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特許7444613道路管理システム、道路管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】道路管理システム、道路管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240228BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20240228BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20240228BHJP
【FI】
G08G1/00 J
E01C23/01
G06Q50/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020002147
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021111089
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 孝之
(72)【発明者】
【氏名】松林 卓
(72)【発明者】
【氏名】清田 雄介
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120409(JP,A)
【文献】特開2016-89593(JP,A)
【文献】特開2016-113814(JP,A)
【文献】特開2005-115687(JP,A)
【文献】特開2016-57861(JP,A)
【文献】特開2019-71017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
E01C 21/00 - 23/24
G06Q 50/00 - 99/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般車両が走行した場合に検出された道路情報であって、複数の項目を含む前記道路情報を取得する道路情報取得手段と、
重要道路の前記道路情報と、前記重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度であって、前記重要道路の前記劣化度に寄与する少なくとも1つの前記項目及びその相関関係を特定する特定手段と、
非重要道路又は他の重要道路の前記道路情報と、前記特定手段の特定結果と、に基づいて、前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度を取得する劣化度取得手段と、
前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度に基づいて、前記非重要道路又は他の重要道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得手段と、
を含むことを特徴とする道路管理システム。
【請求項2】
前記修繕情報取得手段は、前記道路の重要度及び予算の少なくとも一方に更に基づいて、前記修繕緊急度及び前記修繕内容の少なくとも一方を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の道路管理システム。
【請求項3】
前記劣化度取得手段は、
前記道路情報に基づいて、前記道路の路面の状態を直接的に示す第1情報と、前記路面の状態を間接的に示す第2情報と、を取得し、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記劣化度を取得する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の道路管理システム。
【請求項4】
前記劣化度取得手段は、複数種類の前記第1情報と、複数種類の前記第2情報と、に基づいて、前記劣化度を計算する、
ことを特徴とする請求項3に記載の道路管理システム。
【請求項5】
前記第1情報は、前記路面の凹凸情報、前記路面の汚れ情報、又は前記路面の負荷情報であり、
前記第2情報は、道路標識の劣化度、道路標識の汚れ情報、前記道路の落下物情報、前記道路の逆走車情報、又は前記道路の渋滞情報である、
請求項3又は4に記載の道路管理システム。
【請求項6】
前記道路管理システムは、前記非重要道路又は前記他の重要道路で実施された修繕工事に基づいて、前記特定手段の特定結果の妥当性を検証する検証手段を更に含む、
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の道路管理システム。
【請求項7】
一般車両が走行した場合に検出された道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記道路情報に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度を取得する劣化度取得手段と、
修繕済みの道路の修繕前後における前記道路情報をモニタリングするモニタリング手段と、
前記劣化度と、前記モニタリング手段のモニタリング結果と、に基づいて、前記道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得手段と、
を含むことを特徴とする道路管理システム。
【請求項8】
前記道路情報取得手段は、センサを含む前記一般車両により検出された前記道路情報、前記道路の検出装置により検出された前記道路情報、及びオープンデータを利用した前記道路情報の少なくとも1つを取得する、
ことを特徴とする請求項1~の何れかに記載の道路管理システム。
【請求項9】
コンピュータが、
一般車両が走行した場合に検出された道路情報であって、複数の項目を含む前記道路情報を取得する道路情報取得ステップと、
重要道路の前記道路情報と、前記重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度であって、前記重要道路の前記劣化度に寄与する少なくとも1つの前記項目及びその相関関係を特定する特定ステップと、
非重要道路又は他の重要道路の前記道路情報と、前記特定ステップの特定結果と、に基づいて、前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度を取得する劣化度取得ステップと、
前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度に基づいて、前記非重要道路又は他の重要道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得ステップと、
実行することを特徴とする道路管理方法。
【請求項10】
一般車両が走行した場合に検出された道路情報であって、複数の項目を含む前記道路情報を取得する道路情報取得手段、
重要道路の前記道路情報と、前記重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度であって、前記重要道路の前記劣化度に寄与する少なくとも1つの前記項目及びその相関関係を特定する特定手段、
非重要道路又は他の重要道路の前記道路情報と、前記特定手段の特定結果と、に基づいて、前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度を取得する劣化度取得手段、
前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度に基づいて、前記非重要道路又は他の重要道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路管理システム、道路管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の状態を検出するセンサが搭載された専用車両を走行させて巡回することが行われている。道路の管理者は、専用車両を利用した巡回結果に基づいて、道路の劣化を診断し、修繕の要否を判定する。専用車両は、数が限られておりコストも高いため、一般車両の走行時に得られた情報を修繕に活用することが検討されている。