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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61B6/03 521B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020169292
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061343
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 将太
(72)【発明者】
【氏名】木下 博樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁人
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148157(JP,A)
【文献】特開2002-65659(JP,A)
【文献】特開2020-28477(JP,A)
【文献】特開2020-103944(JP,A)
【文献】特開平5-126958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0235377(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013213722(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を挿入するための開口が設けられたカバーと、
前記カバー内に設けられ、前記開口の周りを回転する回転体と、
前記カバーの内部空間内の空気を前記カバーの外部に排気する第1ファンと、を備え、
前記第1ファンは、
前記回転体と同軸で前記回転体から独立して回転可能な第1支持体と、
前記第1支持体に設けられたフィンと、を備える、
X線CT装置。
【請求項2】
前記第1ファンを、前記回転体から独立して回転させる独立状態と、前記回転体と接続されて前記回転体とともに回転させる共動状態との間で切り替える切替機構を更に備える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記切替機構は、前記第1支持体と前記回転体を接続するクラッチ機構を含む、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記第1ファンを、前記独立状態と前記共動状態の間で前記切替機構に切り替えさせる切替制御を行う制御装置を更に備える、
請求項2または3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記第1ファンを回転させる駆動部を更に備える、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記第1支持体は、前記回転体の外周に配置され、
前記フィンは、前記第1支持体の外周に設けられる、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記第1支持体は、前記回転体に対して、前記回転体の回転軸に沿って並設されており、
前記フィンは、前記第1支持体の前記回転体に対する反対側の面に設けられる、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記内部空間内の空気を前記カバーの外部に排気する第2ファンを更に備え、
前記第2ファンは、
前記回転体及び前記第1支持体と同軸で前記回転体及び第1支持体から独立して回転可能な第2支持体と、
前記第2支持体に設けられたフィンと、を備える、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記回転体の内周に配置され、前記内部空間内の空気を前記カバーの外部に排気する第2ファンを更に備え、
前記第2ファンは、
前記回転体の内周に配置され、前記回転体及び前記第1支持体と同軸で前記回転体及び第1支持体から独立して回転可能な第2支持体と、
前記第2支持体の内周に設けられたフィンと、を備える、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記回転体における前記第1ファンが設けられた側の反対側に配置され、前記内部空間内の空気を前記カバーの外部に排気する第2ファンを更に備え、
前記第2ファンは、
前記回転体及び前記第1支持体と同軸で前記回転体及び第1支持体から独立して回転可能な第2支持体と、
前記第2支持体における前記回転体が設けられた側の反対側の面に設けられたフィンと、を備える、
請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記第1ファンの出力を制御する出力制御部を更に備え、
前記出力制御部は、前記カバー内の温度に基づいて、前記第1ファンの出力を調整する、
請求項1から10のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置の内部を冷却するため、従来、X線CT装置の架台装置のカバーにファンを設ける技術がある。しかし、架台装置のカバーにファンを設けると、ファンを作動させる際に多大な騒音や振動を発生させる恐れがある。あるいは、X線CT装置の内部に設けられた回転体にフィンを設ける技術がある。しかし、回転体にフィンを設ける場合には、回転体が回転していないときにはX線CT内を排熱することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-148157号公報
