(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】流量制御ユニット及び流量制御システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20240228BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E03C1/02
E03C1/042 Z
(21)【出願番号】P 2020122125
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 和彦
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287210(JP,A)
【文献】特開2009-233047(JP,A)
【文献】特開2003-64736(JP,A)
【文献】特開2007-270538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式水栓と当該手動式水栓に液体を供給する配管との間に取り付けられて前記手動式水栓の開いた状態が継続することによる液体の流量の超過を抑制する流量制御ユニットであって、
流路開閉弁、及び、流量計が取り付けられた主流路と、
前記主流路よりも液体の流量が小さくなるように構成されるとともに前記流路開閉弁を迂回して前記主流路に接続されるバイパス流路と、
前記流路開閉弁の開閉状態を制御する制御部とを備えており、
前記手動式水栓が開いた状態のとき、前記流量計で測定された液体の流量、もしくは、前記流量計で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、前記制御部によって前記流路開閉弁を閉状態にし、
前記流路開閉弁が閉状態で前記手動式水栓が閉じた状態になると、前記制御部によって前記流路開閉弁を開状態に復帰させることを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項2】
前記流路開閉弁が閉状態で前記手動式水栓が閉じた状態になった際に、前記流量計で測定される液体の流量が所定の値よりも小さくなると、前記制御部によって前記流路開閉弁を開状態に復帰させる請求項1に記載の流量制御ユニット。
【請求項3】
前記バイパス流路に、定流量弁が取り付けられている請求項1又は2に記載の流量制御ユニット。
【請求項4】
前記主流路において、前記流量計は、前記流路開閉弁及び前記バイパス流路よりも前記手動式水栓側に取り付けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の流量制御ユニット。
【請求項5】
手動式水栓と当該手動式水栓に液体を供給する配管との間に取り付けられて前記手動式水栓の開いた状態が継続することによる液体の流量の超過を抑制する流量制御システムであって、
前記液体の主流路を構成するとともに流路開閉弁を有する第1部材と、
前記液体の主流路を構成するとともに流量計を有する第2部材と、
前記流路開閉弁を迂回して前記主流路に接続されるとともに、前記主流路よりも液体の流量が小さいバイパス流路を構成する第3部材と、
前記流路開閉弁の開閉状態を制御する制御部材とを備え、
前記手動式水栓が開いた状態のとき、前記流量計で測定された液体の流量、もしくは、前記流量計で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、前記制御部材によって前記流路開閉弁を閉状態にし、
前記流路開閉弁が閉状態で前記手動式水栓が閉じた状態になると、前記制御部材によって前記流路開閉弁を開状態に復帰させることを特徴とする流量制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御ユニット及び流量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水道蛇口監視システムについて記載している。
図6に示すように、水道蛇口監視システム90は、蛇口流路91を開閉する流路開閉弁92aを有する止水装置92と、止水装置92の作動を制御する制御装置93とを備えている。さらに、制御装置93は、赤外線センサで構成される入退室検出装置94と、水流検出センサで構成される水流検出装置95とを備えている。赤外線センサは、台所の壁面96に複数設置されている。赤外線センサの検出データに基づいて家人が部屋から退出したと判定され、且つ、水流検出センサの検出データに基づいて水道水が流れていると判定された場合、家人が蛇口を閉め忘れたと判定する。制御装置93が止水装置92に信号を送り、流路開閉弁92aを閉じて水道水を止めることにより、水道水の無駄使いを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水道蛇口監視システム90では、壁面96に複数の赤外線センサを設置する必要があるため、システムの構成が複雑化するという課題を有している。