(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】充填装置および充填方法
(51)【国際特許分類】
B67C 3/28 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B67C3/28
(21)【出願番号】P 2020030427
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良悟
(72)【発明者】
【氏名】津尾 篤志
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-527313(JP,A)
【文献】特開平09-156697(JP,A)
【文献】特開2012-176783(JP,A)
【文献】特開2011-114067(JP,A)
【文献】特開2005-187016(JP,A)
【文献】特開2001-255194(JP,A)
【文献】実開平01-076500(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給源から受け入れて貯留する貯液タンクと、
前記貯液タンクから前記液体が移送される充填機と、
前記充填機に備えられ、前記充填機に移送された前記液体が分配される複数の充填バルブと、
前記貯液タンクよりも下流で、前記複数の充填バルブへの分配前における前記液体の流量を調整可能に構成される液調整部と、
前記液調整部よりも上流における前記液体の圧力P1を測定する第1圧力計と、
前記液調整部よりも下流であって前記充填機よりも上流における前記液体の圧力P2を測定する第2圧力計と、
前記液調整部を制御する制御部と、を備え、
前記液調整部は、
互いに並列に接続される2以上の並列弁を含
み、
前記制御部は、
前記圧力P1が減少するのに対し、
前記圧力P2が一定になるように、前記並列弁のそれぞれの開度を制御する充填装置。
【請求項2】
前記2以上の並列弁のそれぞれの流量に係る特性が互いに異なる、
請求項1に記載の充填装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の充填バルブのノズルにそれぞれ流入する前記液体の充填流量を計測する複数の分配後流量計によりそれぞれ計測された前記充填流量の総和、あるいは、前記充填バルブへの分配前の前記液体の流量または圧力に基づいて、前記2以上の並列弁のそれぞれの開度を調整する、
請求項1または2に記載の充填装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数の分配後流量計によりそれぞれ前記充填流量を計測しつつ、前記充填流量の総和、あるいは、前記充填バルブへの分配前の前記液体の流量または圧力の目標値に対する偏差を解消するように前記2以上の並列弁のそれぞれの開度を調整するフィードバック制御を行うとともに、
前記液調整部の一次側および二次側の少なくとも一方における前記液体の圧力または流量の変動に際して、
前記2以上の並列弁を所定の開度に調整するフィードフォワード制御を行う、
請求項3に記載の充填装置。
【請求項5】
前記貯液タンクと前記複数の充填バルブとの間には、別のタンクが介在しておらず、前記液調整部が介在している、
請求項1から4のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項6】
前記液調整部は、
前記並列弁のうちの1以上に対して直列に接続される直列弁を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項7】
前記複数の充填バルブのそれぞれには、
前記充填バルブに備わるノズルに流入する前記液体の充填流量を調整可能な電動シリンダが設けられている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項8】
液体を供給源から受け入れて貯留する貯液タンクから充填機へと移送された前記液体が分配される複数の充填バルブを用いて充填を行う方法であって、
前記貯液タンクよりも下流で前記複数の充填バルブへの分配前における前記液体の流量を調整可能な液調整部が、互いに並列に接続される2以上の並列弁を含んで構成されており、
前記複数の充填バルブのノズルにそれぞれ流入する前記液体の充填流量の総和、あるいは、前記充填バルブへの分配前の前記液体の流量または圧力に基づいて、
