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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】リリーフ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/10 20060101AFI20240228BHJP
   F16K 31/06 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
F16K17/10
F16K31/06 305L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020033972
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134908
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇多
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-101268(JP,U)
【文献】特開2011-064221(JP,A)
【文献】中国実用新案第200979002(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/10
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧通路から低圧通路へと作動流体を排出することにより前記高圧通路の圧力の上昇を抑制するリリーフ弁であって、
前記高圧通路に連通する連通路と、前記連通路の開口端に形成されたシート部と、が設けられたハウジングと、
前記シート部に離着座する弁部を有し、前記ハウジング内に収容される弁体と、
前記弁部が前記シート部に着座するように前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記ハウジング内に形成され、前記弁部が前記シート部から離座した際に前記高圧通路の圧力が導かれる圧力室と、
前記圧力室と前記低圧通路とを連通する第1連通路と、
前記第1連通路に設けられ、前記第1連通路を流れる作動流体に抵抗を付与する第1絞りと、を備え
前記第1絞りの流路断面積は、前記シート部の断面積の1倍以上4倍以下の大きさであることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
高圧通路から低圧通路へと作動流体を排出することにより前記高圧通路の圧力の上昇を抑制するリリーフ弁であって、
前記高圧通路に連通する連通路と、前記連通路の開口端に形成されたシート部と、が設けられたハウジングと、
前記シート部に離着座する弁部を有し、前記ハウジング内に収容される弁体と、
前記弁部が前記シート部に着座するように前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記ハウジング内に形成され、前記弁部が前記シート部から離座した際に前記高圧通路の圧力が導かれる圧力室と、
前記圧力室と前記低圧通路とを連通する第1連通路と、
前記第1連通路に設けられ、前記第1連通路を流れる作動流体に抵抗を付与する第1絞りと、
前記付勢部材が収容される付勢部材室と、
前記付勢部材室と前記低圧通路とを連通する第2連通路と、
前記第2連通路に設けられ、前記第2連通路を流れる作動流体に抵抗を付与する第2絞りと、を備えることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項3】
前記第2絞りの流路断面積は、前記シート部の断面積の1倍以下の大きさであることを特徴とする請求項2に記載のリリーフ弁。
【請求項4】
高圧通路から低圧通路へと作動流体を排出することにより前記高圧通路の圧力の上昇を抑制するリリーフ弁であって、
前記高圧通路に連通する連通路と、前記連通路の開口端に形成されたシート部と、が設けられたハウジングと、
前記シート部に離着座する弁部を有し、前記ハウジング内に収容される弁体と、
前記弁部が前記シート部に着座するように前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記ハウジング内に形成され、前記弁部が前記シート部から離座した際に前記高圧通路の圧力が導かれる圧力室と、
前記圧力室と前記低圧通路とを連通する第1連通路と、
前記第1連通路に設けられ、前記第1連通路を流れる作動流体に抵抗を付与する第1絞りと、を備え、
前記ハウジングは、前記弁体を収容する収容孔を有し、
前記収容孔の断面積は、前記シート部の断面積の10倍以上の大きさであることを特徴とするリリーフ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧通路から低圧通路へと作動流体を排出することにより高圧通路の圧力の上昇を抑制するリリーフ弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-61762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなリリーフ弁において、スプリングを変更することなく、すなわち、リリーフ弁の外形を変更することなくクラッキング圧をより高い圧力に変更するには、弁体の受圧面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、弁体の受圧面積を小さくすると、開弁時に弁体と弁座との間に形成される流路の面積が小さくなることから、低圧通路へと排出される作動流体の流量が低下し、結果として、オーバーライド特性が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、リリーフ弁のオーバーライド特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高圧通路から低圧通路へと作動流体を排出することにより高圧通路の圧力の上昇を抑制するリリーフ弁であって、高圧通路に連通する連通路と、連通路の開口端に形成されたシート部と、が設けられたハウジングと、シート部に離着座する弁部を有し、ハウジング内に収容される弁体と、弁部がシート部に着座するように弁体を付勢する付勢部材と、ハウジング内に形成され、弁部がシート部から離座した際に高圧通路の圧力が導かれる圧力室と、圧力室と低圧通路とを連通する第1連通路と、第1連通路に設けられ、第1連通路を流れる作動流体に抵抗を付与する第1絞りと、を備え、第1絞りの流路断面積は、シート部の断面積の1倍以上4倍以下の大きさであることを特徴とする。
【0007】
この発明では、圧力室と低圧通路とを連通する第1連通路に第1絞りが設けられる。このため、弁部がシート部から離座した際に高圧通路の作動流体が導かれる圧力室内の圧力は、低圧通路の圧力に比べて高い状態に保持される。このように比較的高い圧力に保持された圧力室内の圧力は、弁体の受圧面に作用し、弁体を弁部がシート部から離座する方向へと移動させることとなる。この結果、弁部とシート部との間に形成される流路の面積が拡大し、低圧通路へと排出される作動流体の流量を増大させることが可能となり、リリーフ弁のオーバーライド特性を向上させることができる。また、この発明では、第1絞りの流路断面積が、シート部の断面積の1倍以上4倍以下の大きさに設定される。このように、作動流体の流量に影響を及ぼすシート部の断面積に対して、第1絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、圧力室内の圧力と低圧通路の圧力との圧力差をできるだけ大きくすることができるとともに、第1絞りを通じて低圧通路へと排出される作動流体の流量を十分に確保することができる。
【0010】
また、本発明は、付勢部材が収容される付勢部材室と、付勢部材室と低圧通路とを連通する第2連通路と、第2連通路に設けられ、第2連通路を流れる作動流体に抵抗を付与する第2絞りと、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この発明では、付勢部材室と低圧通路とを連通する第2連通路に第2絞りが設けられる。このため、付勢部材室と低圧通路との間における作動流体の移動は、第2絞りによって制限される。つまり、弁体の移動に伴う作動流体の流れが第2絞りによって生じにくくなっているため、弁体が急峻な動きをすることを抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、第2絞りの流路断面積が、シート部の断面積の1倍以下の大きさであることを特徴とする。
【0013】
