(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】コンタクトピン及びソケット
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240228BHJP
H01R 33/76 20060101ALI20240228BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240228BHJP
【FI】
G01R1/067 C
H01R33/76 505A
G01R31/26 J
(21)【出願番号】P 2020049576
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金刺 北斗
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120065(JP,A)
【文献】特開2018-105743(JP,A)
【文献】特開2011-191104(JP,A)
【文献】特開2004-340867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/025015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
H01R 33/76
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気部品及び第2電気部品を電気的に接続するコンタクトピンであって、
使用時に前記第1電気部品に接触する第1接触端部から第1係合端部へ軸方向に延び、前記第1係合端部側に開放された第1中空部を有する第1プランジャと、
使用時に前記第2電気部品に接触する第2接触端部から第2係合端部まで前記軸方向に延び、前記第2係合端部側に開放された第2中空部を有し、前記第2中空部
と前記第1中空部と
が連通した状態で前記
第1係合端部及び前記第2係合端部が相互摺動可能に係合されている、第2プランジャと、
前記第1中空部及び前記第2中空部が連通してなる空間内に、前記第1
プランジャ及び前記第2プランジャを前記軸方向に伸長させるよう付勢する付勢部材と、
を有し、
前記第1プランジャは、
筒状
の本体部材であって、前記第1接触端部側の開放部の端部が縮径するよう傾斜する弾性のテーパ部と、前記テーパ部よりも前記第2プランジャ側で局所的に内周側へ突出する突出部と、を有する本体部材と、
前記第1接触端部
が設けられた基部を有し前記本体部材及び前記第2プランジャに比べて高い硬度を有する接点部材と、
を有
し、
前記第1接触端部を前記開放部から突出させた状態で前記開放部を閉塞する前記基部が前記テーパ部と前記突出部とにより前記軸方向で挟持されることで、前記接点部材が前記本体部材に固定される、
コンタクトピン。
【請求項2】
前記突出部は、前記本体部材の外周面に設けられた打痕部により押圧して内側に突出するように変形して形成されている、
請求項1記載のコンタクトピン。
【請求項3】
前記第2プランジャが前記第1プランジャの内側で前記軸方向に伸長するように、前記第2係合端部は、前記第1係合端部に、その内側で係合されている、
請求項1記載のコンタクトピン。
【請求項4】
前記付勢部材は、圧縮コイルばねであり、
前記接点部材は、前記本体部材内に突出して設けられ、前記圧縮コイルばねの一端部に挿入して、前記圧縮コイルばねの横ずれを規制する突起部を有する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載のコンタクトピン。
【請求項5】
前記接点部材は、前記本体部材に、前記第1係合端部側から挿入されて前記第1接触端部側で固定されている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のコンタクトピン。
【請求項6】
前記接点部材はパラジウム合金により構成される、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のコンタクトピン。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載のコンタクトピンと、
前記コンタクトピンを支持する支持体と、
を備える、ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージ等の電気部品の性能試験等において電気部品の電気的接続に使用されるコンタクトピン及びソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ICパッケージ等の電気部品を検査する際、複数のプローブピンが配設されたソケットが用いられている。ソケットは、検査装置側の基板である検査用基板上に配置され、検査対象であるICパッケージを収容するよう構成されている。ソケットは、コンタクトピンとしてのプローブピンを介して、収容したICパッケージの端子と、検査用基板の端子とを、電気的に接続して、導通試験などの試験を行い、ICパッケージの性能を検査する。