例えば、特許文献1には、一般車両から取得した画像等の情報に基づいて、道路の劣化具合を示す重篤度を計算し、次の測定までの猶予時間を計算するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-070996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、次の測定までの猶予時間が計算されるだけであり、ある道路の猶予時間が訪れると、その道路までわざわざ出向いて測定しなければならないので、道路を管理する手間がかかっていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、道路を管理する手間を軽減することが可能な道路管理システム、道路管理方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る道路管理システムは、一般車両が走行した場合に検出された道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記道路情報に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度を取得する劣化度取得手段と、前記劣化度に基づいて、前記道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る道路管理方法は、一般車両が走行した場合に検出された道路情報を取得する道路情報取得ステップと、前記道路情報に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度を取得する劣化度取得ステップと、前記劣化度に基づいて、前記道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、一般車両が走行した場合に検出された道路情報を取得する道路情報取得手段、前記道路情報に基づいて、前記一般車両が走行した道路の劣化度を取得する劣化度取得手段、前記劣化度に基づいて、前記道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する修繕情報取得手段、としてコンピュータを機能させる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記修繕情報取得手段は、前記道路の重要度及び予算の少なくとも一方に更に基づいて、前記修繕緊急度及び前記修繕内容の少なくとも一方を取得する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記劣化度取得手段は、前記道路情報に基づいて、前記道路の路面の状態を直接的に示す第1情報と、前記路面の状態を間接的に示す第2情報と、を取得し、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記劣化度を取得する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記劣化度取得手段は、複数種類の前記第1情報と、複数種類の前記第2情報と、に基づいて、前記劣化度を計算する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記第1情報は、前記路面の凹凸情報、前記路面の汚れ情報、又は前記路面の負荷情報であり、前記第2情報は、道路標識の劣化度、道路標識の汚れ情報、前記道路の落下物情報、前記道路の逆走車情報、又は前記道路の渋滞情報である。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記道路情報は、複数の項目を含み、前記道路管理システムは、重要道路の前記道路情報と、前記重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、に基づいて、前記重要道路の前記劣化度に寄与する少なくとも1つの前記項目及びその相関関係を特定する特定手段を更に含み、前記劣化度取得手段は、非重要道路又は他の重要道路の前記道路情報と、前記特定手段の特定結果と、基づいて、前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度を取得し、前記修繕情報取得手段は、前記非重要道路又は前記他の重要道路の前記劣化度に基づいて、前記非重要道路又は他の重要道路の前記修繕緊急度及び前記修繕内容の少なくとも一方を取得する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記道路管理システムは、前記非重要道路又は前記他の重要道路で実施された修繕工事に基づいて、前記特定手段の特定結果の妥当性を検証する検証手段を更に含む、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記道路管理システムは、修繕済みの道路の修繕前後における前記道路情報をモニタリングするモニタリング手段を更に含み、前記修繕情報取得手段は、前記モニタリング手段のモニタリング結果に更に基づいて、前記修繕緊急度及び前記修繕内容の少なくとも一方を取得する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記道路情報取得手段は、センサを含む前記一般車両により検出された前記道路情報、前記道路の検出装置により検出された前記道路情報、及びオープンデータを利用した前記道路情報の少なくとも1つを取得する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、道路を管理する手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る道路管理システムの全体構成を示す図である。
図2】道路管理システムの概要を示す図である。
図3】道路管理システムで実行される一連の処理を示す図である。
図4】道路管理システムで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
図5】道路データベースのデータ格納例を示す図である。
図6】一般車両データベースのデータ格納例を示す図である。
図7】検出装置データベースのデータ格納例を示す図である。
図8】劣化度データベースのデータ格納例を示す図である。
図9】修繕情報データベースのデータ格納例を示す図である。
図10】道路管理システムにおいて実行される処理を示すフロー図である。
図11】道路管理システムにおいて実行される処理を示すフロー図である。
図12】変形例に係る機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.道路管理システムの全体構成]
図1は、実施形態に係る道路管理システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、道路管理システムSは、道路管理サーバ10、管理者端末20、一般車両30、及び検出装置40を含み、これらはインターネット等のネットワークNに接続可能である。なお、図1では、道路管理サーバ10、管理者端末20、一般車両30、及び検出装置40の各々を1つずつ示しているが、これらは複数存在してもよい。
【0020】
道路管理サーバ10は、サーバコンピュータである。例えば、道路管理サーバ10は、制御部11、記憶部12、及び通信部13を含む。制御部11は、少なくとも1つのプロセッサを含む。制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。記憶部12は、主記憶部及び補助記憶部を含む。例えば、主記憶部はRAMなどの揮発性メモリであり、補助記憶部は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。通信部13は、有線通信又は無線通信用の通信インタフェースを含み、例えば、ネットワークNを介してデータ通信を行う。
【0021】
管理者端末20は、管理者のコンピュータである。管理者は、道路を管理する者であり、例えば、建設会社、道路会社、国、又は地方自治体である。例えば、管理者端末20は、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(タブレット型コンピュータを含む)、又は携帯電話機(スマートフォンを含む)である。例えば、管理者端末20は、制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、及び表示部25を含む。制御部21、記憶部22、及び通信部23の物理的構成は、それぞれ制御部11、記憶部12、及び通信部13と同様であってよい。
【0022】
操作部24は、入力デバイスであり、例えば、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイスやキーボード等である。操作部24は、操作内容を制御部21に伝達する。表示部25は、例えば、液晶表示部又は有機EL表示部等である。
【0023】
一般車両30は、専用車両ではなく、一般的な車両である。例えば、一般車両30は、家庭用の自動車、レンタカー、バス、タクシー、又はトラックである。本実施形態では、一般車両30は、ネットワークNに接続し、自身が検出した情報を他のコンピュータに送信する機能を有する。一般車両30は、コネクテッドカーと呼ばれることもある。一般車両30は、バイクなどの2輪車であってもよい。一般車両30は、制御部31、記憶部32、通信部33、センサ部34、及び撮影部35を含む。制御部31、記憶部32、及び通信部33の物理的構成は、それぞれ制御部11、記憶部12、及び通信部13と同様であってよい。
【0024】
センサ部34は、少なくとも1つのセンサを含む。センサは、任意の種類であってよく、道路の状態を検出するために用いられる。例えば、センサ部34は、振動センサ、GPSセンサ、ETCセンサ、マイク、視線検出センサ、温度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、超音波センサ、赤外線センサ、圧力センサ、気象センサ、又は地磁気センサである。
【0025】
撮影部35は、少なくとも1つのカメラを含む。撮影部35は、静止画を生成してもよいし、動画を生成してもよい。撮影部35は、ドライブレコーダであってもよいし、ドライブレコーダとは別に設けられていてもよい。撮影部35は、走行中の一般車両30の前方や周囲の様子を撮影する。
【0026】