この発明では、第2絞りの流路断面積が、シート部の断面積の1倍以下の大きさに設定される。このように、弁体の変位と作動流体の流量とに影響を及ぼすシート部の断面積に対して、第2絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、高圧通路の圧力に応じて弁体を応答性よく変位させることが可能になるとともに、低圧通路へと排出される作動流体の流量が変動することを抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、ハウジングが、弁体を収容する収容孔を有し、収容孔の断面積が、シート部の断面積の10倍以上の大きさであることを特徴とする。
【0015】
この発明では、弁体を収容する収容孔の断面積が、シート部の断面積の10倍以上の大きさに設定される。このようにシート部の断面積に対して収容孔の断面積を十分に大きくし、受圧面を大きくすることによって、圧力室内の圧力による弁体のリフト量を増大させることが可能となり、結果として、弁部とシート部との間に形成される流路の面積を拡大させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リリーフ弁のオーバーライド特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るリリーフ弁の断面図である。
図2図1の矢印Aで示される部分の部分拡大図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るリリーフ弁の断面図である。
図4図3の矢印Bで示される部分の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るリリーフ弁について説明する。以下では、リリーフ弁が、パイロット式の電磁リリーフ弁100である場合について説明する。
【0020】
電磁リリーフ弁100は、高圧通路H内の作動油の圧力が設定圧に達すると開弁し、高圧通路Hから低圧通路Lへ作動油を逃がすことにより、高圧通路H内の作動油の圧力が異常に高圧となることを防止するものである。また、電磁リリーフ弁100は、ソレノイド部70を備えており、ソレノイド部70によって、この設定圧を変更することが可能である。また、電磁リリーフ弁100は、アンチボイド機能を有しており、高圧通路Hが負圧になったときに開弁し、低圧通路Lから高圧通路Hへ作動油を供給することにより、キャビテーションの発生を防止する。本実施形態では、作動流体として作動油が用いられるが、作動水や圧縮空気などの他の流体が用いられてもよい。
【0021】
電磁リリーフ弁100は、機器本体1にねじ締結により取り付けられる。機器本体1は、油圧シリンダ、油圧ポンプ、油圧モータ、複数の弁を有するバルブブロック等の油圧機器の本体である。機器本体1には、電磁リリーフ弁100を境界として高圧通路Hと低圧通路Lとが設けられる。機器本体1には、高圧通路Hと低圧通路Lとの間に後述するサクションポペット3が着座するシート部1aが設けられる。なお、機器本体1は油圧機器の本体に限定されず、各油圧機器間に設置されるブロック体であってもよい。
【0022】
図1に示すように、電磁リリーフ弁100は、付勢部材としてのスプリング74により付勢される弁体としてのパイロットポペット20と、パイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力を変化させるソレノイド部70と、パイロットポペット20を間接的に収容するバルブハウジング2と、ソレノイド部70を保持するソレノイドハウジング71と、バルブハウジング2とソレノイドハウジング71とを連結する連結部材90と、を備える。
【0023】
バルブハウジング2は、機器本体1に取り付けられる第1端部2aと、第1端部2aとは反対側において連結部材90に結合される第2端部2bと、を有する円筒状に形成された部材である。バルブハウジング2には、サクションポペット3が収容されており、サクションポペット3には、主弁体としてのメインポペット5と、パイロットポペット20を直接的に収容するハウジングとしてのスリーブ7と、が収容されている。サクションポペット3、メインポペット5、及びパイロットポペット20は、高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断するために設けられている。
【0024】
サクションポペット3は、円筒部3aと底部3bとを有する有底円筒状に形成された部材である。サクションポペット3は、バルブハウジング2内に軸方向に移動可能に設けられ、一部がバルブハウジング2の第1端部2aの開口から突出する。サクションポペット3の底部3bには、高圧通路Hに連通する高圧ポート3Hが設けられ、円筒部3aの底部3b近傍には、低圧通路Lに連通する低圧ポート3Lが設けられる。
【0025】
サクションポペット3の円筒部3aと底部3bとの間の角部3cは、テーパ状に形成されており、この角部3cが機器本体1のシート部1aに着座することにより、機器本体1とサクションポペット3との間を通じた高圧通路Hと低圧通路Lとの連通が遮断される。サクションポペット3の底部3b側には、メインポペット5が収容される第1収容孔3dが設けられ、底部3bとは反対側の端部には、スリーブ7が収容される第2収容孔3eが設けられる。
【0026】
メインポペット5は、第1収容孔3d内を摺動可能な本体部50と、本体部50に軸方向に貫通して形成された摺動孔50a内を摺動可能なパイロットピストン51と、を有する。
【0027】
本体部50は、サクションポペット3の角部3cの内側に形成されるシート部3fに着座する弁部50bを有し、弁部50bがシート部3fに着座することにより、サクションポペット3とメインポペット5との間を通じた高圧通路Hと低圧通路Lとの連通が遮断される。本体部50の外周面とサクションポペット3の内周面との間には、本体部50とサクションポペット3との間の隙間をシールするシール部材が設けられる。
【0028】
パイロットピストン51は、サクションポペット3の内周面とメインポペット5とスリーブ7とによって画成される空間である背圧室8に臨んで設けられるフランジ部51aと、フランジ部51aから軸方向に延在し摺動孔50a内に挿入される円柱状の軸部51bと、を有する。軸部51bの先端部は、高圧通路Hに臨む本体部50の先端面から突出する。また、パイロットピストン51には、高圧通路Hと背圧室8とを連通するパイロット通路10が設けられる。パイロット通路10には、パイロット通路10を流れる作動油に抵抗を付与する絞りが設けられる。
【0029】
スリーブ7は、サクションポペット3に挿入される先端部7aと、連結部材90に結合される基端部7bと、先端部7aとは反対側の軸方向端部に開口する収容孔7cと、先端部7aと基端部7bとの間に設けられサクションポペット3と連結部材90との間において外周面が露出される中間部7dと、を有し、連結部材90を介してバルブハウジング2に結合される。このため、サクションポペット3は、スリーブ7の先端部7aにより摺動自在に支持されることになる。スリーブ7の先端部7aの外周面とサクションポペット3の内周面との間には、スリーブ7とサクションポペット3との間の隙間をシールするシール部材が設けられる。
【0030】
また、スリーブ7には、一端が背圧室8に開口し他端が収容孔7cの底面に開口し背圧室8と収容孔7cとを連通する連通路11と、一端が収容孔7cの内周面に開口し他端が中間部7dの外周面に開口するドレン通路13と、が形成される。
【0031】
収容孔7cに開口する連通路11の開口端には、後述のパイロットポペット20の弁部22が離着座するシート部11aが設けられる。シート部11aは、その中心軸が収容孔7cの中心軸と一致するように収容孔7cと同軸上に形成される。また、シート部11aと背圧室8との間の連通路11上には、連通路11を流れる作動油の流れに抵抗を与える絞り11bが設けられる。
【0032】
ドレン通路13は、サクションポペット3の外周面とバルブハウジング2の内周面との間の隙間14を通じて低圧通路Lと常時連通するようにスリーブ7に形成される。
【0033】
スリーブ7の収容孔7cに収容されるパイロットポペット20は、略円柱状に形成された部材であり、収容孔7cに摺動支持される本体部21と、本体部21から軸方向に突出して円錐状に形成された弁部22と、弁部22とは反対側において本体部21に設けられ径方向外側へと環状に突出して形成されたフランジ部23と、を有する。
【0034】