【0003】
従来のプローブピンとしては、例えば、特許文献1に示す構成が知られている。このプローブピンは、下端部が開放した中空形状をなし、下端部で検査用基板の端子に接触する下側接触部材と、下側接触部材の上端部に、下端部が上下方向に摺動自在に嵌合し、上端部でICパッケージの端子に接触する上側接触部材と、上側接触部材と下側接触部材の内部に配設され、双方を伸長させる方向に付勢するスプリングと、を有する。このプローブピンは、上側接触部材と下側接触部材の中空部内にスプリングを収容した構造であるので、筒状のバレルの両端の両端部で進退移動する接触ピンの双方をバレル内のスプリングで付勢する構造と比較して、ピン全長が短くなっており、例えば高周波信号伝送用のシグナルピンとして好適な導通抵抗の低いピンとなっている。
【0004】
検査用基板上に配置したソケットがICパッケージを収容することにより、プローブピンは、上側接触部材が電気部品の端子(例えば、半田ボール)に接触して下方に押圧されると、下側接触部材がスプリングを介して下方の検査用基板の端子を押圧して確実に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上側接触部材と下側接触部材の互いの中空部で形成される空間内にスプリングを収容しピン全長を短くできる構造のプローブピンにおいて、ICパッケージと接触する上側接触部材をより硬くして、検査による摩耗を防ぎ、耐久性を高くしたいという要望がある。
【0007】
しかしながら、上記構成では、上側接触部材に、スプリングを収容する中空部を設ける際に、硬度の高い上側接触部材に、ドリル等の切削具を用いて中空加工を施すことになる。これにより、加工の際に切削具側が摩耗して、上側接触部材に十分な中空加工を施すことができない場合が生じ、スプリングを好適に収容できず、歩留まりが低くなり、安定した製品を製造できないという問題がある。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、ピン全長を短くできるとともに耐久性と量産性とを両立させることができるコンタクトピン及びソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンタクトピンは、
第1電気部品及び第2電気部品を電気的に接続するコンタクトピンであって、
使用時に前記第1電気部品に接触する第1接触端部から第1係合端部へ軸方向に延び、前記第1係合端部側に開放された第1中空部を有する第1プランジャと、
使用時に前記第2電気部品に接触する第2接触端部から第2係合端部まで前記軸方向に延び、前記第2係合端部側に開放された第2中空部を有し、前記第2中空部と前記第1中空部とが連通した状態で前記第1係合端部及び前記第2係合端部が相互摺動可能に係合されている、第2プランジャと、
前記第1中空部及び前記第2中空部が連通してなる空間内に、前記第1プランジャ及び前記第2プランジャを前記軸方向に伸長させるよう付勢する付勢部材と、
を有し、
前記第1プランジャは、
筒状の本体部材であって、前記第1接触端部側の開放部の端部が縮径するよう傾斜する弾性のテーパ部と、前記テーパ部よりも前記第2プランジャ側で局所的に内周側へ突出する突出部と、を有する本体部材と、
前記第1接触端部が設けられた基部を有し前記本体部材及び前記第2プランジャに比べて高い硬度を有する接点部材と、
を有し、
前記第1接触端部を前記開放部から突出させた状態で前記開放部を閉塞する前記基部が前記テーパ部と前記突出部とにより前記軸方向で挟持されることで、前記接点部材が前記本体部材に固定される構成を採る。
【0010】
上記構成のコンタクトピンと、
前記コンタクトピンを支持する支持体と、
を備える構成を採る
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピン全長を短くできるとともに耐久性と量産性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るコンタクトピンの外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るコンタクトピンの要部構成を示す縦断面図である。
【
図3】同コンタクトピンが取り付けられたソケットの平面図である。
【
図6】第1接点部材の固定状態を示す第1プランジャの部分断面図である。