【文献】特開2002-65659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、多大な騒音や振動の発生を抑制しながら、回転体が回転していないときでも架台装置のカバー内を排熱できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るX線CT装置は、カバーと、回転体と、第1ファンと、を持つ。カバーには、被検体を挿入するための開口が設けられている。回転体は、前記カバー内に設けられて、前記開口の周りを回転する。第1ファンは、前記カバーの内部空間内の空気を前記カバーの外部に排気する。前記第1ファンは、第1支持体と、フィンと、を持つ。第1支持体は、前記回転体と同軸で前記回転体から独立して回転可能である。フィンは、前記第1支持体に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成図。
図2】架台装置10を背面視した概要を示す図。
図3】架台装置10を側面視した概要を示す図。
図4】架台装置10を側面視した概要を示す図。
図5A】外側ファン100を背面から見た斜視図。
図5B】外側ファン100を正面から見た斜視図。
図6】X線CT装置1の動作の一例を示すフローチャート。
図7】第1モデルの解析結果のベクトル図。
図8】第2の実施形態に係るX線CT装置2の架台装置10を背面視した概要を示す図。
図9】架台装置10を側面視した概要を示す図。
図10】架台装置10を側面視した概要を示す図。
図11A】前側ファン200を背面から見た斜視図。
図11B】前側ファン200を正面から見た斜視図。
図12】第2モデルの解析結果のベクトル図。
図13】第3の実施形態に係るX線CT装置3の要部を背面視した概要を示す図。
図14】第4の実施形態に係るX線CT装置4の要部を側面視した概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線CT装置について説明する。X線CT装置は、被検体を挿入可能な開口が設けられた架台と、被検体を載置する天板を有する寝台を備える医用装置である。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成図、図2は、架台装置10を背面視した概要を示す図、図3及び図4は、架台装置10を側面視した概要を示す図、図5Aは、外側ファン100を正面から見た斜視図、図5Bは、外側ファン100を背面から見た斜視図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向(前後方向)、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向8周方向)、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向(上下方向)とそれぞれ定義する。Z軸方向の一側であり、架台装置10における寝台装置30が設けられている側を「前側」、Z軸方向の他側であり、寝台装置30が設けられている側の反対側を「後側」、X軸方向の一側を「左側」、他側を「右側」、Y軸方向の一側を「上側」、他側を「下側」とそれぞれ定義する。
【0009】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、モータ18と、ベアリング19と、カバー20と、制御装置25と、を備える。架台装置10が有するカバー20には、さらに、クラッチ機構70及び外側ファン100が収納されている。X線管11、ウェッジ12、コリメータ13、X線高電圧装置14、X線検出器15、DAS16、回転フレーム17、モータ18、及びベアリング19は、カバー20内に収納されている。
【0010】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0011】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0012】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0013】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などを含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0014】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号などでもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0015】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもよい。
【0016】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置25から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0017】
回転フレーム17は、第1回転フレーム61と、第2回転フレーム62と、を備える。回転フレーム17は、第1回転フレーム61の外側に第2回転フレーム62が配置された2層構造をなす。第1回転フレーム61と第2回転フレーム62の間には、クラッチ70機構が設けられている。第1回転フレーム61及び第2回転フレーム62は、クラッチ機構70による接続が切断されているときに、互いに独立して回転可能とされている。
【0018】