図1及び図2に示すように、弁部22がシート部11aに着座した状態において、収容孔7c内には、スリーブ7とパイロットポペット20とにより圧力室12が画成される。換言すれば、圧力室12は、弁部22とシート部11aとが当接する部分と、本体部21と収容孔7cとが摺接する部分と、の間に形成された空間である。なお、図2は、図1の矢印Aで示される領域を拡大して示した拡大図であり、図2中の左側には、圧力室12の圧力を受けるパイロットポペット20の受圧面24と、連通路11の圧力を受ける弁部22の受圧面となるシート部11aの断面であるシート断面25と、が示される。なお、パイロットポペット20の受圧面24の断面積とシート断面25の断面積とを足し合わせた断面積は、収容孔7cの断面積に相当する。
【0035】
連通路11に臨むシート断面25内の弁部22の面は、連通路11の圧力を受ける受圧面となる。このシート断面25内の弁部22の受圧面に作用する連通路11の圧力は、弁部22をシート部11aから離間させる方向に作用する。
【0036】
圧力室12に臨むパイロットポペット20の面は、圧力室12の圧力を受ける受圧面24となり、具体的には、図2において左側に示されるように、弁部22から本体部21の外周面に至る部分のうち、シート部11aよりも内側の部分を除いた部分の表面が受圧面24となる。受圧面24に作用する圧力室12の圧力は、弁部22の受圧面に作用する連通路11の圧力と同様に、弁部22をシート部11aから離間させる方向に作用する。
【0037】
また、パイロットポペット20の本体部21には、図1に示すように、ドレン通路13と常時連通するように形成された環状溝21aと、環状溝21aから弁部22側へと向かって軸方向に沿って形成された第1切欠部21bと、環状溝21aからフランジ部23側へと向かって軸方向に沿って形成された第2切欠部21cと、が設けられる。
【0038】
第1切欠部21bは、本体部21の外周面を平面状に切り欠くことにより形成される。このように本体部21に第1切欠部21bが形成されることによって、圧力室12は、収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより画成される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、からなる第1連通路を通じて低圧通路Lと連通する。
【0039】
圧力室12と低圧通路Lと連通する第1連通路のうち、収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより画成される通路の流路断面積は、他の第1連通路の流路断面積よりも小さく設定される。このため、収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより画成される通路は、第1連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第1絞りとして機能する。
【0040】
一方、第2切欠部21cは、フランジ部23側の端部が収容孔7cから常時露出するように、環状溝21aからフランジ部23側へと向かって軸方向に沿って、本体部21の外周面を平面状に切り欠くことにより形成される。このように本体部21に第2切欠部21cが形成されることによって、パイロットポペット20のフランジ部23が配置される空間は、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、を通じて低圧通路Lと連通する。なお、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路の機能については後述する。
【0041】
このように形成されるパイロットポペット20は、シート部11aと同軸上に形成された収容孔7cによって摺動自在に支持されている。つまり、パイロットポペット20は、その中心軸がシート部11aの中心軸に対して傾かないように収容孔7cによって支持されている。このように、シート部11aに対してパイロットポペット20が傾いた状態となることが抑制されることで、弁部22がシート部11aに着座する際にシート部11aに片当たりすることが防止される。これにより、シート部11aが傷ついたり変形したりすることが抑制され、結果として、弁部22がシート部11aに着座した際のシール性を向上させることができる。
【0042】
また、環状溝21aは、パイロットポペット20の本体部21の外周面に形成されているが、これに代えて、環状溝は収容孔7cの内周面に形成されていてもよい。しかしながら、内周面への溝加工は、一般的に時間がかかるとともに精度を確保しにくい。このため、加工性の容易化や加工コストの低減のためには、本体部21の外周面に環状溝21aを形成することが好ましい。
【0043】
同様に、第1切欠部21b及び第2切欠部21cは、パイロットポペット20の本体部21の外周面に形成されているが、これに代えて、第1切欠部及び第2切欠部は、収容孔7cの内周面に軸方向に溝状に形成されていてもよい。しかしながら、内周面への溝加工は、一般的に時間がかかるとともに精度を確保しにくい。このため、加工性の容易化や加工コストの低減のためには、本体部21の外周面に第1切欠部21b及び第2切欠部21cを形成することが好ましい。
【0044】
また、パイロットピストン51のフランジ部51aとスリーブ7との間にはスプリング81が設けられ、サクションポペット3と連結部材90との間にはスプリング82が設けられる。スプリング81は、フランジ部51aが本体部50に当接するようにパイロットピストン51を付勢するとともに、本体部50がサクションポペット3のシート部3fに着座するようにフランジ部51aを介して本体部50を付勢する。一方、スプリング82は、サクションポペット3の角部3cが機器本体1のシート部1aに着座するようにサクションポペット3を付勢する。
【0045】
また、パイロットポペット20のフランジ部23とスリーブ7との間には、後述するソレノイド部70のロッド73にパイロットポペット20のフランジ部23側の端面を当接させるようにパイロットポペット20を付勢するスプリング83が設けられる。
【0046】
次に、図1を参照して、ソレノイド部70について説明する。
【0047】
ソレノイド部70は、ソレノイドハウジング71内に摺動自在に収容されるプランジャ72と、プランジャ72に一端部側が連結され他端部がパイロットポペット20に当接するロッド73と、ソレノイドハウジング71内に係止されプランジャ72をパイロットポペット20側に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング74と、ソレノイドハウジング71に収容されプランジャ72にスプリング74の付勢力に抗する推力を付与するコイル75と、を有する。なお、コイル75を覆うハウジングもソレノイドハウジング71に含まれる。
【0048】
ソレノイドハウジング71は、プランジャ72が収容される収容孔71cが端部71aに開口して形成された有底筒状部材であり、端部71aにおいて連結部材90に結合される。
【0049】
ソレノイドハウジング71には、収容孔71cと軸方向に連続してスプリング74が収容される付勢部材室としてのスプリング室77が形成される。スプリング室77内には、一端がプランジャ72に係止され他端がソレノイドハウジング71内に係止されるスプリング74が配置される。
【0050】
スプリング74の付勢力は、プランジャ72及びプランジャ72の軸心に連結されるロッド73を介してパイロットポペット20に作用する。つまり、スプリング74は、パイロットポペット20の弁部22がシート部11aに着座するようにパイロットポペット20を付勢している。
【0051】
上記構成のソレノイド部70のコイル75に電流が供給されると、プランジャ72には、スプリング74の付勢力に抗する推力が作用する。このため、プランジャ72及びロッド73を介してパイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力が小さくなり、結果として、パイロットポペット20の弁部22をシート部11aから離座させるために必要となる圧力、いわゆるクラッキング圧は小さくなる。このように、コイル75への通電を制御することによりパイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力を変化させることによって、パイロットポペット20が開弁する設定圧を変更することができる。
【0052】
バルブハウジング2とソレノイドハウジング71とを連結する連結部材90は、円筒状に形成された部材であり、バルブハウジング2が結合される第1結合部90aと、ソレノイドハウジング71が結合される第2結合部90bと、第1結合部90aの内側に設けられる収容孔90cと、収容孔90cに連通し第2結合部90bの内側を軸方向に貫通して形成される貫通孔90dと、を有する。収容孔90cには、スリーブ7の基端部7bが結合されるとともに、スリーブ7から突出したパイロットポペット20が収容される。また、連結部材90にソレノイドハウジング71が結合された状態において、貫通孔90dには、ロッド73が挿通する。