【
図7】第1接点部材を下端部側から筒状本体のテーパ部に当接させた状態を示す第1プランジャの部分断面図である。
【
図9】第1プランジャに取り付けられる前の第1接点部材の一例を示す図である。
【
図10】位置決め突起部の無い第1接点部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書では、便宜的に、コンタクトピンの中心軸が鉛直となり、第1プランジャが上側に配置され、第2プランジャが下側に配置されているものとして説明を行う。但し、コンタクトピンとコンタクトピンを備えるソケットの配置形態がそのような形態に限られないことは言うまでもない。
【0014】
<コンタクトピンの全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るコンタクトピン100の非使用状態における外観斜視図であり、
図2は、同コンタクトピンの要部構成を説明する縦断面図である。
図1及び
図2に示すコンタクトピン100は、第1電気部品と第2電気部品とを電気的に接続するものである。
【0015】
コンタクトピン100は、第1電気部品に接触する第1プランジャ110、第2接触部品に接触する第2プランジャ150、及びばね170を備える。第1プランジャ110、第2プランジャ150及びばね170はいずれも金属材料からなる。
【0016】
コンタクトピン100は、互いに中心軸方向に沿って摺動自在に設けられた第1プランジャ110及び第2プランジャ150の互いの中空の内部を連通する空間に、双方を伸長方向に付勢するバネを収容した、所謂、カプセルタイプのコンタクトピンである。
第1プランジャ110は、コンタクトピン100の上側(一端部側)に配置される部材であり、第2プランジャ150は、コンタクトピン100の下側(他端部側)に配置される部材である。
【0017】
コンタクトピン100は、第1電気部品と、第2接触部品とのそれぞれに接触し、互いを電気的に接続するものであれば、どのような電子部品どうしを接続してもよい。
コンタクトピン100は、本実施の形態では、第1電気部品としてのICパッケージの電気的特性を検査する検査用のICソケットにプローブピンとして用いられる。この検査では、検査対象の第1電気部品に対して、バーンイン試験等の各種試験が行われる。例えば、電気部品の実際の使用環境と同じ環境、又は、実際の環境よりも負荷のかかる環境において、電気部品が適正に動作するかどうかなどが調べられる。
図3は、コンタクトピンが取り付けられたソケットの平面図であり、
図4は、
図3のA-A線部分断面図である。なお、
図3及び
図4に示すコンタクトピンは、模式的に図示されている。
【0018】
<ソケット10>
図3及び
図4に示すソケット10は、第2電気部品としての配線基板上に配置され、上部に、第1電気部品としてのICパッケージが収容される。
ソケット10は、複数のコンタクトピン100と、コンタクトピン100を支持する板状のソケット本体(支持体)2とを有する。
【0019】
ソケット本体2は、配線基板上に配置され、ソケット本体2には、測定対象となるICパッケージの端子数に対応して形成された上下方向に貫通する貫通孔3が形成されている。これら貫通孔3には、コンタクトピン100がそれぞれ配設されている。
図5は、ソケットにおけるコンタクトピンの動作の説明に供する断面図であり、
図5Aは、ソケットにおいてなんら荷重が掛かっていないコンタクトピンを示す図である。また、
図5Bは、配線基板5上にソケット10を配置した状態を示す図であり、
図5Cは、ICパッケージを配線基板に接続した状態を示す図である。
【0020】
図5Aに示すように、貫通孔3は、ソケット本体2の厚み方向において、上側に設けられ、第1プランジャ110が挿通される上側孔部3a、中央部に設けられたフランジ孔部3b、及び下側に設けられ、第2プランジャ150が挿通される下側孔部3cを有する。上側孔部3aは、第1プランジャ110が軸方向に移動可能に挿通される径を有し、下側孔部3cは、第2プランジャ150が軸方向に移動可能に挿入される径を有する。フランジ孔部3bは、上下側孔部3a、3cよりも大径であり、第1プランジャのフランジ部136が軸方向に移動自在に配置される径である。
貫通孔3に挿通されるコンタクトピン100は、フランジ部136が中央のフランジ孔部3b内に配置されることにより、ソケット本体2に対する上下方向の移動を規制される。
【0021】
図5Aに示すソケットにおけるコンタクトピン100は、配線基板及びICパッケージにも接触していないので、完全に伸びきった最大伸長状態である。
【0022】
