(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】再構成可能な後方散乱検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 23/203 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G01N23/203
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020000300
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-12-28
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ サファイ
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517672(JP,A)
【文献】特開2007-114145(JP,A)
【文献】特開平04-024582(JP,A)
【文献】特開平07-035867(JP,A)
【文献】特開昭63-139277(JP,A)
【文献】国際公開第2017/127781(WO,A1)
【文献】特開2004-064087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0336526(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00244292(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0253712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01T 1/00 - G01T 7/12
G21K 4/00
G01B 15/00 - G01B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方散乱(312)を検出するための装置(202)であって、
第1形状から第2形状に変化するように構成された形状を有する構造体(320、550)と、
前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネル(321)を含むセンサアレイ(318)と、を含み、
前記フレキシブルシンチレータパネルは、複数の第1光ファイバ(606)及び複数の第2光ファイバ(615)を半硬質のケーシング(620)に収容して構成されており、前記複数の第1光ファイバ(606)は複数のクラスター(611,613)にグループ分けして、各クラスターごとに複数の第1光ファイバがまとめられており、前記複数の第2光ファイバ(615)は、前記複数のクラスター(611,613)の間に個別に配置されており、
前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記構造体の形状に適合するように構成されており、
前記センサアレイは、物体(214)に放射線ビーム(310)が当たったことに応じて形成される前記放射線ビームの後方散乱を検出するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記センサアレイは、前記複数の第1光ファイバ及び前記複数の第2光ファイバの全てに連結された光検出器(350)をさらに含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記構造体は、所定数のフレキシブルジョイントによって互いに接続された複数のセグメント(552)を含み、前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つのセグメントが、前記複数のセグメントのうちの別のセグメントに対して、前記所定数のフレキシブルジョイントのうちの所与のフレキシブルジョイントを中心軸として移動することにより、前記構造体の前記形状が変化する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記構造体の前記形状は、三次元的に変化するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記構造体(504)は、変形可能材料を含み、前記変形可能材料の変形によって、前記構造体の前記形状が変化する、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記装置の前記第2形状は、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合し、
前記装置の前記第1形状と前記装置の前記第2形状とは異なっており、
前記装置の前記第2形状は、前記装置の選択形状である、請求項1~5のいずれかに
記載の装置。
【請求項7】
可動プラットフォーム(110)が前記装置を前記物体に対して移動させる際に、前記構造体を繰り返し再構成するように構成された電気機械システムをさらに含み、
前記可動プラットフォームは、前記装置と関連付けられており、
前記電気機械システムは、前記センサアレイからのデータを用いて、前記構造体を繰り返し再構成し、
前記電気機械システムは、前記装置の前記形状が、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合するように変化するよう、前記構造体を繰り返し再構成する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも一部が前記物体を透過するように構成されたX線を含む放射線(306)を出射するように構成された放射線源(300)と、
前記放射線源によって出射された前記放射線の一部を用いて、前記物体の表面に指向される前記放射線ビーム(310)を形成するように構成されたコリメーター(120)と、をさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
X線(306)を出射するように構成されたX線管(300)と、
前記X線管によって出射される前記X線の一部を用いて、物体(214)の表面に指向されるX線ビームを形成するように構成されたコリメーター(120)と、
前記X線ビームが前記物体に当たったことに応じて形成される前記X線ビームの後方散乱を検出するように構成された検出器システムと、を含む後方散乱X線システム(202)であって、
前記検出器システムは、第1形状から第2形状に変化するように構成された形状を有する構造体(320、550)と、センサアレイ(600)と、を含み、
前記センサアレイは、前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネル(610)を含み、
前記フレキシブルシンチレータパネルは、複数の第1光ファイバ(606)及び複数の第2光ファイバ(615)を半硬質のケーシング(620)に収容して構成されており、前記複数の第1光ファイバ(606)は複数のクラスター(611,613)にグループ分けして、各クラスターごとに複数の第1光ファイバがまとめられており、前記複数の第2光ファイバ(615)は、前記複数のクラスター(611,613)の間に個別に配置されており、
前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記構造体の形状に適合するように構成されている、後方散乱X線システム。
【請求項10】
前記センサアレイは、前記複数の第1光ファイバ及び前記複数の第2光ファイバの全てに連結された光検出器をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システムに関し、より具体的には、後方散乱検査システムに関する。さらに具体的には、本開示は、物体の形状に実質的に適合可能な形状を有する検出器を用いて、物体の後方散乱を検出するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や打ち上げロケットの構造では、航空機の外板などの様々な面が、ストリンガーや補強材として知られる構造支持部材に取り付けられる。航空機の胴体においては、ストリンガーは、航空機の長手方向に延びるように、胴体外板に取り付けられる。これらは、主として、外板に作用する空力負荷を、フレームを含む内部構造体に伝達する役割を担っている。航空機の翼や水平安定板においては、ストリンガーは、翼の外板に取り付けられ、この場合も、その主な機能は、翼に作用する曲げ負荷を、リブや翼桁などの内部構造体に伝達することである。
【0003】
後方散乱X線システムは、X線を用いて物体を検査する非破壊検査システム(NDI)の一例である。現在利用可能ないくつかの後方散乱X線システムは、X線管、コリメーター、及び、検出器を含んでいる。X線管は、X線を生成して出射する。コリメーターは、これらのX線をフィルタリングすることにより、これらのX線の一部を用いて、特定の方向に実質的に平行に進むX線ビームを形成する。X線ビームが物体に当たると、X線ビーム内のX線の一部又はすべてが、物体によって散乱される。具体的には、X線は、例えば、物体の表面及び/又は表面下で散乱される。散乱されたX線は、後方散乱と称される。検出器は、このような後方散乱の一部又はすべてを検出する。検出された後方散乱を用いて、物体の画像データを生成し、これを用いて、物体の1つ以上の画像を形成することができる。例えば、物体の特定箇所にX線ビームが指向された際に検出される後方散乱を用いて、物体のその特定箇所に対応する画像内の画素の強度値を生成することができる。例えばラスターパターンなどの選択されたパターンで、X線ビームを物体に沿って移動させることにより、物体の様々な箇所の画像データを生成することができる。
【0004】
例示的な一実施例において、X線ビームを向ける方向を変更して、物体に対するX線ビームの入射角を変化させる場合がある。この画像データを用いて、物体の1つ以上の画像を形成し、これを用いて、物体に何らかの欠陥があるかどうかを判定することができる。いくつかの現在利用可能な後方散乱X線システムに用いられている検出器は、実質的に平面状の形状を有している。換言すれば、これらの検出器は、平らな形状を有する。後方散乱X線システムの検出器が平らな形状を有する場合、この後方散乱X線システムを使用できる箇所の数が、制限されることがある。例えば、平らな形状の検出器を備える後方散乱X線システムを、湾曲形状の物体に対して適切に配置することは、非常に困難な場合がある。
【0005】
