(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】冷媒分流器
(51)【国際特許分類】
F25B 41/42 20210101AFI20240228BHJP
【FI】
F25B41/42
(21)【出願番号】P 2020046869
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-07-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 浩
(72)【発明者】
【氏名】山口 博志
(72)【発明者】
【氏名】岩成 太照
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-257801(JP,A)
【文献】特開2014-081149(JP,A)
【文献】実開昭57-060074(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒供給管から流入した冷媒を第1及び第2冷媒流出管に分流する冷媒分流器において、
前記冷媒供給管が接続される供給路と、
前記供給路の下流端部から直線状に延び、前記供給路
の内径よりも小径とされた絞り部と、
前記絞り部の下流端部に連通し、前記絞り部から流入した冷媒を攪拌する冷媒攪拌室と、
前記絞り部の下流端部と所定の間隔をあけて対向するように配置され、前記絞り部から流出した冷媒が衝突する冷媒衝突面と、
上流端が前記冷媒攪拌室の壁面に開口する一方、下流端が前記第1冷媒流出管に連通する第1分流路と、
上流端が前記冷媒攪拌室の壁面における前記第1分流路の上流端から離れた部分で前記冷媒攪拌室の壁面に開口する一方、下流端が前記第2冷媒流出管に連通する第2分流路と、
前記第1分流路よりも大径に形成された前記第1冷媒流出管の上流端部が差し込まれる第1流出側配管接続孔と、
前記第2分流路よりも大径に形成された前記第2冷媒流出管の上流端部が差し込まれる第2流出側配管接続孔とを備え、
前記冷媒攪拌室は、前記絞り部の径、前記第1分岐路の径及び前記第2分岐路の径よりも大径の略円筒形とされ、
冷媒の前記冷媒攪拌室への流入方向と、前記第1分流路の軸線の延長線とは直交しており、
冷媒の前記冷媒攪拌室への流入方向と、前記第2分流路の軸線の延長線とは直交しており、
前記第1流出側配管接続
孔と前記第2流出側配管接続孔の
両方の下流端は、前記冷媒分流器における前記冷媒攪拌室の径方向一方側に対応する側
壁面に開口していることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項2】
請求項1に記載の冷媒分流器において、
前記第1流出側配管接続孔は、前記第1分流路の軸線の延長線と交差する方向に延びており、
前記第2流出側配管接続孔は、前記第2分流路の軸線の延長線と交差する方向に延びていることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷媒分流器において、
前記第1分流路の軸線の延長線は、前記第1流出側配管接続孔の前記開口内に位置しており、
前記第2分流路の軸線の延長線は、前記第2流出側配管接続孔の前記開口内に位置していることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項4】
請求項3に記載の冷媒分流器において、
前記第1分流路及び前記第2分流路は直線状に形成されていることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の冷媒分流器において、
前記冷媒衝突面は、前記絞り部の下流端部から当該絞り部の軸線の延長線上に配置されるとともに、円形状とされていることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の冷媒分流器において、
前記冷媒攪拌室の径は、前記第1分流路及び前記第2分流路の径よりも大きく設定されていることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の冷媒分流器において、
前記第1分流路及び前記第2分流路の上流端は、前記冷媒攪拌室の壁面において前記絞り部の下流端部と前記冷媒衝突面との間に開口していることを特徴とする冷媒分流器。
【請求項8】