ソケット本体2を配線基板5上に搭載すると、コンタクトピン100は、配線基板5により上側に押圧される。これにより、フランジ部136が上方へ移動して、上側孔部3aの縁部に当接して、第1プランジャ110の上側への移動が規制される。すると、
図5Bに示すように、第2プランジャ150は、ばね170の付勢に抗して上方に移動する。このとき、ばね170の付勢力により、第2プランジャ150は、配線基板5(具体的には、例えば配線基板の電極)とで互いに押圧した状態となり、確実な導通状態を保持できる。
【0023】
そして、
図5Cに示すように、第1プランジャ110に、第1電気部品としてのICパッケージの半田ボール6が接触すると、第1プランジャ110は第2プランジャ150に対して、収縮するように下方に移動する。これにより、コンタクトピン100は、ICパッケージと配線基板との双方を押圧した状態で、双方を確実に接触することができる。
なお、ばね170は、第1プランジャ110と第2プランジャ150との双方を伸長させる方向、つまり、第1プランジャ110の端部と第2プランジャ150の端部とを離間する方向に付勢する付勢力を有する構成であれば、金属製でなくてもよい。
【0024】
<第1プランジャ110>
第1プランジャ110は、
図2に示すように、上端部(一端部)側に設けられた第1接点部材120と、下端部(他端部)131が開放され、中空形状の第1中空部133を有する筒状の本体部材130と、下端部131に設けられる第1係合端部135を有する。
【0025】
第1中空部133は、本体部材130において、使用時に前記第1電気部品に接触する第1接触端部122から第1係合端部135へ軸方向に延び、第1係合端部135側で開放されるように形成されている。
【0026】
第1中空部133は、第2プランジャ150の外周部分(本体部154の外周)の外径よりも大径に形成されている。これにより、第2プランジャ150が第1プランジャ110の第1中空部133内を軸方向、つまり上下方向に、移動可能となっている。
第1中空部133は、後述する第2プランジャ150の第2中空部153と連通して、ばね170を収容する空間を形成する。
【0027】
本体部材130は、筒状であり、テーパ部137、第1係合端部135を一体に備える。本体部材130は、金属製の円筒体(バレル)を加工することで構成されている。本体部材130は、第1接点部材120よりも柔らかい金属で構成される。
本体部材130は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅などの金属材料により形成されている。
【0028】
第1係合端部135は、第2プランジャ150が第1プランジャ110に挿入された状態から抜けないように、本体部材130の下端部131で、第2係合端部155と摺動可能に係合するように設けられている。
【0029】
具体的には、第1係合端部135は、下端部131において、下端側の部位を狭窄した形状をなす狭窄部である。第1係合端部135は、下端に向かって内周側に延出するように設けられている。第1係合端部135は、例えば、本体部材130の内部に、第2プランジャ150の第2係合端部155を位置した状態で、本体部材130の外方から、下端部131の一部を内径側に折曲する等の加工により形成される。
【0030】
下端部131の一部を内径側に折曲することにより、第1係合端部135は、第2係合端部155が本体部材130の開放部側に移動する際に、第2係合端部155に係合して、第2係合端部155の移動を阻害する。
【0031】
本体部材130の上端部132には、内径側に傾斜するテーパ部137が設けられている。
【0032】
テーパ部137は、第1接点部材120に対して、本体部材130の軸方向と交差する方向で当接して第1接点部材120を本体部材130に固定する。
【0033】
図6は、第1接点部材の固定状態を示す第1プランジャの部分断面図である。
図6に示すように、第1接点部材120における縦断面におけるテーパ部137の傾斜角度θは、第1プランジャ110の中心軸を通る点を中心して、第1接点部材120の接点側テーパ部124bのなす角度(例えば、90°)以上であることが好ましい。このテーパ部137の傾斜角度と、第1接点部材120の接点部側テーパ部124bの傾斜角度とを調整することにより、第1接点部材120の本体部材130に対する固定状態を調整できる。この調整により、使用時において第1接点部材120側からのごみ、かすが第1プランジャ110の内部落下しないように、双方を密着させることができる。
【0034】
テーパ部137は、弾性、つまりバネ性を有し、第1接点部材120に上側、すなわち、一端側で当接し、第1接点部材120を上側から押圧した状態で固定している。なお、テーパ部137を用いた本体部材130の上端部への第1接点部材120の固定は、溶接、圧入等により行われてもよい。本実施の形態では、本体部材130の周方向の少なくとも一部で保持されている。より具体的には、例えば、ポンチカシメ等のカシメにより固定してもよい。
