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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ホーム柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240228BHJP
   E05F 15/635 20150101ALI20240228BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20240228BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B61B1/02
E05F15/635
E05F17/00 A
E01F1/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020054287
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021154771
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120911(JP,A)
【文献】特開2015-063823(JP,A)
【文献】特開2009-220817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E05F 15/635
E05F 17/00
E01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋部から扉吐出方向に第1扉及び第2扉を連動してスライド移動させる多段引戸式のホーム柵において、
前記戸袋部の下部において扉吐出側に配置され、回転面が上下に回転する、モータで駆動される第1ピニオンと、
前記第1扉に設けられた第1ラックであって、前記第1ピニオンに上方から歯合することで第1駆動部を構成する第1ラックと、
前記第1ラックより高い位置で前記第1扉に枢支され、回転面が上下に回転する第2ピニオンと、
前記戸袋部から前記扉吐出方向に突出しないように前記第1ピニオンより高い位置で前記戸袋部に設けられた第2ラックであって、前記第2ピニオンに下方から歯合することで第2駆動部を構成する第2ラックと、
前記第2扉に設けられた第3ラックであって前記第2ピニオンに上方から歯合することで第3駆動部を構成する第3ラックと、
を備え、
前記モータが駆動すると前記第1駆動部によって前記第1扉がスライド移動し、当該第1扉のスライド移動に伴い、前記第2ラックに歯合する前記第2ピニオンが回転力を得て、前記第3駆動部によって前記第2扉がスライド移動
前記第2ピニオンは、前記第1扉において進出側端部から後退方向に離れた位置に枢支されており、全開状態から全閉状態に向けて前記第1扉がスライド移動する際に前記第1ピニオンに近づく方向に移動開始する、
ホーム柵。
【請求項2】
第3扉を具備し、
前記第2ラックより高い位置で前記第2扉に枢支され、回転面が上下に回転する第3ピニオンと、
前記第1扉に設けられた第4ラックであって、前記第3ピニオンに下方から歯合することで第4駆動部を構成する第4ラックと、
前記第3扉に設けられた第5ラックであって前記第3ピニオンに上方から歯合することで第5駆動部を構成する第5ラックと、
を更に備え、
前記第1扉および前記第2扉のスライド移動に伴い、前記第4駆動部によって前記第4ラックに歯合する前記第3ピニオンが回転力を得て、前記第5駆動部によって前記第3扉がスライド移動
前記第3ピニオンは、前記第2扉において後退側端部から進出方向に離れた位置に枢支されており、全開状態から全閉状態に向けて前記第2扉がスライド移動する際に前記第1ピニオンに近づく方向に移動開始する、
請求項1に記載のホーム柵。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記扉吐出方向を前記戸袋部の左方および右方の両方として前記戸袋部を共通とした多段引戸式の両開きのホーム柵であって、