前記液調整部よりも上流において第1圧力計で計測される前記液体の圧力P1が減少するのに対し、前記液調整部よりも下流であって前記充填機よりも上流において第2圧力計で計測される前記液体の圧力P2が一定になるように、前記2以上の並列弁のそれぞれの開度を調整する、充填方法。
【請求項9】
前記並列弁の開度に加え、
前記並列弁の1以上に対して直列に接続される直列弁の開度を調整する、
請求項8に記載の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を充填する充填装置および充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料等の製品液を容器に充填する回転式の充填装置は、回転体と共に回転方向に移動しつつ、容器に製品液を吐出する複数の充填バルブを有する充填機、および充填機と同規模に大型の貯液タンクを備えている。
製品液は、原料の調合や成分の抽出等の調製処理を行う設備により例えば30分程度のサイクルで調製され、一括して貯液タンクに移送される。一括して移送される製品液を受け入れて貯留できるように、貯液タンクには大容積が与えられている。無菌充填に用いられる典型的な貯液タンクは、密閉されている。
【0003】
貯液タンクに貯留されている製品液は、充填機に備わる充填タンクへと移送される。そして、充填タンクから複数の充填バルブへと水頭差(ヘッド差)により製品液が供給される。充填バルブを通じて容器に一定量の製品液を充填するため、充填タンクの液位が一定に制御される。
【0004】
特許文献1に記載された充填システムは、大気に開放された貯液タンクを備えている。貯液タンクから充填機に移送された製品液は、充填機に備わるチャンバーを介して複数の充填バルブへと分配される。
特許文献1では、貯液タンクの内部に立設した仕切により貯液タンク内を上流側と下流側とに区分し、仕切の貫通孔を通じて上流側から下流側に製品液を送り込み、下流側から仕切の上端を超えて上流側に製品液を溢れ出させる。貯液タンクの液位は、貫通孔の位置から仕切の上端の位置までの間に維持され、貯液タンクと充填バルブとの水頭差により充填に必要な圧力を得ている。
また、特許文献1では、始動時の運転過渡期における流量変化に対処するため、貯液タンク内の下流区画と充填機のチャンバーとの間に流量調整弁を設けている。流量調整弁は、充填中の容器の数あるいは充填機の速度に応じて、予め設定された開度に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調製設備から製品液が一括して移送される際等に貯液タンクの液位が顕著に変動するのに伴い、貯液タンクから下流に供給される液の圧力および流量の過大な変化が発生すると、特許文献1に記載された流量調整弁の開度調整をもってしても、所定の圧力および流量により充填量を一定にすることは難しい。特許文献1では、貯液タンクが大気開放されていることを前提としてオーバーフローさせる構造を採用しているため、圧力および流量の過大な変動は想定されていない。
【0007】
以上より、本発明は、貯液タンクの液位変動に伴い液体の圧力や流量が変動したとしても安定して充填可能な充填装置および充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る充填装置は、液体を供給源から受け入れて貯留する貯液タンクと、貯液タンクから液体が移送される充填機と、充填機に備えられ、充填機に移送された液体が分配される複数の充填バルブと、貯液タンクよりも下流で、複数の充填バルブへの分配前における液体の流量を調整可能に構成される液調整部と、を備える。
液調整部は、互いに並列に接続される2以上の並列弁を含む。
【0009】
また、本開示は、液体を供給源から受け入れて貯留する貯液タンクから充填機へと移送された液体が分配される複数の充填バルブを用いて充填を行う方法であって、貯液タンクよりも下流で複数の充填バルブへの分配前における液体の流量を調整可能な液調整部が、互いに並列に接続される2以上の並列弁を含んで構成されており、複数の充填バルブのノズルにそれぞれ流入する液体の充填流量の総和、あるいは、充填バルブへの分配前の液体の流量または圧力に基づいて、2以上の並列弁のそれぞれの開度を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、液調整部の並列弁を選択的に動作させることにより、貯液タンクへの液体の受け入れ時や操業開始・停止時に液体に発生する圧力および流量の変動にかかわらず、一定の充填流量を得て安定した充填処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る充填装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す並列接続された流量調整弁の特性を模式的に示す図である。
