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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】転写装置および転写方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
H01L21/30 502D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020007601
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2020116949
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019008574
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加島 慎也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将臣
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 浩
(72)【発明者】
【氏名】本木 弘
(72)【発明者】
【氏名】庭山 晃
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034314(JP,A)
【文献】特開2014-188950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写材料を可塑化する流体で満たされており、互いに接続される転写室と圧縮室とを含む密閉空間を有する基部と、
前記転写室内に配置され、前記被転写材料に転写される形状を有する転写型を保持する型保持部と、
前記転写室内に配置され、前記型保持部に対向し、前記型保持部に対して相対的に離接する方向に移動可能な型対向部と、
前記圧縮室の容積を変化させて前記密閉空間内の前記流体の圧力を調整するピストンと、を備える、
転写装置。
【請求項2】
前記ピストンは、前記基部に対して相対移動して前記圧縮室の容積を変化させる
求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記型対向部が前記型保持部に対して相対的に離接する方向は、前記ピストンが前記基部に対して相対的に移動する方向と同じである、
請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記ピストンを前記基部に対して相対的に移動させる第1アクチュエータと、
前記型対向部を前記型保持部に対して相対的に離接させる方向に移動させる第2アクチュエータと、
を更に備える、請求項2に記載の転写装置。
【請求項5】
前記第1アクチュエータが、前記第2アクチュエータを兼ねる、
請求項4に記載の転写装置。
【請求項6】
前記型対向部の側面と、前記密閉空間の内壁面とは、少なくとも一部で非接触である、
請求項1から5のいずれかに記載の転写装置。
【請求項7】
前記ピストンは、前記型保持部または前記型対向部の一方に当接し、前記型保持部または前記型対向部の一方を前記型保持部または前記型対向部の他方に対して相対的に近づく方向に移動させる、
請求項2または3に記載の転写装置。
【請求項8】
前記基部は、前記被転写材料の一方の面と前記型保持部との間に前記流体を導入する第1導入孔、および、前記被転写材料の他方の面と前記型対向部との間に前記流体を導入する第2導入孔を有する、
請求項7に記載の転写装置。
【請求項9】
前記ピストンは、前記型対向部または前記型保持部の一方を、前記型対向部または前記型保持部の他方から相対的に離れる方向に移動させる離隔部を有し、
前記離隔部は、前記型保持部または前記型対向部の一方に接続されている、
請求項7または8に記載の転写装置。
【請求項10】
前記流体は二酸化炭素である、
請求項1から9のいずれかに記載の転写装置。
【請求項11】
密閉空間に含まれる転写室内に被転写材料を配置し、
前記被転写材料を可塑化する流体で前記密閉空間内を満たし、
前記密閉空間に含まれており、前記転写室と接続されている圧縮室の容積を小さくして前記密閉空間内の前記流体を圧縮し、
前記被転写材料に転写される転写形状を有する転写型を前記被転写材料に押しつける、
転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写型が有する微細な転写形状を被転写材料に転写する転写装置および転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の表面に微細形状を転写する方法として、射出成形法やインプリント法などが知られている。
【0003】
射出成形法は、樹脂の軟化温度以下に加熱した転写型のキャビティ内に溶融させた樹脂を射出し、固化させることで形状を転写する方法である。
【0004】
しかしながら、表面に微細な形状を有する部品を射出成形法で成形しようとしても、射出された溶融樹脂が転写型の微細な形状の中に完全に充填される前に固化してしまい、意図した形状が成形されないことがあった。
【0005】
熱インプリント法は、板状の樹脂をガラス転移温度近傍まで加熱し、微細な形状を有する転写型を押し付けることで樹脂表面に微細形状を転写し、その後、冷却して転写型を樹脂から離型する方法である。樹脂が軟化している状態で転写型を押し付けることになるので、微細な形状を有する転写型に樹脂を完全に充填できる。
【0006】
しかしながら、熱インプリント法では、転写型を加熱および冷却するため、並びに、転写型に微細な形状を有する樹脂が充填されるまでに時間が掛かるため、サイクルタイム(製品1つを製造するために要する時間)が長くなってしまう。
【0007】
以上の経緯から、樹脂を可塑化させる作用を持った流体、例えば液体や加圧気体または超臨界流体等を適用した転写方法が提案されている。樹脂を可塑化させる作用を持った流体の具体例としては、加圧二酸化炭素または超臨界二酸化炭素等が挙げられる。それらを樹脂表面に含侵させると、樹脂が可塑化されて形状が転写されやすくなるため、通常の熱インプリント法のように転写型を高温にせずとも転写が可能となる。これにより熱インプリント法の欠点であるサイクルタイムが長いという問題を解消し、所望の転写物を得ることができる。
【0008】
例えば特許文献1および2には、樹脂が保持された空間に、加圧された二酸化炭素が供給されることで樹脂が可塑化され、所定の微細パターンが設けられた転写型に樹脂が押しつけられてパターンが転写材料に転写される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-235613号公報
【文献】特開2007-137033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された技術では、転写の際に、加圧された二酸化炭素雰囲気中で、金型の微細パターンを転写するための圧力をさらに印加することになる。転写のために必要となる実効的な加圧力は、機械的な印加力に加え、加圧流体が転写面を押し返す力に抗するための力も必要となる。このため、結果として転写の際に非常に大きなプレス力が必要となる。
【0011】
また、特許文献2に開示された技術では、樹脂成形体と超臨界二酸化炭素とが密閉された上室と下室とが移動可能な中間壁によって分けられている。そして、転写の際に、下室の圧力を上室の圧力より高くすることで中間壁に保持された樹脂成形体が上室側に移動して上室内の金型に押しつけられる。中間壁を上室側に移動させるためには密閉空間である上室内の二酸化炭素の体積を減少させる必要がある。この場合、上室内の二酸化炭素を圧縮するために大きな力が必要となる。このため、下室内の圧力を非常に大きくする必要がある。
【0012】
