(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造及び床版取替え方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20240228BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240228BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
E01D24/00
(21)【出願番号】P 2020111702
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592173124
【氏名又は名称】日本ファブテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和志
(72)【発明者】
【氏名】田中 博一
(72)【発明者】
【氏名】山本 将士
(72)【発明者】
【氏名】大久保 宣人
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063617(JP,A)
【文献】特開2017-036554(JP,A)
【文献】特開2016-008410(JP,A)
【文献】特開平08-284116(JP,A)
【文献】特開2007-162341(JP,A)
【文献】特開2014-177767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延在するプレキャスト鋼コンクリート合成床版が前記第一方向に直交する第二方向に隣り合って配置された前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしを前記第二方向に接合するプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造であって、
前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版は、
コンクリート部と、
該コンクリート部を支持し、前記コンクリート部の端面よりも前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版側に突出する張出し片を有する底鋼板と、を有し、
前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしを接合する接合手段を備え、
該接合手段は、
前記コンクリート部に埋設され、該コンクリート部の端面から前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版側に突出する継手部を有する主鉄筋と、
前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記張出し片どうしにまたがって配置され、該張出し片に固定された添接板と、
前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記コンクリート部の端面どうしの間に配置される接合鉄筋と、
前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記コンクリート部の端面どうしの間に充填され、前記継手部及び前記接合鉄筋が埋設された間詰めコンクリート部と、を有
し、
前記継手部は、前記第二方向に延びる継手延出部と、該継手延出部の端部から上方または下方に折曲された継手折曲部と、を有し、
前記接合鉄筋は、前記第二方向に延びる接合直筋部と、該接合直筋部の両端部から上方または下方に折曲された接合折曲部と、を有し、
前記接合鉄筋は、前記継手部の前記第一方向の少なくとも一方側に、前記継手部に沿って隣接配置されていることを特徴とするプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を用いた床版取替え方法であって、
前記第二方向に隣り合う既設床版のうち一方の前記既設床版側を床版取替え領域とするとともに、他方の前記既設床版側を床版取替え不可領域とする工程と、
前記一方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、
前記新設のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側を床版取替え不可領域とするとともに、前記他方の既設床版側を床版取替え領域とする工程と、
前記他方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、
前記新設のプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしを前記接合手段で接合する接合する工程と、を備えることを特徴とすることを特徴とする床版取替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造及び床版取替え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路橋や鉄道橋等の床版の取替工事では、例えば特許文献1に記載されるように、取り替えを行う床版全面を撤去し、新たな床版を設置する全断面床版取替工法による工事が一般的に知られている。このような床版としては、例えば鋼板とコンクリートとが一体形成された合成床版(鋼コンクリート合成床版)等のプレキャストコンクリート部材(PCa部材)がある。この工法による工事を行う際には、床版の全面通行止めにする必要がある。
【0003】
重交通路線において床版の取替え工事を行う場合には、周辺道路が渋滞する等交通事情が悪化するため、全面通行止めにすることが困難と想定される。そこで、全面通行止めではなく、床版の一部を通行止めにする工法が行われるようになってきている。
【0004】
PCa床版による床版分割取替工法の工事としては、例えば特許文献2に記載されるような主桁のウェブ部分から切断する工法や、特許文献3に記載れるような一次施工部及び二次施工部の床版をポストテンション用PC緊張材で緊張する工法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-264040号公報
