(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】回転式容積ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/46 20060101AFI20240228BHJP
F04C 2/46 20060101ALI20240228BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F04C18/46
F04C2/46
F04C29/00 B
(21)【出願番号】P 2020101145
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000127352
【氏名又は名称】株式会社イワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅井 進
(72)【発明者】
【氏名】舘野 一博
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-099419(JP,A)
【文献】特開2012-189002(JP,A)
【文献】実開昭48-043204(JP,U)
【文献】特開昭48-052005(JP,A)
【文献】特開2002-285983(JP,A)
【文献】特開平07-180678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/344、18/356、
18/38、 18/40、18/46
F04C 2/38、 2/40、 2/46、
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送流体の吸込口及び吐出口を有し、前記吸込口を介して前記移送流体を内部に導入し回転によるポンプ動作によって前記移送流体を前記吐出口に移送して前記吐出口から吐出するポンプ本体と、
回転軸を有し、前記回転軸を介して前記ポンプ本体にポンプ動作を生じさせるための回転駆動力を付与する回転駆動機構と、
を備えた回転式容積ポンプにおいて、
前記ポンプ本体は、
前記吸込口及び前記吐出口と連通する環状空間からなるポンプ室を有するシリンダハウジングと、
前記回転駆動機構の回転軸に偏心軸を介して装着され、前記ポンプ室の内周面と接触しながら偏心回転可能に前記ポンプ室内に収容された円筒状のロータと、
前記ロータの外周面の一部と接触し前記ポンプ室を吸込室と圧縮室とに分けると共に、前記ロータの偏心回転に応じて揺動可能に設けられたスイングレバーと、
を備え
、
前記スイングレバーは、
前記ロータの外周面との接触部の移動軌跡を示す曲線が、前記ロータの下死点から上死点までの前記接触部に対応する部位の移動軌跡を示すハイポサイクロイド曲線と近似するように揺動する
ことを特徴とする回転式容積ポンプ。
【請求項2】
前記ロータは、
前記回転駆動機構の回転軸に取り付けられた前記偏心軸に軸受けを介して装着され、偏心回転時に転動しながら前記ポンプ室の内周面と接する
ことを特徴とする請求項1記載の回転式容積ポンプ。
【請求項3】
前記スイングレバーは、
支持軸を中心として揺動し、
前記ロータの外周面との
前記接触部が、前記支持軸の中心と前記回転駆動機構の回転軸の中心とを通る面よりも前記圧縮室側に位置して揺動するように前記シリンダハウジングに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の回転式容積ポンプ。
【請求項4】
前記スイングレバーに、前記ロータを押圧する向きの回転トルクを付与するトルク付与機構を更に備えた
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項記載の回転式容積ポンプ。
【請求項5】
前記トルク付与機構は、
前記シリンダハウジングに設けられた1又は複数の磁石及び前記スイングレバーに設けられた磁石若しくは磁性体、又は前記シリンダハウジングに設けられた1又は複数の磁性体及び前記スイングレバーに設けられた磁石を含み、前記シリンダハウジングと前記スイングレバーとの間の磁気吸引力及び磁気斥力の少なくとも一方により前記回転トルクを付与する
ことを特徴とする請求項
4記載の回転式容積ポンプ。
【請求項6】
前記ロータは樹脂部材からなり、前記スイングレバーは金属部材からなる
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項記載の回転式容積ポンプ。
