の方向を意味する。
【0021】
本発明の文脈において、用語「引張強さ」はセルロース材料が耐えられる最大引張応力に関する。負荷方向は長手方向であった。これはセルロース繊維の方向を意味する。引張強さのSI単位はパスカル(Pa)又はN/m2であり、実用単位はメガパスカル(MPa)又はN/mm2である。
【0022】
本発明の文脈において、用語「単位」は、主に平行に揃ったセルロース繊維を含む、任意の外形の脱リグニン化又は緻密化リグノセルロース材料のまとまりがある一片に関する。最小体積はμm3レンジになり得る。緻密化処理の観点でより容易に処理可能な単位は、cm3レンジの体積を特徴とする。最大体積は緻密化装置のサイズ及び脱リグニン化の実現可能性により決定されるが、これはリグニンのほぼ完全な除去を達成するためには脱リグニン化溶液が単位全体に浸透しなくてはならないからである。フィックの拡散法則によると、濃度の時間的変化dc(x、t)(c:濃度、x:拡散距離、t:時間)、距離xはt0.5に比例する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】圧縮力(F)と横方向のせん断(矢印)での緻密化プロトコルの概略説明図。脱リグニン化したブロック(灰色の点描領域)を、緻密化中に水の流出が可能なチャンバ内に置く。脱リグニン化ブロックを横方向で緻密化する。
図2】実施例1に記載の通りに作製した3つの脱リグニン化サンプルの応力/ひずみ曲線を示すグラフ
図3】処理前の木材サンプル(左)、脱リグニン化サンプル(中央)及び脱リグニン化/緻密化サンプル(右)を示す写真。サンプルは実施例2に記載の通りに用意した。セルロース繊維の構造的方向性は維持される。
図4a】ねじったサンプルの写真。下のサンプルは緻密化している。ねじった及び曲げたサンプルの繊維構造は全てのサンプルにおいて維持されている。サンプルは実施例2に記載の通りに処理した。
図4b】曲げたサンプルの写真。サンプルは緻密化していない。
図5】徐々に緻密化した脱リグニン化サンプルを示す写真。サンプルを実施例2に記載の通りに処理した。密度は、ブロックに沿って異なる圧力を印加することでブロックの薄いほうから厚みがあるほうへと徐々に低下する。
図6】相対湿度(RH)65%で平衡させ、追加のせん断でもって又はせん断なしで緻密化したセルロースサンプルの引張特性の比較グラフ。(a)せん断負荷なしで緻密化したサンプルの応力/ひずみ曲線(PO)。(b)せん断負荷ありで緻密化したサンプルの応力/ひずみ曲線(PS)。(c)PO及びPSサンプルについての標準偏差つきの平均弾性係数(E)及び比弾性係数(E_比)。(d)PO及びPSサンプルについての標準偏差つきの平均引張強さ(σ)及び比引張強さ(σ_比)。サンプルは実施例2に記載の通りに用意した。
図7】横方向のせん断力なしでの緻密化後の早材領域(左の画像)及び横方向のせん断力を加えた緻密化後の早材領域(右の画像)を示す写真。横方向のせん断力での緻密化により、横方向のせん断力なしの緻密化より緊密にセルロース繊維がまとまる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の態様では緻密化材料を得るための方法が提供され、この方法は:
(a)リグノセルロース材料を用意するステップと、
(b)リグノセルロース材料を脱リグニン化して脱リグニン化材料を得て、この脱リグニン化を、リグノセルロース材料中のリグニンがほぼ完全に除去され、またリグノセルロース材料の構造的完全性が脱リグニン化材料において維持されるような形で行うステップと、
(c)脱リグニン化材料を緻密化して緻密化材料を得るステップ
とを含む。
【0025】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料の特徴的な色彩が失われるまで特定の時間にわたって又は繰り返し行われる。
【0026】
