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特許7444679塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/00 20180101AFI20240228BHJP
   B05B 12/14 20060101ALI20240228BHJP
   B25J 9/00 20060101ALI20240228BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240228BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20240228BHJP
   B05B 3/10 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
B05B12/00 Z
B05B12/14
B25J9/00 Z
G05B19/42 U
G05B19/4155 S
B05B3/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020061366
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021159798
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 吉起
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275746(JP,A)
【文献】国際公開第2008/096453(WO,A1)
【文献】特開2003-093931(JP,A)
【文献】特開2018-047544(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088237(WO,A1)
【文献】特開2015-202428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/00-5/16
12/00-16/80
B05D 1/00-7/26
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端に塗装機が取り付けられた産業用塗装ロボットと、
前記塗装機に着脱可能な塗料カートリッジが装着される複数のストッカを有し、前記ストッカに装着されている前記塗料カートリッジに対して複数色の塗料を選択的に充填可能な塗料充填装置と、
使用済みの前記塗料カートリッジを前記塗装機から取り外して前記塗料充填装置の前記ストッカに装着するとともに、前記塗料が充填された使用前の前記塗料カートリッジを前記ストッカから取り外して前記塗装機に装着する搬送装置と
を塗装領域内に設置してなる塗装設備において、個々の前記ストッカの位置を前記搬送装置に教示する塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システムであって、
前記搬送装置は、
互いに直交する3軸方向に駆動可能な3つの電動アクチュエータからなり、垂直方向に沿って駆動するZ軸用電動アクチュエータをX軸用電動アクチュエータ及びY軸用電動アクチュエータに支持させた構造の駆動装置と、
前記Z軸用電動アクチュエータの可動部に設けられ、前記塗料カートリッジを把持可能なチャック装置と、
複数の前記ストッカから、位置教示を行う1つのストッカを選択するストッカ選択手段と、
前記Z軸用電動アクチュエータの前記可動部に設けられ、選択された前記ストッカの位置を読み取る画像センサと、
前記X軸用電動アクチュエータ及び前記Y軸用電動アクチュエータを駆動して、前記画像センサにより読み取った前記ストッカの直上位置まで前記チャック装置を移動させた後、読み取った前記ストッカの直上位置のX座標及びY座標を適切位置座標として定義する適切位置座標定義手段と、
定義した前記適切位置座標を登録する操作を作業者に対して促す座標登録手段と
を備えることを特徴とする、塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【請求項2】
前記3つの電動アクチュエータはそれぞれ防爆構造及び制振機構を有するとともに、前記画像センサは防爆構造を有することを特徴とする請求項1に記載の塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【請求項3】
前記可動部において前記チャック装置よりも高い位置には、センサ支持ブラケットが突設され、前記画像センサは、斜め下方を向く状態で前記センサ支持ブラケットに支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装設備において、個々のストッカの位置を搬送装置に教示するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディの塗装設備(塗装ライン)では、塗装色の異なる自動車ボディが混在して搬送されるため、自動車ボディに応じた色替塗装を可能にする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、図8に示されるように、塗装設備101は、産業用塗装ロボット(図示略)、塗料充填装置102及び搬送装置103を備える。