また、物体が湾曲形状を有している場合、平らな形状の検出器では、物体に対して様々な入射角で入射するX線ビームに対して、所望量より少ない量の後方散乱しか検出されない場合がある。換言すれば、物体が湾曲形状を有している場合、様々な入射角のX線ビームに対して検出器によって検出される後方散乱の量が、所望量より少なくなる場合がある。結果として、平らな形状を有する検出器を湾曲物体の後方散乱の検出に用いた場合、検出器によって生成される画像データを用いて形成される画像は、所望レベルの品質を有しない場合がある。従って、上述した事項の少なくともいくつか、及び、他の潜在的な事項を考慮した方法及び装置が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態の基本的な理解を与えるため、本開示の簡略化された概要を以下に提示する。この概要は、開示の包括的な概説ではなく、本開示のキー及び重要要素を特定するものでも、本開示の範囲を規定するものでもない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本明細書に開示されるいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0007】
フレキシブルシンチレータを含むセンサアレイを実現する後方散乱検出器システム、ならびに、関連する動作方法が提供される。具体的には、後方散乱を検出するための装置は、形状を有する構造体を含む。前記形状は、第1形状から第2形状に変化するように構成されている。当該装置は、前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネルを含むセンサアレイをさらに含む。前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記構造体の形状に適合するように構成されている。当該装置は、物体に放射線ビームが当たったことに応じて形成される放射線ビームの後方散乱を検出するように構成されている。
【0008】
前記フレキシブルシンチレータパネルは、複数の光ファイバを含みうる。前記センサアレイは、前記複数の光ファイバに連結された光検出器をさらに含みうる。
【0009】
前記複数の光ファイバは、有機繊維を含みうる。前記複数の光ファイバは、例えば、半硬質のケーシングに収容される。前記複数の光ファイバは、例えば、前記半硬質のケーシング内で、1つ以上の層状に配置される。
【0010】
前記1つ以上の層のうちの第1層内の各光ファイバは、例えば、前記第1層内の1つ以上の隣接する光ファイバと連結されている。前記1つ以上の層のうちの第1層内の少なくとも1つの光ファイバは、例えば、前記1つ以上の層のうちの第2層内の少なくとも1つの光ファイバと連結されており、前記第2層は、前記第1層に隣接している。前記1つ以上の層のうちの第1層内の光ファイバは、複数のクラスターを形成するよう配置してもよい。
【0011】
前記複数の光ファイバは、例えば、1つ以上の層状に配置されており、前記1つ以上の層のうちの第1層の光ファイバは、織り合わせ構造を構成している。前記織り合わせ構造は、例えば、平織り構造である。
【0012】
前記センサアレイは、光検出器をさらに含みうる。前記複数の光ファイバは、例えば、1つ以上の束にまとめられており、前記1つ以上の束の各々は、前記光検出器に連結されている。前記光ファイバのシンチレーションによって生成される光は、前記光ファイバを通って、前記光検出器に伝送される。
【0013】
前記構造体は、所定数のフレキシブルジョイントによって互いに接続された複数のセグメントを含みうる。前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つのセグメントが、前記複数のセグメントのうちの別のセグメントに対して、前記所定数のフレキシブルジョイントのうちの所与のフレキシブルジョイントを中心軸として移動することにより、前記構造体の前記形状が変化する。前記構造体の前記形状は、例えば、三次元的に変化するように構成されている。前記構造体の各セグメントは、例えば、矩形の面を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記構造体は、例えば、変形可能材料を含み、前記変形可能材料の変形によって、前記構造体の前記形状が変化する。また、前記構造体は、例えば、フレキシブル回路を含み、この場合、フレキシブル回路の構成を変更することによって、前記構造体の前記形状が変化する。
【0015】
前記構造体の前記第2形状は、例えば、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合し、前記構造体の前記第1形状と前記構造体の前記第2形状とは異なっており、前記構造体の前記第2形状は、例えば、前記構造体の選択形状である。前記選択形状は、例えば、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合し、前記物体の表面の実質的に非平面の形状および前記選択形状は、波形、湾曲形状、および、ドーナツ形のうちの少なくとも1つを含みうる。
【0016】
前記装置は、可動プラットフォームが前記装置を前記物体に対して移動させる際に、前記構造体を繰り返し再構成するように構成された電気機械システムをさらに含む。前記可動プラットフォームは、前記装置と関連付けられており、前記電気機械システムは、前記センサアレイからのデータを用いて、前記構造体を繰り返し再構成し、前記電気機械システムは、前記装置の前記形状が、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合するように変化するよう、前記構造体を繰り返し再構成する。前記センサアレイからの前記データは、前記物体の画像および前記物体のビデオのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
前記装置は、少なくとも一部が前記物体を透過するように構成されたX線を含む放射線を出射するように構成された放射線源をさらに含みうる。また、前記装置は、前記放射線源によって出射された前記放射線の一部を用いて、前記物体の表面に指向される前記放射線ビームを形成するように構成されたコリメーターをさらに含みうる。前記放射線源及び前記コリメーターが、放射線発生システムを形成しうる。放射線発生システムは、例えば、可動プラットフォームと関連付けられる。前記装置は、例えば、前記可動プラットフォームに連結されたハウジングをさらに含み、前記放射線源は、前記ハウジング内に設けられる。前記放射線源は、例えば、X線管であり、前記放射線ビームは、例えば、X線ビームである。フレキシブルシンチレータパネルの所定数の部分の各々は、前記フレキシブルシンチレータパネルの前記所定数の部分のうちの他のすべての部分と、前記物体の実質的に非平面の表面から実質的に等距離とすることができる。
【0018】
前記コリメーターは、所定数のアパーチャを有する回転可能ホイールを含みうる。回転可能ホイールは、例えば、放射線源が放射線を出射する間、回転するように構成されており、放射線源によって出射された放射線の一部が、前記所定数のアパーチャ1のうちの所与のアパーチャを通過して、放射線ビームを形成する。
【0019】
本開示の他の実施態様は、上述した装置に対応するシステム及び方法を含む。例えば、前述及び/又は後述する例及び側面のうちのいずれかについて、その構成要件の少なくとも一部を含みうる他の側面によれば、X線を出射するように構成されたX線管と、前記X線管によって出射される前記X線の一部を用いてX線ビームを形成するように構成されたコリメーターとを含む後方散乱X線システムが提供される。X線ビームは、物体の表面に指向される。当該システムは、上述した検出器システムをさらに含む。
【0020】
物体を検査するための方法も提供される。当該方法は、後方散乱検査システムにおける検出器システムの選択形状を特定することを含む。前記選択形状は、前記物体の表面の実質的に非平面の形状を含む。当該方法は、前記検出器システムの構造体を用いて、前記検出器システムの形状を、前記検出器システムの第1形状から前記検出器システムの第2形状に変更することをさらに含む。前記検出器システムの前記第2形状は、前記物体の前記表面の前記実質的に非平面の形状に実質的に適合している。
【0021】
前記検出器システムは、前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネルを含みうる。前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記検出器システムの形状に適合するように構成されている。
【0022】
当該方法は、前記物体の前記表面に向かって放射線ビームを出射することをさらに含む。前記放射線ビームは、例えば、放射線源から出射された放射線の一部を用いて形成され、前記放射線は、少なくとも一部が前記物体を透過するように構成されたX線を含む。当該方法は、前記選択形状を有する前記検出器システムを用いて、前記放射線ビームが前記物体に当たったことに応じて形成される後方散乱を検出することをさらに含む。
【0023】
当該方法は、可動プラットフォームが前記物体に対して移動する際に、電気機械システムを用いて前記構造体を繰り返し再構成することをさらに含む。前記可動プラットフォームは、前記検出器システムと関連付けられており、前記構造体を繰り返し再構成する工程では、前記センサアレイからのデータを利用し、前記構造体を繰り返し再構成する工程では、前記物体の前記表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合するように、前記検出器システムの前記形状を変化させる。
【0024】
前記物体の前記表面に向かって放射線ビームを出射することは、前記放射線源によって出射された前記放射線の一部を用いて前記放射線ビームを形成するように構成されたコリメーターで、前記放射線ビームを形成することを含みうる。前記放射線源及び前記コリメーターは、放射線発生システムを形成し、前記放射線発生システム及び前記検出器システムのうちの少なくとも1つが、前記可動プラットフォームと関連付けられる。前記後方散乱検査システムは、例えば、前記可動プラットフォームに連結されたハウジングをさらに含み、前記放射線源は、前記ハウジング内に設けられる。
【0025】
上記及びその他の実施形態を、図面を参照しながら以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】例示的な実施形態による検査環境をブロック図の形態で示した図である。
【
図2】例示的な実施形態による検査環境の図である。
【
図3】例示的な実施形態による後方散乱検査システムによって検査されている航空機の断面図である。
【
図4】例示的な実施形態による後方散乱検査システムによって検査されている航空機の断面図である。
【
図5A】例示的な実施形態による検出器システムの図である。
【
図5B】例示的な実施形態による、検出器システムの再構成可能な構造体の図である。
【
図6A】例示的な実施形態による、フレキシブルシンチレータパネルを含むセンサアレイの図である。
【
図6B-6E】1つ以上の実施形態による、フレキシブルシンチレータパネル内の光ファイバの構成例を示す図である。
【
図7】例示的な実施形態による物体を検査するプロセスをフローチャートの形態で示した図である。
【
