(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】包装搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65B 43/46 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B65B43/46 A
(21)【出願番号】P 2020186258
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】河田 学
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-294726(JP,A)
【文献】特開平08-133237(JP,A)
【文献】特開2019-099385(JP,A)
【文献】特許第6155406(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装を個々に把持しつつ搬送路に沿って搬送する装置であって、
前記搬送路の方向に並び、
前記搬送路に沿って設けられた一つのリニアモータのレールに配置され、前記リニアモータの電磁的相互作用により前記搬送路の方向に移動可能な複数の可動子と、
前記可動子にそれぞれ支持され、
前記包装のうち第1
の包装の両側の端部を把持する一対の第1のグリッパと、
前記可動子にそれぞれ支持され、前記第1の包装よりも前記搬送路から離れた位置で前記第1の包装に対して並列に配置された
前記包装のうち第2
の包装の両側の端部を把持する一対の第2のグリッパと、
前記一対の第1のグリッパを支持する一対の第1の可動子と、
前記一対の第2のグリッパを支持する一対の第2の可動子と、を備え、
前記一対の第2の可動子は、前記一対の第1の可動子を間に挟んだ状態で、前記第1の可動子と共に前記搬送路の方向に並んでいる、包装搬送装置。
【請求項2】
包装を個々に把持しつつ搬送路に沿って搬送する装置であって、
前記搬送路の方向に並び、
前記搬送路に沿って設けられた一つのリニアモータのレールに配置され、前記リニアモータの電磁的相互作用により前記搬送路の方向に移動可能な複数の可動子と、
前記可動子にそれぞれ支持され、
前記包装のうち第1
の包装の両側の端部を把持する一対の第1のグリッパと、
前記可動子にそれぞれ支持され、前記第1の包装よりも前記搬送路から離れた位置で前記第1の包装に対して並列に配置された
前記包装のうち第2
の包装の両側の端部を把持する一対の第2のグリッパと、を備え、
前記一対の第2のグリッパのうち少なくとも一方は、前記第1のグリッパを支持する第1
の可動子とは別の第2
の可動子に支持されて
おり、
前記一対の第1のグリッパの一方と、前記一対の第2のグリッパの一方とが、同一の前記可動子に支持されている、
包装搬送装置。
【請求項3】
包装を個々に把持しつつ搬送路に沿って搬送する装置であって、
前記搬送路の方向に並び、
前記搬送路に沿って設けられた一つのリニアモータのレールに配置され、前記リニアモータの電磁的相互作用により前記搬送路の方向に移動可能な複数の可動子と、
前記可動子にそれぞれ支持され、
前記包装のうち第1
の包装の両側の端部を把持する一対の第1のグリッパと、
前記可動子にそれぞれ支持され、前記第1の包装よりも前記搬送路から離れた位置で前記第1の包装に対して並列に配置された
前記包装のうち第2
の包装の両側の端部を把持する一対の第2のグリッパと、を備え、
前記一対の第2のグリッパのうち少なくとも一方は、前記第1のグリッパを支持する第1
の可動子とは別の第2
の可動子に支持されて
おり、
前記複数の可動子はそれぞれ、
前記搬送路から離れる向きに突出し、前記グリッパを支持するアームを含み、
前記第1のグリッパおよび前記第2のグリッパのうち少なくとも前記第2のグリッパを支持する第2のアームの長さは、前記第1のグリッパのみを支持する第1のアームよりも長い、
包装搬送装置。
【請求項4】
前記第1のグリッパおよび前記第2のグリッパのうち前記第2のグリッパのみを支持する前記第2のアームは、隣接する前記第1のアームの先端部を前記第2のアームが突出する方向に超えた位置で、前記第1のアーム側へ前記搬送路の方向に延在している先端延在部を含む、
請求項