前記戸袋部の左右中間部に、両側の扉の全閉状態の時に軌道側からホーム側に通行可能な非常扉を具備したホーム柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるホーム柵に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームに設置されるホーム柵として、1つの戸袋部から複数の可動扉を進退させるようにスライド移動させる多段引戸式ホーム柵が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2段の可動扉を同期させて駆動するホーム柵であって、駆動機構にタイミングベルトとプーリーを用いた2段引戸式ホーム柵が開示されている。当該ホーム柵では、先端側扉(2段のうち可動扉の進退方向の進出側にある扉)と後端側扉(2段のうち進退方向の後退側にある扉)とが連動して開閉駆動され、先端側扉の開閉速度は後端側扉の2倍となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-4959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のホーム柵の場合、駆動機構にタイミングベルトを採用しているので、ベルトの摩耗や張りの低下が生ずると、機能低下を招くので定期的な点検が必要とされる。
また紐状駆動伝達部材にタイミングベルト、ワイヤー、チェーン等が採用されたホーム柵があるが、ワイヤーの場合は、素線切れや錆び、張りの低下による緩みが生じる可能性があり、定期的な点検が欠かせない。また、チェーンを採用する場合は、ピンの摩耗や錆びの発生、張りの低下による緩み 等が伝達効率の低下を招くので、やはり定期的な点検が欠かせない。定期的な点検は事業者の負担となるので、点検周期を長くできる多段引戸式のホーム柵が望まれている。
【0006】
また、ホーム柵は、列車のドア間隔に合わせて2台1組の両開き式のホーム柵として設置されることが多い。入線する列車の種類が1種類の場合は、2台のホーム柵の間隔が確保できるので、戸袋などにカバーや非常扉を取り付けることができる。ところが、入線する列車の種類が増え、様々なドア数やドア間隔に対応できるように2台のホーム柵の設置間隔つまりは乗降口を広く設定すると、どうしても戸袋部の幅(ホーム長手方向の長さ)が大きくなる。
【0007】
一方で、乗降口を広く設定すると、反対に乗降口間の間隔は小さくなる。その為、非常扉を設けることが困難になる場合がある。特に、相互乗り入れが行われる駅では、列車の車種が多数におよび、その中にドア数が多く且つドア間隔(乗降口間隔)が短い種類も含まれると、非常扉を設けることが一層困難になる。
【0008】
本発明は、こうした要望に応ずるべく考案されたものである。第1の目的は、点検周期を従来より長くできる多段引戸式ホーム柵の技術を提供することである。第2の目的は、第1の目的を達成したうえで、更に、非常扉の設置スペースを確保できる両開き式のホーム柵の技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、戸袋部から扉吐出方向に第1扉及び第2扉を連動してスライド移動させる多段引戸式のホーム柵において、前記戸袋部の扉吐出側に配置され、モータで駆動される第1ピニオンと、前記第1扉に設けられた第1ラックであって、前記第1ピニオンに歯合することで第1駆動部を構成する第1ラックと、前記第1扉に枢支された第2ピニオンと、前記戸袋部に設けられた第2ラックであって、前記第2ピニオンに歯合することで第2駆動部を構成する第2ラックと、前記第2扉に設けられた第3ラックであって、前記第2ラックによる前記第2ピニオンとの歯合位置とは反対側で前記第2ピニオンに歯合することで第3駆動部を構成する第3ラックと、を備え、前記モータが駆動すると前記第1駆動部によって前記第1扉がスライド移動し、当該第1扉のスライド移動に伴い、前記第2ラックに歯合する前記第2ピニオンが回転力を得て、前記第3駆動部によって前記第2扉がスライド移動する、ホーム柵である。
【0010】
また、第2の発明は、第3扉を具備し、前記第2扉に枢支された第3ピニオンと、前記第1扉に設けられた第4ラックであって、前記第3ピニオンに歯合することで第4駆動部を構成する第4ラックと、前記第3扉に設けられた第5ラックであって、前記第4ラックによる前記第3ピニオンとの歯合位置とは反対側で前記第3ピニオンに歯合することで第5駆動部を構成する第5ラックと、を更に備え、前記第1扉および前記第2扉のスライド移動に伴い、前記第4駆動部によって前記第4ラックに歯合する前記第3ピニオンが回転力を得て、前記第5駆動部によって前記第3扉がスライド移動する、第1の発明のホーム柵である。
【0011】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記扉吐出方向を前記戸袋部の左方および右方の両方として前記戸袋部を共通とした多段引戸式の両開きのホーム柵であって、前記戸袋部の左右中間部に、両側の扉の全閉状態の時に軌道側からホーム側に通行可能な非常扉を具備したホーム柵である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明のホーム柵は、駆動部の機構として、ラック・アンド・ピニオン機構を用いる。ラック・アンド・ピニオン機構は歯車の噛み合わせにより動力を伝達するので、タイミングベルトやワイヤー、チェーンを用いる駆動機構に比べて伝達効率が安定的且つ高効率で、更に耐久性に優れる。よって、従来よりも点検周期が長い多段引戸式のホーム柵を実現できる。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明のホーム柵と同様の効果を有する3段引戸式のホーム柵を実現できる。