図8】本明細書に記載の方法及びアセンブリを用いることができる航空機の製造及び保守方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、開示の概念が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を記載する。開示の概念は、これら具体的な詳細の一部又は全てが欠けていても実施可能である。他の例において、説明する概念が不必要に不明瞭にならないように、周知の処理動作については詳細には説明していない。いくつかの概念を、特定の例に関連させて説明するが、これらの例は限定を意図するものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の精神及び範囲に含まれうる代替例、変形例及び均等物を包含することを意図するものである。
【0028】
例えば、本開示の技術を、外板パネルなどの特定の航空機構造体に関連させて説明するが、本開示の技術及び機構は、他の様々なビークルや建物構造の様々なパネルアセンブリに適用することができる。以下の説明においては、本開示が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を提示している。本開示の特定の実施例は、これらの詳細事項のうちのいくつか又はすべてが無くとも実施することができる。他の例において、本開示が不必要に不明瞭にならないように、周知の処理動作については詳細には説明していない。本開示の様々な手法及び機構を、明瞭にするためにしばしば単数の形態で記載している。ただし、いくつかの実施形態は、別段の記載が無い限り、1つの手法の繰り返し、あるいは、機構を複数設けることを含む。
[概要]
【0029】
現在利用可能ないくつかの後方散乱X線システムによって生成される画像データを用いて形成される画像は、所望量のコントラストを有しない場合があるということが、様々な例示的な実施形態において認識及び考慮されている。所望量のコントラストが無いために、これらの後方散乱X線システムを用いて検査された物体内の欠陥を特定することが、非常に困難な場合がある。具体的には、実質的に平面状の形状を有する検出器では、実質的に非平面の形状を有する物体にX線ビームが当たった際に形成される後方散乱を、所望量検出できない場合があるということが、様々な例示的な実施形態において認識及び考慮されている。例えば、湾曲形状を有する物体に対するX線ビームの入射角は、この物体に沿ってX線ビームを移動させると、変化する。平らな形状の検出器では、X線ビームが物体に対してこのように様々な入射角を持つ場合に、所望量の後方散乱を検出できない場合がある。換言すれば、物体が湾曲形状を有し、検出器が平らな形状を有する場合、検出器が後方散乱の一部を逃がしてしまうおそれがある。
【0030】
検出器によって検出される後方散乱の量が、X線ビームが当たった物体の箇所に対応する画像内の画素の強度値を決定するということが、様々な例示的な実施形態において認識及び考慮されている。画像内の画素の強度値によって、画像内のコントラストのレベル及び画像の解像度(level of detail)が決まる。
【0031】
平らな形状を有する検出器によって生成される画像データは、湾曲形状を有する物体に沿ってX線ビームが移動する際に、形成された後方散乱の一部を検出器が逃すと、所望レベルよりも低いコントラスト及び/又は解像度となる場合がある。従って、現在利用可能な検出器に比べて、より多くの部分の後方散乱を捕捉するように構成された検出器が望ましいということが、様々な例示的な実施形態において認識及び考慮されている。
【0032】
従って、様々な例示的な実施形態は、後方散乱X線システムを用いて物体を検査するための方法及び装置を提供する。具体的には、様々な例示的な実施形態は、検査対象の物体の表面形状に実質的に適合するように形状を変化させることが可能な検出器を備えた後方散乱X線システムを提供する。
[例示的な実施形態]
【0033】
図を参照し、特に、
図1を参照すると、例示的な実施形態による検査環境をブロック図の形態で示している。これらの例示的な実施例において、検査環境100は、後方散乱検査システム102、コンピュータシステム103、及び、物体104を含む。後方散乱検査システム102は、非破壊検査(NDI)システム106の一例である。ここで、非破壊検査システム106などの「非破壊検査システム」とは、物体104などの物体を、当該物体に対して何ら悪影響を及ぼすことなく検査するように構成されたシステムである。具体的には、非破壊検査システムは、物体に何ら物理的変化を生じさせることなく物体を検査するように構成されている。
【0034】
これらの例示的な実施例において、後方散乱検査システム102を用いて、物体104を検査することができる。物体104は、任意の数の異なる種類の物体から選択することができる。例えば、限定するものではないが、物体104は、可動式プラットフォーム、固定プラットフォーム、空中ベースの構造体、陸上ベースの構造体、水上/水中ベースの構造体、宇宙ベースの構造体、又は他の適当な種類の構造体の形態を取ることができる。より具体的には、物体104は、航空機、船、戦車、人員運搬車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、ビークル、人工構造物、建物、又は他の適当な種類の物体であってよい。
【0035】
場合によっては、物体104は別の物体の一部であってもよい。例えば、場合によっては、物体104は、航空機の胴体の一部、翼、燃料タンク、橋の支持構造、宇宙ステーションの一部、船の船体、外板パネル、壁、ドア、又は他の適当な種類の一部であってもよい。
【0036】
後方散乱検査システム102は、物体104の検査中に、物体104のデータ107を生成する。データ107は、例えば、限定するものではないが、物体104の画像データ108を含む。後方散乱検査システム102は、データ107をコンピュータシステム103に送信する。コンピュータシステム103は、後方散乱検査システム102によって生成されたデータ107を受信して処理するように構成されている。この例示的な実施例において、後方散乱検査システム102は、可動プラットフォーム110、放射線発生システム112、及び、検出器システム114を含む。放射線発生システム112及び/又は検出器システム114は、例えば、可動プラットフォーム110と関連付けられている。1つのコンポーネントが別のコンポーネントと「関連付けられている」場合、この関連付けは、これらの図示の実施例では、物理的な関連付けである。例えば、検出器システム114などの第1コンポーネントは、可動プラットフォーム110などの第2コンポーネントに対して、当該第2コンポーネントに対する固定、第2コンポーネントに対する接合、第2コンポーネントへの搭載、第2コンポーネントに対する溶接、第2コンポーネントに対する繋止、及び/又は、他の適当な方法による第2コンポーネントに対する接続によって、関連付けられていると考えることができる。
【0037】
第1コンポーネントを、第3コンポーネントを用いて、第2コンポーネントに接続してもよい。また、第1コンポーネントが、第2コンポーネントの一部及び/又は延長部として形成されていることによって、第2コンポーネントに関連付けられていると考えることもできる。
【0038】
可動プラットフォーム110は、面の上を移動するように構成された任意のプラットフォームであってよい。この移動は、並進移動及び/又は回転を含みうる。可動プラットフォーム110は、個々の実施態様によって、様々な形態を取ることができる。例示的な一実施例において、可動プラットフォーム110は、例えばカートである。
【0039】
可動プラットフォーム110は、例えば、限定するものではないが、ホイール、ローラ、スライダ、トラックシステムなどの移動装置、及び、他の種類の移動装置を含む。これらの移動装置は、可動プラットフォーム110を面の上で移動させることができ、面の例としては、例えば、限定するものではないが、床、レールシステム、又は他の適当な種類の面がある。
【0040】
例示的な一実施例において、可動プラットフォーム110は、人間のオペレータが可動プラットフォーム110を押すことよって、移動させることができる。別の例示的な実施例において、可動プラットフォーム110は、可動プラットフォーム110内の推進システムを用いて移動させることができる。これらの例示的な実施例において、放射線発生システム112は、放射線源118及びコリメーター120を含む。放射線源118は、放射線122を生成するように構成されている。放射線122は、複数種類のビームを含む。放射線122は、所定数の異なる形態を取ることができる。これらの例示的な実施例において、放射線122は、X線、ガンマ線、又は、物体104の少なくとも一部を透過するように構成された他の適当な種類の放射線の形態を取ることができる。例示的な一実施例として、放射線源118は、X線124を生成して出射するように構成されたX線管の形態を取ることができる。X線124は、例えば、物体104の表面126に指向される。これらの例示的な実施例において、コリメーター120は、例えば、可動プラットフォーム110及び放射線源118のうちの少なくとも1つと関連付けられている。コリメーター120は、放射線122をフィルタリングして、特定の方向に対して平行に進む一部の放射線のみがコリメーター120を通過できるようにする装置である。具体的には、コリメーター120は、放射線122の一部を用いて、放射線ビーム134を形成する。ビーム134は、例えば、物体104の表面126に指向される。放射線122がX線124の形態である場合、ビーム134は、X線ビームと称される。
【0041】
例示的な一実施例において、コリメーター120は、回転可能ホイール128の形態を取る。回転可能ホイール128は、所定数のアパーチャ130を有する。本明細書において、「所定数の」アイテムとは、1つ以上のアイテムを意味する。例えば、所定数のアパーチャとは、1つ以上のアパーチャを意味する。従って、所定数のアパーチャ130は、場合によっては1個のアパーチャであり、場合によっては2個、3個、5個、又は他の適当な数のアパーチャである。
【0042】
回転可能ホイール128は、放射線源118が放射線122を出射する間、放射線源118の周りを回転するように構成されている。回転可能ホイール128が回転する際、放射線122の一部が、所定数のアパーチャ130のうちの所与のアパーチャを通過して、ビーム134を形成する。もちろん、他の例示的な実施例において、コリメーター120は、ガイド132を有していてもよい。ガイド132は、放射線が通過できるコリメーター120内のチャネルである。具体的には、コリメーター120は、放射線122の一部を吸収するか、放射線122の一部を散乱させるか、あるいはこれら2つの組み合わせを行うことによって、ガイド132の中心軸の方向に進む放射線のみがコリメーター120を通過するようにする。検出器システム114は、物体104にビーム134が当たったことに応じて形成される後方散乱136を、検出するように構成されている。後方散乱136は、ビーム134が物体104の表面126及び/又は物体104の表面近くに当たったことに応じてビーム134の少なくとも一部が散乱することによって、形成される。これらの例示的な実施例において、検出器システム114は、形状138を有する。検出器システム114の形状138は、選択形状140に変更できるように構成されている。例えば、選択形状140は、検査対象の物体104の表面126の表面形状である。物体104の表面126の表面形状は、例えば、限定するものではないが、凸形状、凹形状、波形、湾曲形状、L字形、U字形、ドーナツ形、又は、実質的に非平面である他の適当な種類の形状を含む。