第1回転フレーム61は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。第1回転フレーム61は、カバー20に設けられた固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として、ベアリング19を介して回転自在に支持される。第1回転フレーム61は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、第1回転フレーム61に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、第1回転フレーム61から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。第1回転フレーム61は、X線管11などを支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。第1回転フレーム61は、回転体の一例である。
【0019】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0020】
モータ18は、例えば、外側ファン100に接続されている。モータ18は、例えば、ギアなどの間接的機構を介することなく、駆動対象となる外側ファン100に直接駆動力を伝達するDD(Direct drive)モータである。モータ18は、制御装置25により出力される駆動指令に基づいて作動し、外側ファン100を駆動する。モータ18は、駆動部の一例である。駆動部は、モータ以外の装置でもよく、例えば、バネや油圧シリンダなどの動力を付与する部材でもよい。
【0021】
ベアリング19は、第1回転フレーム61とカバー20間、及び第2回転フレーム62とカバー20の間にそれぞれ介在されている。ベアリング19は、例えばカバー20に設けられた固定フレームに取り付けられ、回転フレーム17の第1回転フレーム61及び第2回転フレーム62をそれぞれ回転可能に支持している。
【0022】
カバー20には、被検体を挿入するための円形開口21が設けられており、カバー20の内部には内部空間が形成されている。図5Aに示すように、カバー20の背面には、カバー20内に空気を導入する吸気口22が形成されており、カバー20の天面の後部には、カバー20から空気を排出する排気口23が形成されている。吸気口22は、カバー20の背面における下部に設けられている。排気口23は、カバー20の天面の後部における上部に設けられている。回転フレーム17は、カバー20内に設けられ、円形開口21の周りを回転する。
【0023】
制御装置25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する処理回路と、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを有する。処理回路は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0024】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA)などの回路(circuitry)を意味する。記憶装置にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。記憶装置は、非一時的(ハードウェアの)記憶媒体でもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0025】
制御装置25は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10の架台装置10をチルトさせたり、寝台装置30の天板33を移動させたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置25は、入力インターフェース43に入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置25は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置25は、回転フレーム17の回転角度を随時、処理回路50に提供する。制御装置25は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0026】
制御装置25は、架台装置10を移動レールに沿って自走させ、本スキャン撮影を行ったり、本スキャン撮影の実行前に行う位置決め撮影であるスキャノ撮影を行ったりする。制御装置25は、モータ18に駆動指令(駆動開始指令及び駆動終了指令)、クラッチ機構70に着脱指令(装着指令及び離脱指令)をそれぞれ出力してモータ18及びクラッチ機構70を制御する。制御装置25は、スキャノ撮影時には回転フレーム17のみを回転させ、本スキャン撮影時には回転フレーム17を回転させる。
【0027】
クラッチ機構70は、カバー20内において、第1回転フレーム61と第2回転フレーム62の間に介在されている。クラッチ機構70は、制御装置25により出力される着脱指令に基づいて、第1回転フレーム61と第2回転フレーム62を接続させ、連結させて一体化させたり、第1回転フレーム61と第2回転フレーム62との接続を切断させたりする。
【0028】
第2回転フレーム62の状態として、図3に示すように、クラッチ機構70により第1回転フレーム61との接続が切断された状態を独立状態という。一方、図4に示すように、クラッチ機構70により第1回転フレーム61と接続されて第1回転フレーム61を従動させ、第1回転フレーム61とともに回転する第2回転フレーム62の状態を共動状態という。
【0029】
例えば、独立状態の第2回転フレーム62をモータ18によって回転させると、第2回転フレーム62は単独で回転する。一方、モータ18により共動状態の第2回転フレーム62をモータ18によって回転させると、第2回転フレーム62の回転力がクラッチ機構70を介して第1回転フレーム61に伝達され、第2回転フレーム62とともに第1回転フレーム61が回転する。クラッチ機構70は、第2回転フレーム62の独立状態と共動状態を切り替える。制御装置25は、第2回転フレーム62を、独立状態と共動状態の間でクラッチ機構70に切り替えさせる切替制御を行う。クラッチ機構70は、切替機構の一例である。