【
図3】液調整部の制御について説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】変形例に係る充填装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
〔充填装置の全体構成〕
図1に示す充填装置1は、容器入り飲料製品を製造するラインの一部を構成し、図示しないボトル等の容器に製品液を充填する。
充填装置1は、製品液を貯留する貯液タンク2と、貯液タンク2から製品液が移送される充填機3と、充填機3に移送された製品液が分配される複数の充填バルブ4と、製品液の流量を調整可能に構成される液調整部10と、液調整部10を制御可能な制御部5とを備えている。充填装置1は、例えば、無菌状態の環境下で充填処理を行う。
【0013】
〔貯液タンク〕
貯液タンク2は、原材料の調合や成分の抽出等の処理を行う図示しない調製設備(製品液の供給源)から製品液を受け入れて貯留する。
充填バルブ4に製品液を送り、充填バルブ4のノズルから吐出させる圧力(充填液圧力)を製品液に得るため、貯液タンク2内の製品液の水頭が用いられる。水頭と、製品液を圧送するポンプとが併用されてもよい。
【0014】
貯液タンク2には、例えば30分を要する調合や抽出等の調製処理を終えた液を一度に受け入れ可能な容積が与えられている。貯液タンク2の液位は、貯液タンク2から充填機3への製品液の移送に伴い次第に低下する。貯液タンク2の液位は、一例として、
図1にR
Lで示す範囲で変動する。
貯液タンク2には、液面より上方の気体の圧力を検知する圧力計21が設けられている。貯液タンク2内の気体の圧力は、貯液タンク2に気体を導入する弁および貯液タンク2から気体を排出させる弁(いずれも図示しない)の開閉動作により加減される。
【0015】
〔充填機および充填バルブ〕
充填機3は、詳しい図示を省略するが、立設された軸部30を中心に回転駆動される回転体31と、回転体31に設けられて容器を保持するグリッパ等の容器保持具(図示しない)と、回転体31と共に回転方向に移動しつつ、容器保持具に保持された容器にノズル4Aを通じて製品液を吐出する充填バルブ4とを備えている。回転体31には、充填バルブ4および容器保持具がそれぞれ回転方向に一定ピッチで設けられている。
図示しない回転体から回転体31へと容器が順次供給され、充填バルブ4により一定量の製品液が充填された容器が回転体31からキャッパ等の図示しない回転体へと順次渡される。
【0016】
充填機3は、典型的な充填機に備わる充填タンク(フィラーボウル)を備えていない。典型例によると、充填タンクの液位を一定に維持し、充填タンクと充填バルブ4との水頭差に基づいて充填タンクから各充填バルブ4へと分配された製品液が、充填バルブ4のノズル4Aを通じて吐出される。それに対して、本実施形態では、貯液タンク2と複数の充填バルブ4との間には、上記のような充填タンクが介在していない。貯液タンク2と複数の充填バルブ4との間には、液調整部10が介在している。
【0017】
貯液タンク2から移送路6に流出した製品液は、液調整部10を経て、充填機3の軸部30に設けられた図示しないロータリージョイントを介して液供給路に導入され、その図示しない液供給路から各充填バルブ4に向けて分配される。
充填バルブ4は、例えば、製品液が流れる流路を開閉する弁体と、圧縮空気を用いて弁体を駆動するエアシリンダ41とを備えて構成されている。
【0018】
充填機3には、複数の充填バルブ4のノズル4Aにそれぞれ流入する製品液の流量を計測する複数の分配後流量計7が設けられている。回転体31に設けられた多数の充填バルブ4のうち、並行して製品液を充填する充填バルブ4の数の最大がNであるとすると、充填バルブ4に個別に対応する分配後流量計7により、F1~FnのN個の流量値を得ることができる。
【0019】
飲料製品の製造は、充填装置1等の装置の内部や、装置が置かれた環境の洗浄および殺菌の処理を適時に行いながら実施される。
