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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20240228BHJP
【FI】
H01L33/58
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020118726
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015705
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
(72)【発明者】
【氏名】今井 貞人
(72)【発明者】
【氏名】小山田 和
(72)【発明者】
【氏名】大滝 陽
(72)【発明者】
【氏名】飯野 高史
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 紘幹
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-242513(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108258108(CN,A)
【文献】特開2019-028308(JP,A)
【文献】特開2011-176247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装された発光素子と、
前記基板上において、前記発光素子の周囲に配置された保持材と、
前記発光素子を封止するために、前記保持材の内側に充填された封止材と、を有し、
前記封止材は、前記発光素子から出射される光を波長変換して出射する蛍光材料を含み、
前記保持材は、前記蛍光材料が出射する光のピーク波長に対応する色の補色を有する顔料を含む第1部分、及び、反射材料を含み前記基板と前記第1部分の少なくとも一部との間に配置された第2部分を含み、
前記第1部分は、頂部に平坦部を有し、且つ、前記平坦部の内側端部から前記基板方向に向かって突出した突出部を有する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1部分は、前記基板上に配置され、且つ、前記平坦部の外側端部まで伸延する基部を更に有し、
前記第2部分の一部は、前記突出部、前記平坦部、及び、前記基部で囲まれた空間内に配置されている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光材料から出射される光は黄色を有し、前記顔料は青色を有する、請求項1または2に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のLED(発光ダイオード)素子を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子であるLED素子は、長寿命で優れた駆動特性を有し、さらに小型で発光効率が良く鮮やかな発光色を有することから、近年、照明などに広く利用されている。
【0003】
基板と、基板上に搭載されたLEDチップと、LEDチップの上方の蛍光体層と、第1の層及び第1の層上の第2の層を有する、LEDチップを囲むダム材と、を有する発光装置が開示されている(特許文献1を参照)。この発光装置において、第2の層は、非透光性を有し、蛍光体層の外縁部の上面を覆っている。
【0004】
パッケージ凹部内に配された発光素子と、発光素子を被覆するモールド部材と、パッケージの発光観測面側上面に配された光吸収層とを有する発光装置が開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-72213号公報
【文献】特開2000-183405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9(a)は従来の発光装置90の一例を示す平面図であり、図9(b)は図9(a)のIB-IB線断面図の内、図9(a)の点線領域に対応する部分を示す図である。
【0007】
発光装置90は、LED素子91と、樹脂枠92と、封止樹脂93とを有する。青色LEDであるLED素子91からの青色光と、青色光によって封止樹脂93中に含有される黄色蛍光体を励起させて得られる黄色光とを混合させることで得られる白色光が、発光装置90から出射する。黄色蛍光体を使用する場合、LED素子91が出射した青色光が封止樹脂93内を長く通過すると、光が黄色蛍光体を照射する確率が増加し、発光装置90から出射される光はより黄色くなる。LED素子91から斜めに出射した光L1は、LED素子91の上面から垂直に出射した光L2に比べて、封止樹脂93内を長く通過する。LED素子91から斜めに出射した光L1が樹脂枠92の近傍から発光装置90の外部に出射すると、白色光の周囲に黄色いリング状の光(以下、イエローリングと称することがある)が発生する。イエローリングの発生によって、発光装置90から出射される光の色の均一性が損なわれる。