3に記載の包装搬送装置。
【請求項5】
前記第1のグリッパと、前記第2のグリッパとは、前記搬送路の方向および前記アームが前記可動子から突出する方向の両方に対して直交する方向にシフトしている、
請求項
3または
4に記載の包装搬送装置。
【請求項6】
前記第2のアームは、隣接する前記第1のアームに向けて前記搬送路の方向に延在する中間部を含む、
請求項
5に記載の包装搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばパウチ等の包装を把持して搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパウチ(パウチ包装)や、袋体等の包装入り製品は、包装が搬送される間に、充填用の開口部を通じて包装に内容物を充填する処理、および開口部を封止する処理を経て製造される。なお、充填前の包装は、例えば、2枚のフィルムが、周縁に沿って、開口部を残して熱融着されてなる。
かかる包装入り製品の製造ラインには、例えば、特許文献1に示すように、包装を把持するグリッパが取り付けられた複数の可動子を電磁作用により周回軌道に沿って移動させる搬送装置が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように一対のグリッパにより包装を両側から把持する場合は、例えば、充填に先立ち包装の開口部を開く際には、一対のグリッパを近接させることで、包装を両側から中央に向けて押して開口部を開く。充填後、開口部を封止する際には、封止箇所に皺が出来ないように、包装の幅に相応の距離で離れた一対のグリッパにより包装を両側から引っ張って平坦な形状に保つ。
【0005】
グリッパに把持されている包装の姿勢、形状は、包装の供給時における包装自身の剛性不足等によりばらつく可能性がある。封止等の処理を安定して行うため、可動子の位置制御により一対のグリッパの間隔を調整して個々の包装の姿勢、形状を一定の基準に維持しようとすれば、特許文献1および
図10Aに示すように、可動子91とグリッパ93とを1対1で対応させるとよい。
しかしながら、
図10Aに示すように可動子91とグリッパ93とを1対1で対応させると、
図10Bに示すように単一の可動子91に複数のグリッパ931,932を与え、一対の可動子91により複数の包装941,942を把持する場合と比べ、同一の処理能力下において長い搬送路を要する。
図10Bに示す構成によると、搬送路長を抑えることはできても、一対のグリッパ932の間隔と、一対のグリッパ931の間隔とを個別に調整することができないので、手前側・奥側の包装941,942に個別に張力を付与することはできない。一方、
図10Aに示す構成によると、搬送路長が長いので、搬送装置の製造コストが増大する上、搬送装置の設置に必要なスペースが増大してしまう。
【0006】
以上より、本開示は、搬送路長を抑えつつ、グリッパにより把持された包装の姿勢、形状を安定させることが可能な包装搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る包装搬送装置は、包装を個々に把持しつつ搬送路に沿って搬送する装置であって、搬送路の方向に並び、搬送路の方向に移動可能な複数の可動子と、可動子にそれぞれ支持され、第1の包装の両側の端部を把持する一対の第1のグリッパと、可動子にそれぞれ支持され、第1の包装よりも搬送路から離れた位置で前記第1の包装に対して並列に配置された第2の包装の両側の端部を把持する一対の第2のグリッパと、を備える。一対の第2のグリッパのうち少なくとも一方は、第1のグリッパを支持する第1の可動子とは別の第2の可動子に支持されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、一対の第2のグリッパのうち少なくとも一方が、第1のグリッパを支持する第1の可動子とは別の第2の可動子に支持されていることにより、各可動子に対する例えば位置制御等の駆動制御によって、一対の第1グリッパに把持された第1包装と、一対の第2グリッパに把持された第2包装とに個別に張力を付与することができる。そのため、包装の供給時における包装自身の剛性不足等により包装の寸法形状がばらついているとしても、包装の姿勢、形状の状態を安定させることができる。