【文献】特開2007-239365号公報
【文献】特開2015-151768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2,3に記載された床版分割取替え工法では、床版だけでなく主桁のウェブ部分から切断する必要があったり、床版を部分的に取り替えた後に、それぞれの床版にわたってプレストレスコンクリート緊張材(PC緊張材)を挿通し、ポストテンションを導入したりする必要がある。このため、全断面床版取替え工法に比べて、工期や工事費が増大するという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、工期を短縮して床版の取替え工事を行うことができるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造及び床版取替え方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造は、第一方向に延在するプレキャスト鋼コンクリート合成床版が前記第一方向に直交する第二方向に隣り合って配置された前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしを前記第二方向に接合するプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造であって、前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版は、コンクリート部と、該コンクリート部を支持し、前記コンクリート部の端面よりも前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版側に突出する張出し片を有する底鋼板と、を有し、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしを接合する接合手段を備え、該接合手段は、前記コンクリート部に埋設され、該コンクリート部の端面から前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版側に突出する継手部を有する主鉄筋と、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記張出し片どうしにまたがって配置され、該張出し片に固定された添接板と、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記コンクリート部の端面どうしの間に配置される接合鉄筋と、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記コンクリート部の端面どうしの間に充填され、前記継手部及び前記接合鉄筋が埋設された間詰めコンクリート部と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように構成されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、第二方向に隣り合って配置されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしが接合手段によって接合される構成である。例えば道路で使用される床版が第二方向の中央で二分割されている場合に床版の取り替え工事を行う際に、分割された一方の既設床版側の道路を通行止めとし、他方の既設床版側の道路のみを通行させる片側通行とする。一方の既設床版を取り外した箇所に、新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を設置する。新たに設置した一方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側の道路を通行させ、他方の既設床版側の道路を通行止めとして片側通行とする。他方の既設床版を取り外した箇所に、新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を設置する。新設したプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしの間の接合手段を施工して床版取り替え工事が完了となる。
このように、プレキャスト鋼コンクリート合成床版を用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
また、従来のように床版どうしを緊張材によって緊張する構成ではないため、簡単な施工となる。プレキャスト鋼コンクリート合成床版を取り外す工事の際にも接合構造の間詰めコンクリート部を解体し、接合鉄筋及び添接板を撤去することにより、第二方向に隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしが分割された状態となる。よって、容易に取り外すことができ、工期の短縮を図ることができる。
また、隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版のコンクリート部の端面どうしの間は、接合鉄筋を配置して圧縮鉄筋の接合とされるとともに、プレキャスト鋼コンクリート合成床版の底鋼板の張出し片どうしが添接板によって固定される。よって、接合手段は、プレキャスト鋼コンクリート合成床版と同等以上の性能を有することができる。
【0010】
また、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、前記継手部は、前記第二方向に延在する直筋であってもよい。
【0011】
このように構成されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、主鉄筋の継手部は第二方向に延在する直筋であるため、継手部の製作が容易である。
【0012】
また、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、前記継手部は、前記コンクリート部の端面から前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版側に延びる継手延出部と、該継手延出部から上方または下方に折曲された継手折曲部と、を有していてもよい。