【0030】
切替機構は、クラッチ機構70以外の機構でもよい。例えば、第1回転フレーム61と第2回転フレーム62をそれぞれ回転させる2つのモータを備え、第2回転フレーム62のみをモータで回転させる状態を独立状態とし、2つのモータを同時に作動させて第1回転フレーム61とともに第2回転フレーム62を回転させる状態を共動状態としてもよい。あるいは、切替機構は、モータ18の駆動力を伝達する伝達系統として、第2回転フレーム62のみに駆動力を伝達する伝達系統と、第1回転フレーム61及び第2回転フレーム62に駆動力を伝達する伝達系統を切り替える機構でもよい。
【0031】
第2回転フレーム62は、カバー20内において、第1回転フレーム61の周囲に配置されている。第2回転フレーム62は、第1回転フレーム61と同軸に配置された3本のリング部材を備えている。3本のリング部材は、前後方向に並んで配置されている。第2回転フレーム62の外周面には、複数の外側フィン63が立設されて設けられている。第2回転フレーム62における3本のリング部材は、複数の外側フィン63に接続されていい退化されている。
【0032】
複数の外側フィン63は、互いに同じ方向を向いており、第2回転フレーム62が第1回転方向に回転するときに、カバー20の内部の空気を後方に案内する形状をなしている。第2回転フレーム62は、第1回転方向、例えば背面視して時計回りに回転することによってカバー20内を換気し、カバー20の内部空間内の空気をカバー20の外部に排気して排熱する。
【0033】
第2回転フレーム62は、第1回転フレーム61とともに第1回転方向に回転可能である。第2回転フレーム62は、第1回転方向に対して逆回転となる第1逆回転方向に回転可能となるようにしてもよい。第2回転フレーム62は、第1支持体の一例であり、外側ファン100は、第1ファンの一例であり、外側フィン63は、フィンの一例である。
【0034】
第2回転フレーム62の背面側には、背面板64が設けられている。背面板64は、複数の穴の開いた円盤状をなす。第2回転フレーム62の周面には、複数の通気孔65が設けられている。背面板64には、円形開口21と略同径の内側開口66が設けられている。内側開口66は、被検体Pが挿入される開口である。第2回転フレーム62が第1回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、外側フィン63の誘導による吸引力で通気孔65を通して第2回転フレーム62の周方向外側に排出され、前方に誘導される。第2回転フレーム62が第1逆回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、第2回転フレーム62が第1回転方向に回転した場合と逆の方向に流れる。
【0035】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30における基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、支持フレーム34に沿って、天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。寝台駆動装置32は、天板33を後退させて架台装置10の開口に挿入させる。寝台駆動装置32は、天板33を前進させて架台装置10から引き抜く。
【0036】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成でもよい。
【0037】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路50とを有する。実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0038】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0039】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師や技師などの操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)でもよい。
【0040】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データを収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などの入力操作を受け付ける。入力インターフェース43は、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。
【0041】
なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0042】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、制御機能51と、前処理機能52と、再構成処理機能53と、画像処理機能54とを備える。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0043】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理デバイスまたは複合プログラマブル論理デバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイなどの回路を意味する。記憶装置にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。記憶装置は、非一時的(ハードウェアの)記憶媒体でもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0044】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0045】