請求項7に記載の冷媒分流器において、
前記第1分流路及び前記第2分流路の上流端は、前記絞り部の下流端部と前記冷媒衝突面との間の中央部よりも前記絞り部に近い側に開口していることを特徴とする冷媒分流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入した冷媒を複数の流路に分流させる冷媒分流器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば冷凍サイクルの冷媒蒸発器として用いられる熱交換器が複数の伝熱管を備えている場合がある。この場合、流入管から流入した冷媒を各伝熱管に分流させるための冷媒分流器が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の冷媒分流器は、冷媒供給路及び絞り部が形成された第1の器体と、冷媒流衝突部及び第1、第2の分流路が形成された第2の器体とを互いに嵌合させて一体化することによって構成されている。冷媒供給路の下流端部の流路径を、テーパ面を介して縮小することによって絞り部が形成されている。一方、第2の器体の冷媒流衝突部は、冷媒供給路の下流端開口に対向するように配置されており、半球状の凹面で構成されている。第1、第2の分流路は、冷媒流衝突部の外方に開口している。そして、冷媒供給路を流れる冷媒は絞り部を通過してから冷媒流衝突部に衝突した後、第1、第2の分流路に分流して流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の冷媒分流器では、第1、第2の分流路が冷媒攪拌室の左右両側にそれぞれ設けられることになるので、冷媒攪拌室の容積を十分に確保しようとすると、第1、第2の分流路の間隔が広くなる。このことは、冷媒分流器の寸法の拡大を招き、ひいては冷媒分流器のレイアウト性の悪化をもたらす。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷媒分流器の寸法拡大を抑制して冷媒分流器のレイアウト性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、冷媒供給管から流入した冷媒を第1及び第2冷媒流出管に分流する冷媒分流器において、前記冷媒供給管が接続される供給路と、前記供給路の下流端部から直線状に延び、前記供給路よりも小径とされた絞り部と、前記絞り部の下流端部に連通し、前記絞り部から流入した冷媒を攪拌する冷媒攪拌室と、前記絞り部の下流端部と所定の間隔をあけて対向するように配置され、前記絞り部から流出した冷媒が衝突する冷媒衝突面と、上流端が前記冷媒攪拌室の壁面に開口する一方、下流端が前記第1冷媒流出管に連通する第1分流路と、上流端が前記冷媒攪拌室の壁面における前記第1分流路の上流端から離れた部分で前記冷媒攪拌室の壁面に開口する一方、下流端が前記第2冷媒流出管に連通する第2分流路と、前記第1分流路よりも大径に形成された前記第1冷媒流出管の上流端部が差し込まれる第1流出側配管接続孔と、前記第2分流路よりも大径に形成された前記第2冷媒流出管の上流端部が差し込まれる第2流出側配管接続孔とを備え、冷媒の前記冷媒攪拌室への流入方向と、前記第1分流路の軸線の延長線とは直交しており、冷媒の前記冷媒攪拌室への流入方向と、前記第2分流路の軸線の延長線とは直交しており、前記第1流出側配管接続孔の下流端と前記第2流出側配管接続孔の下流端とは、前記冷媒分流器における前記冷媒攪拌室の径方向一方側に対応する側面に開口していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、冷媒供給管を流れる冷媒は、供給路に流入した後、絞り部に流入する。この絞り部が直線状に延びているので、冷媒は絞り部を流れることで流速が高められるだけでなく、絞り部から流出するときの流出方向がコントロールされる。特に、流速の高い状態の冷媒の流出方向をコントロールすることで、流出方向のコントロール性が良好になる。そして、絞り部から冷媒攪拌室に流入した冷媒は、勢いよく冷媒衝突面に衝突するので、液相冷媒と気相冷媒とが冷媒攪拌室で良好に攪拌される。冷媒攪拌室の冷媒は、攪拌された後、第1分流路及び第2分流路を介してそれぞれ第1冷媒流出管及び第2冷媒流出管に分流する。
【0009】
