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  • 特許-コンクリート養生用散水装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】コンクリート養生用散水装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240228BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240228BHJP
   C04B 40/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E04G21/02 ESW
B28B11/24
C04B40/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020050921
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147944
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 正昂
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 修一
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116801(JP,A)
【文献】特開2014-005716(JP,A)
【文献】特開2009-030246(JP,A)
【文献】特開平04-350257(JP,A)
【文献】特開平03-084124(JP,A)
【文献】特開平04-272335(JP,A)
【文献】特開平11-015533(JP,A)
【文献】特開平06-193584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
B28B 11/24
C04B 40/04
E04G 23/02
E02D 27/00
G01C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のコンクリートの表面に散水するコンクリート養生用散水装置であって、
前記打設後のコンクリートの表面に設置される散水管と、
前記散水管に供給する水を貯留する、水量検出部を備える一時貯留槽と、
地上又は地上付近に設置されて、前記一時貯留槽に当該一時貯留槽より低い位置に存在する水を供給する水供給手段と、
前記水供給手段が前記一時貯留槽に水を供給する水の量を制御する制御手段とを備えており、
前記散水管は、打設後のコンクリートの打設高さが高くなるごとに移設されるようなっており、
前記一時貯留槽は、打設後のコンクリートの打設高さが高くなるごとに移設されて、コンクリートの表面に対して高さが同じ程度の場所に設置されるようになっており、
前記一時貯留槽に貯留されている水は、当該一時貯留槽に貯留されている水の量が所定の量を超えることを前記水量検出部が検出した場合、前記散水管に供給されるとともに、前記一時貯留槽に貯留されている水の量が前記所定の量以下であることを前記水量検出部が検出した場合、前記散水管への供給が停止されるようになっており
前記一時貯留槽に水を供給する前記制御手段は、前記水供給手段の作動制御を、作動間隔及び作動継続時間を調整することによって行うようになっていることを特徴とするコンクリート養生用散水装置。
【請求項2】
前記一時貯留槽は、前記一時貯留槽に貯留されている水の量が前記所定の量を超えることを前記水量検出部が検出した場合、前記一時貯留槽に貯留されている水を前記散水管に供給するとともに、前記一時貯留槽に貯留されている水の量が前記所定の量以下であることを前記水量検出部が検出した場合、前記一時貯留槽に貯留されている水を前記散水管に供給することを停止する送水ポンプを備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート養生用散水装置。
【請求項3】
前記水供給手段は、水を貯留する主貯留槽と、前記主貯留槽に貯留されている水を前記一時貯留槽に供給する給水ポンプとを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート養生用散水装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート養生用散水装置による、打設後のコンクリートの表面に散水するコンクリート養生用散水方法であって、
前記打設後のコンクリートの表面に散水管を設置する工程と、
一時貯留槽に当該一時貯留槽より低い位置に存在する水を供給する工程と、