以上のことから、特許文献1および2に開示された技術では、気体を加圧するためにポンプ等の外部装置を必要とする。また、加圧した気体中でのプレスを行うため、大きなプレス力が必要とされる。その結果、大きなプレス力に耐えうる構造や、大きなプレス力を発生させるための大きな駆動源等、大がかりな外部装置を用いる必要が生じ、装置の製造コストが増大してしまう。このため、微細な形状を有する樹脂を安価に製造することが困難になってしまう。
【0013】
本発明は、金型の外部に大がかりな装置を使用することなく、微細形状を被転写材料に転写することができる転写装置および転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の転写装置は、被転写材料を可塑化する流体で満たされており、互いに接続される転写室と圧縮室とを含む密閉空間を有する基部と、前記転写室内に配置され、前記被転写材料に転写される形状を有する転写型を保持する型保持部と、前記転写室内に配置され、前記型保持部に対向し、前記型保持部に対して相対的に離接する方向に移動可能な型対向部と、前記圧縮室の容積を変化させて前記密閉空間内の前記流体の圧力を調整するピストンと、を備える。
【0015】
本発明の転写方法は、密閉空間に含まれる転写室内に被転写材料を配置し、前記被転写材料を可塑化する流体で前記密閉空間内を満たし、前記密閉空間に含まれており、前記転写室と接続されている圧縮室の容積を小さくして前記密閉空間内の前記流体を圧縮し、前記被転写材料に転写される転写形状を有する転写型を前記被転写材料に押しつける。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金型の外部に大がかりな装置を使用しない装置構成により、微細形状を被転写材料に転写することができる。特に被転写材料の被転写領域が大きくなった場合でも、安定して微細形状の転写を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る転写装置について説明するための図
図2】第1駆動プレートが上方向に移動した状態(第1の状態)の転写装置を説明するための図
図3】室温(20℃前後)における二酸化炭素の等温図(模式図)
図4】第1の状態から第2駆動プレートが上方向に移動した状態(第2の状態)の転写装置について説明するための図
図5】本発明の第2の実施形態に係る転写装置を説明するための図
図6】第1駆動プレートが上方向に移動し、第2駆動プレートに当接した状態(第3の状態)の転写装置を説明するための図
図7】第1駆動プレートが第2駆動プレートと当接した状態で、第2駆動プレートと一体となってさらに移動した状態(第4の状態)の転写装置について説明するための図
図8】本発明の第3の実施形態に係る転写装置について説明するための図
図9A】第3の実施形態に係る転写装置において、第1金型と第2金型とが型締めされていない状態で、第2金型を上側から見た様子を示す図
図9B】被転写材料としてロール状の樹脂フィルムを用いる場合について説明するための図
図10】第3の実施形態に係る転写装置の型締め前における、樹脂フィルムを配置する様子を示す図
図11】第3の実施形態に係る転写装置において、ピストンが第2型保持部の下面に接触する位置まで上昇した様子を示す図
図12】第3の実施形態に係る転写装置において、ピストンの上昇により、第2転写型が第1転写型に押し付けられている様子を示す図
図13】ピストンが第2型保持部の中心からずれた位置に設けられた場合の転写装置の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(装置の説明)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、転写装置100について説明するための図である。図1では、転写装置100の縦断面図が示されている。図1における各部の縮尺は正確なものではなく、図1では各部の位置関係が模式的に示されている。なお、以下の説明における上下方向は、図1における上下方向に対応している。
【0020】
図1に示すように、転写装置100は、第1金型11と、第1金型11と対向する第2金型12とを有する。図1では、第1金型11と第2金型12とが型締めされた状態が示されている。第1金型11と第2金型12とが型締めされた状態では、第1金型11と第2金型12との間には、密閉空間である密閉室13が構成される。第1金型11および第2金型12は、本発明の基部の一例である。
【0021】
密閉室13は、内部に第1転写型14、第2転写型15および保持部16が配置される転写室131と、密閉室13内の流体に圧力を加えて圧縮するための圧縮室132と、転写室131と圧縮室132とを繋ぐ通路133と、を有する。
【0022】
転写室131の内部には、互いに対向するように第1転写型14および第2転写型15が設けられており、第1転写型14と第2転写型15との間には被転写材料である樹脂成形体30が配置されうる。本第1の実施形態において、第1転写型14は、第1金型11の転写室131における上側の内壁面111に保持されており、第2転写型15は、保持部16に保持されている。具体的な保持の方法については、例えば図示しないネジや接着剤などが挙げられる。なお、第1転写型14および第2転写型15は本発明の転写型の一例である。また、内壁面111は本発明の型保持部の一例であり、保持部16は本発明の型対向部の一例である。
【0023】
樹脂成形体30は、例えばあらかじめ射出成形等により成形されていればよい。樹脂成形体30に用いられる材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー(COP、COC)、ABS樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)ポリスチレン(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、テトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリビニルアルコール(PVA)ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレレン-エチレンテレフタレート(PBT-PET共重合樹脂)、ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、6ナイロン(PA6)、6-6ナイロン(PA66)、6Tナイロン(PA6T)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリアセタール(POM)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。また、これらは、フィラー等を配合したコンパウンド品や、複数種の樹脂をアロイ化またはブレンド化した混合品であってもよい。これらは用途に応じて適宜選択される。
【0024】
第1転写型14および第2転写型15は、それぞれ樹脂成形体30と対向する面に樹脂成形体30に転写すべき微細な形状(パターン)を有する。この微細形状に、後述するように可塑化された樹脂成形体30が押しつけられることによって、樹脂成形体30の表面に微細形状が転写されるようになっている。
【0025】
第1転写型14を保持する内壁面111および/または第2転写型15を保持する保持部16の内部には、温度を調節するための図示しないヒーターが埋め込まれていてもよい。
【0026】
転写室131の内部には、樹脂成形体30および下側の第2転写型15を保持した状態で上下方向に移動可能な保持部16が配置されている。保持部16には、その下端に保持部16を移動させるための2本のロッド17、17の一端が接続されており、ロッド17の他端は第2金型12に形成された第1ガイド穴121を通じて、密閉室13外の第2駆動プレート20に接続されている。なお、ロッド17には第1シール部材122(Oリング等)が設けられ、ロッド17が第1ガイド穴121内を移動しても密閉室13内の気密が破れないようになっている。