また、第1冷媒流出管が差し込まれる第1流出側配管接続孔と、第2冷媒流出管が差し込まれる第2流出側配管接続孔とが、冷媒攪拌室を基準として当該冷媒攪拌室の径方向一方側に対応する冷媒分流器の側面に開口することになる。さらに、第1流出側配管接続孔に連通する第1分流路と、第2流出側配管接続孔に連通する第2分流路とは、共に冷媒攪拌室の壁面に開口しており、第1、第2流出側配管接続孔よりも小径であるため、第1分流路と第2分流路とを互いに接近させることができる。これにより、冷媒分流器の冷媒流通方向の寸法拡大が抑制される。
【0010】
第2の発明は、前記第1流出側配管接続孔は、前記第1分流路の軸線の延長線と交差する方向に延びており、前記第2流出側配管接続孔は、前記第2分流路の軸線の延長線と交差する方向に延びていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1分流路及び第2分流路を互いに接近させた状態としながら、第1流出側配管接続孔及び第2流出側配管接続孔の径を第1分流路及び第2分流路の径よりも大きくすることができる。
【0012】
第3の発明は、前記第1分流路の軸線の延長線は、前記第1流出側配管接続孔の前記開口内に位置しており、前記第2分流路の軸線の延長線は、前記第2流出側配管接続孔の前記開口内に位置していることを特徴とする。
【0013】
すなわち、第1分流路を、回転工具等を用いた穴開け加工によって形成することが考えられる。この場合、まず、第1流出側配管接続孔を形成し、その後、回転工具によって第1分流路を形成することができる。このとき、第1分流路の軸線の延長線が第1流出側配管接続孔の開口内に位置しているので、回転工具を第1流出側配管接続孔の開口から当該第1流出側配管接続孔に挿入し、その状態で進めていくことにより、第1分流路を容易に形成できる。同様にして第2分流路も容易に形成することができる。
【0014】
第4の発明は、前記第1分流路及び前記第2分流路は直線状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1分流路及び第2分流路を回転工具によって容易に形成できる。
【0016】
第5の発明は、前記冷媒衝突面は、前記絞り部の下流端部から当該絞り部の軸線の延長線上に配置されるとともに、円形状とされていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、絞り部から流出した冷媒が冷媒衝突面の中心に衝突するようになるので、流れが偏り難くなり、液相冷媒と気相冷媒とを良好に攪拌することができる。
【0018】
第6の発明は、前記冷媒攪拌室の断面は円形とされ、前記冷媒攪拌室の径は、前記第1分流路及び前記第2分流路の径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、冷媒攪拌室の容積を十分に確保することができる。
【0020】
第7の発明は、前記第1分流路及び前記第2分流路の上流端は、前記冷媒攪拌室の壁面において前記絞り部の下流端部と前記冷媒衝突面との間に開口していることを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、前記第1分流路及び前記第2分流路の上流端は、前記絞り部の下流端部と前記冷媒衝突面との間の中央部よりも前記絞り部に近い側に開口していることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1分流路及び第2分流路の上流端が冷媒衝突面から離れることになるので、冷媒衝突面に衝突して十分に攪拌された状態の冷媒を第1分流路及び第2分流路の上流端に流入させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1冷媒流出管が差し込まれる第1流出側配管接続孔と、第2冷媒流出管が差し込まれる第2流出側配管接続孔とが、冷媒攪拌室の径方向一方側に対応する側面に開口しており、第1、第2流出側配管接続孔よりも小径の第1、第2分流路を互いに接近させた状態で冷媒攪拌室に連通させることができるので、冷媒分流器の冷媒流通方向の寸法拡大を抑制することができ、冷媒分流器のレイアウト性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷媒分流器を備えたバッテリ冷却装置の回路構成図である。
【
