(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】カッティングヘッド付き光硬化型プリンタ用のジョブデータを作成するジョブデータ作成装置およびコンピュータプログラム、ならびに印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 11/66 20060101AFI20240228BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240228BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B41J11/66
B41J2/01 127
B26D5/00 F
(21)【出願番号】P 2020041692
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】上林 和雅
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-083835(JP,A)
【文献】特開2014-188695(JP,A)
【文献】特開2019-43118(JP,A)
【文献】特開2003-248560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/66
B41J 2/01
B26D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記記録媒体上の前記インクに光を照射して印刷層を形成する光照射部と、前記記録媒体および前記印刷層をカットするカッターを有するカッティングヘッドと、を備えたカッティングヘッド付き光硬化型プリンタ用のジョブデータを作成するジョブデータ作成装置であって、
前記記録媒体上に形成される前記印刷層を表す印刷画像データと、前記記録媒体をカットするカット線を表すカットラインデータと、を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記印刷画像データに基づいて、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式の印刷データを作成する印刷データ作成部と、
前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式のカットデータであって、前記受信部が受信した前記カットラインデータに基づいて、前記印刷層を形成する前に前記記録媒体をカットするカット線を表すプレカットデータと、前記印刷層を形成した後に前記印刷層をカットするカット線を表すアフターカットデータと
、を作成する第1カットデータ作成部と、
前記プレカットデータ、前記アフターカットデータ、および前記印刷データ
を、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタにおける処理動作の実行順に並び替え、ジョブデータを作成するジョブデータ作成部と、
前記印刷層が複数のインク層で構成されており、かつ前記印刷層の全体厚みが所定値以上である場合には前記プレカットデータと前記アフターカットデータとを作成すると判定する判定部と、
を備える、ジョブデータ作成装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記印刷データ作成部で少なくとも1つのプロセスカラーインクの前記印刷データと、クリアインクおよびホワイトインクのうちの少なくとも一方の前記印刷データと、が作成された場合に、前記プレカットデータと前記アフターカットデータ
とを作成すると判定する、
請求項
1に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記印刷データ作成部でクリアインクの前記印刷データが作成された場合に、前記プレカットデータと前記アフターカットデータとを作成すると判定する、
請求項1に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項4】
前記プレカットデータの前記カット線と、前記アフターカットデータの前記カット線とが相互に異なっている、
請求項1から
3のいずれか一項に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項5】
前記プレカットデータのカット線が、前記印刷層の少なくとも一部の周囲に設定される輪郭によって画定されており、
前記第1カットデータ作成部は、前記輪郭が鋭角に屈曲した部分を有する場合に、少なくとも前記屈曲した部分のカット線を前記輪郭の外側に広げて、前記アフターカットデータを作成する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項6】
前記アフターカットデータにおいて前記カッターを前記印刷層に接触させる条件を、前記印刷層の全体厚みに基づいて設定するカット設定変更部をさらに備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項7】
記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記記録媒体上の前記インクに光を照射して印刷層を形成する光照射部と、前記記録媒体および前記印刷層をカットするカッターを有するカッティングヘッドと、を備えたカッティングヘッド付き光硬化型プリンタ用のジョブデータを作成するジョブデータ作成装置であって、
前記記録媒体上に形成される前記印刷層を表す印刷画像データと、前記記録媒体をカットするカット線を表すカットラインデータと、を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記印刷画像データに基づいて、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式の印刷データを作成する印刷データ作成部と、
前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式のカットデータであって、前記受信部が受信した前記カットラインデータに基づいて、前記印刷層を形成する前に前記記録媒体をカットするカット線を表すプレカットデータと、前記印刷層を形成した後に前記印刷層をカットするカット線を表すアフターカットデータと、を作成する第1カットデータ作成部と、
前記プレカットデータ、前記アフターカットデータ、および前記印刷データを前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタにおける処理動作の実行順に並び替え、ジョブデータを作成するジョブデータ作成部と、
前記アフターカットデータにおいて前記カッターを前記印刷層に接触させる条件を、前記印刷層の厚みに基づいて設定するカット設定変更部と、
を備える、ジョブデータ作成装置。
【請求項8】
前記印刷層を形成した後に前記記録媒体と前記印刷層とをカットするカット線を表す前記カットデータを作成する第2カットデータ作成部をさらに備える、
請求項1から
7のいずれか一項に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項9】
前記記録媒体は、ベースとなる基材と、前記基材上に配置され、前記基材から剥離可能な剥離媒体と、を備えるシール媒体である、
請求項1から
8のいずれか一項に記載のジョブデータ作成装置。
【請求項10】
記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記記録媒体上の前記インクに光を照射して印刷層を形成する光照射部と、前記記録媒体および前記印刷層をカットするカッターを有するカッティングヘッドと、を備えたカッティングヘッド付き光硬化型プリンタにお
いて、コンピュータを、
前記記録媒体上に形成される前記印刷層を表す印刷画像データと、前記記録媒体をカットするカット線を表すカットラインデータと、を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記印刷画像データに基づいて、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式の印刷データを作成する印刷データ作成部と、
前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式のカットデータであって、前記受信部が受信した前記カットラインデータに基づいて、前記印刷層を形成する前に前記記録媒体をカットするカット線を表すプレカットデータと、前記印刷層を形成した後に前記印刷層をカットするカット線を表すアフターカットデータと
、を作成する第1カットデータ作成部と、
前記プレカットデータ、前記アフターカットデータ、および前記印刷データ
を、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタにおける処理動作の実行順に並び替え、ジョブデータを作成するジョブデータ作成部と、
前記印刷層が複数のインク層で構成されており、かつ前記印刷層の全体厚みが所定値以上である場合には前記プレカットデータと前記アフターカットデータとを作成すると判定する判定部と、