包装の姿勢、形状が安定すると、グリッパの間隔を狭めて包装の開口部を開き、包装に内容物を充填する処理や、包装が平坦な状態で開口部を密封する処理等をそれぞれ安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る包装搬送装置を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す可動子、アーム、グリッパ、および搬送対象であるパウチを示す平面図である。
【
図3】
図2のIII矢印の向きから可動子、アーム、グリッパ、およびパウチを示す側面図である。
【
図5】グリッパの挟持片の開閉、およびパウチの姿勢、形状の例を示す模式図である。
【
図6】充填、密閉の各処理におけるグリッパの間隔調整およびパウチの姿勢、形状を示す模式図である。
【
図9B】
図9AのIXb矢印の向きから可動子、アーム、グリッパ、およびパウチを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
〔実施形態〕
図1に示す包装搬送装置1は、周回軌道を有する搬送路2と、搬送路2に沿って移動可能な複数の可動子10と、可動子10の走行を制御する制御部3とを備えている。
包装搬送装置1は、搬送路2と可動子10との間の電磁的相互作用により可動子10を走行させるリニアモータ式の搬送装置である。包装搬送装置1は、可動子10に備わるグリッパ13によりパウチ包装4(以下、パウチ4)を個々に把持しつつ搬送路2に沿って搬送する。
【0011】
パウチ4は、フィルム状、あるいはシート状の柔軟な素材から、例えば飲料や食料、医薬品等の内容物を充填可能な袋状の形態に形成されている。パウチ4は、一例として、
図4に示すように、重ね合わせられたフィルム素材41A,41Bから平坦に形成されている。重ねられたフィルム素材41A,41Bの周縁は、内容物の充填前は、開口部42を残して三辺に沿って、加熱および加圧により融着(熱融着)されることで封止されている。内容物の充填後、開口部42も熱融着により封止されることで、パウチ4は密閉される。
その他、パウチ4は、底部あるいは両サイドが内側に折り込まれることで、充填後に立体的な形状をなすものであってもよい。また、パウチ4は、フィルム素材に加えて、開口部に挿入されるスパウトと呼ばれる筒体を備えていてもよい。
【0012】
搬送路2は、直線状の平行な直線路21,23と、直線路21,23を繋ぐ円弧状に湾曲した湾曲路22,24とを備え、全体として略楕円形状を呈している。搬送路2には、可動子10の永久磁石に対して電磁的に作用する図示しない電磁コイルが設けられている。制御部3は、搬送路2の電磁コイルを流れる電流を制御することで、各可動子10の位置および速度等を個別に制御可能である。
【0013】
複数の可動子10は、搬送路2の方向に並び、搬送路2を循環する。可動子10の移動に伴い、各パウチ4が直線路21、湾曲路22、および直線路23の順に搬送される間に、各パウチ4に対する充填や密閉等の処理が行われる。それらの処理を終えたパウチ4は、直線路23から図示しない下流の装置へと移送される。
【0014】
各可動子10は、
図2および
図3に一例を示すように、搬送路2の方向に移動可能な可動子本体11と、可動子本体11に設けられて搬送路2から離れる向きに突出したアーム12と、アーム12に支持されてパウチ4の端部4Eを把持するグリッパ13とを備えている。
また、各可動子10は、湾曲路22,24を移動中にアーム12を可動子本体11に対して傾動させる機構(図示しない)を備えている。この傾動機構により、可動子10が搬送路2を周回する間に亘り、パウチ4を把持したグリッパ13を支持する一対のアーム12が互いに平行に保たれる。そのため、湾曲路22,24においてもパウチ4はグリッパ13から外れない。
【0015】
可動子本体11は、搬送路2を構成する部材に係合し、搬送路2の方向に並んでいる。可動子本体11には、図示しない永久磁石が設けられている。
本実施形態の搬送路2の略楕円形の軌道は、水平な同一面上に設置されている。この搬送路2からアーム12が水平方向に突出している。搬送路2の方向に隣接するアーム12の間にパウチ4が配置される。
【0016】
