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特許7444772低減キャパシタアレイDACを用いたSAR ADCにおけるオフセット補正のための方法及び装置
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  • 特許-低減キャパシタアレイDACを用いたSAR  ADCにおけるオフセット補正のための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】低減キャパシタアレイDACを用いたSAR ADCにおけるオフセット補正のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20240228BHJP
   H03M 1/46 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H03M1/10 A
H03M1/46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020524180
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018058087
(87)【国際公開番号】W WO2019089499
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】62/578,608
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/173,289
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397050741
【氏名又は名称】マイクロチップ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROCHIP TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンジェ、アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ロッケン、イバー
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205230(JP,A)
【文献】特開2009-232281(JP,A)
【文献】特開2009-5139(JP,A)
【文献】特開2008-294567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M1/10-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減キャパシタアレイデジタルアナログ変換器(DAC)を使用した、逐次比較型レジスタ(SAR)アナログデジタル変換器(ADC)におけるオフセット補正のための方法であって、
SAR ADCの正入力及び負入力を相互に結合するステップと、
前記SAR ADCのオフセット電圧のデジタル表現を決定するステップと、
前記オフセット電圧の前記デジタル表現をオフセットレジスタに記憶するステップと、
入力された前記オフセット電圧の前記記憶されたデジタル表現で、複数のオフセット補正キャパシタを含む低減キャパシタアレイDACを構成して、オフセット補正電圧を提供するステップと、
前記SAR ADCの前記正入力及び前記負入力を分離するステップと、
前記SAR ADCの前記正入力及び前記負入力に差動電圧を結合するステップと、
前記低減キャパシタアレイDACからの前記オフセット補正電圧と結合している間に前記差動電圧のSAR変換を実行するステップと、を含み、
前記複数のオフセット補正キャパシタが、相互に結合されノードVxを形成する上側プレートを有するN個の正オフセット補正キャパシタと、相互に結合されノードVyを形成する上側プレートを有するN個の負オフセット補正キャパシタとを含み、Nは、前記低減キャパシタアレイDACのオフセット電圧補正ビットの数である、方法。
【請求項2】
Nが5に等しく、
第1の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/2又はVrefn/2に選択的に結合するステップと、
第1の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/2又はVrefp/2に選択的に結合するステップと、
第2の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/4又はVrefn/4に選択的に結合するステップと、
第2の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/4又はVrefp/4に選択的に結合するステップと、
第3の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/8又はVrefn/8に選択的に結合するステップと、
第3の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/8又はVrefp/8に選択的に結合するステップと、
第4の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/16又はVrefn/16に選択的に結合するステップと、
第4の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/16又はVrefp/16に選択的に結合するステップと、
第5の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/32又はVrefn/32に選択的に結合するステップと、