脱リグニン化材料は、リグニンのほぼ完全な除去により得られる。当業者ならば、リグニンが、リグノセルロース材料の褐色の色彩、すなわち木材に特徴的な色彩に寄与することを知っている。完全に脱リグニン化した状態では、材料は主に白っぽいセルロース繊維から成る。アルカリ処理を行うと、リグニン巨大分子が分解されるため暗色化が起き、新しい色素中心が形成され、さらなる漂白が必要となる。したがって、材料の厚さに応じて、脱リグニン化/漂白は、脱リグニン化材料が白色-無色に見えるまで行わなくてはならない。リグニンは木材の乾燥質量の約20-35%を占め、例えば、針葉樹におけるリグニン含有量は27-32%であり、落葉樹(カバノキ属、ブナ属)においては19-23%である(H.G.Hirschberg:Handbuch Verfahrenstechnik und Anlagenbau.Springer Verlag 1999:p.436)。リグニン以外にも、ヘミセルロース及び非結晶セルロースの追加の部分除去が起きる。したがって、脱リグニン化は、それぞれの重量損失、特には、少なくとも出発原料のリグニン量に対応する重量の損失が起きるまで行い得る。
【0027】
脱リグニン化が均質ではないと、脱リグニン化材料は均等に白色に見えない。樹脂を事前に加える前に引張負荷をかけると、そのような材料は、褐色に色づいた領域において又は白色領域との界面で亀裂を生じる又は壊れる。
【0028】
脱リグニン化及び/又は緻密化材料の構造的完全性は、繊維の特定の配置を含む。例えば軟材におけるリグノセルロース材料は、長さ約3mm、直径30μmの繊維(生物学的な文脈では、精確には仮道管)を含有する。繊維の細胞壁はセルロースミクロフィブリルから成る。1本のミクロフィブリルは幾つかのセルロース鎖によって形成され、長さ約15nm、直径約3nmを有する。リグニン及びヘミセルロースがセルロースフィブリル間の空間を埋めている。通常の木材におけるミクロフィブリルは、優勢には長手方向に整列している(ミクロフィブリル角度は小さい)。この主に平行な整列は、リグニン除去時及び緻密化中も維持される。
【0029】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料の乾燥質量の20-40%の減量を引き起こす。
【0030】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップはリグノセルロース材料の乾燥質量の28-40%の減量を引き起こし、リグノセルロース材料は針葉樹の木材である。
【0031】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップはリグノセルロース材料の乾燥質量の20-32%の減量を引き起こし、リグノセルロース材料は落葉樹の木材である。
【0032】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップはリグノセルロース材料を少なくとも1種の酸で処理することを含む。pHは1-6、この場合1に調節する。
【0033】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を少なくとも1種の無機酸又は有機酸で処理することを含む。
【0034】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を酢酸、硫酸、塩素酸又は過酢酸で処理することを含む。
【0035】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を、アルカリ性又は酸性条件下で少なくとも1種の酸化剤で処理することを含む。アルカリ性条件下、pHは8-14に調節される。酸性条件下、pHは1-6に調節される。
【0036】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を、アルカリ性又は酸性条件下で過酸化水素、亜塩素酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はオゾンで処理することを含む。
【0037】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を、アルカリ性又は酸性条件下で過酸化水素で処理することを含む。
【0038】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を酸性条件下で少なくとも1種の酸化剤で処理することを含む。