【請求項7】
前記ポンプ本体は、
前記回転駆動機構の回転軸方向に配置された第1シリンダハウジング及び第2シリンダハウジングと、
前記第1シリンダハウジングのポンプ室に収容された第1のロータ及び前記第2シリンダハウジングのポンプ室に収容された第2のロータと、を有し、
前記第1シリンダハウジングの吸込口と前記第2シリンダハウジングの吸込口は、第1の流路を介して連通し、
前記第1シリンダハウジングの吐出口と前記第2シリンダハウジングの吐出口は、第2の流路を介して連通し、
前記第1のロータと前記第2のロータは、偏心回転の位相が180°異なるように配置されている
ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項記載の回転式容積ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式容積ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ圧縮機(例えば、特許文献1参照)を含む回転式容積ポンプは、例えば環状空間のシリンダ内を偏心回転又は偏心揺動する円筒状のロータと、シリンダ内を吸込室と圧縮室に分けるための、ロータと当接する又は一体のベーンとを備える。一般的に、偏心回転するロータとこれに当接するベーンによってシリンダ内を分ける方式はロータリ式と呼ばれ、偏心揺動するロータとこれに一体のベーンによってシリンダ内を分ける方式はスイングロータリ式と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された従来技術のロータリ式は、ロータとベーンとの当接部(特にベーンの先端のU字部分)において、シール性を確保するためには接触面圧を高くする必要がある。また、従来技術のスイングロータリ式は、ベーンとベーンを支持するブッシュ部において、シール性を確保するためにはクリアランスを小さくする必要がある。
【0005】
このように、ロータリ式及びスイングロータリ式では摺動条件がシビアとなって、ポンプ動作における過大な摺動損失が生じることとなってしまい、特に潤滑剤を用いない無潤滑式のものでは、摺動抵抗の低減を図りつつ高いシール性を確保することは非常に困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低摺動抵抗と高シール性の両立を図ることができる回転式容積ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転式容積ポンプは、移送流体の吸込口及び吐出口を有し、前記吸込口を介して前記移送流体を内部に導入し回転によるポンプ動作によって前記移送流体を前記吐出口に移送して前記吐出口から吐出するポンプ本体と、回転軸を有し、前記回転軸を介して前記ポンプ本体にポンプ動作を生じさせるための回転駆動力を付与する回転駆動機構と、を備えた回転式容積ポンプにおいて、前記ポンプ本体は、前記吸込口及び前記吐出口と連通する環状空間からなるポンプ室を有するシリンダハウジングと、前記回転駆動機構の回転軸に偏心軸を介して装着され、前記ポンプ室の内周面と接触しながら偏心回転可能に前記ポンプ室内に収容された円筒状のロータと、前記ロータの外周面の一部と接触し前記ポンプ室を吸込室と圧縮室とに分けると共に、前記ロータの偏心回転に応じて揺動可能に設けられたスイングレバーと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記ロータは、前記回転駆動機構の回転軸に取り付けられた前記偏心軸に軸受けを介して装着され、偏心回転時に転動しながら前記ポンプ室の内周面と接する。
【0009】
本発明の他の実施形態において、前記スイングレバーは、支持軸を中心として揺動し、前記ロータの外周面との接触部が、前記支持軸の中心と前記回転駆動機構の回転軸の中心とを通る面よりも前記圧縮室側に位置するように前記シリンダハウジングに取り付けられている。
【0010】
本発明の更に他の実施形態において、前記スイングレバーは、前記ロータの外周面との接触部の移動軌跡を示す曲線が、前記ロータの下死点から上死点までの前記接触部に対応する部位の移動軌跡を示すハイポサイクロイド曲線と近似するように揺動する。
【0011】
本発明の更に他の実施形態において、前記スイングレバーに、前記ロータを押圧する向きの回転トルクを付与するトルク付与機構を更に備える。
【0012】