【0013】
このように構成されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、主鉄筋の継手部は、継手延出部に上方または下方に折曲された継手折曲部が設けられた構成である。よって、プレキャスト鋼コンクリート合成床版のコンクリート部の端面から突出する継手部の長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、前記接合鉄筋は、前記継手部に沿って配置されていてもよい。
【0015】
このように構成されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、接合鉄筋が継手部に沿って配置されるいわゆる重ね継手である。重ね継手の構造とすることで、プレキャスト鋼コンクリート合成床版のコンクリート部の端面から突出する継手部の長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、前記接合鉄筋は、前記継手部と前記第一方向に間隔を有して配置されていてもよい。
【0017】
このように構成されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、接合鉄筋が継手部と第一方向に間隔を有して配置されているいわゆるあき重ね継手であるため、接合鉄筋の設置位置の自由度が広がる。
【0018】
また、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、前記接合鉄筋は、前記第二方向に延びる接合直筋部と、該接合直筋部の両端部から上方または下方に折曲された接合折曲部と、を有していてもよい。
【0019】
このように構成されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造では、接合鉄筋は、第二方向に延びる接合直筋部と、接合直筋部の両端部から上方または下方に折曲された接合折曲部と、を有するいわゆる直角フックである。直角フックを用いることで、接合鉄筋が直筋の場合よりも重ね継手の長さを短くすることができる。よって、プレキャスト鋼コンクリート合成床版のコンクリート部の端面から突出する継手部の長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る床版取替え方法は、上記のいずれか一に記載のプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を用いた床版取替え方法であって、前記第二方向に隣り合う既設床版のうち一方の前記既設床版側を床版取替え領域とするとともに、他方の前記既設床版側を床版取替え不可領域とする工程と、前記一方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、前記新設のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側を床版取替え不可領域とするとともに、前記他方の既設床版側を床版取替え領域とする工程と、前記他方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、前記新設のプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしを前記接合手段で接合する接合する工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
このように構成された床版取替え方法では、第二方向に隣り合って配置されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしが接合手段によって接合される構成である。例えば道路で使用される床版が第二方向の中央で二分割されている場合に床版の取り替え工事を行う際に、分割された一方の既設床版側の道路を通行止めとし、他方の既設床版側の道路のみを通行させる片側通行とする。一方の既設床版を取り外した箇所に、新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を設置する。新たに設置した一方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側の道路を通行させ、他方の既設床版側の道路を通行止めとして片側通行とする。他方の既設床版を取り外した箇所に、新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を設置する。新設したプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしの間の接合手段を施工して床版取り替え工事が完了となる。
このように、プレキャスト鋼コンクリート合成床版を用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
また、従来のように床版どうしを緊張材によって緊張する構成ではないため、簡単な施工となる。プレキャスト鋼コンクリート合成床版を取り外す工事の際にも接合構造の間詰めコンクリート部を解体し、接合鉄筋及び添接板を撤去することにより、第二方向に隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版どうしが分割された状態となる。よって、容易に取り外すことができ、工期の短縮を図ることができる。
また、隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版のコンクリート部の端面どうしの間は、接合鉄筋を配置して圧縮鉄筋の接合とされるとともに、プレキャスト鋼コンクリート合成床版の底鋼板の張出し片どうしが添接板によって固定される。よって、接合手段は、プレキャスト鋼コンクリート合成床版と同等以上の性能を有することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造及び床版取替え方法によれば、工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、道路橋を橋軸方向から見た図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た平面図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は(a)に示すA-A線断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は