第5の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/32又はVrefp/32に選択的に結合するステップとを更に含み、
オフセット補正電圧が生成される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
Nが6に等しく、
第1の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/2又はVrefn/2に選択的に結合するステップと、
第1の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/2又はVrefp/2に選択的に結合するステップと、
第2の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/4又はVrefn/4に選択的に結合するステップと、
第2の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/4又はVrefp/4に選択的に結合するステップと、
第3の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/8又はVrefn/8に選択的に結合するステップと、
第3の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/8又はVrefp/8に選択的に結合するステップと、
第4の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/16又はVrefn/16に選択的に結合するステップと、
第4の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/16又はVrefp/16に選択的に結合するステップと、
第5の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/32又はVrefn/32に選択的に結合するステップと、
第5の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/32又はVrefp/32に選択的に結合するステップと、
第6の正オフセット補正キャパシタの上側プレートを前記ノードVxに結合するステップと、
第6の負オフセット補正キャパシタの上側プレートを前記ノードVyに結合するステップと、
前記第6の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp又はVrefnに選択的に結合するステップと、
前記第6の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn又はVrefpに選択的に結合するステップとを更に含み、
オフセット補正電圧が生成される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記SAR ADCのサンプリングフェーズ中、前記正オフセット補正キャパシタ及び負オフセット補正キャパシタの前記下側プレートを共通モード電圧Vcmに結合するステップを更に含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項5】
前記オフセット補正電圧を無効にするステップを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
スタートアップ時にオフセット補正を実行するステップを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
オフセット補正を定期的に実行するステップを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記SAR ADCが、差動入力SAR ADCである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願)
この出願は、Anders VinjeとIvar Lokkenの共有による「Method for Offset Correction in SAR ADC with Reduced Capacitor Array DAC」と題する、2017年10月30日に出願された米国仮特許出願第62/578,608号に対する優先権を主張し、全ての目的のために本明細書において参照によりここに組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、アナログデジタル変換器(analog-to-digital converter、ADC)に関し、より具体的には、低減キャパシタアレイデジタルアナログ変換(digital-to-analog conversion、DAC)を用いた逐次比較型レジスタ(successive approximation register、SAR)ADCにおけるオフセット補正に関する。
【背景技術】
【0003】
逐次比較型レジスタ(SAR)アナログデジタル変換器(ADC)は、アナログ波形の各サンプルの最も近い量子化レベルに収束するバイナリサーチを実行して、次いでそのデジタル表現を提供することによって、連続アナログ波形を離散デジタル表現に変換するアナログデジタル変換器の一種である。SAR ADCは、最も一般的なADCアーキテクチャのものであり、例えばマイクロコントローラで使用され得る。
【0004】