【0008】
そこで、本発明は、イエローリングの発生を抑制することができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基板と、基板上に実装された発光素子と、基板上において、発光素子の周囲に配置された保持材と、発光素子を封止するために、保持材の内側に充填された封止材と、を有し、封止材は、発光素子から出射される光を波長変換して出射する蛍光材料を含み、保持材は、蛍光材料が出射する光のピーク波長を吸収スペクトルの吸収帯に含む顔料を含む第1部分、及び、反射材料を含み基板と第1部分の少なくとも一部との間に配置された第2部分を含み、第1部分は、頂部に平坦部を有し、且つ、平坦部の内側端部から基板方向に向かって突出した突出部を有する発光装置が提供される。
【0010】
上記の発光装置では、第1部分は、基板上に配置され、且つ、平坦部の外側端部まで伸延する基部を更に有し、第2部分の一部は、突出部、平坦部、及び、基部で囲まれた空間内に配置されていることが好ましい。
【0011】
上記の発光装置では、蛍光材料から出射される光は黄色を有し、顔料は青色を有することが好ましい。
【0012】
上記の発光装置では、顔料は、更に発光素子が出射する光のピーク波長を吸収スペクトルの吸収帯に含むことが好ましい。
【0013】
上記の発光装置では、蛍光材料から出射される光は黄色を有し、発光素子から出射される光は青色を有し、顔料は黒色を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、イエローリングの発生を抑制することができる発光装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)、(b)は発光装置1の平面図、断面図である。
図2】発光装置1の平面図である。
図3】(a)、(b)は吸収スペクトル等を示したグラフである。
図4】(a)、(b)は吸収スペクトル等を示したグラフである。
図5】(a)~(e)は発光装置1の製造方法の概略説明図である。
図6】(a)、(b)は発光装置2の平面図、断面図である。
図7】発光装置2の平面図である。
図8】(a)~(e)は発光装置2の製造方法の概略説明図である。
図9】(a)、(b)は発光装置90の平面図、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、発光装置について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0017】
(第1実施形態)
図1(a)及び図2は第1実施形態に係る発光装置1の上方視した平面図であり、図1(b)は図1(a)においてAA´で示した位置における断面図である。
【0018】
発光装置1は、主要な構成要素として、実装基板10、回路基板15、複数のLED素子30、ダム材40および封止材50を有する。発光装置1は、例えば、投光器、高天井照明、スタジアムの照明・イルミネーションなどの光源装置のLED光源として使用され、白色光を出射する。ただし、発明装置1の発光色は、白色以外であっても良い。
【0019】
なお、図1(b)では、断面部分における要素のみを示し、断面部分よりも奥にある要素は、図示を分かり易くするために表示を省略している。また、発光装置1の最上層には蛍光体粒子を含有し且つ透光性を有する封止材50が存在するが、便宜上下層の部分は観察可能であるものとして、図1(a)では下層の部分を実線で示している。また、ダム材40も不透明であるが、図1(a)では半透明であるものとして図示している。一方、図2(b)では封止材50及びダム材40の下層の部分は図示されていない。
【0020】
図1に示す様に、実装基板10は、その上面に複数のLED素子30が実装される平坦なアルミニウム製の基板であり、一例として正方形の形状を有する。実装基板10は、セラミック製の基板でもよい。また、実装基板10の上面には、不図示の銀層などの高反射処理層(反射層)が形成されている。反射層は、誘電体多層膜のような増反射膜でも良い。第1端子電極21及び第2端子電極23が設けられている対角線上の2つの頂点とは異なる対角線上の2つの角部付近に、発光装置1を固定するための貫通穴が設けられても良い。
【0021】
実装基板10の上面には、円形の開口部16を有する回路基板15が接着剤により付着している。回路基板15は、ガラスエポキシ素材で形成された絶縁性の基板である。回路基板15の上面には、配線パターンが形成されている。配線パターンは、円弧形状の第1電極20、第1電極20と電気的に接続されている第1端子電極21、円弧形状の第2電極22、及び、第2電極22と電気的に接続されている第2端子電極23を含んでいる。配線パターンは、例えば、銅上にニッケル、金メッキをして形成される。
【0022】