検出装置40は、一般車両30が走行する道路又はその付近に配置された付帯設備である。例えば、検出装置40は、道路カメラ、道路センサ、又はETCの路側装置である。例えば、検出装置40は、制御部41、記憶部42、通信部43、センサ部44、及び撮影部45を含む。制御部41、記憶部42、通信部43、センサ部44、及び撮影部45の物理的構成は、それぞれ制御部31、記憶部32、通信部33、センサ部34、及び撮影部35と同様であってよい。センサ部44は、センサ部34と異なるセンサを含んでよく、例えば、一般車両30のセンサ部34と通信するためのセンサを含んでもよい。
【0027】
なお、記憶部12,22,32,42に記憶されるものとして説明するプログラム及びデータは、ネットワークNを介して供給されるようにしてもよい。また、道路管理サーバ10、管理者端末20、一般車両30、及び検出装置40のハードウェア構成は、上記の例に限られず、種々のハードウェアを適用可能である。例えば、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を読み取る読取部(例えば、光ディスクドライブやメモリカードスロット)や外部機器と直接的に接続するための入出力部(例えば、USB端子)が含まれてもよい。この場合、情報記憶媒体に記憶されたプログラムやデータが読取部又は入出力部を介して供給されてもよい。
【0028】
[2.道路管理システムの概要]
図2は、道路管理システムSの概要を示す図である。図2に示すように、道路管理サーバ10は、一般車両30及び検出装置40から道路情報を取得する。本実施形態では、道路管理サーバ10が全国の道路情報を取得する場合を説明するが、道路管理サーバ10は、少なくとも管理者が管理する地域の道路情報を取得すればよい。例えば、道路管理サーバ10は、一部の地域の道路情報だけを取得してもよい。
【0029】
道路情報は、道路の状態に関する情報である。別の言い方をすれば、道路情報は、専用車両の巡回の代わりとなる情報である。道路情報は、道路の劣化診断及び修繕判定に用いられる。一般車両30は、センサ部34又は撮影部35に基づいて、道路情報を検出する。例えば、一般車両30は、振動情報(揺れ情報)、GPS情報(緯度経度情報)、運転者の視線情報、温度情報、速度情報、加速度情報、ETC情報、傾き情報(姿勢情報)、天候情報、画像、又は動画を、道路情報として検出する。検出装置40は、センサ部44又は撮影部45に基づいて、道路情報を検出する。例えば、道路情報は、走行音情報、速度情報、ETC情報、入出場したインターチェンジ情報、天候情報、画像、又は動画を、道路情報として検出する。
【0030】
図2の例では、道路管理サーバ10は、重要道路である道路A,Bの道路情報と、非重要道路である道路Cの道路情報と、を取得する。重要道路とは、交通上重要な道路(路線)である。本実施形態では、道路ごとに重要度が定められており、重要度が閾値以上の道路が重要道路に相当する。例えば、交通量が多い道路、都市部にある道路、国道、車線数が多い道路、高速道路、又は有料道路は、重要道路に相当する。非重要道路とは、重要道路ではない道路である。本実施形態では、重要度が閾値未満の道路が非重要道路に相当する。例えば、交通量が少ない道路、郊外にある道路、市道、車線数が少ない道路、又は一般道は、非重要道路に相当する。
【0031】
従来では、重要道路である道路A,Bは、定期的に専用車両を走行させ、管理者による巡回、劣化診断、及び修繕判定が行われていた。一方、非重要道路である道路Cは、予算の都合等により専用車両を走行させることができず、劣化がひどくなるまでは修繕の対象にならないことがあった。このため、道路Cは、修繕の実施が遅れたり後回しになったりすることが多く、場当たり的な修繕になることも多いので、いわゆるライフサイクルコストが多くかかるケースがあった。更に、道路A,Bについても、管理者が劣化診断を誤ることがあり、適切な修繕がなされずにライフサイクルコストが増大するケースもあった。
【0032】
そこで、本実施形態の道路管理システムSは、従来は管理者により行われていた巡回、劣化診断、及び修繕判定を、道路情報を利用した一連の処理によって実現する。これにより、非重要路線である道路Cにおいて、重要路線である道路A,Bと同等の巡回結果、劣化診断結果、及び修繕判定結果を得ることができるようにしている。また、重要路線である道路A,Bについても、管理者の誤りによる劣化診断等の精度低下を防止できるようにしている。更に、ライフサイクルコストの観点からも適切な修繕内容を提案することができるようにしている。
【0033】
図3は、道路管理システムSで実行される一連の処理を示す図である。例えば、道路管理サーバ10は、道路A~Cの各々の道路情報に対し、画像解析、音響解析、振動解析、加速度解析、及び人工知能(AI)の各々を利用して、種々の観点から道路の状態を解析する。図3に示すように、道路管理サーバ10は、道路A~Cの各々から得られた道路情報と、全国各地の道路が示された標準マップM1と、に基づいて、道路A~Cの各々の凹凸マップM2、負荷マップM3、渋滞マップM4、落下物マップM5を作成する。
【0034】
凹凸マップM2は、標準マップM1に対し、路面の凹凸具合を示す色が付けられたマップである。例えば、凹凸マップM2では、凹凸が大きい場所ほど色が濃くなる。図3では、色の濃さを疑似的に網点の濃さで表現する。負荷マップM3は、標準マップM1に対し、路面にかかる負荷の高さを示す色が付けられたマップである。例えば、負荷マップM3は、負荷が高い場所ほど色が濃くなる。負荷マップM3は、単位時間当たりの負荷を示してもよいし、過去の一定期間又は全期間に累積された累積負荷を示してもよい。
【0035】
渋滞マップM4は、標準マップM1に対し、道路の混雑具合を示す色が付けられたマップである。例えば、渋滞マップM4では、混雑している場所ほど色が濃くなる。落下物マップM5は、標準マップM1に対し、落下物の有無を示すアイコンが付けられたマップである。例えば、アイコンが付けられた場所に落下物が存在したことを意味する。落下物マップM5は、落下物のサイズ又は種類が示されてもよいし、落下物が存在した回数又は頻度が示されてもよい。
【0036】
なお、道路管理サーバ10が作成するマップは、図3の例に限られない。道路管理サーバ10は、劣化診断として利用可能なマップを作成すればよく、例えば、道路の汚れ具合を示すマップ、道路標識の劣化具合を示すマップ、道路標識の汚れ具合を示すマップ、道路標識の劣化を示すマップ、又は逆走車の有無を示すマップを作成してもよい。道路管理サーバ10は、これらのマップについても、画像解析等の手法を利用して作成すればよい。道路標識は、劣化度の計算対象となる道路又はその付近にある標識である。
【0037】
道路管理サーバ10は、凹凸マップM2、負荷マップM3、渋滞マップM4、及び落下物マップM5に基づいて、劣化度マップM6を作成する。別の言い方をすれば、道路管理サーバ10は、これら複数のマップの情報を畳み込むことによって、劣化度マップM6を作成する。劣化度マップM6は、標準マップM1に対し、道路の劣化度を示す色が付けられたマップである。例えば、劣化度マップM6では、劣化度が高い場所ほど色が濃くなる。道路管理サーバ10は、凹凸マップM2、負荷マップM3、渋滞マップM4、及び落下物マップM5を総合的に考慮して劣化度マップM6を作成する。例えば、劣化度マップM6は、単位距離あたりの劣化度を示す。
【0038】
道路管理サーバ10は、劣化度マップM6、道路A~Cの各々の重要度、及び修繕に関する予算に基づいて、修繕マップM7を作成する。修繕マップM7は、標準マップM1に対し、道路の修繕緊急度を示す色が付けられたマップである。例えば、修繕マップM7では、修繕緊急度が高い場所ほど色が濃くなる。例えば、修繕マップM7は、単位距離あたりの修繕緊急度を示す。
【0039】
修繕マップM7は、重要度と予算も考慮されるので、劣化度が高いからといってその場所の色が濃くなるわけではない。例えば、非重要道路については、劣化度が高くても色が薄くなることもあるし、予算を確保できない道路については、劣化度が高くても色が薄くなることもある。一方、非重要道路であったとしても予算を確保できるのであれば、その場所の色が濃くなることもある。なお、修繕マップM7は、修繕緊急度だけでなく、場所に応じた適切な修繕内容が示されてもよい。
【0040】
本実施形態では、修繕マップM7が管理者端末20の表示部25に表示され、管理者の道路管理業務に活用される場合を説明するが、修繕マップM7は、任意の用途で利用可能である。例えば、修繕マップM7は、管理者以外の者に提供されてもよいし、修繕マップM7に基づいて、修繕工事のスケジュールが自動的に作成されてもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態の道路管理システムSは、一般車両30の走行時に取得された道路情報に基づいて、巡回、劣化診断、及び修繕判定の一連の処理を実行することによって、道路を管理する手間を軽減するようになっている。以降、道路管理システムSの詳細を説明する。
【0042】
[3.本実施形態で実現される機能]
図4は、道路管理システムSで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。図に示すように、道路管理システムSは、データ記憶部100、道路情報取得部101、劣化度取得部102、及び修繕情報取得部103が実現される。本実施形態では、これら各機能が道路管理サーバ10によって実現される場合を説明するが、後述する変形例のように、各機能は、他のコンピュータによって実現されてもよい。
【0043】
[データ記憶部]