して機能させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のジョブデータ作成装置と、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタと、を備える印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティングヘッド付き光硬化型プリンタ用のジョブデータを作成するジョブデータ作成装置およびコンピュータプログラム、ならびに印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、記録媒体をカットするカッターを有するカッティングヘッドと、を備えたカッティングヘッド付きインクジェットプリンタが知られている。例えば特許文献1には、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタで記録媒体に印刷層を形成した後、印刷層の形成された記録媒体をカットすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリンタのなかには、光硬化性インクを吐出するインクヘッドと、記録媒体上のインクに光を照射する光照射装置と、を備えた光硬化型のものがある。光硬化型プリンタでは、光硬化性以外のインク、例えばソルベント系インク(溶剤系インク)や水系インクを用いて印刷を行う場合に比べて、印刷層の厚みが相対的に厚くなる。とりわけ、印刷層を構成するインク層が2層以上となる多層印刷では、印刷層の全体の厚みが厚くなる。また、印刷物の表面保護や意匠性の向上等を目的としてクリアインクを用いる場合は、クリアインクの層に厚みを持たせたり、クリアインクの層で立体的に凹凸感を表現したりすることがある。
【0005】
本発明者の検討によれば、このような場合、印刷後に印刷層をカッターでカットしようとすると、カッターが印刷層および記録媒体に加える押圧力(カット圧力)が不足して、印刷層をきれいに切り取れないことがあった。一方で、印刷層をきれいに切り取ろうとしてカット圧力を高く設定しすぎると、記録媒体がカット圧力に引っ張られて曲がってしまうことがあった。このため、印刷物に欠陥が発生して歩留まりが悪化することがあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カッティングヘッド付き光硬化型プリンタのカッティング加工性を向上することができるジョブデータを作成するジョブデータ作成装置およびコンピュータプログラム、ならびに印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記記録媒体上の前記インクに光を照射して印刷層を形成する光照射部と、前記記録媒体および前記印刷層をカットするカッターを有するカッティングヘッドと、を備えたカッティングヘッド付き光硬化型プリンタ用のジョブデータを作成するジョブデータ作成装置が提供される。このジョブデータ作成装置は、前記記録媒体上に形成される前記印刷層を表す印刷画像データと、前記記録媒体をカットするカット線を表すカットラインデータと、を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記印刷画像データに基づいて、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式の印刷データを作成する印刷データ作成部と、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式のカットデータであって、前記受信部が受信した前記カットラインデータに基づいて、前記印刷層を形成する前に前記記録媒体をカットするカット線を表すプレカットデータと、前記印刷層を形成した後に前記印刷層をカットするカット線を表すアフターカットデータと、を含む複数の前記カットデータを作成する第1カットデータ作成部と、前記カットデータと前記印刷データとを前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタにおける処理動作の実行順に並び替え、ジョブデータを作成するジョブデータ作成部と、を備える。
【0008】
本発明により、記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記記録媒体上の前記インクに光を照射して印刷層を形成する光照射部と、前記記録媒体および前記印刷層をカットするカッターを有するカッティングヘッドと、を備えたカッティングヘッド付き光硬化型プリンタにおいて、コンピュータを、前記記録媒体上に形成される前記印刷層を表す印刷画像データと、前記記録媒体をカットするカット線を表すカットラインデータと、を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記印刷画像データに基づいて、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式の印刷データを作成する印刷データ作成部と、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタで読み込み可能な形式のカットデータであって、前記受信部が受信した前記カットラインデータに基づいて、前記印刷層を形成する前に前記記録媒体をカットするカット線を表すプレカットデータと、前記印刷層を形成した後に前記印刷層をカットするカット線を表すアフターカットデータと、を含む複数の前記カットデータを作成する第1カットデータ作成部と、前記カットデータと前記印刷データとを前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタにおける処理動作の実行順に並び替え、ジョブデータを作成するジョブデータ作成部と、して機能させるように構成されている、コンピュータプログラムが提供される。
【0009】
本発明により、前記ジョブデータ作成装置と、前記カッティングヘッド付き光硬化型プリンタと、を備える印刷システムが提供される。
【0010】
本発明のジョブデータ作成装置およびコンピュータプログラム、ならびに印刷システムでは、記録媒体をカットするプレカットデータと、印刷層をカットするアフターカットデータと、を含んだジョブデータが作成される。これにより、記録媒体と印刷層とをそれぞれ別々にカットすることができる。したがって、例えば印刷層が厚い場合等にも、カッティングヘッド付き光硬化型プリンタのカッティング加工性を向上することができ、歩留まりの悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カッティングヘッド付き光硬化型プリンタのカッティング加工性を向上することができるジョブデータを作成するジョブデータ作成装置およびコンピュータプログラム、ならびに印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る印刷システムが備えるカッティングヘッド付き光硬化型プリンタの正面図である。
【
図2】一実施形態に係るシール媒体の断面図である。
【
図3A】インクジェットヘッドとカッティングヘッドとが連結された状態を示す正面図である。
【
図3B】インクジェットヘッドとカッティングヘッドとの連結が解除された状態を示す正面図である。
【
図5】一実施形態に係る印刷システムが備えるジョブデータ作成装置の機能ブロック図である。
【
図6】ジョブデータを作成する制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7A】プレカット動作時のシール媒体を模式的に示す断面図である。
【
図7B】印刷動作後のシール媒体を模式的に示す断面図である。
【
図7C】アフターカット動作時のシール媒体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
図1に示すように、印刷システム1は、カッティングヘッド付き光硬化型プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)10と、ジョブデータ作成装置200と、を備えている。本実施形態に係るジョブデータ作成装置200およびコンピュータプログラムは、プリンタ10に用いられるジョブデータを作成するものである。プリンタ10とジョブデータ作成装置200とは、ネットワークによって相互にデータ通信可能なように接続されている。ネットワークは、例えばインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)等である。ネットワークは、有線接続であってもよいし無線接続であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において「光硬化型プリンタ」とは、光源から、紫外線、X線、可視光線、赤外線等を含む電磁波(広義の光)を照射することにより、記録媒体上のインクを硬化させて、印刷層を形成する印刷装置全般をいう。また、本明細書において「インクジェットプリンタ」とは、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、二値偏向方式や連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用する印刷装置全般をいう。
【0016】
まず、プリンタ10について説明する。
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体5に対して印刷およびカットが可能なプリント&カット機である。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザ(プリンタ10の使用者)から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号L、R、U、Dは、それぞれ、左、右、上、下を表す。また、図面中の符号Y、Zは、それぞれ主走査方向(左右方向)、上下方向を表し、主走査方向に直交する方向(前後方向)を副走査方向という。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタ10の設置形態を何ら限定するものではない。
【0017】
