(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】防振装置用ブラケット
(51)【国際特許分類】
F16F 1/36 20060101AFI20240228BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240228BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16F1/36 K
F16F15/08 W
B29C45/27
(21)【出願番号】P 2020206254
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2020107254
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】片浦 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】大西 正
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正明
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/124060(WO,A1)
【文献】特開2005-325922(JP,A)
【文献】特開2014-119051(JP,A)
【文献】特開2013-164150(JP,A)
【文献】特開2019-78380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/36
F16F 15/08
B29C 45/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂によって形成されたブラケット本体と、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材と、を備えており、前記ブラケット本体は、防振装置本体を囲繞する囲繞部を有しており、前記補強部材は、前記囲繞部の囲繞方向に延びているとともに当該囲繞部に配置されている、防振装置用ブラケットであって、
前記囲繞部の補強部材配置部分は、囲繞方向に延びている外周部と、囲繞方向に延びている内周部と、前記外周部と前記内周部とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部とによって形作られており、
前記補強部材配置部分を、囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該補強部材配置部分の断面形状は、前記連結部の断面幅が前記外周部の断面幅および前記内周部の断面幅よりも狭いI字状であり、
前記補強部材は、前記補強部材配置部分の前記外周部に配置されている、防振装置用ブラケット。
【請求項2】
前記内周部の断面幅は、前記外周部の断面幅よりも狭い、請求項1に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項3】
前記外周部の断面幅は、前記内周部の断面幅と同一又は当該内周部の断面幅よりも狭い、請求項1に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項4】
前記内周部の内周側表面は、囲繞方向に対して直交する断面で視たとき、内周側に向かって凸の輪郭を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項5】
前記凸の輪郭のうち、前記内周側表面の軸方向中央部分は、外側に向かって凸の曲線によって形作られている、請求項4に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項6】
前記凸の輪郭のうち、前記内周側表面の軸方向端側部分は、直線によって形作られている、請求項4又は5に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項7】
前記ブラケット本体の底部には、軸直方向に延在しているとともに軸方向に間隔を置いて配置されている、複数の底部リブが形成されており、
前記複数の底部リブの厚さは、前記底部の軸方向中央に近い底部リブほど厚くなっている、請求項1~6のいずれか1項に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項8】
前記外周部の内周側表面に、射出成型のゲート痕を有している、請求項1~7のいずれか1項に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項9】
前記連結部の側面は、前記外周部の内周側表面と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された曲面と、前記内周部の外周側表面と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された曲面と、を含んでいる、請求項1~8のいずれか1項に記載された防振装置用ブラケット。
【請求項10】
前記外周部の内周側表面と、前記内周部の外周側表面と、前記連結部の側面とは、前記囲繞部の補強部材配置部分に、囲繞方向に延びている凹部を形成している、請求項1~9のいずれか1項に記載された防振装置用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置用ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防振装置用ブラケットとしては、軽量化と耐久性向上との両立を目的に、合成樹脂によって形成されたブラケット本体の囲繞部の外周部に、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材を固定したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の防振装置用ブラケットには、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保するという点において、改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することが可能な、防振装置用ブラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防振装置用ブラケットは、合成樹脂によって形成されたブラケット本体と、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材と、を備えており、前記ブラケット本体は、防振装置本体を囲繞する囲繞部を有しており、前記補強部材は、前記囲繞部の囲繞方向に延びているとともに当該囲繞部に配置されている、防振装置用ブラケットであって、
