(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】空調システム及び対象者判定システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20240228BHJP
F24F 120/00 20180101ALN20240228BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F120:00
(21)【出願番号】P 2020046643
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】海塩 渉
(72)【発明者】
【氏名】大矢 強志
(72)【発明者】
【氏名】星野 大道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正宏
(72)【発明者】
【氏名】弓野 沙織
(72)【発明者】
【氏名】郡 明宏
(72)【発明者】
【氏名】小関 眞子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 純
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-279090(JP,A)
【文献】国際公開第2020/039818(WO,A1)
【文献】特開2010-017225(JP,A)
【文献】特開2003-024396(JP,A)
【文献】特開2016-184197(JP,A)
【文献】特開2018-054244(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137417(WO,A1)
【文献】特開2016-075443(JP,A)
【文献】特開2010-286165(JP,A)
【文献】特開2002-039580(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
F24F 120/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給気口と、
複数の排気口と、
前記給気口及び前記排気口が設置された室内に存在する対象者に関する1次情報を取得するセンサと、
前記1次情報を利用して、前記対象者が第1監視対象者又は第2監視対象者に該当するか否かを判定すると共に、前記対象者が第1監視対象者に該当する場合には第1制御を行い、前記対象者が第2監視対象者に該当する場合には第2制御を行う制御部と、を備え、
前記複数の給気口は、前記室内の天井において、互いに離間して
格子状となるように前記天井の幅方向に複数配置されると共に前記天井の奥行方向にも複数配置され、
前記複数の排気口は、前記室内の前記天井において、互いに離間して
格子状となるように前記天井の幅方向に複数配置されると共に前記天井の奥行方向にも複数配置され、
前記複数の排気口のそれぞれは、前記複数の給気口のそれぞれ
の近傍に並ぶように配置され、
前記制御部は、前記第1制御として前記第1監視対象者が存在するエリアに配置された前記排気口によって排気動作を行い、前記第2制御として前記第2監視対象者が存在するエリアに配置された前記給気口によって給気動作を行う、空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記1次情報を利用して、前記対象者の身体が有する特徴部位に関する特徴情報及び前記対象者の体温に関する体温情報を含む2次情報を生成すると共に、前記2次情報を利用して前記対象者が第1監視対象者又は第2監視対象者に該当するか否かを判定する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記特徴部位は、前記対象者の口であり、
前記特徴情報は、前記対象者の口が視認可能であるか否かである、請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記1次情報を利用して前記対象者の口を視認可能であるか否かを判定する第1手段と、
前記対象者の口が視認可能である場合に、前記体温情報を閾値と比較する第2手段と、
前記体温情報と前記閾値との比較の結果に基づいて前記対象者を前記第1監視対象者又は前記第2監視対象者として判定する第3手段と、を有する、請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記室内から空気を取り入れて調整した後に、前記室内へ調整後の空気を戻す循環系統をさらに備え、
前記制御部は、前記第1制御及び前記第2制御と並行して、前記循環系統が前記室内へ戻す風量を低減させる第3制御を行う、請求項1~4の何れか一項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記室内の空気の温度を制御する温度調整ユニットをさらに備え、
前記制御部は、前記第3制御と並行して、前記温度調整ユニットによる前記室内の空気の温度を制御する第4制御を行う、請求項5に記載の空調システム。
【請求項7】
室内の天井の幅方向に複数配置されると共に前記天井の奥行方向にも複数配置された給気口と、前記室内の前記天井において、互いに離間して格子状となるように前記天井の幅方向に複数配置されると共に前記天井の奥行方向にも複数配置された排気口、とを有し、複数の前記排気口のそれぞれは、複数の前記給気口のそれぞれの近傍に並ぶように配置された前記室内に存在する対象者に関する1次情報を利用して前記対象者を判定する対象者判定システムであって、
前記対象者の身体が有する特徴部位に関する特徴情報を得るために、前記1次情報を利用して、前記対象者の口を視認可能であるか否かを判定する第1手段と、