記録媒体5の構成や材質は特に限定されない。記録媒体5は、単層構造であってもよいし、厚み方向に材質の異なる複数層が積層された多層構造、例えば2層構造や3層以上の構造であってもよい。記録媒体は、ロール状に巻かれたものであってもよいし、シート状のものであってもよい。記録媒体5の材質は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類はもちろんのこと、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体等の樹脂類、織布や不織布等の布帛、皮革、アルミニウムやステンレス鋼等の金属類、カーボン、陶器、セラミック、ガラス、ゴム等であってもよい。
【0018】
また記録媒体5は、例えば
図2に示すように、ベースとなる基材5aと、基材5a上に配置され、基材5aから剥離可能な剥離媒体5bと、を備えるシール媒体5cであってもよい。剥離媒体5bは、典型的には、基材5aと対向する側の面に、タック性を有する粘着剤層(図示せず)を備えている。基材5aと剥離媒体5bとは、粘着剤層を介して一体的に保持されている。なお、シール媒体5cの基材5aおよび剥離媒体5bの材質は、特に限定されない。基材5aは、例えば普通紙等の紙類で構成された台紙であってもよい。剥離媒体5bは、例えばポリ塩化ビニル等の樹脂類で構成された剥離紙であってもよい。基材5aおよび剥離媒体5bは、相互に異なる材質から形成されていてもよい。また、シール媒体5cは2層構造であってもよく、3層以上の積層構造であってもよい。
【0019】
なお、本明細書において「カット」とは、記録媒体5の厚み方向の全体をカットする場合、例えば、シール媒体5cの基材5aおよび剥離媒体5bの両方をカットする場合と、記録媒体5の厚み方向の一部をカットする場合、例えば、シール媒体5cの剥離媒体5bの厚み方向の全体をカットし、基材5aの厚み方向の一部をカットするまたは基材5aをカットしない場合と、が含まれる。
【0020】
図1に示すように、プリンタ10は、操作パネル12と、プラテン16と、インクジェットヘッド20と、カッティングヘッド30と、ヘッド移動機構40と、媒体移動機構45と、制御装置50と、を備えている。操作パネル12は、プリンタ10の右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。図示は省略するが、操作パネル12は、例えば、プリンタ10の設定情報やステータスなどが表示される表示部と、ユーザが情報を入力するための入力部と、を備えている。
【0021】
プラテン16は、記録媒体5に印刷を行う際、ならびに、記録媒体5および/または印刷層6(
図7B参照)をカットする際に、記録媒体5を支持するものである。プラテン16には、記録媒体5が載置される。プラテン16は、記録媒体5の載置台の一例である。記録媒体5への印刷層6の形成、ならびに、記録媒体5および/または印刷層6のカットは、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yに延びている。プラテン16の上方には、主走査方向Yに延びるガイドレール15が配置されている。ガイドレール15の少なくとも一部は、プラテン16と平行に配置されている。
【0022】
図3Aおよび
図3Bは、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30の正面図である。詳しくは後述するが、
図3Aは、インクジェットヘッド20とカッティングヘッド30とが連結された状態を示し、
図3Bは、インクジェットヘッド20とカッティングヘッド30との連結が解除された状態を示している。
【0023】
インクジェットヘッド20は、プラテン16に載置された記録媒体5に対して印刷を行うためのものである。
図3Aに示すように、インクジェットヘッド20は、主走査方向Yに移動可能なキャリッジ21と、インクを吐出するノズル(図示せず)を有する複数のインクヘッド22と、複数の光照射部23と、を備えている。キャリッジ21は、ガイドレール15に支持されている。キャリッジ21は、ガイドレール15に対し、主走査方向Yに移動自在に係合している。インクヘッド22と光照射部23とは、キャリッジ21を介してガイドレール15にスライド可能に係合している。
【0024】
本実施形態では、キャリッジ21に5つのインクヘッド22が搭載されている。インクヘッド22は、記録媒体5にインクを吐出するものである。インクヘッド22は、制御装置50(
図1参照)と電気的に接続されており、制御装置50によってノズルからのインクの吐出が制御される。5つのインクヘッド22は、互いに色調等が異なるインクを吐出する。各インクヘッド22は、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ライトイエローインク、ライトブラックインク等のプロセスカラーインクや、ホワイトインク、メタリックインク(シルバーインク)等のカラーインク、および、クリアインク(グロスインク、プライマーインクを包含する。)、のうちの何れかのインクを吐出する。カラーインクは、色材(可視光領域の波長の光を吸収する成分)を含むインクである。ただし、インクヘッド22が吐出するインクの色調等も何ら限定されない。また、インクヘッド22の数は5つに限定されない。
【0025】
クリアインクは、色材を含まないか、あるいは着色を目的としない程度に色材を含む(例えば、色材がインク全体の略0.1質量%以下、さらには0.01質量%以下の)インクである。クリアインクは、典型的には、カラーインクの印刷層(例えば、カラーインク層6a~6c(
図7B参照))の表面に、光沢感やコーティングを施す目的等で、透明度の高いクリアインク層6d(
図7B参照)を形成するために用いられるインクである。
【0026】
インクヘッド22から吐出される各インクは、光が照射されることによって硬化する性質を有する光硬化性インクである。光硬化性インクは、典型的には、光重合性化合物と光重合開始剤と有機溶剤とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、顔料や染料等の着色剤、光増感剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤等を含みうる。光硬化性インクは、ここでは紫外線(波長:10~400nm)が照射されることによって硬化する性質を有する紫外線硬化型インク(UVインク)である。
【0027】
光照射部23は、記録媒体5上に吐出されたインクに向かって、光を照射するものである。本実施形態では、光照射部23は、光硬化性インクを硬化可能な紫外線波長の光を照射するように構成されている。光照射部23は、例えばLED(Light Emitting Diode)であってもよいし、蛍光灯(低圧水銀灯)方式や高圧水銀灯方式であってもよい。本実施形態では、光照射部23がインクヘッド22と同じキャリッジ21に搭載されている。ただし、光照射部23は、例えばキャリッジ21とは別のキャリッジに搭載されていてもよく、プラテン16の上方の壁面等に固定されていてもよい。光照射部23は、制御装置50(
図1参照)と電気的に接続されており、制御装置50によって点灯(ON)と消灯(OFF)とが制御される。
【0028】
カッティングヘッド30は、プラテン16に載置された記録媒体5および、記録媒体5上に形成された印刷層6(
図7B参照)をカットするためのものである。
図3Aに示すように、カッティングヘッド30は、主走査方向Yに移動可能なキャリッジ31と、カッター用ソレノイド32と、カッター33と、を備えている。カッティングヘッド30は、インクジェットヘッド20の左方に配置されている。ただし、インクジェットヘッド20とカッティングヘッド30との相対的な位置関係は特に限定されない。キャリッジ31は、ガイドレール15に支持されている。キャリッジ31は、ガイドレール15に対し、主走査方向Yに移動自在に係合している。カッター33は、キャリッジ21を介してガイドレール15にスライド可能に係合している。
【0029】
カッター33は、記録媒体5および印刷層6(
図7B参照)をカットする工具である。カッター33は、カッター用ソレノイド32を介してキャリッジ31に取り付けられている。カッター用ソレノイド32は、カッター33の移動を制御するものである。カッター用ソレノイド32は、制御装置50(
図1参照)と電気的に接続されており、制御装置50によって駆動(ON)と停止(OFF)とが制御される。カッター用ソレノイド32がON/OFFされると、カッター33が上下方向に移動して記録媒体5に接触し、あるいは記録媒体5から離反する。カッター33の押圧力(カット圧力)は、カッター用ソレノイド32の電流値を変更することで調整される。すなわち、カッター用ソレノイド32に供給する電流値を大きくするほど、駆動力が大きくなり、カッター33のカット圧力が高くなる。カッター用ソレノイド32の電流値とカッター33のカット圧力との対応関係は、予め制御装置50に記憶されている。
【0030】
ヘッド移動機構40は、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30を、詳しくは、インクヘッド22およびカッター33を、プラテン16に載置された記録媒体5に対して相対移動させる機構である。本実施形態では、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30を主走査方向Yに移動させる機構である。
図1に示すように、ヘッド移動機構40は、ガイドレール15の左端側に設けられたプーリ41と、ガイドレール15の右端側に設けられたプーリ42と、無端状のベルト43と、キャリッジモータ44と、を備えている。
【0031】
ベルト43は、プーリ41とプーリ42とに巻き掛けられている。ベルト43は、キャリッジ21、31の背面上部にそれぞれ固定されている。プーリ42には、キャリッジモータ44が接続されている。ただし、キャリッジモータ44は、プーリ41に接続されていてもよい。キャリッジモータ44は、制御装置50(