産業用塗装ロボットは、アームの先端に塗装機を取り付けた構造を有する。塗料充填装置102は、塗装機に着脱可能な塗料カートリッジ104が装着される複数のストッカ105を有し、ストッカ105に装着されている塗料カートリッジ104に対して塗料を充填する。そして、搬送装置103は、使用済みの塗料カートリッジ104を塗装機から取り外してストッカ105に装着するとともに、塗料が充填された使用前の塗料カートリッジ104をストッカ105から取り外して塗装機に装着することにより、塗料カートリッジ104を交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-130530号公報(図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗料カートリッジ104が装着される個々のストッカ105の位置は、作業者が目視でストッカ105の位置を確認し、確認した位置に搬送装置103を手動で移動させることにより、搬送装置103に教示される。なお、搬送装置103の停止位置は、作業者によって手動でエンコーダーに設定された位置(エンコーダー設定値)に登録される。
【0005】
ところが、塗料充填装置102が有するストッカ105の数は多く、目視でのストッカ105の確認や手動での搬送装置103の移動、といった動作を繰り返し行う必要があるため、ストッカ105の位置教示に多大な時間を要してしまうという問題がある。また、ストッカ105の位置を教示する作業(位置教示作業)は、非定量的な目視調整であるため、作業者の経験や技能レベルに左右されるという問題もある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ストッカの位置教示作業を簡易化することにより、位置教示作業に掛かる時間を短縮することができる塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アームの先端に塗装機が取り付けられた産業用塗装ロボットと、前記塗装機に着脱可能な塗料カートリッジが装着される複数のストッカを有し、前記ストッカに装着されている前記塗料カートリッジに対して複数色の塗料を選択的に充填可能な塗料充填装置と、使用済みの前記塗料カートリッジを前記塗装機から取り外して前記塗料充填装置の前記ストッカに装着するとともに、前記塗料が充填された使用前の前記塗料カートリッジを前記ストッカから取り外して前記塗装機に装着する搬送装置とを塗装領域内に設置してなる塗装設備において、個々の前記ストッカの位置を前記搬送装置に教示する塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システムであって、前記搬送装置は、互いに直交する3軸方向に駆動可能な3つの電動アクチュエータからなり、垂直方向に沿って駆動するZ軸用電動アクチュエータをX軸用電動アクチュエータ及びY軸用電動アクチュエータに支持させた構造の駆動装置と、前記Z軸用電動アクチュエータの可動部に設けられ、前記塗料カートリッジを把持可能なチャック装置と、複数の前記ストッカから、位置教示を行う1つのストッカを選択するストッカ選択手段と、前記Z軸用電動アクチュエータの前記可動部に設けられ、選択された前記ストッカの位置を読み取る画像センサと、前記X軸用電動アクチュエータ及び前記Y軸用電動アクチュエータを駆動して、前記画像センサにより読み取った前記ストッカの直上位置まで前記チャック装置を移動させた後、読み取った前記ストッカの直上位置のX座標及びY座標を適切位置座標として定義する適切位置座標定義手段と、定義した前記適切位置座標を登録する操作を作業者に対して促す座標登録手段とを備えることを特徴とする、塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システムをその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明では、ストッカの位置を搬送装置に教示するにあたり、適切位置座標定義手段が、画像センサで読み取ったストッカの直上位置までチャック装置を自動で移動させた後、当該位置のX座標及びY座標を適切位置座標として定義する。そして、座標登録手段が、定義した適切位置座標を登録する操作を作業者に対して促す。その結果、ストッカの位置教示作業において、作業者は、適切位置座標を登録する操作のみを行えば済むようになるため、位置教示作業が簡易化される。よって、作業者の経験や技能レベルに左右されることなく位置教示作業を行うことができ、位置教示作業に掛かる時間を短縮することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記3つの電動アクチュエータはそれぞれ防爆構造及び制振機構を有するとともに、前記画像センサは防爆構造を有することをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、3つの電動アクチュエータ及び画像センサが防爆構造を有するため、塗料ミストが充満する環境での使用に適している。また、3つの電動アクチュエータは、防爆構造を有することで重くなっているため、停止時に揺れが収まりにくい。