【0043】
本明細書において、「~のうちの少なくとも1つ」という語句がアイテムのリストについて用いられる場合、リストアップされたアイテムのうちの1つ又はそれ以上を様々な組み合わせで用いてもよいことを意味し、また、リストの各アイテムの1つだけが必要な場合もあることを意味する。例えば、「アイテムA、アイテムB、及び、アイテムCのうちの少なくとも1つ」は、限定するものではないが、アイテムA、又は、アイテムAとアイテムBを含みうる。また、この例には、アイテムA、アイテムB、及びアイテムCである場合、アイテムB及びアイテムCである場合も含まれる。他の例において、「~の少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個のアイテムAと、1個のアイテムBと、10個のアイテムC;4個のアイテムBと7個のアイテムC;又は、他の適切な組み合わせであってもよい。これらの例示的な実施例において、検出器システム114の選択形状140は、所定数の異なる方法で特定することができる。例示的な一実施例として、選択形状140は、検査対象である様々な種類の物体の既知の幾何学形状のデータベースから特定することができる。例えば、選択形状140は、データベースに保存されている、物体104のデジタルコンピュータ支援設計(CAD)モデルを用いて特定することができる。いくつかの例示的な実施例において、選択形状140は、検査対象の物体104の画像を用いて特定することができる。選択形状140は、検出対象の物体104に対して検出器システム114を配置している間に生成されたセンサデータを用いて、特定することもできる。例えば、所定数のセンサシステムを用いて、画像、超音波画像、音響データ、レーダー画像、赤外線画像、及び/又は、選択形状140を特定するのに用いることができる他の適当な種類のセンサデータを生成することができる。もちろん、選択形状140は、上述した以外の他の方法で特定することもできる。
【0044】
例示的な一実施例において、検出器システム114は、所定数のセンサアレイ142及び構造体144を含む。この例示的な実施例において、所定数のセンサアレイ142は、構造体144と関連付けられている。センサアレイ146は、所定数のセンサアレイ142のうちの1つのセンサアレイの例である。センサアレイ146は、所定数の行および所定数の列に配置された所定数のセンサ148を含む。センサアレイ150は、所定数のセンサ148のうちの1つのセンサの例である。いくつかの実施形態において、検出器システムは、センサアレイ146などの単一のセンサアレイで構成される。いくつかの実施形態において、センサアレイ146の例は、センサ150などの単一のセンサで構成される。いくつかの実施形態において、センサ150のシンチレータ152は、光検出器154に接続された複数の光ファイバを含むフレキシブルなシンチレータパネルである。いくつかの例示的な実施例において、センサ150は、検出器と称することもできる。従って、所定数のセンサ148は、所定数の検出器であってもよく、センサアレイ146は、検出器アレイであってもよく、所定数のセンサアレイ142は、所定数の検出器アレイであってもよい。
【0045】
この例示的な実施例では、センサ150は、例えば、シンチレータ152及び光検出器154を含む。シンチレータ152は、例えば、後方散乱136に係る粒子などの電離放射線が当たると発光するように構成された材料を含む。このような材料は、シンチレータ材料と称される。シンチレータ152が発光する際には、シンチレータ152から光子が出射される。光検出器154は、シンチレータ152から出射される光子の数を測定するように構成されている。所定数のセンサアレイ142のすべての光検出器によって検出された光子の数によって、ビーム134が照射された物体104の特定箇所に対して検出器システム114が生成する値が決まる。この値は、例えば、ビーム134が照射された箇所に対応する物体104の画像内の画素の強度値である。検出器システム114の形状138は、ビーム134が物体104の表面126に沿って移動する際に、所望レベルの解像度及び所望レベルのコントラストを有する画像データの生成が可能となるような数の光子を所定数のセンサアレイ142の様々な光検出器が検出するように、変化させることができる。
【0046】
この例示的な実施例において、光検出器154は、例えば、MEMS(micro-electromechanical systems)技術に基づいた構成を有する。例えば、光検出器154は、光電子増倍管(PMT)、光電センサ、フォトダイオード、又は、MEMS技術を用いて実現される他の種類の光検出器のうちの1つから選択することができる。例示的な一実施例において、光検出器154は、マイクロ光電子増倍管(マイクロPMT又はμPMT)の形態を取る。センサ150がシンチレータ152及び光検出器154を含む場合、センサ150は、シンチレーション検出器又はシンチレーションカウンタの形態を取ることができる。もちろん、他の例示的な実施例において、センサ150は、固体検出器、半導体放射線検出器、又は他の適当な種類の検出器の形態を取ることもできる。
【0047】
この例示的な実施例において、検出器システム114の形状138は、構造体144を利用して変更することができる。例えば、構造体144は、所定数のフレキシブルジョイント158によって互いに接続された複数のセグメント156を含む。複数のセグメント156のうちの少なくとも1つのセグメントが、複数のセグメント156のうちの別のセグメントに対して、所定数のフレキシブルジョイント158のうちの所与のフレキシブルジョイントを中心軸として移動することにより、検出器システム114の形状138が変化する。構造体144がこの種の構成を有する場合、構造体144を「関節構造体(articulated structure)」と称することができる。
【0048】
複数のセグメント156のうちの所与のセグメントは、複数のセグメント156のうちの別のセグメントに対して、所定数の異なる方法で移動させることができる。例えば、これらのセグメントは、手作業で移動させることができる。人間のオペレータが、所定数のフレキシブルジョイント158のうちの1つ以上を中心軸として、複数のセグメント156のうちの1つ以上を手で移動させることができる。また、場合によっては、複数のセグメント156を、制御システムからの命令を受信するように構成された電気機械システムによって移動させてもよい。
【0049】
別の例において、構造体144は、変形可能な材料160の形態を取ることもできる。変形可能材料160が変形することにより、検出器システム114の形状138が変化する。変形可能材料160は、例えば、限定するものではないが、有機材料、シリコン系材料、又は、変形させることができる他の適当な種類の材料を含む。これらの例示的な実施例において、変形可能材料160は、手作業で変形させることができる。
【0050】
また、いくつかの例示的な実施例において、構造体144は、フレキシブル回路162の形態を取ることができる。フレキシブル回路162は、例えば、電力供給された際に構成が変化する、任意の数の配線及び制御部を含む。フレキシブル回路162の構成を変化させることによって、検出器システム114の形状138が変化する。このように、検出器システム114の形状138は、所定数の異なる方法で変化させることができる。検出器システム114の形状138は、構造体144を用いて再構成可能である。具体的には、形状138を選択形状140に変化させて、検出器システム114の形状138を物体104の表面126の表面形状に実質的に適合させることができる。いくつかの例示的な実施例では、電気機械システムを用いて、物体104のデジタルモデルから受信した入力に基づいて、構造体144を再構成することができる。他の例示的な実施例において、構造体144を手作業で再構成して、選択形状140に実質的に一致させてもよい。また、実施態様によっては、可動プラットフォーム110が物体104に対して移動する際に、構造体144を繰り返し再構成することができる。検出器システム114を伴って可動プラットフォーム110が物体104に対して移動するにつれて、物体104の画像やビデオなどのセンサデータを用いて検出器システム114の形状138を変化させ、形状138を物体104の表面126の表面形状に実質的に適合させることができる。検出器システム114は、後方散乱136を検出したことに応じて、データ107を生成する。データ107内の画像データ108は、例えば、ビーム134が指向された物体10の複数の箇所の其々に対応する画素の強度値を含む。
【0051】
検出器システム114は、通信リンク164を用いて、処理用のコンピュータシステム103にデータ107を送信する。通信リンク164は、無線通信リンク、有線通信リンク、光通信リンク、又は他の適当な種類の通信リンクであってよい。
【0052】
コンピュータシステム103は、実施態様によって、1つ以上のコンピュータを含みうる。コンピュータシステム103に2つ以上のコンピュータがある場合、これらのコンピュータは、ネットワークなどの媒体を用いて、互いに通信することができる。ネットワークは、有線通信リンク、無線通信リンク、又は、情報を交換するための他の適当な種類のリンクを用いることができる。
【0053】
データ107を用いて、物体104に欠陥166があるかどうかを判定することができる。欠陥166は、物体104の表面126又は物体104の内部に存在する可能性がある。例示的な一実施例において、コンピュータシステム103は、データ107を用いて、物体104の所定数の画像168を形成する。所定数の画像168をコンピュータシステム103及び/又は人間のオペレータによって分析することにより、物体104内の欠陥166の存在を検出するともに、その位置を特定することができる。もちろん、他の例示的な実施例において、検出器システム114によって生成されるデータ107内の画像データ108が、所定数の画像168の形態を取ることもできる。実施態様によっては、コンピュータシステム103は、例えば、放射線発生システム112、可動プラットフォーム110、及び、検出器システム114のうちの少なくとも1つを制御するように構成される。例えば、コンピュータシステム103は、可動プラットフォーム110及び/又はコリメーター120に命令を送信することにより、ビーム134のステアリングを制御することができる。場合によっては、コンピュータシステム103は、検出器システム114に命令を送信することにより、検出器システム114の形状138を制御することができる。例えば、コンピュータシステム103は、フレキシブル回路162に命令を送信することにより、検出器システム114の形状138を変更することができる。