本発明の更に他の実施形態において、前記トルク付与機構は、前記シリンダハウジングに設けられた1又は複数の磁石及び前記スイングレバーに設けられた磁石若しくは磁性体、又は前記シリンダハウジングに設けられた1又は複数の磁性体及び前記スイングレバーに設けられた磁石を含み、前記シリンダハウジングと前記スイングレバーとの間の磁気吸引力及び磁気斥力の少なくとも一方により前記回転トルクを付与する。
【0013】
本発明の更に他の実施形態において、前記ロータは樹脂部材からなり、前記スイングレバーは金属部材からなる。
【0014】
本発明の更に他の実施形態において、前記ポンプ本体は、前記回転駆動機構の回転軸方向に配置された第1シリンダハウジング及び第2シリンダハウジングと、前記第1シリンダハウジングのポンプ室に収容された第1のロータ及び前記第2シリンダハウジングのポンプ室に収容された第2のロータと、を有し、前記第1シリンダハウジングの吸込口と前記第2シリンダハウジングの吸込口は、第1の流路を介して連通し、前記第1シリンダハウジングの吐出口と前記第2シリンダハウジングの吐出口は、第2の流路を介して連通し、前記第1のロータと前記第2のロータは、偏心回転の位相が180°異なるように配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低摺動抵抗と高シール性の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る回転式容積ポンプの全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転式容積ポンプを詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
また、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を附して重複した説明を省略する。更に、実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が実際のものとは一致しない状態で示されている場合や、一部の構成要素につき省略されて示されている場合がある。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転式容積ポンプ(以下、「ポンプ」と呼ぶ。)1の全体構成を示す斜視図、
図2は回転式容積ポンプ1の正面図である。また、
図3は、
図2のA-A線断面図、
図4は
図3のB-B線断面図、
図5は
図3のC-C線断面図であり、
図6は回転式容積ポンプ1の背面図、
図7は
図6のD-D線断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るポンプ1は、例えば移送流体としてのエアをポンプ動作により移送するポンプ本体2と、このポンプ本体2に回転駆動力を付与する回転駆動機構の一部を構成するモータ3とを備える。なお、ポンプ1は、図示しない制御部(コントローラ)に接続され、ポンプ動作を制御され得る。
【0021】
ポンプ本体2は、
図3に示すように、ポンプ本体2内を貫通するように延びるモータ3の回転軸4の軸方向先端側(以下、「前側」、「前方」とも称する。)に設けられた第1シリンダハウジング5と、軸方向基端側(以下、「後側」、「後方」とも称する。)に設けられた第2シリンダハウジング6とを有する。
【0022】
第1シリンダハウジング5及び第2シリンダハウジング6の間には、中央プレート7が配置され、第1シリンダハウジング5の前側及び第2シリンダハウジング6の後側には、それぞれ前側プレート8及び後側プレート9が取り付けられ、これらは貫通する複数のボルト10によって密封状態で固定されている。なお、ボルト10は、図示しないスクリューワッシャー及びプレートワッシャー10a(
図3においては図示省略)を介して、前側プレート8側から取り付けられている。
【0023】
また、前側プレート8は、
図2に示すように、第1シリンダハウジング5に対して位置決めピン11によって位置決めされた上で固定されている。後側プレート9も、
図6に示すように、同様に位置決めピン11によって第2シリンダハウジング6に対して位置決めされた上で固定されている。
【0024】
また、このように構成されたポンプ本体2は、キャップボルト12(
図3参照)によって後側プレート9がモータ3に取り付けられることにより、モータ3に一体的に取り付けられている。なお、第1及び第2シリンダハウジング5,6、並びに各プレート7~9は、例えばアルミニウム等の金属部材からなり、本実施形態の各プレート7~9には、更に膜厚40μmの硬質アルマイト処理が施されている。