図1参照)と電気的に接続されており、制御装置50によって制御される。ここでは、キャリッジモータ44が駆動するとプーリ42が回転し、ベルト43が走行する。これにより、キャリッジ21、31がガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、ヘッド移動機構40の構成は特に限定されない。
【0032】
図3Aに示すように、キャリッジ21の左側部分には、磁石によって構成される連結部材24が設けられている。キャリッジ31の右側部分には、磁石によって構成される連結部材34が固定されている。連結部材24は、カッティングヘッド30の連結部材34に対し、着脱自在に連結する。本実施形態では、連結部材24および連結部材34は、磁力を利用するものである。ただし、連結部材24および連結部材34は磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。キャリッジ21の右側には、L字状に形成された受け金具25が設けられている。
【0033】
プラテン16の左方および右方には、それぞれ、左サイドフレーム7Lおよび右サイドフレーム7Rが配置されている。ガイドレール15は、左サイドフレーム7Lおよび右サイドフレーム7Rに支持されている。右サイドフレーム7Rには、インクジェットヘッド20を待機位置にロックするためのロック装置35が設けられている。ロック装置35は、受け金具25に引っ掛けられる受け金具36と、受け金具36をロック位置(
図3B参照)と非ロック位置(
図3A参照)との間で移動させるロック用ソレノイド37(
図4参照)と、を備えている。ロック用ソレノイド37は、制御装置50(
図1参照)と電気的に接続されており、制御装置50によって制御される。
【0034】
図3Aに示すように、インクヘッド22によって記録媒体5に印刷を行う際には、受け金具36が非ロック位置に設定される。カッティングヘッド30のキャリッジ31が右方に移動し、連結部材34と連結部材24とが接触すると、キャリッジ21とキャリッジ31とが連結される。その結果、インクジェットヘッド20は、カッティングヘッド30と共に左右方向に移動可能となる。すなわち、インクジェットヘッド20は、印刷時にはカッティングヘッド30と一体となって主走査方向Yに移動する。
【0035】
一方、
図3Bに示すように、カッター33によって記録媒体5および/または印刷層6(
図7B参照)をカットする際には、インクジェットヘッド20が待機位置に位置付けられ、ロック装置35の受け金具36がロック位置に設定される。これによって、インクジェットヘッド20の移動が阻止される。キャリッジ31が左方へ移動すると、連結部材34と連結部材24とが離反し、キャリッジ31とキャリッジ21との連結が解除される。その結果、インクジェットヘッド20が待機位置に待機した状態で、カッティングヘッド30が主走査方向Yに移動する。すなわち、インクジェットヘッド20は、カット時には、カッティングヘッド30から離れて待機位置に位置する。
【0036】
媒体移動機構45は、プラテン16に載置された記録媒体5を、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30に対して(詳しくは、インクヘッド22およびカッター33に対して)、相対移動させる機構である。本実施形態では、記録媒体5を副走査方向に移動させる機構である。
図1に示すように、媒体移動機構45は、ピンチローラ46と、グリットローラ47と、フィードモータ48(
図4参照)と、を備えている。ピンチローラ46は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ46は、プラテン16よりも上方に設けられている。
【0037】
プラテン16におけるピンチローラ46と対向する位置には、グリットローラ47が設けられている。グリットローラ47は、上面部を露出させた状態でプラテン16に埋設されている。グリットローラ47は、フィードモータ48によって駆動される。グリットローラ47は、フィードモータ48の駆動力により回転可能に構成されている。フィードモータ48は、制御装置50(
図1参照)と電気的に接続されており、制御装置50によって制御される。ピンチローラ46とグリットローラ47との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ47が回転すると、記録媒体5が副走査方向に搬送される。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、搬送機構の構成は特に限定されない。
【0038】
制御装置50は、記録媒体5への印刷層6(
図7B参照)の形成、ならびに、記録媒体5および/または印刷層6のカットを制御する装置である。制御装置50の構成は特に限定されない。
図1に示すように、本実施形態では制御装置50がプリンタ10の内部に設けられたマイクロコンピュータである。ただし、制御装置50はプリンタ10の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置50は、プリンタ10の外部に設置され、プリンタ10と有線または無線を介して通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0039】
制御装置50のハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばジョブデータ作成装置200等の外部機器から、ジョブデータとプリンタ10の設定情報とを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0040】
図4は、制御装置50の機能ブロック図である。制御装置50は、インクヘッド22と、光照射部23と、カッター用ソレノイド32と、ヘッド移動機構40のキャリッジモータ44およびロック用ソレノイド37と、媒体移動機構45のフィードモータ48と、通信可能に接続されており、これらを制御可能に構成されている。制御装置50は、受信部51と、印刷制御部52と、カッティング制御部53と、記憶部54と、を備えている。制御装置50の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。各部は、プロセッサによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。各部がプロセッサによって実現される場合、1つのプロセッサによって実現されてもよいし、複数のプロセッサによって実現されてもよい。
【0041】
受信部51は、ジョブデータ作成装置200で作成されたジョブデータと、プリンタ10の設定情報と、を受信する制御部である。ジョブデータは、所定のコンピュータ言語(例えばPJL(Printer Job Language))で記述されている。受信部51が受信したジョブデータおよび/または設定情報は、記憶部54に記憶されてもよい。ジョブデータは、印刷やカット等におけるプリンタ10の処理動作を指定したデータである。ジョブデータは、印刷に用いる印刷データおよびカットに用いるカットデータの少なくとも一方を含んでいる。印刷データは、インクヘッド22からのインクの吐出量や、インクヘッド22の主走査方向Yの移動経路(パス)等が指定されたデータを含んでいる。カットデータは、カッター33の移動経路(パス)等が指定されたデータを含んでいる。
【0042】
設定情報は、プリンタ10に設定される情報である。設定情報は、例えば、記録媒体5の情報(サイズや材質)と、印刷設定情報と、カット設定情報と、を含んでいる。印刷設定情報は、印刷時の設定に関する情報であり、例えば、使用するインクの種類の情報、印刷解像度、インクヘッド22の移動速度、記録媒体5の搬送速度、等の情報を含んでいる。印刷設定情報は、印刷データと関連づけられている。カット設定情報は、カット時の設定に関する情報であり、例えば、カッター33の移動速度S1、カット圧力P1、カット深さD1、カット線の種類、等の情報を含んでいる。カット設定情報は、カットデータと関連づけられている。
【0043】
印刷制御部52は、受信部51が受信した印刷データに基づいて、記録媒体5への画像の印刷動作(印刷層6(
図7B参照)の形成)を実行する制御部である。印刷制御部52は、フィードモータ48の駆動を制御してグリットローラ47の回転を制御する。これにより、プラテン16に載置された記録媒体5の副走査方向への移動を制御する。印刷制御部52は、ロック用ソレノイド37の駆動を制御して、インクジェットヘッド20とカッティングヘッド30との連結および連結の解除を制御する。印刷制御部52は、キャリッジモータ44の駆動を制御することで、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30の主走査方向Yへの移動を制御する。印刷制御部52は、インクヘッド22を制御して、インクヘッド22がインクを吐出するタイミングやインクの吐出量等を制御する。
【0044】
カッティング制御部53は、受信部51が受信したカットデータに基づいて、記録媒体5および/または印刷層6(
図7B参照)へのカット動作を実行する制御部である。カッティング制御部53は、フィードモータ48の駆動を制御してグリットローラ47の回転を制御する。これにより、プラテン16に載置された記録媒体5の副走査方向への移動を制御する。カッティング制御部53は、ロック用ソレノイド37の駆動を制御して、インクジェットヘッド20とカッティングヘッド30との連結および連結の解除を制御する。カッティング制御部53は、キャリッジモータ44の駆動を制御することで、カッティングヘッド30の主走査方向Yへの移動を制御する。カッティング制御部53は、カッター用ソレノイド32を制御することで、カッター33の上下方向の移動およびカッター33の圧力を制御する。