前記一時貯留槽に貯留されている水を前記散水管に供給する工程とを備えたことを特徴とするコンクリート養生用散水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場で打設されたコンクリートを養生するために散水するコンクリート養生用散水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水とセメントとの水和反応によって、時間の経過とともに硬化し、強度が増加する。しかし、打設後のコンクリートから水分が急激に蒸発すると、水和反応が阻害されるとともに、乾燥収縮ひび割れなどが生じるので、強度などの品質に悪影響を及ぼす。そこで、打設後のコンクリートの湿潤状態を維持するために、定期的に散水することにより一定の湿潤状態に維持してコンクリートを養生させる必要がある。
【0003】
一般的には、作業者がホースやジョロなどを用いて散水しているが、相当期間、例えば1週間程度に亘って、1日数回程度散水を行う必要があるので、作業者が散水作業に従事する時間が長かった。さらに、橋梁などの高いコンクリート建築物を構築する場合には、作業者が散水を行うために昇降に要する時間も必要となる。そこで、ポンプなどを用いて自動的に散水することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、コンクリート橋面の上に敷設した養生マットの上面に散水用ホースを設置し、この散水用ホースに接続された給水用タンクに対して送水ポンプが集水用タンクから水を供給することにより、コンクリート橋面の養生を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-30246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1などに記載された技術においては、送水ポンプ及び集水用タンクなどの大規模な設備をコンクリート橋面の近傍に設置する必要がある。そのため、例えば橋桁などの高い建築物を順次高くなるように構築するなどの場合、コンクリートの打設高さが変わるごとに、大規模な設備を設置する必要があり、作業が煩雑である。なお、送水ポンプ及び集水用タンクを地上に設置することも想定され得るが、この場合、大きな定格の送水ポンプが必要となるとともに、このような大きな定格の送水ポンプで水を直接的に供給すると散水の勢いが過剰になるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、養生すべきコンクリートの打設高さが変わるごとに大規模な設備を設置する必要がないとともに、適度な量の散水を図ることが可能なコンクリート養生用散水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリート養生用散水装置は、打設後のコンクリートの表面に散水するコンクリート養生用散水装置であって、前記打設後のコンクリートの表面に設置される散水管と、前記散水管に供給する水を貯留する一時貯留槽と、前記一時貯留槽に当該一時貯留槽より低い位置に存在する水を供給する水供給手段と、前記水供給手段が前記一時貯留槽に水を供給する水の量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のコンクリート養生用散水装置によれば、水供給手段によって一時貯留槽より低い位置に存在する水が一時貯留槽に供給されるので、一時貯留槽に貯留されている水だけが打設後のコンクリートの表面に散水管から散水可能となる。これにより、適度な量の散水を行うことができるので、過剰な散水に伴って必要となる排水設備などの設置の省略を図ることが可能になる。
【0010】
本発明のコンクリート養生用散水装置において、前記一時貯留槽に貯留されている水の量が所定の量を超える否かを検出する水量検出部と、前記水量検出部が前記一時貯留槽に貯留されている水の量が前記所定の量を超えることを検出した場合、前記一時貯留槽に貯留されている水を前記散水管に供給するとともに、前記水量検出部が前記一時貯留槽に貯留されている水の量が前記所定の量以下であることを検出した場合、前記一時貯留槽に貯留されている水を前記散水管に供給することを停止する送水ポンプとをさらに備えることが好ましい。
【0011】
この場合、水供給手段によって一時貯留槽に水が供給されたとき、水量検出部が一時貯留槽に貯留されている水の量が所定の量以下であることを検出した場合、一時貯留槽に貯留されている水を散水管に供給することを送水ポンプが停止するので、水供給手段によって一時貯留槽に供給された水の量だけ、打設後のコンクリートの表面に散水管から散水される。これにより、適度な量の散水を行うことができるので、過剰な散水に伴って必要となる排水設備などの設置の省略を図ることが可能になる。
【0012】
また、一時貯留槽には、1回の散水に必要な水だけを貯留することができればよいので、その容積は左程大きなものとはならない。そのため、養生すべきコンクリートの打設高さなどが変更になった場合には、これに伴い一時貯留槽は移動させる必要はあるが、水供給手段は移動させる必要が必ずしもないので、散水の開始に必要な作業の低減を図ることが可能となる。