【0039】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を酸性条件下で過酸化水素、亜塩素酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はオゾンで処理することを含む。
【0040】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を酸性条件下で過酸化水素で処理することを含む。特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、リグノセルロース材料を、H22と組み合わせた酢酸で処理することを含む。
【0041】
22と組み合わせての酢酸の使用は、他の脱リグニン化処理より毒性が低い処理である。
【0042】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップはリグノセルロース材料を少なくとも1種の塩基で処理することを含む。pHは8-14、この場合14に調節する。
【0043】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップはリグノセルロース材料を水酸化ナトリウムで処理することを含む。
【0044】
均質に脱リグニン化するために、脱リグニン化溶液はリグノセルロース材料に完全に浸透しなくてはならない。
【0045】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、溶液が浸透したリグノセルロース材料を20-90℃で定温放置することを含む。
【0046】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、溶液が浸透したリグノセルロース材料を60-90℃で定温放置することを含む。
【0047】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、溶液が浸透したリグノセルロース材料を75-85℃で定温放置することを含む。
【0048】
特定の実施形態において、脱リグニン化ステップは、溶液が浸透したリグノセルロース材料を80℃で定温放置することを含む。
【0049】
特定の実施形態において、緻密化は段階的に行われる。
【0050】
特定の実施形態において、緻密化は、脱リグニン化材料が事前に定めた緻密化度又は最大緻密化度になるまで間隔をおいて圧縮力を加えることで行われる。例えば、脱リグニン化材料は高さ10mmを有し、高さ3mmを目標とする。圧縮は、1mmの圧縮とそれに続く、圧縮力をこれ以上上昇させない15秒の待ち時間の7サイクルにより段階的に行われる。高さを10mmから9mmまで減少させるのに必要な圧縮力は、同じ材料を高さ4mmから3mmに減少させるのに必要な圧縮力より小さく成り得る。これは、緻密化していない厚さ10mmの材料より、厚さ4mmの部分的に緻密化した材料の圧縮のほうが抵抗が強いからであると説明できる。
【0051】
材料及び既に得られた圧縮度に応じて、様々な圧縮力を印加し得る。
【0052】
特には、最大20kNの圧縮力を印加する。
【0053】
セルロース繊維の体積(内腔)が最小化され、セルロース繊維間の接触面が最大化され、脱リグニン化された細胞壁の孔が圧密化されたら、最大緻密化に達する。
【0054】
特定の実施形態において、緻密化は1mmの圧縮、15秒の待ち時間の繰り返しにより行われる。
【0055】
材料は、繊維を切断することなく異なるサイズ、外形及び形状を有し得る。材料には、要素を曲げる等、後処理を施し得る。
【0056】
特定の実施形態において、緻密化は追加の横振動でもって行われる。
【0057】
特定の実施形態において、緻密化は、1-1000Hzの周波数を特徴とする横振動で行われる。幅2cmのサンプルあたりの振動幅は0.02-5mmである。
【0058】
緻密化は、垂直方向の圧縮力及び横方向のせん断力を引き起こす追加の横振動を加えることで行われる。この振動はセルロースフィブリル及び繊維の絡み合いを引き起こす。絡み合いは、フィブリル間のリグニンを十分に除去した場合にのみ可能である。横振動により、セルロース繊維はより緊密に積層される(図7)。
【0059】