前記囲繞部の補強部材配置部分は、囲繞方向に延びている外周部と、囲繞方向に延びている内周部と、前記外周部と前記内周部とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部とによって形作られており、前記補強部材配置部分を、囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該補強部材配置部分の断面形状は、前記連結部の断面幅が前記外周部の断面幅および前記内周部の断面幅よりも狭いI字状であり、前記補強部材は、前記補強部材配置部分の前記外周部に配置されている。本発明に係る防振装置用ブラケットによれば、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することが可能となる。
【0007】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記内周部の断面幅は、前記外周部の断面幅よりも狭いことが好ましい。この場合、さらに軽量化を図ることができる。
【0008】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記外周部の断面幅は、前記内周部の断面幅と同一又は当該内周部の断面幅よりも狭いものとすることができる。この場合、外周部と内周部との強度バランスを良好なものとしつつ、さらなる軽量化とともに耐久性を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記内周部の内周側表面は、囲繞方向に対して直交する断面で視たとき、内周側に向かって凸の輪郭を有していることが好ましい。この場合、耐久性をより向上させることができる。
【0010】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記凸の輪郭のうち、前記内周側表面の軸方向中央部分は、外側に向かって凸の曲線によって形作られているものとすることができる。この場合、耐久性をより向上させることができる。
【0011】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記凸の輪郭のうち、前記内周側表面の軸方向端側部分は、直線によって形作られているものとすることができる。この場合、さらなる軽量化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記ブラケット本体の底部には、軸直方向に延在しているとともに軸方向に間隔を置いて配置されている、複数の底部リブが形成されており、前記複数の底部リブの厚さは、前記底部の軸方向中央に近い底部リブほど厚くなっていることが好ましい。この場合、軽量化をより向上させることができる。
【0013】
本発明に係る防振装置用ブラケットは、前記外周部の内周側表面に、射出成型のゲート痕を有しているものとすることができる。この場合、補強部材がブラケット本体に対して美観を損なうことなく強固に固定される。
【0014】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記連結部の側面は、前記外周部の内周側表面と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された曲面と、前記内周部の外周側表面と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された曲面と、を含んでいることが好ましい。この場合、ブラケット本体に生じる応力集中が軽減されることによって耐久性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る防振装置用ブラケットにおいて、前記外周部の内周側表面と、前記内周部の外周側表面と、前記連結部の側面とは、前記囲繞部の補強部材配置部分に、囲繞方向に延びている凹部を形成していることが好ましい。この場合、ブラケット本体に生じる応力集中が軽減されることによって耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することが可能な、防振装置用ブラケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防振装置用ブラケットの正面図である。
【
図11】
図1のA-A断面を右正面平面側から示す斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る防振装置用ブラケットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態に係る防振装置用ブラケット1について説明をする。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防振装置用ブラケット1A(単に、「ブラケット1A」ともいう。)の正面図である。
図1は、ブラケット1Aを車両に装着したときに、当該ブラケット1Aを車両の左右方向から視たときの、いわゆる車両装着時左右方向視の図である。以下の説明では、
図1は、ブラケット1Aを車両装着時左方向から視たときの図とする。すなわち、
図1の左方向は、車両装着時前方向であり、
図1の右方向は、車両装着時後方向である。また、以下の説明では、
図1の上方向を、車両装着時上方向とし、
図1の下方向を、車両装着時下方向とする。
【0020】
本実施形態に係るブラケット1Aは、エンジンマウント用ブラケットである。ブラケット1は、車体に連結可能である。ブラケット1Aは、貫通穴A1を有している。本実施形態において、貫通穴A1は、ブラケット本体2に形成された貫通穴である。貫通穴A1には、防振装置本体(図示省略)を収容することができる。前記防振装置本体は、エンジンに連結可能である。これによって、ブラケット1Aは、前記車体と前記エンジンとを、前記防振装置本体を介して連結させることができる。
【0021】
なお、図面では、前記防振装置本体は省略されている。前記防振装置本体としては、例えば、内筒及び外筒を弾性体(例えば、ゴム)で連結した防振部材が挙げられる。こうした防振部材の場合、前記外筒がブラケット本体2に取り付けられる一方、前記内筒が前記エンジンに取り付けられる。
【0022】
ただし、ブラケット1Aは、ブラケット本体2を前記エンジンに連結させる一方、前記防振装置本体を前記車体に連結させることができる。また、ブラケット1Aは、エンジンマウント用ブラケットに限定されるものではない。ブラケット1Aは、エンジン、車体以外の、振動発生側及び振動受け側の一方にブラケット本体2を連結させる一方、前記防振装置本体を、前記振動発生側及び前記振動受け側の他方に連結させることができる。
