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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ニードル装置および血液収集セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/154 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61B5/154 200
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020560947
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019029938
(87)【国際公開番号】W WO2019213097
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/665,108
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,ブラッドレイ,エム
(72)【発明者】
【氏名】ニュービー,シー,マーク
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05324302(US,A)
【文献】米国特許第05951525(US,A)
【文献】特開2015-044114(JP,A)
【文献】特開2003-093515(JP,A)
【文献】特開平09-066106(JP,A)
【文献】特開2004-033734(JP,A)
【文献】特開平08-164122(JP,A)
【文献】米国特許第05531704(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61M 3/00 - 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00 -39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド可能なニードル装置であって、
近端部および遠端部を備えるニードルカニューラと、
前記ニードルカニューラの少なくとも一部分を支持するハブと、
前記ニードルカニューラの少なくとも前記遠端部がチップガードに形成された開口部を通って延出する前記ハブに隣接する近位位置から、前記チップガードが前記ニードルカニューラの前記遠端部を保護のために包囲する遠位位置へと、前記ニードルカニューラに沿って軸心方向に移動可能なチップガードと、
前記チップガードの両側から側方に延出し、前記ハブに接続されている一対のウイングと、を備え、
当該ウイング対は第1位置と第2位置との間で移行可能であり、
前記ウイング対の前記第1位置から前記第2位置への移行によって、前記チップガードが近位位置から遠位位置へと進行され、そして、
前記チップガードの前記開口部に対して前記ニードルカニューラをオフセット位置(OP)へ付勢し、前記チップガードが前記遠位位置へと移行された後に前記ニードルカニューラが前記チップガードを通って再度挿入されることを防止する、シールド可能なニードル装置。
【請求項2】
前記チップガードが前記近位位置にある時に、前記ニードルカニューラの少なくとも遠端部が前記チップガードを通って延出するように前記チップガードは前記ニードルカニューラを付勢している、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項3】
前記ウイング対の少なくとも一方は、前記チップガードが遠位位置にある時に前記ニードルカニューラに接触して、当該ニードルカニューラが前記チップガードを通って再挿入されることを防止するべく、オフセット位置において前記ニードルカニューラを付勢する突起を備える、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項4】
前記ウイング対は、前記チップガードが遠位位置にある時に前記ニードルカニューラに接触して、当該ニードルカニューラが前記チップガードを通って再挿入されることを防止するべく、前記オフセット位置において前記ニードルカニューラを付勢する突起を備える、請求項3に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項5】
第1突起が、前記チップガードからの第1距離において前記ウイング対の内の第1のウイングに設けられ、第2突起が、前記チップガードからの第2距離において前記ウイング対の内の他のウイングに設けられ、前記第1距離は前記第2距離と異なる、請求項3に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項6】
前記両ウイングは、前記第1位置において側方に、そして、前記第2位置において近位側に延出する、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項7】
前記ウイングのそれぞれは、屈曲可能アームによって前記ハブに接続され、各屈曲可能アームは、前記ハブの両側から側方に延出し、前記屈曲可能アームの少なくとも一つにはロックエッジが設けられている、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項8】
前記ハブは、さらに、前記ウイング対を前記第2位置にロックするべく前記ロックエッジと係合するように構成されたロック部材を有する、請求項7に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項9】
