(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電動車椅子、制御装置および着座判定方法
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20240228BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20240228BHJP
B60N 5/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61G5/10 715
A61G5/12 701
B60N5/00
(21)【出願番号】P 2020135852
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時永 潤也
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127045(JP,A)
【文献】特開2005-081053(JP,A)
【文献】国際公開第2014/044610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10
A61G 5/12
A61G 5/04
B60N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの着座位置に設けられる第1振動センサと、
前記着座位置以外の部位に設けられる第2振動センサと、
前記ユーザの着座の有無を判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
走行中の前記第1振動センサの出力電圧が前記第2振動センサの出力電圧より小さい場合に前記ユーザが着座して
いると判定する
、
電動車椅子。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1振動センサの出力電圧と前記第2振動センサの出力電圧が同じである場合に、前記ユーザが着座していないと判定する、
請求項1に記載の電動車椅子。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1振動センサの出力電圧の前記第2振動センサの出力電圧に対する減衰率が判定閾値を下回る場合に、前記ユーザが着座していないと判定する、
請求項2に記載の電動車椅子。
【請求項4】
前記第1振動センサおよび前記第2振動センサは、振動発電器である
、
請求項1
、2または
3に記載の
電動車椅子。
【請求項5】
前記
制御部は、
所定の周期で前記ユーザが着座していないことを判定し、連続的に前記ユーザが着座していないと判定した場合に、前記ユーザが落車したと判定する
請求項
1~4のいずれか一つに記載の
電動車椅子。
【請求項6】
前記
制御部
は、
前記ユーザが落車したと判定
した場合に、通知デバイスを介し、前記ユーザが落車したことを周囲へ通知する、
請求項
5に記載の
電動車椅子。
【請求項7】
前記
制御部はさらに、
ネットワークを介し、前記ユーザが落車したことをサーバ装置へ通知する
、
請求項
6に記載の
電動車椅子。
【請求項8】
前記
制御部は、
前記第1振動センサおよび前記第2振動センサが発電した電力を、前記通知デバイスおよび/または前記ネットワークを介した通信の電力源とする
、
請求項
7に記載の
電動車椅子。
【請求項9】
電動車椅子の着座位置へのユーザの着座の有無を判定する制御装置であって、
走行中において、前記着座位置に設けられる第1振動センサの出力電圧が、前記着座位置以外の部位に設けられる第2振動センサの出力電圧より小さい場合に前記ユーザが着座していると判定する制御部を備える、
制御装置。
【請求項10】
電動車椅子の着座位置へのユーザの着座の有無を判定する制御装置が実行する着座判定方法であって、
前記電動車椅子の走行中において、前記着座位置に設けられる第1振動センサ
の出力電圧が、
前記着座位置以外の部位に設けられる第2振動センサ
の出力電圧よりも小さい場合に、前記ユーザが着座していると判定する、
着座判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電動車椅子、制御装置および着座判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において乗員の着席状況を検出するための技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、ユーザの落車を検出するうえで、さらなる改善の余地がある。
【0005】
具体的には、たとえば車両が電動車椅子である場合、車室を有する通常の車両とは異なり、走行中にユーザが落車してしまうことが起こりうる。
【0006】