【0023】
符号Oは、ブラケット1Aの中心軸線(以下、単に「中心軸線O」ともいう。)である。本実施形態において、中心軸線Oは、貫通穴A1の中心軸線と同軸である。本実施形態において、中心軸線Oが延びる方向を「軸方向」という。なお、本実施形態において、「軸方向」は、「車両装着時左右方向」と同義である。また、本実施形態において、中心軸線Oに対して直交する方向を「軸直方向」という。なお、本実施形態において、「軸直方向」は、「車両装着時前後方向」および「車両装着時上下方向」を含む。さらに、本実施形態において、中心軸線Oを垂線する断面(軸直方向断面)において、中心軸線Oの周りを環状に延びる方向を「周方向」という。
【0024】
ブラケット1Aは、合成樹脂によって形成されたブラケット本体2と、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材3と、を備えている。
【0025】
ブラケット本体2を形成する前記合成樹脂としては、例えば、熱可塑性合成樹脂、熱硬化性合成樹脂が挙げられる。好適には、前記合成樹脂として、熱可塑性合成樹脂を用いる。こうした熱可塑性合成樹脂としては、例えば、6-6ナイロン、6ナイロン、9ナイロン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0026】
ブラケット本体2は、前記防振装置本体を囲繞する囲繞部20を有している。
【0027】
本実施形態において、囲繞部20は、第1囲繞部21と、第2囲繞部22と、を有している。第2囲繞部22は、前記車体に固定可能な固定基部である。本実施形態では、第2囲繞部22は、第1囲繞部21よりも軸直方向外側に張り出した張出部22aを有している。本実施形態では、張出部22aは、車両装着時前後方向に、第1囲繞部21よりも車両装着時前後方向外側に張り出している。
【0028】
第1囲繞部21および第2囲繞部22は、同一の前記合成樹脂によって一体的に形成されている。貫通穴A1は、第1囲繞部21と第2囲繞部22とによって形成されている。上述のとおり、貫通穴A1には、前記防振装置本体を収容することができる。このとき、第1囲繞部21は、第2囲繞部22とともに前記防振装置本体を囲繞する。
図1に示すように、本実施形態において、第1囲繞部21は、車両装着時左右方向視において、第2囲繞部22に対してアーチ状に架け渡されている、架け渡し部である。
【0029】
囲繞部20の補強部材配置部分20aは、囲繞方向に延びている外周部211と、囲繞方向に延びている内周部212と、外周部211と内周部212とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部213とによって形作られている。
【0030】
ここで、囲繞方向とは、囲繞部20が中心軸線Oの周りに延びている方向をいう。本実施形態において、囲繞方向は、周方向と同義である。本実施形態において、外周部211、内周部212および連結部213は、同一の前記合成樹脂によって一体的に形成されている。
【0031】
図2は、
図1のA-A断面図である。
図2は、補強部材配置部分20aを囲繞方向に対して直交する断面で示している。
図2において、前記断面は、中心軸線Oを含む平面によって形成された、軸方向断面である。また、
図3は、
図2の拡大図である。
【0032】
図3を参照すれば、補強部材配置部分20aを、囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該補強部材配置部分20aの断面形状は、連結部213の断面幅W3が外周部211の断面幅W1および内周部212の断面幅W2よりも狭いI字状である。
【0033】
さらに、本実施形態において、内周部212の断面幅W2は、外周部211の断面幅W1よりも狭い。
【0034】
ここで、
図3を参照すれば、「断面幅」とは、
図3の軸方向断面視において、軸方向に沿って延びている、対象部分(外周部211、内周部212および連結部213)の軸方向幅である。
【0035】
図3を参照すれば、本実施形態において、外周部211は、軸方向断面視において、軸方向に沿って扁平な矩形状の断面を有している。外周部211の断面幅W1は、外周部211の軸方向端e1の間の幅である。また、
図3を参照すれば、本実施形態において、内周部212は、軸方向断面視において、軸方向に沿って扁平な矩形状の断面を有している。内周部212の断面幅W2は、内周部212の軸方向端e2の間の幅である。また、
図3を参照すれば、本実施形態において、連結部213は、軸方向断面視において、軸直方向に沿って扁平な矩形状の断面を有している。連結部213の断面幅W3は、連結部213の軸方向端e3のうちで、互いに軸方向に最も接近した部分の間の幅である。
【0036】
さらに、本実施形態において、連結部213の側面f3は、外周部211の内周側表面f1と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された外周部側曲面f3aと、内周部212の外周側表面f2と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された内周部側曲面f3bと、を含んでいる。
【0037】
図3を参照すれば、本実施形態において、外周部211の内周側表面f1は、軸方向断面視において、直線で形作られた平面である。外周部211の内周側表面f1は、軸直方向に対して鋭角側角度αで、外周部211の軸方向端e1に連なっている。同様に、本実施形態において、内周部212の外周側表面f2は、軸方向断面視において、直線で形作られた平面である。内周部212の外周側表面f2は、軸直方向に対して鋭角側角度βで、内周部212の軸方向端e2に連なっている。
【0038】
さらに、
図3を参照すれば、本実施形態において、連結部213の外周部側曲面f3aは、軸方向断面視において、曲率半径r1の曲線で形成された、軸線方向内側に凹んだ曲線である。また、本実施形態において、連結部213の内周部側曲面f3bは、軸方向断面視において、曲率半径r2の曲線で形成された、軸線方向内側に凹んだ曲線である。曲率半径r1および曲率半径r2は、同一の曲率半径とすることができる。或いは、曲率半径r1および曲率半径r2は、異なる曲率半径とすることができる。
【0039】
さらに、本実施形態において、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とは、囲繞部20の補強部材配置部分20aに、囲繞方向に延びている凹部23を形成している。