ADCは、一般に、オフセットなし測定をすることが期待される。オフセット較正のための方法としては、後処理におけるデジタルオフセット補正、オフセット補償コンパレータを使用したアナログオフセット補正、及び専用補償デジタルアナログ変換器(DAC)を使用したハイブリッドデジタル/アナログオフセット補正が含まれる。デジタル補正は最も単純であるが、ADCの信号範囲を制限するという点で本質的な制限を有する。したがって、オフセット補償コンパレータを使用したアナログ補正又は専用補正DACを使用したハイブリッド補正が広く使用されているが、回路の複雑さを実質的に増加させている。
【0005】
オフセット較正ためのいくつかの解決策としては、後処理におけるデジタルオフセット補正、オフセット補償コンパレータを用いたアナログオフセット補正及び専用補償DACを使用したハイブリッドデジタル/アナログオフセット補正が含まれる。デジタル補正は単純であることがあるが、デジタル補正がADCの信号範囲を制限するという点で本質的な制限を有することがある。オフセット補償コンパレータを使用したアナログ補正又は専用補正DACを使用したハイブリッド補正が使用されることがあるが、これらのアプローチは、回路の複雑さを実質的に増加させることがある。
【0006】
図1は、オフセット補正を実行する3つの先行技術の方法を示す。図1a)は、デジタルオフセット補正のための回路を示す。デジタルオフセット補正は、出力データを後処理する場合に、最も単純な方法であるが、ADCの転送機能全体をシフトさせて、それによってその飽和限界を変更するためADCの範囲を制限する。これは、オフセットを測定し、後処理においてデジタル的に補正することを含んでもよい。
【0007】
図1(b)は、アナログオフセット補正のための回路を示す。オフセット補償コンパレータを使用した完全アナログオフセット補正は、前述のデジタルオフセット補正方法に関連する問題を回避し、例えば、マイクロコントローラのためのSAR ADCにおいても一般的に使用されている。アナログ補正は、ADCの範囲を制限しない。これは、追加のクロックサイクルを用いてバックグラウンドで行うことができる。しかしながら、これは、コンパレータの複雑さを実質的に増加させ、多くの場合、その集積回路面積を大きく増加させる。
【0008】
図1(c)は、ハイブリッドアナログ/デジタルオフセット補正のための回路を示す。この方法は、別個の補正DACを用いたハイブリッド(アナログ/デジタル)補正を使用するため、測定及び記憶後にオフセットを差し引くことができる。これもADCの範囲を限定しないが、専用の補正DACを必要とすることにより、実質的な複雑さを追加している。ハイブリッド補正は、補正DACを用いてアナログドメインにおいてオフセットを測定し、補償を行うことを含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、専用補償DACを必要とせずにオフセット補正を提供するために、キャパシタ低減DACトポロジーを利用するSAR ADCのためのハイブリッドアナログ/デジタル補正方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、低減キャパシタアレイデジタルアナログ変換器(DAC)を使用して、逐次比較型レジスタ(SAR)アナログデジタル変換器(ADC)におけるオフセット補正を行うための方法は、SAR ADCの正入力及び負入力を相互に結合するステップと、SAR DACのオフセット電圧のデジタル表現を決定するステップと、オフセット電圧のデジタル表現をオフセットレジスタに記憶するステップと、入力されたオフセット電圧の記憶されたデジタル表現で、複数のオフセット補正キャパシタを含み得る低減キャパシタアレイDACを構成して、オフセット補正電圧を提供するステップと、SAR ADCの正入力及び負入力を分離するステップと、差動電圧をSAR ADCの正入力及び負入力に結合するステップと、低減キャパシタアレイDACからのオフセット補正電圧に結合している間に差動電圧のSAR変換を実行するステップと、を含み得る。
【0011】
本方法の更なる実施形態によれば、複数のオフセット補正キャパシタが、オフセットレジスタに記憶されたオフセット電圧のデジタル表現によって選択される複数の基準電圧に結合されてもよい。本方法の更なる実施形態によれば、複数の基準電圧が、Vrefp電圧からVrefn電圧までバイナリ加重されてもよい。本方法の更なる実施形態によれば、共通モード電圧Vcmが、(Vrefp+Vrefn)/2にほぼ等しくてもよい。本方法の更なる実施形態によれば、複数の基準電圧が、VrefpとVrefnとの間に結合された直列接続抵抗電圧デバイダストリングから提供されてもよい。本方法の更なる実施形態によれば、複数のオフセット補正キャパシタが、相互に結合されノードVxを形成する上側プレートを有するN個の正オフセット補正キャパシタと、相互に結合されノードVyを形成する上側プレートを有するN個の負オフセット補正キャパシタを含んでもよく、Nが、低減キャパシタアレイDACのオフセット電圧補正ビットの数であってもよい。
【0012】