なお、請求項2では、各電動アクチュエータが制振機構を有するため、制振機構によって各電動アクチュエータの揺れを抑えることができる。よって、各電動アクチュエータを素早く移動させたとしても確実に停止させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記可動部において前記チャック装置よりも高い位置には、センサ支持ブラケットが突設され、前記画像センサは、斜め下方を向く状態で前記センサ支持ブラケットに支持されていることをその要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、画像センサを斜め下方に向けた状態で支持するセンサ支持ブラケットが、Z軸用電動アクチュエータの可動部においてチャック装置よりも高い位置に配置される。その結果、画像センサの向きが鉛直方向に対して鋭角をなすため、画像センサは、ストッカの直上に近い位置からストッカを読み取ることが可能となる。従って、読み取ったストッカの形状が変形してしまう、といった斜め撮影に起因する問題を最小限に抑えることができるため、画像センサの読み取り精度が向上する。また、画像センサは、Z軸用電動アクチュエータに直接取り付けられるのではなく、Z軸用電動アクチュエータの可動部に突設されたセンサ支持ブラケットを介してZ軸用電動アクチュエータに取り付けられる。その結果、Z軸用電動アクチュエータを含む3つの電動アクチュエータの搬送時の振動(搬送揺れ)が画像センサに伝わりにくくなるため、画像センサが読み取ったストッカにブレが生じにくくなる。即ち、画像センサを上記した態様で上記した位置に取り付けることにより、ストッカの位置を画像センサを用いて高精度で読み取ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したように、請求項1~3に記載の発明によると、ストッカの位置教示作業を簡易化することにより、位置教示作業に掛かる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における塗料カートリッジストッカ用の位置教示システムを示す概略構成図。
図2】塗装設備を示す側面図。
図3】塗装設備を示す正面図。
図4】塗料充填装置を示す概略平面図。
図5】ストッカを斜め上方から見たときの状態を示す概略図。
図6】塗料カートリッジ、Z軸用電動アクチュエータ、チャック装置及び画像センサを示す側面図。
図7】塗料カートリッジ、Z軸用電動アクチュエータ、チャック装置及び画像センサを示す正面図。
図8】従来技術における塗装設備を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1図3に示されるように、本実施形態における塗料カートリッジ用ストッカ32(以下「ストッカ32」という)の位置教示システム1は、塗装設備10において、個々のストッカ32の位置を搬送装置40に教示するシステムである。位置教示システム1は、一部が張り出した状態で、自動車ボディを塗装するための塗装ライン内に設けられる。塗装設備10は、産業用塗装ロボット11、塗料充填装置31及び搬送装置40を塗装領域(図示略)内に設置してなり、塗装ラインに組み込まれている。
【0017】
産業用塗装ロボット11は、本体部12と、本体部12から延びるアーム13と、アーム13の先端に取り付けられる塗装機14とを備えている。塗装機14を構成する機体15の下面側には、回転霧化頭16が回転可能に設けられている。一方、機体15の上端面には、円筒状をなす塗料カートリッジ装着部位17が突設されている。塗料カートリッジ装着部位17には、塗料が充填された塗料カートリッジ21が着脱可能に装着されている。なお、塗料カートリッジ21は、内部にタンク(図示略)を有する本体22と、本体22の上端中央部に突設された突出部23と、本体22の下端中央部に突設されたフィードチューブ24とを含んで構成されている。なお、塗料カートリッジ21内の塗料は、フィードチューブ24を通過して回転霧化頭16に供給される。そして、回転霧化頭16が回転することにより、塗料が霧化されて自動車ボディに噴霧される。
【0018】
図1図3に示されるように、塗料充填装置31の上面31aには、円筒状をなす複数のストッカ32(図4図5参照)が突設されている。各ストッカ32は、上面31aの面方向に沿って縦横に配置されている。各ストッカ32の中心部には、フィードチューブ挿通孔33が配置されている。各ストッカ32には、塗料カートリッジ21が着脱可能に装着されている。また、塗料充填装置31の側方(図4では下方)には、複数の充填用ストッカ34が一直線上に配置されている。塗料充填装置31は、充填用ストッカ34に装着されている塗料カートリッジ21に対して複数色の塗料を選択的に充填可能となっている。
【0019】
また、搬送装置40は、使用済みの塗料カートリッジ21を塗装機14から取り外して塗料充填装置31のストッカ32に装着するとともに、塗料が充填された使用前の塗料カートリッジ21をストッカ32から取り外して塗装機14に装着するための装置である。搬送装置40は、駆動装置41、チャック装置51a,51b及びビジョンセンサ61(画像センサ)を備えている。
【0020】