【0040】
翻って
図1を参照すれば、本実施形態において、凹部23は、2つの囲繞方向端表面214を有している。囲繞方向端表面214は、凹部23の囲繞方向端を形成する表面である。囲繞方向端表面214は、凹部23が囲繞方向に延びる範囲を規定する。囲繞方向端表面214は、外周部211の内周側表面f1、内周部212の外周側表面f2および連結部213の側面f3のそれぞれと連なっている。すなわち、本実施形態において、凹部23は、外周部211、内周部212、連結部213および囲繞方向端表面214によって形成されている。さらに、
図2を参照すれば、本実施形態において、囲繞方向端表面214は、貫通穴A1に連なっている。これによって、本実施形態では、凹部23は、囲繞方向端において、貫通穴A1に開放されている。
【0041】
また、
図2を参照すれば、本実施形態では、囲繞部20の補強部材配置部分20aにおいて、内周部212の断面幅W2は、基本的に、車両装着時上方向から中心軸線Oを通って車両装着時下方向に至るまで、一定の幅である。ただし、本実施形態において、内周部212の断面幅W2は、
図2に示すように、中心軸線Oよりも車両装着時下方向の所定の位置から、第2囲繞部22に向かうに従って広くなっている。本実施形態では、断面幅W2は、第2囲繞部22に対して一定の距離まで近づくと、当該断面幅W2の最大幅をとる。そして、断面幅W2は、当該断面幅W2の最大幅からさらに第2囲繞部22に向かうに従って狭くなっている。
図7及び
図8の斜視図を参照すれば、本実施形態において、内周部212の軸方向端e2は、第2囲繞部22付近で、曲率半径r22の曲線によって形作られている。
【0042】
囲繞部20の補強部材配置部分20aは、補強部材3が配置されることによって補強されている。補強部材3は、繊維強化プラスチック(FRP)によって形成されている。
【0043】
(連続)繊維強化プラスチックは、繊維状要素に合成樹脂を含ませて強度を向上させた複合材料である。前記繊維強化プラスチックとしては、例えば、プリプレグが挙げられる。前記繊維状要素としては、例えば、ガラス繊維織物、炭素繊維織物、金属繊維織物、有機繊維、ブラケット本体2よりも曲げ強度が高い繊維織物、これらの織物を含むその他の物が挙げられる。好適には、前記繊維状要素として、ガラス繊維織物を用いる。また前記繊維強化プラスチックとしては、例えば、方向性を有した前記繊維状要素に合成樹脂を含ませたUD(Uni Direction)材、編み込んだ繊維状要素に合成樹脂を含ませた織物材が挙げられる。ブラケット1は、例えば、補強部材3をインサート品として、射出成形によって一体に形成することができる。本実施形態に係るブラケット1では、例えば、前記繊維状要素は、囲繞方向に指向する向きに配列されている。
【0044】
図1を参照すれば、補強部材3は、囲繞部20の囲繞方向に延びているとともに当該囲繞部20に配置されている。
【0045】
本実施形態において、補強部材3は、第1囲繞部21に配置されている。
図1中、符号3e1は、補強部材3の延在方向一方側端である。また、符号3e2は、補強部材3の延在方向他方側端である。補強部材3は、帯状の補強部材である。
図2を参照すれば、本実施形態では、補強部材3の断面幅は、外周部211の断面幅W1と等しい。詳細には、補強部材3の軸方向端3e3は、外周部211の軸方向端e1と一致している。
図4及び
図5を参照すれば、本実施形態において、補強部材3の断面幅W4は、囲繞方向に沿って一定である。したがって、本実施形態では、第1囲繞部21において、外周部211の断面幅W1は、囲繞方向に沿って一定である。
【0046】
図5を参照すれば、本実施形態において、第2囲繞部22には、2つの固定穴22hが形成されている。2つの固定穴22hは、
図5に示すように、平面視において、第1囲繞部21を挟んで、軸直方向に間隔を置いて配置されている。本実施形態において、固定穴22hは、ブラケット本体2に設けられた窪み2cに配置されている。窪み2cは、第1囲繞部21の一部を切り欠いた形状である。本実施形態において、窪み2cは、
図4及び
図5に示すように、第2囲繞部22の張出部22aと、2つの稜線リブ24とによって形成されている。本実施形態において、固定穴22hは、窪み2cの張出部22aに取り付けられた止め具25に形成されている。
【0047】
また、
図5を参照すれば、本実施形態において、補強部材3は、車両装着時において、中心軸線Oを挟んで、補強部材配置部分20aの、車両装着時前方向部分および車両装着時後方向部分が均等に補強されるように配置されている。ただし、補強部材3が補強する部分は、車両装着時前後方向で異ならせることができる。
【0048】
また、本実施形態において、補強部材3は、補強部材配置部分20aの外周部211に配置されている。
【0049】
図7及び
図8を参照すれば、本実施形態において、補強部材3は、ブラケット本体2の囲繞部20の補強部材配置部分20aにおいて、当該補強部材配置部分20aの外周部211の外周面を被覆している。これによって、本実施形態において、補強部材3は、ブラケット本体2の補強部材配置部分20aにおいて、ブラケット1の外周面を形成している。
【0050】
こうした防振装置用ブラケットは、囲繞部20によって形成された貫通穴A1に、前記防振装置本体を収容する。このため、囲繞部30には、応力が集中し易い。
【0051】
これに対し、従来の防振装置用ブラケットとしては、軽量化と耐久性向上との両立を目的に、合成樹脂によって形成されたブラケット本体の囲繞部の外周部に、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材を固定したものがある。
【0052】
しかしながら、上記従来の防振装置用ブラケットは、囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該囲繞部の断面形状が矩形である。したがって、上記従来の防振装置用ブラケットには、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することについて、別の見方をすれば、さらなる耐久性の向上を図りつつ、重量増を伴わないことについて、改善の余地があった。
【0053】
これに対し、ブラケット1Aは、
図2に示すように、ブラケット本体2の囲繞部20において、当該囲繞部20の補強部材配置部分20aを、囲繞方向に延びている外周部211と、囲繞方向に延びている内周部212と、外周部211と内周部212とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部213とによって形作っている。