本方法の更なる実施形態によれば、Nは5に等しくてもよく、第1の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/2又はVrefn/2に選択的に結合するステップと、第1の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/2又はVrefp/2に選択的に結合するステップと、第2の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/4又はVrefn/4に選択的に結合するステップと、第2の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/4又はVrefp/4に選択的に結合するステップと、第3の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/8又はVrefn/8に選択的に結合するステップと、第3の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/8又はVrefp/8に選択的に結合するステップと、第4の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/16又はVrefn/16に選択的に結合するステップと、第4の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/16又はVrefp/16に選択的に結合するステップと、第5の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp/32又はVrefn/32に選択的に結合するステップと、第5の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn/32又はVrefp/32に選択的に結合するステップとを更に含んでもよく、それによってオフセット補償電圧が生成され得る。
【0013】
本方法の更なる実施形態によれば、Nは6に等しくてもよく、第6の正オフセット補正キャパシタの上側プレートをノード-Vx-に結合するステップと、第6の負オフセット補正キャパシタの上側プレートをノードVyに結合するステップと、第6の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefp又はVrefnに選択的に結合するステップと、第6の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm、Vrefn又はVrefpに選択的に結合するステップとを更に含んでもよく、それによって電圧オフセット補正範囲が2倍にされ得る。
【0014】
本方法の更なる実施形態によれば、正オフセット補正キャパシタ及び負オフセット補正キャパシタの下側プレートを、SAR ADCのサンプリングフェーズ中、共通モード電圧Vcmに結合するステップを含んでもよい。本方法の更なる実施形態によれば、オフセット補償電圧を無効にするステップを含んでもよい。本方法の更なる実施形態によれば、スタートアップ時にオフセット補正を行うステップを含んでもよい。本方法の更なる実施形態によれば、オフセット補正を定期的に行うステップを含んでもよい。本方法の更なる実施形態によれば、SAR ADCが、差動入力SAR ADCであってもよい。
【0015】
別の実施形態によれば、アナログデジタル変換器(ADC)におけるオフセット電圧を補正するための方法は、ADCの入力を相互に結合してオフセット電圧を生成するステップと、オフセット電圧をそのデジタル表現に変換するステップと、オフセット電圧のデジタル表現をオフセットレジスタに記憶するステップと、オフセットレジスタに記憶されたオフセット電圧の記憶されたデジタル表現からオフセット補償電圧を導出するステップと、入力アナログ電圧を受信するステップと、最下位ビットの電圧をスケーリングすることによってオフセット電圧を補正するステップと、入力アナログ電圧をデジタル出力値に変換するステップとを含み得る。更なる実施形態によれば、SAR ADCが、差動入力SAR ADCであってもよい。
【0016】
更に別の実施形態によれば、アナログデジタル変換器(ADC)は、ADCの入力を相互に結合してオフセット電圧を生成し、オフセット電圧をそのデジタル表現に変換し、オフセット電圧のデジタル表現をオフセットレジスタに記憶し、オフセットレジスタ内のオフセット電圧の記憶されたデジタル表現からオフセット補償電圧を導出し、アナログ電圧を受信し、アナログ電圧をデジタル値に変換し、基準電圧をADCの最下位ビットに関連付けられた低減キャパシタアレイデジタルアナログ変換器(DAC)に基準電圧をスケーリングすることによってオフセット電圧を補正するように構成されている回路を含み得る。更なる実施形態によれば、ADCがマイクロコントローラ集積回路の一部であってもよい。
【0017】
更に別の実施形態によれば、低減キャパシタアレイデジタルアナログ変換器(DAC)を使用した逐次比較型レジスタ(SAR)アナログデジタル変換器(ADC)におけるオフセット補正のための装置は、正電圧Vinp及び負電圧Vinnと、正基準電圧Vrefp及び負基準電圧Vrefnと、共通モード電圧Vcmについての入力を有するSAR ADCと、ノードVxを形成する相互に結合した上側プレートを有する、第1の複数のバイナリ加重キャパシタと、ノードVyを形成する相互に結合した上側プレートを有する、第2の複数のバイナリ加重キャパシタと、第1の複数のバイナリ加重キャパシタの下側プレートを、電圧Vrefp、Vrefn、Vcm及びVinpに選択的に結合するように適合された複数の第1のスイッチと、第2の複数のバイナリ加重キャパシタの下側プレートを、電圧Vrefp、Vrefn、Vcm及びVinnに選択的に結合するように適合された複数の第2のスイッチと、ノードVxに結合された上側プレートを有するN個の正オフセット補正キャパシタと、ノードVyに結合された上側プレートを有するN個の負オフセット補正キャパシタと、N個の正オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm並びに複数のスケーリングされた電圧基準Vrefp/2m及びVrefn/2mに選択的に結合するように適合された複数の第3のスイッチであって、mは正の整数であってもよい、複数の第3のスイッチと、N個の負オフセット補正キャパシタの下側プレートをVcm並びに複数のスケーリングされた電圧基準Vrefn/2m及びVrefp/2mに選択的に結合するように適合された複数の第4のスイッチであって、mは正の整数であってもよい、複数の第4のスイッチと、を含む低減キャパシタアレイDACとを含み得る。