図1図3に示されるように、駆動装置41は、互いに直交する3軸方向に駆動可能な3つの電動アクチュエータ(X軸用電動アクチュエータ42a、Y軸用電動アクチュエータ42b、Z軸用電動アクチュエータ42c)からなる。駆動装置41は、垂直方向に沿って駆動するZ軸用電動アクチュエータ42cを、水平方向に沿って駆動するX軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに支持させた構造を有している。なお、X軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bは、産業用塗装ロボット11よりも高い位置に設置されている。一方、Z軸用電動アクチュエータ42cは、産業用塗装ロボット11とほぼ同じ高さにあるものの、上端が塗装機14及びチャック装置51a,51bよりも高い位置に設置されている。
【0021】
詳述すると、X軸用電動アクチュエータ42aは、X軸方向(図2では左右方向)に沿って延びるレール部43aを備えており、レール部43aには、同レール部43aの延出方向に移動するスライダ部44aが設けられている。X軸用電動アクチュエータ42aは、レール部43aを、複数の支持柱71を介してフレーム70の天井部72に支持させた構造を有している。また、Y軸用電動アクチュエータ42bは、Y軸方向(図3では左右方向)に沿って延びるレール部43bを備えており、レール部43bには、同レール部43bの延出方向に移動するスライダ部44bが設けられている。Y軸用電動アクチュエータ42bは、レール部43bを、支持柱73を介してX軸用電動アクチュエータ42aのスライダ部44aに支持させた構造を有しており、水平方向に沿って移動するようになっている。さらに、Z軸用電動アクチュエータ42cは、Z軸方向(図2図3では上下方向)に沿って延びるレール部43cを備えており、レール部43cには、同レール部43cの延出方向に沿って移動するスライダ部44c(可動部)が設けられている。Z軸用電動アクチュエータ42cは、Y軸用電動アクチュエータ42bのスライダ部44bに支持させた構造を有しており、垂直方向に沿って移動するようになっている。また、各レール部43a~43cの側部には、スライダ部44a~44cを移動させるためのモータ(図示略)が取り付けられている。なお、各モータは、それぞれ防爆構造を有している。
【0022】
また、各電動アクチュエータ42a~42cは、それぞれ制振機構を有している。本実施形態の制振機構は、X軸用電動アクチュエータ42aの振動を打ち消すような波形で、レール部43aに取り付けられたモータを駆動させることにより、X軸用電動アクチュエータ42aの揺れを抑える制御(制振制御)を行う。また、制振機構は、Y軸用電動アクチュエータ42bの振動を打ち消すような波形で、レール部43bに取り付けられたモータを駆動させることにより、Y軸用電動アクチュエータ42bの揺れを抑える制御(制振制御)を行う。さらに、制振機構は、Z軸用電動アクチュエータ42cの振動を打ち消すような波形で、レール部43cに取り付けられたモータを駆動させることにより、Z軸用電動アクチュエータ42cの揺れを抑える制御(制振制御)を行う。
【0023】
図1図3図6図7に示されるように、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cには、一対のチャック装置51a,51bが並列に設けられている。各チャック装置51a,51bは、図3から見たときに左右一対となっており、それぞれが塗料カートリッジ21を把持可能となっている。各チャック装置51a,51bは、シリンダ52と、互いに接離可能な一対の挟持部材53とを備えている。なお、両挟持部材53が互いに接近した場合、塗料カートリッジ21の突出部23を挟持する挟持状態となる一方、両挟持部材53が互いに離間した場合には、塗料カートリッジ21を挟持しない開放状態となる。
【0024】
また、各チャック装置51a,51bの上端には、図6図7に示されるバネユニット54(衝撃吸収手段)が取り付けられている。また、本実施形態では、一方のチャック装置51bで塗料カートリッジ21を把持したままの状態で、もう一方のチャック装置51aでドッキング動作を行うようになっている。なお、バネユニット54は、コイル状をなす4本の圧縮バネ55と、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cに固定される支持板56と、チャック装置51aのシリンダ52に接続される接続板57とを備えている。そして、圧縮バネ55の両端は、支持板56と接続板57とにそれぞれ当接している。よって、塗料カートリッジ21をストッカ32に装着する際にチャック装置51aに加わる衝撃は、圧縮バネ55が収縮することによって吸収される。
【0025】
図1図3図6図7に示されるように、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cには、上記のビジョンセンサ61が設けられている。ビジョンセンサ61は、選択されたストッカ32の位置を読み取る機能を有している。詳述すると、スライダ部44cに取り付けられたバネユニット54には、センサ支持ブラケット62が突設されている。センサ支持ブラケット62は、チャック装置51aよりも高い位置であって、スライダ部44cとほぼ同じ高さに配置されている。そして、センサ支持ブラケット62にはビジョンセンサ61が取り付けられている。よって、本実施形態のビジョンセンサ61は、左右一対のチャック装置51a,51bのうち、ドッキング専用のチャック装置51aに取り付けられており、チャック装置51aとともに移動可能となっている。また、ビジョンセンサ61は、鉛直方向に対して角度θ1だけ斜め下方を向く状態で、センサ支持ブラケット62に支持されている。なお、本実施形態のビジョンセンサ61は防爆構造を有している。