図2(a)の要部の拡大図、(b)は
図3(a)に示すB-B線断面、(c)は間詰コンクリート部が設けられた状態での
図3(a)に示すB-B線断面である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図4(a)に示すC-C線断面である。
【
図5】本発明の第三実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図5(a)に示すD-D線断面である。
【
図6】本発明の第四実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって接合鉄筋、添接板及び間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図6(a)に示すE-E線断面である。
【
図7】本発明の第五実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図7(a)に示すF-F線断面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造及び床版取替え方法について、図面に基づいて説明する。
【0025】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、道路橋を橋軸方向から見た図である。
図1に示す本実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版(以下の説明では、単に「合成床版1(1A,1B)」という)は、道路橋Tのプレキャスト合成床版に適用されている。
【0026】
ここで、
図1において、紙面に直交する方向で道路橋Tの延在方向を橋軸方向(第一方向)X1とし、紙面の左右方向(橋軸方向X1に直交する方向)で道路橋Tを横断する方向を左右方向(第二方向)X2として以下説明する。
また、合成床版1において、後述する主鉄筋10(
図2参照)が延在する方向を材軸方向という。合成床版1は、材軸方向を左右方向X2に向けた状態で設置されている。
【0027】
本実施形態の道路橋Tは、左右方向X2の中央を挟んだ両側に2列の合成床版1A,1Bが、複数のH形鋼からなる主桁11(
図2参照。以下同じ。)上に固定された状態で設けられている。合成床版1は、製作工場や製作ヤード等の設置現場から離れた場所で製作され、設置現場に搬送されて予め施工されている主桁11上に設置されている。
【0028】
左右方向X2に配置される合成床版1A,1Bどうしは、接合手段2を介して接合されている。左右方向X2に隣り合って配置される合成床版1A,1Bどうしの接合方向は左右方向X2となる。なお、橋軸方向X1に隣り合う合成床版1A,1Bどうしの接合構造も左右方向X2の接合手段2と同様の構成の継手構造により接合されていてもよいが、ここでは詳しい説明を省略する。
【0029】
図2は、合成床版の接合構造100を示す図であって、(a)は上方から見た平面図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は(a)に示すA-A線断面図である。
図2に示すように、接合手段2は、左右方向X2に隣り合う合成床版1A,1Bの接合端面(コンクリート部の端面)1a、1aどうしを施工現場において接合するための継手構造である。接合手段2は、一部分が合成床版1A,1Bの一部を構成し、他の部分が現場で行われる継手施工時に施工される。
【0030】
合成床版1(1A,1B)は、底鋼板12と、コンクリート部13と、主鉄筋10と、不図示の配筋と、を有している。合成床版1は、予め上述した製作工場等において、底鋼板12を型枠の一部として枠状の型枠を形成し、その枠状の型枠内に主鉄筋10及び配筋を配置した後、型枠内にコンクリートを充填して底鋼板12とコンクリートとを一体成形して構成されている。
【0031】
底鋼板12は、鋼鈑で構成さている。底鋼板12は、合成床版1A,1Bのコンクリート部13の底面に位置している。底鋼板12は、コンクリート部13の下方に配置され、コンクリート部13を支持している。底鋼板12は、接合端面1aから突出させた状態で設けられている。底鋼板12には、主桁11に載置される部分で下方に突出する凸面部12bが形成されている。
【0032】
図3は、合成床版の接合構造100を示す図であって、(a)は
図2(a)の要部の拡大図、(b)は
図3(a)に示すB-B線断面、(c)は間詰コンクリート部が設けられた状態での
図3(a)に示すB-B線断面である。
図3に示すように、底鋼板12における接合端面1aよりも隣り合う合成床版1側に突出する突出する部分(張出し片12a)には、後述する高力ボルト22が挿通される不図示のボルト孔が形成されている。張出し片12aの接合端面1aからの張出し長は、左右方向X2に隣接する合成床版1A,1Bのそれぞれの張出し片12aの先端12c、12cどうしを突き合わせた状態あるいはわずかに隙間を有した状態で接合手段2における所定の継手領域(間詰め領域20)が確保できる長さに設定されている。
【0033】
コンクリート部13は、底鋼板12の上面に設けられる。コンクリート部13には、主鉄筋10及び配筋が埋設されている。
【0034】
主鉄筋10は、直筋である。主鉄筋10は、長さ方向を材軸方向(左右方向X2)に向け、上面視で材軸方向に直交する方向(橋軸方向X1)に沿って所定間隔を有して複数本が配列されている。主鉄筋10は、圧縮鉄筋として機能する。
【0035】
主鉄筋10の端部は、接合端面1aから隣り合う合成床版1側に突出している。主鉄筋10における突出する部分を、継手鉄筋(継手部)10aとする。継手鉄筋10aは、左右方向X2に延在する直筋である。左右方向X2に隣り合う合成床版1A,1Bの継手鉄筋10aどうしは、同軸線上に配置されている。なお、継手鉄筋10aの先端には径方向に拡径された機械式定着部(不図示)が設けられていてもよい。
【0036】