【0035】
本体部材130は、例えば、内周面から内周側に突出する移動規制部142を有してもよい。移動規制部142は、第1接点部材120に第1係合端部135側から当接して支持し、第1接点部材120が第1係合端部135側へ移動することを規制する。
【0036】
移動規制部142は、本実施の形態では、本体部材130の一部を変形することにより設けられている。
【0037】
移動規制部142は、テーパ部137とともに第1接点部材120を軸方向で挟持して本体部材130に強固に固定している。
【0038】
本体部材130の外周面には打痕部144が設けられている。打痕部144は、本体部材130の上端部132に、第1接点部材120を固定するものである。
【0039】
打痕部144は、例えば、本体部材130の一部を外部から押圧して変形させて、移動規制部142を形成した際に設けられる。
【0040】
第1接点部材120の本体部材130への固定は、
図7に示すように、テーパ部137を有し、且つ、第1係合端部135を有していないバレル等の本体部材130の内部に、下端部側の開口から第1接点部材120を挿入する。この挿入により、第1接点部材120をテーパ部137に押し付けて変形させて、多点で密着するようにしっかり押し付ける。次いで、本体部材130へのカシメ加工により打痕部144及び移動規制部142は設けられる(
図6参照)。これにより、第1接点部材120は、本体部材130の内部に下端部131側から挿入して本体部材130の上端側の開放部を閉塞するように固定される。
【0041】
また、打痕部144及び移動規制部142を用いることなく、
図7で図示されるように、テーパ部137に第1接点部材120の接点部側テーパ部124bを当接した状態で、ポンチカシメ、溶接、圧入等により行われてもよい。
【0042】
本体部材130の外側部分である外壁部134には、放射方向に所定量突出したフランジ部136を備えている。
【0043】
フランジ部136は、
図5に示すように、上側孔部3aの開口縁部と、下側孔部3cの開口縁部とに当接して、上下方向には移動しないようになっている。フランジ部136は、ソケット10の貫通孔3において、フランジ孔部3b内に軸方向で移動自在に配置される。
【0044】
<第1接点部材120>
第1接点部材120は、使用時に第1電気部品、例えば、ICパッケージに接触する第1接触端部122を構成する。
第1接点部材120は、本体部材130の第1接触端部122側の開放部を閉塞して設けられている。
【0045】
第1接点部材120は、本体部材130及び第2プランジャ150に比べて高い硬度を有する。これにより、第1接点部材120は、使用回数が多くなっても摩耗しにくく、コンタクトピン100としての耐久性の向上を図ることができる。
【0046】
第1接点部材120は、例えば、パラジウム合金で形成されることが好ましく、この場合、本体部材130及び第2プランジャ150は、ベリリウム銅、リン青銅或いは黄銅等で形成される。
第1接点部材120は、第1接触端部122と、第1接触端部122が突設され、本体部材130の上端部内に配置される基部124と、位置決め突起部126とを有する。
【0047】
第1接触端部122は、電気部品の端子、例えば、ICパッケージの半田ボール6(
図5C参照)と接触する。第1接触端部122は、本実施の形態では、クラウン形状の突起を有する接触端部である。なお、第1接触端部122は、クラウン形状の接触端部として構成したが、接触する電気部品の端子に応じた形状を有する。例えば、第1接触端部122は、アール形状、ニードル形状、フラット逆円錐形状、三角錐形状等に形成されていてもよい。
第1接触端部122は、第1接点部材120において、テーパ部137で囲まれる開口から上側、すなわち一端部側に突出して配置される。
【0048】
基部124は、本体部材130の一端部の内側、つまり、上端部132の開口内部内に配設されて、上端部132に固着される。基部124は、本体部材130の一端部である上端部132側の開口を閉塞する。
【0049】
基部124は、外周部124aと、外周部124aに対して軸方向両側に設けられた、接点部側テーパ部124bと、係合端部側テーパ部124cとを有し、円錐台形状をなしている。
【0050】
外周部124aは、本体部材130の内径と略同じ外径を有する部位であり、開放部を閉塞する。
接点部側テーパ部124bは、下端部131の第1係合端部135側から第1接触端部122側に向かって縮径するように傾斜する外面を有する。