データ記憶部100は、記憶部12を主として実現される。データ記憶部100は、本実施形態の処理を実行するために必要なデータを記憶する。例えば、データ記憶部100は、道路データベースDB1、一般車両データベースDB2、検出装置データベースDB3、劣化度データベースDB4、及び修繕情報データベースDB5を記憶する。
【0044】
図5は、道路データベースDB1のデータ格納例を示す図である。図5に示すように、道路データベースDB1は、全国各地の道路に関する情報が格納されたデータベースである。例えば、道路データベースDB1には、道路ID、道路名、及び重要度が格納される。道路IDは、道路を一意に識別する情報である。道路名は、道路の名前である。
【0045】
重要度は、道路の重要具合を示す情報である。本実施形態では、重要度が数値によって表現される場合を説明するが、重要度は、Sランク、Aランク、Bランクといったような文字で表現されてもよい。重要度は、管理者又は他の者によって指定されてもよいし、交通量や修繕頻度等に基づいて自動的に決定されてもよい。重要度は、固定値であってもよいし、道路の状況に応じて更新されてもよい。本実施形態では、道路ごとに重要度が定められている場合を説明するが、同じ道路内の場所ごとに重要度が定められていてもよい。例えば、同じ名前の道路であったとしても、交通量が相対的に多い場所の重要度を、交通量が相対的に少ない場所の重要度よりも高くしてもよい。
【0046】
なお、道路データベースDB1には、他の情報が格納されてもよい。例えば、道路データベースDB1には、道路の位置情報が格納されていてもよいし、標準マップM1が格納されてもよい。また例えば、道路データベースDB1は、全国各地の道路の幅等の情報を示す道路ネットワークデータが格納されていてもよい。また例えば、道路ごとに予算を設定する場合には、道路データベースDB1には、各道路の予算が格納されていてもよい。
【0047】
図6は、一般車両データベースDB2のデータ格納例を示す図である。図6に示すように、一般車両データベースDB2は、全国各地の一般車両30から取得された道路情報が格納されたデータベースである。例えば、一般車両データベースDB2には、車両ID、道路情報、及び取得日時が格納される。車両IDは、一般車両30を一意に識別する情報である。道路情報は、車両IDが示す一般車両30から取得された道路情報である。取得日時は、道路情報が取得された日時である。
【0048】
例えば、一般車両30は、センサ部34の検出信号と、撮影部35の撮影結果と、に基づいて、道路情報を生成する。一般車両30は、自身の車両ID、生成した道路情報、及び現在の日時である取得日時を、道路管理サーバ10に送信する。道路管理サーバ10は、これらを受信すると、受信した車両ID、道路情報、及び取得日時を一般車両データベースDB2に格納する。
【0049】
本実施形態では、一般車両30が、定期的に(一定時間ごとに)最新の道路情報を生成して送信する場合を説明するが、一般車両30は、不定期的に最新の道路情報を生成して送信してもよい。例えば、一般車両30は、道路情報を生成して時系列的に蓄積しておき、停車したタイミング又はエンジンが切られるタイミング等において、時系列的に蓄積された道路情報を一度に送信してもよい。
【0050】
図7は、検出装置データベースDB3のデータ格納例を示す図である。図7に示すように、検出装置データベースDB3は、全国各地の検出装置40から取得された道路情報が格納されたデータベースである。例えば、検出装置データベースDB3には、装置ID、道路情報、及び取得日時が格納される。装置IDは、検出装置40を一意に識別する情報である。道路情報は、装置IDが示す検出装置40から取得された道路情報である。取得日時は、道路情報が取得された日時である。
【0051】
例えば、検出装置40は、センサ部44の検出信号と、撮影部45の撮影結果と、に基づいて、道路情報を生成する。検出装置40は、自身の装置ID、生成した道路情報、及び現在の日時である取得日時を、道路管理サーバ10に送信する。道路管理サーバ10は、これらを受信すると、受信した装置ID、道路情報、及び取得日時を検出装置データベースDB3に格納する。
【0052】
本実施形態では、検出装置40は、定期的(一定時間ごとに)に最新の道路情報を生成して送信する場合を説明するが、検出装置40は、不定期的に最新の道路情報を生成して送信してもよい。例えば、検出装置40は、道路情報を生成して時系列的に蓄積しておき、一定数の一般車両30が通過した場合等のタイミングにおいて、時系列的に蓄積された道路情報を一度に送信してもよい。
【0053】
図8は、劣化度データベースDB4のデータ格納例を示す図である。図8に示すように、劣化度データベースDB4は、全国各地の道路の劣化度が格納されたデータベースである。例えば、劣化度データベースDB4には、道路ID、位置情報、及び劣化度が格納される。位置情報は、道路内の詳細な場所を示し、例えば、緯度経度又は座標によって示される。
【0054】
劣化度は、道路の劣化具合を示す情報である。劣化度は、単位距離あたりの劣化具合を示す。単位距離は、任意の距離であってよく、例えば、数メートル~100メートル単位であってもよいし、それ以上であってもよい。本実施形態では、劣化度が数値によって表現される場合を説明するが、劣化度は、Sランク、Aランク、Bランクといったような文字で表現されてもよい。劣化度は、後述する劣化度取得部102によって取得される。図3に示す劣化度マップM6は、劣化度データベースDB4に基づいて作成される。劣化度データベースDB4の内容を可視化したものが劣化度マップM6である。
【0055】
図9は、修繕情報データベースDB5のデータ格納例を示す図である。図9に示すように、修繕情報データベースDB5は、全国各地の道路の修繕情報が格納されたデータベースである。例えば、修繕情報データベースDB5には、道路ID、位置情報、及び修繕情報が格納される。修繕情報は、修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を示す。本実施形態では、修繕情報が修繕緊急度及び修繕内容の両方を示す場合を説明するが、修繕情報は、これらの何れかだけを示してもよい。
【0056】
修繕緊急度は、修繕の緊急具合を示す情報である。修繕緊急度は、単位距離あたりの修繕の緊急具合を示す。本実施形態では、修繕緊急度が数値によって表現される場合を説明するが、修繕緊急度は、Sランク、Aランク、Bランクといったような文字で表現されてもよい。修繕緊急度は、後述する修繕情報取得部103によって取得される。修繕内容は、修繕工事の具体的な内容である。例えば、修繕内容は、表層のみの工事又は路盤までの工事の何れであるかを示す。また例えば、修繕内容は、工法、機材、材料、期間、時間帯、人数、又は予算を示してもよい。図3に示す修繕マップM7は、修繕情報データベースDB5に基づいて作成される。修繕情報データベースDB5の内容を可視化したものが修繕マップM7である。
【0057】
なお、データ記憶部100に記憶されるデータは、上記の例に限られない。例えば、データ記憶部100は、凹凸マップM2、負荷マップM3、渋滞マップM4、落下物マップM5、及び他のマップを記憶してもよいし、これらが示す凹凸情報、負荷情報、渋滞情報、落下物情報、及び他の情報を記憶してもよい。また例えば、地域ごとに予算が設定される場合には、データ記憶部100は、地域ごとの予算を記憶してもよい。また例えば、管理者の予算が設定される場合には、データ記憶部100は、管理者に割り当てられた予算を記憶してもよい。
【0058】
また例えば、データ記憶部100は、オープンデータを記憶してもよい。オープンデータは、劣化度の計算に利用可能な公開情報である。例えば、オープンデータには、日時情報、天候情報、イベント情報、車種別の車体重量情報、及び自動車メーカが公開する各種情報が含まれる。また例えば、オープンデータには、自動車メーカ又は他の者が一般車両30等から取得した道路情報が含まれていてもよい。オープンデータは、データ記憶部100に記憶されているのではなく、他のコンピュータから都度取得されるようにしてもよい。
【0059】
[道路情報取得部]
道路情報取得部101は、制御部11を主として実現される。道路情報取得部101は、一般車両30が走行した場合に検出された道路情報を取得する。一般車両30が走行した場合とは、一般車両30が走行した時点、又は、当該時点の前後の時点である。
【0060】
本実施形態では、道路情報取得部101は、センサを含む一般車両30により検出された道路情報と、道路の検出装置40により検出された道路情報と、を取得する。なお、道路情報取得部101は、これらの何れか一方だけを取得してもよい。例えば、道路情報取得部101は、検出装置40が配置されていない道路については、一般車両30により検出された道路情報だけを取得してもよい。また例えば、道路情報取得部101は、いわゆるコネクテッドカーの通行が少ない道路については、検出装置40により検出された道路情報だけを取得してもよい。
【0061】
例えば、道路情報取得部101は、一般車両データベースDB2を参照し、一般車両30により検出された道路情報を取得する。道路情報取得部101は、検出装置データベースDB3を参照し、一般車両30により検出された道路情報を取得する。道路情報取得部101は、過去の全期間における道路情報を取得してもよいし、一部の期間における道路情報を取得してもよい。一部の期間における道路情報を取得する場合には、道路情報取得部101は、道路に応じてその期間を変えてもよいし、道路内の場所に応じてその期間を変えてもよい。