配筋は、長さ方向を上面視で材軸方向に直交する方向(橋軸方向X1)に向け、材軸方向に沿って所定間隔を有して複数本が配列されている。
【0037】
合成床版の接合構造100は、接合手段2を備えている。次に、接合手段2の構成について説明する。
【0038】
図2に示すように、接合手段2は、隣り合う合成床版1A,1Bで互いに向き合う接合端面1a、1aどうしの間に所定の間隔を有した間詰め領域20に位置している。
【0039】
図3に示すように、接合手段2は、主鉄筋10と、接合鉄筋3と、添接板4と、間詰めコンクリート部21と、を有している。
【0040】
接合鉄筋3は、間詰め領域20に配置されている。接合鉄筋3は、直筋である。接合鉄筋3は、軸方向を主鉄筋10の軸方向(すなわち左右方向X2)と平行に配置される。
【0041】
接合鉄筋3は、主鉄筋10の継手鉄筋10aに沿うように(継手鉄筋10aに隣接するように)配置されている。接合鉄筋3も、主鉄筋10とともに圧縮鉄筋として機能する。接合鉄筋3と継手鉄筋10aとは、いわゆるダブル重ね継手を構成している。接合鉄筋3の長さ寸法は、接合端面1aどうしの離間寸法よりも短い長さ寸法である。接合鉄筋3と継手鉄筋10aとは、間詰め領域20において同じ高さに配置されている。なお、接合鉄筋3と継手鉄筋10aとが重なって配置される長さ(重ね継手長さ)寸法A1は、基本定着長とする。
【0042】
添接板4は、複数のボルト穴が形成された長尺板状の鋼板である。添接板4は、長さ方向を橋軸方向X1に向けて配置されている。添接板4は、底鋼板12の張出し片12aどうしを上方から架け渡すように重ね合わせて配置されている。添接板4は、高力ボルト22及びナット23等によって張出し片12aに固定されている。
【0043】
間詰めコンクリート部21は、継手鉄筋10a及び接合鉄筋3を埋設するように間詰め領域20に充填されている。間詰めコンクリート部21としては、合成床版1A,1Bと同等以上の圧縮強度を有するコンクリート又はモルタルが使用される。接合手段2の損傷を防ぐことができる構造となっている。
【0044】
本実施形態では、コンクリート部13の底面に底鋼板12を設けた合成床版1において、間詰め領域20で、添接板4と底鋼板12の張出し片12aとを高力ボルト22で接合することで、合成床版1A,1Bどうしを強固に、かつ簡単に固定することができる。また、上述したように、主鉄筋10と接合鉄筋3とによってダブル重ね継手となるため、添接板4を所定の位置に配置した後に接合鉄筋3を配置できることから、添接板4による底鋼板12の接合が容易に行うことが可能な構造となっている。
【0045】
次に、上述した合成床版1A,1Bの床版取替え方法について説明する。
合成床版1A,1Bの床版取替え方法は、
図2に示すように、左右方向X2の一方の既設床版側の道路を通行止めとし、他方の既設床版側の道路のみを通行させる片側通行とする。そして、一方の既設床版を主桁11から取り外した後、その主桁11上に新たな第1合成床版1Aを設置する。
【0046】
続いて、設置した一方の第1合成床版1Aを通行させ、他方の既設床版側の道路を通行止めとして片側通行とする。そして、他方の既設床版を主桁11から取り外した後、その主桁11上に新たな第2合成床版1Bを設置する。その後、新設した第1合成床版1Aと第2合成床版1Bとの間の接合手段2を施工する。接合手段2の施工は、その中央部分の施工領域が確保できれば道路を全面通行としてもよいし、第1合成床版1Aのみの片側通行として施工してもよい。
【0047】
次に、主桁11上に新たな合成床版1A,1Bを設置する施工方法について、さらに具体的に説明する。
先ず、予め工場において底鋼板12とコンクリート部13とが主鉄筋10及び配筋を埋設した状態で一体成形されている合成床版1A,1Bを、双方の間に間詰め領域20を確保した状態で所定位置に配置する。
【0048】
具体的には、一方の第1合成床版1A(紙面左側)を先行して主桁11の所定位置に、不図示の主桁スタッドボルトと第1合成床版1Aの不図示のスタットボルト孔とが合うように位置決めする。次に、第2合成床版1Bを不図示の主桁スタッドボルトと第2合成床版1Bの不図示のスタットボルト孔とが合うように略真上から吊り降ろし、左右方向X2に微調整することで位置決めする。スタッドボルト孔は後でコンクリート等を充填するために余裕をもった大きさになっており、位置の微調整が可能である。
【0049】
次に、間詰め領域20において、隣り合う合成床版1A,1Bの底鋼板12の張出し片12aの上方に添接板4を配置する。添接板4を張出し片12aに、高力ボルト22及びナット23を用いて接合する。
【0050】
間詰め領域20において、接合鉄筋3を主鉄筋10に沿わせるように配置する。間詰め領域20に間詰めコンクリート部21を充填して硬化させることで接合手段2の施工が完了となる。
【0051】
次に、主桁11から合成床版1A,1Bを取り外す施工方法につて説明する。
主桁11から合成床版1A,1Bを取り外す際には、間詰め領域20の間詰めコンクリート部21を解体し、その間詰め領域20内に配置される接合鉄筋3や補強鉄筋5を取り出す。さらに、添接板4を切断等により底鋼板12の張出し片12aから取り外す。これにより、第1合成床版1Aと第2合成床版1Bとが分離した状態となり、各合成床版1A,1Bが一体で施工されている場合に切断作業が必要であることに比較して容易に主桁11から離脱することができる。
【0052】
このように構成された合成床版の接合構造100及び床版取替え方法では、左右方向X2に隣り合って配置された合成床版1A,1Bどうしが接合手段2によって接合される構成である。例えば道路で使用される床版が左右方向X2の中央で二分割されている場合に床版の取り替え工事を行う際に、分割された一方の既設床版側の道路を通行止めとし、他方の既設床版側の道路のみを通行させる片側通行とする。一方の既設床版を取り外した箇所に、新たな合成床版1A(または1B)を設置する。新たに設置した一方の合成床版1A(または1B)側の道路を通行させ、他方の既設床版側の道路を通行止めとして片側通行とする。他方の既設床版を取り外した箇所に、新たな合成床版1B(または1A)を設置する。新設した合成床版1A,1Bどうしの間の接合手段2を施工して床版取り替え工事が完了となる。
【0053】