【0027】
保持部16の外周面、特に保持部16の上下面以外の側面は、転写室131の内壁面との間に所定の空間が形成されている。これは、保持部16の周囲と転写室131との間に樹脂成形体30の可塑化用の流体が一様に入り込むとともに、保持部16の下面側に流体が回り込むようにするためである。このような構成は、保持部16の移動に対し、流体の圧縮を起こさせないようにするためのものであり、保持部16を移動させる力の減少に寄与するものである。
【0028】
第1駆動プレート18は、第2金型12内に設けられた空間である駆動室125内に設けられており、第1アクチュエータ21(例えば、サーボモータや油圧シリンダ等)によって上下方向に移動することができる。また、第2駆動プレート20は同様に駆動室125内に設けられており、第2アクチュエータ22によって、第1駆動プレート18とは独立して上下方向に動くことができる。
【0029】
転写室131には、転写の際に樹脂成形体30を可塑化するために使用される流体を、転写後に外部に排出するための排出孔134が接続されている。排出孔134は、第2金型12の側面を貫通し、転写装置100の外部と転写室131の内部とを接続するように構成されている。排出孔134は、転写後に流体を排出するとき以外は、図示しないバルブ等によって閉じられている。
【0030】
圧縮室132は、転写室131と通路133によって接続されている。すなわち、転写室131および圧縮室132は、同一の密閉空間である密閉室13内に配置されている。圧縮室132は、第1金型11の内壁と、第2金型12の内壁と、第2金型12の内部に設けられた第2ガイド穴123に沿って上下方向に移動可能なピストン19の上端面と、によって構成されている。ピストン19には第2シール部材124(Oリング等)が設けられ、ピストン19が第2ガイド穴123内を移動しても密閉室13内の気密が破れないようになっている。圧縮室132は、本発明の容積変化機構の一例である。
【0031】
圧縮室132には、樹脂成形体30を可塑化するための流体を密閉室13内に導入するための導入孔135が接続されている。導入孔135は、第2金型12の側面を貫通し、転写装置100の外部と圧縮室132の内部とを接続するように構成されている。導入孔135の外部側には、例えば図示しないポンプや流体を貯留するボンベ等が接続されている。また、この導入孔135はボンベ等から流体を導入するとき以外は、図示しないバルブ等により閉じられている。
【0032】
なお、本第1の実施形態に係る転写装置100では、樹脂成形体30を可塑化するための流体として、二酸化炭素が用いられる。本第1の実施形態に係る転写装置100では、二酸化炭素は、気体の状態で導入孔135から圧縮室132(密閉室13)内に導入され、圧縮室132において加圧されて圧縮され、気体状態と液体状態とが混合した気液混合状態とされて使用される。圧縮室132における二酸化炭素の圧縮についての詳細は、後述する。
【0033】
上記説明したように、本第1の実施形態に係る転写装置100では、樹脂成形体30を可塑化する流体を圧縮する圧縮室132と、可塑化された樹脂成形体30に転写する転写室131とを含む密閉室13が、第1金型11と第2金型12との間に設けられている。
【0034】
(方法の説明)
次に、上記説明した転写装置100を用いて、被転写材料である樹脂成形体30に転写を行う転写方法について説明する。
【0035】
まず、第1転写型14が内壁面111に取り付けられるとともに、樹脂成形体30および第2転写型15が保持部16に保持される。この状態で、第1金型11と第2金型12とが型締めされる。これにより、転写装置100は、図1に示す状態(以下、初期状態と記載する)となる。
【0036】
第1金型11と第2金型12とが型締めされた状態では、図1に示すように、第1金型11の内壁、第2金型12の内壁、およびピストン19により、転写室131および圧縮室132を含む密閉室13が構成される。転写室131の内部には、第1転写型14、第2転写型15、保持部16、および樹脂成形体30が配置されている。
【0037】
この状態で、導入孔135を通じて、転写装置100の外部から所定量の二酸化炭素が密閉室13内に導入される。
【0038】
その後、第1アクチュエータ21により、第1駆動プレート18に上向きの力が与えられると、第1駆動プレート18が駆動室125内を上方向に移動する。
【0039】
図2は、第1駆動プレート18が上方向に移動した状態(第1状態)の転写装置100を説明するための図である。以下では、この状態を第1状態と記載する。
【0040】
図2に示す第1状態は、第1駆動プレート18が上方向に移動したことにより、第1駆動プレート18に接続されているピストン19も圧縮室132内で第1駆動プレート18と同じ移動量上昇する。これにより、圧縮室132を含む密閉室13全体の体積が図1に示す初期状態と比較してピストン19が上方向に移動した分減少する。このため、圧縮室132を含む密閉室13内の二酸化炭素が圧縮(等温圧縮)されて一部が液体となる。従って、圧縮室132を含む密閉室13内は、気液混合状態の二酸化炭素によって満たされる。
【0041】
図3は、室温(20℃前後)における二酸化炭素の等温図(模式図)である。縦軸は圧力、横軸は体積にそれぞれ対応している。図3に示すように、二酸化炭素は等温圧縮されると、徐々に体積が減少していき(A点→B点)、密度が上昇する。B点で二酸化炭素の液化が始まり、B点とC点との間では、気体と液体の二酸化炭素が共存する気液平衡状態となる。この状態では体積が変化しても圧力はほぼ一定である。C点で二酸化炭素の液化が完了すると、それ以上圧力を高くしても体積はほとんど減少しなくなる。
【0042】
図3における気液平衡状態の圧力Pは、例えば21.5℃の二酸化炭素においては約6MPaである。すなわち、転写装置100では、21.5℃の二酸化炭素を用いる場合には、気体の二酸化炭素を転写装置100内に導入した状態で、ピストン19を上昇させて圧縮室132を含む密閉室13内の二酸化炭素の圧力を約6MPaとする。その状態で、さらに密閉室13内の体積を減少させるようにピストン19を上昇させることにより、密閉室13内の二酸化炭素を好適に気液混合状態とすることができる。ここで、転写装置100内に導入する二酸化炭素をあらかじめ6MPaに近い値(例えば5.7MPa等)としておけば、圧縮室132内でのピストン19の移動により二酸化炭素を気液混合状態まで圧縮するために必要な力は小さくてすむ。
【0043】
転写装置100における、密閉室13内の体積、並びに、図1に示す初期状態から図2に示す第1状態へ移行する際の第1駆動プレート18およびピストン19の移動量(ストローク)は、上記のように密閉室13内の二酸化炭素を好適に気液混合状態とすることができるような値に適宜設定されればよい。ピストンの移動量(ストローク)とは、ピストンが第1金型11および第2金型12に対して相対的に移動する距離を意味している。
【0044】
ここで、ピストン19の構造としては、所定の圧縮を行う際にその移動量が大きくなるように設計した方がより好ましい。具体的には、例えばピストン19の移動量を、後述する保持部16の移動量(保持部16が内壁面111に対して相対的に移動する距離)より大きくすることが好ましい。ピストン19の移動量を大きくすることで、ピストン19の上端面の面積を小さくしても、密閉室13内の二酸化炭素を気液混合状態とするために必要な密閉室13の体積変化を生じさせることができるようになる。
【0045】
ピストン19の上端面の面積を小さくできれば、大面積のピストンを移動させる場合と比較して、ピストン19の上端面に掛かる力が小さくなるため、ピストン19を移動させるために必要とされる第1アクチュエータ21の力を小さくすることができる。このため、ピストン19を移動させるための第1アクチュエータ21として、出力の小さい小型のものを使用できる。また、ピストン19の上端面の面積を小さくすることで、転写装置100そのものを小型化することもできる。
