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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20240228BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240228BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240228BHJP
   H02H 3/02 20060101ALI20240228BHJP
   H01F 38/32 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01R15/18 C
G01R31/52
G01R33/02 B
H02H3/02 L
H01F38/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020102812
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196259
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今川 尊雄
(72)【発明者】
【氏名】有松 健司
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-316042(JP,A)
【文献】特開2000-162244(JP,A)
【文献】特開2006-300915(JP,A)
【文献】特開平05-029167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 31/52
G01R 33/02
H02H 3/02
H01F 38/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、
主センサと補助センサとを備え、
前記主センサは、前記主回路導体が貫通する環状の第1の磁気コアと、前記第1の磁気コアに巻回された第1の励磁巻線および第1の検出巻線とを備え、
前記補助センサは、主回路導体が貫通する環状の2の磁気コアと、前記第2の磁気コアに巻回され、前記第の励磁巻線と同じ巻数の第2の励磁巻線と、前記第2の磁気コアに巻回された第2の検出巻線とを備え、
前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線はそれぞれの磁気コアを逆位相で励磁するように直列または並列に接続されて励磁回路に接続され
前記第1の検出巻線と前記第2の検出巻線はノイズを打ち消すように並列に接続されて二次高調波検出回路に接続されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、
主センサと補助センサとを備え、
前記主センサは、前記主回路導体が貫通する環状の第1の磁気コアと、前記第1の磁気コアに巻回された第1の励磁巻線および第1の検出巻線とを備え、
前記補助センサは、主回路導体が貫通する環状の第2の磁気コアと、前記第2の磁気コアに巻回され、前記第1の励磁巻線と同じ巻数の第2の励磁巻線とを備え、
前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線はそれぞれの磁気コアを逆位相で励磁するように直列または並列に接続されて励磁回路に接続され、
前記第1の検出巻線は、二次高調波検出回路に接続され、
バイアス用の永久磁石を間に介在して、前記主センサと前記補助センサとを積み重ねて、ケースに収容されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
請求項に記載の電流センサにおいて、
前記主センサ、前記永久磁石および前記補助センサの周囲を取り囲む磁性材料のケースを備えることを特徴とする電流センサ。
【請求項4】
請求項に記載の電流センサにおいて、
前記永久磁石は、環状の前記第1の磁気コアおよび前記第2の磁気コアに円周方向と直交するバイアス磁界を加えることを特徴とする電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電気設備における漏洩電流を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
メガソーラなど太陽光発電設備の普及に伴い、太陽光発電設備における感電保護、火災保護および保守性向上のため、電路への人体の接触、損傷や劣化による漏れ電流の発生を検知する必要がある。
【0003】
このような課題に対し、特許文献1には、環状の磁性体コアにコイルを巻回し、直流電路を磁性体コアに往復で貫通させ、巻回したコイルに交流の励磁電圧を印加し、漏洩電流によるコアの磁気飽和によって発生する二次高調波を検出することにより、漏洩電流を検出する方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-110925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によるセンサでは、環状の磁性体コアにコイルを巻回し、交流で励磁するため、漏電検出対象の電路には励磁によって零相電圧が誘起される。一方で太陽光発電設備では、太陽光モジュールを地上もしくは屋上など広い面積で展開することで大きな電力を得ようとするが、これにより一般的な電気設備より大きい対地静電容量を持つことになる。従来技術によるセンサをこのような大きい対地静電容量を持つ回路に適用した場合、センサの励磁で誘起された零相電圧により、対地静電容量と接地極を経由したループに電流が流れ、センサの動作が阻害されるという問題があった。