【0018】
更なる実施形態によれば、Nは5に等しくてもよく、Vcm、Vrefp/2又はVrefn/2に選択的に結合され得る第1の正オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefn/2又はVrefp/2に選択的に結合され得る第1の負オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefp/4又はVrefn/4に選択的に結合され得る第2の正オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefn/4又はVrefp/4に選択的に結合され得る第2の負オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefp/8又はVrefn/8に選択的に結合され得る第3の正オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefn/8又はVrefp/8に選択的に結合され得る第3の負オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefp/16又はVrefn/16に選択的に結合され得る第4の正オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefn/16又はVrefp/16に選択的に結合され得る第4の負オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefp/32又はVrefn/32に選択的に結合され得る第5の正オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefn/32又はVrefp/32に選択的に結合され得る第5の負オフセット補正キャパシタの下側プレートとを含んでもよく、それによってオフセット補償電圧が生成され得る。
【0019】
更なる実施形態によれば、Nは6に等しくてもよく、ノードVxに結合され得る第6の正オフセット補正キャパシタの上側プレートと、ノードVyに結合され得る第6の負オフセット補正キャパシタの上側プレートと、Vcm、Vrefp、又はVrefnに選択的に結合され得る第6の正オフセット補正キャパシタの下側プレートと、Vcm、Vrefn又はVrefpに選択的に結合され得る第6の負オフセット補正キャパシタの下側プレートとを含んでもよく、それにより、電圧オフセット補正範囲が2倍にされ得る。本方法の更なる実施形態によれば、SAR ADCは、差動入力SAR ADCであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
下記の添付図面と併せて行われる以下の説明を参照することによって、本開示のより完全な理解を得ることが可能である。
図1】オフセット補正を実行する3つの先行技術の方法の概略図を示す。
図2】本開示の実施形態による、低減キャパシタアレイDACの概略図を示す。
図2A】本開示の実施形態による、図2に示す低減キャパシタアレイDACの基準電圧をスケーリングする抵抗電圧ディバイダの概略図を示す。
図3】この開示の特定の実施形態の例による、サンプリング中、サンプルアンドホールド(sample-and-hold、S/H)及びオフセット補正DACとして使用される場合の、図2に示す低減キャパシタDACの概略図を示す。
図4】この開示の特定の実施形態の例による、オフセット補正キャパシタを入力及び基準電圧に結合するためのスイッチ制御ロジックの概略図を示す。
図5】この開示の特定の実施形態の例による、オフセット補正の範囲を2倍にするための回路の概略図を示す。
図6】この開示の特定の実施形態の例による、ハイブリッドオフセット較正を用いたADCの動作のための概略フロー図を示す。
【0021】
本開示は様々な修正及び代替の形態が可能である一方で、それらの特定の実施形態の例を図で示し、本明細書で詳細に記述する。しかしながら、特定の例示的実施形態に関する本明細書の説明は、本開示を本明細書で開示された形態に限定する意図はないことを、理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の実施形態は、専用補償DACを必要とせずにオフセット補正を可能にするキャパシタ低減DACトポロジーを利用するハイブリッドアナログ/デジタル補正を含む。本開示の実施形態は、キャパシタ低減DACと呼ばれるDACトポロジーを使用することができる。いくつかのADCは、相対的な測定及びオフセットのみを行い、絶対ゲインは重要ではないため、較正されない。本開示の実施形態は、一般的なマイクロコントローラの使用に対してトポロジーアーキテクチャを適合させ得る。したがって、本開示の実施形態は、ADCのオフセット及びゲインを較正する可能性を高め得る。本開示の実施形態による提案された解決策は、ADCの範囲を制限することなく、ハイブリッドデジタル/アナログオフセット補正を提供し、別個の補正DACの必要性を除去する。
【0023】
本明細書で開示され、請求項に記載されるキャパシタ低減DACトポロジー回路は、例えば、限定するものではないが、混合信号(アナログ回路及びデジタル回路の両方)マイクロコントローラなどの集積回路装置に容易に実装され得る。
【0024】
図面を参照して、実施形態の例に関する詳細を概略的に示す。図面の類似の要素は、類似の番号で示し、同様の要素は、異なる小文字の添え字が付いた同じ番号で示す。
【0025】