【0045】
次に、プリンタ10用のデータを作成するジョブデータ作成装置200について説明する。
図1に示すように、本実施形態ではジョブデータ作成装置200がプリンタ10の外部に設けられたコンピュータである。このコンピュータは、プリンタ10に対する専用のコンピュータであってもよいし、汎用コンピュータであってもよい。ただし、ジョブデータ作成装置200は、プリンタ10の内部に設けられていてもよい。例えば、プリンタ10の制御装置50に、ジョブデータ作成装置200の機能を実現するコンピュータプログラムがインストールされていてもよい。また、本実施形態ではプリンタ10がジョブデータ作成装置200に直接的に接続されている。ただし、プリンタ10は、有線または無線を介して通信可能に接続された他のコンピュータを介してジョブデータ作成装置200と間接的に接続されていてもよい。
【0046】
図5は、ジョブデータ作成装置200の機能ブロック図である。
図5に示すように、ジョブデータ作成装置200には、操作部200aと、表示画面200bと、が接続されている。操作部200aは、ユーザが、記録媒体5に印刷される画像を表すデータ(言い換えれば、記録媒体5上に形成される印刷層6を表す印刷画像データ)、記録媒体5をカットするカット線を表すカットラインデータ、ならびに、プリンタ10の設定情報を、入力または指定するものである。操作部200aの具体的な種類は特に限定されない。操作部200aは、例えばキーボードおよびマウスである。操作部200aは、例えば操作パネル12の入力部であってもよい。表示画面200bには、プリンタ10の設定情報や、印刷画像データ、カットラインデータが表示される。表示画面200bの具体的な種類は特に限定されない。表示画面200bは、例えば液晶ディスプレイである。表示画面200bは、例えば操作パネル12の表示部であってもよい。
【0047】
ジョブデータ作成装置200は、受信部210と、印刷データ作成部220と、カットデータ作成部230と、判定部240と、ジョブデータ作成部250と、カット設定変更部260と、記憶部270と、送信部280と、を備えている。ジョブデータ作成装置200の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。各部は、プロセッサによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。各部がプロセッサによって実現される場合、1つのプロセッサによって実現されてもよいし、複数のプロセッサによって実現されてもよい。
【0048】
受信部210は、印刷画像データおよび/またはカットラインデータと、印刷設定情報および/またはカット設定情報を含むプリンタ10の設定情報と、を受信する制御部である。印刷画像データとカットラインデータとは、1つの原画像データとして纏められていてもよい。印刷画像データおよび/またはカットラインデータは、例えばJPEG形式やビットマップ形式のデータである。受信部210が受信した印刷画像データ、カットラインデータ、およびプリンタ10の設定情報のうちの少なくとも一部は、記憶部270に記憶されてもよい。
【0049】
印刷データ作成部220は、受信部210が受信した印刷画像データに基づいて、プリンタ10で読み込み可能な形式の印刷データを作成する制御部である。印刷データは、例えば印刷原点を基準とした位置座標等で表される。印刷データは、所定のコンピュータ言語(例えばRTL(Raster Transfer Language))で記述される。印刷データ作成部220は、ラスターイメージプロセッサー(Raster Image Processor)等のコンピュータプログラムで、印刷画像データをプリンタ10で読み込み可能な形式に変換する。これによって、自動的に印刷データを作成する。作成された印刷データは、記憶部270に記憶されてもよい。なお、受信部210が受信した印刷画像データがプリンタ10で読み込み可能な形式である場合には、上記変換は不要である。
【0050】
本実施形態では、使用するインクの種類ごとに印刷データが作成される。すなわち、印刷データは、記録媒体5上に形成されるインク層の数と同じ数だけ作成される。インク層が2層以上となる多層印刷では、形成するインク層ごとに、2つ以上の印刷データが作成される。例えば多層印刷によって、3層構造のカラーインク層6a~6c(
図7B参照)からなる印刷層を形成する場合は、3つの印刷データが作成される。例えば多層印刷によって、カラーインクを用いてなる3層のカラーインク層6a~6cと、クリアインクを用いてなる1層のクリアインク層6d(
図7B参照)とからなる4層構造の印刷層6(
図7B参照)を形成する場合は、合計4つの印刷データが作成される。印刷データが複数作成される場合は、各インク層の印刷データがプリンタ10における実行順に並べられ、1つのファイルに纏められる。
【0051】
カットデータ作成部230は、受信部210が受信したカットラインデータに基づいて、プリンタ10で読み込み可能な形式のカットデータを作成する制御部である。カットデータは、例えば印刷原点を基準とした位置座標等で表される。カットデータは、所定のコンピュータ言語(例えばRTL(Raster Transfer Language))で記述される。本実施形態において、カットデータ作成部230は、複数のカットデータを作成するマルチカットデータ作成部241と、1つのカットデータを作成するモノカットデータ作成部242と、を備えている。
【0052】
マルチカットデータ作成部241は、記録媒体5の少なくとも一部をカットするカット線を表すプレカットデータと、少なくとも印刷層6をカットするカット線を表すアフターカットデータと、を含む複数(典型的には2つ)のカットデータを作成する制御部である。プレカットデータは、記録媒体5上に印刷層6(
図7B参照)を形成する前(印刷前)に記録媒体5をカットするための(プレカット用の)カットデータである。プレカットデータは、記録媒体5をカットするための位置座標を表すデータである。アフターカットデータは、記録媒体5上に印刷層6を形成した後(印刷後)に印刷層6をカットするための(アフターカット用の)カットデータである。アフターカットデータは、印刷層6をカットするための位置座標を表すデータである。
【0053】
マルチカットデータ作成部241は、例えばまず、ラスターイメージプロセッサー(Raster Image Processor)等のコンピュータプログラムで、カットラインデータをプリンタ10で読み込み可能な形式に変換する。これによって、自動的にプレカットデータを作成する。プレカットデータは、記憶部270に記憶されてもよい。作成されたプレカットデータは、印刷データ作成部220で作成された印刷データと相互に関連づけられる。
【0054】
次に、マルチカットデータ作成部241は、プレカットデータ等を利用して、アフターカットデータを作成する。アフターカットデータは、記憶部270に記憶されてもよい。作成されたアフターカットデータは、印刷データ作成部220で作成された印刷データ、およびプレカットデータと相互に関連づけられる。マルチカットデータ作成部241は、ユーザが表示画面200bを参照しながら、プレカットデータ等を利用して任意にアフターカットデータを編集可能に構成されていてもよい。マルチカットデータ作成部241は、自動的にアフターカットデータを作成するように構成されていてもよい。
【0055】
アフターカットデータのカット線は、プレカットデータのカット線と同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、マルチカットデータ作成部241は、例えば、記憶部270に記憶されているプレカットデータをコピーし、そのままアフターカットデータとしてもよい。あるいは、マルチカットデータ作成部241は、プレカットデータのカット線の一部を変更することによって、プレカットデータとはカット線の異なるアフターカットデータを作成してもよい。言い換えれば、マルチカットデータ作成部241は、印刷層6(
図7B参照)のカットに好適なカットデータとなるように、プレカットデータを変更するように構成されていてもよい。これにより、カット時に印刷層6がカッター33のカット圧力に引っ張られて沈みこんだり歪んだりすることを好適に抑えることができる。
【0056】
一例として、マルチカットデータ作成部241は、プレカットデータのカット線が、印刷層6(
図7B参照)の少なくとも一部の周囲に設定される輪郭によって画定されている場合、カット線を、所定のオフセット距離だけ上記輪郭の外側あるいは内側にずらして、プレカットデータと異なるカット線のアフターカットデータを作成してもよい。
【0057】
マルチカットデータ作成部241は、例えばカット線が鋭角(0°<θ<90°)に屈曲した部分を有する場合に、少なくとも当該屈曲した部分について、プレカットデータのカット線を、所定のオフセット距離だけ輪郭の外側に広げて、アフターカットデータを作成してもよい。この場合、アフターカットデータのカット線は、プレカットデータのカット線と相似形状で、かつプレカットデータのカット線よりも大きい形状となる。これにより、シール媒体5cから剥離媒体5bと印刷層6(
図7B参照)をきれいに剥がし取ることができる。
【0058】
あるいは、マルチカットデータ作成部241は、例えば印刷データ作成部220で作成された印刷データの数が3つ以上、4つ以上、5つ以上、さらには10つ以上の場合に、プレカットデータのカット線を、所定のオフセット距離だけ輪郭の内側に狭めて、アフターカットデータを作成してもよい。この場合、アフターカットデータのカット線は、プレカットデータのカット線と相似形状で、かつプレカットデータのカット線よりも小さい形状となる。これにより、シール媒体5cから剥離媒体5bと印刷層6(
図7B参照)をきれいに剥がし取ることができる。
【0059】
モノカットデータ作成部242は、記録媒体5上に印刷層6(