前記対象者の口が視認可能である場合に、前記対象者の体温に関する体温情報を得るために、前記1次情報から得られる前記対象者の体温と閾値と比較する第2手段と、
前記体温情報と前記閾値との比較の結果に基づいて前記対象者を第1監視対象者又は第2監視対象者として判定する第3手段と、を備
え、
前記対象者が第1監視対象者であると判定された場合には前記第1監視対象者が存在するエリアに配置された前記排気口によって排気動作を行い、
前記対象者が第2監視対象者であると判定された場合には前記第2監視対象者が存在するエリアに配置された前記給気口によって給気動作を行う、対象者判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム及び対象者判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内における感染症のリスクを低減させる技術が検討されている。例えば、特許文献1は、管理対象区画を病原体による汚染から防止する技術を開示する。特許文献1の技術では、管理対象区画に進入しようとする進入者がマスクを着用しているか否かなどの特徴に基づいて、当該区画への侵入を許可または禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、病院の待合室のように、室内には不特定多数の人が出入りするものがある。さらに、不特定多数の人には、インフルエンザウイルスといった病原体に感染している人もいるし、病原体に感染していない人もいる。つまり、ある室内には病原体を持った人と病原体を持たない人とが混在する場合があり得る。このように、病原体を持った人と病原体を持たない人とが混在する室内において、病原体を持った人から病原体を持たない人への感染リスクを低減する技術が望まれている。例えば、特許文献1の技術では、管理対象区画をそもそも汚染させないことを目的としているので、病原体を持った人と病原体を持たない人とが混在するような室内には適用が難しい。
【0005】
そこで、本発明は、空気感染リスクを低減させる空調システム及び対象者判定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である空調システムは、複数の給気口と、複数の排気口と、給気口及び排気口が設置された室内に存在する対象者に関する1次情報を取得するセンサと、1次情報を利用して、対象者が第1監視対象者又は第2監視対象者に該当するか否かを判定すると共に、対象者が第1監視対象者に該当する場合には第1制御を行い、対象者が第2監視対象者に該当する場合には第2制御を行う制御部と、を備え、制御部は、第1制御として第1監視対象者が存在するエリアに配置された排気口によって排気動作を行い、第2制御として第2監視対象者が存在するエリアに配置された給気口によって給気動作を行う。
【0007】
この空調システムでは、室内に存在する対象者を第1監視対象者又は第2監視対象者のいずれかに該当するか否かを判定する。つまり、病原体を持っている可能性が高く他人に感染させるリスクの高い要隔離対象者を第1監視対象者として扱うことが可能になると共に、病原体を持っていない可能性が高く他人から病原体を感染させられる可能性を有している要保護対象者を第2監視対象者として扱うことが可能になる。そして、第1監視対象者が存在するエリアから排気すると共に、第2監視対象者が存在するエリアに給気する。このような排気及び給気の制御によれば、第2監視対象者が存在するエリアから第1監視対象者が存在するエリアへ向かう空気の流れが生じる。その結果、第1監視対象者が持つ病原体が空気を介して第2監視対象者に到達する可能性を低減することが可能になる。従って、空気感染リスクを低減させることができる。
【0008】
一形態において、制御部は、1次情報を利用して、対象者の身体が有する特徴部位に関する特徴情報及び対象者の体温に関する体温情報を含む2次情報を生成すると共に、2次情報を利用して対象者が第1監視対象者又は第2監視対象者に該当するか否かを判定してもよい。特徴情報によれば、対象者の着用品について着用の有無を判定することが可能になる。さらに、体温情報によれば、対象者の体温を利用して対象者を判定することが可能になる。
【0009】
一形態において、特徴部位は、対象者の口であり、特徴情報は、対象者の口が視認可能であるか否かであってもよい。特徴部位を口とし、この口が視認可能であるか否かを条件とすることにより、対象者の口元が覆われているか否かを判定することができる。
【0010】
一形態において、制御部は、1次情報を利用して対象者の口を視認可能であるか否かを判定する第1手段と、対象者の口が視認可能である場合に、体温情報を閾値と比較する第2手段と、体温情報と閾値との比較の結果に基づいて対象者を第1監視対象者又は第2監視対象者として判定する第3手段と、を有してもよい。
【0011】
この処理によれば、第1手段によって対象者の口元が覆われているか否かを判定する。対象者が病原体を持っている可能性が高い場合でも、口元が覆われていれば他人に感染させるリスクが低いと評価できるし、対象者が病原体を持っていない可能性が高い場合において、口元が覆われていれば他人から感染させられる可能性が低いと評価できる。逆に、対象者が病原体を持っている可能性が高い場合であって、口元が覆われていない場合には他人に感染させるリスクが高いと評価できるし、対象者が病原体を持っていない可能性が高い場合には他人から感染させられる可能性を有していると評価できる。つまり、第1手段によれば、対象者が第1及び第2監視対象者に該当する可能性があるかを判定できる。つぎに、第2手段では体温情報と閾値とを比較する。その結果、体温情報に基づいて第1監視対象者と第2監視対象者とに判定する材料が提供される。従って、第2手段の結果を利用すれば、第3手段によって、体温が高い対象者を、病原体を持っている可能性が高く且つ口元が露出していることから他人に感染させるリスクが高い要隔離対象者である第1監視対象者として判定できる。逆に、体温が低い対象者を、病原体を持っている可能性が低く且つ口元が露出していることから他人に感染させられる可能性を有しているので保護の必要がある要保護対象者である第2監視対象者として判定できる。