アーム12は、グリッパ13の支持に足りる剛性を備えた適宜な金属や樹脂等の材料から構成することができる。例えばアルミニウム合金をアーム12に用いることにより軽量化を図ることで、可動子本体11に加えられる負荷を小さくすることができる。
本実施形態では、ブロック状に形成された可動子本体11にアーム12が接合されているが、その限りではない。可動子10に必ずしもアーム12は必須の要素ではない。可動子本体11が、グリッパ13を支持する部分を含めて一体に形成されていてもよい。
【0017】
グリッパ13は、パウチ4を表裏両側から挟み込む一対の板状の挟持片131と、一対の挟持片131の間を
図5に示すように開閉させる図示しない駆動機構とを備えている。一対の挟持片131のそれぞれの先端部131Aは、パウチ4を挟持片131間にガイドするためにテーパ状に形成されている。挟持片131は、パウチ4の把持に必要な剛性を備えた鋼材等の金属材料から形成されている。
パウチ4は、搬送路2の方向に互いに対向して設けられた一対のグリッパ13により、両側の端部4Eが把持された状態で、開口部42のある上端部4Uを上方に向けて吊り下げられる。パウチ4を安定して吊り下げ、かつ開口部42からの充填や、開口部42の密閉の処理を安定して行うため、グリッパ13によりパウチ4を重心よりも上方で把持することが好ましい。
【0018】
図示しない供給機構によりグリッパ13にパウチ4が供給される。そのパウチ4を、仮に、搬送路2の方向に一定の間隔に制御されるグリッパ13により把持するとすれば、各パウチ4の剛性不足により、グリッパ13により把持されているパウチ4の姿勢、形状を安定させることが難しい。
【0019】
図5には、一対のグリッパ13が一定間隔に制御される場合に、それら一対のグリッパ13により把持されているパウチ4の形状が、鉛直方向に対して平行な基準面に一致して平坦な場合と(
図5の中段)、基準面に対して湾曲している場合(
図5の下段)とを模式的に示している。
【0020】
基準面に対するパウチ4の変位は、パウチ4の供給時の剛性不足によるばかりではなく、搬送時にパウチ4に加えられる振動によっても生じる。密閉等の処理時にパウチ4の姿勢、形状を安定させるため、各パウチ4のそれぞれに適度な張力を付与したい。
【0021】
各パウチ4に規定の姿勢、形状を安定して与えることができるように、本実施形態は、可動子10に入れ子構造を採用している。
図2および
図3は、搬送路2に配置される可動子群の一部として、入れ子構造をなす4つの可動子10の集合を示している。4つの可動子10は、パウチ4を相対的に搬送路2に近い位置で把持する一対の第1可動子10-1と、別のパウチ4を相対的に搬送路2から遠い位置で把持する一対の第2可動子10-2とに区別される。
【0022】
以下、可動子本体11、アーム12、およびグリッパ13のそれぞれについても同様に区別して説明する。
【0023】
第1可動子10-1は、第1可動子本体11-1と、第1アーム12-1と、第1グリッパ13-1とを備えている。第1グリッパ13-1により第1パウチ4-1が把持される。
第2可動子10-2は、第2可動子本体11-2と、第2アーム12-2と、第2グリッパ13-2とを備えている。第2グリッパ13-2により第2パウチ4-2が把持される。
第2パウチ4-2は、第1パウチ4-1よりも搬送路2から離れた位置で、第1パウチ4-1に対して並列に配置される。
【0024】
図2および
図3に示す例では、一対の第2可動子10-2は、一対の第1可動子10-1を間に挟んだ状態で、第1可動子10-1と共に搬送路2の方向に並んでいる。
搬送路2の方向をxで示し、可動子本体11-1,11-2からそれぞれ水平方向に、アーム12-1,12-2が延びる方向をyで示し、鉛直方向をzで示す。上述のパウチ4の基準面は、x方向およびz方向に延在する面に相当する。
第1アーム12-1および第2アーム12-2は、搬送路2に対して直交するy方向に、互いに平行に延びている。y方向は、パウチ4の平面に対して直交する方向に相当する。第2のアーム12-2のy方向の長さは、第1アーム12-1のy方向の長さよりも長い。
【0025】