また、既設の水栓に設置するには手間がかかるという課題を有している。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成が簡略化されており、既設の水栓に容易に設置しうる流量制御ユニット及び流量制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための流量制御ユニットは、手動式水栓と当該手動式水栓に液体を供給する配管との間に取り付けられて前記手動式水栓の開いた状態が継続することによる液体の流量の超過を抑制する流量制御ユニットであって、流路開閉弁、及び、流量計が取り付けられた主流路と、前記主流路よりも液体の流量が小さくなるように構成されるとともに前記流路開閉弁を迂回して前記主流路に接続されるバイパス流路と、前記流路開閉弁の開閉状態を制御する制御部とを備えており、前記手動式水栓が開いた状態のとき、前記流量計で測定された液体の流量、もしくは、前記流量計で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、前記制御部によって前記流路開閉弁を閉状態にし、前記流路開閉弁が閉状態で前記手動式水栓が閉じた状態になると、前記制御部によって前記流路開閉弁を開状態に復帰させることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、手動式水栓が開いた状態のとき、流量計で測定された液体の流量、もしくは、流量計で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、制御部によって流路開閉弁を閉状態にすることにより、液体の流量の超過を抑制することができる。また、流路開閉弁が閉状態で手動式水栓が閉じた状態になると、制御部によって流路開閉弁を開状態に復帰させることにより、再度、使用者が手動式水栓を開いた際に、通常の流量で液体を吐出させることが可能になる。赤外線センサ等の装置を設置する必要がないため、構成を簡略化することができる。また、既設の水栓への設置を容易に行うことができる。
【0007】
上記流量制御ユニットについて、前記流路開閉弁が閉状態で前記手動式水栓が閉じた状態になった際に、前記流量計で測定される液体の流量が所定の値よりも小さくなると、前記制御部によって前記流路開閉弁を開状態に復帰させることが好ましい。流路開放弁が閉状態で、さらに手動式水栓が閉じた状態になると、バイパス流路を経由する液体の流量が低下する。そのため、流量計で測定される液体の流量に基づいて、手動式水栓が閉じた状態になったことを判定することができる。これにより、流路開閉弁を開状態に復帰させるタイミングをより簡易な構成で判定することが可能になるため、流量制御ユニットの構成をより簡略化することができる。
【0008】
上記流量制御ユニットについて、前記バイパス流路に、定流量弁が取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、バイパス流路を流通する液体の流量を、より一定にすることができる。
【0009】
上記流量制御ユニットについて、前記主流路において、前記流量計は、前記流路開閉弁及び前記バイパス流路よりも前記手動式水栓側に取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、手動式水栓が開いた状態で流路開閉弁が閉状態になった際に、流量計でバイパス流路を流通する液体の流量をより正確に測定することができる。
【0010】
上記課題を解決するための流量制御システムは、手動式水栓と当該手動式水栓に液体を供給する配管との間に取り付けられて前記手動式水栓の開いた状態が継続することによる液体の流量の超過を抑制する流量制御システムであって、前記液体の主流路を構成するとともに流路開閉弁を有する第1部材と、前記液体の主流路を構成するとともに流量計を有する第2部材と、前記流路開閉弁を迂回して前記主流路に接続されるとともに、前記主流路よりも液体の流量が小さいバイパス流路を構成する第3部材と、前記流路開閉弁の開閉状態を制御する制御部材とを備え、前記手動式水栓が開いた状態のとき、前記流量計で測定された液体の流量、もしくは、前記流量計で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、前記制御部材によって前記流路開閉弁を閉状態にし、前記流路開閉弁が閉状態で前記手動式水栓が閉じた状態になると、前記制御部材によって前記流路開閉弁を開状態に復帰させることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、手動式水栓が開いた状態のとき、流量計で測定された液体の流量、もしくは、流量計で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、制御部材によって流路開閉弁を閉状態にすることにより、液体の流量の超過を抑制することができる。