【0054】
加えて、ブラケット本体2は、
図3に示すように、補強部材配置部分20aを囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該補強部材配置部分20aの断面形状を、連結部213の断面幅W3が外周部211の断面幅W1および内周部212の断面幅W2よりも狭いI字状としている。言い換えれば、ブラケット1Aは、ブラケット本体2の囲繞部20の、当該囲繞部20の補強部材配置部分20aの断面形状を、電車の軌道等としての、レールの形状にしている。
【0055】
ブラケット1Aによれば、ブラケット本体2の補強部材配置部分20aの断面形状をI字状としたことにより、囲繞部の断面形状が矩形である、従来のブラケットに比べて、樹脂使用量を削減することができる。これによって、ブラケット本体2は、従来の樹脂ブラケットに比べて軽量化される。
【0056】
また、ブラケット1Aによれば、ブラケット本体2の補強部材配置部分20aの断面形状をI字状とし、連結部213の軸直方向長さを確保したことにより、ブラケット本体2の補強部材配置部分20aにおける断面幅方向(軸方向)中央の、当該補強部材配置部分20aの断面形状を軸直方向に大きく確保することができる。これによって、ブラケット本体2の強度、剛性を高めることができる。さらに、ブラケット1Aによれば、ブラケット本体2の補強部材配置部分20aの断面形状をI字状とし、外周部211の断面幅W1及び内周部212の断面幅W2を広く確保したことにより、ブラケット本体2が荷重を受ける面積を大きく確保することができる。これによって、ブラケット本体2が受ける荷重を断面幅方向に分散させることができる。したがって、ブラケット本体2は、囲繞部の断面形状が矩形である、従来の樹脂ブラケットに比べて、さらなる耐久性の向上を図ることができる。
【0057】
したがって、ブラケット1Aによれば、補強部材配置部分20aの断面形状をI字状としたことにより、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することが可能となる。別の見方をすれば、ブラケット1Aによれば、さらなる耐久性の向上を図りつつ、重量増を伴わないようにすることが可能となる。
【0058】
また、ブラケット1Aにおいて、内周部212の断面幅W2は、外周部211の断面幅W1よりも狭くなっている。この場合、内周部212の断面幅W2を狭くした分だけ、さらに軽量化を図ることができる。
【0059】
また、ブラケット1Aにおいて、連結部213の側面f3は、内向きに凹となる曲線で形成された外周部側曲面f3aと、内向きに凹となる曲線で形成された内周部側曲面f3bと、を含んでいる。この場合、負荷入力時において、ブラケット本体2に生じる応力集中が軽減されることによって耐久性を向上させることができる。
【0060】
また、ブラケット1Aにおいて、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とは、囲繞部20の補強部材配置部分20aに、囲繞方向に延びている凹部23を形成している。この場合、製造品質を容易に確保することができる。
【0061】
囲繞部20に補強用のリブ等の肉盛り部を設ければ、囲繞部20を補強することができる。
【0062】
しかしながら、囲繞部20に前記肉盛り部を設けた場合、射出成型時において、樹脂流れの合流及び離間等、当該樹脂流れの離合が起き易い。従って、この場合、製品に生じ得るウェルドラインの抑制または目立たなくするための制御等を行う必要があり、製造品質を確保しづらかった。
【0063】
これに対し、ブラケット1Aにおいて、凹部23は、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とによって形成されており、前記肉盛り部が存在しない。この場合、前記防振装置本体からの荷重を受ける内周部212側の面積を確保するとともに、応力が発生する外周部211側の面積を増やし、さらに、連結部213の断面積を小さくすることができる。これにより、製品の軽量化(無駄肉がない)を図りつつ、ブラケット1Aの射出成型時において、樹脂流れが均一化し、補強部材3を適用し易くなる。従って、ブラケット1Aによれば、製造品質を容易に確保することができる。
【0064】
また、ブラケット1Aは、外周部211の内周側表面f1に、射出成型のゲート痕Gを有しているものとすることができる。この場合、補強部材3がブラケット本体2に対して美観を損なうことなく強固に固定される。
【0065】
ブラケット1Aの成形方法としては、例えば、補強部材3をインサート品としてブラケット本体2とともに射出成型を行う、いわゆるハイブリッド成型が挙げられる。
【0066】
しかしながら、こうしたハイブリッド成型においては、金型内に供給された合成樹脂が補強部材3の外周面側へ意図せず回り込むことがあった。こうした合成樹脂の回り込みは、製品完成時の補強部材3の外周面における美観を損なうことがある。一方、合成樹脂の回り込みを防止するため、射出成型用のゲートを、金型内の補強部材3から遠い位置に配置することが考えれる。しかしながら、この場合、合成樹脂が金型内の補強部材3から遠い位置から射出されることによって、当該合成樹脂を補強部材3に密着させるための圧力が不十分になることがあった。
【0067】
これに対し、例えば、
図3を参照すれば、ブラケット1Aにおいて、ゲート痕Gは、ブラケット本体2において、外周部211の内周側表面f1に形成されている。言い換えれば、補強部材3をインサート品としてブラケット本体2とともに、ブラケット1Aを射出成型する場合、金型内での合成樹脂の供給は、補強部材3の内周面から行われている。このように、補強部材3の内周面から合成樹脂の供給を行えば、補強部材3の外周面への樹脂回り込みを抑制することができる。また、この場合、合成樹脂が金型内の補強部材3に近い位置から射出されることによって、合成樹脂を補強部材3に密着させるための圧力を高めることができる。
【0068】
特に、ブラケット1Aでは、ゲート痕Gは、外周部211の軸方向角部2eを含む領域に形成されている。外周部211の軸方向角部2eは、外周部211の軸方向端e1と内周側表面f1とが連なる部分である。言い換えれば、金型内での合成樹脂の供給は、補強部材3の軸方向端3e3近傍の、当該補強部材3の内周面側から行われている。この場合、合成樹脂は補強部材3の軸方向端3e3を金型に対して抑え込むように供給されるため、補強部材3の外周面への樹脂回り込みを効果的に抑制することができる。
【0069】