【0062】
例えば、非重要道路は、重要道路に比べて道路情報の数が少ないので、道路情報取得部101は、非重要道路の道路情報の取得対象となる期間を、重要道路の道路情報の取得対象となる期間よりも長くしてもよい。また例えば、同じ道路内の場所ごとに重要度を定める場合には、道路情報取得部101は、重要度が相対的に低い場所の道路情報の取得対象となる期間を、重要度が相対的に高い場所の道路情報の取得対象となる期間よりも長くしてもよい。
【0063】
なお、道路情報取得部101は、オープンデータを利用した道路情報を取得してもよい。例えば、自動車メーカが自社で収集した道路情報をオープンデータとして公開している場合には、道路情報取得部101は、オープンデータとして公開された道路情報を取得する。また例えば、道路情報取得部101は、一般車両30又は検出装置40により検出された道路情報に基づいて、走行した一般車両30を特定し、それに応じた重量などの情報を利用した道路情報を取得してもよい。道路情報取得部101は、センサを含む一般車両30により検出された道路情報、道路の検出装置により検出された道路情報、及びオープンデータを利用した道路情報の少なくとも1つを取得すればよい。
【0064】
[劣化度取得部]
劣化度取得部102は、制御部11を主として実現される。劣化度取得部102は、道路情報に基づいて、一般車両30が走行した道路の劣化度を取得する。例えば、劣化度取得部102は、道路ごとに、当該道路の道路情報に基づいて当該道路の劣化度を取得する。また例えば、劣化度取得部102は、道路内の場所ごとに、当該場所の道路情報に基づいて当該場所の劣化度を取得する。
【0065】
道路情報と劣化度の関係は、データ記憶部100に予め記憶されているものとする。本実施形態では、道路情報から劣化度を計算するための劣化度計算アルゴリズムに、道路情報と劣化度の関係が定められているものとするが、この関係は、機械学習モデル、数式、テーブル、又はプログラムコード等に定められていてもよい。劣化度取得部102は、道路情報取得部101により取得された道路情報を劣化度計算アルゴリズムに入力し、劣化度計算アルゴリズムにより計算された劣化度を取得する。
【0066】
劣化度取得部102は、ある一時点の道路情報に基づいて、劣化度を取得してもよいし、道路情報の時系列的な変化に基づいて、劣化度を取得してもよい。劣化度取得部102は、道路情報が急激に変化した場合に劣化度が高くなるように、劣化度を計算してもよい。また例えば、劣化度取得部102は、ある場所の道路情報の平均値を計算して劣化度を計算してもよい。この場合、単純な平均値が計算されてもよいし、一般車両30に応じた重み係数が設定されてもよい。例えば、最新車種の一般車両30から得られた道路情報については、重み係数が高く設定され、旧型の一般車両30から得られた道路情報については、重み係数が低く設定されてもよい。
【0067】
例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる画像又は動画を画像解析し、劣化度を取得する。画像又は動画に撮影された道路がくすんでいるほど、劣化度が高くなる。画像又は動画に撮影された白線が薄いほど、劣化度が高くなる。また例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる振動情報を振動解析し、劣化度を取得する。振動情報が示す振動が大きいほど、劣化度が高くなる。また例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる速度から得られる加速度を解析し、劣化度を取得する。得られた加速度が小さいほど、劣化度が高くなる。
【0068】
また例えば、劣化度取得部102は、道路情報を機械学習モデルに入力し、劣化度を取得する。この場合、機械学習モデルには、道路情報の各項目の値と、劣化度と、の関係を示す教師データが学習されているものとする。機械学習モデルは、入力された道路情報の各項目の値を特徴量化し、当該特徴量に応じた劣化度を出力する。機械学習モデル自体は、公知のモデルを利用可能であり、例えば、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、又は深層学習を利用してもよい。
【0069】
本実施形態では、劣化度取得部102は、道路情報に基づいて、道路の路面の状態を直接的に示す第1情報と、路面の状態を間接的に示す第2情報と、を取得し、第1情報と第2情報とに基づいて、劣化度を取得する。
【0070】
第1情報は、路面の状態そのものを示す情報である。第1情報は、路面の劣化具合を表す情報である。第1情報が示す値は、そのまま道路の劣化具合を示す。例えば、第1情報は、路面の凹凸情報、路面の汚れ情報、又は路面の負荷情報である。
【0071】
路面の凹凸情報は、道路の凹凸具合を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる振動情報に基づいて、路面の凹凸情報を取得する。振動が大きい場所ほど、凹凸具合が大きくなる。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、路面の凹凸情報を取得する。図の凹凸マップM2は、路面の凹凸情報を可視化した情報である。
【0072】
路面の汚れ情報は、道路の汚れ具合を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる画像又は動画に基づいて、路面の汚れ情報を取得する。画像又は動画に示された路面が黒いほど、汚れ具合が強くなる。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、路面の汚れ情報を取得する。先述した道路の汚れ具合を示すマップは、路面の汚れ情報を可視化した情報である。
【0073】
路面の負荷情報は、道路の負荷又は累積負荷を示す情報である。例えば、一般車両30の通行数が多いほど、負荷が高くなる。一般車両30の通行数は、道路情報に含まれる画像又は動画から取得されてもよいし、一般車両30から取得された道路情報の数をそのまま通行数としてもよい。また例えば、一般車両30の重量が重いほど、負荷が高くなる。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、路面の負荷情報を取得する。図の負荷マップM3は、路面の負荷情報を可視化した情報である。
【0074】
第2情報は、第1情報が示す劣化具合を補正するために用いられる情報である。即ち、本実施形態のように、専用車両を用いずに一般車両30から得られる第1情報は、情報量が少なかったり精度が低かったりすることがあるので、劣化度の精度を高めるために、第2情報が補足的に用いられる。第2情報は、路面の状態を推測可能な情報であればよい。例えば、第2情報は、道路標識の劣化情報、道路標識の汚れ情報、道路の落下物情報、道路の逆走車情報、又は道路の渋滞情報である。
【0075】
道路標識の劣化情報は、道路標識の劣化具合を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる画像又は動画に基づいて、道路標識の劣化情報を取得する。画像又は動画に示された道路標識の文字又は図形が薄いほど、劣化が大きくなる。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、道路標識の劣化情報を取得する。先述した道路標識の劣化具合を示すマップは、道路標識の劣化情報を可視化した情報である。
【0076】
道路標識の汚れ情報は、道路標識の汚れ具合を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる画像又は動画に基づいて、道路標識の汚れ情報を取得する。画像又は動画に示された道路標識が黒いほど、汚れ具合が強くなる。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、道路標識の汚れ情報を取得する。先述した道路標識の汚れ具合を示すマップは、汚れ情報を可視化した情報である。
【0077】
道路の落下物情報は、道路における落下物の有無、種類、数、又は頻度を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる画像又は動画に基づいて、落下物情報を取得する。画像又は動画が画像解析され、落下物の有無、種類、数、又は頻度が特定される。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、道路の落下物情報を取得する。図の落下物マップM5は、落下物情報を可視化した情報である。
【0078】
道路の逆走車情報は、道路における逆走車の有無、数、又は頻度を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれる画像又は動画に基づいて、逆走車情報を取得する。また例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれるGPS情報の位置変化に基づいて、逆走車情報を取得する。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、道路の逆走車情報を取得する。先述した逆走車の有無を示すマップは、逆走車情報を可視化した情報である。
【0079】