【0014】
第3の発明によれば、戸袋部の内部空間を有効利用して、戸袋部の幅(ホーム長手方向の長さ)をできるだけ小さくしながらも非常扉付きのホーム柵を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例を示す図であって、ホーム側から見た正面図。
図2】第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例と設置例を示す進退方向の進出側から見た側面図。
図3】戸袋部の構成例を示す図であって、(1)正面方向から見たIII-III断面図、(2)進退方向の進出側から見た側面図。
図4】第1扉の構成例を示す図であって、(1)正面方向から見たIV-IV断面図、(2)進退方向の進出側から見た側面図。
図5】第2扉と第3扉との構成例を示す図であって、(1)正面方向から見た透視図、(2)進退方向の進出側から見た側面図。
図6】可動扉が全進出状態(乗降口の全閉状態)における第1実施形態のホーム柵をホーム側から見た透視正面図。
図7】全進出状態(乗降口の全閉状態)から全後退状態(乗降口の全開状態)への途中状態における第1実施形態のホーム柵をホーム側から見た透視正面図。
図8】可動扉が全後退状態(全収容状態:乗降口の全開状態)における第1実施形態のホーム柵をホーム側から見た透視正面図。
図9】第2実施形態のホーム柵の構成例を示す図であって、ホーム側から見た正面透視図。
図10】両開きホーム柵の構成例を示す図であって、主要構成要素を選択的に示したホーム側から見た正面透視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。なお、構造の理解を容易にするために、可動扉とその駆動機構についてのみ抜き出して図示しており、可動扉の支持構造や制御系を含む電装系の構成要素については図示を省略している。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例を示す図であって、ホーム側から見た正面図である。図2は、ホーム柵2を進退方向の進出側(可動扉にとっての進出側;戸袋から見て可動扉を吐出させる側)から見た側面図である。
【0018】
ホーム柵2は、戸袋部10と、3枚の可動扉(全開時における戸袋部10から近い順に第1扉30,第2扉50,第3扉70)とを備え、戸袋部10から扉吐出方向に各可動扉を連動してスライド移動させる3段引戸式のホーム柵である。
【0019】
ホーム柵2には、右方設置型ホーム柵2Rと、左方設置型ホーム柵2Lと、の2種類がある。右方設置型ホーム柵2Rは、可動扉をホーム側から見て戸袋部10の左方向へ進出させるように構成されている。左方設置型ホーム柵2Lは、可動扉をホーム側から見て戸袋部10の右方向へ進出(吐出)させるように構成されている。図1の例では、1箇所の乗降口用として、ホーム側から見て乗降口の右側のホーム3の上面に右方設置型ホーム柵2Rが設置され、ホーム側から見て乗降口の左側のホーム3の上面に左方設置型ホーム柵2Lが設置されている様子をホーム側から示している。
【0020】
右方設置型ホーム柵2Rの構成と左方設置型ホーム柵2Lは、可動扉の進出方向が反転しているが基本的には同じ構成を有する。ゆえに、第1実施形態の説明では、両者を代表して左方設置型ホーム柵2Lを単に「ホーム柵2」と呼んで詳しく述べることとする。
【0021】
図3は、戸袋部10の構成例を示す図であって、図3(1)が正面方向から見たIII-III断面図、図3(2)が進退方向の進出側から見た側面図、である。
戸袋部10の外殻部11は、可動扉の進出方向に開口する箱体である。外殻部11が画成する内部空間の底部であって可動扉の進出方向端部(扉吐出側)には、モータ12がモータ固定金具13で固定されている。モータ12には、適宜減速機構を含めることができる。
【0022】
モータ12の駆動軸は、ホームから軌道に向かう向きに設置されており、その先端に、例えば平歯車からなる第1ピニオン14が固定されている。第1ピニオン14は、モータ12の駆動にともなって回転面を上下にして駆動する。
【0023】