なお、上述した従来技術を用いた場合、圧力センサ等を用いることで落車の検出は可能と考えられるが、電力は電動車椅子のバッテリが負担することとなるため、電動車椅子の航続可能距離を目減りさせてしまうおそれがあり、好ましくない。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザの落車を検出することができる検出装置および検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る電動車椅子は、第1振動センサと、第2振動センサと、制御部とを備える。前記第1振動センサは、ユーザの着座位置に設けられる。前記第2振動センサは、前記着座位置以外の部位に設けられる。前記制御部は、前記ユーザの着座の有無を判定する。また、前記制御部は、走行中の前記第1振動センサの出力電圧が前記第2振動センサの出力電圧より小さい場合に前記ユーザが着座していると判定する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、ユーザの落車を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検出方法の概要説明図(その1)である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る検出方法の概要説明図(その2)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る検出システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る検出装置が実行する処理手順を示すフローチャート(その1)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る検出装置が実行する処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する検出装置および検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
また、以下では、実施形態に係る検出装置10(
図1参照)が、電動車椅子EW(
図1参照)に搭載される場合を例に挙げて説明を行う。
【0013】
まず、実施形態に係る検出方法の概要について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る検出方法の概要説明図(その1)である。また、
図2は、実施形態に係る検出方法の概要説明図(その2)である。
【0014】
なお、
図1および
図2では、図面を簡略化するため、電動車椅子EWに着座するユーザについては図示を省略している。
【0015】
一般的に、電動車椅子EWは、車室を有する通常の車両とは異なり、走行中にユーザが落車してしまうことが起こりうる。
【0016】
なお、既存技術により、圧力センサ等を用いることでこうした落車の検出は可能と考えられるが、その検出のための電力は電動車椅子EWのバッテリが負担することとなるため、電動車椅子EWの航続可能距離を目減りさせてしまうおそれがあり、好ましくない。
【0017】
そこで、実施形態に係る検出方法では、少なくとも2つの振動センサを電動車椅子EWの異なる部位にそれぞれ設け、これら振動センサによるそれぞれの測定結果を比較することによってユーザの落車を判定することとした。
【0018】
具体的には、実施形態に係る検出方法では、
図1に示すように、電動車椅子EWの異なる2つの部位であるM1,M2部に、順にそれぞれ第1振動発電器4,第2振動発電器5を設ける。
【0019】
第1振動発電器4,第2振動発電器5は、振動センサの一例である。第1振動発電器4,第2振動発電器5は、たとえば圧電素子を有しており、振動により圧電素子の振動面に発生する圧力をいわゆる圧電効果により電力へ変換する。なお、振動センサのうち、すべてが振動発電機能を有していなくともよい。すなわち、2つの振動センサのうち、少なくとも1つが振動発電機能を有していればよい。
【0020】
また、電動車椅子EWは、着座部E1と、走行ベースE2の2つの部位に大きく分けることができる。第1振動発電器4が搭載されるM1部は、電動車椅子EWの着座部E1側の部位であり、たとえば着座位置E11である。
【0021】
また、第2振動発電器5が搭載されるM2部は、電動車椅子EWの走行ベースE2側の部位である。なお、M1,M2部は、走行中における電動車椅子EWの路面からの振動が同程度にかかる配置関係にあることが好ましい。
【0022】
そして、実施形態に係る検出方法では、たとえば走行ベースE2に搭載された検出装置10が、電動車椅子EWの走行中の振動により第1振動発電器4,第2振動発電器5からそれぞれ出力される出力電圧を比較することによって、ユーザが着座していないことを判定する。
【0023】
より具体的には、
図2に示すように、検出装置10は、第2振動発電器5のピーク電圧に対する第1振動発電器4のピーク電圧の減衰率に基づいて、ユーザが着座していないことを判定する。なお、減衰率[%]=第1振動発電器4のピーク電圧[V]/第2振動発電器5のピーク電圧[V]である。
【0024】
ユーザが着座位置E11に着座している場合、ユーザの体重によってかかる圧力により、第1振動発電器4に付与される振動は抑えられるため、第1振動発電器4のピーク電圧は第2振動発電器5のピーク電圧に比べて減衰する。一方で、ユーザが着座位置E11に着座していない場合、第1振動発電器4のピーク電圧は減衰せず、第1振動発電器4,第2振動発電器5が、走行中における振動が同程度にかかる配置関係にあれば、上述の減衰率はほぼ0となる。
【0025】
そこで、実施形態に係る検出方法では、かかる点に着目し、検出装置10が、所定の周期で到来する落車判定区間Tjdgにおいて、上述の減衰率がほぼ0となった場合に、着座位置E11にユーザが着座していないと判定する。
図2に示すように、時間T1においてユーザが実際に「落車」していた場合、同図に示すように時間T1以降は「減衰率≒0」となる。
【0026】