【0026】
次に、塗装設備10の電気的構成について説明する。
【0027】
図1に示されるように、塗装設備10は、設備全体を統括的に制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、CPU81、メモリ82及び入出力ポート83等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU81は、塗料充填装置31、X軸用電動アクチュエータ42a、Y軸用電動アクチュエータ42b、Z軸用電動アクチュエータ42c、チャック装置51a,51b及びビジョンセンサ61に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0028】
また、CPU81には、塗料充填装置31が有する複数のストッカ32の位置を登録するための登録ボタン84が電気的に接続されている。登録ボタン84は、作業者によって操作されると、オン状態となり、登録信号をCPU81に出力するようになっている。
【0029】
次に、ストッカ32の位置を搬送装置40に教示する方法を説明する。なお、CPU81による以下の一連の制御は、メモリ82に予め記憶されている動作プログラムに基づいて実行される。
【0030】
まず、CPU81は、複数のストッカ32から、位置教示を行う1つのストッカ32を選択する制御(ストッカ選択制御)を行う。具体的に言うと、CPU81は、メモリ82に記憶されている動作プログラムに基づいて、例えば、図4において左上に位置する特定のストッカ32を選択する。即ち、CPU81は、『ストッカ選択手段』としての機能を有している。
【0031】
次に、CPU81は、X軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに駆動信号を出力し、選択した特定のストッカ32の上方位置にチャック装置51aを移動させる制御(チャック装置移動制御)を行う。さらに、CPU81は、ビジョンセンサ61に駆動信号を出力し、特定のストッカ32(被写体)の位置をビジョンセンサ61に読み取らせる制御(読み取り制御)を行う。具体的に言うと、まず、ビジョンセンサ61は、特定のストッカ32において、ストッカ32の外周部分を読み取り、読み取った円C1(図5参照)の外径を検出し、検出した外径に基づいて円C1の中心座標O1(図5参照)を読み取る。具体的に言うと、ビジョンセンサ61は、中心座標O1のX座標とY座標とを読み取る。なお、本実施形態では、真円ではない円C1も「円」というものとする。
【0032】
次に、CPU81は、中心座標O1の読み取りが終了すると、読み取ったストッカ32の中心座標O1(X座標及びY座標)をエンコーダー設定値としてメモリ82に記憶する。さらに、CPU81は、メモリ82に記憶したエンコーダー設定値に基づいてX軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに駆動信号を出力し、読み取ったストッカ32の中心座標O1の“直上”位置までチャック装置51aを移動させ、チャック装置51aの位置を微調整する制御を行う(位置微調整制御)。そして、この時点で、CPU81は、チャック装置51aの位置のX座標及びY座標を適切位置座標として定義する制御(適切位置座標定義制御)を行う。即ち、CPU81は、『適切位置座標定義手段』としての機能を有している。
【0033】
さらに、CPU81は、定義した適切位置座標を登録する操作を、作業者に対して促す制御(座標登録制御)を行う。具体的に言うと、CPU81は、報知手段であるスピーカ(図示略)に駆動信号を出力し、適切位置座標を登録する必要がある旨をアラーム等にて報知する制御を行う。また、CPU81は、報知手段である表示装置(図示略)に駆動信号を出力し、適切位置座標の登録を促す画像を表示させる制御を行う。即ち、CPU81は、『座標登録手段』としての機能を有している。そして、作業者によって登録ボタン84が操作されると、CPU81は、定義した適切位置座標をメモリ82に記憶する。この時点で、例えば図4において左上に位置するストッカ32の位置が、チャック装置51a(搬送装置40)に教示される。
【0034】
その後、CPU81は、ストッカ32の位置教示が終了する度に、位置教示が終了したストッカ32に隣接する別のストッカ32に対して、上記したストッカ選択制御、チャック装置移動制御、読み取り制御、位置微調整制御、適切位置座標定義制御及び座標登録制御を順番に行い、作業者は、登録ボタン84を操作してストッカ32の位置を教示させる。そして、全てのストッカ32での教示が終了すると、塗料カートリッジ21をストッカ32に装着する作業や、塗料カートリッジ21をストッカ32から取り外す作業を、スムーズに行うことが可能となる。