例えば洗浄処理後の操業開始により、充填機3の回転体31に容器が順次供給されると、充填機3は、受け取った容器に対応する充填バルブ4から順次、製品液の充填を開始する。容器に製品液を並行して充填する充填バルブ4の数(開弁数n)が次第に増加して最大数Nに達すると、充填機3は、N個の充填バルブ4から並行して製品液を容器に充填する定常運転を継続する。定常運転時における開弁数n(最大数N)は、例えば100である。充填機3は、例えば600~900 BPM(Bottle Per Minute)の能力を実現するため、容器に高速で充填する。
操業終了時は、回転体31への容器の供給の停止に伴い、開弁数nが次第に減少し、回転体31から最後の容器が排出された後、充填機3を停止させる。
【0020】
〔液調整部および制御部〕
液調整部10は、貯液タンク2よりも下流で、複数の充填バルブ4への分配前における製品液の流量を調整可能に構成されている。液調整部10は、貯液タンク2と充填機3とを結ぶ移送路6に設けられている。
液調整部10は、互いに並列に接続された複数の流量調整弁である並列弁11~13を備えている。加えて、外乱に対してより安定して流量調整を行うため、液調整部10は、並列弁11~13に対して直列に接続される流量調整弁である直列弁14を備えていることが好ましい。
【0021】
並列弁11~13および直列弁14のそれぞれの数は、あくまで一例である。液調整部10が、2あるいは4以上の並列弁を備えていたり、2以上の直列弁を備えていたりしてもよい。液調整部10は、必ずしも直列弁14を備えていなくてもよい。
また、直列弁14の接続形態は、
図1に示す例に限らず、並列弁11~13の少なくとも1つに対して直列弁14が直列に接続されていればよい。
さらに、液調整部10が、必要に応じて、図示しない他の弁を備えていてもよい。例えば、並列弁11~13のそれぞれの上流に、各並列弁に対して直列に、並列弁と比べて応答性の高い電磁開閉弁(図示しない)が配置されていてもよい。この場合、電磁開閉弁を閉じた状態で各並列弁を所定開度まで開いた後、電磁開閉弁を開くことにより、並列弁を単体で用いる場合と比べて応答性を向上させることができる。
【0022】
まず、並列弁11~13について説明する。充填機3による充填の実施に伴い貯液タンク2から製品液が下流へ流出し、制御部5による並列弁11~13のそれぞれの開度の調整により、並列弁11~13のうちの1以上を流れて充填機3へ供給される。制御部5は、開度指令を生成して並列弁11~13のそれぞれの開度を調整する。並列弁11~13の一次側6A(上流側)には圧力計61が設けられ、二次側6B(下流側)には圧力計62が設けられている。並列弁11~13の制御には、圧力計61,62によりそれぞれ検知される圧力P1,P2の差が用いられる。
【0023】
第1~第3の並列弁11~13のそれぞれの流量に係る特性は互いに異なることが好ましい。
図2に第1~第3の並列弁11~13のそれぞれの開度-流量特性を模式的に示すように、第1~第3の並列弁11~13は、異なる流量範囲に対応している。
第1~第3の並列弁11~13は、
図2に二点鎖線で示すように仮想の単一の流量調整弁として機能することで、流量範囲R
Fに適用可能である。そのため、第1~第3の並列弁11~13は、充填機3に供給される製品液の最小流量から最大流量までの流量範囲の全体に亘り対応できる。
【0024】
流量に係るバルブの特性を示す値として、容量係数が用いられる。
容量係数は、バルブを全開にしたとき、単位時間あたりにバルブを通過する流体の体積、または重量を言う。容量係数としてはC
v値、K
v値、A
v値があり、典型的にはC
v値が用いられる。バルブの容量係数には、バルブが適切に機能する流量範囲(適正領域)が定められている。バルブは、圧力が変動しても適正領域においては一定の流量に調整可能である。
図2に示す並列弁11~13のそれぞれの流量範囲は、適正領域に相当する。
【0025】
JIS B0100より、Cv値は、特定のトラベルにおける圧力差(バルブ出入口の圧力差)が1 lbf/in2(PSi)のときバルブを流れる60°Fの温度の水の流量をUS gal/min で表す数値のことを言い、次式(1)によって求める。
【0026】
Cv=Q√(G/Δp) (1)
Q :流量(US gal/min)
Δp:圧力差(1 lbf/in2)
G :流体の比重(水の比重である1)
【0027】