そして、検出装置10は、かかる時間T1以降の落車判定区間Tjdgのそれぞれにおいて、減衰率がほぼ0であるか否かを判定し、減衰率がほぼ0である場合にユーザが着座していないと判定する。
【0027】
また、検出装置10は、複数の落車判定区間Tjdgにおいて連続的に、たとえば2周期連続で、ユーザが着座していないと判定された場合に、ユーザが落車したと判定する。
図2の例の場合、時間T1以降の2回目の落車判定区間Tjdgにおいてユーザが着座していないと判定された場合に、ユーザが「落車したと判定」する。これにより、落車判定区間Tjdgの1周期分における、ノイズ等による誤判定を防止することができる。
【0028】
なお、減衰率がほぼ0でなく、減衰率が所定の落車判定閾値を下回った場合に、ユーザが着座していないと判定してもよい。また、減衰率の減衰量が所定の減衰量を上回る場合に、ユーザが着座していないと判定してもよい。
【0029】
また、検出装置10は、上述したように、所定の周期で到来する落車判定区間Tjdgにおいてユーザが着座しているか否かを判定するが、
図2の「車速>所定速」に示すように、電動車椅子EWの車速が所定速(車速=0か、ごく低い車速)を上回るまでは、かかる判定を行わない。これにより、たとえば乗降中の振動による誤検出を防止することができる。
【0030】
また、検出装置10は、上述したように、ピーク電圧の減衰率に基づいてユーザが着座しているか否かを判定する。これにより、出力電圧の0V付近では第1振動発電器4,第2振動発電器5間の誤差が出にくいため起こりやすくなる誤判定を防止することができる。
【0031】
また、検出装置10は、落車判定区間Tjdgにおけるピーク電圧の減衰率に基づいてユーザが着座しているか否かを判定する。これにより、一区間内におけるノイズ等による誤判定を防止することができる。
【0032】
また、上述の落車判定閾値については、第1振動発電器4,第2振動発電器5それぞれの取り付け位置や、個体の精度差、経年劣化等により、ユーザが着座位置E11に着座していない場合でもピーク電圧に微妙な差異を生じる可能性がある。このため、落車判定閾値は、誤判定防止のために適宜変更が可能であることが好ましい。
【0033】
また、そもそも第1振動発電器4,第2振動発電器5が異常状態になることも考えられる。検出装置10は、こうした場合に備え、第1振動発電器4,第2振動発電器5の異常判定処理を実行することができる。異常判定処理については、
図3以降を用いた説明で後述する。
【0034】
なお、検出装置10は、かかる異常判定処理により第1振動発電器4,第2振動発電器5が異常であると判定された場合、ユーザの落車判定を行わない。これにより、第1振動発電器4,第2振動発電器5の異常時における落車判定の誤判定を防止することができる。
【0035】
このように、実施形態に係る検出方法は、電動車椅子EWにおけるユーザの着座位置E11に設けられる第1振動発電器4と、電動車椅子EWにおける着座位置E11以外の部位に設けられる第2振動発電器5とを備える検出装置10を用いた検出方法であって、第1振動発電器4および第2振動発電器5によるそれぞれの測定結果を比較することによってユーザが着座していないことを判定する。
【0036】
したがって、実施形態に係る検出方法によれば、電動車椅子EWのバッテリを浪費することなく、ユーザの落車を検出することができる。
【0037】
なお、ユーザが落車したと判定した場合、検出装置10は、電動車椅子EWがまだ動いている場合には、電動車椅子EWの駆動機構に電動車椅子EWを緊急停止させるようにしてもよい。また、このとき、たとえば交通の邪魔とならない位置へ電動車椅子EWを誘導させるようにしてもよい。
【0038】
なお、電動車椅子EWのユーザは、身体機能の一部に障害を有する場合が多いことから、落車が検出された場合、周囲や、eCall等へ迅速な通知を行って、ユーザへ適切な援助が提供されることが好ましい。かかる点については、
図3等を用いた説明で後述する。
【0039】
また、上述した説明では、減衰率を例に挙げたが、これに限られるものではなく、電圧の差等であってもよい。また、上述した説明では、ピーク電圧を例に挙げたが、これに限られるものではなく、所定時間の平均電圧や、電圧のなまし値等であってもよい。
【0040】
以下、実施形態に係る検出方法を適用した検出システム1の構成例について、より具体的に説明する。
【0041】
図3は、実施形態に係る検出システム1の構成例を示すブロック図である。なお、
図3では、実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0042】
換言すれば、
図3に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0043】
また、
図3を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、省略する場合がある。
【0044】
図3に示すように、実施形態に係る検出システム1は、振動付与部2と、車速センサ3と、第1振動発電器4と、第2振動発電器5と、通知デバイス6と、検出装置10と、サーバ装置100とを含む。
【0045】
振動付与部2と、車速センサ3と、第1振動発電器4と、第2振動発電器5と、通知デバイス6と、検出装置10は、電動車椅子EWへ搭載される。サーバ装置100は、たとえばeCallのサーバ装置であり、インターネットや携帯電話回線網等のネットワークNを介して検出装置10と相互に無線通信可能に接続される。