第2アーム12-2に支持された第2グリッパ13-2の位置は、第1アーム12-1に支持されたが第1グリッパ13-1の位置よりも、搬送路2からy方向に離れている。第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とのy方向の間隔は、各パウチ4に対する処理に支障のないよう適宜に設定される。
【0026】
第1可動子10-1と第2可動子10-2は、x方向における一対の第2アーム12-2間の中心線Lに対して対称に形成されている。こうした対称形状の可動子10-1,10-2により、パウチ4を両側から安定して支持することができる。
第1グリッパ13-1よりも中心線Lから離れている第2グリッパ13-2は、基端から挟持片131の先端までのx方向の長さが、第1グリッパ13-1と比べて長い。第1グリッパ13-1および第2グリッパ13-2のいずれも、同一の幅のパウチ4-1,4-2を把持することができる。
本実施形態とは異なり、第2グリッパ13-2が、第1グリッパ13-1により把持する第1パウチ4-1よりも幅が広い第2パウチ4-2を把持する場合は、第1グリッパ13-1の挟持片131の長さと第2グリッパ13-2の挟持片131の長さとが同じであってよい。
【0027】
図2および
図3に示す構成によれば、制御部3により、一対の第1可動子本体11-1を相対的に離れる向きに駆動することで一対の第1グリッパ13-1に把持されている第1パウチ4-1に張力を付与することができるとともに、一対の第2可動子本体11-2を相対的に離れる向きに駆動することで一対の第2グリッパ13-2に把持されている第2パウチ4-2に張力を付与することができる。そのため、パウチ4の寸法形状がばらついているとしても、
図10Bに示す比較例とは異なり、第1パウチ4-1と、第2パウチ4-2とに個別に適切な張力を与えて、パウチ4の姿勢、形状を安定させることができる。
【0028】
可動子10の駆動制御により行われる第1パウチ4-1および第2パウチ4-2のそれぞれへの張力付与は、可動子10の停止中に限らず、可動子10の移動中にも行うことができる。可動子10が搬送路2を移動している間は、各パウチ4-1,4-2に対応する一対の可動子10の間に速度差を与えることにより、一対の可動子10が相対的に離れる向きに駆動されて、対応するパウチ4に張力が付与される。
【0029】
張力の付与によりパウチ4の姿勢、形状を安定させることができるので、
図6に示すようにグリッパ13の間隔を狭めて開口部42を開き、開口部42を通じてパウチ4に内容物を充填する充填処理S1や、パウチ4が平坦な状態で開口部42に熱および圧力を加えて開口部42を熱融着する密閉処理S2をそれぞれ安定して確実に行うことができる。特に密閉処理S2では、封止箇所に皺が出来ないように、パウチ4が基準の位置から変位することなく、平坦な状態に保たれることが好ましい。
【0030】
本実施形態の包装搬送装置1によれば、
図10Aに示す比較例に対し、同一の搬送能力下、搬送路長を抑えて包装搬送装置1の製造コストおよび設置スペースの削減を図りつつ、可動子10の位置制御により各パウチ4の姿勢、形状を安定させてパウチ4に対する安定した処理を実現することができる。
また、第1パウチ4-1および第2パウチ4-2のそれぞれを一対の可動子10により支持する入れ子構造によると、
図10Bに示す比較例に対し、可動子10の一つあたりに搭載される部材の重量を低減することができる。重量の低減により、モータの負荷を抑えることができ、また、搬送時の可動子10の加減速によりパウチ4に作用する慣性力を減少させて、各パウチ4-1,4-2の基準位置に対する変位が許容限度内に収束するまで待機する時間(整定時間)を短縮することができるので、生産効率を向上させることができる。
【0031】
以下、上記実施形態における可動子の集合体(
図2および
図3)と代替可能な可動子の構成例を説明する。上記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を与えている。以下、上記実施形態とは相違する事項を中心に述べる。
〔第1変形例〕
図7に示す第1変形例では、搬送路2に並ぶ3つの可動子10により第1パウチ4-1および第2パウチ4-2が搬送される。そのため、4つの可動子10による入れ子構造を採用する上記実施形態(
図2)に対して、2つのパウチ4-1,4-2の搬送に用いる可動子10の数が少ない分、搬送路長をより抑えることが可能となる。