また、流路開閉弁が閉状態で手動式水栓が閉じた状態になると、制御部材によって流路開閉弁を開状態に復帰させることにより、再度、使用者が手動式水栓を開いた際に、通常の流量で液体を吐出させることが可能になる。赤外線センサ等の装置を設置する必要がないため、構成を簡略化することができる。また、既設の水栓への設置を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の流量制御ユニット及び流量制御システムによれば、構成が簡略化されており、既設の手動式水栓に容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】流路開閉弁が開状態である流量制御ユニットの部分断面図。
【
図4】流路開閉弁が閉状態である流量制御ユニットの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
流量制御ユニットの実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、キッチンキャビネットのカウンタである壁部11に設置されている。水栓10は、壁部11上に固定される水栓本体12と、水栓本体12の上部に取り付けられた手動式のレバー13と、水栓本体12の軸方向の中央部から斜め上方に突出する吐水ヘッド14とを備える。
【0015】
また、水栓10は、水栓本体12の内部に収容された弁部材(図示省略)と、弁部材に接続された給湯管15、給水管16、及び、吐水管(図示省略)とを備える。給湯管15と給水管16は、壁部11を貫通して、壁部11の下方へと延びている。吐水管は、吐水ヘッド14に接続されている。
【0016】
壁部11の下部には、図示しない給湯源に接続された給湯用の配管17aと、図示しない給水源に接続された給水用の配管17bとが配設されている。
給湯用の配管17aは、本実施形態の流量制御ユニット20を介して水栓10の給湯管15に接続されている。同様に、給水用の配管17bは、本実施形態の別の流量制御ユニット20を介して水栓10の給水管16に接続されている。
図1における2つの流量制御ユニット20は同一の構造を有している。なお、
図1では、流量制御ユニット20の形状を簡略化している。
【0017】
給湯用の配管17aを流通する湯は、流量制御ユニット20と給湯管15とを経由して弁部材へと流通する。同様に、給水用の配管17bを流通する水は、流量制御ユニット20と給水管16とを経由して弁部材へと流通する。弁部材を通過する際に、水と湯とが任意の割合で混合されて湯水が形成される。弁部材を通過した湯水は、吐水管を経由して吐水ヘッド14内を流通し、吐水ヘッド14に設けられた吐水口14aから吐出される。
【0018】
水栓10のレバー13を手動で操作することにより、弁部材を操作して、水栓10からの吐止水、及び、湯水の切り替えを行うことができる。そのため、水栓10は、手動式水栓として機能する。また、給湯用の配管17a、及び、給水用の配管17bは、手動式水栓に水や湯を供給する配管として機能する。以下、給湯用の配管17a、及び、給水用の配管17bをまとめて「配管17」という。また、各配管を流通する水や湯を「液体」という。
【0019】
図1に示すように、流量制御ユニット20は、水栓10と配管17との間に取り付けられている。流量制御ユニット20が取り付けられていることにより、後述のように、使用者が水栓10を閉め忘れた際に、水栓10から吐出される液体の流量が小さくなるように自動的に制御することができる。言い換えれば、水栓10の開いた状態が継続することによる液体の流量の超過を抑制することができる。
【0020】
流量制御ユニット20について説明する。
図2に示すように、流量制御ユニット20は、流路開閉弁としての電磁弁31が取り付けられた第1部材30と、流量計41が取り付けられた第2部材40と、バイパス流路R2を有する第3部材50と、電磁弁31の開閉状態を制御する制御部材60とを備える。
【0021】
また、流量制御ユニット20は、第1部材30と第2部材40を接続する第1接続部材70と、第1部材30と配管17(
図1参照)を接続する第2接続部材80とを備える。
流量制御ユニット20を構成する各部材について説明する。
【0022】
第1部材30について説明する。
図2に示すように、第1部材30は管状に構成されており、内部に主流路R1が形成されている。第1部材30の軸方向における中央部には、主流路R1の流路を開閉する流路開閉弁としての電磁弁31が取り付けられている。電磁弁31は内部パイロット式であり、主弁としてのダイヤフラム32と、副弁としてのパイロット弁33とを有している。ダイヤフラム32の背面側(
図2における上側)には、バネ37が配置されている。また、電磁弁31は、コイル34と、コイル34内に配置されたコア35とを有しており、コア35の先端にパイロット弁33が取り付けられている。