図3】第1分流器構成部材を第2分流器構成部材に固定する前の状態を示す断面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る冷媒分流器1を備えたバッテリ冷却装置100の回路構成図である。バッテリ冷却装置100は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車(プラグインタイプを含む)等に搭載されるバッテリ200を冷却するための装置である。バッテリ200は、図示しないが自動車の走行用モータに電力を供給するためのものである。ハイブリッド自動車の場合、走行用モータの回生制御やエンジンによる発電機の駆動によってバッテリ200を充電することができる。電気自動車及びプラグインタイプのハイブリッド自動車の場合、図示しない商用電源等からバッテリ200を充電したり、走行用モータの回生制御によってバッテリ200を充電することができる。バッテリ200は充電時や放電時に温度上昇する。この温度上昇を抑制するためにバッテリ冷却装置100によってバッテリ200を冷却することができるようになっている。
【0027】
(バッテリ冷却装置100の構成)
バッテリ冷却装置100は、圧縮機101と、コンデンサ102と、レシーバタンク103と、バッテリクーラ用膨張弁104と、バッテリクーラ105と、アキュムレータ106とを少なくとも備えている。この実施形態では、バッテリ冷却装置100が車室内の空調も行えるように構成されており、従って、バッテリ冷却装置100は、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器としての蒸発器107と、空調用膨張弁108とを備えている。
【0028】
圧縮機101は、電動コンプレッサで構成されている。圧縮機101から吐出された高温高圧冷媒はコンデンサ102に流入する。コンデンサ102には、ファン102aによって外部空気が送風されるようになっている。コンデンサ102を通過した冷媒はレシーバタンク103に流入した後、バイパス配管100aと、バッテリクーラ側配管100bとの一方または両方に流れるようになっている。
【0029】
バッテリクーラ側配管100bには、バッテリクーラ側仕切弁100cが設けられている。このバッテリクーラ側仕切弁100cは、バッテリクーラ側配管100bを開閉するための弁である。バッテリクーラ側配管100bにおけるバッテリクーラ側仕切弁100cよりも下流側には、バッテリクーラ用膨張弁104が設けられている。バッテリクーラ用膨張弁104を通過した冷媒は減圧される。バッテリクーラ側配管100bにおけるバッテリクーラ用膨張弁104よりも下流側には、本発明に係る分媒分流器1が設けられている。
【0030】
分媒分流器1は、バッテリクーラ側配管(冷媒供給管)100bから流入した冷媒を第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gに分流するためのものである。すなわち、バッテリクーラ105は、バッテリ200を冷却するための冷熱を当該バッテリ200に供給する熱交換器(蒸発器)で構成されているが、このバッテリクーラ105には、図示しないが複数のチューブが設けられている。各チューブに冷媒を分流させるために分媒分流器1が設けられている。本例では、冷媒を2つに分流する場合について説明するが、冷媒は3つ以上に分流することもできる。また、分媒分流器1は、第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gに冷媒を均等に分流させてもよいし、一方への分流量が他方への分流量に比べて多くなるように分流させてもよい。
【0031】
バッテリクーラ側配管100b、第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gは全て同径であってもよいし、径が異なっていてもよい。また、バッテリクーラ側配管100b、第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gは、例えばアルミニウム合金製の配管部材で構成されている。さらに、バッテリクーラ側配管100b、第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gの断面は略円形とされている。
【0032】