【0013】
本発明のコンクリート養生用散水装置において、前記水供給手段は、水を貯留する主貯留槽と、前記主貯留槽に貯留されている水を前記一時貯留槽に供給する給水ポンプとを含み、前記主貯留槽及び前記給水ポンプは、前記一時貯留槽よりも低い位置に位置していることが好ましい。
【0014】
この場合、さらに、送水ポンプは、一時貯留槽に貯留されている水を、これと同じ程度の高さに設置されている散水管に供給するだけであり、また、散水管から噴出される水には左程の勢いを必要としないので、給水ポンプと比較して小定格のポンプであり、その大きさは左程大きなものとならない。そのため、養生すべきコンクリートの打設高さなどが変更になった場合には、これに伴い送水ポンプは移動させる必要はあるが、給水ポンプは移動させる必要が必ずしもないので、散水の開始に必要な作業の低減を図ることが可能となる。
【0015】
本発明のコンクリート養生用散水方法は、打設後のコンクリートの表面に散水するコンクリート養生用散水方法であって、前記打設後のコンクリートの表面に散水管を設置する工程と、一時貯留槽に当該一時貯留槽より低い位置に存在する水を供給する工程と、前記時貯留槽に貯留されている水を前記散水管に供給する工程とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明のコンクリート養生用散水方法によれば、一時貯留槽より低い位置に存在する水が一時貯留槽に供給されるので、一時貯留槽に貯留されている水だけが打設後のコンクリートの表面に散水管から散水可能となる。これにより、適度な量の散水を行うことができるので、過剰な散水に伴って必要となる排水設備などの設置の省略を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート養生用散水装置を模式正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るコンクリート養生用散水装置100(以下、単に散水装置100ともいう)について図1を参照して説明する。なお、図1は、散水装置100を模式的に示す概略図であり、寸法比などを正確に表すものではない。
【0019】
散水装置100は、散水管10、一時貯水留槽20、送水ポンプ30、水量センサ40、給水ポンプ50、主貯留槽60及び制御装置70などを備えている。
【0020】
ここでは、橋梁の橋脚Aを場所打ちコンクリートにより、図1に2点鎖線で示すように、所定の高さごとに順次構築する際に、打設後のコンクリートの表面Bに散水装置100を用いて散水して養生させる場合について説明する。
【0021】
この場合、橋脚Aを構築する間、地上Cに設置されている給水ポンプ50及び主貯留槽60は移設する必要はないが、打設後のコンクリートの表面Bに設置されている散水管10、一時貯水留槽20及び送水ポンプ30は、打設高さが高くなるごとに移設する必要がある。なお、散水装置100を用いた散水は、橋脚Aに限定されず、さらに、順次打設高さが高くなる構造物以外に用いてもよい。
【0022】
打設後のコンクリートの表面Bには、図示しない型枠を除去した後、養生マット80を敷設することが好ましい。ただし、養生マット80の代わりにスポンジやむしろなどを敷設してもよく、さらには、養生マット80などを敷設しなくてもよい。
【0023】
養生マット80を敷設したコンクリートの表面Bの上に、散水管10を設置する。散水管10は、ここでは、塩化ビニルなどの合成樹脂からなる硬質の管であり、長手方向に間隔を隔てて多数の貫通穴81が形成されている。ただし、散水管10は、従来と同様の他の構成からなるものであってもよい。
【0024】
散水管10の内部に水が供給されることにより、貫通穴81から水が噴出して養生シート80を介してコンクリートの表面Bを湿潤状態とする。散水管10は、全面に亘って貫通穴81から散水された水が略均等にかかるように、コンクリートの表面Bに等間隔などのように適宜設置する。コンクリートの表面Bの形状や大きななどに応じて、散水管10の配置を変更する。
【0025】
散水管10は、複数本の管がジョイント、エルボなどを用いて連結されることにより構成されている。散水管10は、養生マット80の上に単に配置されていればよく、養生マット80や他の構造物に固定されていなくてもよい。これは、散水管10を流れる水の水圧が左程大きくないからである。なお、散水管10は、複数本であってもよく、分岐や合流などがあってもよい。また、散水管10は、ゴムホースなどの可撓性を有する管からなるものであってもよい。
【0026】
散水管10は、その基端側が送水ポンプ30の送水口に直接的に又は他の管部材を介して間接的に接続されており、送水ポンプ30によって一時貯留槽20から水が供給される。一時貯留槽20には、給水ポンプ50によって主貯留槽60から給水管90を介して圧送される水が貯留されている。
【0027】