さらに、ブラケット1Aにおいて、ゲート痕Gは、外周部211の軸方向角部2eから、軸方向端e1に沿って、ブラケット本体2と補強部材3との境界(外周部211(ブラケット本体2)の外周面2f)に至るまで延びている。言い換えれば、金型内での合成樹脂は、補強部材3の軸方向端3e3に最も近い位置において、補強部材3の内周面に対して一定の入力角度(90度を除く、角度0度を超える鋭角)をもって、当該補強部材3の軸方向端3e3を金型に対して抑え込むように供給されている。この場合、合成樹脂は、補強部材3直近の外周部211の内周側から射出されることによって、補強部材3の外周面への樹脂回り込みをさらに抑制することができる。
【0070】
なお、
図9および
図10を参照すれば、ゲート痕Gは、軸方向両側に形成されている。ただし、ゲート痕Gは、軸方向一方側および軸方向他方側の少なくとも一方に形成されていればよい。本実施形態において、ゲート痕Gは、車両装着時左右方向両側に形成されている。また、ゲート痕Gは、軸方向一方側および軸方向他方側のそれぞれにおいて、1つずつ形成されている。ただし、ゲート痕Gは、軸方向一方側および軸方向他方側の少なくとも一方において、少なくとも1つとすることができる。本実施形態において、ゲート痕Gは、車両装着時左右方向両側において、それぞれ、車両装着時後方向に、1つずつ形成されている。なお、
図11は、
図1のA-A断面を右正面平面側から示す斜視図である。
図11によれば、
図2のA-A断面は、車両装着時後方向上側から視ると、
図11のように、ゲート痕Gはない。
【0071】
図12は、本発明の第2実施形態に係る防振装置用ブラケット1B(単に、「ブラケット1B」ともいう。)の正面図である。
【0072】
ブラケット1Bは、ブラケット1Aと同様、合成樹脂によって形成されたブラケット本体2と、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材3と、を備えている。
【0073】
ブラケット本体2は、ブラケット1Aと同様、囲繞部20を有し、囲繞部20は、第1囲繞部21と、第2囲繞部22と、を有している。
図13を参照すれば、本実施形態において、第1囲繞部21は、ブラケット1Aと同様、囲繞方向に延びている外周部211と、囲繞方向に延びている内周部212と、外周部211と内周部212とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部213とによって形作られている。
【0074】
一方、本発明によれば、外周部211の断面幅W1は、内周部212の断面幅W2と同一又は当該内周部212の断面幅W2よりも狭くすることができる。
図14を参照すれば、本実施形態において、外周部211の断面幅W1は、内周部212の断面幅W2よりも狭い。
【0075】
本実施形態のように、外周部211の断面幅W1が、内周部212の断面幅W2と同一又は当該内周部212の断面幅W2よりも狭くなる場合、前記防振装置本体から受ける荷重を直接受ける内周部211の強度・剛性を重視した設計となるため、ブラケット本体2全体としての、外周部211と内周部212との強度・剛性バランスが良好になる。したがって、ブラケット1Bによれば、外周部211と内周部212との強度バランスを良好なものとしつつ、さらなる軽量化とともに耐久性を向上させることができる。具体的には、外周部211の断面幅W1を、内周部212の断面幅W2と同一又は当該内周部212の断面幅W2よりも狭くすれば、例えば、ブラケット本体2全体としての破壊起点を均一にすることができ、また、破壊起点を均一にすることによって、ブラケット本体2に対して補強部材3を効率的に使用できるようにすることができる。また、本実施形態によれば、外周部211と内周部212との強度・剛性バランスが良好なものとなることから、補強部材3の厚さdは、ブラケット1Aと比べて薄くすることができる。
【0076】
また、
図14を参照すれば、本実施形態において、内周部212の内周側表面f4は、軸方向断面視において(即ち、囲繞方向に対して直交する断面で視たとき)、内周側に向かって凸の輪郭を有している。
【0077】
内周部212の内周側表面f4は、前記防止装置本体の取付面となる。前記防止装置本体には、様々な方向からの荷重が入力される。加えて、内周部212は、断面幅方向(軸方向)中央に連結部213が接続されている。したがって、前記防止装置本体からの荷重入力によって(例えば、前記防止装置本体と内周部212との接触によって)、内周部212のうち、当該内周部212の軸方向端e2の側の部分に対して車両装着時上下方向に荷重入力が集中すると、例えば、当該内周部212の軸方向端e2の側の部分が変位してしまうことが懸念される。したがって、こうした荷重入力集中は、ブラケットの主要破壊形態の一つとなり得るため、抑制されることが好ましい。
【0078】
図14を参照すれば、本実施形態において、内周部212の内周側表面f4の形状は、軸方向断面視において、内側に凸となる形状となっている。これによって、本実施形態によれば、荷重が入力されるときに生じ得る前記荷重入力集中を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、耐久性をより向上させることができる。
【0079】
また、
図14を参照すれば、本実施形態において、前記凸の輪郭のうち、内周側表面f4の軸方向中央部分f4aは、外側に向かって凸の曲線Cによって形作られている。本実施形態では、曲線Cは、曲率半径r4の円弧曲線である。
【0080】
ブラケット1Bにおいて、内周側表面f4の軸方向中央部分f4aは、荷重入力が最も大きい部分である。したがって、内周側表面f4の軸方向中央部分f4aを、外側に向かって凸の曲線Cによって形作れば、内周側表面f4の軸方向中央部分f4aに生じる応力集中を緩和させることができる。したがって、本実施形態によれば、耐久性をより向上させることができる。
【0081】
なお、本発明によれば、内周部212の内周側表面f4の軸方向全体の形状は、1つの上記曲線Cによって、又は、1つの上記曲線Cと複数の曲線との組み合わせによって、形作ることができる。
【0082】
これに対し、
図14を参照すれば、本実施形態において、前記凸の輪郭のうち、内周側表面f4の軸方向端側部分f4b(より具体的に、両端側部分f4b、f4b)は、直線Lによって形作られている。本実施形態では、直線Lは、軸直方向に対して鋭角側角度γで、内周側表面f4の軸方向中央部分f4aに連なっている。この場合、さらなる軽量化を図ることができる。なお、本発明によれば、内周側表面f4の軸方向中央部分f4aは、1つ若しくは複数の直線、1つ若しくは複数の曲線、又は、これらの組み合わせ(但し、1つの直線のみで、は除く)によって形成することができる。
【0083】