特定の実施形態において、緻密化は半径方向又は接線方向で行われる。
【0060】
特定の実施形態において、緻密化は半径方向で行われる。
【0061】
特定の実施形態においては、緻密化ステップを行う前に、脱リグニン化材料の少なくとも2つの単位を、これらの単位の繊維が互いに平行に又は様々に配向される形で組み合わせる。
【0062】
幾つかの脱リグニン化された単位を、全ての単位のセルロース繊維が一方向に揃う形で組み合わせると、緻密化時に集成木材に匹敵する緻密化材料が得られる。
【0063】
幾つかの脱リグニン化された単位を、1つの層のセルロース繊維がある方向に揃い、他の層のセルロース繊維が特には90°回転させた方向に揃うような形で交互の層状に組み合わせると、緻密化時に合板に似た層配向の緻密化材料が得られる。
【0064】
幾つかの脱リグニン化された単位は、これらの単位のセルロース繊維が互いに様々に配向される形で組み合わせ得る。幾つかの脱リグニン化された単位の組み合わせを用いることで、脱リグニン化材料のより小さな単位を集合させ、緻密化材料の寸法を増大させることもできる。
【0065】
特定の実施形態において、リグノセルロース材料は木質材料である。
【0066】
特定の実施形態において、リグノセルロース材料は軟材又は硬材である。
【0067】
特定の実施形態においては、少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂をステップbの後、ステップcの前に添加する。熱硬化性又は熱可塑性の樹脂は、リグニン除去後にできるセルロース繊維及びセルロースフィブリル間の空間を埋める。したがって、ほぼ完全なリグニン除去には大きくて多数の孔を作り出せるという利点があり、これにより熱硬化性又は熱可塑性樹脂の取り込みが可能となり、例えば部分的リグニン除去に関してYano et al(Yano et al,2001,J.Mater.Sci Letters 20:1125-1126)で示される通りである。
【0068】
特定の実施形態においては、少なくとも1つのエポキシド又は熱可塑性懸濁液をステップbの後、ステップcの前に添加する。
【0069】
特定の実施形態においては、追加の改質ステップをステップbの前及び/又は後に行う。
【0070】
特定の実施形態においては、重合、鉱化、金属化又はこれらの組み合わせをステップbの前及び/又は後に行う。
【0071】
本発明の第2の態様においては、特には本発明の第1の態様の方法で得られた脱リグニン化材料を用意する。この脱リグニン化材料は、リグノセルロース材料の構造的方向性において維持されたセルロース繊維及びミクロフィブリルと、リグノセルロース材料のリグニンがほぼ完全に除去されたことを特徴とする。
【0072】
本発明の第3の態様においては、特には本発明の第1及び第2の態様の方法で得られた緻密化材料を用意する。この緻密化材料は、リグノセルロース材料の構造的方向性において維持されたセルロース繊維と、リグノセルロース材料のリグニンがほぼ完全に除去され、緻密化材料の密度が脱リグニン化材料より低下し、特には緻密化材料の密度が400-1200kg/m3、特には750-1150kg/m3であることを特徴とする。
【0073】
リグニンのほぼ完全な除去は、リグノセルロース材料の特徴的な色彩、特には木材の特徴的な色彩の喪失を特徴とする。
【0074】
上述したように、リグニンは木材の特徴的な色彩に寄与する。リグニンを除去すると、セルロース材料は無色-白色に見える。
【0075】
本発明の脱リグニン化及び緻密化材料は木材より均質であり、より良好な機械的性能を示す。この材料は、木材より容易に機能性を持たせることができる/改質できる。
【0076】
特定の実施形態において、緻密化材料の密度は400-1200kg/m3である。
【0077】
特定の実施形態において、緻密化材料の密度は750-1150kg/m3である。
【0078】
特定の実施形態において、緻密化材料の弾性係数は20-60GPaである。
【0079】
特定の実施形態において、緻密化材料の弾性係数は40-50GPaである。
【0080】
特定の実施形態において、緻密化材料の弾性係数は45GPaである。
【0081】
特定の実施形態において、緻密化材料の引張強さは100-300N/mm2である。