バイパス配管100aには、バイパス側仕切弁100dが設けられている。このバイパス側仕切弁100dは、バイパス配管100aを開閉するための弁である。バイパス配管100aは蒸発器107に接続されている。バイパス配管100aにおけるバイパス側仕切弁100dよりも下流側には、空調用膨張弁108が設けられている。蒸発器107から流出した冷媒は、アキューレータ106に流入した後、圧縮機101に吸入される。尚、蒸発器107には、ブロワ120によって空調用空気が送風されるようになっている。空調用空気が蒸発器107により冷却された後、車室に供給される。
【0033】
したがって、バッテリクーラ側仕切弁100c及びバイパス側仕切弁100dの開閉動作により、冷媒をバッテリクーラ105のみに流すモードと、冷媒を蒸発器107にのみ流す動作と、冷媒をバッテリクーラ105と蒸発器107の両方に流すモードとのうち、任意のモードに切り替えることができる。
【0034】
(冷媒分流器1の構成)
図2及び
図3に示すように、冷媒分流器1は、第1分流器構成部材10と、第2分流器構成部材20とを備えおり、4つの側面と、上面及び底面とを有している。第1分流器構成部材10及び第2分流器構成部材20は、例えばアルミニウム合金製のブロック材等で構成されている。第1分流器構成部材10は、基部11と、基部11から突出する突出筒部12とを備えている。突出筒部12の断面形状は円形である。基部11及び突出筒部12は一体成形されていてもよいし、基部11及び突出筒部12を別部材で形成した後、組み合わせて一体化してもよい。
【0035】
基部11には、バッテリクーラ側配管100bの下流端部が差し込まれた状態で接続される供給側配管接続孔11aが形成されている。供給側配管接続孔11aの断面形状は円形である。バッテリクーラ側配管100bの外周面は、供給側配管接続孔11aの内周面に対して全周にわたってろう付けされている。
【0036】
基部11には、供給側配管接続孔11aの奥側(冷媒流れ方向下流側)に連通する供給路11bが設けられている。供給側配管接続孔11aは基部11の上面に開口している。供給路11bの断面形状は供給側配管接続孔11aの断面形状よりも小さい円形とされている。供給路11bはまっすぐに延びており、供給路11bの軸線と、供給側配管接続孔11aの軸線とは一致している。供給路11bと供給側配管接続孔11aとの境界部分には段部11cが形成されている。バッテリクーラ側配管100bの下流端部は供給側配管接続孔11aに差し込まれた状態で段部11cに当接することによって差し込み深さが設定されている。バッテリクーラ側配管100bは、供給側配管接続孔11aに差し込まれた状態で供給路11bと接続される。
【0037】
供給路11bの下流端部は、テーパ面11dで構成されている。テーパ面11dは、冷媒流れ方向の下流側へ向かって縮径するように形成されている。テーパ面11dの軸線と、供給路11bの軸線とは一致している。
【0038】
第1分流器構成部材10には、供給路11bの下流端部から直線状に延び、供給路11bにおけるテーパ面11d以外の部分よりも小径とされた絞り部12aが設けられている。具体的には、第1分流器構成部材10の突出筒部12の内部に絞り部12aが設けられている。絞り部12aの下流端は、突出筒部12の先端面においてその中心部に開口している。絞り部12aの断面形状は円形であり、突出筒部12の先端面に開口する絞り部12aの下流端も同様に円形である。絞り部12aの径は、その上流端から下流端まで等しく設定されている。絞り部12aの長さは、供給路11bのテーパ面11dを含んだ長さよりも長く設定されている。これにより、絞り部12aは、同一内径が所定長さにわたって連続する形状になる。
【0039】
絞り部12aの長さ寸法と、絞り部12aの径とを比較すると、長さ寸法の方が長くなっている。絞り部12aの長さは、例えば7mm以上に設定することができ、好ましくは10mm以上である。また、絞り部12aの内径は、例えば単位面積当たりの冷媒流量が1.0~4.0g/s・mm2の範囲内となるように設定することができる。この範囲に設定することで、後述する冷媒攪拌室での液相冷媒と気相冷媒との混合が良好になるとともに、圧力損失を低減することができる。尚、絞り部12aの一部は基部11の内部に形成されていてもよい。
【0040】
突出筒部12の外周面には、環状溝12bが形成されている。環状溝12bには、ゴム等からなるシール材としてのOリング13が嵌め込まれている。