さらに、本実施形態において、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とは、ブラケット1Aと同様、囲繞部20の補強部材配置部分20aに、囲繞方向に延びている凹部23を形成している。
【0084】
翻って
図12を参照すれば、本実施形態において、凹部23は、ブラケット1Aと同様、外周部211、内周部212、連結部213および囲繞方向端表面214によって形成されている。さらに、
図13を参照すれば、本実施形態において、囲繞方向端表面214は、貫通穴A1に連なっている。これによって、本実施形態では、凹部23は、ブラケット1Aと同様、囲繞方向端において、貫通穴A1に開放されている。
【0085】
また、
図13を参照すれば、本実施形態では、囲繞部20の上側部分(第1囲繞部21の掛け渡し部分)において、内周部212の断面幅W2は基本的に、車両装着時上方向から車両装着時下方向に向かって、一定の幅である。ただし、本実施形態では、内周部212の断面幅W2は、
図13に示すように、中心軸線Oから、第2囲繞部22に向かうに従って広くなっている。そして、第2囲繞部22付近では、当該断面幅W2は、最大幅をとる。また、
図13を参照すれば、本実施形態では、囲繞部20の上側部分(第1囲繞部21の掛け渡し部分)において、外周部211の断面幅W1は基本的に、車両装着時上方向から車両装着時下方向に向かって一定である。ただし、本実施形態では、外周部211の断面幅W1は、
図13に示すように、連結部213の所定の位置から、中心軸線Oに向かうに従って広くなっている。さらに、本実施形態では、外周部211の断面幅W1は、
図13に示すように、貫通穴A1のうちの、中心軸線Oよりも車両装着時上方向の所定の位置から、第2囲繞部22に向かって一定の幅(断面幅W1の最大幅)をとる。
【0086】
また、本実施形態において、ブラケット本体2の囲繞部20は、ブラケット1Aと同様、補強部材3が配置されることによって補強されている。本実施形態において、補強部材3は、ブラケット1Aと同様、繊維強化プラスチック(FRP)によって形成されている。
【0087】
図14を参照すれば、本実施形態において、補強部材3の断面幅W4は、囲繞部20の上側部分(第1囲繞部21の掛け渡し部分)における、外周部211の断面幅W1と等しい。補強部材3の断面幅W4は、補強部材3の軸方向端3e3の間の幅である。また、
図15を参照すれば、本実施形態において、補強部材3の断面幅W4は、ブラケット1Aと同様、囲繞方向に沿って一定である。ただし、本実施形態では、上述のとおり、第1囲繞部21において、外周部211の断面幅W1は、囲繞方向に沿って、第2囲繞部22に対して一定の距離まで近づくと、第2囲繞部22に向かうに従って広くなっている。そして、第2囲繞部22付近では、当該断面幅W1の最大幅をとる。
【0088】
ところで、囲繞部20が横方向(例えば、車両装着時前後方向)に荷重を受ける場合、当該荷重は、貫通穴A1の横幅が最大となる部分、本実施形態では、車両装着時上下方向において中心軸線Oの高さに位置する、第1囲繞部21の部分に集中する。一方、補強部材3の延在方向他方側端3e1及び延在方向他方側端3e2は、異材質であるブラケット本体2との境界である。このため、囲繞部20が横方向に大きな荷重を受けるとき、補強部材3の延在方向他方側端3e1及び延在方向他方側端3e2に応力集中が生じることが懸念される。したがって、補強部材3の延在方向他方側端3e1及び延在方向他方側端3e2は、貫通穴A1の横幅が最大となる中心軸線Oの高さよりも下側(第2囲繞部22に近い側)に位置することが好ましい。
【0089】
例えば、
図4を参照すれば、ブラケット1Aにおいて、補強部材3は、ブラケット1Aに比べて、囲繞部20の下側部分(第2囲繞部22)により近い位置まで延在させている。このため、ブラケット1Aによれば、補強部材3の延在方向他方側端3e1及び延在方向他方側端3e2を、貫通穴A1の横幅が最大となる中心軸線Oの高さよりも下側に位置することによって、延在方向他方側端3e1及び延在方向他方側端3e2に生じ得る応力集中を軽減することができる。したがって、ブラケット1Aによれば、耐久性をより向上させることができる。
【0090】
一方、補強部材3は、外周部211の断面幅W1が内周部212の断面幅W2に比べて狭い分、補強部材3の断面幅W4がブラケット1Aに比べて狭く抑えることができる。
図15を参照すれば、本実施形態において、補強部材3は、補強部材3の断面幅W4がブラケット1Aに比べて狭く抑えられる分、ブラケット本体2に設けられた窪み2cに至るまで延在させることができる。本実施形態において、補強部材3の延在方向他方側端3e1及び延在方向他方側端3e2は、
図15に示すように、ブラケット本体2に設けられた窪み2c内に配置されている。したがって、本実施形態によれば、補強部材3の断面幅W4がブラケット1Aに比べて狭く抑えられる分、補強部材3は、ブラケット1Aに比べて、第2囲繞部22により近い位置まで延在させることができる。したがって、本実施形態によれば、ブラケット1Aよりも第2囲繞部22により近い位置まで延在させた分、耐久性をよりさらに向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態において、ブラケット本体2に設けられた窪み2cは、ブラケット1Aと同様、第2囲繞部22と、2つの稜線リブ24とによって形成されている。一方、本実施形態において、補強部材3は、上述のとおり、外周部211の断面幅W1が内周部212の断面幅W2に比べて狭い。したがって、本実施形態によれば、上述のとおり、補強部材3は、2つの稜線リブ24の間を通すことができる。言い換えれば、本実施形態によれば、2つの稜線リブ24は、補強部材3と干渉させることなく、車両装着時上方向に延在させることができる。例えば、
図1を参照すれば、ブラケット1Aにおいて、2つの稜線リブ24の稜線L24は、内側に向かって凹の曲線である。これに対し、
図15を参照すれば、本実施形態において、2つの稜線リブ24の稜線L24は、直線である。すなわち、本実施形態において、稜線リブ24の領域は、ブラケット1Aに比べて拡大している。したがって、本実施形態によれば、ブラケット1Aよりも稜線リブ24の領域を拡大させた分、耐久性をよりさらに向上させることができる。
【0092】
ところで、
図16を参照すれば、ブラケット1Bは、ブラケット1Aと同様に、ブラケット本体2に止め具25を設け、当該止め具25の固定穴22hを通した締結要素(例えば、ボルト)によって、エンジン等に連結されている。
【0093】
一方、
図17を参照すれば、本実施形態において、ブラケット本体2の底部には、軸直方向に延在しているとともに軸方向に間隔を置いて配置されている、複数の底部リブ26が形成されている。当該複数の底部リブ26の厚さt26は、軸方向中央に近い底部リブ26ほど厚くなっている。この場合、軽量化をより向上させることができる。