【0046】
なお、上記説明は一例であって、転写装置100において用いられる二酸化炭素の温度は21.5℃に限定されず、適宜所望の温度の二酸化炭素を用いるようにしてもよい。その場合、密閉室13内において所望の温度の二酸化炭素が気液平衡状態となるように転写装置100を設計すればよい。あるいは、温度調節装置等によって、導入する二酸化炭素の温度を適宜調節するようにしてもよい。
【0047】
次に、密閉室13内の二酸化炭素が気液混合状態となった後、第2駆動プレート20は、第2アクチュエータ22により、上方向に移動する。図4は、第2駆動プレート20が移動した状態の転写装置100について説明するための図である。図4に示すように、第2駆動プレート20が上方向に移動し、駆動室125の上側の内壁に接触する位置まで上昇する。
【0048】
これにより、第2駆動プレート20に接続されているロッド17とともに、転写室131内の保持部16が上昇する。すると、保持部16に保持されている樹脂成形体30の上側の面が、密閉室13の上側の内壁面111に固定されている第1転写型14に押しつけられる。また、樹脂成形体30の下側の面が、樹脂成形体30と保持部16との間に配置されている第2転写型15に押しつけられる。
【0049】
なお、図4に示す第2状態において、密閉室13内は気液混合状態の二酸化炭素に満たされている。保持部16の周囲では、その側面と密閉室13の内壁面との間に形成されている空間を通って、気液混合状態の二酸化炭素が保持部16の下面側にも回り込んでいる。これにより、保持部16の上面側と下面側とで圧力が均等となる。また、気液混合状態では、体積の変化により気相と液相の比が変わるのみであるので、密閉室内の体積を減少させても、実質的に密閉室内の圧力はほぼ一定といえる。この状態では、樹脂成形体30の表面に二酸化炭素が含浸することで、樹脂成形体30の表面が可塑化されている。したがって、この状態で樹脂成形体30が第1転写型14および第2転写型15に押しつけられることで、樹脂成形体30の表面には第1転写型14および第2転写型15がそれぞれ有する微細形状が好適に転写される。
【0050】
なお、気液混合状態の二酸化炭素は、非常に浸透性が高いため、樹脂成形体30と第1転写型14および/または第2転写型15とがあらかじめ接触していたとしても、その微細な隙間から入り込み、樹脂成形体30の被転写面を好適に可塑化させることができる。
【0051】
このように樹脂成形体30への転写が完了すると、排出孔134が開かれて気液混合状態の二酸化炭素が排出される。排出完了後、転写装置100は型開きされ、微細形状が転写された樹脂成形体30が取り出される。
【0052】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる構成については、符号にaを付して記載する。
【0053】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る、転写装置100aについて説明するための図である。図5に示すように、転写装置100aは、互いに当接するように設けられた第1駆動プレート18aと第2駆動プレート20aとを有する。第1駆動プレート18aにはアクチュエータ21aが接続されており、第1駆動プレート18aはアクチュエータ21aによって上下方向に移動する。
【0054】
第1駆動プレート18aがアクチュエータ21aによって上方向に移動するとき、第1駆動プレート18aは第2駆動プレート20aに下側から当接する。その後、アクチュエータ21aによって、第2駆動プレート20aの下側の面に接した状態となっていた第1駆動プレート18aはさらに上方向に移動することができる。このような構成により、本実施形態の転写装置100aでは、流体を圧縮するためのピストン19の第1駆動プレート18aによる移動と、転写を行うための保持部16の第2駆動プレート20aによる移動とを、同一(単一)のアクチュエータ21aによって行うことができる。
【0055】
図6は、第1駆動プレート18aが上方向に移動し、第2駆動プレート20aに当接した状態(第3の状態)の転写装置100aを説明するための図である。図6では、第1駆動プレート18aの移動に伴ってピストン19が上昇し、密閉室13内の二酸化炭素が気液混合状態となる。この状態でさらにアクチュエータ21aによって第1駆動プレート18aが上昇することにより、第2駆動プレート20aが第1駆動プレート18aと一体となって上昇する。これにより、保持部16に保持されている樹脂成形体30の上側の面が、密閉室13の上側の内壁面111に固定されている第1転写型14に押しつけられる。また、樹脂成形体30の下側の面が、樹脂成形体30と保持部16との間に配置されている第2転写型15に押しつけられる。図7は、第1駆動プレート18aが第2駆動プレート20aと当接した状態で、第2駆動プレート20aと一体となってさらに移動した状態(第4の状態)の転写装置100aについて説明するための図である。
【0056】
図7に示す第4の状態では、第3の状態よりも第1駆動プレート18aが上昇している分、ピストン19も更に上昇することになるため、これに伴って密閉室13の体積は第3の状態よりも減少することになる。しかしながら、第3の状態から第4の状態において、密閉室13内の二酸化炭素は気液混合状態、すなわち気液平衡状態であるため、温度が変動しない限り、気相と液相が共存する範囲で密閉室13内の体積がある程度変動しても室内の二酸化炭素の圧力はほぼ一定である(図3参照)。従って、第3の状態から第4の状態へ遷移する際にピストン19によって生じる密閉室13内の体積変化は、樹脂成形体の転写に全く悪影響を及ぼさない。
【0057】
なお、気液混合状態を維持するためには、密閉室13内の体積変化は、例えば密閉室13全体の体積の約50%以下に収められることが望ましい。その理由は以下の通りである。液体の二酸化炭素の密度は770kg/mであり、気体の二酸化炭素の密度は190kg/mである(20℃の場合)。従って、20℃の気液混合状態の二酸化炭素では、約75%の体積変化が生じると、全てが液体の二酸化炭素に相転移してしまう。すなわち、密閉室13内の体積変化は、約75%より小さい値に収められる必要がある。
【0058】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る転写装置100aでは、アクチュエータを1つに減らした分、第1の実施形態よりも簡単な構成とすることができる。これにより、転写装置100a全体として小型化が可能となり、安価な転写装置100aを提供することができる。
【0059】
<第1および第2の実施形態に係る転写装置の作用・効果>
以上説明したように、第1および第2の実施形態に係る転写装置100(100a)は、樹脂成形体30を可塑化する流体で満たされる密閉室13を有する第1金型11および第2金型12と、密閉室13内に配置され、樹脂成形体30に転写される形状を有する第1転写型14を保持する内壁面111と、内壁面111に対向し、内壁面111に対して相対的に離接する保持部16と、密閉室13の容積を変化させる圧縮室132と、を備える。
【0060】
このように、流体を圧縮するための圧縮室132と、樹脂成形体30に転写を行うための転写室131と、が同一の密閉空間である密閉室13内に設けられている。すなわち、転写装置100(100a)の内部に、導入気体の圧力調整機構と転写機構の2つの機能が独立して設けられている。このような構成により、流体を圧縮するための装置を転写装置100(100a)の外部に用意する必要がなく、流体を圧縮するための装置を外部に設けた場合と比較して、転写装置100(100a)全体の構成を簡単にすることができる。これにより、全体として安価な転写装置100(100a)を提供することができる。