【0053】
上記形状の連結部材90を介してバルブハウジング2とソレノイドハウジング71とが連結された状態において、ソレノイドハウジング71内に形成されたスプリング室77は、プランジャ72を軸方向に貫通する貫通孔72aと、連結部材90の貫通孔90d及び収容孔90cと、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、からなる第2連通路を通じて低圧通路Lと連通する。
【0054】
スプリング室77と低圧通路Lと連通する第2連通路のうち、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路の流路断面積は、他の第2連通路の流路断面積よりも小さく設定される。このため、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路は、第2連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第2絞りとして機能する。
【0055】
次に、上記構成の電磁リリーフ弁100の作動について説明する。
【0056】
パイロット通路10及び背圧室8を通じて連通路11に導かれた高圧通路Hの作動油の圧力が、ソレノイド部70及びスプリング74によって設定されるパイロットポペット20の設定圧(クラッキング圧)に達すると、作動油の圧力によって、パイロットポペット20の弁部22がシート部11aから離座する。
【0057】
ここで、パイロットポペット20を付勢するスプリング74の仕様を変更することなく、クラッキング圧をより高い圧力に変更するには、シート部11aの径を小さくし、弁部22の受圧面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、弁部22の受圧面積を小さくすると、開弁時に弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積が小さくなることから、低圧通路Lへと排出される作動油の流量が低下してしまい、結果として、オーバーライド特性が悪化するおそれがある。
【0058】
これに対して、本実施形態では、弁部22がシート部11aから離座した後、圧力室12の圧力によってパイロットポペット20を弁部22がシート部11aから離座する方向へと移動させて、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積を大きくすることにより、シート部11aの径を小さくした場合であっても、低圧通路Lへと排出される作動油の流量が低下してしまうことを抑制している。
【0059】
具体的には、圧力室12と低圧通路Lとの間には、上述のように第1絞りが設けられることから、弁部22がシート部11aから離座した際に高圧通路Hの作動油が導かれる圧力室12内の圧力は、低圧通路Lの圧力に比べて高い状態に保持される。このように比較的高い圧力に保持された圧力室12内の圧力は、パイロットポペット20の受圧面24に作用し、パイロットポペット20を弁部22がシート部11aから離座する方向へと移動させることとなる。この結果、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積が拡大し、低圧通路Lへと排出される作動油の流量を増大させることができる。
【0060】
なお、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積をより大きくするには、第1絞りの流路断面積をできるだけ小さくし、圧力室12内の圧力を低圧通路Lの圧力に比べて高くすることが好ましい。しかしながら、第1絞りは、作動油を低圧通路Lへと排出する第1連通路に設けられていることから、第1絞りの流路断面積を小さくしすぎると、排出される作動油の流量が低下し、結果として、オーバーライド特性が悪化することになる。
【0061】
このため、第1絞りの流路断面積の大きさは、圧力室12内の圧力と低圧通路Lの圧力との圧力差をできるだけ大きくすることと、排出される作動油の流量を十分に確保することと、のバランスを勘案して設定され、例えば、シート部11aの断面積であるシート断面25の断面積の1倍以上4倍以下の大きさに設定される。
【0062】
ここで、シート部11aと弁部22との間の隙間を通じて流れる作動油の流量の大きさは、シート部11aの大きさ、すなわち、シート断面25の断面積と相関しており、シート断面25の断面積が大きいほど、作動油の流量は多くなり、シート断面25の断面積が小さいほど、作動油の流量は少なくなる。このように、作動油の流量に大きな影響を及ぼすシート断面25の断面積に対して、第1絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、圧力室12内の圧力と低圧通路Lの圧力との圧力差をできるだけ大きくすることができるとともに、第1絞りを通じて低圧通路Lへと排出される作動油の流量を十分に確保することができる。
【0063】
また、圧力室12内の圧力が作用するパイロットポペット20の受圧面24が小さいと、圧力室12内の圧力によるパイロットポペット20のリフト量が小さくなり、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積が大きくならず、結果として、排出される作動油の流量を十分に確保することが困難となる。このため、圧力室12内の圧力によるパイロットポペット20のリフト量を大きくするために、収容孔7cの断面積は、例えば、シート部11aの断面積であるシート断面25の断面積の10倍以上の大きさに設定することが好ましい。
【0064】
このようにシート断面25の断面積に対して収容孔7cの断面積を十分に大きくし、受圧面24を大きくすることによって、圧力室12内の圧力によるパイロットポペット20のリフト量を増大させることが可能となり、結果として、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積を拡大させることができる。
【0065】
上述のようにパイロットポペット20の弁部22がシート部11aから離座すると背圧室8内の作動油は、連通路11、弁部22とシート部11aとの間の隙間、圧力室12及び上述の第1連通路を通じて低圧通路Lへと排出される。
【0066】
背圧室8へはパイロット通路10を通じて高圧通路Hから作動油が常時供給されているが、この作動油の供給は、パイロット通路10に設けられた絞りによって制限される。このため、弁部22がシート部11aから離座して背圧室8内の作動油が排出されると、背圧室8の圧力は、高圧通路Hの圧力よりも次第に低くなる。
【0067】
このように、高圧通路Hの圧力に抗してメインポペット5の本体部50をサクションポペット3のシート部3fに着座させる方向にメインポペット5に作用する背圧室8の圧力が低下し、背圧室8の圧力と高圧通路Hの圧力との圧力差が予め設定された圧力差を超えると、メインポペット5の本体部50がサクションポペット3のシート部3fから離座し、メインポペット5が開弁する。これにより、高圧通路Hから低圧通路Lへと作動油が排出され、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることが防止される。
【0068】
ここで、上述のようにクラッキング圧をより高い圧力に変更した場合、パイロットポペット20に作用する圧力も大きくなることから、弁部22がシート部11aから離座している間のパイロットポペット20の挙動が不安定となりやすく、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積も変動しやすくなる。このように弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積が変動すると、背圧室8から排出される作動油の流量も不安定となるため、メインポペット5の作動が不安定となり、結果として、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることが十分に防止できなくなるおそれがある。
【0069】
そこで本実施形態では、弁部22がシート部11aから離座している間のパイロットポペット20の挙動を安定させることによって、パイロットポペット20のリフト量が急激に変動してしまうこと、すなわち、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積が急激に変動してしまうことを抑制している。
【0070】
上述のように、スプリング室77と低圧通路Lとの間における作動油の移動は、第2絞り、すなわち、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路によって制限されている。つまり、パイロットポペット20の移動に伴う作動油の流れが第2絞りによって生じにくくなっているため、結果として、パイロットポペット20が急峻な動きをすることが抑制される。