図7B参照)を形成した後(印刷後)に、記録媒体5および印刷層6をまとめてカットするモノカットデータを作成する制御部である。モノカットデータは、記録媒体5および印刷層6をカットするための位置座標を表すカットデータである。モノカットデータ作成部242は、例えばマルチカットデータ作成部241がプレカットデータを作成する場合と同様にして、モノカットデータを作成することができる。モノカットデータは、記憶部270に記憶されてもよい。作成されたモノカットデータは、印刷データ作成部220で作成された印刷データと相互に関連づけられる。なお、モノカットデータ作成部242は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。この場合、マルチカットデータ作成部241によって一意的に複数のカットデータが作成されてもよい。
【0060】
判定部240は、印刷データ作成部220で作成された印刷データに基づいて、プレカットデータとアフターカットデータとを含む複数のカットデータを作成するか否かを判定する制御部である。印刷データと、プレカットデータとアフターカットデータとを含む複数のカットデータを作成するか否かと、の対応関係は、予め記憶部270に記憶されている。本実施形態において、判定部240は、カットデータ作成部230で作成するカットデータの数を、プレカットデータとアフターカットデータとを含む複数(例えば2つ)とするか、あるいは、モノカットデータのみ(1つ)とするか、を判定する。
【0061】
一例では、記憶部270に、印刷データ作成部220で作成された印刷データの数と、カットデータの数と、の対応表が記憶されている。判定部240は、例えば、印刷データの数が2つ以上の複数、すなわちインク層が2層以上となる多層印刷を行う場合に、カットデータの数を複数(例えば2つ)と判定し、印刷データの数が1つの場合にカットデータの数を1つと判定してもよい。あるいは、判定部240は、印刷データの数が3つ以上の場合にカットデータの数を複数(例えば2つ)と判定し、印刷データの数が1つまたは2つの場合にカットデータの数を1つと判定してもよい。
【0062】
他の一例では、記憶部270に、印刷データ作成部220で作成された印刷データから予想される印刷層6(
図7B参照)の厚みと、カットデータの数と、の対応表が記憶されている。判定部240は、まず印刷データ作成部220で作成された1つまたは複数の印刷データについて、インクの吐出量からインク層の最大厚みを算出する。インクの吐出量とインク層の最大厚みとの対応関係は、予め記憶部270に記憶されている。次に、判定部240は、インク層の最大厚みを合計して、印刷層6の全体厚みを算出する。そして、判定部240は、印刷層6の全体厚みが所定値以上の場合に、カットデータの数を複数(例えば2つ)と判定し、印刷層6の全体厚みが所定値未満の場合に、カットデータの数を1つと判定してもよい。所定値は、予め記憶部270に記憶されている。所定値は、例えば0.2mm、0.3mm、あるいは0.5mm等であってもよい。
【0063】
他の一例では、記憶部270に、印刷データ作成部220でクリアインクの印刷データが作成されたか否かと、カットデータの数と、の対応表が記憶されている。判定部240は、例えば、印刷データ作成部220でクリアインクの印刷データが作成された場合にカットデータの数を複数(例えば2つ)と判定し、クリアインクの印刷データが作成されていない場合にカットデータの数を1つと判定してもよい。インクの成分によっても異なりうるが、本発明者の知見によれば、クリアインク層6d(
図7B参照)は、厚みを持たせたりや立体的に凹凸感を表現したりする用途で用いる場合、相対的にカラーインク層6a~6c(
図7B参照)より硬くなる。クリアインク層6dのカットデータを記録媒体5のカットデータと分けることで、例えばモノカットデータを用いる場合に比べて、クリアインク層6dを安定して高品質にカットすることができる。
【0064】
他の一例では、記憶部270に、印刷データ作成部220でカラーインクおよびクリアインクの印刷データが作成されたか否かと、カットデータの数と、の対応表が記憶されている。判定部240は、例えば、印刷データ作成部220でカラーインクおよびクリアインクの印刷データがいずれも作成された場合にカットデータの数を複数(例えば2つ)と判定し、カラーインクまたはクリアインクの印刷データが作成されていない場合にカットデータの数を1つと判定してもよい。あるいは、記憶部270に、印刷データ作成部220でプロセスカラーインクと、クリアインクおよび/またはホワイトインクと、の印刷データが作成されたか否かと、カットデータの数と、の対応表が記憶されている。判定部240は、例えば、印刷データ作成部220でプロセスカラーインクと、クリアインクおよび/またはホワイトインクと、の印刷データがいずれも作成された場合にカットデータの数を複数(例えば2つ)と判定し、プロセスカラーインク、または、クリアインクおよび/またはホワイトインクの印刷データが作成されていない場合にカットデータの数を1つと判定してもよい。これにより、印刷層6(
図7B参照)を安定して高品質にカットすることができる。
【0065】
ジョブデータ作成部250は、印刷データ作成部220で作成された印刷データと、カットデータ作成部230で作成されたカットデータとを、プリンタ10における処理動作の実行順に並び替えて、ジョブデータを作成する制御部である。本実施形態において、ジョブデータ作成部250は、カットデータに基づいて、一意的にジョブデータを作成する。ジョブデータ作成部250は、印刷データ作成部220で作成された印刷データに、マルチカットデータ作成部241で作成されたプレカットデータとアフターカットデータとが対応付けられている場合に、プレカットデータと印刷データとアフターカットデータとをこの順に並べ、ジョブデータを作成する。ジョブデータ作成部250は、印刷データ作成部220で作成された印刷データに、モノカットデータ作成部242で作成されたモノカットデータが対応付けられている場合に、印刷データとモノカットデータとをこの順に並べ、ジョブデータを作成する。作成されたジョブデータは、送信部280を介してプリンタ10の制御装置50に送信される。
【0066】
カット設定変更部260は、カットデータについて、受信部210が受信したカット設定情報を変更する制御部である。カット設定変更部260は、例えばアフターカットデータのカット設定情報を変更して、プレカットデータとアフターカットデータとのカット設定情報を異ならせる制御部である。変更された設定情報は、送信部280を介して送信部280を介してプリンタ10の制御装置50に送信される。なお、カット設定変更部260は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0067】
カット設定変更部260は、ユーザが表示画面200bを参照しながら、任意にカットデータのカット設定情報を変更可能なように構成されていてもよい。カット設定変更部260は、自動的にカット設定情報を変更するように構成されていてもよい。カット設定変更部260は、例えば、上記したカッター33の移動速度S1、カット圧力P1、カット深さD1、カット線の種類のうちの少なくとも1つの条件を変更するように構成されていてもよい。
【0068】
一例において、カット設定変更部260は、アフターカットデータにおけるカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1(言い換えれば、プレカットデータのカット圧力)から変更するように構成されていてもよい。例えば、アフターカットデータのカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1よりも小さい値に変更してもよい。すなわち、印刷層6(
図7B参照)をカットする際のカッター用ソレノイド32の電流値が、記録媒体5をカットする際のカッター用ソレノイド32の電流値よりも小さくなるように、カット圧力を変更してもよい。これにより、アフターカットの際の記録媒体5への負荷を軽減することができる。ただし、カット設定変更部260は、アフターカットデータのカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1よりも大きい値に変更してもよい。
【0069】
カット設定変更部260は、記録媒体5の材質に基づいて、アフターカットデータにおけるカット圧力P2を変更するように構成されていてもよい。この場合、カット設定変更部260は、例えばまず、受信部51が受信した設定情報に含まれる記録媒体5の材質を参照する。次に、記録媒体5の材質が硬質である場合、例えばポリ塩化ビニル等の樹脂類を含む場合に、アフターカットデータのカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1よりも小さい値に変更する。硬質と判定される材質は、予め記憶部270に記憶されている。記録媒体5が硬質である場合、印刷層6をカットする際のカット圧力は、通常、記録媒体5をカットする際のカット圧力よりも小さくて済む。
【0070】
他の一例において、カット設定変更部260は、印刷データの数に基づいて、アフターカットデータにおけるカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1から変更するように構成されていてもよい。この場合、カット設定変更部260は、例えばまず、印刷データの数を参照する。次に、印刷データの数が5つ以上、6つ以上、7つ以上、さらには10つ以上の場合に、アフターカットデータのカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1よりも高い値に変更する。これにより、分厚い印刷層であっても安定してカットすることができる。
【0071】