並列接続される複数の並列弁11~13に製品液を分配可能であって、並列弁11~13の1以上を選択的に動作させることにより、並列弁11~13がそれぞれ調整を受け持つ流量範囲を適正領域に留めることができるので、単一の流量調整弁を用いる場合と比べ、圧力変動に対して安定して流量調整を行える。
したがって、並列弁11~13の容量係数の総和として、充填バルブ4への分配前における製品液に必要な最大流量に対応しつつ、最小流量から最大流量までに亘り、圧力変動に対して安定して流量調整を行うことができる。
【0028】
並列接続に加え、並列弁11~13のそれぞれの流量に係る特性が互いに異なることによれば、充填機3に供給される製品液の最小流量から最大流量までに亘り、少ない数の流量調整弁により効率よく流量調整を行うことができる。
【0029】
定常時における充填バルブ4の開弁数n(最大数N)が多いほど、開弁数nが0から最大数Nまで増加する、あるいは、最大数Nから0へと減少する非定常時の流量変化が大きい。そして、充填機3の能力が高いほど、開弁数nの増減に伴って流量が急激に変化する。
並列接続される複数の並列弁11~13によれば、非定常時の広い流量範囲に亘る急激な流量変化に対しても安定して、応答性良く流量調整を行うことができる。
【0030】
製品液の流量に係る外乱としては、例えば、調整設備により調整された製品液を貯液タンク2に一度に受け入れることによる貯液タンク2内の液位の顕著で急激な変動が該当する。貯液タンク2の液位によっては、充填液圧力に対して貯液タンク2と充填バルブ4との水頭差が過大である。貯液タンク2内の液位の急激な変動に伴い、貯液タンク2の下流に製品液の流量変化および圧力変動が発生したとしても、制御部5により液調整部10の並列弁11~13のそれぞれの開度が適切に調整されることにより、充填バルブ4への製品液の安定供給を継続することができる。
【0031】
より十分に外乱に対処するため、並列弁11~13に加えて、直列弁14を用いることができる。直列弁14の開度が調整されることで、直列弁14の二次側における製品液の圧力および流量を安定させる。直列弁14が、並列弁11~13の二次側に設けられることも許容される。
なお、直列弁14を用いることに代えて、あるいは直列弁14の使用と併せ、貯液タンク2への窒素ガス等の供給量の調整により貯液タンク2の内圧を加減することで、貯液タンク2からの送液圧力P1の変動を抑制することも有効である。
【0032】
〔液調整部の制御による充填方法〕
充填機3は、回転体31に供給された容器に対して、複数の充填バルブ4により、充填バルブ4が開いている間に一定量の製品液を充填する。
したがって、制御部5は、各充填バルブ4に流入する製品液の充填流量F1~Fnの総和を液調整部10の二次側に得るため、計測された充填流量F1~Fnの演算による総和に基づいて、並列弁11~13および直列弁14をいずれも所定の開度に調整する制御を行う。
ここで、制御部5は、移送路6や充填機3の管路における圧力損失、回転体31の回転に伴う遠心力等の影響をも加味し、充填流量F1~Fnの演算による総和に基づいて並列弁11~13および直列弁14の開度調整を行うものとする。
充填流量F1~Fnの総和は算出できるため、液調整部10の二次側6Bに必ずしも分配前流量計8が設けられている必要はない。分配前流量計8は、液調整部10の校正のために用いることができる。
あるいは、充填装置1が分配前流量計8を備えているならば、充填流量F1~Fnの総和を算出する必要がなく、その場合は、分配後流量計7を備えている必要がない。
【0033】
制御部5は、各分配後流量計7により充填流量F1~Fnを計測しつつ、目標値に対する充填流量F1~Fnの総和の偏差を解消するように並列弁11~13および直列弁14の開度を調整するフィードバック制御を行うことができる。目標値は、開弁数nおよび充填機3の能力に応じた規定の充填流量の総和に相当する。
【0034】
液調整部10の二次側6Bに位置する分配前流量計8は、充填流量F1~Fnの総和に対応する流量F0を示す。したがって、液調整部10のフィードバック制御には、充填流量F1~Fnの演算による総和に代えて、分配前流量計8により計測された流量F0、または、充填流量F1~Fnの演算による総和および計測された流量F0の双方を用いることができる。
あるいは、充填流量F1~Fnの総和や流量F0を用いてフィードバック制御することは、液調整部10の二次側の圧力P2を一定にすることとなるから、充填流量F1~Fnの総和や流量F0に代えて、圧力P2をフィードバック制御に用いることも可能である。
【0035】