また、戸袋部10は、モータ固定金具13よりも可動扉の後退側に、ラック固定金具15と、当該金具の上端面に設けられた第2ラック16と、を有する。第2ラック16は、可動扉の進退方向に沿って長く、ラック歯が上向きの姿勢で配置されている。
【0024】
図4は、第1扉30の構成例を示す図であって、図4(1)が正面方向から見たIV-IV断面図、図4(2)が進退方向の進出側から見た側面図、である。
【0025】
第1扉30の本体は、軌道側扉ボード31と、ホーム側扉ボード32と、軌道側扉ボード31およびホーム側扉ボード32の上端を連結する上端面33と、を有する。すなわち、第1扉30の本体は、進出側・後退側・下側の3方向に開口する内部空間を画成している。当該本体を、進出側から見ると開口部を下向きにしたコの字形をしているとも言える。そして、第1扉30のホーム~軌道方向の厚さは、戸袋部10の内部空間のホーム~軌道方向の内寸よりも小さく設定されている。
【0026】
軌道側扉ボード31は、その下端に、ホーム長手方向に第1ピニオン14(図3参照)と噛み合って第1駆動部91(第1のラック・アンド・ピニオン機構部;図2参照)を構成する第1ラック34を備える。第1ラック34は、進退方向に長く、ラック歯が下向きとなる姿勢で設置されている。
【0027】
また、軌道側扉ボード31は、第1ラック34よりも上方の内面側に、ラック支持金具35で第4ラック36を支持している。第4ラック36は、進退方向に長く、ラック歯を上向きにした姿勢で支持されている。
【0028】
ホーム側扉ボード32は、後退側の内面において、下端より少し上の位置に、回転軸がホームから軌道に向かう向きの回転軸で枢支される第2ピニオン37を有する。第2ピニオン37は、戸袋部10の第2ラック16(図3参照)と噛み合って第2駆動部92(第2のラック・アンド・ピニオン機構部;図2参照)を構成する平歯車であって、回転面を上下にして駆動する。
【0029】
図5は、第2扉50と第3扉70との構成例を示す図であって、図5(1)が正面方向から見た透視図、図5(2)が進退方向の進出側から見た側面図、である。
第2扉50の本体は、軌道側扉ボード51と、ホーム側扉ボード52と、軌道側扉ボード51およびホーム側扉ボード52の上端を連結する上端面53と、を有する。ちなみに、図5(1)の透視図では、軌道側扉ボード51とホーム側扉ボード52とが、透視により重なって見えている。
【0030】
すなわち、第2扉50の本体は、第1扉30と同様に、進出側・後退側・下側の3方向に開口する内部空間を画成している。当該本体を、進出側から見ると開口部を下向きにしたコの字形をしているとも言える。そして、第2扉50のホーム~軌道方向の厚さは、第1扉30の内部空間のホーム~軌道方向の内寸よりも小さく設定されている。
【0031】
第2扉50は、ホーム側扉ボード52の下端に第3ラック54を有する。第3ラック54は、進退方向に長く、ラック歯を下向きの姿勢で設置されており、第1扉30の第2ピニオン37(図4参照)と噛み合って第3駆動部93(第3のラック・アンド・ピニオン機構部;図2参照)を構成する。第3ラック54は、第2ラック16による第2ピニオン37との歯合位置とは反対側で第2ピニオン37に歯合する。第2ピニオン37に対して第2ラック16および第3ラック54が歯合するため、第2ラック16と第3ラック54と第2ピニオン37とは、ダブルラック・ピニオンの構成ということができる。
【0032】
また、第2扉50は、軌道側扉ボード51の内面において、進退方向の略中央下部に、第3ピニオン55を有する。第3ピニオン55は、軌道からホームに向かう向きの回転軸で枢支され、回転面が上下に回転する平歯車であって、第1扉30の第4ラック36(図4参照)と噛み合って第4駆動部94(第4のラック・アンド・ピニオン機構部;図2参照)を構成する。
【0033】
第3扉70は、主扉ボード71と、当該ボードの下端面に設けられた第5ラック72と、を有する。
【0034】
主扉ボード71のホーム~軌道方向の厚さは、第2扉50の内部空間のホーム~軌道方向の内寸(軌道側扉ボード51の内面~ホーム側扉ボード52の内面までの距離)よりも小さく設定されており、進退方向の長さは、第2扉50の進退方向の長さと同じ又はそれより小さく設定されている。
【0035】
第5ラック72は、進退方向に長く、ラック歯を下向きの姿勢で設置されており、第2扉50の第3ピニオン55と噛み合って第5駆動部95(第5のラック・アンド・ピニオン機構部;図2参照)を構成する。第5ラック72は、第4ラック36による第3ピニオン55との歯合位置とは反対側で第3ピニオン55に歯合する。第3ピニオン55に対して第4ラック36および第5ラック72が歯合するため、第4ラック36と第5ラック72と第3ピニオン55とは、ダブルラック・ピニオンの構成ということができる。