他の一例において、カット設定変更部260は、印刷データの数に基づいて、アフターカットデータにおけるカット深さD2を、受信部51が受信したカット深さD1(言い換えれば、プレカットデータのカット深さ)から変更するように構成されていてもよい。この場合、カット設定変更部260は、例えばまず、印刷データの数を参照する。次に、印刷データの数に応じて、アフターカットデータのカット深さD2を変更する。印刷データの数とカット深さD2との対応関係は、予め制御装置50に記憶されている。印刷データの数とカット深さD2とは、正比例の関係式で表されていてもよい。これにより、厚みに応じて安定的に印刷層6(
図7B参照)をカットすることができる。例えば、カッター33の刃先が印刷層6を貫通して記録媒体5を完全に切断しない程度のカット深さに調整することができる。ただし、カット設定変更部260は、アフターカットデータのカット深さD2を、受信部51が受信したカット深さD1よりも小さい値に変更してもよいし、大きい値に変更してもよい。
【0072】
他の一例において、カット設定変更部260は、アフターカットデータにおけるカッター33の移動速度S2を、受信部51が受信したカッター33の移動速度S1(言い換えれば、プレカットデータの移動速度)から変更するように構成されていてもよい。例えば、アフターカットデータの移動速度S2を、受信部51が受信した移動速度S1よりも大きい値に変更してもよい。言い換えれば、印刷層6(
図7B参照)をカットする際は、記録媒体5をカットする際よりも相対的にカッター33の移動速度を早くしてもよい。ただし、カット設定変更部260は、アフターカットデータの移動速度S2を、受信部51が受信した移動速度S1よりも小さい値に変更してもよい。
【0073】
他の一例において、カット設定変更部260は、プレカットデータおよび/またはアフターカットデータのカット線の種類を、受信部51が受信したカット線の種類(言い換えれば、プレカットデータのカット線の種類)から変更するように構成されていてもよい。カット線の種類は、例えば、実線状、点線状、破線状(ミシン目状、1点鎖線状、2点鎖線状)等から、ユーザが任意に選択可能なように構成されていてもよい。
【0074】
カット設定変更部260は、アフターカットデータのカット線の種類を、自動的に変更するように構成されていてもよい。この場合、カット設定変更部260は、例えばまず、受信部51が受信したカット設定情報に含まれるカット線の種類を参照する。カット設定変更部260は、カット線の種類が点線状または破線状である場合、線を表現する際に一定間隔で表示された点あるいは線の位置をずらすように、アフターカットデータのカット線の種類を変更してもよい。例えば、受信部51が受信したカット線の種類がミシン目状である場合、点の位置が異なる(第2の)ミシン目に変更してもよいし、実線、点線、1点鎖線、2点鎖線等に変更してもよい。
【0075】
次に、ジョブデータ作成装置200でジョブデータを作成する制御手順について説明する。
図6は、ジョブデータを作成する制御手順の一例を示すフローチャートである。この制御手順は、受信処理(ステップS1)と、印刷データ作成処理(ステップS2)と、カットデータ数判定処理(ステップS3)と、マルチカットデータ作成処理(ステップS4)と、ジョブデータ作成処理(ステップS5、S9)と、カット設定変更処理(ステップS6)と、送信処理(ステップS7、S10)と、モノカットデータ作成処理(ステップS8)と、を包含する。ただし、他の実施形態において、このうちの一部を省略することもできる。また、任意の段階において、他の処理を包含することもできる。
【0076】
ステップS1では、ユーザが、印刷システム1のジョブデータ作成装置200を起動させ、操作部200aを介して、必要な情報を入力する。ユーザは、例えば、印刷画像データとカットラインデータとを含む原画像データと、印刷設定情報とカット設定情報とを含むプリンタ10の設定情報と、を入力する。入力された原画像データと設定情報は、受信部210から受信される。受信部210は、受信処理を実行するように構成またはプログラムされている。そして、ステップS2に進む。
【0077】
ステップS2では、受信部210が受信した原画像データに基づいて、印刷データを作成する印刷データ作成処理が実行される。印刷データ作成部220は、印刷データ作成処理を実行するように構成またはプログラムされている。印刷データ作成部220は、使用するインクの種類ごとに、印刷データを作成する。例えば、
図7Bに示すようなインク層6a~6dからなる4層構造の印刷層6を形成する場合には、合計4つの印刷データを作成する。印刷データ作成部220は、例えばラスターイメージプロセッサー(Raster Image Processor)で、原画像データから各インク層6a~6dを形成するための印刷画像データを識別して抽出し、ラスタライズする。これによって、ラスターイメージ形式の印刷データを作成する。そして、ステップS3に進む。
【0078】
ステップS3では、印刷データ作成部220で作成された印刷データに基づいて、カットデータの数を判定するカットデータ数判定処理が実行される。判定部240は、カットデータ数判定処理を実行するように構成またはプログラムされている。本実施形態において、判定部240は、印刷データ作成部220でカラーインクおよびクリアインクの印刷データが作成されたか否かに基づいて、カットデータの数を判定する。記憶部270には、カラーインクおよびクリアインクの印刷データがいずれも作成された場合に、カットデータの数を2つと判定し、カラーインクまたはクリアインクの印刷データが作成されていない場合にカットデータの数を1つと判定する対応表が記憶されている。印刷データ作成部220で、カラーインクおよびクリアインクの印刷データがいずれも作成された場合は、ステップS3がYESと判定され、ステップS4に進む。
【0079】
ステップS4では、受信部210が受信した原画像データに基づいて、プレカットデータとアフターカットデータとを作成するマルチカットデータ作成処理が実行される。マルチカットデータ作成部241は、マルチカットデータ作成処理を実行するように構成またはプログラムされている。本実施形態では、マルチカットデータ作成部241は、まず、ラスターイメージプロセッサー(Raster Image Processor)で、原画像データからカットラインデータを識別して抽出し、ラスタライズする。これによって、ラスターイメージ形式のプレカットデータを作成する。次に、プレカットデータに基づいて、アフターカットデータを作成する。そして、ステップS5に進む。
【0080】
ステップS5では、印刷データとカットデータとをプリンタ10における処理動作の実行順に並び替えてジョブデータを作成するジョブデータ作成処理が実行される。ジョブデータ作成部250は、ジョブデータ作成処理を実行するように構成またはプログラムされている。ジョブデータ作成部250は、プレカットデータと、印刷データと、アフターカットデータとを、この順に並べて、ジョブデータを作成する。そして、ステップS6に進む。
【0081】
ステップS6では、アフターカットデータのカット設定情報を変更するカット設定変更処理が実行される。カット設定変更部260は、アフターカットデータのカット設定変更処理を実行するように構成またはプログラムされている。カット設定変更部260は、例えば、アフターカットデータにおけるカット圧力P2を、受信部51が受信したカット圧力P1よりも小さい値に変更する。カット設定変更部260は、例えば、印刷データの数に応じて、カット深さD2を、受信部51が受信したカット深さD1から変更する。すなわち、印刷データの数がM(ただし、Mは1以上の自然数)の場合に、第1のカット深さに変更し、印刷データの数がN(ただし、Nは、M<Nを満たす自然数)の場合に、第1のカット深さよりも大きい第2のカット深さに変更する。カット設定変更部260は、例えば、アフターカットデータにおけるカッター33の移動速度S2を、受信部51が受信したカッター33の移動速度S1よりも大きい値に変更する。そして、ステップS7に進む。
【0082】
ステップS7では、送信部280からプリンタ10に、ジョブデータとプリンタ10の設定情報とを送信する送信処理が実行される。プリンタ10の受信部51は、ジョブデータとプリンタ10の設定情報とを受信可能に構成されている。そして、制御を終了する。
【0083】
一方、ステップS3において、印刷データに、カラーインクまたはクリアインクの印刷データが含まれない場合には、ステップS3がNOと判定され、ステップS8に進む。ステップS8では、受信部210が受信した原画像データに基づいて、モノカットデータを作成するモノカットデータ作成処理が実行される。モノカットデータ作成部242は、モノカットデータ作成処理を実行するように構成またはプログラムされている。本実施形態では、モノカットデータ作成部242は、マルチカットデータ作成部241がプレカットデータを作成する場合と同様にして、モノカットデータを作成する。そして、ステップS9に進む。
【0084】
ステップS9では、ジョブデータ作成処理が実行される。ジョブデータ作成部250は、印刷データと、モノカットデータとを、この順に並べて、ジョブデータを作成する。そして、ステップS10に進む。ステップS10では、ステップS7と同様に、送信処理が実行される。そして、制御を終了する。
【0085】
上記ジョブデータと設定情報とを受信したプリンタ10は、印刷制御部52とカッティング制御部53とを制御して、記録媒体5に対して印刷およびカットを施す。すなわち、プリンタ10のプラテン16には、記録媒体5が載置されている。例えば、
図2に示すようなシール媒体5cが載置されている。ここで、プリンタ10に、プレカットデータと印刷データとアフターカットデータとをこの順に含むジョブデータが送信されると、シール媒体5cに対して、プレカット動作と、印刷動作と、アフターカット動作とが、この順に実行される。