【0006】
本発明は、太陽光発電システムなどの対地静電容量に左右されない、安定な電流検出手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電流センサは、上述の課題に対応するため、環状の磁性体コアを二個使用し、それぞれのコアを逆位相で励磁することにより、漏電検出対象の電路に誘起される零相電圧を打ち消し、対地静電容量と接地極を経由したループインピーダンスの影響を受けないようにする。
【0008】
本発明の「電流センサ」の一例を挙げるならば、
主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、
主センサと補助センサとを備え、
前記主センサは、前記主回路導体が貫通する環状の第1の磁気コアと、前記第1の磁気コアに巻回された第1の励磁巻線および第1の検出巻線とを備え、
前記補助センサは、主回路導体が貫通する環状の2の磁気コアと、前記第2の磁気コアに巻回され、前記第の励磁巻線と同じ巻数の第2の励磁巻線と、前記第2の磁気コアに巻回された第2の検出巻線とを備え、
前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線はそれぞれの磁気コアを逆位相で励磁するように直列または並列に接続されて励磁回路に接続され、
前記第1の検出巻線と前記第2の検出巻線はノイズを打ち消すように並列に接続されて二次高調波検出回路に接続されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽光発電システムなどの対地静電容量に左右されない、安定な電流検出手段を提供することが出来る。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における実施例1の電流センサの接続図である。
図2】本発明における実施例2の電流センサの接続図である。
図3】本発明における実施例3の電流センサの構造図である。
図4】従来の技術による電流センサの接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例の説明に先立って、環状の磁性体を用いた直流漏洩電流を検出する従来の技術を説明する。
【0013】
図4は、従来の技術における電流センサの接続図である。従来の技術による電流センサは、軟磁性材料からなる環状の磁気コア11に往復分一対の主回路導体12を貫通した構造とする。環状の磁気コア11には励磁巻線13と検出巻線14が巻回されており、励磁巻線13には励磁回路15が、検出巻線14には二次高調波検出回路16が接続される。そして、励磁巻線13には励磁回路15から交流の励磁電圧が加えられる。主回路に接続された負荷に異常がなく、漏れ電流が流れていない場合は、主回路導体12に流れる電流は互いに逆向きで等しい電流が流れるが、負荷で地絡事故が発生し、漏れ電流が流れることにより主回路導体12に流れる逆方向の電流に差が生じた場合には、磁気コア11の中に電流の差分に応じた磁界が誘起される。このとき、磁気コア11は励磁回路15と励磁巻線13によって励磁されており、検出巻線14には励磁電流に応じた電圧が誘起されているが、磁気コア11の内部に誘起された漏れ電流に基づく磁界によって軟磁性材料からなる磁気コアの磁気特性に偏りが生じ、検出巻線14には二次高調波が誘起される。この二次高調波を二次高調波検出回路16によって検出し、漏洩電流の有無を検出するものである。
【0014】
太陽光発電設備では、大きな電力を得るために太陽光モジュールを広い面積で展開することにより、一般的な電気設備より大きい対地静電容量を持つことになる。従来技術による電流センサをこのような大きい対地静電容量を持つ回路に用いた場合、電流センサの励磁で誘起された零相電圧により、対地静電容量と接地極を経由したループに電流が流れ、電流センサの動作が阻害されるという問題が生じる。
【0015】
本発明は、この問題を解決し、対地静電容量に左右されない安定な電流センサを提供するものである。
【実施例1】
【0016】
図1に、本発明の実施例1の電流センサの接続図を示す。本実施例の電流センサは、主センサ200と補助センサ210から構成されている。主センサ200は、従来の技術による電流センサと同じく、軟磁性材料からなる環状の第1の磁気コア21、往復分一対の主回路導体22、第1の磁気コアに巻回した第1の励磁巻線23と第1の検出巻線24、第1の励磁巻線に接続した励磁回路25、第1の検出巻線に接続した二次高調波検出回路26を構成にもち、その動作原理は同様である。補助センサ210は、第1の磁気コアと同様の環状の第2の磁気コア27を有し、第2の磁気コアには第1の励磁巻線23と等しい巻数の第2の励磁巻線28が巻回されている。第1の励磁巻線23と第2の励磁巻線28とは互いに逆の極性で直列に接続され、励磁回路25に接続される。ここで、「互いに逆の極性で直列に接続され」とは、第1の励磁巻線23により第1の磁気コア21に発生する磁力線と第2の励磁巻線28により第2の磁気コア27に発生する磁力線とが逆方向(逆位相)となるように直列に接続することをいう。そして、主回路導体22は、第1の磁気コア21および第2の磁気コア27を貫通して配置される。
【0017】
太陽光発電設備の直流回路に本実施例の電流センサを使用した場合、電流センサの励磁によって主回路導体22に誘起される電圧は主センサと補助センサとでそれぞれ逆位相となり、互いに打ち消しあう。そのため、零相電圧は発生せず、対地静電容量と接地極を経由したループインピーダンスの影響を受けなくなる。