【0032】
図7に示すように、一対の第1グリッパ13-1のうちの一方と、一対の第2グリッパ13-2のうちの一方とは、同一の第2アーム12-2に設けられている。
図7の左側の第2アーム12-2において、第2グリッパ13-2は、第1グリッパ13-1が設けられる位置よりも先端側に設けられている。
図7に示す例では、左側の第2アーム12-2に設けられた第1グリッパ13-1および第2グリッパ13-2のそれぞれのx方向の長さは同一である。
【0033】
第1変形例と、上記実施形態とは、一対の第2グリッパ13-2のうち少なくとも一方(
図7では右側の13-2)が、第1グリッパ13-1を支持する第1可動子本体11-1とは別の第2可動子本体11-2に支持されている点で共通する。
第1変形例によっても、制御部3による可動子本体11-1,11-2の駆動制御により第1パウチ4-1および第2パウチ4-2のそれぞれに張力を個別に付与することができるから、各パウチ4の姿勢、形状を安定させることが可能となる。
【0034】
〔第2変形例〕
次に、
図8Aに示す第2変形例では、第2グリッパ13-2のみを支持する第2アーム12-2が、隣接する第1アーム12-1の先端部12Aを第2アーム12-2が突出する方向に超えた位置で、第1アーム12-1に向けてx方向に延在する先端延在部12Bを有している。その先端延在部12Bに、第2グリッパ13-2が設けられている。
第2アーム12-2の先端延在部12Bが第1アーム12-1側へx方向に延在している分、第2グリッパ13-2の長さをx方向に短くすることができる。なお、
図8Aの左側で、第1変形例(
図7)と同様に、第1グリッパ13-1および第2グリッパ13-2が設けられるアーム12を共通化することによっても左側の第2グリッパ13-2の長さを短くすることは可能である。こうした改変を含め、第2変形例によれば、図における左右両側で、一対の第2グリッパ13-2の双方とも短くできるので、パウチ4を両側から安定して把持することができる。
グリッパ13が短い分だけ、把持力が増大する上、搬送時のグリッパ13の振動による撓みを抑えることができるので、パウチ4の姿勢、形状をより安定させることができる。
また、例えばアルミニウム合金等から形成されるアーム12と、鋼材等から形成されるグリッパ13とを比べると、グリッパ13の方が単位長さあたりの重量が大きいので、第2グリッパ13-2および第2アーム12-2を含めた可動子10-2の全体として軽量化を図ることができる。
【0035】
図8Aに示すように、第2アーム12-2の先端延在部12Bが第1アーム12-1までx方向に延在しており、かつ第1グリッパ13-1および第2グリッパ13-2により同一の幅のパウチ4を把持する場合は、第1アーム12-1に設けられる第1グリッパ13-1のx方向の長さと、第2アーム12-2に設けられる第2グリッパ13-2のx方向の長さとを同一に揃えることができる。そうすると、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2との部材共通化により製造コストを抑えることができる。
【0036】
〔第3変形例〕
図8Bに示すように、上記第2変形例(
図8A)の構成において、上記第1変形例(
図7)と同様に、一対の第1グリッパ13-1のうちの一方と、一対の第2グリッパ13-2のうちの一方とが、共通の第2アーム12-2に設けられていてもよい。つまり、第3変形例は、上記第2変形例と上記第1変形例との組み合わせに相当する。
第3変形例によれば、第2変形例に対して搬送路長を抑えることができる。
【0037】
〔第4変形例〕
次に説明する第4変形例では、第2変形例とは異なる構成により、第2グリッパ13-2を短くして、第1グリッパ13-1の長さと揃えている。
図9Aおよび
図9Bに示すように、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とが、x方向およびy方向の両方に対して直交するz方向においてシフトしていてもよい。
【0038】
上記第2変形例(