【0046】
振動付与部2は、後述する異常判定処理において電動車椅子EWへ振動を付与する構成部品である。振動付与部2は、たとえば図示略の電動車椅子EWの駆動機構と連動しており、自動的に電動車椅子EWを前後に動かし、第1振動発電器4,第2振動発電器5へ振動を付与することができる。
【0047】
車速センサ3は、電動車椅子EWの車速を測定する。第1振動発電器4,第2振動発電器5については説明済みであるため、ここでの説明は省略する。通知デバイス6は、ユーザが落車したことを周囲に通知するためのデバイスであり、たとえばスピーカやライト等を含む。
【0048】
検出装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。通信部11は、たとえば、NIC(Network Interface Card)や、LPWA(Low Power, Wide Area)規格に準拠した無線通信モジュール等によって実現される。通信部11は、ネットワークNと無線で接続され、ネットワークNを介して、サーバ装置100との間で情報の送受信を行う。
【0049】
記憶部12は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子等によって実現され、
図3の例では、異常判定閾値情報12aと、異常判定結果情報12bと、落車判定閾値情報12cを記憶する。
【0050】
異常判定閾値情報12aは、後述する異常判定処理において用いられる異常判定閾値を含む情報である。異常判定結果情報12bは、異常判定処理における異常判定結果が格納される。落車判定閾値情報12cは、上述した落車判定閾値を含む情報である。
【0051】
制御部13は、コントローラ(controller)であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、検出装置10内部の記憶デバイスに記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部13は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0052】
制御部13は、異常判定部13aと、取得部13bと、算出部13cと、落車判定部13dと、通知部13eとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0053】
異常判定部13aは、第1振動発電器4,第2振動発電器5の異常を判定する。具体的には、異常判定部13aは、たとえばユーザが降車した状態でユーザからの異常判定処理の実行トリガの入力を受け付け、かかるトリガに基づいて異常判定処理を実行する。
【0054】
たとえば、異常判定部13aは、図示略の操作部品を介して、ユーザからのボタン操作等を実行トリガとして受け付け、ユーザが降車した状態であるか否かを判定する。また、異常判定部13aは、ユーザが降車した状態である場合に、振動付与部2に、電動車椅子EWに対し意図的に振動を付与させる。
【0055】
なお、このとき、振動付与部2は、たとえば自動的に電動車椅子EWを前後に動かすため、異常判定部13aは、ユーザの安全確保のための通知を、通知デバイス6を介してユーザに行ってもよい。一例としては、「音声入力モードに入ります。車椅子から離れてください。」等の音声出力を行ってもよい。
【0056】
また、異常判定部13aは、振動付与部2に振動を付与させた際に算出部13cによって算出された上述の減衰率に基づき、たとえばかかる減衰率が所定の異常判定閾値を上回る場合に、すなわちユーザが着座していないにも関わらず減衰率が大きい場合に、第1振動発電器4または第2振動発電器5に異常ありと判定する。
【0057】
また、異常判定部13aは、実行した異常判定処理の結果を異常判定結果情報12bへ格納する。異常判定結果情報12bには、異常の存否や、異常があった場合の第1振動発電器4および第2振動発電器5の出力電圧等が含まれる。このように、異常判定処理の結果を異常判定結果情報12bへ格納しておくことで、容易に電動車椅子EWの故障部位を特定することが可能となる。
【0058】
取得部13bは、車速センサ3から電動車椅子EWの車速を取得する。また、取得部13bは、第1振動発電器4の出力電圧を取得する。また、取得部13bは、第2振動発電器5の出力電圧を取得する。また、取得部13bは、取得した各種の情報を算出部13cへ出力する。
【0059】
算出部13cは、取得部13bから入力された情報に基づき、電動車椅子EWの車速が所定速を上回る場合に、周期的に到来する上述の落車判定区間Tjdgにおいて上述の減衰率を算出する。また、算出部13cは、算出した減衰率を落車判定部13dへ出力する。
【0060】
落車判定部13dは、算出部13cから入力された減衰率および落車判定閾値情報12cに基づき、落車判定区間Tjdgにおいて、ユーザが着座していないか否かを判定する。また、落車判定部13dは、複数の落車判定区間Tjdgにおいて、連続的にユーザが着座していないと判定した場合に、ユーザが落車したと判定する。
【0061】
また、落車判定部13dは、ユーザが落車したと判定した場合に、通知部13eに、通知デバイス6および/またはサーバ装置100に対する通知を行わせる。
【0062】
通知部13eは、落車判定部13dによってユーザが落車したと判定された場合に、通知デバイス6および/またはサーバ装置100に対する通知を行う。