【0023】
後述のように、制御部材60を用いてパイロット弁33を駆動させることにより、主流路R1内の液体の圧力、及び、バネ37の作用を利用してダイヤフラム32を駆動させることができる。ダイヤフラム32を駆動させることにより、主流路R1の開閉状態を切り換えている。
【0024】
図2に示すように、第1部材30の軸方向における一端側であって、電磁弁31よりも第2接続部材80側に位置する部分は、円管状に構成されている。この円管状部分30aの外周にはOリング36が配置されている。Oリング36は、第1部材30の軸方向に所定の間隔をおいて2個配置されている。円管状部分30aの外径は、後述する第2接続部材80のクランク管81における円管状部分81aの内径よりも若干小さく構成されている。第1部材30の円管状部分30aにおいて、Oリング36よりも第1部材30の他端側には、全周に亘って径方向外側に突出したフランジ部30bが形成されている。
【0025】
図2に示すように、第1部材30の軸方向における他端側であって、電磁弁31よりも第1接続部材70側に位置する部分は、円管状に構成されている。この円管状部分30cにおける第1部材30の他端側の端部には、全周に亘って径方向外側に突出したフランジ部30dが形成されている。第1部材30は、流路開閉弁部材、もしくは電磁弁部材と言い換えることができる。
【0026】
第2部材40について説明する。
図2に示すように、第2部材40は円管状に構成されており、内部に主流路R1が形成されている。第2部材40の軸方向における中央部の内周には、主流路R1を流通する液体の流量を測定する流量計41が取り付けられている。流量計41としては、特に限定されず、液体の流量を測定することのできる公知の流量計を適宜採用することができる。
【0027】
公知の流量計としては、例えば、羽根車式流量計、コリオリ質量流量計、電磁流量計、超音波流量計、過流量計、熱式質量流量計等を挙げることができる。その中でも、羽根車式流量計を用いることが好ましい。また、流量計41は、主流路R1を流通する液体の流量以外に、主流路R1を流通する液体の流通時間を測定することができるものであってもよい。
【0028】
図2に示すように、第2部材40の軸方向における一端側であって、第1接続部材70側の内周には、ネジ溝40aが形成されている。また、第2部材40の軸方向における他端側であって、水栓10(
図1参照)側の外周にも、ネジ溝40bが形成されている。第2部材40は、流量計部材と言い換えることができる。
【0029】
第3部材50について説明する。
図2に示すように、第3部材50は、第1部材30の周面から突出した状態で、第1部材30と一体に形成されている。第3部材50の内部には、液体が流通可能な流路R2が形成されている。この流路R2の両端は、第1部材30の電磁弁31を迂回した状態でそれぞれ主流路R1に連通している。そのため、第3部材50内の流路R2は、電磁弁31を迂回して主流路R1に接続されるバイパス流路R2となっている。バイパス流路R2の内部には、定流量弁51が取り付けられている。定流量弁51が取り付けられていることにより、バイパス流路R2を流通する液体の流量が、主流路R1を流通する液体の流量よりも小さくなるように構成されている。第3部材50は、バイパス流路部材と言い換えることができる。
【0030】
制御部材60について説明する。
図2に示すように、制御部としての制御部材60は、電子基板61と、電子基板61と電磁弁31を接続する接続コード62aと、電子基板61と流量計41を接続する接続コード62bとを備える。電子基板61は、流量計41で測定された液体の流量や流通時間が閾値に達するか否かを判定する。そして、判定結果に基づいて、電磁弁31に対して開閉状態を切り換えるための信号を送信する。
【0031】
第1接続部材70について説明する。
図2に示すように、第1接続部材70は、第1部材30と第2部材40を接続する部材である。
【0032】
第1接続部材70は、管状の継手部材71と、袋ナット72と、グラン73とを有しており、各部材の内部に主流路R1が形成されている。また、第1接続部材70は、第1部材30と継手部材71との接続状態を固定するジョイントファスナ74を有している。
【0033】
継手部材71の軸方向における一端側である第1部材30側は、円管状に構成されている。この円管状部分71aの外径は、第1部材30の他端側の円管状部分30cの内径よりも若干小さく構成されている。
【0034】
継手部材71の円管状部分71aの外周にはOリング75が配置されている。Oリング75は、継手部材71の軸方向に所定の間隔をおいて2個配置されている。継手部材71の円管状部分71aにおいて、Oリング75よりも継手部材71の他端側には、全周に亘って径方向外側に突出したフランジ部71bが形成されている。このフランジ部71bの外径は、第1部材30の他端側の端部に形成されたフランジ部30dの外径と略等しくなっている。