第1端子電極21及び第2端子電極23は、実装基板10の対角線上で向かい合う2つの頂点付近に形成されている。第1端子電極21はカソード(負)電極であり、第2端子電極23はアノード(正)電極であり、これらに外部電源から電圧が印加されることによって、LED素子30に通電されて、発光装置1は発光する。なお、第1端子電極21及び第2端子電極23付近の参照符号24及び25は、第1端子電極21及び第2端子電極23の極性を示すパターンであり、配線パターンではないが、配線パターンと同じ金メッキ層で形成されている。
【0023】
回路基板15の上面は、第1端子電極21、第2端子電極23、及び、極性パターン24、25の表面以外は、第1端子電極21及び第2端子電極23間の短絡防止等の為に、不図示のソルダーマスクによって被膜されている。
【0024】
実装基板10上に実装された複数のLED素子30は金線のボンディングワイヤ(以下、単にワイヤという)32で相互に接続され、更にワイヤで第1電極20及び第2電極22とも接続されている。図1の例では、LED素子30は、5個ずつ5列並列に、第1電極20及び第2電極22間に接続されているが、LED素子の直列の個数、並列の列数は任意であって、他の数であっても良い。
【0025】
LED素子30は、発光素子の一例であり、例えば発光波長帯域が450~460nm程度の青色光を発光する青色LEDである。前述した様に、発光装置1では、複数(5×5=25個)のLED素子30が実装基板10上に実装されており、これらは同じ波長の青色光を発光する。ただし、LED素子30は、青色LEDに限らず、例えば紫色LEDまたは近紫外LEDであっても良く、その発光波長帯域は、紫外域を含む200~460nm程度の範囲内であっても良い。
【0026】
LED素子30は上面に一対の素子電極を有する。図1に示すように、隣接するLED素子30の素子電極は、ワイヤ32により直列に接続され、さらに、両端のLED素子30の素子電極は、第1電極20又は第2電極22にワイヤ32により接続されている。LED素子30の下面は、例えば透明な絶縁性の接着剤(ダイボンド)などにより、回路基板15の開口部16の内側で、実装基板10の上面に直接固定されている。LED素子30は、アルミニウムミ製の実装基板10上に形成された反射層上に直接固着されているため、放熱効果が高く、高出力の発光を行うことが可能である。
【0027】
参照符号31で示す部品は、第1電極20と第2電極22の間に過電圧が印加されたときにLED素子30を保護するツェナーダイオード素子である。
【0028】
図1及び図2に示す様に、ダム材40は、保持材の一例であり、第1部分40a及び第2部分40bを含む。第1部分40aは、実装基板10上において、LED素子30の周囲に配置され、光を吸収する円環状(トロイダル状、ドーナッツ状)の枠体である。ダム材40は、回路基板15上の第1電極20、第2電極22、及び、ツェナーダイオード素子31と重なる位置に、それらを覆い複数のLED素子30を取り囲むように形成されている。第1部分40aは、断面がL字型になるように形成され、頂部に平坦部40cを有し、且つ、平坦部40cの内側端部から実装基板10方向に向かって突出した突出部40dを有する。第2部分40bは、実装基板10と第1部分40aの平坦部40cとの間に配置される。第1部分40aは、第2部分40bの頂部に配置され、実装基板10及び回路基板15と接していない。第1部分40aの上部に形成された平坦部40cは、第2部分40bの頂部より高い位置に位置する。
【0029】
第1部分40aは、成型用の樹脂と所定の顔料を含む。所定の顔料は、封止材50に含まれる蛍光体が出射する光のピーク波長を吸収スペクトルの吸収帯に含む顔料である。吸収スペクトルは、標準の光源に対して対象物が吸収する光のスペクトルであり、吸収帯は、吸収スペクトルのある範囲が連続した吸収を示す部分である。吸収帯は、例えば、吸収率が所定比率(例えば60%)以上である波長帯である。なお、第1部分40aは、この顔料と同一の色を有する金属材料、又は、この顔料で表面処理された金属材料で形成されてもよい。
【0030】
例えば、所定の顔料は、封止材50に含まれる蛍光体が出射する光のピーク波長を吸収スペクトルの吸収帯に含み、且つ、LED素子30が出射する光のピーク波長を吸収スペクトルの吸収帯に含まない顔料である。この顔料は、蛍光体により波長変換され蛍光体から出射される光が有する色の補色を有する。発光装置1では、蛍光体から出射される光は黄色を有し、LED素子30から出射される光は青色を有し、顔料は青色を有する。そのような顔料として、例えばウルトラマリン又はコバルトブルー等が使用される。なお、顔料は、蛍光体から出射される光のピーク波長に対応する色の補色であれば、青色以外の他の色を有してもよい。
【0031】