【0012】
一形態の空調システムは、室内から空気を取り入れて調整した後に、室内へ調整後の空気を戻す循環系統をさらに備え、制御部は、第1制御及び第2制御と並行して、循環系統が室内へ戻す風量を低減させる第3制御を行ってもよい。この処理によれば、第2監視対象者が存在するエリアから第1監視対象者が存在するエリアに向かう空気の流れを阻害しない。
【0013】
一形態の空調システムは、室内の空気の温度を制御する温度調整ユニットをさらに備え、制御部は、第3制御と並行して、温度調整ユニットによる室内の空気の温度を制御する第4制御を行ってもよい。この処理によれば、循環される風量を低減させた場合であっても、室内を所望の温度に近づけることができる。
【0014】
本発明の別の形態は、室内に存在する対象者に関する1次情報を利用して対象者を判定する対象者判定システムであって、対象者の身体が有する特徴部位に関する特徴情報を得るために、1次情報を利用して、対象者の口を視認可能であるか否かを判定する第1手段と、対象者の口が視認可能である場合に、対象者の体温に関する体温情報を得るために、1次情報から得られる対象者の体温と閾値と比較する第2手段と、体温情報と閾値との比較の結果に基づいて対象者を第1監視対象者又は第2監視対象者として判定する第3手段と、を備える。
【0015】
このシステムの第1手段によれば、対象者が第1及び第2監視対象者に該当する可能性があるかを判定できる。つぎに、第2手段では、体温情報と閾値とを比較する。その結果、体温情報に基づいて第1監視対象者と第2監視対象者とに判定する材料が提供される。従って、第2手段の結果を利用すれば、第3手段によって、体温が高い対象者を、病原体を持っている可能性が高く且つ口元が露出していることから他人に感染させるリスクが高い要隔離対象者である第1監視対象者として判定できる。逆に、体温が低い対象者を、病原体を持っている可能性が低く且つ口元が露出していることから他人に感染させられる可能性を有しているので保護の必要がある要保護対象者である第2監視対象者として判定できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空気感染リスクを低減させる空調システム及び対象者判定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態の空調システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の空調システムが適用される待合室の様子を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、コントローラの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、空調システムが行う制御の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示すように、空調システム1は、例えば、病院の待合室100といった不特定多数の人が出入りする室内に設置される。病院の待合室100には、病原体を持つ可能性が高い人と、病原体を持たない可能性が高い人と、が混在する。病原体を持つ可能性が高く、さらにマスク等などの衛生用品を着用していない場合には、他人に病原体を感染させるリスクが高いので他人から隔離することが望ましい。そこで、本実施形態では、このような対象者を要隔離対象者101(第1監視対象者)と称する。一方、病原体を持たない可能性が高く、さらに衛生用品を着用していない場合には、他人から病原体を感染させられる可能性を有するので保護することが望ましい。そこで、本実施形態では、このような対象者を要保護対象者102(第2監視対象者)と称する。空調システム1は、このような環境において、給気系統10と排気系統20とによって、待合室100に生じる気流のパターンを制御することにより、要隔離対象者101から要保護対象者102への病原体の空気感染リスクを低減する。
【0020】
空調システム1は、給気系統10と、排気系統20と、カメラ40(センサ)と、コントローラ50(制御部)と、を有する。なお、空調システム1は、その他の付加的な構成要素を有してもよい。例えば、空調システム1は、上記の構成要素に加えて循環系統30を有してもよい。
【0021】
給気系統10は、複数の給気口11と、複数の給気制御ダンパ12と、給気ダクト主管13と、給気ダクト枝管14と、給気用空調機15と、を有する。
【0022】
給気用空調機15は、待合室100の外に配置されている。給気用空調機15は、外気を取り入れて、給気用ファン15bによって待合室100に空気を供給する。この空気は、温度や湿度が調整されていてもよいし、調整されていなくてもよい。
図1に示すように、温度調節用コイル15aを有する給気用空調機15であれば、温度や湿度が調整された空気を供給できる。給気用空調機15には、給気ダクト主管13が接続されている。給気ダクト主管13は、待合室100の外から待合室100の天井裏スペースに延びている。
【0023】
給気ダクト主管13には、複数の給気ダクト枝管14が接続されており、給気ダクト枝管14の先端のそれぞれに給気口11が接続されている。複数の給気口11は、待合室100の天井に設けられている。給気口11は、互いに離間して格子状に配置されている。