【0086】
すなわちまず、シール媒体5cに対してプレカット動作が実行される。
図7Aは、プレカット動作時のシール媒体5cを模式的に示す断面図である。カッティング制御部53は、受信部51が受信したジョブデータに含まれるプレカットデータに基づいて、シール媒体5cへのカット動作を実行する。ここでは、カッター33の刃先が剥離媒体5bを貫通して基材5aを僅かに切り込む程度の深さで、シール媒体5cをカットする。剥離媒体5bには、切り込みCが形成される。
【0087】
次に、シール媒体5cに対して印刷動作が実行される。ここでは、シール媒体5c上に、
図7Bに示すような4層構造の印刷層6を形成するものとする。すなわち、受信部51が受信したジョブデータに含まれる印刷データは、3つのカラーインクの印刷データと、1つのクリアインクの印刷データと、を含んでいる。印刷制御部52は、この印刷データに基づいて、シール媒体5cへの印刷動作を実行する。これにより、シール媒体5c上に、3層のカラーインク層6a~6cと、1層のクリアインク層6dと、からなる印刷層6が形成される。
【0088】
次に、シール媒体5cに対してアフターカット動作が実行される。
図7Cは、アフターカット動作時のシール媒体5cを模式的に示す断面図である。カッティング制御部53は、受信部51が受信したジョブデータに含まれるアフターカットデータに基づいて、シール媒体5cへのカット動作を実行する。ここでは、切り込みCの真上をカットする。また、カッター33の刃先が印刷層6を貫通して基材5aを切断しない程度の深さで、シール媒体5cをカットする。
【0089】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、記録媒体5と印刷層6とをそれぞれ別々にカットすることができる。これにより、例えば印刷層6の厚みや性状、記録媒体5の種類等に応じて、それぞれカット線やカット設定情報を設定することが可能となる。したがって、カッティングヘッド付き光硬化型プリンタのカッティング加工性を向上することができる。例えば、印刷層6が厚い場合や硬い場合にも、きれいにカットを行うことができる。また、例えばカットする部分が鋭角の場合や細かい場合にも、シール媒体5cから剥離媒体5bと印刷層6をきれいに剥がし取ることができる。その結果、歩留まりの悪化を抑制することができる。
【0090】
本実施形態において、印刷データ作成部220は、使用するインクの種類ごとに印刷データを作成する。プリンタ10は、印刷データに基づいて、プレカットデータとアフターカットデータとを含む複数のカットデータを作成するか否かを判定する判定部240をさらに備える。複数のカットデータを作成する場合、プリンタ10ではカットの処理動作が複数回行われる。このため、カッティング加工時間が長くなる。判定部240を備えることで、プリンタ10におけるカッティング加工の品質と加工時間とをバランスすることができる。
【0091】
本実施形態において、判定部240は、印刷データ作成部220で2つ以上の印刷データが作成された場合に、プレカットデータとアフターカットデータとを含む複数の上記カットデータを作成すると判定する。これにより、印刷層6を安定して高品質にカットすることができる。
【0092】
本実施形態において、判定部240は、印刷データ作成部220で少なくとも1つのプロセスカラーインクの印刷データと、クリアインクおよびホワイトインクのうちの少なくとも一方の印刷データと、が作成された場合に、プレカットデータとアフターカットデータとを含む複数の上記カットデータを作成すると判定する。これにより、印刷層6を安定して高品質にカットすることができる。
【0093】
本実施形態では、プレカットデータのカット線とアフターカットデータのカット線とが相互に異なっている。プレカットデータを、例えば記録媒体5の種類等に応じて、記録媒体5のカットに好適なものとなるように作成することで、カット時に記録媒体5がカット圧力に引っ張られて曲がってしまうことを好適に抑えることができる。加えて、アフターカットデータを、例えば印刷層6の厚みや性状等に応じて、印刷層6のカットに好適なものとなるように作成することで、カット時に印刷層6がカッター33のカット圧力に引っ張られて沈みこんだり歪んだりすることを好適に抑えることができる。また、アフターカットの際の記録媒体5への負荷を軽減することができる。
【0094】
本実施形態では、プレカットデータのカット線が、印刷層6の少なくとも一部の周囲に設定される輪郭によって画定されている。マルチカットデータ作成部(第1カットデータ作成部)241は、上記輪郭が鋭角に屈曲した部分を有する場合に、少なくとも屈曲した部分のカット線を輪郭の外側に広げて、アフターカットデータを作成する。これにより、シール媒体5cから剥離媒体5bと印刷層6をきれいに剥がし取ることができる。
【0095】
本実施形態において、受信部210は、上記カットデータと対応付けられ、記録媒体5をカットする際のプリンタ10の設定に関するカット設定情報を受信する。プリンタ10は、アフターカットデータのカット設定情報を、受信部210が受信したカット設定情報から変更するカット設定変更部260をさらに備える。アフターカットデータのカット設定情報を、例えば印刷層6の厚みや性状等に応じて、印刷層6のカットに好適なものとなるように変更することで、カット時に印刷層6がカッター33のカット圧力に引っ張られて沈みこんだり歪んだりすることを好適に抑えることができる。また、アフターカットの際の記録媒体5への負荷を軽減することができる。
【0096】
本実施形態において、カット設定情報は、カッター33が記録媒体5および印刷層6に加える押圧力(カット圧力)の情報を含む。カット設定変更部260は、アフターカットデータの押圧力を、受信部210が受信した押圧力よりも小さくするように、カット設定情報を変更する。これにより、アフターカットの際の記録媒体5への負荷を軽減することができる。
【0097】
本実施形態のプリンタ10は、印刷層6が形成された後に記録媒体5と印刷層6とをカットするカット線を表すカットデータを作成するモノカットデータ作成部242(第2カットデータ作成部)をさらに備える。これにより、プリンタ10におけるカッティング加工の品質と加工時間とをバランスすることができる。
【0098】
本実施形態において、記録媒体5は、ベースとなる基材5aと、基材5a上に配置され、基材5aから剥離可能な剥離媒体5bと、を備えるシール媒体5cである。シール媒体5cでは、カットする部分が鋭角になったり細かくなったりする場合がある。このような場合に、ここに開示される技術が特に高い効果を奏する。
【0099】
以上、本実施形態に係るプリンタ10について説明した。しかし、プリンタ10は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、上記した実施形態と以下の変形態様とを適宜組み合わせることもできる。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0100】
例えば、上述した実施形態では、マルチカットデータ作成部241が、1つのプレカットデータと1つのアフターカットデータとからなる、合計2つのカットデータを作成するように構成されていたが、これには限定されない。マルチカットデータ作成部241は、例えばプレカットデータを利用してアフターカットデータを作成する場合と同様にして、2つ以上の(第1および第2の)プレカットデータを作成してもよいし、2つ以上の(第1および第2の)アフターカットデータを作成してもよい。またこの場合、カット設定変更部260は、第1のプレカットデータと第2のプレカットデータとで、カット設定情報を相互に異ならせるように構成されていてもよいし、第1のアフターカットデータと第2のアフターカットデータとで、カット設定情報を相互に異ならせるように構成されていてもよい。
【0101】
上述した
図6の制御手順では、ジョブデータ作成処理(ステップS5)の後に、カット設定変更処理(ステップS6)を実行していたが、これには限定されず、ジョブデータ作成処理よりも先にカット設定変更処理を実行してもよい。
【0102】
上述した実施形態では、インクヘッド22がキャリッジ21に搭載され、主走査方向Yに往復移動(シャトル移動)しながら印刷動作が行われる、所謂シャトルタイプ(シリアルタイプ)のプリンタ10について説明したが、これには限定されない。ここに開示される技術は、ラインヘッドを備え、ラインヘッドが固定された状態で印刷動作が行われる、所謂ラインタイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【0103】
上述した実施形態では、プリンタ10のキャリッジ21およびキャリッジ31が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向に移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ21、31と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向に移動してもよい。また、例えばキャリッジ21、31は移動不能に配置され、記録媒体5が主走査方向Yおよび副走査方向の両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
5 記録媒体
10 プリンタ(カッティングヘッド付き光硬化型プリンタ)
22 インクヘッド
23 光照射部
33 カッター
200 ジョブデータ作成装置
210 受信部
220 印刷データ作成部
230 判定部
240 カットデータ作成部
241 マルチカットデータ作成部(第1カットデータ作成部)
242 モノカットデータ作成部(第2カットデータ作成部)
250 ジョブデータ作成部
260 カット設定変更部