一時貯留槽20には、一時貯留槽20に貯留されている水の量が所定の量を超えるか否かを検出する水量センサ40が設置されている。水量センサ40は、本発明の水量検出部に相当し、送水ポンプ30に設置されていてもよい。水量センサ40は、ここでは、フロート式、ディスプレーサ式、電極式、静電容量式、差圧式、光学式、電磁波式、レーザ式などの一時貯留槽20に貯留させている水の水位を検出する水位センサである。
【0028】
一時貯留槽20及び送水ポンプ30は、コンクリートの表面Bに対して、その近傍など、高さが同じ程度の場所に設置されている。
【0029】
送水ポンプ30は、水量センサ40が前記所定の量を超える水が一時貯留槽20に貯留されていることを検出した場合、一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給することを開始する。一方、送水ポンプ30は、水量センサ40が前記所定の量以下の水しか一時貯留槽20に貯留されていないことを検出した場合、一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給しない、又は、一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給することを停止する。
【0030】
給水ポンプ50によって主貯留槽60から水が一時貯留槽20に水が圧送されると、一時貯留槽20に貯留されている水の量が前記所定の量を超えるので、一時貯留槽20から送水ポンプ30を介して散水管10に水が供給され、これにより散水が開始される。そして、この散水は、一時貯留槽20に貯留されている水の量が前記所定の量以下となるまで継続する。よって、1回の散水において散水する水の量は、給水ポンプ50によって主貯留槽60から一時貯留槽20に圧送させた水の量と同じになる。
【0031】
これより、1回の散水において、前記所定の量を超える水が一時貯留槽20に貯留されている状態から、前記所定の量未満の水しか一時貯留槽20に貯留されていない状態になるまで散水が継続される。
【0032】
主貯留槽60は、地上、地上付近の構成物又は車両などに設置されている。主貯留槽60は、複数回の散水に必要な水を貯留することが可能であり、一時貯留槽20と比較して大容量である。ただし、主貯留槽60に、継続的又は断続的に水を供給する水道設備などの給水設備が接続されていれば、この限りではない。
【0033】
主貯留槽60には、主貯留槽60に貯留されている水を、給水管90を介して一時貯留槽20に圧送する給水ポンプ50が設置されている。この給水ポンプ50は、地上又は地上付近に設置されている主貯留槽60から高い位置に設置されている一時貯留槽20に水を圧送することができるように、送水ポンプ30と比較して高出力の高揚程ポンプを用いる。なお、給水ポンプ50、主貯留槽60及び給水管90は、本発明の水供給手段に相当する。
【0034】
給水ポンプ50は、ここでは、作動時は常に所定の回転数で回転し、一定時間当たりに供給する水の量が同じものである。そして、給水ポンプ50には、タイマなどの制御装置70が接続されており、その作動の開始、停止が制御されるように構成されている。なお、制御装置70は本発明の制御手段に相当する。
【0035】
給水ポンプ50の作動制御は、作動間隔及び作動継続時間を調整することによって行われる。作動間隔は、散水の時間間隔であり、コンクリートの表面Bが必要以上に乾燥しないように設定される。作動継続時間は、1回の散水におけて散水される水の量であり、散水管10からの散水によりコンクリートの表面Bが必要かつ十分に湿潤養生することができるように設定される。これら作動間隔及び作動継続時間は、コンクリートの表面Bの大きさ、形状、さらに、気候、温度などに応じて調整する。
【0036】
このような調整は、コンピュータが自動的に行うものであってもよく、また、作業員が制御装置70にデータを入力させることなどによって行ってもよい。さらに、作業員が手作業で給水ポンプ50の作動スイッチの入り切りを行うことなどによって作動の開始や停止を行ってもよい。また、コンクリートの表面Bの湿潤状態をセンサなどによって検出し、この検出結果に基づいて調整を行ってもよい。
【0037】
以下、上述した散水装置100を用いた本発明の実施形態に係るコンクリート養生用散水方法について説明する。
【0038】
まず、散水装置100を設置する工程を行う。ここで、散水管10、一時貯水留槽20、送水ポンプ30及び水量センサ40などは打設後のコンクリートの表面Bの高さと同じ程度の位置に設置し、給水ポンプ50、主貯留槽60及び制御装置70などは打設後のコンクリートの表面Bより低い位置、例えば地上Cに設置する。
【0039】
次に、主貯留槽60に貯留されている水を、給水ポンプ50を用いて給水管90を介して一時貯留槽20に圧送する工程を行う。この水の圧送は、制御装置70が給水ポンプ50の作動を制御することによって行われる。
【0040】