【0025】
第1シリンダハウジング5には、
図4に示すように、例えば前方から見て右側の斜め上部に、エアが吸入される吸込口13が形成された第1吸込側ポンプヘッド14がガスケット15を介して取り付けられている。また、第1シリンダハウジング5には、例えば前方から見て左側の斜め上部に、エアが吐出される吐出口16が形成された第1吐出側ポンプヘッド17がガスケット15を介して取り付けられている。
【0026】
一方、第2シリンダハウジング6には、
図5に示すように、例えば前方から見て右側の斜め上部に、第2吸込側ポンプヘッド35がガスケット15を介して取り付けられている。第2吸込側ポンプヘッド35の内部空間35aは、第1シリンダハウジング5の第1吸込側ポンプヘッド14の吸込口13及び内部空間14a(
図4参照)と、第1の流路34(
図4及び
図7参照)を介して連通している。
【0027】
また、第2シリンダハウジング6には、例えば前方から見て左側の斜め上部に、第2吐出側ポンプヘッド37がガスケット15を介して取り付けられている。第2吐出側ポンプヘッド37の内部空間37aは、第1シリンダハウジング5の第1吐出側ポンプヘッド17の吐出口16及び内部空間17a(
図4参照)と、第2の流路36(
図4参照)を介して連通している。
【0028】
なお、第1及び第2の流路34,36は、
図7(吐出側については図示省略)に示すように、例えば第2吸込側及び第2吐出側ポンプヘッド35,37に形成された、第1吸込側及び第1吐出側ポンプヘッド14,17に向けて嵌合可能に延びる管部38の内部に形成されている。管部38の第1吸込側及び第1吐出側ポンプヘッド14,17への嵌合部分にはOリング34aが装着されてシールされている。
【0029】
第1吸込側及び第1吐出側ポンプヘッド14,17並びに第2吸込側及び第2吐出側ポンプヘッド35,37は、それぞれ矩形状の外形を有し、図示しないスクリューワッシャー及びプレートワッシャー18a(
図1、
図2及び
図6参照)を介した複数のボルト18によって、第1及び第2シリンダハウジング5,6に取り付けられている。
【0030】
そして、
図4に示すように、第1シリンダハウジング5の内部には、第1吸込側ポンプヘッド14の内部空間14a及び吸込口13並びに第1吐出側ポンプヘッド17の内部空間17a及び吐出口16と連通する環状空間が形成され、この環状空間内には、回転体である円筒状の第1のロータ20Aが収容されている。
【0031】
一方、
図5に示すように、第2シリンダハウジング6の内部には、第2吸込側ポンプヘッド35の内部空間35a及び第2吐出側ポンプヘッド37の内部空間37aと連通する環状空間が形成され、この環状空間内にも、回転体である円筒状の第2のロータ20Bが収容されている。そして、この環状空間と第1及び第2のロータ20A,20B(以下、これらを総称して「ロータ20」と呼ぶこともある。)の外周面20aとの間の空間によって、第1シリンダハウジング5には第1ポンプ室19が、第2シリンダハウジング6には第2ポンプ室39が形成される。
【0032】
なお、第1及び第2吐出側ポンプヘッド17,37の内部空間17a,37aと第1及び第2ポンプ室19,39との間には、エアが吐出する向きにのみ開くリードバルブ41が設けられている。リードバルブ41は、第1及び第2シリンダハウジング5,6にねじ40によって取り付けられている。
【0033】
ここで、ロータ20は、例えばポリアミドイミド(PAI)樹脂等の樹脂部材からなる。また、ロータ20は、
図4及び
図5に示すように、第1及び第2ポンプ室19,39内において、モータ3の回転軸4に取り付けられた偏心軸ユニット23a(
図3参照)の偏心軸23に、例えば玉軸受け(ボールベアリング)からなる軸受部24及びOリング24aを介して装着されている。モータ3の回転軸4は、前側プレート8に設けられた軸受部8aによって、図中矢印CWで示す方向(時計回りの方向)に回転可能に軸支されている。
【0034】
これにより、ロータ20は、例えば第1及び第2ポンプ室19,39内で、図中矢印CWで示す方向(時計回りの方向)の回転駆動力によって、第1及び第2ポンプ室19,39の内周面19a,39a上を、図中矢印CCWで示す方向(反時計回りの方向)に転動しながら偏心回転する。なお、このとき、ロータ20は、Oリング24aの弾性力によって、第1及び第2ポンプ室19,39の内周面19a,39aを押圧しながら転動するため、後述する吸込室21と圧縮室22とのシール性を確保している。