【0082】
特定の実施形態において、緻密化材料の引張強さは225-275N/mm2である。
【0083】
特定の実施形態において、緻密化材料の引張強さは250N/mm2である。
【実施例
【0084】
以下において、代替又は追加のステップを含めた、セルロース複合材料の一般的な製造方法について説明する。
【0085】
材料
寸法100x10x20mm3(長手方向x半径方向x接線方向)を有する軟材又は硬材のブロック
【0086】
脱リグニン化
木材サンプルの脱リグニン化は、特には過酸化水素及び酢酸を使用し、サンプルが白色になるまで酸性又はアルカリ性の処理と酸化処理とを組み合わせることで達成できる。
【0087】
無改質のサンプルは平均密度438kg/m3を有し、脱リグニン化処理後のサンプルは平均密度289kg/m3を有し、これは元々の無改質の材料の密度の66%にすぎない(34%の低下)。これは質量が失われたからであり、体積の増大によるものではない。トウヒのリグニン含有量に関する妥当な数値は約28%である。ヘミセルロース及び非結晶セルロースの部分的な除去を考慮する必要はあるものの、これらの数値及びサンプルの白色から、ほぼ全てのリグニンが処理により除去されたと結論づけることができる。
【0088】
さらに加工するために、脱リグニン化した木材を湿潤した若しくは異なる相対湿度レベル、例えば65%若しくは95%で維持すること、溶媒交換サイクル(例えば、エタノール、メタノール)に供すること及び/又は樹脂と組み合わせて緻密化ステップで緊密な繊維複合材料を得ることができる。
【0089】
緻密化
脱リグニン化材料のブロックを、横方向の膨張を制限する装置において緻密化する。緻密化は、サンプルへの上からの負荷及び横方向のせん断運動(装置の概略図である図1を参照のこと)により達成される。
【0090】
サンプル処理及び目標とするサンプル寸法に応じて、幾つかのより小さな脱リグニン化ブロック又はシートを合体させて1つのより大きなサンプルにすることが可能である。
【0091】
緻密化で目標とする状態に達した後、サンプルを乾燥させ、その間、圧縮力を調節することで、サンプルの収縮中にサンプルにさらに負荷をかけ得る。
【0092】
緻密化に関しては、以下のパラメータを選択し得る。脱リグニン化木材サンプルを、製品の最終寸法を決定するプレス金型に入れる。フィッティングピストンを、脱リグニン化木材サンプルの緻密化に使用する。追加の横振動を加えることで、同時に作用するせん断力を生み出し、これによってセルロース繊維間の相互作用がより強くなる。振動運動の振幅及び周波数はサンプルの形状に適合させる必要がある。振動による緻密化は段階的に起きる。ピストンがサンプルに最初に接触した後、緻密化に関して事前に定めた距離をピストンは移動する。次の段階では、この距離を、定めた時間にわたって維持する。この手順を、特定のサンプル厚さに達するまで繰り返す。最期に、サンプルを乾燥させ、その間、加えた力は維持する(ピストンは、乾燥中の収縮によるサンプル厚さの減少に従う)。
【0093】
実施例1:湿潤状態の木片の高密度緻密化
材料
寸法100x10x20mm3(長手方向x半径方向x接線方向)を有するトウヒの木材ブロック
【0094】
脱リグニン化
過酸化水素(H22、30%分析グレード、メルク社)及び酢酸(99.8%、シグマアルドリッチ社)を、脱リグニン化に先立って体積比1:1で直接混合した。木材の棒をビーカーに立てて入れ、3日間にわたって酸性溶液中に定温放置し、続いて80℃まで加熱した。脱リグニン化浴をその温度で12時間にわたって150rpmで撹拌しながら維持してから、木材を取り出し、脱イオン化水でしっかりと洗浄した。続く緻密化処理に先立って、洗浄手順を5日間にわたって継続し、1日2回水を交換した。
【0095】
緻密化
湿潤した脱リグニン化材料のブロックを、横方向の膨張を制限する装置において緻密化した。緻密化は、サンプルへの上からの負荷及び横方向のせん断運動(装置の概略図である図1を参照のこと)により達成される。
【0096】