道路の渋滞情報は、道路における混雑具合を示す情報である。例えば、劣化度取得部102は、道路情報に含まれるGPS情報の密度や画像又は動画に基づいて、渋滞情報を取得する。例えば、GPS情報の密度が多いほど、混雑具合が強くなる。また例えば、画像又は動画に示された車両が多いほど、混雑具合が強くなる。また例えば、劣化度取得部102は、VICS(登録商標)を利用して渋滞情報を取得してもよい。劣化度取得部102は、道路ごと、又は、道路内の場所ごとに、道路の渋滞情報を取得する。図の渋滞マップM4は、渋滞情報を可視化した情報である。
【0080】
なお、第1情報と第2情報は、可視化されたマップ形式でなくてもよく、他の形式で表現されてもよい。例えば、第1情報と第2情報は、テーブル形式であってもよいし、CSV形式であってもよい。第1情報と第2情報は、任意のデータ形式を適用可能である。この点は、道路情報や修繕情報等の他の情報についても同様である。
【0081】
例えば、劣化度取得部102は、複数種類の第1情報と、複数種類の第2情報と、に基づいて、劣化度を計算する。劣化度取得部102は、第1情報である路面の凹凸情報、路面の汚れ情報、及び路面の負荷情報と、第2情報である道路標識の劣化情報、道路標識の汚れ情報、道路の落下物情報、道路の逆走車情報、及び道路の渋滞情報と、を劣化度計算アルゴリズムに入力し、劣化度を計算する。本実施形態のように、各情報がマップによって表現される場合には、劣化度取得部102は、各マップに示された色(画素値)の合計値又は平均値を計算することによって、劣化度マップM6を作成する。
【0082】
劣化度計算アルゴリズムは、各情報を均等に扱ってもよいが、本実施形態では、情報ごとに重み付け係数が定められているものとする。例えば、第1情報の重み付け係数は、第2情報の重み付け係数よりも大きい。また例えば、凹凸情報の重み付け係数は、路面の汚れ情報及び路面の負荷情報の各々の重み付け係数よりも大きい。また例えば、路面の汚れ情報の重み付け係数は、路面の負荷情報の重み付け係数より大きい。
【0083】
また例えば、道路標識の劣化情報及び道路標識の汚れ情報の各々の重み付け係数は、道路の落下物情報、道路の逆走車情報、及び道路の渋滞情報の各々の重み付け係数よりも大きい。また例えば、道路の落下物情報及び道路の渋滞情報の重み付け係数は、道路の逆走車情報の重み付け係数よりも大きい。
【0084】
各情報の重み付け係数は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。例えば、各情報が劣化度に及ぼす影響をデータサイエンティストが解析し、重み付け係数が指定されてもよい。また例えば、可変値である場合には、例えば後述する変形例のように、重要道路における実際の劣化診断結果に応じた重み付け係数が設定されてもよい。また例えば、重み付け係数は、機械学習モデルによって決定されてもよい。
【0085】
[修繕情報取得部]
修繕情報取得部103は、制御部11を主として実現される。修繕情報取得部103は、劣化度に基づいて、道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する。本実施形態では、修繕情報取得部103が、道路の修繕緊急度及び修繕内容の両方を修繕情報として取得する場合を説明するが、修繕情報取得部103は、これらの何れか一方だけを取得してもよい。例えば、修繕情報取得部103は、道路ごとに、当該道路の劣化度に基づいて当該道路の修繕情報を取得する。また例えば、修繕情報取得部103は、道路内の場所ごとに、当該場所の劣化度に基づいて当該場所の修繕情報を取得する。
【0086】
劣化度と修繕緊急度及び修繕内容の関係は、データ記憶部100に予め記憶されているものとする。本実施形態では、劣化度から修繕緊急度及び修繕内容を計算するための修繕情報計算アルゴリズムに、これらの関係が定められているものとするが、この関係は、機械学習モデル、数式、テーブル、又はプログラムコード等に定められていてもよい。修繕情報取得部103は、劣化度取得部102により取得された劣化度を修繕情報計算アルゴリズムに入力し、修繕情報計算アルゴリズムにより計算された修繕情報を取得する。図の修繕マップM7は、修繕情報を可視化した情報である。
【0087】
例えば、修繕情報取得部103は、道路の重要度及び予算の少なくとも一方に更に基づいて、修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する。本実施形態では、修繕情報取得部103が道路の重要度及び予算の両方を利用する場合を説明するが、修繕情報取得部103は、これらの何れか一方だけを利用してもよい。例えば、道路の重要度が大きいほど修繕緊急度が大きくなってもよい。また例えば、道路の重要度と修繕内容との関係を予め定めておき、重要度に応じた修繕内容が取得されてもよい。また例えば、予算が多いほど修繕緊急度が大きくなってもよい。また例えば、予算と修繕内容との関係を予め定めておき、予算に応じた修繕内容が取得されてもよい。
【0088】
[4.本実施形態において実行される処理]
図10及び図11は、道路管理システムSにおいて実行される処理を示すフロー図である。図10及び図11に示す処理は、制御部11,21,31,41がそれぞれ記憶部12,22,32,42に記憶されたプログラムに従って動作することによって実行される。また、以降説明する処理は、図4に示す機能ブロックにより実行される処理の一例である。
【0089】
図10に示すように、まず、一般車両30は、センサ部34の検出信号と、撮影部35の撮影結果と、に基づいて道路情報を生成する(S1)。S1においては、一般車両30は、振動センサにより検出された振動情報、GPSセンサにより検出されたGPS情報、視線センサにより検出された視線情報、温度センサにより検出された温度情報、加速度センサにより検出された速度情報、及び撮影部35により撮影された画像又は動画等を取得し、これらの情報を含む道路情報を生成する。
【0090】
一般車両30は、記憶部32に記憶された自身の車両ID、S1で生成した道路情報、及び生成日時を、道路管理サーバ10に送信する(S2)。道路管理サーバ10のIPアドレスは、予め記憶部32に記録されているものとする。一般車両30は、リアルタイムクロック又はGPSセンサによって取得した現在日時を生成日時とし、車両ID及び道路情報とともに、道路管理サーバ10に送信する。
【0091】
一般車両30は、所定の終了条件が満たされたか否かを判定する(S3)。この終了条件は、道路情報の生成及び送信を終了するための条件である。終了条件は、任意の条件であってよく、例えば、エンジンが切られることである。終了条件が満たされたと判定されない場合(S3;N)、S1の処理に戻る。この場合、再び道路情報が生成されて道路管理サーバ10に送信される。一方、終了条件が満たされたと判定された場合(S3;Y)、道路情報の生成及び送信が停止される。S1~S3の処理は、全国各地の一般車両30で実行される。
【0092】
道路管理サーバ10は、一般車両30から車両ID、道路情報、及び生成日時を受信すると、これらの情報を一般車両データベースDB2に格納する(S4)。S4においては、道路管理サーバ10は、一般車両30から車両ID、道路情報、及び生成日時を受信するたびに、これらの情報を一般車両データベースDB2に格納する。
【0093】
検出装置40は、センサ部44の検出信号と、撮影部45の撮影結果と、に基づいて、道路情報を生成する(S5)。S5においては、検出装置40は、マイクにより検出された走行音、道路センサ又は道路カメラにより検出された速度情報、ETCセンサにより検出されたETC情報、ETCセンサにより検出されたインターチェンジ情報、気象センサにより検出された天候情報、及び撮影部45により撮影された画像又は動画等を取得し、これらの情報を含む道路情報を生成する。
【0094】
検出装置40は、記憶部42に記憶された自身の装置ID、S5で生成した道路情報、及び生成日時を、道路管理サーバ10に送信する(S6)。道路管理サーバ10のIPアドレスは、予め記憶部42に記録されているものとする。検出装置40は、リアルタイムクロック又はGPSセンサによって取得した現在日時を生成日時とし、装置ID及び道路情報とともに、道路管理サーバ10に送信する。
【0095】
検出装置40は、所定の終了条件が満たされたか否かを判定する(S7)。この終了条件は、道路情報の生成及び送信を終了するための条件である。終了条件は、任意の条件であってよく、例えば、検出装置40の電源が切られることである。終了条件が満たされたと判定されない場合(S7;N)、S5の処理に戻る。この場合、再び道路情報が生成されて道路管理サーバ10に送信される。一方、終了条件が満たされたと判定された場合(S7;Y)、道路情報の生成及び送信が停止される。S5~S7の処理は、全国各地の検出装置40で実行される。
【0096】
道路管理サーバ10は、検出装置40から装置ID、道路情報、及び生成日時を受信すると、これらの情報を検出装置データベースDB3に格納する(S8)。S8においては、道路管理サーバ10は、各検出装置40から装置ID、道路情報、及び生成日時を受信するたびに、これらの情報を検出装置データベースDB3に格納する。
【0097】