このように、合成床版1A,1Bを用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0054】
また、従来のように床版どうしを緊張材によって緊張する構成ではないため、簡単な施工となる。合成床版1A,1Bを取り外す工事の際にも間詰めコンクリート部21を解体し、接合鉄筋3及び添接板4を撤去することにより、左右方向X2に隣り合う合成床版1A,1Bどうしが分割された状態となる。よって、容易に取り外すことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0055】
また、隣り合う合成床版1A,1Bのコンクリート部の端面どうしの間は、接合鉄筋3を配置して圧縮鉄筋の接合とされるとともに、合成床版1A,1Bの底鋼板12の張出し片12aどうしが添接板4によって固定される。よって、接合手段2は、合成床版1A,1Bと同等以上の性能を有することができる。
【0056】
また、主鉄筋10の継手鉄筋10aは左右方向X2に延在する直筋であるため、継手鉄筋10aの製作が容易である。
【0057】
また、接合鉄筋3が継手鉄筋10aに沿って配置されるいわゆる重ね継手である。重ね継手の構造とすることで、合成床版1A,1Bの接合端面1aから突出する継手鉄筋10aの長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部21のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0058】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造について、主に
図4を用いて説明する。
以下の実機形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
図4は、本発明の第二実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図4(a)に示すC-C線断面である。
図4に示すように、本実施形態の合成床版(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)1の接合手段2Aでは、接合鉄筋3は、主鉄筋10の継手鉄筋10aと橋軸方向X1に間隔を有して配置されている。接合鉄筋3は、橋軸方向X1に隣り合う継手鉄筋10aどうしの略中央に配置されている。接合鉄筋3と継手鉄筋10aとは、いわゆるあき重ね継手を構成している。接合鉄筋3の長さ寸法は、接合端面1aどうしの離間寸法よりも短い長さ寸法である。接合鉄筋3と継手鉄筋10aとは、間詰め領域20において同じ高さに配置されている。なお、接合鉄筋3と継手鉄筋10aとが重なって配置される長さ(重ね継手長さ)寸法A1は、基本定着長とする。なお、接合鉄筋3は、橋軸方向X1に隣り合う継手鉄筋10aどうしの間であればいずれの箇所に配置されていてもよい。
【0060】
このように構成された合成床版の接合構造100Aにおいても、合成床版1A,1Bを用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0061】
また、接合鉄筋3が継手鉄筋10aと橋軸方向X1に間隔を有して配置されているいわゆるあき重ね継手であるため、接合鉄筋3の設置位置の自由度が広がる。
【0062】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造について、主に
図5を用いて説明する。
【0063】
図5は、本発明の第三実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は図
5(a)に示すD-D線断面である。
図5に示すように、本実施形態の合成床版1(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)の接合手段2Bでは、主鉄筋10Bの継手鉄筋10bは、継手延出部10cと、継手折曲部10dと、を有している。
【0064】
継手延出部10cは、合成床版1A,1Bの接合端面1aから隣り合う合成床版1A,1B側に延びている。継手延出部10cは、左右方向X2に延びている。継手折曲部10dは、継手延出部10cの端部から下方に折曲されている。なお、継手折曲部10dは、間詰めコンクリート部21から突出しなければ継手延出部10cの端部から上方に折曲されていてもよい。
【0065】
合成床版(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)1の接合手段2Bでは、接合鉄筋3Bは、いわゆる直角フックである。接合鉄筋3Bは、接合直筋部3aと、一対の接合折曲部3bと、を有している。
【0066】
接合直筋部3aは、左右方向X2に延在している。接合折曲部3bは、接合直筋部3aの両端部から下方に折曲されている。接合鉄筋3Bは、主鉄筋10Bの継手鉄筋10bに沿うように(継手鉄筋10bに隣接するように)配置されている。接合鉄筋3Bと継手鉄筋10bとの重ね継手長さ寸法A2は、第一実施形態等の継手長さ寸法A1よりも短くすることができる。重ね継手長さ寸法A2を短くすることによって、間詰め領域20Bの左右方向X2の長さを短くすることができる。なお、接合折曲部3bは、間詰めコンクリート部21から突出しなければ接合直筋部3aの端部から上方に折曲されていてもよい。
【0067】
このように構成された合成床版の接合構造100Bにおいても、合成床版1A,1Bを用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0068】
また、主鉄筋10Bの継手鉄筋10bは、継手延出部10cに下方に折曲された継手折曲部10dが設けられた構成である。よって、合成床版1A,1Bの接合端面1aから突出する継手鉄筋10bの長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部21のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0069】