【0036】
全てのラック・アンド・ピニオン機構に着目すると、第1駆動部91と、第2駆動部92と、第3駆動部93と、第4駆動部94と、第5駆動部95と、はピニオンの回転当たりのラック移動量が同じに設定されている。具体的には、第1ピニオン14と、第2ピニオン37と、第3ピニオン55とは、ピッチ円直径および歯数が同じである。
【0037】
次に、ホーム柵2の動作について説明する。
図6は、可動扉が全進出状態(乗降口の全閉状態)におけるホーム柵2(左方設置型ホーム柵2L)をホーム側から見た透視正面図である。
図7は、全進出状態(乗降口の全閉状態)から全後退状態(乗降口の全開状態)への途中状態におけるホーム柵2(左方設置型ホーム柵2L)をホーム側から見た透視正面図である。
図8は、可動扉が全後退状態(全収容状態:乗降口の全開状態)におけるホーム柵2(左方設置型ホーム柵2L)をホーム側から見た透視正面図である。
【0038】
図6に示すように、ホーム柵2は、全進出状態から全後退状態へ遷移するために、先ずモータ12をホーム側(正面側)から見て反時計回りに駆動する。この駆動により、第1ピニオン14も反時計回りし、第1ピニオン14と噛み合う第1ラック34は、戸袋部10に対して後退方向(図6に向かって左方向)へ移動する。第1ラック34は第1扉30と一体なので、第1扉30は戸袋部10へ収容されるように後退方向へ移動する。
【0039】
第2駆動部92に着目すると、第1扉30の後退方向への移動により、第1扉30と一体の第2ピニオン37が、戸袋部10に固定されている第2ラック16と噛合しながら反時計回りに回転する。
【0040】
第3駆動部93に着目すると、第2ピニオン37の反時計回りの回転により、第2ピニオン37と噛み合う第3ラック54は、後退方向へ移動する。第3ラック54は第2扉50と一体であるから、第2扉50は、第1扉30に対して相対的に後退方向へ移動することになる。
【0041】
第4駆動部94に着目すると、第2扉50が第1扉30に対して相対的に後退方向へ移動することによって、第2扉50の第3ピニオン55は、第1扉30の第4ラック36に対して相対的に後退方向へ移動することになり、当該移動によって第3ピニオン55は反時計回りに回転する。
【0042】
第5駆動部95に着目すると、第3ピニオン55の反時計回りの回転により、第5ラック72は後退方向へ移動することになる。第5ラック72と一体の第3扉70は、第2扉50に対して相対的に後退方向へ移動することになる。
【0043】
図7に示すように、ホーム柵2の5つのラック・アンド・ピニオン機構部は、モータ12の駆動により連鎖的に作動して、全ての可動扉は戸袋部10の中へ収容される方向(後退方向)へ移動する。そして、上述のように、5つのラック・アンド・ピニオン機構部は、ピニオンの回転当たりのラック移動量が同じであるから、第1扉30の移動速度を基準とすれば、第2扉50の移動速度は2倍、第3扉の移動速度は3倍となる。言い換えると、第1扉30が戸袋部10の中へ収容されてゆく早さと、第2扉50が第1扉30の中へ収容されてゆく早さと、第3扉70が第2扉50の中へ収容されてゆく早さと、は同じになる。
【0044】
そして、ホーム柵2は、最終的に図8に示すように、全ての可動扉が同時に戸袋部10へ収容される全後退状態に至る。
【0045】
ホーム柵2を全後退状態から全進出状態へ遷移させるには、モータ12を逆回転(ホーム側から見て時計回り)させればよい。ホーム柵2は、図8図7図6の順に状態が遷移して全進出状態にもどる。
【0046】
以上、本実施形態のホーム柵2によれば、モータ12が駆動すると第1駆動部91によって第1扉30がスライド移動し、第1扉30のスライド移動に伴い、第2ラック16に歯合する第2ピニオン37が回転力を得て、第3駆動部93によって第2扉50がスライド移動する。また、第1扉30および第2扉50のスライド移動に伴い、第4駆動部94によって第4ラック36に歯合する第3ピニオン55が回転力を得て、第5駆動部95によって第3扉70がスライド移動する。ホーム柵2は、駆動機構として、歯車の噛み合わせにより動力を伝達するラック・アンド・ピニオン機構を用いるので、タイミングベルトやワイヤー、チェーンを用いる駆動機構に比べて伝達効率が安定的且つ高効率で、更に耐久性に優れる。よって、点検周期を従来より長くできる多段引戸式ホーム柵を実現できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、戸袋部10から第1扉30が突出した幅と、第1扉30から第2扉50が突出した幅と、第2扉50から第3扉70が突出した幅とが同じになる。よって、動作中及び停止中の美観に優れた可動式ホーム柵を実現できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、戸袋部10の内側に第1扉30、第1扉30の内側に第2扉50、第2扉50の内側に第3扉70、と言った具合に戸袋と可動扉とを入れ子構造とすることができる。よって、動作中及び停止中の美観に優れるとともに、機構部が露出しない安全に配慮した可動式ホーム柵を実現できる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0050】