【0035】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態のストッカ32の位置教示システム1では、ストッカ32の位置をチャック装置51a(搬送装置40)に教示するにあたり、CPU81が、ビジョンセンサ61で読み取ったストッカ32の直上位置までチャック装置51aを自動で移動させた後、当該位置のX座標及びY座標を適切位置座標として定義する。そして、CPU81が、定義した適切位置座標を登録する操作を作業者に対して促す。その結果、作業者は、ストッカ32の位置教示作業において、適切位置座標を登録する操作(即ち、登録ボタン84の操作)のみを行えば済むようになるため、位置教示作業が簡易化される。よって、作業者の経験や技能レベルに左右されることなく位置教示作業を行うことができ、位置教示作業に掛かる時間を短縮することが可能となる。
【0037】
(2)本実施形態では、位置教示を行うストッカ32を選択する処理から、定義した適切位置座標を登録する操作を作業者に対して促す処理までの一連の動作が、メモリ82に記憶されている動作プログラムに基づいて行われる。その結果、ストッカ32の位置教示作業が標準化されるため、位置教示作業が確実に簡易化される。
【0038】
(3)本実施形態では、ビジョンセンサ61を斜め下方に向けた状態で支持するセンサ支持ブラケット62が、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cにおいてチャック装置51aよりも高い位置に配置される。その結果、ビジョンセンサ61のレンズ面から焦点(チャック装置51aの下方に位置するストッカ32)までの高さ(焦点距離)が大きくなり、ビジョンセンサ61の向きが鉛直方向に対して鋭角(角度θ1)をなすようになる。このため、ビジョンセンサ61は、ストッカ32の直上に近い位置からストッカ32を読み取ることが可能となる。従って、読み取ったストッカ32の形状が、本来は円形状であるにもかかわらず楕円形状になってしまうため、ビジョンセンサ61の読み取りミスが生じやすい、といった斜め撮影に起因する問題を最小限に抑えることができる。
【0039】
(4)例えば、ビジョンセンサ61を、塗装設備10外(具体的には、フレーム70の柱部74の上端部付近)の位置(図2の領域R1参照)に取り付けることが考えられる。また、ビジョンセンサ61を、フレーム70の天井部72において、塗料カートリッジ装着部位17の直上位置(図2の領域R2参照)と、塗料充填装置31のストッカ32群(チャック装置51a)の直上位置(図2の領域R3)とにそれぞれ取り付けることが考えられる。しかし、ビジョンセンサ61を領域R1に取り付ける場合には、塗料カートリッジ装着部位17及びストッカ32群のいずれか一方しか読み取ることができないという問題がある。また、ビジョンセンサ61を領域R2,R3に取り付ける場合には、2つのビジョンセンサ61が必要になるため、塗装設備10の製作コストが上昇してしまうという問題がある。しかも、領域R3内のビジョンセンサ61とストッカ32群との間にY軸用電動アクチュエータ42bやチャック装置51a等が位置するため、領域R3内のビジョンセンサ61でストッカ32の位置を読み取ることは困難である。一方、本実施形態のビジョンセンサ61は、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cに突設されたセンサ支持ブラケット62に対して斜め下方を向く状態で支持されているため、上記の問題を解消することができる。
【0040】
(5)本実施形態では、各電動アクチュエータ42a~42cが有する制振機構が、スライダ部44a~44cを移動させるためのモータの駆動態様を制御することにより、電動アクチュエータ42a~42cの揺れを抑えるようになっている。このため、各電動アクチュエータ42a~42cが制振機構を有していたとしても、電動アクチュエータ42a~42cは重くならずに済む。
【0041】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0042】
・上記実施形態のCPU81は、特定のストッカ32に対して、ストッカ32の位置を読み取らせる制御(読み取り制御)や適切位置座標の登録を促す制御(座標登録制御)等を行った後、特定のストッカ32に隣接する別のストッカ32に対して、読み取り制御や座標登録制御等を行っていた。しかし、CPU81は、1個おきまたは複数個おきのストッカ32に対して読み取り制御や座標登録制御等を行ってもよい。また、CPU81は、位置教示を行うストッカ32をランダムに選択し、選択したストッカ32に対して読み取り制御や座標登録制御等を行ってもよい。
【0043】
・上記実施形態のCPU81は、特定のストッカ32に対して、ストッカ32の位置を読み取らせる制御(読み取り制御)や適切位置座標の登録を促す制御(座標登録制御)等を行った後、別のストッカ32に対して、読み取り制御や座標登録制御等を行っていた。しかし、CPU81は、全てのストッカ32の位置に対して読み取り制御を行った後、全てのストッカ32に対して座標登録制御を行うようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態のビジョンセンサ61は、ストッカ32の位置を読み取るためのものであった。しかし、ビジョンセンサ61は、塗料の漏れ等に起因する汚れを検出する機能や、塗料カートリッジ21やストッカ32の破損等の他の異常を検出する機能をさらに有していてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、塗料充填装置31、X軸用電動アクチュエータ42a、Y軸用電動アクチュエータ42b、Z軸用電動アクチュエータ42c、チャック装置51a,51b及びビジョンセンサ61の制御を1つのCPU81で制御していたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