前記ロック部材は、一方向バーブから構成される、請求項8に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項10】
前記ロック部材が前記ロックエッジと係合する時、前記ロック部材は、前記ウイング対の近傍の位置において前記屈曲可能アームの少なくとも一つにロックされる、請求項8に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項11】
前記屈曲可能アームは、前記チップガードが前記近位位置にある時に前記ハブから側方に延出し、前記チップガードが前記遠位位置にある時に、当該チップガードの長手軸心に向けて折り畳まれる、請求項7に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項12】
前記チップガードは、当該チップガードが前記近位位置にある時に、前記ハブに対して解除可能に接続される、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項13】
前記ハブは、前記チップガードが前記近位位置にある時に、前記チップガードに形成された凹部内に摩擦嵌合される、請求項12に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項14】
前記ハブと前記チップガードとは、前記チップガードが前記近位位置にある時に、フランジブルタブを介して接続される、請求項12に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項15】
前記フランジブルタブは、前記ウイング対に対して内向きの力が加えられた時に、折られる、請求項14に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項16】
更に、前記ハブから延出するドーサル・フィンを有する、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項17】
更に、前記チップガードが前記近位位置にある時に前記ニードルカニューラを保護包囲する取り外し可能カバーを有する、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項18】
前記ウイング対のそれぞれに、グリップチップを設けている、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項19】
更に、前記ハブの前記近端部から延出するフレキシブルチューブを有し、当該フレキシブルチューブは、血液収集アセンブリとの係合用の構造を備える、請求項1に記載のシールド可能なニードル装置。
【請求項20】
シールド可能なニードル装置を備えた血液収集セットであって、
前記シールド可能なニードル装置は、
近端部および遠端部を備えるニードルカニューラと、
前記ニードルカニューラの少なくとも一部分を支持するハブと、
前記ニードルカニューラの少なくとも前記遠端部がチップガードに形成された開口部を通って延出する前記ハブに隣接する近位位置から、前記チップガードが前記ニードルカニューラの前記遠端部を保護のために包囲する遠位位置へと、前記ニードルカニューラに沿って軸心方向に移動可能なチップガードと、
前記チップガードの両側から側方に延出し、前記ハブに接続されている一対のウイングと、を備え、
当該ウイング対は第1位置と第2位置との間で移行可能であり、
前記ウイング対の前記第1位置から前記第2位置への移行によって、前記チップガードが近位位置からら遠位位置へと進行され、そして、
前記チップガードが前記遠位位置にある時に、前記ニードルカニューラを前記チップガードの前記開口部に対してオフセット位置(OP)へ付勢し、それによって前記チップガードが前記遠位位置へと移行された後に、前記ニードルカニューラが前記チップガードに再挿入されることを防止するように前記ニードルカニューラに係合するべく前記ウイング対の少なくとも一つに配置された突起を備え、
さらに前記血液収集セットは、
第1端部と第2端部とを備え、前記第1端部は前記ハブの前記近端部に接続されているフレキシブルチューブと、
前記フレキシブルチューブの前記第2端部に固定された血液収集アセンブリと、備えた血液収集セット。
【請求項21】
前記血液収集アセンブリが、チューブホルダと、一体の非患者カニューラとを有する、請求項20に記載の血液収集セット
【請求項22】
前記チューブホルダは、その内部に空にされた標本収集容器を受け入れるように構成されている、請求項21に記載の血液収集セット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示全体がここに参考文献として組み込まれる、2018年5月1日に出願された「スクイーズ起動式血液収集セット」と題された米国仮出願番号62/665,108の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本開示は、ニードルの安全かつ簡便な取り扱い用の血液収集セットに関する。より詳しくは、本開示は、ユーザ制御シールド起動機能を備える血液収集用のシールド可能ニードル装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