【0063】
たとえば通知部13eは、スピーカを介して周囲に対し、ユーザが落車した旨を音声出力する。また、たとえば通知部13eは、ライトを介して周囲に対し、ユーザが落車した旨を通知する。たとえば通知部13eは、ライトの点滅を繰り返すことによって、周囲に対しユーザが落車した旨を通知する。
【0064】
また、たとえば通知部13eは、通信部11を介し、サーバ装置100に対してユーザが落車した旨を通知する。このとき、通知部13eは、たとえば電動車椅子EWの現在位置およびユーザが落車したと推定される位置を、サーバ装置100に対し併せて通知する。
【0065】
次に、実施形態に係る検出装置10が実行する処理手順について、
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、実施形態に係る検出装置10が実行する処理手順を示すフローチャート(その1)である。また、
図5は、実施形態に係る検出装置10が実行する処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【0066】
なお、
図4には、1周期分の落車判定区間Tjdgにおける落車判定処理の処理手順を、
図5には、異常判定処理の処理手順を、それぞれ示している。
【0067】
図4に示すように、落車判定区間Tjdgにおいては、まず車速が所定の走行判定閾値を上回るか否かが判定される(ステップS101)。走行判定閾値は、車速の所定速を規定する閾値であり、落車判定閾値情報12cに含まれる。走行判定閾値は、車速センサ3の検出精度に応じて適宜変更が可能である。
【0068】
車速が走行判定閾値以下である場合(ステップS101,No)、落車判定部13dは、落車判定結果を「未判定」とし(ステップS102)、処理を終了する。一方、車速が走行判定閾値を上回る場合(ステップS101,Yes)、異常判定結果情報12bに格納されている異常判定結果が異常なしであるか否かが判定される(ステップS103)。
【0069】
ここで、異常判定結果が異常なしである場合(ステップS103,Yes)、算出部13cが、減衰率を算出する(ステップS104)。そして、落車判定部13dが、算出された減衰率が落車判定閾値情報12cに含まれる落車判定閾値を下回るか否かを判定する(ステップS105)。
【0070】
ここで、減衰率が落車判定閾値を下回る場合(ステップS105,Yes)、落車判定部13dは、落車判定カウンタをカウントアップする(ステップS106)。そして、落車判定部13dは、落車判定カウンタが落車判定閾値情報12cに含まれる落車確定回数以上であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0071】
そして、落車判定カウンタが落車確定回数以上である場合(ステップS107,Yes)、落車判定部13dは、落車判定結果を「落車」とし(ステップS108)、処理を終了する。
【0072】
また、減衰率が落車判定閾値以上である場合(ステップS105,No)、または、落車判定カウンタが落車確定回数未満である場合(ステップS107,No)、落車判定部13dは、落車判定結果を「乗車」とし(ステップS109)、処理を終了する。
【0073】
また、異常判定処理では、
図5に示すように、異常判定部13aが、たとえばユーザから異常判定処理の実行トリガを受け付けたならば、ユーザが降車した状態であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0074】
そして、ユーザが降車した状態でない場合(ステップS201,No)、異常判定部13aは、異常判定結果を「未判定」とし(ステップS202)、処理を終了する。一方、ユーザが降車した状態である場合(ステップS201,Yes)、異常判定部13aは、振動付与部2に、異常判定のための振動を所定時間付与させる(ステップS203)。
【0075】
そして、算出部13cが、減衰率を算出する(ステップS204)。そして、異常判定部13aが、算出された減衰率が異常判定閾値情報12aに含まれる異常判定閾値を下回るか否かを判定する(ステップS205)。
【0076】
ここで、減衰率が異常判定閾値を下回る場合(ステップS205,Yes)、異常判定部13aは、異常判定カウンタをカウントアップする(ステップS206)。減衰率が異常判定閾値以上である場合(ステップS205,No)、異常判定部13aは、異常判定カウンタをカウントアップせずにステップS207へ移行する。
【0077】
そして、振動付与の所定時間が経過したか否かが判定される(ステップS207)。ここで、所定時間が経過していない場合(ステップS207,No)、たとえば落車判定区間Tjdgに対応する周期でステップS204からの処理を繰り返す。
【0078】
一方、所定時間が経過した場合(ステップS207,Yes)、異常判定部13aは、異常判定カウンタが異常判定閾値情報12aに含まれる異常確定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS208)。
【0079】
そして、異常判定カウンタが異常確定閾値以上である場合(ステップS208,Yes)、異常判定部13aは、異常判定結果を「異常あり」とし(ステップS209)、処理を終了する。
【0080】