【0018】
なお、図1では、第1の励磁巻線23と第2の励磁巻線28を互いに逆の極性で直列に接続して励磁したが、第1の励磁巻線23と第2の励磁巻線28を互いに逆の極性で並列に接続して励磁することによっても同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0019】
図2に、本発明の実施例2の電流センサの接続図を示す。実施例1と同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
本実施例では、前記実施例1と同様に、主センサ200の第1の磁気コア21および補充センサ210の第2の磁気コア27を構成に持ち、主回路導体22がこれらを貫通した構造である。それぞれのコアには巻数の等しい第1の励磁巻線23および第2の励磁巻線28を備え、逆極性で直列に接続し、励磁回路25により励磁する。なお、この接続は逆並列であっても良い。
【0021】
本実施例では、主センサ200の第1の磁気コア21に第1の検出巻線24を巻回すとともに、補助センサ210の第2の磁気コア27に第2の検出巻線29を巻回し、それらを逆並列に接続して二次高調波検出回路26に入力する。ここで、「それらを逆並列に接続して」とは、第1の検出巻線24と第2の検出巻線29がノイズを打ち消すように並列に接続することをいう。そして、二次高調波を検出することにより漏洩電流を検出する。
【0022】
本実施例によれば、実施例1の対地静電容量と接地極を経由したループインピーダンスの影響を受けなくする効果に加えて、主回路導体に接続したパワー半導体素子のスイッチングに起因し、対地静電容量を通じて流れるノイズ電流を、二つの検出巻線を逆並列に接続することで短絡して打ち消し、電流センサのSN比を改善することができる。
【実施例3】
【0023】
図3に、本発明の実施例3の電流センサの構造図を示す。図3(a)は上方から見た平面図、図3(b)は図3(a)のA-A断面図である。本実施例の電流センサは、実施例2の電流センサを具体化したものである。電流センサは、円筒形状のケース30を備え、その中央に、主回路導体を通す円筒状の穴31を有している。
【0024】
図3(b)の断面図に示すように、電流センサは、間に永久磁石38を介在して主センサ300と補助センサ310とを積み重ねた構造である。主センサ300は、環状の第1の磁気コア32に第1の励磁巻線33と第1の検出巻線34とを巻回して構成する。補助センサ310は、第1の磁気コア32と同様である環状の第2の磁気コア35に第2の励磁巻線36と第2の検出巻線37とを巻回して構成する。第1の磁気コア32および第2の磁気コア35には、フェライトやNiFe合金(パーマロイ)等の軟磁性材料を用いる。積み重ねた補助センサ310、永久磁石38、主センサ300は、一体として磁性材料のケース30に収納されている。ケース30は、主センサの第1の磁気コア32の上方、主センサの第1の磁気コア32と補助センサの第2の磁気コア35の側方、補助センサの第2の磁気コア35の下方を覆うとともに、穴31の内側に第1の磁気コア32および第2の磁気コア35の内周部を覆う位置まで伸びている。第1の磁気コア32と第2の磁気コア35の間に挿入した永久磁石38は、環状の磁石であり、図の上下方向に第2の磁気コア35から第1の磁気コア32に向かって磁化されている。永久磁石から出た磁束は、図に矢印で示すように、穴31の内側の磁性材料からなるケース30に向かって流れる。これにより、環状の第1の磁気コア32および第2の磁気コア35に円周方向と直交するバイアス磁界を加えることにより、磁気コアの保磁力を低く保ち、大きな地絡電流によるセンサ動作点の変化を防止する。
【0025】
主センサの第1の励磁巻線33と補助センサの第2の励磁巻線36とは、センサ内で逆の極性で直列または並列に接続しても良いし、それぞれの端子をセンサ外へ出しておき、センサ外の配線で逆の極性で直列または並列に接続しても良い。また、主センサの第1の検出巻線34と補助センサの第2の検出巻線37とは、センサ内で逆並列接続しても良いし、それぞれの端子を素子外へ出しておき、センサ外の配線で逆並列接続しても良い。
【0026】
本実施例では、ケース30を磁性材料で形成することにより、磁束の通る磁気回路ヨークと兼用したが、非磁性材料からなるケースとしてもよい。
【0027】
本実施例の電流センサによれば、主センサと補助センサを積層して1つのケース内に収容したので、本発明の電流センサを1つの素子として小型化することができる。また、間にバイアス磁界印加用の永久磁石を介在して、主センサと補助センサの積み重ね構造とすることにより、単一の永久磁石で2つの磁気コアにバイアス磁界を印加することができ、コスト増を抑え、小型化した電流センサ素子を提供することができる。
【0028】
本実施例では、実施例2の電流センサを具体化したセンサについて説明したが、実施例1の電流センサとするには、第2の検出巻線を除けばよい。
【符号の説明】
【0029】
11…磁気コア、12…主回路導体、13…励磁巻線、14…検出巻線、15…励磁回路、16…二次高調波検出回路、
21…第1の磁気コア、22…主回路導体、23…第1の励磁巻線、24…第1の検出巻線、25…励磁回路、26…二次高調波検出回路、27…第2の磁気コア、28…第2の励磁巻線、29…第2の検出巻線、
30…ケース、31…穴、32…第1の磁気コア、33…第1の励磁巻線、34…第1の検出巻線、35…第2の磁気コア、36…第2の励磁巻線、37…第2の検出巻線、
200…主センサ、210…補助センサ、300…主センサ、310…補助センサ。
図1
図2
図3
図4