制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。例えば、制御機能51は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置25および寝台駆動装置32を制御することで、架台装置10における検出データの収集処理等を実行する。
【0046】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。
【0047】
再構成処理機能53は、前処理機能52によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像データを生成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
【0048】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0049】
次に、第1の実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。図6は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の動作の一例を示すフローチャートである。図6では、X線CT装置1におけるスキャノ撮影及び本撮影を経る被検体PのX線画像を撮影する手順について説明する。
【0050】
例えば、入力インターフェースに設けられた撮影開始スイッチを操作者が入力することにより、X線CT装置1は、X線画像の撮影を開始する。X線画像の撮影を開始すると、制御装置25は、まず、モータ18に駆動開始指令を出力する。このとき、外側ファン100は独立状態にあるため、モータ18の回転によって、外側ファン100を独立して回転させ始める(ステップS101)。
【0051】
外側ファン100が回転すると、外側ファン100の外周に設けられた外側フィン63によってカバー20内の空気が通気孔65から吸引され、カバー20の天面の後部に設けられた排気口23に誘導される。カバー20内の空気が排気口23に誘導されることから、カバー20の背面に設けられた吸気口22から空気がカバー20内に導入され、カバー20内が換気される。このため、外側ファン100が独立して回転を開始することにより、回転フレーム17が停止した状態で、カバー20内の換気が開始される。
【0052】
続いて、制御装置25は、外側ファン100を回転させたままスキャノ撮影を行う(ステップS103)。スキャノ撮影を行っている間、外側ファン100が回転していることから、カバー20内が換気される。カバー20内が換気されることにより、カバー20内が排熱されてカバー20内の機器類は冷却される。
【0053】
スキャノ撮影が終了したら、制御装置25は、クラッチ機構70に装着指令を出力し、クラッチ機構70に外側ファン100を共動状態とさせる(ステップS105)。外側ファン100が共動状態となることにより、外側ファン100に追従して第1回転フレーム61が回転する。制御装置25は、第1回転フレーム61を回転させたまま本スキャン撮影を実行する(ステップS107)。本スキャン撮影が実行されている間も外側ファン100が回転しているので、カバー20内が排熱されてカバー20内の機器類は冷却される。
【0054】
本スキャン撮影が終了したら、制御装置25は、クラッチ機構70に離脱指令を出力し、第1回転フレーム61と第2回転フレーム62を離脱させて外側ファン100を独立状態とする(ステップS109)。外側ファン100が独立状態となることにより、外側ファン100は回転を継続するが、第1回転フレーム61は、徐々に減速して停止する。
【0055】
続いて、制御装置25は、次の患者が有るか否かを判定する(ステップS111)。次の患者が有ると判定した場合、制御装置25は、ステップS103に処理を戻し、スキャノ撮影を再度実行する。次の患者がないと判定した場合、制御装置25は、モータ18の駆動を継続させ、第2回転フレーム62(外側ファン100)のみが回転している状態を維持する(ステップS113)。
【0056】
続いて、制御装置25は、本スキャン撮影が終了してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS115)。所定時間が経過していないと判定した場合、制御装置25は、ステップS113に処理を戻し、所定時間が経過するまで外側ファン100のみの回転を継続する。所定時間が経過したと判定した場合、制御装置25は、モータ18に駆動終了指令を出力して、図6に示す処理を終了する。
【0057】
次に、第1の実施形態に係るX線CT装置1における外側ファン100を回転させた場合のモデル(以下、「第1モデル」という)を作成し、第1モデルにおけるカバー20内の空気の流れについて行った解析の結果について説明する。図7は、第1モデルの解析結果のベクトル図である。
【0058】
図7に示す解析結果から、X線CT装置1におけるカバー20内において、外側ファン100を第1回転方向に回転させると、カバー20内における空気の流れは、以下に示すものとなった。まず、カバー20の背面に設けられた吸気口22からカバー20内に空気が導入される。カバー20内に導入された空気は、外側ファン100に設けられた通気孔65を通過して前方に案内される。その後、カバー20内の空気は、排気口23を通じてカバー20の外部に排出される。
【0059】
第1の実施形態に係るX線CT装置1においては、外側ファン100を回転させることにより、カバー20内を換気して、カバー20内を排熱し、カバー20内の機器を冷却することができる。外側ファン100は、第1回転フレーム61の周囲に配置されていることから、カバー20にファンを設ける必要がないので、多大な騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0060】