図2を参照して、本開示の実施形態による、低減キャパシタアレイDACの概略図を示す。低減キャパシタアレイDACと共に使用されるADCは、スプリットキャパシタアレイよりも効果的であり得る。12ビットVcmベースの差動入力SAR ADCに対するキャパシタ低減アレイを図2に示す。これは、容量性DACを用いた電荷再分配ADCであるが、専用のスケーリングキャパシタを使用することによって下位ビットをスケーリングする代わりに、基準電圧を分割し、スケーリングされた基準電圧(図2A)を使用してスケーリングされて、電荷再分配動作に相当するQ=C*・Vの電荷関係を生成する。Cの代わりにVをスケーリングすることは、合理的に大きい単位キャパシタが使用され、面積、電力消費及びキャパシタアレイが入力信号及び基準電圧バッファについて表す負荷について有益である小さな総キャパシタンスを依然として達成することができることを意味する。
【0026】
ADCの正確な伝達関数を維持するために、MSBは全信号範囲の半分を表すべきであり、入力は、2重のMSBキャパシタンス又は図2に示すDACにおける64・C0でのみサンプリングされる。スケーリングされた基準で動作する残りの5つの単位キャパシタは全て、サンプリング中、両側がVcmに接続され、それらが電荷を含まないことを意味する。
【0027】
図2では、入力は、サンプリングフェーズにおいて64C0(全てのサンプリングキャパシタが相互に結合されている。すなわち32C0+16C0+8C0+4C0+2C0+C0+C0)でサンプリングされるが、5つの最下位ビットに対するキャパシタはVcmに接続され、それによって、それらは電荷を含まないことが分かる。ADCがサンプリングフェーズからMSB決定フェーズに進む場合に、入力サンプリングキャパシタはVcmにスイッチされ、入力電圧を電荷再分配によってノードVx及びVyにシフトさせる。次いで、ADCは、Vx>Vyであるか、あるいはVx<Vyであるかに応じて、MSB決定を行う。次いで、32・C0キャパシタを、MSB決定に応じてVrefp/Vrefn又はVrefn/Vrefpにスイッチし、次いで、Vx及びVyを再度評価して、MSB-1決定を得る。このプロセスは、逐次比較型アナログデジタル変換が完了し、全てのビットが変換されるまで継続する。
【0028】
しかしながら、5つの下位ビットに対するキャパシタはサンプリング中に使用されないため、これらを使用して5ビットオフセット補正を行うことができる。これらのキャパシタが、Vy側でそれらの分割されたVrefp電圧に保持され、Vy側で分割されたVrefn電圧に保持される場合、VxとVyとの間の差は、32LSB上方にシフトされる。また、反対に切り替えられる場合、VxとVyとの間の差は、32LSB下方にシフトされる。これは、サンプリングフェーズ中のこれらの5つのキャパシタのスイッチングが制御される場合、±1LSBの解像度で5ビットオフセット補正DACを自由に得ることを意味する。これは、図3に概念的に示すように、5ビットオフセット補正を有するために、サンプリング中にこれらの5ビットを制御する5ビットオフセット記憶レジスタのみを必要とすることを意味する。正確に測定される場合、オフセットは、±1LSB以内に低減され得る。
【0029】
サンプルフェーズ中、DACのLSB部分は、Vcmの代わりに基準電圧に接続されて、伝達関数をシフトさせることができる。1つの単位要素対を正/負の基準に接続することは、伝達関数を1LSB上方にシフトさせ、それを反対の負/正の基準に接続することは、それを1LSB下方にシフトさせる。オフセットが測定され、次いでサンプリング中に<<LSB部分>>を制御するために使用されるレジスタに記憶され得る。オフセット記憶レジスタに記憶された結果に従って、キャパシタ対を正/負又は負/正の基準に接続する。したがって、LSB部分は、アナログ回路を追加することなく補償DACとして作用することができる。スイッチ制御ロジック及びオフセット記憶レジスタは、必要とされる唯一の追加の回路コストである。
【0030】
図3を参照して、本開示の特定の実施形態の例による、サンプリング中、サンプルアンドホールド(S/H)及びオフセット補正DACとして使用されるときの、図2に示した低減キャパシタDACの概略図を示す。オフセット補償ADCを含むキャパシタ202は、必要とされるオフセット補償方向に応じて、正又は負のスケーリングされた基準電圧(図2A)のいずれかに結合され得る。
【0031】
図4を参照して、本開示の特定の実施形態の例による、オフセット補正キャパシタを入力及び基準電圧に結合するためのスイッチ制御ロジックの概略図を示す。これは、オフセット補正を用いたDACのためのスイッチ制御の実装であり得る。ここで、入力信号offscorrは、オフセット補正をオン又はオフにするために使用される。オフセット補正がオフ(offscorr=0)である場合、制御は(任意のオフセット補正なしのキャパシタ低減DACにおいて)通常どおりであり、サンプリングフェーズ(samp=1)中及びVcmフェーズ(scm=1)中の両方において、キャパシタをVcmに接続し、前の決定(sref high又はlow)の結果に応じて、ビット決定フェーズ中、キャパシタをVrefp/Vrefn又はVrefn/Vrefpにスイッチする。オフセット補正がオン(offscorr=1)である場合に、キャパシタは、オフセット記憶レジスタのi番目のビットであるreg(i)の値に応じて、samp=1の場合のVcmの代わりにVrefp/Vrefn又はVrefn/Vrefpに接続される。これは、5つのこのようなスイッチ及び5ビットオフセット記憶レジスタを用いて図3に示すような制御が実装され得ることを意味する。オフセット補正なしのスイッチ制御ロジックと比較した追加のコストは、ビット較正ごとに、3つの2-1マルチプレクサ、1つのANDゲート及び1つのインバータである。また、1つの5ビットレジスタを使用して、オフセットビット制御構成を記憶してもよい。この開示の教示によれば、追加のアナログハードウェアが必要とされない。