血液収集セット又は点滴静脈注射(IV)セットは、通常、近端部と遠端部と、これらの間に延出するルーメンを備えるニードルカニューラを有する。前記ニードルカニューラの近端部は、ニードルカニューラを介して前記ルーメンと連通する中央通路を備えるプラスチックハブにしっかりと取り付けられる。前記ハブには薄くフレキシブルな熱可塑性チュービングが接続されて、これがニードルカニューラのルーメンと連通する。ニードルカニューラから離れた前記プラスチックチュービングの端部は、ニードルカニューラを血液収集チュービング又はその他の容器に接続するための固定具を備えている場合がある。この固定具の具体的構成は、当該固定具が接続されることになる前記容器の特徴に依存したものとなる。
【0004】
ニードルによる針刺さりケガ事故の発生のリスクを低下させるためには、使用されるニードル先端の保護が重要になる。感染と疾患の伝播に関する懸念から、使用済みの使い捨て式ニードルを収納する方法と装置とが非常に重要となり、大いに必要とされている。例えば、ニードルアセンブリは、一般に、ニードル刺さり事故の畏れなく、使用済みニードルカニューラとのシールド係合状態へと移行することが可能な安全シールドを使用する。
【0005】
ニードルシールドの一部はチップガードと呼ばれ、ニードルカニューラの長さに沿って伸び縮みして保護のためのニードルの穿刺チップ上に延出可能な小さな剛性ガードが含まれている。このような従来のチップガードは、ニードルカニューラの長さに沿ったチップガードの移動を制限するためのテザーの形態を備えるものとすることができる。更に、そのような従来のチップガードは、通常、ニードルの不慮による再露出と意図された再露出との両方を防止するために、使用済みニードルカニューラの先端上にロック係合する構造を有している。再露出を防止するためのこの構造は、金属バネクリップ又はチップガードの一端部に一体形成された横壁を備えたものとして構成することができる。しかしながら、そのようなチップガードを備えるニードルアセンブリは、通常、チップガードの位置決め用の大掛かりなメカニズムを有するものであって、それによって、製造と組み立てが高コストな複雑な構造となる。又、前記チップガードの操作には、このチップガードをシールド位置へと延出させるためのユーザによるかなりの操作が伴う可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の装置は使用済みニードルのための効果的なシールドを提供するものではあるが、製造が簡単かつ安価で、操作が容易な、使用済みチップの確実かつ効果的なシールドを達成することが可能な、血液収集用のニードルアセンブリがいまだに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本開示は、特に、血液収集セットとの接続に有用な、シールド可能なニードル装置に関する。当該ニードル装置は、遠近端部を備えるニードルカニューラと、当該ニードルカニューラの少なくとも一部分を支持するハブとを有する。チップガードは、ニードルの少なくとも遠端部がチップガードに形成された開口部を通って延出する前記ハブに隣接する近位位置から、チップガードがニードルカニューラの遠端部を保護のために包囲する遠位位置へと、ニードルカニューラに沿って軸心方向に移動可能である。一対のウイングがチップガードの両側から側方に延出し、前記ハブに接続されている。前記ウイング対は、第1位置と第2位置との間で移行可能であって、第1の位置から第2の位置へのウイング対の移行によって、前記チップガードを近位位置からシールド用遠位位置へと進行させる。前記ニードルカニューラの長手軸心は、前記チップガードの前記開口部からオフセットされて、前記チップガードが前記遠位位置へと移行された後にニードルカニューラが前記チップガードを通って再度挿入されることを防止する。
【0008】
前記チップガードが前記近位位置にある時に前記ニードルカニューラの少なくとも遠端部が前記チップガードを通って延出するように、前記チップガードは前記ニードルカニューラを付勢している。前記ウイング対の少なくとも一方又は当該ウイング対の両方は、前記チップガードが遠位位置にある時にニードルカニューラに接触して、ニードルカニューラが前記チップガードを通って再挿入されることを防止するべく前記オフセット位置において前記ニードルカニューラを付勢する突起を備えることができる。第1突起を、前記チップガードからの第1距離において前記ウイング対の内の第1のウイングに設けることができ、そして第2突起を、前記チップガードからの第2距離において前記ウイング対の内の他のウイングに設けることができる。前記第1距離は前記第2距離と異なったものとすることができる。前記両ウイングは、前記第1位置において側方に、そして、前記第2位置において近位側に延出することができる。これらウイングのそれぞれは、屈曲可能アームによって前記ハブに接続することができ、各屈曲可能アームは、ハブの両側から側方に延出し、これら屈曲可能アームの少なくとも一つにはロックエッジが設けられる。一実施例によれば、前記屈曲可能アームは、前記チップガードが前記近位位置にある時に前記ハブから側方に延出し、前記チップガードが前記遠位位置にある時に、当該チップガードの前記長手軸心に向けて折り畳まれる。
【0009】
前記ハブは、更に、前記ウイング対を前記第2位置にロックするべく前記ロックエッジと係合するように構成されたロック部材を含むことができる。一実施例によれば、前記ロック部材は、一方向バーブ(barb)とすることができる。前記ニードル装置は、前記ロック部材がロックエッジと係合すると、前記ロック部材が前記ウイング対の近傍の位置において前記屈曲可能アームの少なくとも一つとロックされるように構成されている。
【0010】