図8A)では、第2アーム12-2の先端延在部12Bが、隣接する第1アーム12-1の先端部12Aを超えた位置で第1アーム12-1までx方向に延在していることにより、隣接するアーム12-1,12-2を干渉させずに、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とをy方向に並べて配置している。
それに対し、第4変形例では、第1アーム12-1と第2アーム12-2とがz方向にシフトしていることで、隣接するアーム12-1,12-2を干渉させずに、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とをy方向に並べて配置している。第2アーム12-2は、第2可動子本体11-2に設けられる基端部121と、基端部121から、隣接する第1アーム12-1に向けてx方向に延在する中間部122と、第2グリッパ13-2を支持する先端部123とを含んでいる。
【0039】
第4変形例では、
図9Bに示すように、第2アーム12-2の一部が第1アーム12-1よりも下方に位置している。この例とは逆に、第2アーム12-2の一部が第1アーム12-1よりも上方に位置している場合も、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とをy方向に並べて配置することが可能である。
なお、第4変形例において、第1グリッパ13-1および第2グリッパ13-2をそれぞれ支持する第1アーム12-1および第2アーム12-2のy方向の長さは適宜に設定することができる。第1アーム12-1および第2アーム12-2のそれぞれの長さが同一であってもよい。
【0040】
第4変形例によれば、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とがz方向にシフトしていることで、それらにより把持される第1パウチ4-1と第2パウチ4-2とをz方向においてシフトさせることができる(
図9B)。そうすると、例えば、パウチ4-1,4-2にそれぞれ内容物を吐出する充填ノズルが互いに干渉したり、パウチ4-1,4-2をそれぞれ密閉するために用いられる金型が互いに干渉したりすることなく、各パウチ4-1,4-2に対する処理を確実に行うことができる。また、z方向のシフトにより部材同士の干渉を抑えることができるので、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とのy方向の間隔を狭めて、省スペース化を図ることが可能となる。
【0041】
なお、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とがz方向にシフトしていても、第1パウチ4-1と第2パウチ4-2とを必ずしもz方向にシフトさせる必要はない。z方向にシフトした第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とにより、第1パウチ4-1と第2パウチ4-2とのz方向に異なる部位をそれぞれ把持するようにしてもよい。
第1パウチ4-1と第2パウチ4-2とが同一の高さに配置されるならば、同一の高さに位置する充填ノズルから行う各パウチ4-1,4-2への充填処理、および、同一の高さに位置する金型を用いて行う各パウチ4-1,4-2の密封処理に適合する。 同一の高さに配置される第1パウチ4-1および第2パウチ4-2の上端部の付近をグリッパ13により把持する場合は、
図9Bに二点鎖線で示すように、第2アーム12-2の先端側に、第1アーム12-1に向けて延在する延長部124を加えることができる。延長部124に第2グリッパ13-2を設けることにより、第2グリッパ13-2と第1グリッパ13-1とを同じ高さに配置することができる。
【0042】
上述した実施形態および第1~第4変形例は、相互に適宜に組み合わせることができる。例えば、上述の実施形態(
図2および
図3)において、第4変形例のように、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とがz方向にシフトしていてもよい。この場合も、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とにそれぞれ把持される第1パウチ4-1と第2パウチ4-2とをz方向にシフトさせることができるので、各パウチ4-1,4-2に用いられる充填ノズルや金型等の干渉を避けて、充填や密閉の処理を確実に行うことができる。また、第1グリッパ13-1と第2グリッパ13-2とのy方向の間隔を狭めて、省スペース化を図ることも可能となる。