【0041】
第2分流器構成部材20は、突出筒部12が嵌合する嵌合孔21を有している。嵌合孔21は、第2分流器構成部材20の上面に開口しており、その断面形状は円形である。嵌合孔21の長さは、突出筒部12の突出長さと略等しく設定されている。従って、突出筒部12を嵌合孔21に差し込んで嵌合させると、第1分流器構成部材10の基部11の下面が、第2分流器構成部材20の上面に当接する。この状態で図示しないがボルト等によって第1分流器構成部材10と第2分流器構成部材20とを締結することができるようになっている。
図4には、そのボルトが螺合するねじ孔20aを示している。突出筒部12を嵌合孔21に差し込むと、Oリング13によって両者の間がシールされる。
【0042】
第2分流器構成部材20には、嵌合孔21の奥側に、冷媒攪拌室22が設けられている。冷媒攪拌室22は、嵌合孔21の奥側に連通している。冷媒攪拌室22の断面形状は嵌合孔21の断面形状よりも小さな円形である。従って、嵌合孔21の径は、冷媒攪拌室22の径よりも大きく設定されており、嵌合孔21と冷媒攪拌室22との境界部分に段部20bが形成されることになる。段部20bはテーパ面で構成することができる。また、
図4に示すように、冷媒攪拌室22の断面形状が嵌合孔21の断面形状よりも小さいので、冷媒攪拌室22及び嵌合孔21を形成するときに、例えば回転工具を用いて冷媒攪拌室22を先に形成し、嵌合孔21を後に形成することや、嵌合孔21を先に形成し、冷媒攪拌室22を後に形成することができる。
【0043】
第1分流器構成部材10を第2分流器構成部材20に固定することで、絞り部12aの下流端部と、冷媒攪拌室22とが連通する。冷媒攪拌室22は、絞り部12aから流入した冷媒を攪拌するための空間を形成している。冷媒攪拌室22の軸線方向の長さは、絞り部12aの長さと同程度に設定することができるが、絞り部12aの長さより長くてもよいし、短くてもよい。具体的には、
図2に示すように、冷媒攪拌室22の軸線方向の長さBは、10mm以上、好ましくは15mm以上に設定することができる。
【0044】
冷媒攪拌室22の径は、絞り部12aの径よりも十分に大きく設定されており、絞り部12aから流入した冷媒を攪拌させるのに必要十分な空間を冷媒攪拌室22内に確保できるようになっている。絞り部12aから流入した冷媒は、バッテリクーラ用膨張弁104を流通しているので、液相冷媒と気相冷媒とが混合した気液二層冷媒となっていることがある。この気液二層冷媒を冷媒攪拌室22で攪拌することで、液相冷媒と気相冷媒とを混合することができる。
【0045】
第2分流器構成部材20には、絞り部12aから流出した冷媒が衝突する冷媒衝突面24が設けられている。冷媒衝突面24は、絞り部12aの下流端部と所定の間隔をあけて対向するように配置されている。冷媒衝突面24は、円形状とされている。冷媒衝突面24は、絞り部12aの下流端部から当該絞り部12aの軸線の延長線上に配置されている。絞り部12aの下流端部は、当該絞り部12aの軸線の延長線が冷媒衝突面24の中心を通るように配置されている。冷媒衝突面24は、平坦面で構成されていてもよいし、湾曲面で構成されていてもよい。冷媒衝突面24が平坦面である場合、冷媒衝突面24と絞り部12aの軸線の延長線とが略直交している。
【0046】
第2分流器構成部材20には、第1分流路25と、第2分流路26とが設けられている。第1分流路25及び第2分流路26は直線状に延びている。このため、第1分流路25及び第2分流路26は、ドリル等の回転工具によって形成することができる。冷媒攪拌室22の径は、第1分流路25及び第2分流路26の径よりも大きく設定されている。これにより、冷媒攪拌室22の容積を十分に確保することが可能になる。なお、第1分流路25と第2分流路26とは略同径である。
【0047】
また、第1分流路25及び第2分流路26の上流端は、それぞれ、冷媒攪拌室22における冷媒衝突面24から離れた部分に連通している。すなわち、第1分流路25及び第2分流路26の上流端は、冷媒攪拌室22の壁面における絞り部12aの下流端部と冷媒衝突面24との間に開口している。より具体的には、第1分流路25及び第2分流路26の上流端は、絞り部12aの下流端部と冷媒衝突面24との間の中央部よりも絞り部12aに近い側に開口している。これにより、冷媒衝突面24と、第1分流路25及び第2分流路26の上流端とを離すことができる。