【0061】
また、実施形態に係る転写装置100(100a)では、ピストン19が第1金型11および第2金型12に対して相対的に移動する距離は、保持部16が内壁面111に対して相対的に移動する距離よりも大きい。これに伴い、ピストン19の上端面の面積は、比較的小さくてすむようになる。このため、ピストン19を移動させるための第1アクチュエータ21(またはアクチュエータ21a)として、出力の小さな小型のものを使用できる。また、ピストン19の上端面の面積を小さくすることで、転写装置100(100a)そのものを小型化することもできる。
【0062】
また、実施形態に係る転写装置100(100a)では、保持部16を支持しかつ移動させるロッド17の太さは、保持部16を移動させるための力を伝達できるだけの強度を確保でき、かつなるべく細くなるように形成されている。このような構成により、転写室131内で保持部16が移動した場合でも、ロッド17が密閉室13内に侵入することによって生じる密閉室13内の体積変化を小さくすることができる。
【0063】
また、ロッド17をなるべく細くすることで、保持部16の上面(樹脂成形体30および第2転写型15が載置される面)と下面(ロッド17が接続される面)との面積差を小さくすることができる。また、保持部16の周囲と転写室131の内壁面との間に隙間が設けられているため、保持部16の下面と転写室131の内壁面との間に二酸化炭素が入り込むようになっている。
【0064】
このような構成により、密閉室13内の二酸化炭素から保持部16の上面と下面に掛かる力が打ち消しあい、上面にかかる力は、実質的にロッドの断面積と二酸化炭素の蒸気圧力を掛け合わせたものとなる。その結果、密閉室13内で保持部16を移動させる際に加圧流体が転写面を押し返す力は、流体が保持部16の下側に回り込まない構造の転写装置の場合と比較して小さくなる。このため、保持部16を移動させる力は比較的小さくてよく、第2アクチュエータ22(またはアクチュエータ21a)として、出力の小さい小型のものを使用できる。これにより、装置を大がかりなものにすることなく樹脂成形体30の大面積化が可能となる。
【0065】
また、上記した実施形態に係る転写装置100(100a)では、流体は二酸化炭素である。転写装置100(100a)内に導入された二酸化炭素は、圧縮室132内で圧縮されて気液混合状態となる。気液混合状態の流体は、樹脂成形体30の表面に含浸し、可塑化させるため、第1転写型14および第2転写型15に押しつけられた樹脂成形体30の表面に、第1転写型14および第2転写型15の微細形状を好適に転写できる。
【0066】
さらに、密閉室13内が気液混合状態の二酸化炭素で満たされることにより、以下のような効果が得られる。図3に示すように、気液混合状態、すなわち気液平衡状態では、体積変化があっても圧力はほぼ一定である。すなわち、圧縮室132における圧縮により密閉室13内の二酸化炭素が気液混合状態となった後は、温度が変動しない限り、気相と液相が共存する範囲で密閉室13内の体積が変動しても室内の二酸化炭素の圧力はほぼ一定である。以上のことから、密閉室13内が気液混合状態の二酸化炭素で満たされることにより、密閉室13内に体積変化があっても気相と液相が共存する範囲であれば密閉室13内の圧力を一定に保つことができる。なお、気相と液相が共存する範囲とは、上記第2の実施形態に説明したように、密閉室13内の体積変化が約75%より小さい範囲、より好適には約50%より小さい範囲である。
【0067】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態に係る転写装置200について説明するための図である。図8では、転写装置200の縦断面図が示されている。図8における各部の縮尺は正確なものではなく、図8では各部の位置関係が模式的に示されている。なお、以下の説明における上下方向は、図8における上下方向に対応している。
【0068】
図8に示すように、転写装置200は、第1金型211と、第1金型211と対向する第2金型212とを有する。図8では、第1金型211と第2金型212とが型締めされた状態が示されている。第1金型211と第2金型212とが型締めされた状態では、第1金型211と第2金型212との間には、密閉空間である密閉室220が構成される。第1金型211および第2金型212は、本発明の基部の一例である。
【0069】
密閉室220は、互いに対向する第1型保持部231および第2型保持部232が配置される転写室221と、密閉室220内の流体に圧力を加えて圧縮するための圧縮室222と、を有する。転写室221と圧縮室222とは、第2型保持部232と、密閉室220を構成する第2金型212との間に設けられた隙間によって空間的に接続されている。
【0070】
転写室221の内部に配置される第1型保持部231および第2型保持部232のそれぞれは、第1転写型214および第2転写型215を互いに対向するように保持する。第1転写型214と第2転写型215との間には被転写材料である樹脂フィルム240が配置されうる。第1型保持部231および第2型保持部232による、第1転写型214および第2転写型215の保持の具体的な方法としては、例えば図示しないネジや接着剤等が挙げられる。第1転写型214および第2転写型215は本発明の転写型の一例である。また、第1型保持部231および第2型保持部232の一方は本発明の型保持部の一例であり、他方は本発明の型対向部の一例である。
【0071】
樹脂フィルム240は、例えばフィルム状の樹脂材料である。樹脂フィルムを構成する材料の具体例としては、上述した第1の実施形態で説明した材料が挙げられる。
【0072】
なお、第1の実施形態で説明した転写装置100では、被転写材料である樹脂成形体30は、転写が行われる際に転写室131内に封入されていたが、本第3の実施形態に係る転写装置200では、樹脂フィルム240の全体が転写室221内に封入されない場合がある。
【0073】
図9Aおよび図9Bは、第3の実施形態における転写装置200と樹脂フィルム240との関係を説明するための図である。図9Aは、転写装置200の第1金型211と第2金型212とが型締めされていない状態で、第2金型212を上側から見た様子を示す図である。図9Aでは、図示の都合上、樹脂フィルム240を透過して第2金型212が示されている。
【0074】
図9Aに示すように、第2金型212の上面の一部には、型締めされた際に密閉室220を形成するための開口223が形成されている。被転写材料である樹脂フィルム240は、この開口223を覆うように配置される。
【0075】
図9Aでは、図9Bに示すように、被転写材料として、ロール状の樹脂フィルム240が用いられる例について示している。図9Bは、被転写材料としてロール状の樹脂フィルム240を用いる場合について説明するための図であって、図9Bは、ロール状の樹脂フィルム240の巻き取り方向に沿った平面における断面図である。図9Bでは、転写装置200の両側に樹脂フィルム240を巻き付けるロール300Aおよび300Bを配置し、一方のロール300Aで他方のロール300Bに巻き付けられた樹脂フィルム240を巻き取る例が示されている。
【0076】
図9Aおよび図9Bに示す例では、ロール300Bが樹脂フィルム240を巻き取っていく。樹脂フィルム240の転写されるべき所定の位置が開口223に重なった時点で、ロール300Bは樹脂フィルム240の巻き取りを停止させる。この状態で第1金型211と第2金型212との型締めがなされ、樹脂フィルム240への転写が行われる。
【0077】