図11に移り、管理者端末20は、管理者が操作部24から所定の操作をした場合に、本実施形態に係る一連の処理の実行要求を道路管理サーバ10に送信する(S9)。一連の処理とは、道路情報に基づいて劣化度マップM6を作成し、劣化度マップM6に基づいて修繕マップM7を作成する処理である。道路管理サーバ10は、実行要求を受信したか否かを判定する(S10)。実行要求を受信したと判定されない場合(S10;N)、本処理は終了する。
【0098】
一方、実行要求を受信したと判定された場合(S10;Y)、道路管理サーバ10は、一般車両データベースDB2と検出装置データベースDB3とに基づいて、凹凸マップM2、負荷マップM3、渋滞マップM4、及び落下物マップM5等を作成する(S11)。S11においては、道路管理サーバ10は、一般車両データベースDB2と検出装置データベースDB3の各々に格納された道路情報に対し、画像解析、音響解析、振動解析、加速度解析、及びAIを利用した複合的な解析を実行し、これらのマップを取得する。
【0099】
道路管理サーバ10は、S11で取得した各マップに基づいて、全国各地の道路の劣化度を取得し、劣化度マップM6を作成する(S12)。S12においては、道路管理サーバ10は、劣化計算アルゴリズムに対し、凹凸マップM2等に含まれる凹凸情報等を入力して劣化度マップM6を作成する。
【0100】
道路管理サーバ10は、S12で取得した劣化度マップM6、道路データベースDB1に格納された道路の重要度、及び記憶部12に記憶された予算に基づいて、修繕マップM7を作成する(S13)。S13においては、道路管理サーバ10は、修繕情報の作成アルゴリズムに対し、劣化度マップM6に含まれる劣化度、道路の重要度、及び予算を入力して修繕マップM7を作成する。
【0101】
道路管理サーバ10は、S13において取得された修繕マップM7を管理者端末20に送信する(S14)。管理者端末20は、修繕マップM7を受信すると、修繕マップM7を表示部25に表示させ(S15)、本処理は終了する。なお、S14においては、道路管理サーバ10は、凹凸マップM2や劣化度マップM6などの中間生成物を管理者端末20に送信し、管理者端末20にこれらのマップが表示されるようにしてもよい。
【0102】
以上説明した道路管理システムSによれば、一般車両30が走行した場合に検出された道路情報に基づいて道路の劣化度を取得し、劣化度に基づいて道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得することによって、巡回、劣化診断、及び修繕判定の一連の処理を実行し、道路を管理する手間を軽減することができる。また、多様な専門家と専門的な機材が必要な専用車両を走行させなくても、専門家による修繕判定と同等の効果を得ることができるので、道路の保守業務におけるコストを低減することができる。また、非重要道路であったとしても、専用道路と同等の巡回結果及び劣化診断結果を提供することができる。また、重要道路についても、道路管理システムSを利用することで、劣化診断等の精度を向上させることができる。また、従来の非重要道路のように、劣化がひどくなるまで気付かないといったことを避けることができ、ライフサイクルコストの観点から適切な修繕をすることができる。
【0103】
また、道路管理システムSは、道路の重要度及び予算の少なくとも一方に更に基づいて、修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得することによって、重要度や予算に応じた修繕を提案することができる。
【0104】
また、道路管理システムSは、道路の路面の状態を直接的に示す第1情報と、路面の状態を間接的に示す第2情報と、に基づいて、劣化度を取得することによって、第1情報だけでなく第2情報も劣化度に反映されるので、劣化度の計算精度を高めることができる。例えば、一般車両30の日常的な走行から得られる情報は、専用のセンサを搭載した専用車両から得られる情報に比べて個々の情報の精度が低く、劣化度の精度としては低くなる傾向にあるが、専用車両を利用する場合では考慮されない第2情報を考慮することによって、劣化度の精度を高めることができる。その結果、一般車両30を利用したとしても専用車両の精度に近づくような劣化度とすることができる。更に、専用車両を利用する場合のような管理者の人為的なミスがなくなるので、この点については、専用車両の精度よりも高めることができる。
【0105】
また、道路管理システムSは、複数種類の第1情報と複数種類の第2情報とに基づいて、劣化度を計算することによって、種々の情報を総合的に考慮し、劣化度の計算精度をより高めることができる。先述したように、一般車両30を利用した劣化度の計算では、個々の情報の精度が低く、劣化度の精度としては低くなりがちであるが、専用車両を利用する場合では考慮されない種々の観点の情報を総合的に考慮することによって、劣化度の精度を高めることができる。
【0106】
また、道路管理システムSは、第1情報として、路面の凹凸情報、路面の汚れ情報、又は路面の負荷情報を利用し、第2情報として、道路標識の劣化度、道路標識の汚れ情報、道路の落下物情報、道路の逆走車情報、又は道路の渋滞情報を利用することによって、劣化度の計算精度を高めることができる。
【0107】
また、道路管理システムSは、一般車両30により検出された道路情報、検出装置40により検出された道路情報、及びオープンデータを利用した道路情報の少なくとも1つを取得することによって、種々の道路情報を取得し、劣化度及び修繕情報の精度を高めることができる。
【0108】
[5.変形例]
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0109】
図12は、変形例に係る機能ブロック図である。図12に示すように、以降説明する変形例では、実施形態で説明した機能に加えて、特定部104、検証部105、及びモニタリング部106が実現される。これらの機能が道路管理サーバ10によって実現される場合を説明するが、他のコンピュータによって実現されてもよい。例えば、これらの機能は、制御部11により実現される。
【0110】
(1)例えば、道路情報に含まれる振動情報や温度情報などの複数の項目の中には、劣化度の算出に大きく寄与する項目もあれば、劣化度の算出に大した寄与をしない項目もある。この点、重要道路では、専用車両の走行等によって正解となる劣化診断結果(あるいは信用度の高い劣化診断結果)が得られていることがあるので、道路管理システムSは、重要道路で実施された実際の巡回結果等に基づいて、劣化度の算出に寄与する項目及びその相関関係を特定し、非重要道路又は他の重要道路にフィードバックしてもよい。
【0111】
本変形例の道路管理システムSでは、特定部104が実現される。特定部104は、重要道路の道路情報と、重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、に基づいて、重要道路の劣化度に寄与する少なくとも1つの項目及びその相関関係を特定する。本変形例では、特定部104が巡回結果及び劣化診断結果の両方に基づいて処理を実行する場合を説明するが、特定部104は、これらの何れか一方のみに基づいて処理を実行してもよい。
【0112】
重要道路の道路情報は、一般車両30が重要道路を走行した場合に検出された道路情報である。特定部104は、一般車両データベースDB2及び検出装置データベースDB3の中から、重要道路の道路情報が取得される。例えば、特定部104は、道路データベースDB1に格納された重要度に基づいて重要道路を特定し、当該特定した重要道路の道路情報を取得する。
【0113】
巡回結果は、管理者又は他の熟練者による実際の巡回結果である。劣化診断結果も同様に、管理者又は他の熟練者による実際の劣化診断結果である。これらの情報は、データ記憶部100に予め記憶されているものとする。例えば、データ記憶部100は、巡回結果として、凹凸マップM2、負荷マップM3、渋滞マップM4、及び落下物マップM5等と同様の形式の情報を記憶する。また例えば、データ記憶部100は、劣化診断結果として、劣化度マップM6と同様の形式の情報を記憶する。巡回結果及び劣化診断結果は、管理者又は他の熟練者によって作成された情報である。巡回結果及び劣化診断結果は、正解となる情報ということもできる。
【0114】
劣化度に寄与する項目とは、劣化度との相関関係の強い項目である。別の言い方をすれば、劣化度に寄与する項目は、劣化度への影響の強い項目である。ある項目の値が変化したときに劣化度が大きく変化したとすると、その項目は劣化度に寄与することを意味する。例えば、道路情報のうち、振動情報は、劣化度に寄与する項目である。また例えば、道路情報のうち、画像又は動画は、劣化度に寄与する項目である。
【0115】
相関関係とは、道路情報と、巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、の関係である。別の言い方をすれば、相関関係は、道路情報が変化したときに、巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方にどれだけ影響するかである。例えば、道路情報の単位変化量あたりの巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方の変化量は、相関関係に相当する。
【0116】