図2に示すように、冷媒衝突面24と、第1分流路25及び第2分流路26の上流端の中心部との離間距離Aは、9mm以上13.5mm以下に設定することができる。尚、第1分流路25及び第2分流路26の上流端は、絞り部12aの下流端部と冷媒衝突面24との間の中央部に開口していてもよいし、中央部よりも冷媒衝突面24に近い側に開口していてもよい。
【0048】
第1分流路25及び第2分流路26の上流端は、冷媒攪拌室22の壁面において絞り部12aの軸線の延長線まわりに互いに間隔をあけて配置されている。つまり、第1分流路25の上流端と、第2分流路26の上流端とは、冷媒攪拌室22の壁面の周方向に互いに間隔あけて配置されており、周方向に所定距離だけ離間している。
図7に示すように、第1分流路25及び第2分流路26は、その上流端同士が最も接近しており、下流端に近づくにつれて互いの離間距離が長くなっている。このように、第1分流路25及び第2分流路26の上流端同士を接近させることで、冷媒分流器1の小型化を図ることができる。
【0049】
第2分流器構成部材20には、第1冷媒流出管100fの上流端部が差し込まれた状態で接続される第1流出側配管接続孔20cが形成されている。第1流出側配管接続孔20cの断面形状は円形である。第1流出側配管接続孔20cの軸線X1と、第1分流路25の軸線X2とは互いに交差する位置関係となっている。また、第1分流路25の下流端は、第1流出側配管接続孔20cの軸線X1から径方向に離れた部分と連通している。第1冷媒流出管100fの外周面は、第1流出側配管接続孔20cの内周面に対して全周にわたってろう付けされている。これにより、第1分流路25の下流端と、第1冷媒流出管100fの上流端部とが連通する。第1冷媒流出管100fの外径は、第1分流路25よりも大径に設定されている。つまり、第1冷媒流出管100fは第1分流路25よりも大径に形成された管からなる。
【0050】
第1分流路25の軸線X2の延長線は、第1流出側配管接続孔20cの下流端開口内に位置している。すなわち、第1分流路25を、回転工具等を用いた穴開け加工によって形成することができる。この場合、まず、第1流出側配管接続孔20cを回転工具によって形成し、その後、別の回転工具によって第1分流路25を形成することができる。第1分流路25を形成する回転工具は第1流出側配管接続孔20cを形成する回転工具よりも小径である。
【0051】
回転工具によって第1分流路25を形成するとき、第1分流路25の軸線X2の延長線が第1流出側配管接続孔20cの下流端開口内に位置しているので、回転工具を第1流出側配管接続孔20cの下流端開口から当該第1流出側配管接続孔20cに挿入し、その状態で進めていくことにより、第1分流路25を容易に形成できる。つまり、第1分流路25を形成する回転工具が第1流出側配管接続孔20cの下流端開口の周縁部に接触しないように、第1分流路25の径、位置、角度等が設定されている。
【0052】
また、第2分流器構成部材20には、第2冷媒流出管100gの上流端部が差し込まれた状態で接続される第2流出側配管接続孔20dが形成されている。第2流出側配管接続孔20dの断面形状は円形である。第2流出側配管接続孔20dの軸線X3と、第2分流路26の軸線X4とは互いに交差する位置関係となっている。また、第2分流路26の下流端は、第2流出側配管接続孔20dの軸線X3から径方向に離れた部分と連通している。第2冷媒流出管100gの外周面は、第2流出側配管接続孔20dの内周面に対して全周にわたってろう付けされている。これにより、第2分流路26の下流端と、第2冷媒流出管100gの上流端部とが連通する。第2冷媒流出管100gの外径は、第2分流路26よりも大径に設定されている。つまり、第2冷媒流出管100gは第2分流路26よりも大径に形成された管からなる。
【0053】
第2分流路26の軸線X4の延長線は、第2流出側配管接続孔20dの下流端開口内に位置している。これにより、第1分流路25を形成する場合と同様に、第2分流路26を容易に形成できる。
【0054】