【0046】
・上記実施形態は、自動車ボディを塗装するための塗装設備10において、ストッカ32の位置を搬送装置40に教示するシステムに具体化するものであったが、バンパーなどの自動車部品やそれ以外の部品を塗装する塗装設備において、ストッカ32の位置を搬送装置40に教示するシステムに具体化してもよい。
【0047】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0048】
(1)請求項3において、前記センサ支持ブラケットは、前記Z軸用電動アクチュエータの可動部に突設されていることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0049】
(2)請求項2において、前記3つの電動アクチュエータは制振制御を行うことを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0050】
(3)請求項1乃至3のいずれか1項において、左右一対の前記チャック装置が並列で設けられ、一方の前記チャック装置で前記塗料カートリッジを把持したままの状態で、もう一方の前記チャック装置でドッキング動作を行うことを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0051】
(4)請求項1乃至3のいずれか1項において、左右一対の前記チャック装置が並列で設けられ、一方の前記チャック装置はドッキング専用のものであり、もう一方の前記チャック装置は、ドッキング状態にあるものを取り外して返却する返却専用のものであることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0052】
(5)技術的思想(4)において、前記画像センサは、左右一対の前記チャック装置のうち、前記ドッキング専用の前記チャック装置に取り付けられていることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0053】
(6)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記X軸用電動アクチュエータ及び前記Y軸用電動アクチュエータは、前記産業用塗装ロボットよりも高い位置に設置され、前記Z軸用電動アクチュエータは、前記塗装機及び前記チャック装置よりも高い位置に設置されていることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0054】
(7)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記塗料カートリッジは、内部にタンクを有する本体とその下端中央部に突設されたフィードチューブとを含んで構成されていることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0055】
(8)請求項3において、前記画像センサは、前記チャック装置とともに移動可能であるとともに、斜め下方を向いて配置されていることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0056】
(9)請求項3において、前記センサ支持ブラケットは、前記チャック装置よりも高い位置であって、前記可動部とほぼ同じ高さに位置していることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【0057】
(10)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記位置教示システムは、一部が張り出した状態で塗装ライン内に設けられることを特徴とする塗料カートリッジ用ストッカの位置教示システム。
【符号の説明】
【0058】
1…位置教示システム
10…塗装設備
11…産業用塗装ロボット
13…アーム
14…塗装機
21…塗料カートリッジ
31…塗料充填装置
32…ストッカ(塗料カートリッジ用ストッカ)
40…搬送装置
41…駆動装置
42a…電動アクチュエータとしてのX軸用電動アクチュエータ
42b…電動アクチュエータとしてのY軸用電動アクチュエータ
42c…電動アクチュエータとしてのZ軸用電動アクチュエータ
44c…Z軸用電動アクチュエータの可動部としてのスライダ部
51a,51b…チャック装置
61…画像センサとしてのビジョンセンサ
62…センサ支持ブラケット
81…ストッカ選択手段、適切位置座標定義手段及び座標登録手段としてのCPU
図1
図2
図3
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図7
図8