上記のようなフィードバック制御に加えて、制御部5は、貯液タンク2への液の受け入れ時や、操業の開始時または停止時等、圧力または流量の予測可能な変動に際して、フィードフォワード制御を行うことが好ましい。このとき制御部5は、液調整部10の一次側6Aおよび二次側6Bの少なくとも一方における製品液の圧力または流量の変動に際し、開度指令を与えて並列弁11~13および直列弁14を所定の開度に調整する。所定の開度は、計算や試験により予め適切に定められるものとする。
操業の開始時または停止時であれば、開弁数nに応じて並列弁11~13を段階的に開閉させるように、並列弁11~13に所定の開度を与える。例えば、第1~第3の並列弁11~13のうち第1の並列弁11および第2の並列弁12のみを開弁数nに対応した合計の充填流量から定められた所定の開度で開き、第3の並列弁13を全閉する。
あるいは、回転体31への容器の受け渡し後に容器保持具に容器が存在しているか否かを検知し、容器が存在していないならば充填バルブ4を閉じる場合にも、第1~第3の並列弁11~13のそれぞれを充填バルブ4の実際の開弁数nに対応した合計の充填流量から定められた所定の開度で開くように制御するとよい。
フィードフォワード制御によれば、圧力および流量の変動を液調整部10の各弁の開度設定により打ち消すことができるので、外乱発生の前後に亘り、充填バルブ4に規定の充填流量の製品液を安定して供給することができる。
【0036】
図3を参照し、液調整部10の制御例について説明する。
縦軸は、バルブのC
v値や製品液の圧力、流量等の変化量を示す変化軸である。横軸は、時間軸である。
図3において変化量を示す記号の意味を以下に示す。
C
v0:直列弁14のC
v値
C
v:並列弁11~13のC
v値の総和
C
v1:第1の並列弁11のC
v値
C
v2:第2の並列弁12のC
v値
C
v3:第3の並列弁13のC
v値
P
2:液調整部10の二次側の圧力
P
1:貯液タンク2からの送液圧力
F
n:充填バルブ4の代表充填流量
F:全充填流量
n:充填バルブ4の開弁数
【0037】
図3では、充填機3による充填処理を開始し、短い定常運転の後、充填処理を停止した場合を想定している。非定常運転時には開弁数nが増減する。
充填処理の進行に伴い、貯液タンク2内の液位が減少することで、液調整部10の一次側6Aの圧力P
1が次第に減少する。直列弁14の開度制御によれば、圧力P
1の変化に対して、直列弁14の二次側(並列弁11~13の一次側)の圧力の安定を図ることができる。
図3に示す例では、直列弁14の開度調整により、C
v0を次第に増加させている。
【0038】
充填処理の開始から定常運転を経て充填処理を停止するまでに亘り、
図3に実線で示すように開弁数nに対応したC
vに制御することで、各充填バルブ4の充填流量を一定にすることができる。
貯液タンク2から送られる製品液の流量調整を仮に単一の流量調整弁のみによって行う場合は、
図3に破線で示すようにC
vが実線の理想状態に対してシフトしてしまうとしても、並列弁11~13のC
v1~C
v3を適宜に組み合わせるならば、並列弁11~13の全体として実線で示すC
vを実現することができる。
【0039】
また、充填処理に伴う貯液タンク2内の液位の変化に起因して一次側6Aの圧力P1が変動したとしても、直列弁14の開度制御により直列弁14の二次側の圧力を安定させつつ、充填流量F1~Fnの総和、あるいは、充填バルブ4への分配前の製品液の流量F0または圧力P2に基づいて並列弁11~13のそれぞれの開度を制御するフィードバック制御を行うことにより、二次側6Bに一定の圧力P2を得て、充填流量への影響を避けながら充填処理を安定して行うことができる。
さらに、開弁数nに応じて並列弁11~13を段階的に開閉し、F1~Fnの総和、あるいは、充填バルブ4への分配前の製品液の流量F0または圧力P2に対応する流量Fを二次側6Bに与えるフィードフォワード制御により、開弁数nが変化する非定常時において充填流量Fnが破線で示すように実線の理想状態に対してシフトしてしまうことなく、充填流量を常時一定に制御することができる。
【0040】
以上で説明した本実施形態の充填装置1および充填方法によれば、典型例とは異なり、貯液タンク2と充填バルブ4とが充填タンクを介さないで接続されている構造にあって、液調整部10の並列弁11~13を選択的に動作させることにより、貯液タンク2への製品液の受け入れ時や操業開始・停止時に製品液に発生する圧力および流量の変動にかかわらず、一定の充填流量を得て安定した充填処理が可能となる。