例えば、特定部104は、機械学習モデルを利用して、劣化度に寄与する少なくとも1つの項目及びその相関関係を特定する。この機械学習モデルは、重要道路の道路情報と、重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果と、の関係が学習されている。特定部104は、機械学習モデルに対して入力される道路情報の個々の項目ごとに、出力である巡回結果及び劣化診断結果に及ぼす影響を計算する。この計算方法自体は、公知の種々の手法を適用可能であり、例えば、インパクト値と呼ばれる手法を利用可能である。劣化度に寄与する項目は、1つだけのこともあるし、複数存在することもある。複数の項目が存在する場合には、特定部104は、劣化度に寄与する項目の組み合わせを特定する。
【0117】
例えば、特定部104は、劣化度に寄与する項目及びその相関関係に基づいて、劣化度計算アルゴリズムの係数を調整する。特定部104は、劣化度に寄与する項目の係数が相関関係に応じた相当する値となるように、係数を決定する。相関関係が強いほど係数が大きくなる。これにより、劣化度に寄与する項目が劣化度に及ぼす影響が大きくなる。なお、劣化度計算アルゴリズムではなく、機械学習モデルを利用して劣化度を出力する場合には、特定部104は、機械学習モデルのパラメータを調整してもよい。
【0118】
劣化度取得部102は、非重要道路又は他の重要道路の道路情報と、特定部104の特定結果と、基づいて、非重要道路又は他の重要道路の劣化度を取得する。他の重要道路とは、特定部104の処理対象となった重要道路以外の重要道路である。非重要道路又は他の重要道路の道路情報は、一般車両30が非重要道路又は他の重要道路を走行した場合に検出された道路情報である。一般車両データベースDB2及び検出装置データベースDB3の中から、重要道路の道路情報が取得される。
【0119】
例えば、劣化度取得部102は、特定部104の特定結果によって係数が調整された劣化度計算アルゴリズムに基づいて、非重要道路又は他の重要道路の劣化度を取得する。また例えば、劣化度取得部102は、特定部104の特定結果によってパラメータが調整された機械学習モデルに基づいて、非重要道路又は他の重要道路の劣化度を取得する。
【0120】
修繕情報取得部103は、非重要道路又は他の重要道路の劣化度に基づいて、非重要道路又は他の重要道路の修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する。劣化度から修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する方法自体は、実施形態で説明した通りである。
【0121】
変形例(1)によれば、重要道路の道路情報と、重要道路で実施された巡回結果及び劣化診断結果の少なくとも一方と、に基づいて、重要道路の劣化度に寄与する少なくとも1つの項目及びその相関関係を特定することによって、重要道路における管理者又は他の熟練者の知見を、非重要道路又は他の重要道路にフィードバックし、道路管理システムSの精度を高めることができる。
【0122】
(2)また例えば、変形例(1)では、重要道路の巡回結果等が非重要道路又は他の重要道路にフィードバックされる場合を説明したが、非重要道路又は他の重要道路で実施された修繕工事に基づいて、フィードバック結果が妥当であったか否かが検証されてもよい。フィードバック結果が妥当であれば、それ以降についてもフィードバックを継続し、フィードバック結果が妥当でなければ、劣化度の計算アルゴリズムを見直す等の処置をするようにしてもよい。
【0123】
本変形例の道路管理システムSでは、検証部105が実現される。検証部105は、非重要道路又は他の重要道路で実施された修繕工事に基づいて、特定部104の特定結果の妥当性を検証する。例えば、妥当性の検証は、管理者又は他の熟練者によって実施され、その検証結果が道路管理システムSに入力されてもよい。この場合、検証部105は、管理者又は他の熟練者によって入力された検証結果を取得する。
【0124】
また例えば、検証部105は、非重要道路又は他の重要道路における修繕前後の道路情報をモニタリングし、その変化によって妥当性を検証してもよい。検証部105は、修繕前後の道路情報に応じた劣化度が改善されていれば妥当であると判定し、劣化度が改善されていなければ妥当でないと判定する。
【0125】
特定部104は、検証部105の検証結果に応じた処理を実行する。例えば、特定部104は、検証部105の検証結果が妥当であれば、特に処理内容を変更せずに、劣化度に寄与する少なくとも1つの項目及びその相関関係を特定する。また例えば、特定部104は、検証部105の検証結果が妥当でなければ、劣化度に寄与する少なくとも1つの項目及びその相関関係の特定方法を変更する。
【0126】
変形例(2)によれば、非重要道路又は他の重要道路で実施された修繕工事に基づいて、重要道路の劣化度に寄与する少なくとも1つの項目及びその相関関係の特定結果の妥当性を検証することによって、重要道路から非重要道路又は他の重要道路に対するフィードバックの精度を上げることができる。
【0127】
(3)また例えば、道路管理システムSは、ある道路の修繕が実施された場合に、その前後における道路情報の変化をモニタリングすることにより、どのような修繕を実施すると、どの程度の期間、道路の健全性が保持されるかを明示するようにしてもよい。例えば、道路管理システムSは、路面の表面の舗装を補修する工事で済むのか、それとも路盤の下の改良を含めた大規模工事になるのかを明示してもよい。
【0128】
本変形例の道路管理システムSは、モニタリング部106が実現される。モニタリング部106は、修繕済みの道路の修繕前後における道路情報をモニタリングする。例えば、モニタリング部106は、修繕の効果の再現性を高めるために、当該箇所の道路情報に含まれる個々の項目をモニタリングする。例えば、交通量(日、時間、分、サイクル)、道路の重要、路面温度、道路における加速度又は振動、車両の重量、降雨量、日射量、車両の実速度、画像又は動画から得られるナンバープレートなどの情報がモニタリングされる。
【0129】
修繕情報取得部103は、モニタリング部106のモニタリング結果に更に基づいて、修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する。例えば、修繕情報取得部103は、実施された修繕の内容とモニタリング結果を比較し、モニタリングの対象となった道路情報のうち、修繕情報に対して有効な少なくとも1つの項目及びその相関関係を特定する。修繕情報取得部103は、この特定結果に基づいて、修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得する。
【0130】
修繕情報取得部103は、ある道路の劣化度が閾値以上である場合に、上記特定結果に基づいて、どのような修繕が適切であるかを決定する。例えば、この道路を通行する一般車両30の重量が修繕結果に大きく寄与することが特定された場合に、修繕が必要な箇所に通行しうる車両の最大重量を鑑み、適切な修繕となるように修繕内容を決定する。
【0131】
変形例(3)によれば、修繕済みの道路の修繕前後における道路情報のモニタリング結果に更に基づいて、修繕緊急度及び修繕内容の少なくとも一方を取得することによって、過不足のない修繕を実施し、ライフサイクルコストの低減に寄与することができる。また、将来どこでどのような修繕が必要になるかを明確にできるので、修繕の緊急度も予め設定することができる。また、修繕の緊急度は、上記の手法に加えて、その道路自体の重要性(緊急車両が通行するなど)も加味して道路の管理者が設定することができる。重要道路だけでなく、非重要道路についても、長期的な修繕計画を予め立てることができる。
【0132】
(4)また例えば、上記変形例を組み合わせてもよい。
【0133】
また例えば、実施形態では、道路の劣化度だけではなく、道路の重要度と予算が考慮されることによって修繕情報が取得される場合を説明したが、他の要素が考慮されて修繕情報が取得されてもよい。例えば、その道路における前回の修繕工事に関する情報、その道路付近で将来予定されているイベント情報、又はその道路付近の将来の気象予報などが考慮されて修繕情報が取得されてもよい。また例えば、第1情報と第2情報に基づいて劣化度が取得される場合を説明したが、第1情報だけに基づいて劣化度が取得されてもよいし、第2情報だけに基づいて劣化度が取得されてもよい。
【0134】
また例えば、実施形態では、道路管理サーバ10によって各機能が実現される場合を説明したが、道路管理システムSに複数のコンピュータが含まれている場合に、各コンピュータで機能が分担されてもよい。例えば、データ記憶部100が道路管理サーバ10以外のサーバコンピュータによって実現されてもよい。また例えば、管理者端末20によって各機能が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0135】
S 道路管理システム、N ネットワーク、10 道路管理サーバ、11,21,31,41 制御部、12,22,32,42 記憶部、13,23,33,43 通信部、20 管理者端末、24 操作部、25 表示部、30 一般車両、34,44 センサ部、35,45 撮影部、40 検出装置、100 データ記憶部、101 道路情報取得部、102 劣化度取得部、103 修繕情報取得部、104 特定部、105 検証部、106 モニタリング部、DB1 道路データベース、DB2 一般車両データベース、DB3 検出装置データベース、DB4 劣化度データベース、DB5 修繕情報データベース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12