【0035】
図2に示すように、継手部材71の一端側が、第1部材30の他端側に内嵌されると、継手部材71のフランジ部71bが第1部材30の他端側のフランジ部30dに当接する。この状態で、両フランジ部にジョイントファスナ74が取り付けられることによって、継手部材71と第1部材30は接続される。
【0036】
継手部材71の軸方向における他端側の外周には、ネジ溝71cが形成されている。このネジ溝71cに、袋ナット72の内周のネジ溝72aが螺合した状態で、継手部材71に袋ナット72は取り付けられている。
【0037】
袋ナット72の内周にはグラン73が挿入されている。グラン73は、袋ナット72からの抜け落ちが抑制された状態で、袋ナット72の他端側の端部から一部が露出している。グラン73における袋ナット72から露出した部分にはネジ溝73aが形成されている。このネジ溝73aに、第2部材40の一端側内周のネジ溝40aが螺合することによって、グラン73と第2部材40は接続される。
【0038】
継手部材71とグラン73の間にはパッキン76が配置されている。継手部材71に対して袋ナット72を締め付けることによって、継手部材71とグラン73の間隔が縮まり、継手部材71とグラン73の間のパッキン76が挟持されて、継手部材71とグラン73の間が水密状態となる。これにより、第1部材30と第2部材40は、第1接続部材70を介して接続された状態となる。この状態で、流量計41は、電磁弁31及び第3部材50よりも水栓10側に取り付けられた状態となる。
【0039】
第2接続部材80について説明する。
図2に示すように、第2接続部材80は、配管17(
図1参照)と第1部材30を接続する部材である。
【0040】
第2接続部材80は、クランク状に湾曲した管状の部材であるクランク管81を有しており、内部に主流路R1が形成されている。また、第2接続部材80は、クランク管81と第1部材30の接続状態を固定するジョイントファスナ82を有している。
【0041】
クランク管81の一端側である配管17側には、袋ナット83と、袋ナット83の内部に挿入されたグラン(図示省略)を有している。この袋ナット83に配管17が接続されることによって、配管17とクランク管81は接続される。
【0042】
クランク管81の他端側である第1部材30側は、円管状に構成されている。この円管状部分81aの他端側の端部には、全周に亘って径方向外側に突出したフランジ部81bが形成されている。このフランジ部81bの外径は、第1部材30の一端側に形成されたフランジ部30bの外径と略等しくなっている。
【0043】
図2に示すように、第1部材30の一端側が、クランク管81の円管状部分81aに内嵌されると、クランク管81のフランジ部81bが第1部材30の一端側のフランジ部30bに当接する。この状態で、両フランジ部にジョイントファスナ82が取り付けられることによって、クランク管81と第1部材30は接続される。これにより、配管17と第1部材30は、第2接続部材80を介して接続された状態となる。
【0044】
流量制御ユニット20の動作機構について説明する。
図3に示すように、水栓10(
図1参照)が開いた状態にある時、第1部材30の電磁弁31は開状態になっている。具体的には、電磁弁31のパイロット弁33とダイヤフラム32が開状態となっており、流量制御ユニット20内を流通する液体は、主流路R1とバイパス流路R2の両方を流通する。また、ダイヤフラム32の背面側にも液体が流通する。なお、
図3、4において、液体が流通する箇所をドット表示で色を濃くして示す。
【0045】
第2部材40に取り付けられた流量計41で、主流路R1を流通する液体の流量や液体の流通時間を測定する。ここで、液体の流量としては特に限定されないが、例えば、単位時間当たりの流量や、累積の総流量を意味するものとする。また、液体の流通時間は特に限定されないが、例えば、一定の流量が連続的に継続する時間を意味するものとする。
【0046】
流量計41での測定データは、接続コード62bを介して電子基板61に送られる。電子基板61において、流量計41で測定された液体の流量、もしくは、流量計41で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達するか否かを判定する。閾値に達したと判定された場合、電子基板61は、使用者が水栓10を閉め忘れたと判定して、接続コード62aを介して電磁弁31に閉状態になるように信号を送信する。閾値は、流量制御ユニット20が取り付けられる水栓10の使用形態をふまえて、適宜設定することができる。
【0047】
図4に示すように、電子基板61からの信号を受信すると、電磁弁31のパイロット弁33が閉状態となる。これに伴い、ダイヤフラム32の背面側では液体の流通が止まる。ダイヤフラム32の前面側(