係合端部側テーパ部124cは、接点部側テーパ部124bよりも第1係合端部135側に設けられ、前記第1接点端部側から前記第1係合端部に向かって縮径するように傾斜する外面を有する。
【0051】
なお、基部124は、本体部材130のテーパ部137に押圧された状態でかしめ固定され、少なくともテーパ部137及び移動規制部142により挟持された状態で強固に固着されている。
【0052】
基部124の底面は、付勢部材である圧縮コイルばねの一端部を受ける面であり、その中央部に、位置決め突起部126が、第1接点部材120側から本体部材130内部に突出して設けられている。
【0053】
位置決め突起部126は、コンタクトピン100内のばね170を位置決めするものであり、ばね170の一端部に挿入される。
これにより、例えば、
図8に示すように、第2プランジャ150が第1プランジャ110の第1接点部材120側に移動したとき等、ばね170が予期せぬ軸方向と直交する方向の挙動をする場合でも、ばね170の横ずれ、つまり、軸方向に交差する方向への移動を規制する。これにより、ばね170が第1プランジャ110と第2プランジャ150との間に挟まれることがない。
【0054】
位置決め突起部126の長さは、第1プランジャ110と第2プランジャ150とが軸方向で最大離間した際に、つまり、第1係合端部135と第2係合端部155とが係合した際に、第2接触部材の中空部内に至る長さであってもよい。この長さを有する位置決め突起部126であれば、第1プランジャ110及び第2プランジャ150が軸方向に相対移動するどのような状態でもばね170の横ずれを防止できる。
【0055】
また、ばね170の端部が当接する面であって、基部124の底面から突出して位置決め突起部126が設けられている。
図9に示すように、第1接点部材120を載置する作業台7に、位置決め突起部126が挿入される孔部71を、所定間隔を開けて設ける。これにより、コンタクトピン100の組み立て時において、位置決め突起部126を孔部71に挿入しておくことができる。第1接点部材120の組み付け時に、第1接点部材120の向きを、立てた向きにして容易に統一させることができる。これにより、
図10に示すように、位置決め突起部126が無い第1接点部材120Aを組み付ける場合と比較して、作業台72に向きを統一して整列して配置しておくことが容易となり、第1接点部材120の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0056】
<第2プランジャ150>
第2プランジャ150は、使用時に第2電気部品、例えば、回路基板に接触する第2接触端部152を有し、第1プランジャ110に対して軸方向で伸縮自在に設けられている。
【0057】
第2プランジャ150は、第1接点部材120より柔らかい金属材料により形成されている。第1接点部材120よりも柔らかい金属材料とは、例えば、ドリルなどの切削機を用いて、穿孔加工する際に、切削機側が摩耗することなく好適に加工でき、歩留まりが高い金属材料であることが好ましい。
例えば、第2プランジャ150は、ベリリウム銅、リン青銅、黄銅等の金属材料を加工して形成される。また、これら金属材料に構成される第2プランジャ150は、ニッケル、金などのメッキ処理が施されてもよい。
【0058】
第2プランジャ150は、第2接触端部152、第2中空部153を有する本体部154、第2係合端部155を有する。なお、これら第2接触端部152、本体部154、及び、第2係合端部155は、一体的に設けられている。
【0059】
第2接触端部152は、本体部154の底面から下方に突出して設けられている。
第2接触端部152は、コンタクトピン100の軸線上に中心が位置するように設けられている。第2接触端部152は、本体部154の底面から突出方向に向かって軸線と直交する断面積が小さくなるように形成されてもよい。本実施の形態では、第2接触端部152は、半球状に形成されている。
【0060】
本体部154は、有底筒状に形成され、内部に第2中空部153が設けられている。
本体部154は、第1プランジャ110の本体部材130内で軸方向に移動自在に設けられている。
本体部154の開口側の端部に、第2係合端部155が、本体部154の上端部から放射方向に張り出すように形成され、本体部材130内に配置され、第1係合端部135と相互摺動自在に係合する。
【0061】
なお、本実施の形態では、第1プランジャ110の内周側に、第2プランジャ150が軸方向に移動自在に設けられた構成としたが、第1プランジャの外周側で第2プランジャ150が軸方向に移動自在に設けられてもよい。この構成の場合、第2プランジャ150の本体部154の内径を第1プランジャ110の外径よりも大きくし、第1プランジャ110の外周に設けられたフランジ部136と同様野機能を有するフランジ部を、本体部154の外周に設けた構成となる。また、この構成では、第2係合端部155は、本体部154の内側に張り出すように形成され、第1係合端部135は、第2係合端部155の内側で、第2係合端部155に係合する。