図2に示す例では、幅方向に4個の給気口11が配置されており、奥行方向にも4個の給気口11が配置されている。また、給気口11同士の間隔は、概ね一定であるとしてよい。給気口11には、給気ダクト枝管14の先端が接続されており、給気ダクト枝管14から空気の供給を受ける。
【0024】
さらに、給気ダクト枝管14には、先端と基端との間に給気制御ダンパ12が設けられている。給気ダクト主管13から全ての給気制御ダンパ12までは、常に空気が供給されている。そして、給気制御ダンパ12を開くことによって、給気口11を介して待合室100に空気が給気される。給気制御ダンパ12は、コントローラ50から与えられる給気制御信号θを受けて、空気を通す開状態と、空気を通さない閉状態と、を相互に切り替えることができる。つまり、給気制御ダンパ12は、空気を送るか送らないかの何れかの動作を行うものであり、任意の風量に調整する機能は有しない。
図1では、白抜きで示す給気制御ダンパ12が開状態であることを示し、黒塗りで示す給気制御ダンパ12が閉状態であることを示している。従って、複数の給気口11の給気動作はそれぞれ独立しており、ある給気口11を動作状態とし、別の給気口11を停止状態とすることが可能である。
【0025】
なお、本実施形態の給気系統10は、排気系統20から切り離されている。従って、給気系統10を流れる空気は、待合室100を介して排気系統20に移動する。つまり、給気系統10から待合室100を介することなく直接に排気系統20に空気が移動することはない。
【0026】
排気系統20は、複数の排気口21と、複数の排気制御ダンパ22と、排気ダクト主管23と、排気ダクト枝管24と、排気用ファン25と、を有する。
【0027】
排気用ファン25は、待合室100の外に配置されている。排気用ファン25は、待合室100から空気を吸い出す流れを生じさせる。排気用ファン25の排気口は、待合室100の外に配置されている。例えば、待合室100の外とは、待合室100が設けられた建物の外である。つまり、排気系統20は、待合室100の空気を吸い出して屋外に排出する。従って、排気口21から吸いこまれた空気は、再び待合室100に戻ることはない。つまり、本実施形態の排気系統20は、給気系統10及び循環系統30から切り離されている。
【0028】
排気用ファン25には、排気ダクト主管23が接続されている。排気ダクト主管23は、待合室100の外から待合室100の天井裏スペースに延びている。
【0029】
排気ダクト主管23には、複数の排気ダクト枝管24が接続されており、排気ダクト枝管24の先端のそれぞれに排気口21が接続されている。複数の排気口21は、待合室100の天井に設けられている。排気口21は、給気口11の近傍に並設されている。従って、排気口21も給気口11と同様の配置構成を有する。つまり、排気口21は、互いに離間して格子状に配置されている。
図2に示す例では、幅方向に4個の排気口21が配置されており、奥行方向にも4個の排気口21が配置されている。また、排気口21同士の間隔は、概ね一定であるとしてよい。排気口21には、排気ダクト枝管24の先端が接続されており、排気ダクト枝管24へ吸い込んだ空気を送る。
【0030】
さらに、排気ダクト枝管24には、先端と基端との間に排気制御ダンパ22が設けられている。排気制御ダンパ22は、給気制御ダンパ12と同様にコントローラ50から与えられる排気制御信号φを受けて、空気を通す開状態と、空気を通さない閉状態と、を相互に切り替えることができる。
図1では、白抜きで示す排気制御ダンパ22が開状態であることを示し、黒塗りで示す排気制御ダンパ22が閉状態であることを示している。従って、複数の排気口21の排気動作はそれぞれ独立しており、ある排気口21を動作状態とし、別の排気口21を停止状態とすることが可能である。
【0031】
循環系統30は、複数の吸込口31Aと、吹出口31Bと、循環ダクト32と、循環用空調機33と、を有する。吸込口31A及び吹出口31Bは、待合室100において、奥側と手前側とに配置されている。そして、例えば、奥側の吹出口31Bから待合室100へ空気を供給し、手前側の吸込口31Aから空気を吸い込む。吸込口31A及び吹出口31Bは、循環ダクト32によって相互に接続されている。つまり、手前側の吸込口31Aから吸い込まれた空気は、循環ダクト32を介して再び奥側の吹出口31Bから待合室100へ供給される。つまり、循環系統30では、待合室100の空気を循環させている。循環ダクト32の途中には、循環用空調機33が設けられている。循環用空調機33は、給気用空調機15と同様に、温度調節用コイル33aによって温度や湿度が調整された空気を、循環用ファン33bによって送り出す。
【0032】
カメラ40は、天井に1台又は複数台設置されている。カメラ40は、室内のすべてを撮像範囲としてカバーするように設置されている。カメラ40を複数台配置する場合には、例えば、天井における四隅の近傍に設置されてもよい。カメラ40は、可視光を対象とした画像(可視光画像)と、赤外光を対象とした画像(熱画像)と、をコントローラ50に出力する。カメラ40は、例えば、赤外線サーモグラフィカメラといった熱画像センサを採用してよい。
【0033】