図4におけるダイヤフラム32の下側)では液体の流通が継続するため、ダイヤフラム32の背面側に加わる液体の圧力が、ダイヤフラム32の前面側に加わる液体の圧力よりも相対的に高くなる。加えて、ダイヤフラム32の背面側に配置されたバネ37の作用によって、ダイヤフラム32が駆動して閉状態となる。
【0048】
ダイヤフラム32が閉状態になると、流量制御ユニット20内を流通する液体は、第3部材50のバイパス流路R2のみを流通する状態となる。バイパス流路R2を流通する液体の流量は、主流路R1を流通する液体の流量よりも小さいため、水栓10(
図1参照)から吐出される液体の流量を小さくなるように制御することができる。
【0049】
水栓10の使用者や第三者が、水栓10が閉じられていないことに気付いて、水栓10を閉じた状態にすると、主流路R1内の液体の流通が止まる。これに伴い、第2部材40に取り付けられた流量計41で測定される液体の流量がゼロになる。制御部材60の電子基板61は、電磁弁31が閉状態において流量計41で測定される液体の流量がゼロになると、水栓10が閉じた状態になったと判定して、接続コード62aを介して電磁弁31に開状態に復帰するよう信号を送信する。これにより、再度、使用者が水栓10を開いた際に、通常の流量で液体を吐出することが可能になる。
【0050】
本実施形態の作用について説明する。
水栓10が開いた状態のとき、流量計41で測定された液体の流量、もしくは、流量計41で測定された液体の流通時間の少なくとも一方が閾値に達すると、制御部材60によって電磁弁31を閉状態にすることにより、流量の超過を抑制することができる。電磁弁31が閉状態のままであると、使用者が再び水栓10を開いた際に、通常の流量で液体を吐出させることができない。そこで、電磁弁31が閉状態で水栓10が閉じた状態になると、制御部材60によって電磁弁31を開状態に復帰させることにより、再度、使用者が水栓10を開いた際に、通常の流量で液体を吐出させることが可能になる。
【0051】
本実施形態の効果について説明する。
(1)使用者が水栓10を閉め忘れた際に、水栓10から吐出される液体の流量が小さくなるように自動的に制御することができる。言い換えれば、水栓10の開いた状態が継続することによる液体の流量の超過を自動的に抑制することができる。これにより、液体の無駄使いを抑制することができる。
【0052】
また、電磁弁31が閉状態で水栓10が閉じた状態になると、制御部材60によって電磁弁31を開状態に復帰させる。これにより、再度、使用者が水栓10を開いた際に、通常の流量で液体を吐出させることが可能になるため、使用者がストレスを感じることなくスムーズに水栓10を使用することができる。
【0053】
(2)本実施形態の流量制御ユニット20は、使用者が水栓10を閉め忘れた場合以外、例えば、いたずら等、故意に水栓が開いたままの状態になっている場合であっても、液体の無駄使いを抑制することができる。また、従来技術では、使用者の部屋からの退出を閉め忘れの判定基準にしているのに対し、本実施形態では、流量計41で測定される液体の流量を閉め忘れの判定基準にしている。そのため、より正確に閉め忘れの判定を行って、液体の無駄使いを抑制することができる。
【0054】
(3)使用者が水栓10を閉め忘れたことを判定するために、赤外線センサ等の装置を設置する必要がない。また、流量計41で測定された液体の流量がゼロになることによって水栓10が閉じられたことを判定しており、既存の部材を利用して判定を行っている。したがって、構成を簡略化することができる。
【0055】
(4)配管17と水栓10との間の主流路R1において、流量計41は、電磁弁31及び第3部材50よりも水栓10側に取り付けられている。水栓10が開いた状態で電磁弁31が閉状態になった際に、流量計41は、バイパス流路R2を流通した液体の流量を直接測定することができる。したがって、バイパス流路R2を流通する液体の流量をより正確に測定することができる。
【0056】
(5)第3部材50が第1部材30と一体に形成されている。したがって、第3部材50と第1部材30が互いに分離された部材で構成された態様に比べて、流量制御ユニット20の構成をより簡略化することができる。
【0057】
(6)流量制御ユニット20は、第1部材30、第2部材40、第3部材50、制御部材60、第1接続部材70、及び、第2接続部材80が互いに接続されたユニットとして構成されている。そのため、既設の水栓10に取り付ける際に、ユニット単位で取り付けることができるため、作業効率を向上させることができる。
【0058】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態において、第3部材50は第1部材30と一体に形成されていたが、この態様に限定されない。
【0059】
図5に示すように、例えば、第1部材30と第3部材50が互いに分離された部材で構成され、接続部材を介して接続されていてもよい。