【0071】
具体的には、弁部22がシート部11aから離座する方向へとパイロットポペット20が移動している場合、パイロットポペット20の移動によりスプリング室77の容積が収縮するため、スプリング室77内の作動油は、低圧通路Lへと排出されることになる。しかしながら、スプリング室77と低圧通路Lとの間に設けられた第2絞りが作動油の排出を抑制するように作用することから、スプリング室77内の作動油の圧力が上昇する。このように上昇したスプリング室77内の作動油の圧力は、パイロットポペット20の移動速度を減衰させるように、換言すれば、弁部22がシート部11aから離座する方向へのパイロットポペット20の移動を抑制するように、パイロットポペット20に対して作用することになる。
【0072】
一方、弁部22がシート部11aに着座する方向へとパイロットポペット20が移動している場合、パイロットポペット20の移動によりスプリング室77の容積が拡張するため、低圧通路Lからスプリング室77内へと作動油が補充されることになる。しかしながら、スプリング室77と低圧通路Lとの間に設けられた第2絞りが作動油の補充を抑制するように作用することから、スプリング室77内の作動油の圧力が低下する。このように低下したスプリング室77内の作動油の圧力は、パイロットポペット20の移動速度を減衰させるように、換言すれば、弁部22がシート部11aに着座する方向へのパイロットポペット20の移動を抑制するように、パイロットポペット20に対して作用することになる。
【0073】
このようにしてパイロットポペット20の移動速度を減衰し、パイロットポペット20の挙動を安定させることによって、背圧室8から排出される作動油の流量が変動してしまうことを抑制することが可能となり、結果として、メインポペット5が安定して作動し、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることを防止することができる。
【0074】
なお、パイロットポペット20の移動速度を迅速に減衰するには、第2絞りの流路断面積をできるだけ小さくし、スプリング室77と低圧通路Lとの間における作動油の移動を制限することが好ましい。しかしながら、第2絞りの流路断面積を小さくしすぎると、パイロットポペット20の動きが緩慢となり応答性が低下するため、高圧通路Hの圧力が上昇しても背圧室8から排出される作動油の流量が増加しなかったり、高圧通路Hの圧力が低下しても背圧室8から排出される作動油の流量が減少しなかったりすることによって、結果として、オーバーライド特性が悪化することになる。
【0075】
このため、第2絞りの流路断面積の大きさは、高圧通路Hの圧力に対するパイロットポペット20の変位の応答性と、背圧室8から低圧通路Lへと排出される作動油の流量の安定性と、のバランスを勘案して設定され、例えば、シート部11aの断面積であるシート断面25の断面積の1倍以下の大きさに設定される。
【0076】
ここで、シート断面25の断面積は、上述のように、背圧室8から低圧通路Lへと排出される作動油の流量に大きな影響を及ぼす。また、シート断面25の断面積は、連通路11の圧力が、パイロットポペット20の弁部22をシート部11aから離座させるように作用する受圧面の面積でもあることから、パイロットポペット20の変位にも大きな影響を及ぼす。
【0077】
このように、パイロットポペット20の変位と背圧室8から低圧通路Lへと排出される作動油の流量に影響を及ぼすシート断面25の断面積に対して、第2絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、高圧通路Hの圧力に応じてパイロットポペット20を応答性よく変位させることが可能になるとともに、背圧室8から低圧通路Lへと排出される作動油の流量が変動することを抑制することができる。
【0078】
一方で、高圧通路Hが負圧になった場合、つまり高圧通路Hの圧力が低圧通路Lの圧力よりも低くなった場合には、サクションポペット3が機器本体1のシート部1aから離座し、サクションポペット3が開弁する。これにより、低圧通路Lから高圧通路Hに作動油が導かれ、キャビテーションが生じることが防止される。
【0079】
上述した第1実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0080】
上記構成の電磁リリーフ弁100では、収容孔7cの内周面とパイロットポペット20の第1切欠部21bとにより画成される通路が、圧力室12と低圧通路Lとを連通する第1連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第1絞りとして機能する。このため、弁部22がシート部11aから離座した際に高圧通路Hの作動油が導かれる圧力室12内の圧力は、低圧通路Lの圧力に比べて高い状態に保持される。このように比較的高い圧力に保持された圧力室12内の圧力は、パイロットポペット20の受圧面24に作用し、パイロットポペット20を弁部22がシート部11aから離座する方向へと移動させることとなる。この結果、弁部22とシート部11aとの間に形成される流路の面積が拡大し、低圧通路Lへと排出される作動油の流量を増大させることが可能となり、電磁リリーフ弁100のオーバーライド特性を向上させることができる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係るリリーフ弁200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0082】
リリーフ弁200の基本的な作動は、第1実施形態に係る電磁リリーフ弁100と同様である。リリーフ弁200は、パイロット式ではなく直接駆動式であり、また、ソレノイド部を有していない点で電磁リリーフ弁100と相違する。
【0083】
リリーフ弁200は、図3に示すように、弁体としてのポペットバルブ120と、ポペットバルブ120を収容するハウジング110と、一端がポペットバルブ120に係止される付勢部材としてのスプリング140と、スプリング140の他端が係止され、ハウジング110の開口端を閉塞する閉塞部材130と、を備える。
【0084】
ハウジング110は、円筒部110aと、底部110bと、底部110bとは反対側の軸方向端部に開口する収容孔110cと、を有する有底円筒状に形成された部材である。底部110bには、高圧通路Hに連通する連通路としての高圧連通路110Hが設けられ、円筒部110aの底部110b近傍には、低圧通路Lに連通する低圧連通路110Lが設けられる。
【0085】
収容孔110cに開口する高圧連通路110Hの開口端には、後述のポペットバルブ120の弁部122が離着座するシート部110dが設けられる。シート部110dは、その中心軸が収容孔110cの中心軸と一致するように収容孔110cと同軸上に形成される。上記形状のハウジング110は、円筒部110aに形成されたねじ部を介して機器本体1に取り付けられる。
【0086】
ポペットバルブ120は、略円柱状に形成された部材であり、収容孔110cに摺動支持される本体部121と、本体部121から軸方向に突出して円錐台状に形成された弁部122と、を有する。ポペットバルブ120は、弁部122がシート部110dに着座するようにスプリング140により付勢される。
【0087】
また、図3及び図4に示すように、弁部122がシート部110dに着座した状態において、収容孔110c内には、ハウジング110とポペットバルブ120とにより圧力室112が画成される。換言すれば、圧力室112は、弁部122とシート部110dとが当接する部分と、本体部121と収容孔110cとが摺接する部分と、の間に形成される。なお、図4は、図3の矢印Bで示される領域を拡大して示した拡大図であり、図4中の左側には、圧力室112の圧力を受けるポペットバルブ120の受圧面124と、高圧連通路110Hの圧力を受ける弁部122の受圧面となるシート部110dの断面であるシート断面125と、が示される。なお、ポペットバルブ120の受圧面124の断面積とシート断面125の断面積とを足し合わせた断面積は、収容孔110cの断面積に相当する。
【0088】
高圧連通路110Hに臨むシート断面125内の弁部122の面は、高圧連通路110Hの圧力を受ける受圧面となる。このシート断面125内の弁部122の受圧面に作用する高圧連通路110Hの圧力は、弁部122をシート部110dから離間させる方向に作用する。
【0089】