コントローラ50は、給気系統10、排気系統20及び循環系統30を制御する。コントローラ50は、給気系統10が有する複数の給気口11のうち、待合室100に空気を供給する給気口11を選択すると共に当該給気口11からの給気動作を行う。また、コントローラ50は、待合室100に空気を供給しない給気口11の給気動作を停止する。さらに、コントローラ50は、排気系統20についても同様の制御を行う。つまり、コントローラ50は、複数の排気口21のうち、待合室100から空気を吸い込む排気口21を選択すると共に当該排気口21からの排気動作を行う。また、コントローラ50は、待合室100から空気を吸い込まない排気口21からの排気動作を停止する。そのうえ、コントローラ50は、循環系統30の風量を制御する。例えば、コントローラ50は、風量を定常値から減少させる。この「風量の減少」には、風量をゼロにすることも含まれる。つまり、コントローラ50は、循環系統30の動作を停止することもある。
【0034】
コントローラ50は、上記の制御についてカメラ40が出力する可視光画像および熱画像を利用する。可視光画像および熱画像は、本実施形態における1次情報である。コントローラ50は、有線または無線によってカメラ40と接続されている。コントローラ50が設置される位置には、特に制限はない。例えば、待合室100の室内に配置されてもよいし、
図1に示すように待合室100の外に配置されてもよい。さらに、天井裏に配置されてもよい。
【0035】
コントローラ50は、後述する動作が記載されたプログラムをコンピュータによって実行することにより実現される。つまり、コントローラ50は、具体的にはコンピュータである。コントローラ50として利用可能なコンピュータの種類には、特に制限はなく、空調システム1が適用される状況に応じて適宜選択してよい。
【0036】
コントローラ50は、
図4に示すように、機能的な構成要素として、人検知部51と、マスク判定部52(第1手段)と、発熱判定部53(第2手段)と、リスク判定部54(第3手段)と、制御信号出力部55と、を有する。
【0037】
人検知部51は、可視光画像または熱画像の少なくとも一方を利用して、判定エリアAに対象者が存在するか否かを判定する。例えば、可視光画像の座標と待合室100の位置とが、あらかじめ関連付けられている。そうすると、可視光画像における所定の範囲を、待合室100の所定の範囲に対応付けることが可能である。そこで、人検知部51は、判定エリアAに対応する可視光画像における対応範囲に、対象者が映り込んでいるか否かを判定する。そして、人検知部51は、「判定エリアAに対象者が存在する」または「判定エリアAに対象者は存在しない」のいずれかの情報を結果として出力する。なお、判定エリアAについては後に詳細に説明する。
【0038】
マスク判定部52は、人検知部51の出力に応じて動作する。具体的には、マスク判定部52は、人検知部51から「判定エリアAに対象者が存在する」との結果が入力されたときに、動作を開始する。一方、マスク判定部52は、人検知部51から「判定エリアAに対象者が存在しない」との結果が入力されたときには、動作を開始しない。動作を開始したマスク判定部52は、可視光画像を利用して、対象者がマスクを着用しているか否かを判定する。そして、マスク判定部52は、「対象者はマスクを着用している」または「対象者はマスクを着用していない」のいずれかの情報を結果として出力する。この結果は、対象者の身体が有する特徴部位に関する特徴情報として、2次情報を構成する。
【0039】
マスクの有無の判定は、可視光画像から対象者の特徴部位(例えば口)が検出できるか否かによる。特徴部位が検出できる場合には、マスクを着用していないと判定する。特徴部位が検出できない場合には、マスクを着用していると判定する。なお、本実施形態でいうマスクは、衛生用品として用いられる通常のマスクのみを意味するものではなく、対象者の口元を覆うことが可能なすべてのものを含むものとする。
【0040】
マスクの着用を判断することにより、以下の効果が得られる。仮にマスクの着用者が病原体を持つ場合には、他人に病原体を移すリスクが低減する。仮にマスクの着用者が病原体を持たない場合には、他人から病原体を移されるリスクが低減する。これらの条件に該当する対象者103は、本実施形態で制御の対象とする要隔離対象者101及び要保護対象者102のいずれにも該当しない。
【0041】
また、マスクを着用しているということは、対象者の頭部画像を対象とする画像処理において、処理対象とし得る領域が狭まることになる。例えば、熱画像において、対象者の頭部全体における熱分布から体温を推定する場合と、対象者の頭部においてマスクに覆われていない部分(目元など)から体温を推定する場合とでは、前者よりも後者の方が推定の精度が低くなる。つまり、マスクを着用しているか否かの判定は、後に実施する体温の推定において推定精度の高い対象と推定精度の低い対象とを選別することにもなる。
【0042】
発熱判定部53は、マスク判定部52の出力に応じて動作する。具体的には、発熱判定部53は、マスク判定部52からの出力が「対象者はマスクを着用していない」ときに動作を開始する。動作を開始した発熱判定部53は、熱画像を利用して、対象者の体温を推定する。さらに、発熱判定部53は、推定した体温を閾値と比較する。具体的には、体温が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、対象者の体温が一般に発熱とみなされる温度であるときの皮膚表面温度を基準に採用してよい。例えば、閾値は、35℃としてもよい。そして、発熱判定部53は、「対象者の体温は閾値以上であり、発熱している」または「対象者の体温は閾値未満であり、発熱していない」のいずれかの情報を結果として出力する。この結果は、対象者の体温に関する体温情報として、前述の特徴情報と共に2次情報を構成する。
【0043】
なお、上記の機能的構成要素のうち、マスク判定部52、発熱判定部53及びリスク判定部54は、対象者を判定するための対象者判定システムを構成する。
【0044】