【0043】
上記以外にも、構成要素を取捨選択したり、他の構成要素に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、上記実施形態(
図2および
図3)の構成に対して、第3パウチを把持する一対の第3グリッパと、一対の第3グリッパが設けられる一対の第3アームと、それらの第3アームを支持する一対の可動子本体とを追加してもよい。この場合は、合計6個の可動子本体と、三対のアームと、三対のグリッパとから入れ子構造が構成される。
【0044】
また、搬送路2の周回軌道は、必ずしも水平に沿って配置されている必要はなく、搬送路2を適宜な方向に設置することができる。
本開示における搬送対象たる包装は、パウチには限られず、例えば、樹脂製の袋体であってもよい。
【0045】
〔付記〕
以上で説明した包装搬送装置は、以下を開示する。
〔1〕包装(4)を個々に把持しつつ搬送路2に沿って搬送する装置1は、搬送路2の方向(x方向)に並び、搬送路2の方向に移動可能な複数の可動子(11)と、可動子(11)にそれぞれ支持され、第1の包装(4-1)の両側の端部4Eを把持する一対の第1のグリッパ(13-1)と、可動子(11)にそれぞれ支持され、第1の包装(4-1)よりも搬送路2から離れた位置で前記第1の包装に対して並列に配置された第2の包装(4-2)の両側の端部4Eを把持する一対の第2のグリッパ(13-2)と、を備える。一対の第2のグリッパ(13-2)のうち少なくとも一方は、第1のグリッパ(13-1)を支持する第1の可動子(11-1)とは別の第2の可動子(11-2)に支持されている。
【0046】
〔2〕一対の第1の可動子と、一対の第2の可動子と、を備え、一対の第2の可動子(11-2)は、一対の第1の可動子(11-1)を間に挟んだ状態で、第1の可動子(11-1)と共に搬送路2の方向(x方向)に並んでいる。
【0047】
〔3〕一対の第1のグリッパ(13-1)の一方と、一対の第2のグリッパ(13-2)の一方とが、同一の可動子(11-2)に支持されている。
【0048】
〔4〕複数の可動子(11)はそれぞれ、搬送路2から離れる向きに突出し、グリッパ13を支持するアーム12を含み、第1のグリッパ(13-1)および第2のグリッパ(13-2)のうち少なくとも第2のグリッパ(13-2)を支持する第2のアーム(12-2)の長さは、第1のグリッパ(13-1)のみを支持する第1のアーム(12-1)よりも長い。
【0049】
〔5〕第1のグリッパ(13-1)および第2のグリッパ(13-2)のうち第2のグリッパ(13-2)のみを支持する第2のアーム(12-2)は、隣接する第1のアーム(12-1)の先端部12Aを第2のアーム(12-2)が突出する方向に超えた位置で、第1のアーム(12-1)側へ搬送路2の方向に延在している先端延在部(12B)を含む。
【0050】
〔6〕第1のグリッパ(13-1)と、第2のグリッパ(13-2)とは、搬送路2の方向およびアーム12が可動子(11)から突出する方向(y方向)の両方に対して直交する方向(z方向)にシフトしている。
【0051】
〔7〕第2のアーム(12-2)は、隣接する第1のアーム(12-1)に向けて搬送路2の方向(x方向)に延在する中間部(122)を含む。
【符号の説明】
【0052】
1 包装搬送装置
2 搬送路
3 制御部
4 パウチ(包装)
4E 端部
4U 上端部
4-1 第1パウチ(第1の包装)
4-2 第2パウチ(第2の包装)
10 可動子
11 可動子本体(可動子)
11-1 第1可動子本体(第1の可動子)
11-2 第2可動子本体(第2の可動子)
12 アーム
12-1 第1アーム(第1のアーム)
12-2 第2アーム(第2のアーム)
12A 先端部
12B 先端延在部
13 グリッパ
13-1 第1グリッパ(第1のグリッパ)
13-2 第2グリッパ(第2のグリッパ)
21,23 直線路
22,24 湾曲路
41A,41B フィルム素材
42 開口部
121 基端部
122 中間部
123 先端部
124 延長部
131 挟持片
L 中心線
S1 充填処理
S2 密閉処理