開口223の周囲には、第3シール部材261(Oリング等)が設けられている。言い換えると、第3シール部材261は、第1金型211と第2金型212とが型締めされた状態において、転写室221の周囲における、第1金型211と第2金型212との間の空間を塞ぐように設けられている。このような第3シール部材261によって、第1金型211と第2金型212とが型締めされた状態における、転写室221の気密が確保される。このような構成により、第3の実施形態の転写装置200では、被転写材料の全体が転写室221の内部に封入されない場合でも、好適に転写を行うことができる。
【0078】
このようにして所定の位置への転写が完了すると、型締めが解除され、ロール300Bによって樹脂フィルム240が所定量巻き取られる。所定量の巻き取りが完了すると、再度型締めがなされ、樹脂フィルム240への転写が行われる。このような工程を繰り返すことにより、ロール状の樹脂フィルム240への連続した転写が好適に行われる。
【0079】
図9Aに示すように、第2金型212には、開口223の他、後に詳細を説明する第2導入孔252が開口しており、この第2導入孔252の周囲にも第4シール部材262(Oリング等)が設けられることで、第2導入孔252からも密閉室220の気密が破れないようになっている。
【0080】
なお、図9Aおよび図9Bでは、樹脂フィルム240がロール300Bにより巻き取られることで、ロール状の樹脂フィルム240に連続した転写が行われる例を示したが、本発明はこれに限定されない。転写室221の内部に封入できない大きさの樹脂フィルム1枚に転写を行う場合や、転写室221の内部に樹脂フィルムが封入される場合でも、本発明の転写装置200を適用することが可能である。
【0081】
図8の説明に戻る。第1転写型214および第2転写型215は、それぞれ樹脂フィルム240と対向する面に樹脂フィルム240に転写すべき微細な形状(パターン)を有する。この微細形状に、可塑化された樹脂フィルム240が押しつけられることによって、樹脂フィルム240の表面に微細形状が転写されるようになっている。
【0082】
第1転写型214を保持する第1型保持部231および/または第2転写型215を保持する第2型保持部232の内部には、温度を調節するための図示しないヒーターが埋め込まれていてもよい。
【0083】
第1転写型214を保持する第1型保持部231は、第1金型211の転写室221における上側の面である内壁面211Wに固定されている。一方、第2転写型215を保持する第2型保持部232と、第2金型212の転写室221における内壁面212Wとの間には所定の空間が形成されている。これは、第2型保持部232の周囲と内壁面212Wの間に樹脂フィルム240を可塑化するための流体を一様に入り込ませるとともに、転写室221と、第2型保持部232の下面側に存在する圧縮室222とを空間的に接続するためである。このような構成は、第2型保持部232の移動に対し、流体の圧縮を起こさせないようにするためのものであり、第2型保持部232を移動させる力の減少に寄与するものである。
【0084】
第2型保持部232の下方の面には、下方に突出するガイドピン232Pが設けられている。図8に示す例では、ガイドピン232Pは、2本設けられている。ガイドピン232Pは、第2金型212に設けられた第3ガイド穴2121の内部に嵌め入れられている。ガイドピン232Pおよび第3ガイド穴2121により、第2型保持部232の水平方向への移動は規制されており、第2型保持部232は上下方向にのみ移動可能となっている。また、転写室221とガイドピン232Pの下部空間とを空間的に接続するため、ガイドピン232Pと第3ガイド穴2121の内壁面との間に図示しない隙間が形成されている。
【0085】
また、第2型保持部232の下方には、第2転写型215の水平方向の断面積より小さい断面積を有する、例えば円筒形のピストン271が、第2転写型215と離隔可能に配置されている。ピストン271は、第2金型212に設けられた第4ガイド穴2122の内部に、上下方向に移動可能に嵌め入れられている。ピストン271には第5シール部材263(Oリング等)が設けられ、ピストン271が第4ガイド穴2122内を移動しても、密閉室220内の気密が破れないようになっている。ピストン271は、図示しないアクチュエータにより、上下方向の移動を行うようになっている。
【0086】
ピストン271は、第2型保持部232を下方に移動させて第1型保持部231から離隔させるリターンピン272を有する。リターンピン272は、本発明の離隔部の一例である。リターンピン272は、軸と、軸よりも断面積が大きい下端部とによって構成されている。リターンピン272の軸の上端部は、第2型保持部232の下面に接続されている。ピストン271の上端部には、リターンピン272の軸を通す穴が設けられており、当該穴の大きさはリターンピン272の下端部の断面積より小さくなっている。これにより、ピストン271が下方に移動する際、リターンピン272およびリターンピン272と接続されている第2型保持部232もピストン271と一体となって下方に移動する。
【0087】
転写室221には、転写の際に樹脂フィルム240を可塑化するために使用される流体を、転写前に導入する第1導入孔251および第2導入孔252が接続されている。第2導入孔252は、第2金型212の側面を貫通し、転写装置200の外部と転写室221の内部とを接続するように構成されている。そして、第2導入孔252は、途中で枝分かれして第1金型に設けられた第1導入孔251に接続される。
【0088】
第2導入孔252の入口から流体が流し込まれると、流体は第2導入孔252を通って転写室221の樹脂フィルム240の下面側に導入される。また、第2導入孔252から流し込まれた流体の一部は、上述の枝分かれした部位から第1導入孔251へ流れ込み、第1導入孔251を通って第1型保持部231の下面側、すなわち転写室221の樹脂フィルム240の上面側に導入される。
【0089】
このように枝分かれした流体の導入孔により、被転写材料である樹脂フィルム240の全体が転写室221内に封入されないために転写室221が樹脂フィルム240によって上下に分断されてしまう場合でも、樹脂フィルム240の上下の面に好適に流体を導入することができる。これとともに、樹脂フィルム240の上下に存在する流体の圧力を速やかに同じ圧力とすることができる。
【0090】
一方、転写室221には、転写後に外部に排出するための排出孔253も接続されている。排出孔253は、第2金型212の側面を貫通し、転写装置200の外部と転写室221の内部とを接続するように構成されている。排出孔253は、転写後に流体を排出するとき以外は、図示しないバルブ等によって閉じられている。
【0091】
圧縮室222は、第2型保持部232の下面と、第2金型212の内壁と、ピストン271の上端面と、によって構成されている。圧縮室222は、上述したように、第2型保持部232と第2金型212の内壁面212Wとの間の所定の空間によって、転写室221と空間的に接続されている。すなわち、転写室221および圧縮室222は、同一の密閉空間である密閉室220を構成している。
【0092】
ピストン271が上昇することで、圧縮室222内の流体が圧縮される。圧縮室222と転写室221とは上述したように空間的に接続されているため、ピストン271の上昇により、密閉室220内の流体の圧力が上昇する。第3の実施形態における流体は、第1の実施形態と同様、二酸化炭素である。二酸化炭素は、気体の状態で第1導入孔251および第2導入孔252から密閉室220内に導入され、ピストン271の上昇によって加圧、圧縮されて、気体状態と液体状態とが混合した気液混合状態となる。この状態で転写装置200における転写が行われる。圧縮室222は、本発明の容積変化機構の一例である。
【0093】
上記説明したように、本第3の実施形態に係る転写装置200では、樹脂フィルム240を可塑化する流体を圧縮する圧縮室222と、可塑化された樹脂フィルム240に転写する転写室221とを含む密閉室220が、第1金型211と第2金型212との間に設けられている。