圧力室112に臨むポペットバルブ120の面は、圧力室112の圧力を受ける受圧面124となり、具体的には、上記第1実施形態における受圧面24と同様に、図4において左側に示されるように、弁部122から本体部121の外周面に至る部分のうち、シート部110dよりも内側の部分を除いた部分の表面が受圧面124となる。受圧面124に作用する圧力室112の圧力は、弁部122の受圧面に作用する高圧連通路110Hの圧力と同様に、弁部122をシート部110dから離間させる方向に作用する。
【0090】
このように形成されるポペットバルブ120は、シート部110dと同軸上に形成された収容孔110cによって摺動自在に支持されている。つまり、ポペットバルブ120は、その中心軸がシート部110dの中心軸に対して傾かないように収容孔110cによって支持されている。このように、シート部110dに対してポペットバルブ120が傾いた状態となることが抑制されることで、弁部122がシート部110dに着座する際にシート部110dに片当たりすることが防止される。これにより、シート部110dが傷ついたり変形したりすることが抑制され、結果として、弁部122がシート部110dに着座した際のシール性を向上させることができる。
【0091】
また、本体部121には、弁部122がシート部110dに着座した状態において、ハウジング110の低圧連通路110Lに対向して設けられる段部121aが形成される。
【0092】
このように低圧連通路110Lに対向する段部121aが本体部121に形成されることによって、圧力室112は、低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間と、低圧連通路110Lと、からなる第1連通路を通じて低圧通路Lと連通する。
【0093】
圧力室112と低圧通路Lと連通する第1連通路のうち、低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間の流路断面積は、他の第1連通路の流路断面積よりも小さく設定される。このため、低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間は、第1連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第1絞りとして機能する。なお、低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間の大きさは、ポペットバルブ120のリフト量が大きくなるほど大きくなることから、第1絞りは可変絞りとなる。
【0094】
また、本体部121内には、スプリング140が配置される付勢部材室としてのスプリング室141に一端が開口し、他端が本体部121の摺動面に開口する通路121bが形成される。この通路121b上には、第2絞り123が配置される。
【0095】
本体部121に設けられた通路121bに対応して、ハウジング110には、通路121bの他端に対向する位置に、径方向に貫通した貫通孔113が形成される。貫通孔113は、機器本体1に形成された取付孔とハウジング110の円筒部110aとの間に設けられた隙間114に開口しており、隙間114を通じて低圧通路Lと連通する。なお、通路121b及び貫通孔113は、ポペットバルブ120が所定の範囲でリフトした場合であっても常時連通するように形成される。
【0096】
このようにスプリング室141は、本体部121内に形成された通路121bと、ハウジング110に形成された貫通孔113と、機器本体1とハウジング110との間に設けられた隙間114と、からなる第2連通路を通じて低圧通路Lと連通する。なお、この第2連通路上には、上述のように、第2連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第2絞り123が配置されている。
【0097】
また、本体部121の摺動面に開口する通路121bの他端側には、ハウジング110に形成された貫通孔113と連通する環状溝が本体部121の外周面に沿って形成されている。このような環状溝は、収容孔110cの内周面に形成されていてもよい。しかしながら、内周面への溝加工は、一般的に時間がかかるとともに精度を確保しにくい。このため、加工性の容易化や加工コストの低減のためには、本体部121の外周面に環状溝を形成することが好ましい。
【0098】
次に、上記構成のリリーフ弁200の作動について説明する。
【0099】
高圧通路H内の作動油の圧力が、スプリング140によって設定されるポペットバルブ120の設定圧(クラッキング圧)に達すると、作動油の圧力によって、ポペットバルブ120の弁部122がシート部110dから離座する。
【0100】
ここで、ポペットバルブ120を付勢するスプリング140の仕様を変更することなく、クラッキング圧をより高い圧力に変更するには、シート部110dの径を小さくし、弁部122の受圧面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、弁部122の受圧面積を小さくすると、開弁時に弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積が小さくなることから、低圧通路Lへと排出される作動油の流量が低下してしまい、結果として、オーバーライド特性が悪化するおそれがある。
【0101】
これに対して、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、弁部122がシート部110dから離座した後、圧力室112の圧力によってポペットバルブ120を弁部122がシート部110dから離座する方向へと移動させて、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積を大きくすることにより、シート部110dの径を小さくした場合であっても、低圧通路Lへと排出される作動油の流量が低下してしまうことを抑制している。
【0102】
具体的には、圧力室112と低圧通路Lとの間には、上述のように低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間により第1絞りが形成される。したがって、弁部122がシート部110dから離座した際に高圧通路Hの作動油が導かれる圧力室112内の圧力は、低圧通路Lの圧力に比べて高い状態に保持される。
【0103】
このように比較的高い圧力に保持された圧力室112内の圧力は、ポペットバルブ120の受圧面124に作用し、ポペットバルブ120を弁部122がシート部110dから離座する方向へと移動させることとなる。この結果、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積が拡大し、低圧通路Lへと排出される作動油の流量を増大させることができる。
【0104】
なお、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積をより大きくするには、第1絞りの流路断面積をできるだけ小さくし、圧力室112内の圧力を低圧通路Lの圧力に比べて高くすることが好ましい。しかしながら、第1絞りは、作動油を低圧通路Lへと排出する第1連通路に設けられていることから、第1絞りの流路断面積を小さくしすぎると、排出される作動油の流量が低下し、結果として、オーバーライド特性が悪化することになる。
【0105】
このため、第1絞りの流路断面積の大きさは、圧力室112内の圧力と低圧通路Lの圧力との圧力差をできるだけ大きくすることと、排出される作動油の流量を十分に確保することと、のバランスを勘案して設定され、例えば、シート部110dの断面積であるシート断面125の断面積の1倍以上4倍以下の大きさに設定される。
【0106】
ここで、シート部110dと弁部122との間の隙間を通じて流れる作動油の流量の大きさは、シート部110dの大きさ、すなわち、シート断面125の断面積と相関しており、シート断面125の断面積が大きいほど、作動油の流量は多くなり、シート断面125の断面積が小さいほど、作動油の流量は少なくなる。このように、作動油の流量に大きな影響を及ぼすシート断面125の断面積に対して、第1絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、圧力室112内の圧力と低圧通路Lの圧力との圧力差をできるだけ大きくすることができるとともに、第1絞りを通じて低圧通路Lへと排出される作動油の流量を十分に確保することができる。
【0107】
また、圧力室112内の圧力が作用するポペットバルブ120の受圧面124が小さいと、圧力室112内の圧力によるポペットバルブ120のリフト量が小さくなり、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積が大きくならず、結果として、排出される作動油の流量を十分に確保することが困難となる。このため、圧力室112内の圧力によるポペットバルブ120のリフト量を大きくするために、収容孔110cの断面積は、例えば、シート部110dの断面積であるシート断面125の断面積の10倍以上の大きさに設定することが好ましい。