【0032】
図5を参照して、この開示の特定の実施形態の例による、オフセット補正の範囲を2倍にするための回路の概略図を示す。オフセット補正の範囲は、1つの側ごとに追加の単位キャパシタ、例えば、C0 504p及びC0 504nを追加することによって、2倍にされ得る。また、本明細書では、アナログハードウェアにおいて非常に少ないコストでオフセット較正の範囲を拡張することも可能であり、企図されている。オフセット補正に使用されるDACの一部は、スケーリングされた基準を使用するため、オフセット補正範囲を2倍にするために、1つの追加の単位キャパシタのみがフル基準電圧Vrefに接続される必要がある。したがって、フル基準Vrefp及びVrefnに接続される2つのC0キャパシタを追加すると、別の較正ビットが提供される。オフセット補正の範囲を±32LSBから±64LSBに拡張することを図5に示す。解像度は、依然として、この補正スキームの基本解像度である±1LSBである。
【0033】
図6を参照して、本開示の特定の実施形態の例による、ハイブリッドオフセット較正を用いたADCの動作のための概略フロー図を示す。デジタル較正又は従来のハイブリッド較正スキームと同様に、ADC変換を行ってオフセットを測定し、オフセット記憶レジスタにそれを記憶する必要がある。これは、オフセット測定を行うために、ADCが1つの変換期間の動作から取り出されなければならないことを意味する。典型的には、オフセットはスタートアップ時に測定され、オフセット調整がその時点で必要に応じて行われる。回路ドリフト、例えば温度変動を補償するためにオフセット測定及びオフセット調整を更新することが所与の間隔で行われ得る。オフセット較正が必要とされない場合、機能性を単にオフにすることができる。オフセット測定は、典型的には、ADC入力を相互に短絡させることによって行われ、専用のオフセット較正信号を使用して、結果がオフセット測定レジスタにロードされることを確実にし得る。次いで、オフセット測定レジスタを使用して、その後に通常のSARアナログデジタル変換を行う場合にDACスイッチ(図4)を制御し得る。
【0034】
オフセット較正プロセスは、ステップ610で開始する。システムスタートアップ時又は定期的に、例えば、構成要素の温度ドリフトを補償するために、オフセット較正ビットレベルがステップ612において決定され得る。較正ビットが「オフセット較正」に設定されない場合、ステップ624において通常のADC変換が実行される。ステップ624における各ADC変換後、ステップ626においてオフセット較正が有効にされたかどうかチェックがなされる。較正ビットが「オフセット較正」に設定されない場合、ステップ624において別のADC変換が実行される。
【0035】
しかしながら、ステップ612又はステップ626において、較正ビットが「オフセット較正」に設定されると決定された場合、ステップ614においてADCの入力がまとめて短絡されたオフセット測定がなされる。ステップ616において、オフセット測定の結果がオフセット記憶レジスタに記憶される。ステップ618において、適切に選択された(オフセット記憶レジスタから)基準電圧に結合されたオフセット較正DACキャパシタでレギュラーSAR ADC変換を行う。ステップ620において、オフセット較正ビットレベルがチェックされ、オフセット較正が無効化された場合、ステップ624に戻る。オフセット較正ビットが依然として有効である場合、ステップ614に戻り、次のSAR ADC変換を行う前に新しいオフセット較正を行う。
【0036】
本開示の実施形態によれば、オフセット補償SAR ADCは、DACスイッチングを制御するビットセルで実装され得ることが、本開示の範囲内であり、企図されている。これは、サンプリング中に正又は負の基準に切り替えるLSB部分のビットセル内にロジックを追加することを含み得る。これは、各ビットセル内に追加で3つの2:1マルチプレクサ及び1つのインバータを含み得る。これは、補正をオン又はオフに切り替え得る。更に、高解像度ADCに使用され得る複数の(N個の)デジタルデシメーションフィルタ(DDF)デジタル信号処理(DSP)フィルタを含むNビット補正のための記憶レジスタが存在してもよい。したがって、Nビットのオフセット補正DACが達成され得る。
【0037】
図10は、本開示の実施形態のシミュレーション結果を示す。図10は、補正がオン及びオフでシミュレートされたオフセット(トランジスタレベル)を示す。
【0038】
本開示の実施形態は、専用補償DACなしでハイブリッドオフセット補正を可能にし得る。本開示の実施形態は、+/-1LSBまでのオフセットを補正し得る。本開示の実施形態は、ADC入力範囲を制限しない。本開示の実施形態は、追加のアナログ回路を必要としない。本開示の実施形態は、アナログデジタル変換中、オフセットを補償するために必要とされるオフセット補償値を測定及び記憶し得る。これは、スタートアップ時又は反復間隔で実行され得る。
【0039】
本開示は、1つ以上の実施形態に関して記述されており、特に明言されたものとは別に、多くの等価物、代替物、変形物、及び修正が可能であり、開示の範囲内にあることが認識されるべきである。本開示は様々な修正及び代替の形態が可能である一方で、それらの特定の実施形態の例が、図で示され、本明細書で詳細に記述される。しかしながら、特定の実施形態の例の本明細書の記述は、本明細書で開示された特定の形態に開示を限定する意図はないことが理解されるべきである。
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6