【0094】
(方法の説明)
次に、上記説明した転写装置200を用いて、被転写材料である樹脂フィルム240に転写を行う転写方法について説明する。
【0095】
まず、第1転写型214が第1型保持部231に取り付けられるとともに、第2転写型215が第2型保持部232に保持される。そして、図10に示すように、樹脂フィルム240が転写されるべき位置に配置される。図10は、転写装置200の型締め前における、樹脂フィルム240を配置する様子を示す図である。なお、以下の方法の説明に用いられる図10図12は、図8と同じ断面における縦断面図である。
【0096】
そして、図8に示すように、第1金型211と第2金型212とが型締めされる。これにより、転写装置200は、図8に示す状態(以下、初期状態と記載する)となる。初期状態において、樹脂フィルム240の一部は転写室221の外側へ露出している(図9Aおよび図9B参照)が、転写室221の周囲における第1金型211と第2金型212との間の隙間を塞ぐように配置された第3シール部材261によって、転写室221内の気密は確保されている。
【0097】
従って、初期状態では、図8に示すように、転写室221の内部に、第1転写型214と、第2転写型215と、第1型保持部231と、第2型保持部232と、樹脂フィルム240の一部が配置されている。
【0098】
この状態で、第2導入孔252および第1導入孔251を通じて、転写装置200の外部から所定量の二酸化炭素が転写室221および圧縮室222内に導入される。
【0099】
そして、図11に示すように、図示しないアクチュエータにより、ピストン271が上方向に移動させられる。図11は、ピストン271が第2型保持部232の下面に接触する位置まで上昇した様子を示す図である。これにより、図11における圧縮室222を含む密閉室220全体の体積は、図8に示す初期状態と比較して、ピストン271が上方向に移動した分減少する。このため、圧縮室222を含む密閉室220内の二酸化炭素が圧縮(等温圧縮)されて一部が液体となる。従って、圧縮室222を含む密閉室220内は、気液混合状態の二酸化炭素によって満たされる。
【0100】
転写装置200における、密閉室220内の体積、並びに、図8に示す初期状態から図11に示す状態へのピストン271の移動量(ストローク)は、上記のように密閉室220内の二酸化炭素を好適に気液混合状態とすることができるような値に適宜設定されればよい。ピストンの移動量(ストローク)とは、ピストンが第1金型211および第2金型212に対して相対的に移動する距離を意味している。
【0101】
ここで、ピストン271の水平方向の断面積は、第1型保持部231の下面または第2型保持部232の上面の面積、換言すれば転写室221の水平方向の断面積と比較して、小さくなるように形成されている。そして、ピストン271の上下方向の移動量は、密閉室220内の二酸化炭素を気液混合状態とするために必要な密閉室220の体積変化を生じさせることができる移動量に設定される。
【0102】
ピストン271の上端面の面積を小さくすることで、大面積のピストンを移動させる場合と比較して、ピストン271の上端面に掛かる力が小さくなる。このため、ピストン271を移動させるために必要な力を小さくすることができる。このため、ピストン271を移動させるためのアクチュエータとして、出力の小さい小型のものを使用できる。また、ピストン271の上端面の面積を小さくすることで、転写装置200そのものを小型化することもできる。
【0103】
次に、密閉室220内の二酸化炭素が気液混合状態となった後、ピストン271には図示しないアクチュエータにより、更に上方向の力が加えられる。圧縮室222内の流体の圧縮が完了した状態(図11に示す状態)において、ピストン271の上端面は第2型保持部232の下面と接触する。このため、図12に示すように、図示しないアクチュエータによってピストン271に更に上方向の力が加えられることにより、第2型保持部232に保持されている第2転写型215が、樹脂フィルム240を挟んで、転写室221の上側の内壁面211Wに保持された第1型保持部231に保持されている第1転写型214に押し付けられる。図12は、ピストン271の上昇により、第2転写型215が第1転写型214に押し付けられている様子を示す図である。
【0104】
図12に示す状態では、樹脂フィルム240の表面に二酸化炭素が含浸することで、樹脂フィルム240の表面が可塑化されている。従って、樹脂フィルム240を挟んで第2転写型215が第1転写型214に押しつけられることで、樹脂フィルム240の表面には第1転写型214および第2転写型215がそれぞれ有する微細形状が好適に転写される。
【0105】
なお、気液混合状態の二酸化炭素は、非常に浸透性が高いため、図8および図11に示すように樹脂フィルム240と第1転写型214とがあらかじめ接触していたとしても、その微細な隙間から入り込み、樹脂フィルム240の被転写面を好適に可塑化させることができる。
【0106】
このようにして樹脂フィルム240への転写が完了すると、排出孔253が開かれて気液混合状態の二酸化炭素が排出される。排出完了後、転写装置200は型開きされ、ピストン271が下方に移動させられる。ピストン271と一体となって移動するリターンピン272により、第2型保持部232が下方に移動される。
【0107】
そして、図9Bで説明したロール300Bにより樹脂フィルム240が所定量巻き取られた後、上述した工程が繰り返されることにより、ロール状の樹脂フィルム240に対する連続した転写が行われる。
【0108】
以上説明したように、本第3の実施形態に係る転写装置200は、ピストン271により、流体の圧縮と転写のための加圧との両方が行われる構成を有するため、第1および第2の実施形態よりも簡単な構成となっている。これにより、転写装置200全体として小型化が可能となり、安価な転写装置200を提供することができる。
【0109】
<第3の実施形態の作用、効果>
以上説明したように、第3の実施の形態に係る転写装置200は、被転写材料である樹脂フィルム240を可塑化する流体で満たされる密閉室220を有する第1金型211および第2金型212(基部)と、密閉室220内に配置され、第1型保持部231と、第1型保持部231に対向し、第1型保持部231に対して相対的に離接する方向に移動可能な第2型保持部232と、上下移動により密閉室220の容積を変化させるピストン271と、を備える。そして、ピストン271は、第2型保持部232に当接し、第2型保持部232を第1型保持部231に対して相対的に近づく方向に移動させる。
【0110】
このような構成により、第1転写型214および第2転写型215が樹脂フィルム240に転写を行うための転写室221と、流体を圧縮するための圧縮室222と、が同一の密閉空間である密閉室220内に設けられている。すなわち、転写装置200の内部には、流体の圧力調整機構と転写機構の2つの機能が独立して設けられている。このような構成により、流体を圧縮するための装置を転写装置200の外部に用意する必要がなく、流体を圧縮するための装置を外部に設けた場合と比較して、転写装置200全体の構成を簡単にすることができる。これにより、全体として安価な転写装置200を提供することができる。
【0111】
また、第3の実施形態に係る転写装置200では、ピストン271の水平方向の断面積は、転写室221の水平方向の断面積と比較して、小さく構成されている。このため、流体を圧縮するために必要な力、すなわちピストン271を上昇させる力を大きくすることなく、転写面積を大きくすることができるようになる。なお、本第3の実施形態において、転写面積とは、樹脂フィルムにパターンが転写される部分の面積を意味している。
【0112】