図1に示した検出器システム114の様々な構成によれば、放射線源118からの放射線122の必要な出射量が少なくて済む。また、検出器システム114の形状138が再構成可能であるため、放射線源118のサイズ、ならびに、後方散乱検査システム102全体のサイズを、小さくすることができる。加えて、MEMS(micro-electromechanical systems)技術を用いることにより、所定数のセンサアレイ142を、費用対効果の高い効率的な方法で製造することができる。
【0054】
図1に示した検査環境の例示は、例示的な実施形態が実現される態様について、物理的又は構造的な限定を示唆するものではない。図示されたコンポーネントに加えて、又は、これらのコンポーネントに代えて、他のコンポーネントを用いることもできる。いくつかのコンポーネントは、任意であってもよい。また、図示したブロックは、いくつかの機能的なコンポーネントを表している。例示的な実施形態においてこれらのブロックを実施する際は、1つ又は複数を組み合わせたり、分割したり、組み合わせてから異なるブロックに分割したりすることができる。
【0055】
いくつかの例示的な実施例において、所定数のセンサアレイ142のうちのある種のセンサは、シンチレータを含まなくともよい。代わりに、所定数のセンサアレイ142のうちの各センサアレイに、単片のシンチレータ材料を載置してもよい。場合によっては、単片のシンチレータ材料を、所定数のセンサアレイ142のうちのすべてのセンサアレイに載置してもよい。
図2を参照すると、同図には、例示的な実施形態による検査環境の図が示されている。
図2において、検査環境200は、
図1の検査環境100の一実施態様の例である。後方散乱検査システム202は、検査環境200内で航空機204の検査を行うように構成されている。後方散乱検査システム202は、
図1の後方散乱検査システム102の一実施態様の例である。この例示的な実施例において、後方散乱検査システム202は、後方散乱X線システムである。また、航空機204は、
図1における物体104の一実施態様の例である。図示のように、後方散乱検査システム202は、可動プラットフォーム206、放射線発生システム208、検出器システム210、及び、コンピュータシステム212を含む。可動プラットフォーム206、放射線発生システム208、検出器システム210、及び、コンピュータシステム212は、其々、
図1における可動プラットフォーム110、放射線発生システム112、検出器システム114、及び、コンピュータシステム103の実施態様の例である。この例示的な実施例において、放射線発生システム208及び検出器システム210は、可動プラットフォーム206に接続されている。コンピュータシステム212は、可動プラットフォーム206から離間して位置している。放射線発生システム208は、X線を生成するとともに、これらのX線の一部を、X線ビームの形態で、航空機204の胴体214に指向するように構成されている。具体的には、放射線発生システム208は、X線ビームを、航空機204の胴体214の表面216に指向する。表面216は、胴体214の外面である。また、放射線発生システム208は、X線ビームを胴体214の表面に沿って移動させて、胴体214の表面216に対するX線ビームの入射角を変化させることができる。
【0056】
X線ビームは、例えば、少なくとも一部が、航空機204の胴体214の表面216を透過する。検出器システム210は、X線ビームが胴体214に当たったことに応じて形成される後方散乱を検出するように構成されている。検出器システム210は、画像データを生成し、これが、無線通信リンク218を介して、コンピュータシステム212に送信される。検出器システム210については、
図3~
図4に詳しく示す。次に
図3を参照すると、同図には、例示的な実施形態による、後方散乱検査システムによって検査されている航空機の断面図が示されている。この例示的な実施例では、
図2の航空機204の線3-3に沿う断面図が、後方散乱検査システム202と共に図示されている。この図では、放射線発生システム208がよりはっきりと見えるように、後方散乱検査システム202の可動プラットフォーム206は図示していない。
【0057】
この例示的な実施例において、放射線発生システム208は、放射線源300、ハウジング301、回転可能ホイール302、及び、モータ304を含む。放射線源300は、
図1の放射線源118の一実施態様の例である。図示のように、放射線源300は、ハウジング301内にある。ハウジング301は、例えば、
図2に示した可動プラットフォーム206に接続されている。放射線源300は、X線306を生成して出射するように構成されている。回転可能ホイール302は、放射線源300と関連付けられている。回転可能ホイール302は、
図1の回転可能ホイール128の一実施態様の例である。回転可能ホイール302は、所定数のアパーチャ308を有する。モータ304の動作は、所定数のアパーチャ308が放射線源300の周りで回転するよう回転可能ホイール302を回転させるように構成されている。
【0058】
回転可能ホイール302が回転すると、X線306の一部が、所定数のアパーチャ308のうちの所与のアパーチャを通過してX線ビーム310を形成する構成とされている。X線ビーム310は、胴体214の表面216に指向される。X線ビーム310のX線は、胴体214に当たったことに応じて散乱する。これらの散乱X線が、後方散乱312を形成する。検出器システム210は、後方散乱312を検出する。
【0059】
図示のように、検出器システム210は、形状314を有している。形状314は、再構成可能である。換言すれば、検出器システム210の形状314は、変更することができる。この例示的な実施例において、形状314は、胴体214の表面216の表面形状316に実質的に適合するように構成されている。具体的には、形状314は、放射線発生システム208に対して凸形状であり、これは、放射線発生システム208に対して同じく凸形状である胴体214の表面216の表面形状316に類似している。この例示的な実施例において、検出器システム210は、センサアレイ318及び構造体320を含む。構造体320の形状は、検出器システム210の形状314である。従って、検出器システム210と構造体320との両方が、形状314を有する。
【0060】
センサアレイ318は、フレキシブルシンチレータ321及び光検出器350を含む。本明細書において、フレキシブルシンチレータは、「フレキシブルシンチレータパネル」又は「フレキシブルシンチレータシート」と称する場合がある。フレキシブルシンチレータ321は、複数の光ファイバからなる1つの構造体で構成することができるが、部分322、324、326、328、及び330を含むシンチレータ321の互いに異なる部分を、破線で区切って示している。構造体320は、複数のセグメント332を含む。複数のセグメント332は、セグメント334、336、338、340、及び、342を含む。各セグメント334、336、338、340、及び、342は、其々、シンチレータ321の対応する部分322、324、326、328、及び、330と関連付けられている。セグメント334、336、338、340、及び、342は、例えば、フレキシブルジョイントによって、互いに接続されている。例えば、セグメント334は、セグメント334とセグメント336とを接続するフレキシブルジョイントを中心軸として、セグメント336に対して動くように構成されている。シンチレータ321の各部分は、構造体320の対応するセグメントと共に動く。従って、セグメント334がセグメント336に対して移動する際には、シンチレータ321の対応する部分322も、部分324に対して移動する。これにより、構造体320のセグメントが移動する際は、シンチレータ321の形状が、構造体320の形状314に、少なくとも実質的に適合する。複数のセグメント332のうちの1つ以上のセグメントを互いに対して移動させることにより、構造体320は、胴体214の表面216の表面形状316に実質的に適合する形状314を有することができる。例えば、複数のセグメント332を接続している1つ以上のフレキシブルジョイントにおいて構造体320を屈曲させて、構造体320の形状314を、胴体214の表面216の表面形状316に実質的に適合するように変化させることができる。これにより、シンチレータ321の形状は、表面形状316に少なくとも実質的に適合することができ、シンチレータ321の各部分は、シンチレータ321の他のすべての部分と、胴体214の表面から実質的に等距離となる。既に述べたように、フレキシブルシンチレータ321は、例えば、複数の光ファイバを含む。これらの光ファイバを、積み重ねたり、織り合わせたり、あるいはその他の方法で、合わせて配置することにより、フレキシブルパネルが形成される。実施形態によっては、光ファイバを集めて1つ以上の束にしてもよい。実施形態によっては、光ファイバの1つ以上の束を、光検出器に連結させてもよい。実施形態によっては、各束を、別々の光検出器に連結させてもよい。フレキシブルシンチレータの構成のさらなる詳細については、
図6A~
図6Eを参照して詳述する。
図3に示すように、シンチレータ320の光ファイバは、束352に集められて、光検出器350に連結されている。様々な実施形態において、光ファイバは、後方散乱312からエネルギーを吸収して、発光する。光ファイバは、次に、シンチレータ321によって生成された光の総量を測定するように構成されたMEMS技術によるPMTなどの光検出器350に、生成された光を送る。次に
図4を参照すると、同図には、例示的な実施形態による、後方散乱検査システムによって検査されている航空機の断面図が示されている。この例示的な実施例では、後方散乱検査システム202が胴体214の内部400に移動した状態の、
図3の航空機204の断面図が図示されている。この例示的な実施例において、放射線発生システム208は、X線ビーム310を胴体214の表面402に指向するように構成されている。表面402は、胴体214の内面である。X線ビーム310が胴体214に当たったことに応じて、後方散乱404が形成される。図示のように、検出器システム210の形状314は、当該形状314が、胴体214の表面402の表面形状406に実質的に適合するように、変更されている。具体的には、表面402の表面形状406は、放射線発生システム208に対して凹形状を有している。検出器システム210の構造体320が複数のセグメント332の間の1つ以上のフレキシブルジョイントにおいて屈曲されることにより、構造体320の形状314は、胴体214の表面402の凹形状と同様な、放射線発生システム208に対する凹形状となっている。このように、検出器システム210の形状314が胴体214の表面402の表面形状406に実質的に適合する際には、シンチレータ321の形状も、表面402の表面形状406に実質的に適合し、シンチレータ321の各部分を、シンチレータ321の他のすべての部分に対して、胴体214の表面402から、より等距離になるよう配置することができる。この結果、画像形成の際の収差及び糸巻き形ひずみ(pincushion effects)が、低減又は解消される。また、後方散乱検査システム202の検出器システム210及び放射線発生システム208を、特に、より制約のある、または大きさの限られた場所において、より表面402に近付けることができる。このように、検出器システム210を表面402により近付けて配置し、検出器システム210によって捕捉及び検出される後方散乱404の量を増やすことによって、画像のコントラストを高めることができる。