さらに、第1の実施形態に係るX線CT装置1では、第1回転フレーム61と第2回転フレーム62の間にクラッチ機構70が設けられている。このため、外側ファン100は、第1回転フレーム61とは独立して回転可能である。したがって、第1回転フレーム61が回転していないときでもカバー20内を換気して排熱することができる。さらには、第1回転フレーム61の回転速度によらず、外側ファン100の回転速度を設定し、カバー20内の風量を調整することによって冷却効果を調整することができる。このため、例えばカバー20内の温度に基づいて、外側ファン100の回転速度を制御することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るX線CT装置2における架台装置10を背面視した概要を示す図、図9及び図10は、架台装置10を側面視した概要を示す図、図11Aは、前側ファン200を背面から見た斜視図、図11Bは、前側ファン200を正面から見た斜視図である。X線CT装置2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1と比較して、外側ファン100に代えて、前側ファン200が設けられている点で主に異なる。以下、この相違点を中心としてX線CT装置2について説明し、共通する構成についてはその説明を省略することがある。
【0062】
第2の実施形態のX線CT装置2において、回転フレーム17は、第3回転フレーム81と、第4回転フレーム82と、を備える。回転フレーム17は、第3回転フレーム81の前側に第4回転フレーム82が配置された2層構造である。第3回転フレーム81と第4回転フレーム82の間には、クラッチ機構70が設けられている。第3回転フレーム81及び第4回転フレーム82は、クラッチ機構70による接続が切断されているときに、互いに独立して回転可能とされている。
【0063】
第4回転フレーム82は、カバー20内において、第3回転フレーム81に対して、回転フレーム17の回転軸に沿って並設され、第3回転フレーム81の前方に配置されている。第4回転フレーム82は、第1回転方向に回転することによってカバー20内を換気し、カバー20の内部空間内の空気をカバー20の外部に排気して排熱する。
【0064】
第4回転フレーム82における第3回転フレーム81に対する反対側の面である前面には、複数の前側フィン83が立設して設けられている。第4回転フレーム82及び前側フィン83によって、前側ファン200が構成される。複数の前側フィン83は、互いに同一形状をなしており、第4回転フレーム82の回転軸周りに等間隔で配置されている。複数の前側フィン83は、互いの同じ方向を向いており、前側ファン200が第1回転方向に回転するときに、カバー20の内部の空気を後方に案内する形状をなしている。
【0065】
第3回転フレーム81の背面側には、背面板84が設けられている。背面板84は、複数の穴の開いた円盤状をなす。第4回転フレーム82は、背面板84の前方において、背面板84と平行に配置されている。第3回転フレーム81の周面には、複数の通気孔85が設けられている。背面板84には、円形開口21と略同径の内側開口86が設けられている。第4回転フレーム82は、第2支持体の一例であり、前側ファン200は、第2ファンの一例であり、前側フィン83は、フィンの一例である。
【0066】
前側ファン200が第1回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、前側フィン83の誘導による吸引力で通気孔85を通して前側ファン200の周方向外側に排出され、前方に誘導される。前側ファン200が第1逆回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、前側ファン200が第1回転方向に回転した場合と逆の方向に流れる。
【0067】
前側ファン200には、モータ18が接続されている。前側ファン200は、モータ18が駆動することによって回転する。第4回転フレーム82は、クラッチ機構70を介して第3回転フレーム81と接続されて共動状態となる。前側ファン200は、共動状態となることにより、前側ファン200に追従して第3回転フレーム81が回転する。前側ファン200の状態は、図9に示すように、クラッチ機構70により第3回転フレーム81との接続が切断された独立状態と、図10に示すように、クラッチ機構70により第3回転フレーム81と接続された共動状態とに切り替えられる。
【0068】
前側ファン200は、独立状態では前側ファン200のみで回転し、共動状態では第3回転フレーム81を追従させて第3回転フレーム81とともに回転する。前側ファン200と第3回転フレーム81とは、クラッチ機構70による接続が切断されているときに、互いに独立して回転可能とされている。
【0069】
次に、X線CT装置2における前側ファン200を回転させた場合のモデル(以下、「第2モデル」という)を作成し、第2モデルにおけるカバー20内の空気の流れについて行った解析の結果について説明する。図12は、第2モデルの解析結果のベクトル図である。
【0070】
図12に示す解析結果から、X線CT装置2におけるカバー20内において、前側ファン200を第1回転方向に回転させると、カバー20内における空気の流れは、以下に示すものとなった。まず、カバー20の背面に設けられた吸気口22からカバー20内に空気が導入される。カバー20内に導入された空気は、前側ファン200に設けられた通気孔85を通過して前方に案内される。その後、カバー20内の空気は、排気口23を通じてカバー20の外部に排出される。
【0071】