前記チップガードは、当該チップガードが前記近位位置にある時には、前記ハブに対して解除可能に接続することができ、前記ハブは、前記チップガードが前記近位位置にある時には、前記チップガードに形成された凹部内に摩擦嵌合可能である。一構成によれば、前記ハブと前記チップガードとは、前記チップガードが前記近位位置にある時に、フランジブル(frangible)タブを介して接続することができる、このフランジブルタブは、前記ウイング対に対して内向きの力が加えられた時に、折ることができる。
【0011】
前記ニードル装置は、更に、前記ハブから延出するドーサル・フィン(dorsal fin)と、前記チップガードが前記近位位置にある時に前記ニードルカニューラを保護包囲する取り外し可能カバーとを備えることができる。前記ウイング対のそれぞれには、グリップチップを設けることができる。前記装置は、更に、前記ハブの前記近端部から延出するフレキシブルチュービングを備えることができ、当該フレキシブルチュービングは、血液収集アセンブリとの係合用の構造を備える。
【0012】
本開示は、又、遠近端部を備えるニードルカニューラと当該ニードルカニューラの少なくとも一部分を支持するハブとを有するシールド可能ニードル装置を有する血液収集セットにも関する。前記ニードル装置は、前記ニードルの少なくとも遠端部が前記チップガードに形成された開口部を通して延出する前記ハブに隣接する近位位置から、前記チップガードが前記ニードルカニューラの遠端部を保護的に包囲する遠位位置へと、前記ニードルカニューラに沿って軸心方向に移動可能なチップガードを備える。前記収集セットは、前記チップガードの両側から側方に延出し前記ハブに接続された一対のウイングを備え、当該ウイング対は第1位置と第2位置との間で移行可能であり、このウイング対の前記第1位置から前記第2位置への移行によって、前記チップガードは、前記近位位置から前記遠位位置へと進行される。前記ニードルカニューラに係合するために前記ウイング対の少なくとも一つには突起が配置され、前記チップガードが前記遠位位置にある時に、前記ニードルカニューラを前記チップガードの前記開口部からオフセットさせるように付勢し、それによって前記チップガードが前記遠位位置へと移行された後に、前記ニードルカニューラが前記チップガードに再挿入されることを防止する。前記収集セットは、更に、第1端部と第2端部とを備えるフレキシブルチューブを有し、前記フレキシブルチューブの前記第1端部は前記ハブの前記近位端部に接続され、そして、前記セットは、更に、前記フレキシブルチューブの前記第2端部に固定された血液収集アセンブリを有する。一実施例によれば、前記血液収集アセンブリは、チューブホルダと、一体の非患者(non-patient)カニューラとを含むことができる。前記チューブホルダは、その内部に空にされた標本収集容器を受け入れるように構成することができる。
【0013】
本開示の上述した及びその他の特徴および利点、そして、それらの達成方法は、添付の図面を参照して本開示の実施例に関する以下の記載を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例による、シールド可能ニードル装置を備える血液収集セットの斜視図である。
図2】本発明の実施例による、図1のシールド可能ニードル装置の底面斜視図である。
図3】本発明の実施例による、図1のシールド可能ニードル装置の斜視図であって、カニューラシールドが除去され、チップガードが退避近位位置にある状態が示されている。
図4】本発明の実施例による、図3のシールド可能ニードル装置の底面斜視図である。
図5図3のシールド可能ニードル装置の斜視図であって、図示の目的のために、本発明の一実施例により、チップガードの退避近位位置から延出遠位位置への移行中のニードルカニューラとウイング突起との接触によっておこるニードルカニューラのオフセット位置への偏向を図示している。
図5A】本発明の実施例による、前記チップガードの前記退避近位側位置から前記延出遠位側位置への移行中の図3のシールド可能ニードル装置の斜視図である。
図5B】本発明の実施例による、前記チップガードの前記退避近位側位置から前記延出遠位側位置への移行中の図3のシールド可能ニードル装置の底面斜視図である。
図6】本発明の実施例による、前記チップガードが延出遠位位置にある状態の、図3のシールド可能ニードル装置の斜視図である。
図7】本発明の実施例による、図6のシールド可能ニードル装置の底面斜視図である。
図8】本発明の実施例による、図6のシールド可能ニードル装置の側方斜視図であって、前記チップガードの動きを制御するウイング/アームの一つが、前記チップガードが前記延出遠位側位置にある時に、当該チップガードの開口部に対するオフセット位置へのカニューラの偏向を引き起こすためのカニューラ偏向パッド又は突起の一つの相互作用を図示するべく、取り除かれている。
図9図6のシールド可能ニードル装置の背面斜視図であって、本発明の実施例により、前記チップガードが前記延出遠位位置にある時に、チップガードの開口部に対するオフセット位置にあるニードルカニューラを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
複数の図を通して対応の参照符号が対応するパーツを示している。ここに記載される例示は、本開示の実施例を例示するものであり、このような例示は本開示の範囲をいかようにも限定するものではないと理解される。
【0016】
発明の記載
当業者が本発明を実施するために考慮される記載の実施例を作成し利用することができるように以下の記載が提供される。但し、種々の変更、均等物、バリエーション、代替物が当業者にとって明白な状態に留まるであろう。そのようなすべての変更、均等物、バリエーション、代替物は本発明の要旨及び範囲内に属するものと意図されている。
【0017】