【0035】
なお、第1のロータ20A及び第2のロータ20Bは、第1及び第2ポンプ室19,39内において偏心回転の位相が180°異なるように配置されている。従って、第1ポンプ室19におけるポンプ動作と、第2ポンプ室39におけるポンプ動作は逆位相となる。
【0036】
また、第1及び第2ポンプ室19,39の上方には、ロータ20の偏心回転に応じて揺動可能なスイングレバー30が設けられている。スイングレバー30は、例えばSUS440系のステンレス等の金属部材からなる。スイングレバー30は、支持軸31によって揺動自在に支持されている。支持軸31は、その軸中心が、モータ3の回転軸4の軸中心を通る垂線上に位置するように配置されている。スイングレバー30は、支持軸31に、例えば固定ピン31a及びセットビス31bにより固定されている。
【0037】
また、支持軸31は、前側プレート8、中央プレート7及び後側プレート9に設けられた複数の軸受部32によって、第1及び第2シリンダハウジング5,6において個別に回動可能に軸支されている。なお、スイングレバー30と軸受部32との間には、揺動時の摩擦低減を図るため、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTEF)樹脂等の樹脂部材からなるプレート部33が配置されている。
【0038】
スイングレバー30は、ロータ20の外周面20aと接することで、第1及び第2ポンプ室19,39を吸込口13側の吸込室21と、吐出口16側の圧縮室22(
図5においては図示省略)とに分割する。吸込室21と圧縮室22とは、ロータ20の回転に伴って、その容積を変化させる。なお、スイングレバー30は、レバー先端側のロータ20の外周面20aとの接触部Cが、支持軸31の中心と回転軸4の中心とを通る面(図示の例では垂直面)よりも圧縮室22側に位置するように、第1及び第2シリンダハウジング5,6に取り付けられている。すなわち、スイングレバー30は、
図4に示すように、最も吸込口13側に振れるロータ20の下死点時であっても、レバー先端側の接触部Cが前述の垂線よりも圧縮室22側に位置するように設けられている。
【0039】
なお、第1及び第2シリンダハウジング5,6の吸込室21側には、このロータ20の上死点時におけるロータ20と第1及び第2シリンダハウジング5,6との衝突を緩衝するための、ゴム等の弾性体からなるダンパ42が設けられている。また、第1及び第2シリンダハウジング5,6のスイングレバー30の基端側を取り囲む部分には、スイングレバー30の基端側と接触して吸込室21と圧縮室22とをシールするラジアルシールユニット43が設けられている。
【0040】
このように設けられたスイングレバー30は、ロータ20の外周面20aとの接触部Cの移動軌跡を示す曲線M1が、ロータ20の下死点から上死点までの接触部Cに対応する部位の移動軌跡を示すハイポサイクロイド曲線M2と近似する(曲線M1≒曲線M2)ように揺動することが望ましい。これにより、圧縮行程でのスイングレバー30とロータ20との摺動を理論上ゼロにすることができるからである。ここで、ハイポサイクロイド曲線M2は、例えば第1及び第2ポンプ室19,39の回転軸4の軸中心からの半径をaとし、ロータ20の外周面20aまでの中心からの半径をbとし、ロータ20の回転角をθとして、半径a>半径b>0である場合に、媒介変数表示x=(a-b)cosθ+bcos{(a-b/b)θ},y=(a-b)sinθ-bsin{(a-b/b)θ}で表すことができる。
【0041】
従って、第1及び第2シリンダハウジング5,6における各ポンプ室19,39、ロータ20及びスイングレバー30の設計に際して、例えばスイングレバー30の支持軸31の中心位置、支持軸31の中心位置から接触部Cまでの距離、及び揺動角等の各種数値を変数とし、スイングレバー30のロータ20との接触部Cの移動軌跡を示す曲線M1を、ロータ20の接触部Cに対応する部位の移動軌跡であるハイポサイクロイド曲線M2に最小二乗法等により近似させて、上記各種変数を求めることにより、スイングレバー30の最適設定値を求めることが可能となる。
【0042】
なお、スイングレバー30とロータ20との接触部Cにおけるシール性をより確実なものとするために、ポンプ本体2には、例えばスイングレバー30に回転トルクを付与するためのトルク付与機構が設けられている。トルク付与機構は、
図4及び