リスク判定部54は、マスク判定部52及び発熱判定部53の出力を利用して、リスクの判定を行う。ここでいう「リスクの判定」とは、対象者が病原体を他人に感染させ得るものであるか否かを判定することをいう。換言すると、「リスクの判定」とは、対象者が何らかの病原体の感染者である可能性が高いか低いかを判定することをいう。そして、リスク判定部54は、「対象者は要隔離対象者101である」または「対象者は要保護対象者102である」のいずれかの情報を結果として出力する。
【0045】
制御信号出力部55は、リスク判定部54の出力を利用して、給気制御信号θと、排気制御信号φと、循環制御信号δと、を出力する。
【0046】
より詳細には、制御信号出力部55は、リスク判定部54の結果が「対象者は要隔離対象者101である」場合に、排気口21の動作を開始する排気制御信号φと、給気口11の動作を停止する給気制御信号θと、循環系統30の風量を減少させる循環制御信号δを出力する。制御信号出力部55は、リスク判定部54の結果が「対象者は要保護対象者102である」場合に、排気口21の動作を停止する排気制御信号φと、給気口11の動作を開始する給気制御信号θと、を出力する。
【0047】
空調システム1は、カメラ40から得た1次情報を用いて給気動作、排気動作及び循環動作を制御する。空調システム1が行う制御では、給気口11ごとに給気動作を行うか否かを判定する。同様に、排気口21ごとに排気動作を行うか否かを判定する。そこで、制御の単位として、「判定エリアA」を定義する。判定エリアAとは、
図3に示すように、待合室100を平面視し、複数の部分に区分けされたそれぞれの領域をいう。複数の判定エリアAは、平面視した待合室100の全領域を形成する。そして、判定エリアAごとに、給気口11と排気口21とが配置される。
【0048】
以下、
図5を参照しながら、空調システム1の動作について説明する。
【0049】
まず、1次情報である可視光画像と熱画像とを得る(工程S1)。この工程S1は、カメラ40によって実行される。
【0050】
次に、制御対象とする判定エリアA(i)を指定する(工程S2)。例えば、判定エリアAにはそれぞれ固有の番号を付す。そして、判定エリアA(i)を示す変数(i)を定義し、変数(i)に数値を代入することにより、制御対象とする判定エリアA(i)を指定する。
【0051】
次に、可視光画像及び熱画像の一方を利用して、判定エリアA(i)に対象者が存在するか否かを判定する(工程S3)。この工程S3は、人検知部51によって実行される。判定エリアA(i)に人が存在しない場合(工程S3:NO)には、次の判定エリアA(i)の指定に移行する(工程S6)。例えば、変数(i)に1を加算する。
【0052】
次に、全ての判定エリアAの判定を終了したか否かを判断する(工程S7)。具体的には、変数(i)が所定の数値に達したか否かを判断する。この所定の数値とは、判定エリアAの数である。全ての判定エリアAの判定を終了した場合には(工程S7:YES)、全ての動作を終了する。全ての判定エリアAの判定を終了していない場合には(工程S7:NO)、次の判定エリアA(i)に人が存在するか否かを判定する(工程S3)。
【0053】
続いて、工程S3において判定エリアA(i)に対象者が存在する場合(工程S3:YES)について説明する。この場合には、対象者がマスクを着用しているか否かを判定する(工程S4)。この工程S4は、マスク判定部52によって実行される。対象者がマスクを着用していると判定された場合(工程S4:YES)には、当該対象者は要隔離対象者101ではなく、要保護対象者102でもない。従って、当該判定エリアA(i)に配置されている給気口11及び排気口21に対して制御信号を出力しない。
【0054】
対象者がマスクを着用していないと判定された場合(工程S4:NO)には、次の工程S8に移行する。工程S8では、マスクを着用していない対象者が発熱しているか否かを判定する。この工程S8は、発熱判定部53により実行される。
【0055】
熱画像から推定される対象者の体温と閾値との比較によって、対象者が発熱していると判定された場合(工程S8:YES)には、リスク判定部54は当該対象者が要隔離対象者101であると判定する(工程S9)。そして、制御信号出力部55は、判定エリアA(i)に要隔離対象者101が存在する場合に対応する制御信号を出力する。具体的には、まず、制御信号出力部55は、循環制御信号δを出力する(工程S10:第3制御)。さらに、制御信号出力部55は、給気制御ダンパ12を閉状態とする旨の給気制御信号θを出力すると共に、排気制御ダンパ22を開状態とする旨の排気制御信号φを出力する(工程S11:第1制御)。その後、次の判定エリアA(i)の指定を行う(工程S6)。
【0056】
一方、対象者が発熱していないと判定された場合(工程S8:NO)には、リスク判定部54は、当該対象者が要保護対象者102であると判定する(工程S12)。そして、制御信号出力部55は、判定エリアA(i)に要保護対象者102が存在する場合に対応する制御信号を出力する。具体的には、制御信号出力部55は、給気制御ダンパ12を開状態とする旨の給気制御信号θを出力する(工程S13:第2制御)と共に、排気制御ダンパ22を閉状態とする旨の排気制御信号φを出力する。その後、次の判定エリアA(i)の指定を行う(工程S6)。
【0057】
この空調システム1では、待合室100に存在する対象者を要隔離対象者101又は要保護対象者102のいずれかに該当するか否かを判定する。つまり、病原体を持っており他人に感染させるリスクの高い対象者を要隔離対象者101として扱うことが可能になると共に、病原体を持っておらず他人から病原体を感染させられる可能性を有する対象者を要保護対象者102として扱うことが可能になる。そして、要隔離対象者101が存在する判定エリアA(16)から排気すると共に、要保護対象者102が存在する判定エリアA(1)に給気する。このような排気と給気とによれば、要保護対象者102が存在する判定エリアA(1)から要隔離対象者101が存在する判定エリアA(16)へ向かう空気の流れが生じる。その結果、要隔離対象者101が持つ病原体が空気を介して要保護対象者102に到達する可能性を低減することが可能になる。従って、空気感染リスクを低減させることができる。