さらに、第1モデルにおける外側ファン100と、第2モデルにおける前側ファン200と、カバー20内にファンを設けた従来(現行)のX線CT装置(以下、「比較装置」という)のそれぞれにおける回転速度とカバー20内の風量の関係に関する実験の結果について説明する。
【0072】
一方、第1モデル及び第2モデルでは、外側ファン100及び前側ファン200の回転速度が速いほど、風量が大きくなる関係となった。したがって、比較装置のようにカバー20という操作者や患者に近い位置に、騒音源となるファンを設ける必要がないので、騒音の低減を図ることができる。
【0073】
さらに、第2の実施形態におけるX線CT装置2の方が、第1の実施形態におけるX線CT装置1よりもファンの回転速度に対する風量が大きくなることが分かった。このため、X線CT装置2の方が、X線CT装置1よりも、カバー20内の風量を多く稼ぎ、カバー20内の冷却効果を高めることができることが分かった。
【0074】
X線CT装置2においては、前側ファン200を回転させることにより、カバー20内を換気して、カバー20内を排熱し、カバー20内の機器を冷却することができる。前側ファン200は、回転フレーム17の回転軸に沿って第3回転フレーム81に並設され、第3回転フレーム81の前方に配置されていることから、カバー20にファンを設ける必要がないので、多大な騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0075】
さらに、X線CT装置2においては、第3回転フレーム81と第4回転フレーム82の間にクラッチ機構70が設けられている。このため、前側ファン200は、第3回転フレーム81とは独立して回転可能である。したがって、第3回転フレーム81が回転していないときでもカバー20内を換気して排熱することができる。さらには、第3回転フレーム81の回転速度によらず、前側ファン200の回転速度を設定し、カバー20内の風量を調整することによって冷却効果を調整することができる。さらに、前側ファン200を回転フレーム17の回転軸に沿って配置することにより、カバー20内の風量を大きくすることができる。
【0076】
(第3の実施形態)。
図13は、第3の実施形態に係るX線CT装置3の要部を背面視した概要を示す図である。第3の実施形態に係るX線CT装置3は、第1の実施形態に係るX線CT装置1と比較して、内側ファン300を備える点で異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第3の実施形態に係るX線CT装置3について説明し、共通する構成についてはその説明を省略することがある。
【0077】
第3の実施形態のX線CT装置3における回転フレーム17は、第1回転フレーム61と、第2回転フレーム62と、第5回転フレーム67と、を備える。第3実施形態の回転フレーム17は、第1回転フレーム61の外側に第2回転フレーム62が配置され、第1回転フレーム61の内側に第5回転フレーム67が配置された3層構造をなす。
【0078】
第5回転フレーム67の内側には、複数の内側フィン68が設けられ、第5回転フレーム67の前側には、第2回転フレーム62の前面に設けられた前面板と同様の前側板が設けられる。複数の内側フィン68は、互いに同一形状をなしている。複数の内側フィン68は、互いに同じ方向を向いており、第5回転フレーム67が第1回転方向に回転するときに、カバー20の内部の空気を後方に案内する形状をなしている。第5回転フレーム67には、通気孔が形成されていないが、第2回転フレーム62に形成された通気孔65と同様の通気孔が形成されていてもよい。第5回転フレーム67と内側フィン68によって、第3ファンが構成される。
【0079】
外側ファン100と内側ファン300は、同時に回転するように接続されている。このため、内側ファン300が、外側ファン100に追従して外側ファン100と共動する。内側ファン300は、外側ファン100から独立して回転可能であってもよい。この場合、内側ファン300は、第1回転フレーム61や外側ファン100とクラッチ機構を介して接続されてもよく、モータは、外側ファン100及び内側ファン300のどちらか一方または両方に接続されていてもよい。内側ファン300は、第2ファンの一例であり、第5回転フレーム67は、第2支持体の一例である。
【0080】
内側ファン300が第1回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、内側フィン68の誘導による吸引力で通気孔65を通して支持体筒部の周方向外側に排出され、前方に誘導される。内側ファン300が第1逆回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、内側ファン300が第1回転方向に回転した場合と逆の方向に流れる。
【0081】
第3の実施形態に係るX線CT装置3は、第1の実施形態と同様の外側ファン100が第1回転フレーム61の外周に設けられるとともに、内側ファン300が第1回転フレーム61の内周に設けられている。このため、外側ファン100とともに内側ファン300によってカバー20内を換気して、カバー20内を排熱し、カバー20内の機器を冷却する効果を更に高めることができる。
【0082】
(第4の実施形態)。
図14は、第4の実施形態に係るX線CT装置4の要部を側面視した概要を示す図である。第4の実施形態に係るX線CT装置4は、第2の実施形態に係るX線CT装置1と比較して、後側ファン400を備える点で異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心として、第4の実施形態に係るX線CT装置4について説明し、共通する構成についてはその説明を省略することがある。
【0083】