図5において、第3部材50は円管状に構成されており、内部にバイパス流路R2を有している。第1接続部材70は二股の継手部材77を有している。また、第2接続部材80は、二股の管状部材84を有している。そして、第1部材30と第3部材50は、それぞれ個別に、第1接続部材70と第2接続部材80に接続されている。このような態様であっても、電磁弁31を迂回して、主流路R1にバイパス流路R2を接続することができる。
【0060】
この態様では、電磁弁31が取り付けられた第1部材30として、既存の電磁弁部材を転用することができるため、新たに電磁弁部材を製造するコストや手間を省くことができる。
【0061】
・本実施形態において、制御部材60の電子基板61は、電磁弁31が閉状態において、流量計41で測定された流量がゼロになると、水栓10が閉じられたと判定して、電磁弁31を開状態に復帰させるように構成されていたが、この態様に限定されない。制御部材60の電子基板61は、電磁弁31が閉状態において、流量計41で測定された流量が所定の値よりも小さくなると、水栓10が閉じられたと判定してもよい。すなわち、水栓10が閉じられた状態の判定基準は、流量計41の流量がゼロになる態様に限定されない。また、上記所定の値としては、特に限定されないが、ゼロに近い、より小さな流量であることが好ましい。
【0062】
さらに、水栓10のレバー13に位置センサを取り付け、レバー13の位置を検出することによって、水栓10の開閉状態の判定を行ってもよい。
・本実施形態において、制御部材60は、電子基板61と、電子基板61と電磁弁31を接続する接続コード62aと、電子基板61と流量計41を接続する接続コード62bとを備えていたがこの態様に限定されない。制御部材60の接続コード62a、62bは省略されていてもよい。例えば、電子基板61と電磁弁31との間や、電子基板61と流量計41との間において、無線で信号を送受信するように構成されていてもよい。
【0063】
・バイパス流路R2の流量が、主流路R1の流量よりも小さくなるように構成されていれば、第3部材50に設けられた定流量弁51は省略されていてもよい。
・本実施形態において、流量計41は、電磁弁31及び第3部材50よりも主流路R1における水栓10側に取り付けられていたが、この態様に限定されない。流量計41は、電磁弁31及び第3部材50よりも主流路R1における配管17側に取り付けられていてもよい。
【0064】
・流路開閉弁としての電磁弁31は、パイロット式の電磁弁に限定されず、直動式の電磁弁であってもよい。また、流路開閉弁は、電磁弁に限定されない。主流路R1の開閉を行うことができる弁部材を適宜採用することができる。電磁弁以外の流路開閉弁としては、例えば、モータ駆動式の弁部材を挙げることができる。
【0065】
さらに、直動式の電磁弁やモータ駆動式の弁部材では、弁を閉状態にした際に、完全には弁が閉じないように構成してもよい。すなわち、弁を閉状態にした際に、弁と弁座との間に若干の隙間が形成されて、水栓からの吐出が継続するように構成されていてもよい。この態様では、弁と弁座との間に形成される隙間が、バイパス流路として機能する。
【0066】
・本実施形態は、流量制御ユニット20として構成されていたが、この態様に限定されない。流量制御ユニット20を構成する各部材は、ユニット単位で取り扱われることなく、個別の部材単位で取り扱われてもよい。例えば、第1部材30、第2部材40、第3部材50、制御部材60、第1接続部材70、及び、第2接続部材80が個別に組み付けられて、全体として流量制御システムを構成していてもよい。個別の部材単位で取り扱われることにより、既設の水栓10に取り付ける際に、水栓10や配管17の位置や形状に合わせて、柔軟に取付け作業を行うことができる。
【0067】
・第1接続部材70と、第2接続部材80の形状は、本実施形態の形状に限定されない。すなわち、袋ナット72とグラン73を用いて配管17や水栓10に接続される態様に限定されず、公知の接続機構によって配管17や水栓10に接続されていてもよい。
【0068】
・本実施形態において、第1部材30、第2部材40、第1接続部材70、及び、第2接続部材80は、それぞれ、分離可能に接続されていたが、この態様に限定されない。例えば、第1部材30、第2部材40、第3部材50、第1接続部材70、及び、第2接続部材80の少なくとも2個以上が、互いに一体に構成されていてもよい。
【0069】
・本実施形態の流量制御ユニット20は、キッチンキャビネットのカウンタである壁部11に設置された水栓10に取り付けられていたが、この態様に限定されない。例えば、家庭内の任意の水栓に取り付けることが可能である。複数の水栓に対して、1つの流量制御ユニット20が取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…水栓(手動式水栓)、17…配管、20…流量制御ユニット、31…電磁弁(流路開閉弁)、41…流量計、60…制御部材(制御部)、R1…主流路、R2…バイパス流路。