【0094】
図17を参照すれば、符号RCは、止め具25の間の、車両装着時左右方向の中央の領域(以下、「左右中央領域RC」ともいう。)である。ブラケット1Bを車体に取り付けて使用するとき、左右中央領域RCには、大きな荷重が加わることが懸念される。
【0095】
図17を参照すれば、本実施形態において、第2囲繞部22の底面には、中央底部リブ(第1底部リブ)26aと、2つの第2底部リブ26b、2つの第3底部リブ26c、2つの第4底部リブ26dの、7つの底部リブ26が形成されている。本実施形態において、中央底部リブ26aは、左右中央領域RCに沿って軸直方向(車両装着時上下方向)に延在している。2つの第2底部リブ26bは、それぞれ、中央底部リブ26aに対して軸線方向(車両装着時左右方向)外側に、当該軸線方向に間隔を置いて配置されている。2つの第3底部リブ26cは、それぞれ、第2底部リブ26bに対して軸線方向(車両装着時左右方向)側に、当該軸線方向に間隔を置いて配置されている。2つの第4底部リブ26dは、それぞれ、第3底部リブ26cに対して軸線方向(車両装着時左右方向)側に、当該軸線方向に間隔を置いて配置されている。また、本実施形態において、底部リブ26の厚さt26は、軸線方向(車両装着時左右方向)の厚さ(幅)である。
【0096】
図17を参照すれば、中央底部リブ26aの厚さt26aは、全ての底部リブ26のうちで最も厚い(広い)。第2底部リブ26bの厚さt26bは、中央底部リブ26aの厚さt26aよりも薄い(狭い)。第3底部リブ26cの厚さt26cは、第2底部リブ26bの厚さt26bよりも薄い。第4底部リブ26dの厚さt26dは、第3底部リブ26cの厚さt26cよりも薄い。すなわち、本実施形態において、第4底部リブ26dの厚さt26dは、全ての底部リブ26のうちで最も薄い。本実施形態によれば、左右中央領域RCに位置する中央底部リブ26aの厚さt26aを最も厚く確保しつつ、左右中央領域RCから遠ざかるにしたがって、底部リブ26の厚さt26を薄くしていくことによって、軽量化を向上させることができる。
【0097】
また、翻って
図13を参照すれば、本実施形態において、ブラケット本体2の底面には、軸直方向に延在しているとともに軸方向に間隔を置いて配置されている、複数の底部溝27が形成されている。また、本実施形態において、底部リブ26は、複数の底部溝27の間に形成されたリブである。さらに、本実施形態において、複数の底部溝27の深さは、軸方向中央に近い底部溝27ほど深くなっている。この場合、軽量化を図りつつ、耐久性をより向上させることができる。
【0098】
図13を参照すれば、本実施形態において、第2囲繞部22の底面には、2つの中央底部溝(第1底部溝)27aと、2つの第2底部溝27b、2つの第3底部溝27cの、6つの底部溝27が形成されている。本実施形態において、2つの中央底部溝27aは、当該2つの中央底部溝27aの間に中央底部リブ26aを形成している。第2底部溝27bは、当該第2底部溝27bと中央底部溝27aとの間に第2底部リブ26bを形成している。第3底部溝27cは、当該第3底部溝27cと第2底部溝27bとの間に第3底部リブ26cを形成している。さらに、第3底部溝27cは、当該第3底部溝27cの軸線方向(車両装着時左右方向)の外側に、第4底部リブ26dを形成している。また、本実施形態において、底部溝27の深さd26は、軸直方向(車両装着時上下方向)の深さである。
【0099】
図13を参照すれば、2つの中央底部溝27aの深さd27aは、全ての底部溝27のうちで最も深い。第2底部溝27bの深さd27bは、中央底部溝27aの深さd27aよりも浅い。第3底部溝27cの深さd27cは、第2底部溝27bの深さd27bよりも浅い。すなわち、本実施形態において、第3底部溝27cの深さd27cは、全ての底部溝27のうちで最も浅い。本実施形態によれば、左右中央領域RCに位置する中央底部溝27aの深さd27aを最も深く確保しつつ、左右中央領域RCから遠ざかるにしたがって、底部溝27の深さd27を浅くしていくことによって、軽量化を図りつつ、耐久性をより向上させることができる。
【0100】
なお、
図18には、ブラケット1Bを正面左側から示す。また、
図19には、ブラケット1Bを底面左側から示す。
【0101】
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、囲繞部20の形態(形状)は、上述の実施形態の形態(形状)に限定されるものではない。
【0102】
例えば、囲繞部20は、軸方向視において、楕円形状であるが、真円形状、矩形形状など、様々な形状とすることができる。また、
図1、
図12を参照すれば、上述した各実施形態において、補強部材3の外周面は、ブラケット本体2の囲繞部20の外面と一致させているが、囲繞部20の外面よりも外側に突出させることによって、囲繞部20の外面との間に段差を設けることができる。また、上述した各実施形態において、補強部材3は、ブラケット1の外周面として、外部からの視認が可能なように、ブラケット本体2の囲繞部20に埋設されているが、外部からの視認ができないように、囲繞部20に対して完全に埋設することができる。また、
図6、
図17を参照すれば、第2囲繞部22の取付面は、平面によって形成されている。ただし、第2囲繞部22の取付面は、車体等の取付側の形状に応じた形状の面によって形成することができる。さらに、上述した各実施形態に採用された様々な構成は、適宜、相互に置き換えることができ、又は、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B:防振装置用ブラケット, A1:貫通穴, 2:ブラケット本体, 20:囲繞部, 20a:補強部材配置部分, 21:第1囲繞部, 211:外周部, 212:内周部, 213:連結部, 22:第2囲繞部, 23:凹部, 25:止め具, 26:底部リブ, 26a:中央底部リブ(第1底部リブ), 26b:第2底部リブ, 26c:第3底部リブ, 26d:第4底部リブ, 27:底部溝, 27a:中央底部溝(第1底部溝), 27b:第2底部溝, 27c:第3底部溝,3:補強部材, f1:外周部の内周側表面, f2:内周部の外周側表面,f3:連結部の側面, f3a:外周部側曲面, f3b:内周部側曲面, f4:内周部の内周側表面, f4a:内周側表面の軸方向中央部分, f4b:内周側表面の軸方向端側部分, G:ゲート痕, O:中心軸線, W1:外周部の断面幅, W2:内周部の断面幅, W3:連結部の断面幅, W4:補強部材の断面幅,