【0058】
コントローラ50は、対象者が有する特徴部位に関する特徴情報と、対象者の体温に関する体温情報と、を取得する。コントローラ50は、特徴情報及び体温情報を利用して、対象者を要隔離対象者101と要保護対象者102とに判定する。特徴情報によれば、対象者の着用品について着用の有無を判定することが可能になる。さらに、体温情報によれば、対象者の体温を利用して対象者を判定することが可能になる。
【0059】
特徴部位は、対象者の口であり、特徴情報は、対象者の口が視認可能であるか否かである。特徴部位を口とし、この口が視認可能であるか否かを条件とすることにより、対象者の口元が覆われているか否かを判定することができる。
【0060】
マスク判定部52は、対象者の口元が覆われているか否かを判定する。口元が覆われている場合であって、対象者が病原体を持っている可能性が高い場合には他人に感染させるリスクが低いと評価できるし、対象者が病原体を持っていない可能性が高い場合には他人から感染させられる可能性が低いと評価できる。逆に、口元が覆われていない場合であって、対象者が病原体を持っている可能性が高い場合には他人に感染させるリスクが高いと評価できるし、対象者が病原体を持っていない可能性が高い場合には他人から感染させられる可能性を有していると評価できる。
【0061】
つまり、マスク判定部52によれば、対象者が要隔離対象者101及び要保護対象者102に該当するか否かを判定できる。つぎに、発熱判定部53では対象者の体温が閾値以上であるか否かを判定する。体温が高い対象者は要保護対象者102ではなく、何らかの病原体を持っている可能性が高い。従って、発熱判定部53の結果を利用すれば、リスク判定部54によって、体温が閾値以上である対象者を、病原体を持っている可能性が高く且つ口元が露出していることから他人に感染させるリスクが高いものとして判定できる。逆に、体温が閾値未満である対象者を、病原体を持っている可能性が低い要保護対象者102であり且つ口元が露出していることから他人に感染させられる可能性を有するものとして判定できる。
【0062】
空調システム1は、待合室100から空気を取り入れて調整した後に、待合室100に調整後の空気を戻す循環系統30をさらに備える。コントローラ50は、排気動作をさせる制御及び給気動作をさせる制御と並行して、循環系統30が待合室100に戻す風量を低減させる制御を行う。この処理によれば、要保護対象者102が存在する判定エリアAから要隔離対象者101が存在する判定エリアAに向かう空気の流れを阻害しない。
【0063】
空調システム1は、ひとつの判定エリアA(i)ごとに、要隔離対象者101又は要保護対象者102の有無を判定する動作(工程S3、S4、S8、S9、S12)と、当該判定エリアA(i)における給気又は排気を制御する動作(工程S11、S13)と、を行った。この場合には、要隔離対象者101がいるエリアから迅速に排気できる。
【0064】
上述した各実施形態に限られず、他に様々な変形が可能である。例えば、空調システム1を構成する物理的な要素において、以下のいくつかの変形が例示できる。
【0065】
例えば空調システム1は、室内の空気の温度を制御する温度調整ユニットをさらに備えてもよい。温度調整ユニットは、循環系統30とは別の空調設備である。温度調整ユニットは、循環系統30と同様に主として室温を調整するものであるが、調整する仕組みは循環系統30とは異なる。温度調整ユニットが温度調整するしくみは、給気口11から排気口21への気流を乱しにくいものが好ましい。このような温度調整ユニットとして、例えば、気流をともなわない輻射空調などが挙げられる。そして、コントローラ50は、循環系統30の風量を減少させる制御(第3制御)と並行して、温度調整ユニットによる室内の空気の温度を制御する制御(第4制御)を行ってもよい。この処理によれば、循環される風量を低減させた場合であっても、室内を所望の温度に近づけることができる。
【0066】
上記の実施形態では、コントローラ50が生成した2次情報は、コントローラ50内部の制御にのみ用いる例を説明した。コントローラ50が生成した2次情報は、外部に出力してもよい。例えば、待合室100内に要隔離対象者101が存在する場合に、その旨の情報を外部に出力することとしてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、給気口11及び排気口21はいずれも天井に設置していた。例えば、ある判定エリアAにおいて、給気口11を天井に配置し、排気口21を床面に設置することとしてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、給気動作の開始及び停止は、給気制御ダンパ12により行っており、この給気制御ダンパ12では、空気を供給するか否かを選択的に制御した。例えば、空調システム1は、給気制御ダンパ12に代えて、風量を制御できる変風量装置を備えてもよい。この場合には、空気を供給するか否かを選択的に行えるだけでなく、空気を供給する場合にその風量を制御することも可能である。その結果、より緻密な気流制御を行うことができる。同様に、排気制御ダンパ22を変風量装置に代えてもよい。
【0069】