【0062】
第2中空部153は、第1中空部133と連通し、連通してなる空間内には、ばね170が配設されている。
【0063】
第2中空部153の底部153aは、下方に向かって空間が徐々に狭くなるように先細り形状に形成されている。この底部153aに、バネ170の他端部が、入り込むことにより、バネ170を、ズレにくい状態で係止している。
【0064】
<ばね170>
ばね170は、付勢部材の一例であり、第1プランジャ110及び第2プランジャ150を軸方向に伸長させるよう付勢する。
【0065】
ばね170は、例えば、圧縮コイルばねである。
ばね170は、第1中空部133及び第2中空部153が連通してなる空間S内に配設されている。ばね170は、空間S内において、プリロードした状態で配置されている。
【0066】
具体的には、ばね170は、第1プランジャ110及び第2プランジャ150が軸方向に最大伸長した状態で、第1プランジャ110及び第2プランジャ150の双方を伸長する方向に付勢するように配置されている。
【0067】
ばね170は、具体的には、第1プランジャ110側で、第1接点部材120の裏面である基部124の底面を、位置決め突起部126に外挿した状態で押圧し、第2プランジャ150側で、底部153aを押圧している。
【0068】
本実施の形態によれば、第1プランジャ110は、第1係合端部135側及び第1接触端部122側に開放された筒状の本体部材130と、本体部材130の第1接触端部122側の開放部を閉塞して設けられ、第1接触端部122を構成し、本体部材130及び第2プランジャ150に比べて高い硬度を有する第1接点部材120とを有する。
【0069】
よって、本体部材130と第1接点部材120とにより第1中空部133を有する第1プランジャ110を構成するので、本体部材130及び第2プランジャ150に比べて高い硬度を有する第1接点部材120自体に切削或いは穿孔することなく第1プランジャ110を形成できる。また、コンタクトピン100は、ピン全長が短く、例えば高周波信号伝送用のシグナルピンとして好適な導通抵抗の低いピンとして機能する。
【0070】
これにより、本体部材130及び第2プランジャ150に比べて高い硬度の材料に袋穴形状加工して、第1プランジャ110を製造することがないので、プリロードが掛かるように安定した形状のコンタクトピンを歩留まりの高い状態で製造することができる。
このように本実施の形態によれば、ピン全長を短くできるとともに耐久性と量産性とを両立させることができる。
【0071】
また、本体部材130に、第1接点部材120を固定する際に、第1接点部材120に当接するテーパ部137は弾性変形する。これにより、第1接点部材120の接点部側テーパ部124bを多点密着させることができ、第1接点部材120の保持力と互いの接触の安定化を図ることができる。また、テーパ部137に第1接点部材120を軸方向に押圧して変形させることにより密着させるので、本体部材130から突出する第1接触端部122の突出長を変更することができる。
【0072】
本発明が、先に説明された実施形態には限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や応用が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ピン全長を短くできるとともに耐久性と量産性とを両立させることができる効果を有し、コンタクトピン及びソケットとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0074】
2 ソケット本体(支持体)
3 貫通孔
3a 上側孔部
3b フランジ孔部
3c 下側孔部
5 配線基板
6 半田ボール
7 作業台
10 ソケット
71 孔部
72 作業台
100 コンタクトピン
110 第1プランジャ
120、120A 第1接点部材
122 第1接触端部
124 基部
124a 外周部
124b 接点部側テーパ部
124c 係合端部側テーパ部
126 位置決め突起部
130 本体部材
131 下端部(他端部)
132 上端部
133 第1中空部
134 外壁部
135 第1係合端部
136 フランジ部
137 テーパ部
142 移動規制部
144 打痕部
150 第2プランジャ
152 第2接触端部
153 第2中空部
153a 底部
154 本体部
155 第2係合端部
170 バネ(付勢部材)