また、第1流出側配管接続孔20cの軸線X1と、第2流出側配管接続孔20dの軸線X3とは、互いに平行であり、同一面上に配置されている。さらに、第1分流路25の軸線X2と第2分流路26の軸線X4とは、互いに交差する位置関係となっており、同一面上に配置されている。第1流出側配管接続孔20cの軸線X1と、第2流出側配管接続孔20dの軸線X3との間に、第1分流路25の下流端開口及び第2分流路26の下流端開口が位置している。
【0055】
第1流出側配管接続孔20cの下流端と、第2流出側配管接続孔20dの下流端とは、冷媒分流器1における冷媒攪拌室22の径方向一方側に対応する側面に開口している。すなわち、本実施形態では、
図7に示すように冷媒分流器1の断面が矩形状であるため、4つの側面1a、1b、1c、1dを有している。4つの側面1a、1b、1c、1dのうち、
図7の上に位置する側面1aは、冷媒攪拌室22の径方向一方側に対応する側面である。尚、側面1cは、冷媒攪拌室22の径方向他方側に対応する側面である。
【0056】
冷媒分流器1の側面1aには、第1流出側配管接続孔20cの下流端開口と、第2流出側配管接続孔20dの下流端開口とが互いに間隔をあけて形成されている。このように、第1流出側配管接続孔20cの下流端と、第2流出側配管接続孔20dの下流端とを同一の側面1aに開口させることで、第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gを冷媒分流器1に対して同一方向から組み付けることができるので、組付作業性が良好になる。
【0057】
(実施形態の作用効果)
したがって、
図3に示すように、気液二層冷媒がバッテリクーラ側配管100bから供給路11bに流入すると、気液二層冷媒を絞り部12aに流入させることができる。この絞り部12aが直線状に延びていて所定の長さを有しているので、冷媒は絞り部12aを流れることで流速が高められるだけでなく、絞り部12aから流出するときの流出方向がコントロールされる。特に、流速の高い状態の冷媒の流出方向をコントロールすることで、流出方向のコントロール性が良好になる。そして、絞り部12aから冷媒攪拌室22に流入した冷媒は、勢いよく冷媒衝突面24に衝突するので、液相冷媒と気相冷媒とが冷媒攪拌室22で良好に攪拌される。攪拌された後、冷媒攪拌室22の冷媒は、第1分流路25及び第2分流路26を介してそれぞれ第1冷媒流出管100f及び第2冷媒流出管100gに均一に分流する。
【0058】
また、冷媒分流器1の直上流に位置する配管が屈曲している場合には、冷媒分流器1に流入する冷媒の流速分布に偏りが発生するが、この実施形態では、絞り部12aが直線状であるため、絞り部12aの内部を流れる間に冷媒の流速分布の偏りを小さくすることができる。これにより、冷媒分流器1の直上流に位置する配管の形状に依らず、冷媒の分流を均一化することができる。
【0059】
また、
図7に示すように、第1流出側配管接続孔20cと第2流出側配管接続孔20dとが、冷媒攪拌室22を基準として当該冷媒攪拌室22の径方向一方側に対応する冷媒分流器1の側面1aに開口することになる。さらに、第1流出側配管接続孔20cに連通する第1分流路25と、第2流出側配管接続孔20dに連通する第2分流路26とは、共に冷媒攪拌室22の壁面に開口しており、第1、第2流出側配管接続孔20c、20dよりも小径であるため、第1分流路25と第2分流路26とを接近させることができる。これにより、冷媒分流器1の冷媒流通方向の寸法拡大が抑制される。
【0060】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。上記冷媒分流器1は、バッテリ冷却装置100だけでなく、空調装置の熱交換器を構成するチューブに冷媒を分流させる場合にも適用することができる。また、第1分流路25、第2分流路26、第3分流路27及び第4分流路28の延びる方向は任意の方向にすることができる。また、分流路の数は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明に係る冷媒分流器は、例えばバッテリ冷却装置や空調装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 冷媒分流器
10 第1分流器構成部材
11b 供給路
12 突出筒部
12a 絞り部
20 第2分流器構成部材
21 嵌合孔
22 冷媒攪拌室
24 冷媒衝突面
25 第1分流路
26 第2分流路
100b バッテリクーラ側配管(冷媒供給管)
100f 第1冷媒流出管
100g 第2冷媒流出管