また、異常判定カウンタが異常確定閾値未満である場合(ステップS208,No)、異常判定部13aは、異常判定結果を「異常なし」とし(ステップS210)、処理を終了する。
【0081】
上述してきたように、実施形態に係る検出装置10は、第1振動センサと、第2振動センサと、落車判定部13d(「判定部」の一例に相当)とを備える。第1振動センサは、車両におけるユーザの着座位置E11に設けられる。第2振動センサは、車両における着座位置E11以外の部位に設けられる。落車判定部13dは、第1振動センサおよび第2振動センサによるそれぞれの測定結果を比較することによってユーザが着座していないことを判定する。
【0082】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、ユーザの落車を検出することができる。
【0083】
また、車両は、電動車椅子EW(「車椅子」の一例に相当)である。
【0084】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、電動車椅子EWからのユーザの落車を検出することができる。
【0085】
また、第1振動センサおよび第2振動センサは、第1振動発電器4および第2振動発電器5である。
【0086】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、バッテリの電力を浪費することなくユーザの落車を検出することができる。
【0087】
また、落車判定部13dは、電動車椅子EWの走行中における第2振動発電器5のピーク電圧に対する第1振動発電器4のピーク電圧の減衰率に基づいて、ユーザが着座していないことを判定する。
【0088】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、ピーク電圧に基づいて精度よくユーザの落車を検出することができる。
【0089】
また、落車判定部13dは、減衰率が所定の落車判定閾値(「判定閾値」の一例に相当)を下回る場合に、ユーザが着座していないと判定する。
【0090】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、第1振動発電器4,第2振動発電器5それぞれの取り付け位置や、個体の精度差、経年劣化等を加味しつつ設定された落車判定閾値に基づいて精度よくユーザの落車を検出することができる。
【0091】
また、落車判定部13dは、所定の周期でユーザが着座していないことを判定し、連続的にユーザが着座していないと判定した場合に、ユーザが落車したと判定する。
【0092】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、落車判定区間Tjdgの1周期分における、ノイズ等による誤判定を防止することができる。
【0093】
また、検出装置10は、通知部13eをさらに備える。通知部13eは、落車判定部13dによってユーザが落車したと判定された場合に、通知デバイス6を介し、ユーザが落車したことを周囲へ通知する。
【0094】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、身体機能の一部に障害を有する場合が多い電動車椅子EWのユーザに対する援助を、通知を介して迅速に求めるもとが可能となる。
【0095】
また、通知部13eはさらに、ネットワークNを介し、ユーザが落車したことをサーバ装置100へ通知する。
【0096】
したがって、実施形態に係る検出装置10によれば、落車したユーザに対する適切な援助を、たとえばeCallを介して提供することが可能となる。
【0097】
なお、上述した実施形態では、第1振動発電器4,第2振動発電器5の出力電圧に基づいて一方の他方に対する減衰率を算出し、算出した減衰率をユーザの落車判定に用いることとしたが、第1振動発電器4,第2振動発電器5の発電した電力を落車判定に関する処理または落車判定以外のことに利用してもよい。
【0098】
たとえば、第1振動発電器4,第2振動発電器5が発電した電力を、通知デバイス6や通信部11の電力源としてもよい。すなわち、通知部13eは、第1振動発電器4,第2振動発電器5が発電した電力を通知デバイス6および通信部11の電力源として通知を行ってもよい。また、たとえば、第1振動発電器4,第2振動発電器5が発電した電力を、電動車椅子EWを走行させる駆動機構の駆動電力の一部として利用してもよい。
【0099】
これにより、電動車椅子EWのバッテリを浪費することなく、自家発電を行いながら効率的に落車判定を行いつつ、電動車椅子EWの航続可能距離を延ばすことも可能となる。
【0100】
また、上述した実施形態では、車両が電動車椅子EWである例を挙げたが、これに限られるものではなく、たとえば手動式の車椅子であってもよい。かかる場合、たとえば手動式の車椅子をユーザが単独で利用している場面での落車判定に有用となる。
【0101】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 検出システム
2 振動付与部
3 車速センサ
4 第1振動発電器
5 第2振動発電器
6 通知デバイス
10 検出装置
11 通信部
12 記憶部
12a 異常判定閾値情報
12b 異常判定結果情報
12c 落車判定閾値情報
13 制御部
13a 異常判定部
13b 取得部
13c 算出部
13d 落車判定部
13e 通知部
100 サーバ装置
E1 着座部
E11 着座位置
E2 走行ベース
EW 電動車椅子