また、所定の顔料は、封止材50に含まれる蛍光体が出射する光のピーク波長を吸収スペクトルの吸収帯に含み、更にLED素子30が出射する光のピーク波長も吸収スペクトルの吸収帯に含む顔料でもよい。この顔料は、蛍光体により波長変換され蛍光体から出射される光と、LED素子30が出射する光とを吸収する色、例えば黒色を有する。そのような顔料として、例えばチタンブラック又はカーボンブラック等が使用される。なお、顔料は、蛍光体により波長変換され蛍光体から出射される光と、LED素子30が出射する光とを吸収する色であれば、黒色以外の他の色を有してもよい。
【0032】
一方、第2部分40bは、この顔料を含まず、シリコーン樹脂と、酸化チタン(又はシリカ)等の反射材料と、を含む反射性の白色樹脂で構成される。
【0033】
第2部分40bは、各LED素子30から側方に出射された青色光、及び、各LED素子30から側方に出射され且つ封止材50に含まれる蛍光体により波長変換された光を発光装置1の上方に反射させる。一方、第1部分40a全体には、上記の顔料が分散されており、第1部分40aは、各LED素子30から側方に出射され且つ封止材50に含まれる蛍光体により波長変換された光を吸収する。発光装置1では、LED素子30及び蛍光体からの出射光が第2部分40bによって上方に反射するので、出射効率が高くなる。一方、発光装置1では、蛍光体により波長変換された光が第1部分40aの突起部40dに吸収されるので、イエローリングの発生が抑制され、発光装置1から出射される光の色を均一に保つことが可能となる。
【0034】
また、発光装置1では、ダム材40の上部に平坦部40cが形成されることにより、上方からの外力に対する強度が高くなり、損傷の発生、特にワイヤ32の、ダム材40で封止された部分における損傷の発生が抑制される。また、発光装置1では、予め成型された第1部分40aによってダム材40の上部に平坦部40cが形成されることにより、発光装置1の全体の高さを安定させることが容易となる。なお、ダム材40は、図1及び図2に示す様に、平面視で、円形に配置されているが、楕円形に配置されていても良い。
【0035】
封止材50は、回路基板15上に配置されたダム材40の内側、即ちダム材40で囲まれる部分に注入(充填)されて略円板状に硬化され、複数のLED素子30を一体に被覆し保護(封止)する。封止材50の上面は、ダム材40の第1部分40aの平坦部40cと同じ高さに位置している。即ち、ダム材40の第1部分40aの少なくとも一部は封止材50と接しており、ダム材40は封止材50と接する面に上記の顔料を含んでいる。封止材50としてシリコーン樹脂が用いられるが、無色かつ透明で、250℃程度の耐熱性がある他の樹脂を利用することができる。
【0036】
封止材50には、各LED素子30からの出射光の波長を変換する蛍光体が混入されている。蛍光体は、蛍光材料の一例であり、LED素子30から出射される光を波長変換して出射する。封止材50は、こうした蛍光体として、YAG(yttrium aluminum garnet)などの黄色蛍光体を含有する。発光装置1は、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって黄色蛍光体を励起させて得られる黄色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。
【0037】
前述した黄色蛍光体は一例であって、封止材50は、他の蛍光体を含有することもできる。例えば、封止材50は、緑色蛍光体と赤色蛍光体の2種類を含有してもよい。この場合、発光装置1は、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって緑色蛍光体および赤色蛍光体を励起させて得られる緑色光および赤色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。緑色蛍光体としては、LED素子30が出射した青色光を吸収して緑色光に波長変換する、(BaSr)2SiO4:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料を用いることができる。赤色蛍光体としては、LED素子30が出射した青色光を吸収して赤色光に波長変換する、CaAlSiN3:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料を用いることができる。
【0038】
ダム材40の第1部分40aに含まれる顔料として前述したチタンブラック又はカーボンブラック等の黒色を有する顔料は、赤色光のピーク波長及び緑色光のピーク波長も吸収スペクトルの吸収帯に含む。したがって、封止材50が緑色蛍光体と赤色蛍光体を含有する場合にも、第1部分40aにチタンブラック又はカーボンブラック等の黒色を有する顔料を含有させることにより、第1部分40aは、封止材50に含まれる蛍光体により波長変換された光を吸収する。
【0039】