そして、水量センサ40が前記所定の量を超える水が一時貯留槽20に貯留されていることを検出した場合、送水ポンプ30は一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給することを開始する。一方、水量センサ40が前記所定の量以下の水しか一時貯留槽20に貯留されていないことを検出した場合、送水ポンプ30は、一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給しない、又は、一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給することを停止する。これらの水の供給は、制御装置70が水量センサ40の検知信号に基づいて送水ポンプ30の作動を制御することによって行われる。
【0041】
これより、1回の散水において、前記所定の量を超える水が一時貯留槽20に貯留されている状態から、前記所定の量未満の水しか一時貯留槽20に貯留されていない状態になるまで散水管10から打設後のコンクリートの表面Bへの散水が継続される。そして、このような散水はコンクリートの表面Bの養生が完了するまで定期的に自動的に継続される。
【0042】
そして、コンクリートの表面Bの養生が完了した後、散水管10、一時貯水留槽20、送水ポンプ30及び水量センサ40などは新たに打設したコンクリートの表面の高さと同じ程度に位置に設置し、上述した工程を繰り返す。
【0043】
以上説明したように、散水装置100によれば、給水ポンプ50によって主貯留槽60から水が一時貯留槽20に水が圧送されたとき、水量センサ40が一時貯留槽20に貯留されている水の量が所定の量以下であることを検出した場合、一時貯留槽20に貯留されている水を散水管10に供給することを送水ポンプ30が停止するので、給水ポンプ50によって主貯留槽60から一時貯留槽20に圧送された水の量だけ、コンクリートの表面Bに散水管10から散水される。これにより、適度な量の散水を行うことができるので、過剰な散水に伴って必要となる排水設備などの設置の省略を図ることが可能になる。
【0044】
また、一時貯留槽20には、1回の散水に必要な水だけを貯留することができればよいので、その容積は左程大きなものとはならない。さらに、送水ポンプ30は、一時貯留槽20に貯留されている水を、これと同じ程度の高さに設置されている散水管10に供給するだけであり、また、散水管10から噴出される水には左程の勢いを必要としないので、給水ポンプ50と比較して小定格のポンプでよく、その大きさは左程大きなものとならない。
【0045】
これによって、養生すべきコンクリートの打設高さなどが変更になった場合には、これに伴い一時貯留槽20及び送水ポンプ30は移動させる必要はあるが、給水ポンプ50及び主貯留槽60は移動させる必要が必ずしもないので、散水の開始に必要な作業の低減を図ることが可能となる。
【0046】
さらに、一時貯留槽20の高さに応じて圧送に必要な水圧は変化するので、この高さに応じて給水ポンプ50の定格などを変更する必要があり得る。しかし、給水ポンプ50によって一時貯留槽20に水を一旦圧送するが、一時貯留槽20から散水管10には送水ポンプ20によって水を供給するので、給水ポンプ50の定格などの変更は散水に影響を及ばさない。
【0047】
なお、本発明は、上述した散水装置100に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、一時貯留槽20に水を供給する本発明の水供給手段が給水ポンプ50、主貯留槽60及び給水管90からなる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、水道設備などの給水設備から直接的に一時貯留槽20に水を供給してもよい。
【0048】
また、一時貯留槽20から散水管10に送水ポンプ30を用いて水を供給する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、一時貯留槽20に開閉可能であって散水管10に接続される送水口を設けておき、この送水口を水量センサ40の検知結果などに基づいて自動的に開放することにより、散水管10に水を供給してもよい。ただし、この場合、散水管10は送水口より低い位置に配置する必要が生じる。さらに、給水ポンプ50の作動に応じて送水口を開放してもよく、この場合、水量センサ40を設置しなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…散水管、 20…一時貯留槽、 30…送水ポンプ、 40…水量センサ(水量検出部)、 50…給水ポンプ(水供給手段)、 60…主貯留槽(水供給手段)、 70…制御装置(制御手段)、 80…養生シート、 81…貫通穴、 90…給水管(水供給手段)、 100…コンクリート養生用散水装置、散水装置、 A…橋脚、 B…打設後のコンクリートの表面、 C…地上。
図1