さらに、本開示は、上述した各実施形態に限られず、空調システム1が行う制御態様において、以下のいくつかの変形が例示できる。
【0070】
上記の実施形態では、対象者の判定についてマスクの有無と体温情報とを利用した。例えば、マスクの有無に組み合わせる情報として、体温情報に代えて別の情報を用いてもよい。例えば、対象者のくしゃみ、せき、身震いといった動作の有無を示す行動情報として用いてよい。
【0071】
上記の実施形態では、体温情報の判定にひとつの閾値を用いた。つまり、発熱の有無をひとつの閾値を用いて判定した。体温情報の判定には、複数の閾値を用いてもよい。例えば、発熱があるとして判定する閾値と、発熱がないとして判定する閾値と、は別であってもよい。
【0072】
上記の実施形態では、ひとつの判定エリアA(i)ごとに、要隔離対象者101又は要保護対象者102の有無を判定する動作と、当該判定エリアA(i)における給気又は排気を制御する動作と、を行った。例えば、給気又は排気を制御する動作(工程S11、S13)は、全ての判定エリアA(i)における要隔離対象者101又は要保護対象者102の有無を判定する動作(工程S3、S4、S8、S9、S12)が終了したのちに(工程S7:YES)、行ってもよい。この場合には、要隔離対象者101又は要保護対象者102の有無を判定(工程S9、S12)するごとに、コントローラ50が備えるメモリに、判定エリアA(i)と要隔離対象者101又は要保護対象者102の有無を示す情報とを関連付けて保存する。そして、全ての判定エリアA(i)について判定処理が終わったのちに(工程S7:YES)、コントローラ50は、メモリに保存された判定エリアA(i)と要隔離対象者101又は要保護対象者102の有無を示す情報とに基づいて、判定エリアA(i)ごとに制御信号を出力してもよい(工程S11、S13)。この場合には、待合室100の全体として想定通りのエアフローを実現することができる。
【0073】
上記の実施形態では、ある判定エリアA(i)において給気動作又は排気動作を行うか否かを決定していた。この給気動作及び排気動作を行う際には、例えば、待合室100に対して設定される給気量及び排気量のバランスを考慮して制御を行ってもよい。この場合には、給気制御ダンパ12及び排気制御ダンパ22に代えて、風量を制御できる変風量装置を適用するとよい。
【0074】
上記の実施形態では、空調システム1が空気感染リスクを低減させる気流制御のための設備のみを備える構成を例示した。待合室100には、実施形態の空調システム1である第1の空調システムに加えて、さらに別の第2の空調システムを設置してもよい。この第2の空調システムは、通常の給気及び排気を行うものである。例えば、待合室100における通常の空調制御を行う場合には、第2の空調システムを動作させる。このとき、第1の空調システムにおいて給気及び排気は行わないが、対象者の判定動作は所定の間隔で繰り返し行う。そして、判定動作において、要隔離対象者101又は要保護対象者102の存在が確認された場合には(工程S4:NO)、第2の空調システムの給気動作及び排気動作が停止されて、第1の空調システムによる給気動作及び排気動作が開始される。そして、対象者の判定動作において、待合室100に要隔離対象者101又は要保護対象者102の存在が確認されなくなった場合には(工程S4:YES)、第1の空調システムによる給気動作及び排気動作から、第2の空調システムによる通常の給気動作及び排気動作に移行することとしてよい。
【0075】
上記の実施形態では、空調システム1は、要隔離対象者101又は要保護対象者102の存在が確認された場合の給気動作及び排気動作を行うものとして説明した。変形例の空調システムは、要隔離対象者101又は要保護対象者102の存在が確認されない場合の、いわゆる通常の給気動作及び排気動作を行うものとしてよい。換言すると、変形例の空調システムは、上記段落に記載した第1の空調システムの機能と第2の空調システムの機能とを兼ねるものであってもよい。この場合、変形例の空調システムを構成する物理的な構成要素は、実施形態の空調システム1と同じである。そして、第1の空調システムの機能と第2の空調システムの機能との相互の切り替えは、コントローラによる制御モードの切り替えによって実現できる。つまり、変形例の空調システムは、通常の給気動作及び排気動作と、
図5の制御フローに示す給気動作及び排気動作と、を相互に切り替えながら行うこととしてもよい。例えば、通常の給気動作及び排気動作では、あらかじめ定めた判定エリアA(i)に配置された給気口から給気動作を行うと共に、別の判定エリアA(i)に配置された排気口から排気動作を行う。これらの動作と並行して、対象者の判別動作を行う。そして、判定動作において、要隔離対象者101又は要保護対象者102の存在が確認された場合には(工程S8:YES)、通常の給気動作及び排気動作を行う第1の制御モードから、
図5の制御フローに示す給気動作及び排気動作を行う第2の制御モードに移行する。
【符号の説明】
【0076】
1…空調システム、10…給気系統、11…給気口、12…給気制御ダンパ、13…給気ダクト主管、14…給気ダクト枝管、15…給気用空調機、20…排気系統、21…排気口、22…排気制御ダンパ、23…排気ダクト主管、24…排気ダクト枝管、25…排気用ファン、30…循環系統、31A…吸込口、31B…吹出口、32…循環ダクト、33…循環用空調機、40…カメラ(センサ)、50…コントローラ(制御部)、51…人検知部、52…マスク判定部(第1手段)、53…発熱判定部(第2手段)、54…リスク判定部(第3手段)、55…制御信号出力部、100…待合室、101…要隔離対象者(第1監視対象者)、102…要保護対象者(第2監視対象者)、A…判定エリア、δ…循環制御信号、θ…給気制御信号、φ…排気制御信号。