発光装置1では、LED素子30の充填率が高いため、発光エリア(ダム材40の内側)の単位面積当たりの発熱量も多い。LED素子同士の間隔が狭くなって光の密度が高まると、封止材50が含有する蛍光体に当たる光の密度も高くなり、蛍光体自体も発熱する。そこで、発光装置1では、封止材50内の蛍光体を沈降させて実装基板10に近付けることにより、蛍光体自体の放熱性も向上させて、熱を発散させやすくしている。
【0040】
図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)は、LED素子30及び蛍光体による光のスペクトルと、ダム材の第1部分の吸収スペクトルとを模式的に示したグラフである。
【0041】
図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)の横軸は、波長(nm)を示し、右に行くほど波長が長くなる。図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)の縦軸は、LED素子30及び蛍光体による光のスペクトルについて、光の相対放射強度を示し、上に行くほど強度が高くなる。また、図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)の縦軸は、ダム材の吸収スペクトルについて、吸収率を示し、上に行くほど吸収率が高くなる。
【0042】
図3(a)のグラフ301は、LED素子30及び蛍光体から出射される光のスペクトルを示す。このスペクトルには、LED素子30により放射された青色光のピーク波長λ1と、蛍光体により波長変換された黄色光のピーク波長λ2の近傍にそれぞれ強度のピークが存在している。グラフ302は、ウルトラマリンが顔料として使用されたダム材の第1部分の吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルにおいて、蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2における吸収率は約1.0であり、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1における吸収率は約0.5である。即ち、蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2はウルトラマリンの吸収帯に含まれており、蛍光体により波長変換される光は、ウルトラマリンが顔料として用いられたダム材の第1部分にほぼ吸収される。一方、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1はウルトラマリンの吸収帯に含まれておらず、LED素子30により出射される光は、ウルトラマリンが顔料として用いられたダム材の第1部分により反射する。
【0043】
図3(b)のグラフ311は、図3(a)のグラフ301と同様の光のスペクトルを示す。グラフ312は、コバルトブルーが顔料として使用されたダム材の第1部分の吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルにおいて、蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2における吸収率は約0.9であり、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1における吸収率は約0.4である。即ち、蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2はコバルトブルーの吸収帯に含まれており、蛍光体により波長変換される光は、コバルトブルーが顔料として用いられたダム材の第1部分にほぼ吸収される。一方、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1はコバルトブルーの吸収帯に含まれておらず、LED素子30により出射される光は、コバルトブルーが顔料として用いられたダム材の第1部分により反射する。
【0044】
これらの第1部分が使用される場合、LED素子30から斜めに出射された光は第1部分で良好に反射されて出射されつつ、LED素子30から斜めに出射され蛍光体により波長変換された光は第1部分に吸収されるので、イエローリングの発生が抑制される。
【0045】
図4(a)のグラフ401は、図3(a)のグラフ301と同様の光のスペクトルを示す。グラフ402は、チタンブラック(13M-C)が顔料として使用されたダム材の第1部分の吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルにおいて、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1における吸収率は約0.9であり、蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2における吸収率は約0.9である。即ち、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1及び蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2はチタンブラックの吸収帯に含まれている。したがって、LED素子30により出射される光及び蛍光体により波長変換される光は、チタンブラックが顔料として用いられたダム材の第1部分にほぼ吸収される。