図3及び
図4は、胴体214をスキャンすることに関連させて述べているが、
図1を参照して前述したように、検出器システム210は、パイプ、貯蔵タンク、航空機の翼などの、任意の数の物体又は物体の部品をスキャンするために実装することができる。既存のシステムでは、複数のセンサアレイが、検出器システム210に実装される場合がある。例えば、各セグメントが、個別のセンサアレイと関連付けられており、各センサアレイが、シンチレータ及び光検出器を含む。これにより、各センサアレイは、形状314内の対応する構造体セグメントと共に動く。これによれば、センサアレイの形状を、スキャンされる物体の形状に適合させることにより、画像のコントラスト及び解像度が改善されるが、各センサアレイが他のセンサアレイとは別体の構造であるため、センサアレイ間に隙間が残る潜在的可能性がある。これによって、解像度が低下する可能性があり、コンピュータシステムによって画像の一部を外挿する必要があるが、これが正確でない可能性がある。
【0061】
これに対し、記載のシステムは、構造体320の全寸法にわたって延びる単一の連続構造体からなるシンチレータを用いる。従って、シンチレータ321は、シンチレータの所与の領域内のすべての後方散乱放射線を捕捉することができる。また、シンチレータ321の柔軟性により、より良い幾何学的構成、及び、検査される物体の実際の寸法により近い、より正確な画像形成を実現することもできる。
【0062】
また、シンチレータ321の光ファイバの構造によれば、所与の領域をカバーするシンチレータ321によって生成されるすべての光を、単一の光検出器が測定する構成を実現することができる。さらに、光検出器は、放射線発生システム208から離間させて配置することができる。これは、例えば、スキャンされる物体内又はその周囲に、限られた空間しか無い状況において有利である。従って、記載のシステムは、よりコンポーネント数の少ない検出システムを提供することにより、複雑さが低減された設計と構成の柔軟性を実現することができ、結果として、コストの削減と動作効率の向上を図ることができる。光検出器をシンチレータから離間させて配置することは、爆発性又は発火性の混合物を発生させ得る量の可燃性のガス又は蒸気が空気中に存在する、あるいは存在する可能性があるI種防爆区画(Class I locations)のような環境においても、有利である。このような危険な環境では、防爆仕様の機器又は装置を使用する必要がある。従って、光検出器のような電気部品を、危険な環境から離間させて配置することによって、火花又は閃光によって可燃性のガス又は蒸気を発火させるおそれを低減することができる。
【0063】
複数のセンサアレイを含む既存のシステムの構成は、このような後方散乱検出器のサイズ及び構成を制限することにもなる。本明細書に記載のシステムは、検出器システムの構造体から離間して配置されるセンサアレイの数を低減させることができるため、よりフレキシブル且つ変形させやすい構造体を、より複雑な表面形状を有する物体の表面形状に適合するように、実現することができる。また、燃料タンクや配管などのより小さい物体をスキャンするためには、記載のシステムでは、フレキシブルシンチレータ及び構造体のサイズを小さくすればよい。実現可能性のある構造体の構成を、
図5A及び
図5Bを参照して、以下にさらに詳述する。
【0064】
図5Aを参照すると、同図には、例示的な実施形態による検出器システムの図が示されている。この例示的な実施例において、検出器システム500は、
図1の検出器システム114の一実施態様の例である。図示のように、検出器システム500は、構造体504に関連付けられたフレキシブルシンチレータパネルを備えたセンサアレイ502を有する。この例において、構造体504は、変形可能材料の形態を取る。構造体504は、当該構造体504が所望の形状を有するように、変形されるよう構成されている。この図示の例において、構造体504は、波形506を有する。
図5Aに示すように、構造体504及びセンサアレイ502の構成は、二次元で示されている。ただし、様々な実施形態において、記載の構造の形状又は形態は、三次元的に調整してもよい。
【0065】
次に、
図5Bを参照すると、同図には、例示的な実施形態による、検出器システム210の構造体320などの、検出器システムの再構成可能な構造体550が図示されている。この例示的な実施例において、構造体550は、3列3行に配置された所定数のセグメント552を含む。所定数のセグメント552は、セグメント554、556、558、560、562、564、566、568、及び、570を含む。所定数のセグメント552のうちの各セグメントは、例えば、所定数のフレキシブルジョイントを介して互いに接続されており、各セグメントは、隣接するセグメントに対して移動可能となっている。従って、各セグメントは、各ジョイントに沿って、複数次元にわたって移動可能である。これによれば、様々な物体の表面形状に適合するように構造体の形状を再構成する際の扱いやすさが向上する。所定数のセグメント552のうちの各セグメントは、フレキシブルシンチレータを取り付け又は載置する面570を含む。なお、構造体は、長さ方向及び幅方向に沿って(in length and width)、任意の数のセグメントを含むことができる。
図5Bに示した各セグメントは、概ね正方形の面570を含むが、様々な実施形態において、セグメントは、矩形、三角形、円形などの様々な幾何学形状の面を含むことができる。さらに、セグメントは様々な寸法に構成することができる。実施形態によっては、様々な形状のセグメントを組み込むこと及び/又はセグメントのサイズを小さくすることによって、構造体550の最終形状構成において、より細かい細分性(granularity)を実現することができる。フレキシブルシンチレータにおける光ファイバの構成の様々な例を、
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、及び、
図6Eを参照して説明する。
図6Aを参照すると、同図には、1つ以上の実施形態による、フレキシブルシンチレータパネル610を含むセンサアレイ600を示している。前述したように、様々な実施形態において、センサアレイ600は、センサアレイ312であり、フレキシブルシンチレータ610は、シンチレータ320である。前述したように、シンチレータ610は、例えば、複数の光ファイバ606を含む。いくつかの実施形態において、光ファイバ606は、半硬質のケーシング620内に収容されている。光ファイバ606は、さらに、図示のように、束602及び束604などの1つ以上の束にまとめられている。いくつかの実施形態において、光ファイバの束は、例えば0.1~5ミリメートルの範囲にわたる光ファイバの厚みに応じて、約50~500本の光ファイバを含む。ただし、様々な実施形態において、適当なサイズの光ファイバを任意の数用いることができる。これらの束は、光検出器650に連結され、当該光検出器は、シンチレータファイバによって生成されてファイバから光検出器650に送られる光の量を検出するように構成されている。前述したように、光検出器650は、例えば、MEMS技術に基づく光電子増倍管(PMT)である。光ファイバの端部を研磨して、ファイバの端部における光の散乱を抑制するとともに、光検出器への光伝送における光学的結合の効率を高めることもできる。
【0066】
様々な実施形態において、光ファイバは、例えば、ポリビニルなどの炭素系材料を含む有機繊維である。光ファイバは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)及びその他のフッ素化ポリマーを含むその他のプラスチック材料によって形成してもよい。いくつかの実施形態において、光ファイバは、例えば、シリカ、又は、フッ化ジルコン酸塩、フッ化アルミン酸塩、カルコゲナイドガラスなどの他の材料、ならびに、サファイアのような結晶材料から形成されたガラス光ファイバを含む。光ファイバ用に選択される材料は、例えば屈折率や可撓性の度合いなどの、フレキシブルシンチレータに所望される構造特性によって異なる。様々な実施形態において、無機結晶などのシンチレータ材料を、製造中に、プラスチック又はその他の材料に注入することができる。1つ以上の実施形態によれば、一実施例において、
図6Bのシンチレータ610-Aの構成に示すように、光ファイバを複数層に重ねてもよい。シンチレータ610-Aは、シンチレータ610の一部の一実施例である。
図6Bには、シンチレータ610-Aの線4-4に沿った横断面図が示されており、層612、614、及び616を含む、光ファイバ606の3つの層が示されている。実施形態によっては、シンチレータ610は、
図6Bに示したものよりも多くの光ファイバ層又は少ない光ファイバ層を含んでいてもよい。図示のように、例えば、光ファイバの層は、互いに位置ずれしており、1つの層の光ファイバは、隣接する層の別の光ファイバと位置ずれしている。例えば、光ファイバは、隣接する層の他の2つの光ファイバの間に位置している。ただし、実施形態によっては、光ファイバを、隣接する層の光ファイバと同じ位置に積み重ねてもよい。実施形態によっては、光ファイバを、1つ以上の隣接する光ファイバと接合又は連結することにより、シンチレータ610の構造を維持したり、光ファイバの相対移動を抑制したりすることができる。例えば、1つの層の光ファイバを、同じ層の隣接する光ファイバと連結してもよい。実施形態によっては、さらに、光ファイバの層を、隣接する他の層に連結してもよい。例えば、層612内の光ファイバを、層614内の隣接する光ファイバと連結してもよい。様々な実施形態において、光ファイバは、ケーシング620に収納されている。ケーシング620は、例えば、シリコーン又はプラスチックなどの透明な半硬質材料によって形成されている。いくつかの実施形態において、ケーシング620は、光ファイバ層の構造を含み、それを維持する役割を果たしつつ、その柔軟な動きや再構成を許容する。実施形態によっては、1つ以上の光ファイバを、ケーシング620の内面に、取り付けるか、接着してもよい。これにより、光ファイバとケーシングとの間の大幅な動きを防止するとともに、シンチレータの構造的支持をより強固にすることができる。例えば、層612を、ケーシング620の内面621に連結することができる。
図6Cは、シンチレータ610-B内の光ファイバの別の構成例を示している。