【0108】
このようにシート断面125の断面積に対して収容孔110cの断面積を十分に大きくし、受圧面124を大きくすることによって、圧力室112内の圧力によるポペットバルブ120のリフト量を増大させることが可能となり、結果として、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積を拡大させることができる。
【0109】
そして、ポペットバルブ120の弁部122がシート部110dから離座し、高圧通路Hから低圧通路Lへと作動油が排出されることにより、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることが防止される。特に、低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間の大きさは、ポペットバルブ120のリフト量が大きくなるほど大きくなることから、高圧通路Hの圧力が大きいほど、低圧通路Lへと作動油を円滑に排出させることが可能となる。
【0110】
ここで、上述のようにクラッキング圧をより高い圧力に変更した場合、ポペットバルブ120に作用する圧力も大きくなることから、弁部122がシート部110dから離座している間のポペットバルブ120の挙動が不安定となりやすく、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積も変動しやすくなる。このように弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積が変動すると、低圧通路Lへと排出される作動油の流量も不安定となるため、結果として、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることが十分に防止できなくなるおそれがある。
【0111】
そこで本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、弁部122がシート部110dから離座している間のポペットバルブ120の挙動を安定させることによって、ポペットバルブ120のリフト量が急激に変動してしまうこと、すなわち、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積が急激に変動してしまうことを抑制している。
【0112】
上述のように、スプリング室141と低圧通路Lとの間における作動油の移動は、第2絞り123によって制限されている。つまり、ポペットバルブ120の移動に伴う作動油の流れが第2絞り123によって生じにくくなっているため、結果として、ポペットバルブ120が急峻な動きをすることが抑制される。
【0113】
具体的には、弁部122がシート部110dから離座する方向へとポペットバルブ120が移動している場合、ポペットバルブ120の移動によりスプリング室141の容積が収縮するため、スプリング室141内の作動油は、低圧通路Lへと排出されることになる。しかしながら、スプリング室141と低圧通路Lとの間に設けられた第2絞り123が作動油の排出を抑制するように作用することから、スプリング室141内の作動油の圧力が上昇する。このように上昇したスプリング室141内の作動油の圧力は、ポペットバルブ120の移動速度を減衰させるように、換言すれば、弁部122がシート部110dから離座する方向へのポペットバルブ120の移動を抑制するように、ポペットバルブ120に対して作用することになる。
【0114】
一方、弁部122がシート部110dに着座する方向へとポペットバルブ120が移動している場合、ポペットバルブ120の移動によりスプリング室141の容積が拡張するため、低圧通路Lからスプリング室141内へと作動油が補充されることになる。しかしながら、スプリング室141と低圧通路Lとの間に設けられた第2絞り123が作動油の補充を抑制するように作用することから、スプリング室141内の作動油の圧力が低下する。このように低下したスプリング室141内の作動油の圧力は、ポペットバルブ120の移動速度を減衰させるように、換言すれば、弁部122がシート部110dに着座する方向へのポペットバルブ120の移動を抑制するように、ポペットバルブ120に対して作用することになる。
【0115】
このようにしてポペットバルブ120の移動速度を減衰し、ポペットバルブ120の挙動を安定させることによって、低圧通路Lへと排出される作動油の流量が変動してしまうことを抑制することが可能となり、結果として、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることを防止することができる。
【0116】
なお、ポペットバルブ120の移動速度を迅速に減衰するには、第2絞り123の流路断面積をできるだけ小さくし、スプリング室141と低圧通路Lとの間における作動油の移動を制限することが好ましい。しかしながら、第2絞り123の流路断面積を小さくしすぎると、ポペットバルブ120の動きが緩慢となり応答性が低下するため、高圧通路Hの圧力が上昇しても低圧通路Lへ排出される作動油の流量が増加しなかったり、高圧通路Hの圧力が低下しても低圧通路Lへ排出される作動油の流量が減少しなかったりすることによって、結果として、オーバーライド特性が悪化することになる。
【0117】
このため、第2絞り123の流路断面積の大きさは、高圧通路Hの圧力に対するポペットバルブ120の変位の応答性と、低圧通路Lへ排出される作動油の流量の安定性と、のバランスを勘案して設定され、例えば、シート部110dの断面積であるシート断面125の断面積の1倍以下の大きさに設定される。
【0118】
ここで、シート断面125の断面積は、上述のように、低圧通路Lへ排出される作動油の流量に大きな影響を及ぼす。また、シート断面125の断面積は、高圧連通路110Hの圧力が、ポペットバルブ120の弁部122をシート部110dから離座させるように作用する受圧面の面積でもあることから、ポペットバルブ120の変位にも大きな影響を及ぼす。
【0119】
このように、ポペットバルブ120の変位と低圧通路Lへと排出される作動油の流量に影響を及ぼすシート断面125の断面積に対して、第2絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、高圧通路Hの圧力に応じてポペットバルブ120を応答性よく変位させることが可能になるとともに、低圧通路Lへ排出される作動油の流量が変動することを抑制することができる。
【0120】
上述した第2実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0121】
上記構成のリリーフ弁200では、ハウジング110に形成された低圧連通路110Lの内壁面とポペットバルブ120に形成された段部121aの縁との間に形成される隙間が、圧力室112と低圧通路Lとを連通する第1連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第1絞りとして機能する。このため、弁部122がシート部110dから離座した際に高圧通路Hの作動油が導かれる圧力室112内の圧力は、低圧通路Lの圧力に比べて高い状態に保持される。このように比較的高い圧力に保持された圧力室112内の圧力は、ポペットバルブ120の受圧面124に作用し、ポペットバルブ120を弁部122がシート部110dから離座する方向へと移動させることとなる。この結果、弁部122とシート部110dとの間に形成される流路の面積が拡大し、低圧通路Lへと排出される作動油の流量を増大させることが可能となり、リリーフ弁200のオーバーライド特性を向上させることができる。
【0122】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0123】
上記第1実施形態では、メインポペット5は、本体部50とパイロットピストン51によって構成される。これに代えて、メインポペット5は、例えば、上記実施形態で説明した本体部50とパイロットピストン51とを一体形成した弁体により構成されてもよい。
【0124】
また、上記第1実施形態では、ソレノイド部70によって、パイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力を変化させている。これに代えて、ソレノイド部70を設けることなく、パイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力を一定としてもよい。
【0125】