【0046】
図4(b)のグラフ411は、図3(a)のグラフ301と同様の光のスペクトルを示す。グラフ412は、カーボンブラックが顔料として使用されたダム材の第1部分の吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルにおいて、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1における吸収率は約1.0であり、蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2における吸収率は約0.9である。即ち、LED素子30により出射される光のピーク波長λ1及び蛍光体により波長変換される光のピーク波長λ2はカーボンブラックの吸収帯に含まれている。したがって、LED素子30により出射される光及び蛍光体により波長変換される光の第1部分は、カーボンブラックが顔料として用いられたダム材の第1部分にほぼ吸収される。
【0047】
これらの第1部分が使用される場合も、LED素子30から斜めに出射され蛍光体により波長変換された光は第1部分に吸収されるので、イエローリングの発生が抑制される。
【0048】
図5(a)~図5(e)は、発光装置1の製造方法の概略説明図である。以下、図5を用いて、発光装置1の製造方法について説明する。
【0049】
最初に、実装基板10と各種配線パターンが形成された回路基板15が用意され、実装基板10と回路基板15が接着材により接着され、回路基板15の上面に第1電極20及び第2電極22が実装される。図5(a)は、実装基板10と回路基板15が接着された状態を示す図である。
【0050】
次に、回路基板15の開口部16の内側で、実装基板10の上面に複数のLED素子30が実装され、LED素子30相互間、及び、LED素子30と第1電極20、第2電極22間がワイヤで接続される。図5(b)は、実装基板10の上面にLED素子30が実装され、ワイヤで接続された状態を示す図である。
【0051】
次に、複数のLED素子30の周囲に円を描き且つ第1電極20、第2電極22を覆う様に、未硬化の第2部分用樹脂40b’が所定の供給ノズル(不図示)から充填される。図5(c)は、未硬化の第2部分用樹脂40b’が第1電極20、第2電極22の上に形成された時の断面のイメージ図である。
【0052】
次に、円環状且つL字状に形成された第1部分40aが、未硬化の第2部分用樹脂40b’の上側に、平坦部40cが上側(実装基板10の反対側)を向き、且つ、第2部分用樹脂40b’に沿って配置される。次に、突起部40dの先端が未硬化の第2部分用樹脂40b’の上部から挿入される。その後、第2部分用樹脂40b’が加熱され、第2部分40bが形成される。図5(d)は、第1部分40a及び第2部分40bが形成された時の断面のイメージ図である。
【0053】
次に、未硬化の封止材用樹脂が所定の供給ノズルから、ダム材40の内側に第1部分40aの平坦部40cの高さまで充填されて加熱され、封止材50が形成され、発光装置1が完成する。図5(e)は、封止材50が形成された時の断面のイメージ図である。
【0054】
(第2実施形態)
図6(a)及び図7は第2実施形態に係る発光装置2の上方視した平面図であり、図6(b)は図6(a)においてAA´で示した位置における断面図である。
【0055】
発光装置2は、主要な構成要素として、実装基板10、回路基板15、複数のLED素子30、ダム材41および封止材51を有する。実装基板10、回路基板15および複数のLED素子30の構成は、発光装置1が有する実装基板10、回路基板15及び複数のLED素子30の構成と同様である。
【0056】
ダム材41は、保持材の一例であり、第1部分41a及び第2部分41bを含む。第1部分41aは、ダム材40の第1部分40aと同様に、実装基板10上においてLED素子30の周囲に配置され、光を吸収する円環状の枠体である。第1部分41aは、断面が鉤状に形成され、頂部に平坦部41cを有し、且つ、平坦部40cの内側端部から実装基板10方向に向かって突出した突出部41dと、実装基板10上に配置され且つ平坦部41cの外側端部まで伸延する基部41eとを有する。第2部分40bは、実装基板10と第1部分40aの平坦部40cとの間に配置される。第2部分40bの一部は、突出部41d、平坦部41c及び基部41eで囲まれた空間内に配置される。即ち、第1部分41aの上部に形成された平坦部41cは、第2部分41bの頂部より高い位置に位置する。