第4の実施形態のX線CT装置4における回転フレーム17は、第3回転フレーム81と、第4回転フレーム82と、第6回転フレーム87と、を備える。第3実施形態の回転フレーム17は、第3回転フレーム81の前側に第4回転フレーム82が配置され、第3回転フレーム81の後側に第6回転フレーム87が配置された3層構造をなす。
【0084】
第6回転フレーム87における回転フレーム17に対する反対側である後側には、複数の後側フィン88が設けられる。複数の後側フィン88は、互いに同一形状をなしている。複数の後側フィン88は、互いに同じ方向を向いており、第6回転フレーム87が第1回転方向に回転するときに、カバー20の内部の空気を後方に案内する形状をなしている。後側ファン400は、第2ファンの一例であり、第6回転フレーム87は、第2支持体の一例である。第6回転フレーム87と後側フィン88によって、第4ファンが構成される。
【0085】
前側ファン200と後側ファン400は、同時に回転するように接続されている。このため、後側ファン400が、前側ファン200に追従して前側ファン200と共動する。後側ファン400は、前側ファン200から独立して回転可能であってもよい。この場合、後側ファン400は、第1回転フレーム61や前側ファン200とクラッチ機構を介して接続されてもよく、モータは、前側ファン200及び後側ファン400のどちらか一方または両方に接続されていてもよい。
【0086】
後側ファン400が第1回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、後側フィン88の誘導によって、第1回転フレーム61に設けられた通気孔を通して回転フレーム17の周方向外側に排出され、前方に誘導される。後側ファン400が第1逆回転方向に回転すると、カバー20内の空気は、後側ファン400が第1回転方向に回転した場合と逆の方向に流れる。
【0087】
第4の実施形態に係るX線CT装置4は、第2の実施形態と同様の前側ファン200
が第1回転フレーム61の前側に設けられるとともに、後側ファン400が第1回転フレーム61の後側に設けられている。このため、前側ファン200とともに後側ファン400によってカバー20内を換気して、カバー20内を排熱し、カバー20内の機器を冷却する効果を更に高めることができる。
【0088】
上記の各実施形態において、外側ファン100または前側ファン200を回転させるモータに代えて、回転フレーム17を回転させるモータを別途設けてもよいし、外側ファン100または前側ファン200を回転させるモータとともに第1回転フレーム61を回転させるモータを別途設けてもよい。外側ファン100または前側ファン200を回転させるモータとともに第1回転フレーム61を回転させるモータを別途設ける場合には、外側ファン100または前側ファン200と第1回転フレーム61を接続するクラッチ機構70を設けなくてもよい。
【0089】
上記第1の実施形態では、外側ファン100が設けられ、第3の実施形態のような内側ファン300が設けられていない。これに対して、外側ファン100が設けられておらず、内側ファン300のみが設けられていてもよい。上記第2の実施形態では、前側ファン200が設けられ、第4の実施形態のような後側ファン400が設けられていない。これに対して、前側ファン200が設けられておらず、後側ファン400のみが設けられていてもよい。さらに、外側ファン100及び内側ファン300の一方または両方、並びに前側ファン200と後側ファン400の一方または両方がともに設けられていてもよい。
【0090】
上記各実施形態において、制御装置25は、カバー20内の温度に基づいて、モータ18の回転量を制御するなどして、外側ファン100や前側ファン200の出力を調整するようにしてもよい。この場合の制御装置25は、出力制御部の一例である。例えば、カバー20内の温度が高いほど外側ファン100等の出力を大きくし、カバー20内の温度が低いほど外側ファン100等の出力を小さくしてもよい。あるいは、カバー20内の温度が所定の閾値未満では外側ファンを停止させておき、閾値以上である場合に、外側ファン100などの回転を開始させてもよいし、段階的に設定された閾値に応じて、外側ファン100の出力を順次大きくするなどとしてもよい。
【0091】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体を挿入するための開口が設けられたカバーと、前記カバーの内部空間に設けられ、前記開口の周りを回転する回転体と、前記内部空間内の空気を前記カバーの外部に排気する第1ファンと、を備え、前記第1ファンは、前記回転体と同軸で前記回転体から独立して回転可能な第1支持体と、前記第1支持体に設けられたフィンと、を持つことにより、多大な騒音や振動の発生を抑制しながら、回転体が回転していないときでも架台のカバー内を排熱できる。
【0092】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1~4…X線CT装置、10…架台装置、17…回転フレーム、18…モータ、19…ベアリング、20…カバー、21…円形開口、22…吸気口、23…排気口、25…制御装置、30…寝台装置、40…コンソール装置、41…メモリ、42…ディスプレイ、43…入力インターフェース、50…処理回路、61…第1回転フレーム、62…第2回転フレーム、63…外側フィン、64…背面板、65…通気孔、66…内側開口、67…第5回転フレーム、68…内側フィン、70…クラッチ機構、81…第3回転フレーム、82…第4回転フレーム、83…前側フィン、84…背面板、85…通気孔、86…内側開口、87…第6回転フレーム、88…後側フィン、100…外側ファン、200…前側ファン、300…内側ファン、400…後側ファン
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14