脱リグニン化木材サンプルを、製品の最終寸法を決定するプレス金型に入れる。フィッティングピストンを、脱リグニン化木材サンプルの最高20kNの緻密化に使用する。追加の横振動を加えることで、同時に作用するせん断力を生み出し、これによってセルロース繊維間の相互作用がより強くなる。振動運動の振幅及び周波数はサンプルの形状に適合させる必要がある。振動による緻密化は段階的に起きる。ピストンがサンプルに最初に接触した後、緻密化について事前に定めた距離をピストンは移動する。次の段階では、この距離を、定めた時間にわたって維持する。この手順を、特定のサンプル厚さに達するまで繰り返す。最期に、サンプルを乾燥させ、その間、加えた力を維持する(ピストンは、乾燥中の収縮によるサンプル厚さの減少に従う)。
【0097】
樹脂非含有サンプルを試験したところ、密度約1150kg/m3及び以下の機械的性質が判明した。
サンプル1:弾性係数47.0GPa及び引張強さ250N/mm
サンプル2:弾性係数30.1GPa及び引張強さ175N/mm
サンプル3:弾性係数31.6GPa及び引張強さ111N/mm
【0098】
図2はサンプルの応力/ひずみ曲線を示す。
【0099】
実施例2:乾燥状態(相対湿度65%)の木片のリグニン化の中密度緻密化
木材サンプル
寸法100x10x20mm3(長手方向x半径方向x接線方向)を有するドイツトウヒ(Picea abies)の木片を使用した。処理前、木片は20℃、相対湿度65%で保管した。
【0100】
脱リグニン化
過酸化水素(H22、30%分析グレード、メルク社)及び酢酸(99.8%、シグマアルドリッチ社)を、脱リグニン化に先立って体積比1:1で直接混合した。木材の棒をビーカーに立てて入れ、3日間にわたって酸性溶液中に定温放置し、続いて80℃まで加熱した。木片を一晩、室温で150rpmで撹拌しながら浸透に供した。次に、溶液を80℃まで加熱し、木片を6時間にわたって脱リグニン化した。浸透(一晩)及び脱リグニン化(6時間)ステップを、過酸化水素/HAc溶液を新鮮なものに交換してもう1度繰り返した。脱リグニン化後、サンプルを水で24時間にわたって洗浄した。洗浄溶液を5回交換した。洗浄後、一定質量が得られるまでサンプルを気候キャビネットで保管した。3つの異なる湿度条件を緻密化に用いた:20℃/65%、20℃/95%及び湿潤サンプル。
【0101】
脱リグニン化した木片の緻密化
緻密化のために、Zwick Roell 100kNマシンを圧縮モードで使用した。脱リグニン化した木片を金型(100x20mm2)において半径方向で緻密化した。ポンチを金型内に段階的に押し込み、位置を制御した(1mm圧縮、15秒の待ち時間)。脱リグニン化した木片を最初の厚さ10mmから3mmまで圧縮した。
【0102】
セルロース構造体のせん断は、圧縮中にポンチに対して横方向の振動運動を加えることで得られた。振動運動は、ポンチに接続したエアコンプレッサーガン(2バール)により引き起こした。
【0103】
緻密化後、緻密化した木片を20℃/65%で調整した。調整しながら、木片におもりで加圧(15kPa)して、サンプル収縮中、圧力を維持した。
【0104】
この実施例においては、セルロースブロックの緻密化強度を下げて密度約750kg/m3とした。
【0105】
引張試験
脱リグニン化及び緻密化した木片の引張特性をZwick Roell 10kNマシンで試験した。試験した長さは25mmであった。ひずみは、ビデオ伸び計で測定した。
【0106】
追加のせん断なし及び追加のせん断ありで処理した緻密化サンプルの機械的性質を比較したところ、せん断により引張強さは上昇することが判明した(図6)。引張強さの上昇は、せん断負荷がより高く、より強く緻密化したサンプルの場合にさらに顕著になる可能性がある。横方向のせん断が持つ潜在的な効果は、緻密化した早材領域の光学顕微鏡による観察でも認められた。追加のせん断なしで(図7、左の画像)及び追加のせん断あり(図7、右の画像)で処理した緻密化サンプルを比較したところ、せん断により、セルロース繊維が有益な形で積層され得ることが明らかになった。高いせん断力はまた、繊維の細胞壁のフィブリル化とセルロースミクロフィブリルの噛み合いにつながり得て、より高いレベルでの繊維の積層と相まって、絡み合いをさらに増強し、セルロース複合材料の特性はより優れたものになり得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7