【0057】
第1部分41aは、成型用の樹脂と所定の顔料を含む。この顔料は、ダム材40の第1部分40aに含まれる顔料と同様の顔料である。なお、第1部分41aは、この顔料と同一の色を有する金属材料、又は、この顔料で表面処理された金属材料で形成されてもよい。一方、第2部分41bは、この顔料を含まず、シリコーン樹脂と、酸化チタン(又はシリカ)等の反射材料と、を含む反射性の白色樹脂で構成される。
【0058】
第2部分41bは、各LED素子30から側方に出射された青色光、及び、各LED素子30から側方に出射され且つ封止材51に含まれる蛍光体により波長変換された光を発光装置2の上方に反射させる。一方、第1部分41a全体には、上記の顔料が分散されており、第1部分41aは、各LED素子30から側方に出射され且つ封止材51に含まれる蛍光体により波長変換された光を吸収する。発光装置2では、LED素子30及び蛍光体からの出射光が第2部分41bによって上方に反射するので、出射効率が高くなる。一方、発光装置2では、蛍光体により波長変換された光が第1部分41aに吸収されるので、イエローリングの発生が抑制され、発光装置2から出射される光の色を均一に保つことが可能となる。また、第1部分41aに含まれる顔料が、LED素子30が出射する光のピーク波長も吸収スペクトルの吸収帯に含む場合、各LED素子30から側方に出射された青色光、及び、蛍光体により波長変換された光が第1部分41aに吸収される。そのため、発光装置2の側方からの光漏れが防止される。
【0059】
また、発光装置2では、ダム材41の上部に平坦部41cが形成されることにより、上方からの外力に対する強度が高くなり、損傷の発生、特にワイヤ32の、ダム材40で封止された部分における損傷の発生が抑制される。また、発光装置2では、予め定められたサイズに成型された第1部分41aによってダム材41の上部に平坦部41cが形成されることにより、発光装置2の全体の高さを安定させることが可能となる。さらに、発光装置1では、第1部分41aが設けられることにより、第2部分41bを第1部分41a内で容易に形成させることが可能となる。
【0060】
封止材51は、封止材50と同様に、回路基板15上に配置されたダム材41の内側、即ちダム材41で囲まれる部分に注入(充填)されて略円板状に硬化され、複数のLED素子30を一体に被覆し保護(封止)する。封止材51の上面は、ダム材41の第1部分41aの頂部と同じ高さに位置している。即ち、ダム材41の第1部分41aの少なくとも一部は封止材51と接しており、ダム材41は封止材51と接する面に上記の顔料を含んでいる。封止材51は、封止材50と同様の材料で形成される。
【0061】
図8(a)~図8(e)は、発光装置2の製造方法の概略説明図である。以下、図8を用いて、発光装置2の製造方法について説明する。
【0062】
図8(a)~図8(b)に示す製造手順は、図5(a)~図5(b)に示した製造手順と同様である。実装基板10の上面にLED素子30が実装された後、複数のLED素子30の周囲に円を描き且つ第1電極20、第2電極22を覆う様に、未硬化の第2部分用樹脂41b’が所定の供給ノズル(不図示)から充填される。図8(c)は、未硬化の第2部分用樹脂41b’が第1電極20、第2電極22の上に形成された時の断面のイメージ図である。
【0063】
次に、円環状且つ鉤状に形成された第1部分41aが、未硬化の第2部分用樹脂41b’の上側に、第2部分用樹脂41b’に沿って配置される。第1部分41aは、平坦部41cが上側(実装基板10の反対側)を向き、突起部41dが内側を向き、基部41eが外側を向く様に配置される。そして、第1部分41aが第2部分用樹脂41b’を覆うように、基部41eの先端が回路基板15上に接着材により接着される。その後、第2部分用樹脂41b’が加熱され、第2部分41bが形成される。図8(d)は、第1部分41a及び第2部分41bが形成された時の断面のイメージ図である。
【0064】
次に、未硬化の封止材用樹脂が所定の供給ノズルから、ダム材41の内側に第1部分41aの平坦部41cの高さまで充填されて加熱され、封止材51が形成され、発光装置2が完成する。図8(e)は、封止材51が形成された時の断面のイメージ図である。
【0065】
上述した発光装置1、2では、図1図6に示す様に、アルミニウム製の実装基板10の上に配線パターンを設けた回路基板15を付着させた基材が利用されている(COB)。しかしながら、発光装置1、2において、セラミック製の実装基板10の上に、回路基板15を設けずに、直接配線パターンを配置した基材が利用されても良い(SMD)。
【符号の説明】
【0066】
1、2 発光装置
10 実装基板
15 回路基板
30 LED素子
40、41 ダム材
40a、41a 第1部分
40b、41b 第2部分
50、51、 封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9