また、貯液タンク2および充填タンクの2つのタンクを備えた典型例に対し、充填タンクを備えていない分、製造コストを抑えることができる上、タンクの洗浄および殺菌に要する非生産時間を削減できるので生産効率を向上させることができる。
【0041】
〔変形例〕
図4に示す充填機3の複数の充填バルブ4のそれぞれには、電動シリンダ42が設けられている。電動シリンダ42に備わるモータに制御部5から制御指令を与えることで、対応する充填バルブ4を任意の開度に調整可能である。そのため、各充填バルブ4に分配された製品液の流量がばらついていたとしても、分配後流量計7により計測された充填流量F
1~F
nに基づいて電動シリンダ42により充填バルブ4毎に開度が調整されることで、各充填バルブ4から吐出される製品液の流量を一定にすることができる。
また、電動シリンダ42を用いることで、充填バルブ4により製品液を充填するサイクルの開始時と終了時における充填流量をサイクルの中間時の充填流量と比べて低くするといった制御を容易に実現できる。
【0042】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本開示の充填装置および充填方法により充填される液体は、飲料に限らず、医薬品等であってもよい。
【0043】
〔付記〕
上記実施形態に記載の充填装置および充填方法は、以下のように把握される。
(1)充填装置1は、液体を供給源から受け入れて貯留する貯液タンク2と、貯液タンク2から液体が移送される充填機3と、充填機3に備えられ、充填機3に移送された液体が分配される複数の充填バルブ4と、貯液タンク2よりも下流で、複数の充填バルブ4への分配前における液体の流量を調整可能に構成される液調整部10とを備える。液調整部10は、互いに並列に接続される2以上の並列弁11~13を含む。
(2)2以上の並列弁11~13のそれぞれの流量に係る特性が互いに異なる。
(3)充填装置1は、液調整部10を制御する制御部5を備える。制御部5は、複数の充填バルブ4のノズル4Aにそれぞれ流入する液体の充填流量を計測する複数の分配後流量計7によりそれぞれ計測された充填流量F1~Fnの総和、あるいは、充填バルブ4への分配前の液体の流量または圧力に基づいて、2以上の並列弁11~13のそれぞれの開度を調整する。
(4)制御部5は、複数の分配後流量計7によりそれぞれ充填流量を計測しつつ、充填流量F1~Fnの総和、あるいは、充填バルブ4への分配前の液体の流量または圧力の目標値に対する偏差を解消するように2以上の並列弁11~13のそれぞれの開度を調整するフィードバック制御を行うとともに、液調整部10の一次側6Aおよび二次側6Bの少なくとも一方における液体の圧力または流量の変動に際して、2以上の並列弁11~13を所定の開度に調整するフィードフォワード制御を行う。
(5)貯液タンク2と複数の充填バルブ4との間には、別のタンクが介在しておらず、液調整部10が介在している。
(6)液調整部10は、並列弁11~13のうちの1以上に対して直列に接続される直列弁14を含む。
(7)複数の充填バルブ4のそれぞれには、充填バルブ4に備わるノズル4Aに流入する液体の充填流量を調整可能な電動シリンダ42が設けられている。
(8)液体を供給源から受け入れて貯留する貯液タンク2から充填機3へと移送された液体が分配される複数の充填バルブ4を用いて充填を行う方法であって、貯液タンク2よりも下流で複数の充填バルブ4への分配前における液体の流量を調整可能な液調整部10が、互いに並列に接続される2以上の並列弁11~13を含んで構成されており、複数の充填バルブ4のノズル4Aにそれぞれ流入する液体の充填流量F1~Fnの総和、あるいは、充填バルブ4への分配前の液体の流量または圧力に基づいて、2以上の並列弁11~13のそれぞれの開度を調整する。
(9)並列弁11~13の開度に加え、並列弁11~13の1以上に対して直列に接続される直列弁14の開度を調整する。
【符号の説明】
【0044】
1 充填装置
2 貯液タンク
3 充填機
4 充填バルブ
4A ノズル
5 制御部
6 移送路
6A 一次側
6B 二次側
7 分配後流量計
8 分配前流量計
10 液調整部
11~13 並列弁
14 直列弁
21 圧力計
30 軸部
31 回転体
41 エアシリンダ
42 電動シリンダ
61,62 圧力計
F0 流量
F1~Fn 充填流量
P1,P2 圧力
RF 流量範囲
n 開弁数