図6Cは、シンチレータ610の一部の線4-4に沿う断面図の別の実施形態を示している。シンチレータ610-Bで示すように、実施形態によっては、層内の光ファイバをグループ分けして、ケーシング620内でクラスターにしてもよい。ケーシング内のこのようなクラスターを、「被覆クラスター」と称する場合もある。クラスター611及び613は、
図6Cに破線で示しており、各クラスターは6本の光ファイバを含む。実施形態によっては、ケーシング620内の各クラスターは、追加の光ファイバ、又は、より少ない数の光ファイバを含むものであってもよい。例えば、光ファイバは、3本の光ファイバからなるクラスターにグループ分けしてもよい。被覆クラスターは、接着剤でまとめてもよいし、材料片で結束してもよいし、他の機械的手段でまとめてもよい。実施形態によっては、さらに、隣接するクラスター同士を、連結させてもよい。実施形態によっては、ケーシング620内のファイバのクラスターを、ケーシング620の内面621に連結してもよい。被覆クラスター611と613とは、並べて示されているが、他の層内の追加のクラスターが、ケーシング620内でクラスター611及び613の上あるいは下に配置されていてもよい。実施形態によっては、1本以上の単体の光ファイバが、被覆クラスター611及び613の周囲に配置されていてもよい。例えば、
図6Cには、単体の光ファイバ615が示されている。様々な実施形態において、単体の光ファイバ615も、被覆クラスターのうちの1つ以上、例えば、611又は613に、接着又は連結してもよい。様々な実施形態において、光ファイバのクラスター(
図6Cに示す)を、ケーシング620内で、光ファイバの層(
図6Bに示す)又は光ファイバの他の構造体と組み合わせてもよい。ケーシング620は、さらに、構造体550のセグメント552の面570などの、フレキシブル構造体の表面に取り付けるための取り付け面として、構成することができる。いくつかの実施形態において、ケーシング620は、接着剤、あるいは、フック、ベルクロ(VELCRO)などの面ファスナ、スナップ、ボタン、インサート、可撓性の接着材やテープなどを含む他の機械的手段で、セグメントの面に取り付けることができる。
【0067】
図6D及び
図6Eは、フレキシブルシンチレータのケーシング内における光ファイバの代替の構成例を示している。様々な実施形態において、光ファイバ層内の光ファイバは、より高い構造的なまとまり又は安定性を得るために、織られ、あるいは織り合わされた構造又は構成にすることができる。
図6Dは、平織り構造とされた光ファイバの層630の一部を、平面
図630-A、及び、線A-Aに沿う断面
図630-Bで示している。
図6Eは、畝織り構造とされた光ファイバの層640の一部を、平面
図640-A、及び、線B-Bに沿う断面
図640-Bで示している。様々な実施形態において、層は、バスケット織、綾織りなどを含む他の既知の織り構造のうちの任意の1つに構成することができる。また、二軸織構造に加えて、光ファイバは、様々な三軸織構造又は多重織構造とすることもできる。個々の織構造によってもたらされる所望の構造特性に基づいて、様々な織構造を選択することができる。また、光ファイバの構造特性や制限に基づいて、織構造を選択することもできる。光ファイバ層の織構造は、より高い構造的まとまりをもたらすため、1つ以上の層で光ファイバの織構造を実現している実施形態のいくつかにおいては、ケーシング620などの半硬質ケーシング内に、これらの層を収容しなくともよい。記載の実施形態に提示したような層状配置又はケーシング収容束によって、複数層の光ファイバを含むことにより、光検出における感度が高くなるとともに、コントラスト及び/又はシャープネスが向上する。第1に、より多くの光ファイバを用いることにより、特に、よりエネルギーが高い光子や、より大きい入射角でシンチレータに当たる光子に関して、後方散乱光子の吸収の確率が高くなる。従って、捕捉且つ検出される後方散乱光子の量が増すことで、画像のコントラストが増す。また、より高いエネルギーの後方散乱光子は、様々な層又は束の内のより多くの光ファイバを励起しうる。複数層の光ファイバを用いることにより、強い後方散乱が、物体からより離れた位置に配置されたファイバをさらに照らすため、シンチレーションにおける細分性が増す。ひいては、最終画像の解像度が向上する。光子エネルギーに対する感度が高いシンチレータでは、放射線源から出射すべきX線エネルギーの必要量が少なくて済み、結果として、放射量及びワット数を指数関数的に小さくすることができる。さらに、放射線からの必要な遮蔽が少なくて済み、コンポーネントに必要な冷却も少なくて済む。全体的に見て、記載のシステムでは、消費電力及び材料の使用量が低減され、コストが大幅に削減され、安全性が向上する。
【0068】
図7を参照すると、同図には、例示的な実施形態による、物体を検査するためのプロセス700が、フローチャートの形態で示されている。
図7に示したプロセスは、
図1の物体104などの物体を検査するために用いることができる。本プロセスは、例えば、限定するものではないが、
図1の後方散乱検査システム102を用いて実施することができる。当該プロセスは、後方散乱検査システム内の検出器システムの選択形状を特定すること(動作702)によって開始する。動作702において、検出器システムは、例えば、
図1の検出器システム114である。当該プロセスでは、次に、検出器システムの形状を、選択形状に変更する(動作704)。動作704において、検出器システムの形状は、所定数の様々な方法で、検出器システムの構造体を用いて変更することができる。構造体は、例えば、
図1の構造体144である。構造体が所定数のフレキシブルジョイントによって互いに接続された複数のセグメントである場合には、動作704は、複数のセグメントのうちの少なくとも1つを、複数のセグメントのうちの別のセグメントに対して、所定数のフレキシブルジョイントのうちの所与のフレキシブルジョイントを中心軸として移動させることによって、実行することができる。構造体が変形可能材料である場合には、動作704は、変形可能材料を変形させることによって、実行することができる。また、構造体がフレキシブル回路である場合には、動作704は、フレキシブル回路に命令を送って、フレキシブル回路の構成を変更することによって、実行することができる。フレキシブル回路の構成を変更することによって、検出器システムの形状を変更することができる。次に、当該プロセスでは、物体の表面に向けてビームを出射する(動作706)。ビームは、後方散乱検査システムの放射線源から出射される放射線の一部を用いて、形成される。次に、当該プロセスでは、選択形状を有する検出器システムを用いて、ビームが物体に当たったことに応じて形成される後方散乱を検出する(動作708)。後方散乱は、ビームが物体の表面及び/又は物体の表面下に当たった際に、ビームの少なくとも一部が散乱することに応じて形成される。当該プロセスでは、後方散乱を検出したことに応じて、画像データを生成する(動作710)。当該プロセスは、次に、画像データを用いて物体の画像を形成する(動作712)。当該プロセスでは、次に、物体の画像を用いて、物体に欠陥があるかどうかを判定し(動作714)、この後、当該プロセスは終了する。図示された様々な実施形態のフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態における装置及び方法のいくつかの考えられる実施態様の構造、機能、及び動作を示すものである。この点に関し、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、及び/又は、操作や工程の一部を表す場合もある。例えば、これらのブロックのうち1つ又は複数は、プログラムコードとして実現してもよいし、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムコードとハードウェアの組み合わせで実現してもよい。ハードウェアで実現する場合には、そのハードウェアは、例えば、フローチャートやブロック図に示した1つ以上の動作を実行するように製造あるいは構成された集積回路の形態であってもよい。
【0069】
例示的な実施形態の代替の実施態様のいくつかでは、ブロックで示した機能は、図に示した順とは異なる順で実行してもよい。例えば、場合によっては、関連する機能に応じて、連続するブロックとして示されている2つのブロックは、実質的に同時に実行してもよいし、逆の順序で実行してもよい。また、フローチャート又はブロック図に示したブロックに、さらに他のブロックを追加してもよい。
【0070】
このように、様々な例示的な実施形態は、物体を検査するための方法及び装置を提供する。例示的な一実施形態において、装置は、放射線源、コリメーター、及び、検出器システムを含む。放射線源は、放射線を出射するように構成されている。コリメーターは、放射線源から出射された放射線の一部を用いて、ビームを形成するように構成されている。ビームは、物体の表面に指向される。検出器システムは、ビームが物体に当たったことに応じて形成される後方散乱を検出するように構成されている。検出器システムの形状は、選択形状に変更できるように構成されている。
【0071】
様々な例示的な実施形態は、より小型の放射線源を後方散乱検査システムに使用することができる検出器システムを提供する。また、電子及び/又は機械コンポーネントの数が少なく且つ形状が再構成可能な検出器システムによれば、後方散乱検査システム全体のサイズを小さくすることができる。さらに、MEMS(micro-electromechanical systems)技術に基づく光検出器を検出器システムに用いることによって、現在利用可能な検出器システムと比べて、検出器システムのコストを削減することができる。
[航空機における実施例]
【0072】
本開示の実施例を、
図2に示す航空機204に関連させ、また、
図8に示す航空機の製造及び保守方法800に関連させて説明する。前述したように、
図2は、検査環境200内の航空機204の概略図であり、当該航空機は、本明細書に記載のシステム及び方法を用いて検査することができる様々なコンポーネント又は構造体を含みうる。
図2に示すように、航空機204は、翼220を備えた胴体214を含む。航空機204は、翼220によって支持されたエンジン230も含む。航空宇宙産業の例を示しているが、本明細書に開示の原理は、例えば自動車産業などの他の産業に適用してもよい。従って、航空機204に加えて、本明細書に開示の原理は、他の輸送体、例えば、陸上車両、船舶、宇宙船などに適用してもよい。
【0073】