また、接合鉄筋3Bは、左右方向X2に延びる接合直筋部3aと、接合直筋部3aの両端部から下方に折曲された接合折曲部3bと、を有するいわゆる直角フックである。直角フックを用いることで、接合鉄筋3が直筋の場合よりも重ね継手長さ寸法A2を短くすることができる。よって、合成床版1A,1Bの接合端面1aから突出する継手鉄筋10bの長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部21のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0070】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造について、主に
図6を用いて説明する。
【0071】
図6は、本発明の第四実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって接合鉄筋、添接板及び間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図6(a)に示すE-E線断面である。
図6に示すように、本実施形態の合成床版1(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)の接合手段2Cでは、隣り合う合成床版1A,1Bのうち一方(ここでは第1合成床版1A)の接合端面1aから段状に突出する突出部16が設けられた構成となっている。突出部16は、コンクリート部13のうち継手鉄筋10aよりも底鋼板12側の部分が橋軸方向X1の全体にわたって突出している。突出部16の突出長は、底鋼板12の張出し片12aの突出長より短くなるように設定されている。なお、第2合成床版1Bのみに突出部16が設けられたものであってもよいし、第1合成床版1A及び第2合成床版1Bの両方に突出部16が設けられたものであってもよい。
【0072】
このように構成された合成床版の接合構造100Cにおいても、合成床版1A,1Bを用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0073】
また、間詰め領域20に第1合成床版1Aの突出部16が張り出した状態となるため、間詰めコンクリート部21のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0074】
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造について、主に
図7を用いて説明する。
【0075】
図7は、本発明の第五実施形態に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を示す図であって、(a)は上方から見た図であって間詰コンクリート部を省略した図、(b)は
図7(a)に示すF-F線断面である。
図7に示すように、本実施形態の合成床版1(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)の接合手段2Dは、主鉄筋10Bと、接合鉄筋3Bと、添接板4と、間詰めコンクリート部21と、を有している。接合鉄筋3Bは、継手鉄筋10bの橋軸方向X1の両側
に隣接配置されている。
【0076】
このように構成された合成床版の接合構造100Dにおいても、合成床版1A,1Bを用いて床版分割取替え工法を行うことができるため、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を抑えて効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0077】
また、主鉄筋10Bの継手鉄筋10bは、継手延出部10cに下方に折曲された継手折曲部10dが設けられた構成である。よって、合成床版1A,1Bの接合端面1aから突出する継手鉄筋10bの長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部21のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0078】
また、接合鉄筋3Bは、左右方向X2に延びる接合直筋部3aと、接合直筋部3aの両端部から下方に折曲された接合折曲部3bと、を有するいわゆる直角フックである。直角フックを用いることで、接合鉄筋3が直筋の場合よりも重ね継手長さ寸法A2を短くすることができる。よって、合成床版1A,1Bの接合端面1aから突出する継手鉄筋10bの長さを短くすることができ、間詰めコンクリート部21のコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、工期短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0079】
また、接合鉄筋3Bが継手鉄筋10bの両側に配置されているため、継手部分の耐力をより高めることができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0081】
例えば、上記に示す実施形態では、床版が二分割されている場合について説明したが、本発明はこれに限られない。床版が三分割や四分割されている場合にも適用可能である。
【0082】
また、上記に示す実施形態では、接合鉄筋3は、主鉄筋10の継手鉄筋10aに沿うように(継手鉄筋10aに隣接するように)、継手鉄筋10aの橋軸方向X1の一方側に配置されているが、本発明はこれに限られない。接合鉄筋3は、継手鉄筋10aの橋軸方向X1の両側に継手鉄筋10aに隣接配置されていてもよい。接合鉄筋3が継手鉄筋10aの両側に配置されている方が、継手部分の耐力をより高めることができる。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B…合成床版(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)
1a…接合端面(コンクリート部の端面)
2,2A,2B,2C,2D…接合手段
3,3B…接合鉄筋
3a…接合直筋部
3b…接合折曲部
4…添接板
10,10B…主鉄筋
10a,10b…継手鉄筋(継手部)
10c…継手延出部
10d…継手折曲部
12…底鋼板
12a…張出し片
13…コンクリート部
20,20B…間詰め領域
21…間詰めコンクリート部
100,100A,100B,100C,100D…接合構造