図9は、本実施形態のホーム柵5の構成例を示す図であって、ホーム側から見た正面透視図である。ホーム柵5は、第1実施形態のホーム柵と基本構成は同じであるが可動扉の進出方向が左右逆に設定された右方設置型ホーム柵(図示略)と、左方設置型ホーム柵5Lとを有する。図9は後者の正面透視図である。
【0051】
ホーム柵5(5L)は、第1実施形態の左方設置型ホーム柵2(2L)と同様の構成を有するが、第3扉70に関する構成が省略された2枚の可動扉を備える2段引戸式のホーム柵である。
【0052】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する2段引戸式のホーム柵を実現できる。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、本発明を適用した第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0054】
図10は、両開きホーム柵7の構成例と設置例とを示すホーム側から見た正面透視図であって、可動扉が全進出状態(乗降口が全閉状態)を示している。
【0055】
両開きホーム柵7は、戸袋部10Bを共通として、第1実施形態の右方設置型ホーム柵2R及び左方設置型ホーム柵2Lを、戸袋部10Bのホーム長手方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けたホーム柵である。両開きホーム柵7は、扉吐出方向を戸袋部10Bの左方および右方の両方として戸袋部10Bを共通とした多段引戸式の両開きのホーム柵、ということもできる。両開きホーム柵7は、隣接する2つの乗降口の間に設置される。
【0056】
具体的には、両開きホーム柵7の戸袋部10Bは、ホーム長手方向の一方側と他方側との2方向に開口している。そして、両開きホーム柵7は、右方設置型ホーム柵2Rを、戸袋部10Bのホーム長手方向の一方向側(図10における左側)に有し、当該一方向側の乗降口を開閉する。また、両開きホーム柵7は、左方設置型ホーム柵2Lを、戸袋部10Bのホーム長手方向の他方向側(図10における右側)に有し、当該他方向側の乗降口を開閉する。そして、両開きホーム柵7は、戸袋部10Bの右方設置型ホーム柵2Rと左方設置型ホーム柵2Lとの中間である左右中間部に、両側の扉の全閉状態の時に軌道側からホーム側に通行可能な非常扉19を備える。
【0057】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏するホーム柵であって、非常口を備えた両開きホーム柵を実現できる。
すなわち、右方設置型ホーム柵2Rと左方設置型ホーム柵2Lとは、ともに戸袋部10におけるモータ12の配置位置が進出方向側の端部にある。よって、両開きホーム柵7では、戸袋部10Bの両端に配置されることになる。当該構成では、2つのモータ12が戸袋部10Bの開口近くに設置されているため、可動扉の全進出状態(乗降口の全閉状態)において戸袋部10Bの開口より奥側のスペース(内部空間)を有効利用できる。つまり、非常扉19を設ける空間を確保することができる。
【0058】
なお、両開きホーム柵7を、戸袋部10Bを共通として、第2実施形態の右方設置型ホーム柵2R及び左方設置型ホーム柵2Lを用いる構成としてもよい。
【0059】
本発明を適用可能な形態は、上記実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0060】
2…ホーム柵
2L…左方設置型ホーム柵
2R…右方設置型ホーム柵
7…両開きホーム柵
10…戸袋部
12…モータ
14…第1ピニオン
16…第2ラック
19…非常扉
30…第1扉
34…第1ラック
35…ラック支持金具
36…第4ラック
37…第2ピニオン
50…第2扉
54…第3ラック
55…第3ピニオン
70…第3扉
72…第5ラック
91…第1駆動部
92…第2駆動部
93…第3駆動部
94…第4駆動部
95…第5駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10