図5に示すように、例えば第1及び第2シリンダハウジング5,6のスイングレバー30の基端側の所定箇所に設けられたネオジム磁石等の複数の磁石44a,44bと、スイングレバー30の基端側において、これら磁石44a,44bとロータ20の上死点時及び下死点時に対向し得る箇所に設けられた磁石44cとからなる。
【0043】
このようなトルク付与機構を更に設けることにより、ロータ20の偏心回転に伴うスイングレバー30の揺動時に磁石44aと磁石44cとの間では異極性による吸引力、磁石44bと磁石44cとの間では同極性による斥力を生じさせる。これにより、
図4中矢印Rで示すような、ロータ20を押圧する向きの回転トルクをスイングレバー30に生じさせることができるので、スイングレバー30とロータ20との接触部Cを確実にシールすることができる。
【0044】
なお、トルク付与機構は、上記の磁石44a~44cによる構成の他に、例えば磁石44aについては、磁石に代えて磁性体を配置した構成としたり、磁石44bを省略して磁石44a,44cのいずれか一方を磁石に代えて磁性体とすることも可能である。
【0045】
次に、このように構成された回転式容積ポンプ1の動作について説明する。
まず、第1シリンダハウジング5に着目する。第1のロータ20Aが上死点から
図4に示す下死点へと移動する行程が吸込行程となる。吸込行程では、吸込口13から移送流体であるエアが吸込室21に導入され、更に圧縮室22側に移送される。この間、圧縮室22も負圧であるため、リードバルブ41が閉状態となり、第1シリンダハウジング5の圧縮室22から吐出口16へのエアの吐出はない。
【0046】
第1のロータ20Aが
図4に示す下死点から上死点に移動する行程が圧縮行程となる。圧縮行程では、リードバルブ41が開状態となり、圧縮室22のエアは、吐出口16から吐出される。第2シリンダハウジング6側では、第1シリンダハウジング5側に対して逆位相のポンプ動作を行う。このため、第1シリンダハウジング5の圧縮室22と第2シリンダハウジング6の圧縮室22とからは交互にエアが吐出され、吐出口16からは連続的にエアが吐出される。
【0047】
本実施形態のポンプ1は、ポンプ本体2が上記のように構成されることにより、従来のロータリ式及びスイングロータリ式と比較して、第1及び第2ポンプ室19,39における各部の摺動抵抗や摺動損失の低減と高いシール性の確保とを両立させることが可能となる。
【0048】
具体的には、ロータ20が偏心軸23にボールベアリングなどの軸受部24を介して装着されることにより、ポンプ動作時において、各ポンプ室19,39内のロータ20が転動しながら偏心回転する。このため、ロータ20の外周面20aは各ポンプ室19,39の内周面19a,39aと擦れることがない。これにより、例えばスイングロータリ式による摺動摩擦と比べて、摩擦抵抗を約1/100とすることができ、摩擦による損失を著しく低減することができる。
【0049】
また、スイングレバー30のロータ20の外周面20aとの接触部Cは、転動するロータ20の外周面20aにスイングレバー30の側部が接触する形式であるため、ロータ20とスイングレバー30との摺動距離を少なくすることができる。特に、接触部Cの移動軌跡を示す曲線M1を、ロータ20の接触部Cと対応する部位の移動軌跡であるハイポサイクロイド曲線M2に近似させるようにすると、ロータ20とスイングレバー30の摺動距離が理論上ゼロになる。とりわけ、両者の密着力が最も高まるロータ20の下死点から上死点に至る圧縮行程で、曲線M1,M2を一致させることができれば、高圧縮時に摺動部において高い摺動抵抗が発生するスイングロータリ式と比べて、摺動による抵抗を著しく低減することができる。
【0050】
更に、例えばロータ20を線膨張係数が低いPAI樹脂により構成し、スイングレバー30を同じく線膨張係数が低いSUS440により構成しているので、高温動作時における動作ロックや摺動抵抗の増加を効果的に防止することができる。従って、いわゆる無潤滑式のポンプ1において、低摺動抵抗と高シール性の両立を実現することができる。また、スイングレバー30のロータ20との接触部Cに、例えばDLC(ダイアモンドライクカーボン)等のコーティングを施せば、更に摺動抵抗を低減することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 回転式容積ポンプ
2 ポンプ本体
3 モータ
4 回転軸
19 第1ポンプ室
20 ロータ
21 吸込室
22 圧縮室
23 偏心軸
30 スイングレバー
31 支持軸
39 第2ポンプ室