図8は、本明細書に記載の方法及びアセンブリを用いることができる航空機の製造及び保守方法のブロック図である。生産開始前の工程として、例示的な方法800は、航空機204の仕様決定及び設計(ブロック804)と、材料調達(ブロック806)とを含む。製造中には、航空機204の部品及び小組立品の製造(ブロック808)、及び、検査システム統合(ブロック810)が行われる。説明した装置及びこれに対応する動作方法は、航空機204の仕様決定及び設計(ブロック804)、材料調達(ブロック806)、部品及び小組立品の製造(ブロック808)、及び/又は、航空機204の検査システム統合(ブロック810)のうちのいずれにおいて実施してもよい。その後、航空機204は、認証及び納品(ブロック812)を経て、就航(ブロック814)の期間に入る。就航期間中は、航空機204は、定期的な整備及び保守(ブロック816)のスケジュールに組み込まれる。定期的な整備及び保守は、航空機204の1つ以上の検査システムの改良、再構成、改修等を含みうる。また、説明した装置及びこれに対応する動作方法は、認証及び納品(ブロック812)、就航(ブロック814)、及び/又は、定期的な整備及び保守(ブロック816)うちのいずれにおいて実施してもよい。例示的な方法800の各プロセスは、検査システムインテグレータ、第3者、及び/又は、オペレータ(例えば顧客)によって、実行又は実施することができる。なお、検査システムインテグレータは、限定するものではないが、航空機メーカ、及び、主要検査システム下請業者をいくつ含んでいてもよい。第三者は、限定するものではないが、売主、下請業者、及び、供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
[結び]
【0074】
上記の説明においては、開示の概念が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を提示しているが、本開示は、これらの詳細事項のいくつか又はすべてが無くても実施可能である。他の例では、既知の装置及び/又は処理についての詳細を省いているが、これは、本開示が不必要に曖昧になることを避けるためである。本開示を、具体的な実施例に言及して具体的に図示及び説明したが、本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、開示の実施例の形態及び詳細の変更が行えることは、当業者に明らかであろう。様々な例示的な実施形態の説明は、例示及び説明のために提示したものであり、全てを網羅することや、開示した形態での実施に限定することを意図するものではない。当業者には、多くの改変や変更が明らかであろう。従って、本開示は、本開示の真の精神及び範囲に含まれるすべての変形例及び均等例を含むものと解釈されることを意図している。従って、本明細書に記載している例は、例示的であると解釈されるべきであり、限定的に解釈されるべきではない。
【0075】
さらに、本開示は、以下の付記による実施形態を含む。
【0076】
付記1: 後方散乱(312)を検出するための装置(202)であって、
第1形状から第2形状に変化するように構成された形状を有する構造体(320、550)と、
前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネル(321)を含むセンサアレイ(318)と、を含み、前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記構造体の形状に適合するように構成されており、
前記装置は、物体(214)に放射線ビーム(310)が当たったことに応じて形成される前記放射線ビームの後方散乱を検出するように構成されている、装置。
【0077】
付記2: 前記フレキシブルシンチレータパネルは、複数の光ファイバ(606、615)を含む、付記1に記載の装置。
【0078】
付記3: 前記センサアレイは、前記複数の光ファイバに連結された光検出器(350)をさらに含む、付記2に記載の装置。
【0079】
付記4: 前記複数の光ファイバは、半硬質のケーシング(620)に収容されている、付記2に記載の装置。
【0080】
付記5: 前記複数の光ファイバは、前記半硬質のケーシング内で、1つ以上の層(612、614、616)状に配置されている、付記2に記載の装置。
【0081】
付記6: 前記複数の光ファイバは、1つ以上の層状に配置されており、前記1つ以上の層のうちの第1層内の光ファイバは、織り合わせ構造(630、640)を構成している、付記2に記載の装置。
【0082】
付記7: 前記センサアレイは、光検出器をさらに含み、
前記複数の光ファイバは、1つ以上の束(602、604)にまとめられており、前記1つ以上の束の各々は、前記光検出器に連結されており、
前記光ファイバのシンチレーションによって生成される光は、前記光ファイバを通って、前記光検出器に伝送される、付記2に記載の装置。
【0083】
付記8: 前記構造体は、所定数のフレキシブルジョイントによって互いに接続された複数のセグメント(552)を含み、前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つのセグメントが、前記複数のセグメントのうちの別のセグメントに対して、前記所定数のフレキシブルジョイントのうちの所与のフレキシブルジョイントを中心軸として移動することにより、前記構造体の前記形状が変化する、付記1に記載の装置。
【0084】
付記9: 前記構造体の前記形状は、三次元的に変化するように構成されている、付記8に記載の装置。
【0085】
付記10: 前記構造体(504)は、変形可能材料を含み、前記変形可能材料の変形によって、前記構造体の前記形状が変化する、付記1に記載の装置。
【0086】
付記11: 前記装置の前記第2形状は、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合し、
前記装置の前記第1形状と前記装置の前記第2形状とは異なっており、
前記装置の前記第2形状は、前記装置の選択形状である、付記1に記載の装置。
【0087】
付記12: 可動プラットフォーム(110)が前記装置を前記物体に対して移動させる際に、前記構造体を繰り返し再構成するように構成された電気機械システムをさらに含み、
前記可動プラットフォームは、前記装置と関連付けられており、
前記電気機械システムは、前記センサアレイからのデータを用いて、前記構造体を繰り返し再構成し、
前記電気機械システムは、前記装置の前記形状が、前記物体の表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合するように変化するよう、前記構造体を繰り返し再構成する、付記1に記載の装置。
【0088】
付記13: 少なくとも一部が前記物体を透過するように構成されたX線を含む放射線(306)を出射するように構成された放射線源(300)と、
前記放射線源によって出射された前記放射線の一部を用いて、前記物体の表面に指向される前記放射線ビーム(310)を形成するように構成されたコリメーター(120)と、をさらに含む、付記1に記載の装置。
【0089】
付記14: X線(306)を出射するように構成されたX線管(300)と、
前記X線管によって出射される前記X線の一部を用いて、物体(214)の表面に指向されるX線ビームを形成するように構成されたコリメーター(120)と、
前記X線ビームが前記物体に当たったことに応じて形成される前記X線ビームの後方散乱を検出するように構成された検出器システムと、を含む後方散乱X線システム(202)であって、前記検出器システムは、
第1形状から第2形状に変化するように構成された形状を有する構造体(320、550)と、
前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネル(610)を含むセンサアレイ(600)と、を含み、
前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記構造体の形状に適合するように構成されている、後方散乱X線システム。
【0090】
付記15: 前記フレキシブルシンチレータパネルは、複数の光ファイバを含み、
前記センサアレイは、前記複数の光ファイバに連結された光検出器をさらに含む、付記14に記載のシステム。
【0091】
付記16: 物体を検査するための方法(700)であって、
後方散乱検査システムにおける検出器システムの選択形状を特定し(702)、前記選択形状は、前記物体の表面の実質的に非平面の形状を含み、
前記検出器システムの構造体を用いて、前記検出器システムの形状を、前記検出器システムの第1形状から前記検出器システムの第2形状に変更し(704)、
前記検出器システムの前記第2形状は、前記検出器システムの前記選択形状であり、
前記検出器システムの前記第2形状は、前記物体の前記表面の前記実質的に非平面の形状に実質的に適合しており、
前記検出器システムは、後方散乱を検出するように構成されたセンサアレイを含み、前記センサアレイは、
前記構造体の領域を覆うフレキシブルシンチレータパネルを含み、前記フレキシブルシンチレータパネルは、前記第1形状から前記第2形状へと変化し、前記検出器システムの形状に実質的に適合するように構成されており、
前記物体の前記表面に向かって放射線ビームを出射し(706)、
前記放射線ビームは、放射線源から出射された放射線の一部を用いて形成され、前記放射線は、少なくとも一部が前記物体を透過するように構成されたX線を含み、
前記選択形状を有する前記検出器システムを用いて、前記放射線ビームが前記物体に当たったことに応じて形成される後方散乱を検出する(708)、方法。
【0092】
付記17: 前記フレキシブルシンチレータパネルは、半硬質のケーシングに収容された複数の光ファイバを含む、付記16に記載の方法。
【0093】
付記18: 前記センサアレイは、光検出器をさらに含み、
前記複数の光ファイバは、1つ以上の束にまとめられており、前記1つ以上の束の各々は、前記光検出器に連結されており、
前記方法では、さらに、
前記光ファイバのシンチレーションによって生成される光を、前記光ファイバを通して前記光検出器に伝送し、
前記光検出器によって、前記伝送光の強度を測定する、付記17に記載の方法。
【0094】
付記19: 前記構造体は、所定数のフレキシブルジョイントによって互いに接続された複数のセグメントを含み、前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つのセグメントが、前記複数のセグメントのうちの別のセグメントに対して、前記所定数のフレキシブルジョイントのうちの所与のフレキシブルジョイントを中心軸として移動することにより、前記構造体の前記形状が変化する、付記18に記載の方法。
【0095】
付記20: さらに、可動プラットフォームが前記物体に対して移動する際に、電気機械システムを用いて前記構造体を繰り返し再構成し、
前記可動プラットフォームは、前記検出器システムと関連付けられており、
前記構造体を繰り返し再構成する工程では、前記センサアレイからのデータを利用し、
前記構造体を繰り返し再構成する工程では、前記物体の前記表面の実質的に非平面の形状に実質的に適合するように、前記検出器システムの前記形状を変化させる、付記17に記載の方法。
【0096】
利便性のためにコンポーネント及びプロセスの多くを単数形で記載しているが、本開示の手法を行うために、複数のコンポーネント及び複数回のプロセスを採用しうることは、当業者には明らかであろう。