また、第3の実施形態に係る転写装置200では、樹脂フィルム240の上面と第1型保持部231との間に流体を導入する第1導入孔251、および、樹脂フィルム240の下面と第2型保持部232との間に流体を導入する第2導入孔252を有する。これにより、被転写材料である樹脂フィルム240の全体が転写室221内に封入されないために転写室221が樹脂フィルム240によって上下に分断されてしまう場合でも、樹脂フィルム240の上下の面に好適に流体を導入することができる。これとともに、樹脂フィルム240の上下に存在する流体の圧力を速やかに同じ圧力とすることができる。
【0113】
また、第3の実施形態に係る転写装置200では、ピストン271は、第2型保持部232を第1型保持部231から相対的に離れる方向に移動させる部材であって、第2型保持部232に接続されているリターンピン272(離隔部)を有する。これにより、転写が完了した後、第2型保持部232を図10に示す初期の位置まで容易に戻すことができるようになる。
【0114】
<変形例>
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素は任意に組み合わせられてもよい。
【0115】
上記した第1の実施形態では、図1に例示したように、第1転写型14が第1金型11の内壁面111に保持されており、樹脂成形体30および第2転写型15が保持部16に保持されていた。すなわち、第1の実施形態では、内壁面111が本発明の型保持部の一例であり、保持部16が本発明の型対向部の一例であった。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0116】
例えば、樹脂成形体30の上面側、あるいは下面側にのみ転写型が1つだけ配置されるようにしてもよい。すなわち、第1転写型14のみ、または第2転写型15のみが配置され、樹脂成形体30の片面のみに転写が行われるような構成も本発明に含まれる。第1転写型14のみが配置される場合は、内壁面111が本発明の型保持部の一例であり、保持部16が本発明の型対向部の一例である。一方、第2転写型15のみが配置される場合は、保持部16が本発明の型保持部の一例となり、内壁面111が本発明の型対向部の一例となる。第2の実施形態においても同様である。
【0117】
第3の実施形態においては、第1転写型214が第1型保持部231に、第2転写型215が第2型保持部232に、それぞれ保持されていた。しかしながら、第1転写型214のみ、または第2転写型215のみが配置され、樹脂フィルム240の片面のみに転写が行われるような構成も本発明に含まれる点については、上述した第1の実施形態と同様である。第1転写型214のみが配置される場合は、第1型保持部231が本発明の型保持部の一例であり、第2型保持部232が本発明の型対向部の一例である。一方、第2転写型215のみが配置される場合は、第2型保持部232が本発明の型保持部の一例となり、第1型保持部231が本発明の型対向部の一例となる。
【0118】
上記した第1および第2の実施形態では、図1図5等に例示したように、密閉室13を構成する転写室131と二酸化炭素を圧縮する圧縮室132とが水平方向に離れた位置に設けられ、通路133によって互いに接続されていたが、本発明はこれに限定されない。転写室131と圧縮室132とは同じ密閉空間である密閉室13内に設けられていればよく、例えば隣接していてもよい。
【0119】
上記した第1の実施形態では、第1アクチュエータ21が第1駆動プレート18を介してピストン19を、第2アクチュエータ22が第2駆動プレート22を介して保持部16を転写装置100の下側から上方向に上昇させていた。また、第2の実施形態では、アクチュエータ21aが第1駆動プレート18aと第2駆動プレート20aとを介して、保持部16およびピストン19を転写装置100aの下側から上方向に上昇させていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。転写装置100(100a)は、必ずしも図1図5等に示す向きに設置されなくてもよく、例えば横向きに設置されてもよい。その場合、保持部16およびピストン19は水平方向に沿って移動すればよい。
【0120】
上記した第2の実施形態では、第1駆動プレート18aが第2駆動プレート20aを押すことで、同一のアクチュエータ21aにより保持部16の移動とピストン19の移動とが行われていたが、本発明はこれに限定されない。保持部16の移動方向とピストン19の移動方向は必ずしも同一でなくてもよく、例えば保持部16が上方向に移動する一方、ピストン19が水平方向に移動してもよい。
【0121】
上記した第1および第2の実施形態では、図1に例示したように、保持部16には2本のロッド17が接続されている様子が示されているが、本発明はこれに限定されない。十分な強度を確保でき、また保持部16を正確に上下方向に移動させることができるのであれば、ロッド17は1本または3本より多数であってもよい。
【0122】
上記した第3の実施形態では、図8等に例示したように、ピストン271が第2型保持部232の水平方向におけるほぼ中心に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば図13に示すように、ピストン271が第2型保持部232の中心からずれた位置に設けられていてもよい。図13は、ピストン271が第2型保持部232の中心からずれた位置に設けられた場合の転写装置200の変形例を示す図である。このような構成であっても、上記した第3の実施形態で説明した転写装置200による効果は、全て得ることができる。
【0123】
上記した第1から第3の実施形態では、樹脂成形体30または樹脂フィルム240を可塑化させるための流体として、気液混合状態の二酸化炭素を用いていたが、本発明はこれに限定されない。流体としては、例えば水や窒素等を用いても、加圧気体状態もしくは気液混合状態を作り出して樹脂成形体30または樹脂フィルム240の可塑化を行うことができる。また、樹脂成形体30または樹脂フィルム240を可塑化させるための流体として、気液混合状態ではなく、例えば超臨界状態の二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパンやそれらの混合物を用いてもよい。ただし、流体が気液混合状態ではない場合、密閉室13、220内の体積変化による流体の圧力変化を無視できなくなることがある。このため、加圧気体状態、または超臨界状態の流体を用いる場合には、より密閉室13内の体積変化が小さい第1の実施形態の転写装置100を採用することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、微細形状を好適に転写できる転写装置および転写方法が提供される。
【符号の説明】
【0125】
100,100a、200 転写装置
11、211 第1金型
111、211W、212W 内壁面
12、212 第2金型
121 第1ガイド穴
122 第1シール部材
123 第2ガイド穴
124 第2シール部材
125 駆動室
13 密閉室
131 転写室
132 圧縮室
133 通路
134 排出孔
135 導入孔
14、214 第1転写型
15、215 第2転写型
16 保持部
17 ロッド
18,18a 第1駆動プレート
19 ピストン
20,20a 第2駆動プレート
21 第1アクチュエータ
21a アクチュエータ
22 第2アクチュエータ
30 樹脂成形体
2121 第3ガイド穴
2122 第4ガイド穴
220 密閉室
221 転写室
222 圧縮室
223 開口
231 第1型保持部
232 第2型保持部
232P ガイドピン
240 樹脂フィルム
251 第1導入孔
252 第2導入孔
253 排出孔
261 第3シール部材
262 第4シール部材
263 第5シール部材
271 ピストン
272 リターンピン
300A、300B ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13