また、上記第1実施形態では、収容孔7cの内周面とパイロットポペット20の第1切欠部21bとにより画成される通路が第1絞りとして機能している。これに代えて、第1絞りは、パイロットポペット20の外周面に形成された溝やパイロットポペット20の内部に形成された通路により構成されてもよいし、収容孔7cの内周面に形成された溝やスリーブ7の内部に形成された通路により構成されてもよい。
【0126】
また、上記第1実施形態では、収容孔7cの内周面とパイロットポペット20の第2切欠部21cとにより画成される通路が第2絞りとして機能している。これに代えて、第2絞りは、パイロットポペット20の外周面に形成された溝やパイロットポペット20の内部に形成された通路により構成されてもよいし、収容孔7cの内周面に形成された溝やスリーブ7の内部に形成された通路により構成されてもよい。なお、第1切欠部21b及び第2切欠部21cをパイロットポペット20の外周面に形成した場合の方が、パイロットポペット20の外周面に形成された環状溝21aを第1絞り及び第2絞りを低圧通路Lと連通させる共通の通路として利用できるため、加工性の容易化や構成の簡素化の点では有利である。
【0127】
また、上記第2実施形態では、ポペットバルブ120に作用するスプリング140の付勢力は一定である。これに代えて、ソレノイド部によって、ポペットバルブ120に作用するスプリング140の付勢力を変化させてもよい。
【0128】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0129】
高圧通路Hから低圧通路Lへと作動油を排出することにより高圧通路Hの圧力の上昇を抑制するリリーフ弁(電磁リリーフ弁100,リリーフ弁200)は、高圧通路Hに連通する連通路(連通路11,高圧連通路110H)と、連通路の開口端に形成されたシート部11a,110dと、が設けられたハウジング(スリーブ7,ハウジング110)と、シート部11a,110dに離着座する弁部22,122を有し、ハウジング内に収容される弁体(パイロットポペット20,ポペットバルブ120)と、弁部22,122がシート部11a,110dに着座するように弁体を付勢するスプリング74,140と、ハウジング内に形成され、弁部22,122がシート部11a,110dから離座した際に高圧通路Hの圧力が導かれる圧力室12,112と、圧力室12,112と低圧通路Lとを連通する第1連通路と、第1連通路に設けられ、第1連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第1絞り(収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより画成される通路,低圧連通路110Lの内壁面と段部121aの縁との間に形成される隙間)と、を備える。
【0130】
この構成では、圧力室12,112と低圧通路Lとを連通する第1連通路に第1絞りが設けられる。このため、弁部22,122がシート部11a,110dから離座した際に高圧通路Hの作動油が導かれる圧力室12,112内の圧力は、低圧通路Lの圧力に比べて高い状態に保持される。このように比較的高い圧力に保持された圧力室12,112内の圧力は、弁体の受圧面24,124に作用し、弁体を弁部22,122がシート部11a,110dから離座する方向へと移動させることとなる。この結果、弁部22,122とシート部11a,110dとの間に形成される流路の面積が拡大し、低圧通路Lへと排出される作動油の流量を増大させることが可能となり、リリーフ弁のオーバーライド特性を向上させることができる。
【0131】
また、第1絞りの流路断面積は、シート部11a,110dの断面積の1倍以上4倍以下の大きさである。
【0132】
この構成では、第1絞りの流路断面積が、シート部11a,110dの断面積の1倍以上4倍以下の大きさに設定される。シート部11a,110dと弁部22,122との間の隙間を通じて流れる作動油の流量の大きさは、シート部11a,110dの大きさ、すなわち、シート断面25,125の断面積と相関しており、シート断面25,125の断面積が大きいほど、作動油の流量は多くなり、シート断面25,125の断面積が小さいほど、作動油の流量は少なくなる。このように、作動油の流量に大きな影響を及ぼすシート断面25,125の断面積に対して、第1絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、圧力室12,112内の圧力と低圧通路Lの圧力との圧力差をできるだけ大きくすることができるとともに、第1絞りを通じて低圧通路Lへと排出される作動油の流量を十分に確保することができる。
【0133】
また、リリーフ弁は、スプリング74,140が収容されるスプリング室77,141と、スプリング室77,141と低圧通路Lとを連通する第2連通路と、第2連通路に設けられ、第2連通路を流れる作動油に抵抗を付与する第2絞り(収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより画成される通路,第2絞り123)と、をさらに備える。
【0134】
この構成では、スプリング室77,141と低圧通路Lとを連通する第2連通路に第2絞りが設けられる。このため、スプリング室77,141と低圧通路Lとの間における作動油の移動は、第2絞りによって制限される。つまり、弁体の移動に伴う作動油の流れが第2絞りによって生じにくくなっているため、弁体が急峻な動きをすることが抑制される。このため、高圧通路Hの圧力に応じて弁体が安定して作動することになるため、リリーフ圧が安定し、結果として、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることを確実に防止することが可能となる。
【0135】
また、第2絞りの流路断面積は、シート部11a,110dの断面積の1倍以下の大きさである。
【0136】
この構成では、第2絞りの流路断面積が、シート部11a,110dの断面積の1倍以下の大きさに設定される。シート断面25,125の断面積は、シート部11a,110dと弁部22,122との間の隙間を通じて流れる作動油の流量に大きな影響を及ぼす。また、シート断面25,125の断面積は、弁部22,122をシート部11a,110dから離座させるように作用する作動油の圧力を受ける受圧面の面積でもあることから、弁体(パイロットポペット20,ポペットバルブ120)の変位にも大きな影響を及ぼす。このように、弁体(パイロットポペット20,ポペットバルブ120)の変位と作動油の流量とに影響を及ぼすシート断面25,125の断面積に対して、第2絞りの流路断面積の割合を最適な大きさとすることによって、高圧通路Hの圧力に応じて弁体(パイロットポペット20,ポペットバルブ120)を応答性よく変位させることが可能になるとともに、低圧通路Lへと排出される作動油の流量が変動することを抑制することができる。
【0137】
また、ハウジングは、弁体を収容する収容孔7c,110cを有し、収容孔7c,110cの断面積は、シート部11a,110dの断面積の10倍以上の大きさである。
【0138】
この構成では、弁体を収容する収容孔7c,110cの断面積が、シート部11a,110dの断面積の10倍以上の大きさに設定される。このようにシート断面25,125の断面積に対して収容孔7c,110cの断面積を十分に大きくし、受圧面24,124を大きくすることによって、圧力室12,112内の圧力による弁体(パイロットポペット20,ポペットバルブ120)のリフト量を増大させることが可能となり、結果として、弁部22,122とシート部11a,110dとの間に形成される流路の面積を拡大させることができる。
【0139】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0140】
100・・・電磁リリーフ弁(リリーフ弁)、200・・・リリーフ弁、5・・・メインポペット(主弁体)、7・・・スリーブ(ハウジング)、7c・・・収容孔、8・・・背圧室、11・・・連通路、11a・・・シート部、12・・・圧力室、20・・・パイロットポペット(弁体)、21b・・・第1切欠部、21c・・・第2切欠部、22・・・弁部、24・・・受圧面、25・・・シート断面、70・・・ソレノイド部、74・・・スプリング(付勢部材)、77・・・スプリング室(付勢部材室)、110・・・ハウジング、110H・・・高圧連通路(連通路)、110c・・・収容孔、110d・・・シート部、112・・・圧力室、120・・・ポペットバルブ(弁体)、121a・・・段部、122・・・弁部、123・・・第2絞り、124・・・受圧面、125・・・シート断面、140・・・スプリング(付勢部材)、141・・・スプリング室(付勢部材室)、H・・・高圧通路、L・・・低圧通路
図1
図2
図3
図4