ここでの記載の目的のために、用語「上方」、「下方」、「右」、「左」「縦」、「横」、「上」、「下」、「側方」、「長手」、およびこれらの派生語は、図面における向きで本発明に関係するものとされる。但し、特段に銘記されない限り、本発明は、別のバリエーション、および工程順序も想定可能であると理解される。又、添付の図面に図示され、以下の明細書に記載されている、具体的な装置及び処理は、本発明の例示的実施例に過ぎないものであると理解される。したがって、ここに開示される実施例に関連する具体的寸法及びその他の物理的特性は、限定的なものと解釈されてはならない。
【0018】
次に、本発明の実施例による、その全体を12で示すシールド可能ニードル装置を備える、その全体を10で示す血液収集セットを図示している図1及び2を参照する。前記血液収集セット10は、前記ニードル装置12と、近位側装具20と関連する長手フレキシブルプラスチックチュービング14、グリップ22、チップガード24、その全体を26で示すチップガード進行システム、カニューラガード30が装備されたニードルカニューラ28を有する。
【0019】
前記チュービング14は、前記ニードル装置12と関連する第1又は遠位側端部16、前記近位側装具20と関連する第2又は近位側端部18、これら両端部間に延出する通路、を有する。前記チュービング14は、従来の血液収集セットまたは注入セットに使用される従来式の静脈内チュービングとすることができる。一実施例によれば、前記近位側装具20は、プラスチック材から一体形成することができ、近端部32と、遠端部34と、これら両端部間に延出する通路、とを有する。前記通路の前記遠端部34に隣接する部分は、チュービング14の近端部18上でタイトに伸縮し、これによって、チュービング14を通る前記通路が近端部装具20を介して前記通路と連通する。チュービング14と近位部装具20との間の恒久的接続を達成するために接着剤、溶接、等を使用することができる。一構成によれば、前記装具20の近端部32は、適当なオスルアーコネクタとはめ合い可能なメスルアーコネクタを形成する。前記オスルアーコネクタは、空になったチューブと連通状態にすることが可能な近位側ニードルカニューラを備えることができる。あるいは、従来技術式注射器の遠位側端部のオスルアーコネクタを近位側装具20に直接接続して患者に薬剤を注入してもよい。この場合、コネクタ20の近端部を閉じるために別のオスルアーキャップを設けることができる。特定の意図される用途のために、その他の装具を、近位側装具20にネジ係合させることも可能である。更に、特定の目的を達成するために、他の構成の近位側装具20を使用することも可能である。一実施例によれば、前記近位側装具は、当該装具と関連する、コネクタおよび/またはハブ36を備えることができ、ここで、前記ハブには、非患者カニューラ37が固定されている。前記ハブ36は、その中に空にされた標本収集容器(図示せず)を受け入れるように構成された、チューブホルダ38との取り付け用のネジ溝36aを備えることができる。前記非患者カニューラ37は、チップ37aと、前記非患者カニューラ37とカニューラチップ37aとをカバーするために設けることができるフレキシブルスリーブ39とを備えることができる。
【0020】
引き続き図1及び図2を参照し、更に、図3-4を参照すると、前記ニードルカニューラ28は、近端部40と遠端部42、そしてこれら両端部間に延出するルーメンを有する。ニードルカニューラ28の遠端部42は、斜角形成されてシャープなチップを形成している。前記ニードルカニューラ28の少なくとも一部分を支持するためにハブ44が設けられている。ニードルハブ44は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリスチレン、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのプラスチック材から一体形成することができる。一構成によれば、前記ニードルハブ44は、当該ニードルハブ44を通って流れる血液又はその他の流体の観察を可能にするべく、透明又は半透明材料から形成することができる。
【0021】
ニードルハブ44は、近端部46と、遠端部48と、これら両端部間に延出する通路(図示しない)とを有する。前記通路の近端部46に隣接する部分は、チュービング14の遠端部16を受け入れるように寸法構成されている。一実施例によれば、チュービング14の前記遠端部16は、ニードルハブ44の前記通路内に伸縮可能かつ、ニードルハブ44の近端部46の近傍で位置固定することができる。ニードルハブ44の遠端部48に近接する前記通路の部分は、ニードルカニューラ28の近端部40をスライド可能に受け入れるように寸法構成されている。一構成によれば、ニードルカニューラ28の前記近端部40は、エポキシ又はその他の周知の接着剤、および/または、機械的固定、によってニードルハブ44に対して恒久的に固定することができる。カニューラガード30は、ニードルハブ44からのニードルカニューラ28の突出長さを超える長さを有するリジッドで円筒状のチューブである。カニューラガード30は、ニードルカニューラ28上で伸縮して前記チップガード24上で摩擦保持可能となるように寸法構成されている。
【0022】
引き続き図1-4と、更に図5,5A,5B及び6-9とを参照すると、カニューラガード30を取り外すと、前記チップガード24は、ニードルカニューラ28に沿って、前記ハブ44に近接する近位側位置から軸心方向に移動可能となり、これにより、ニードルカニューラ28の少なくとも遠端部42が、図6-9に図示されているように、チップガード24に形成された開口部52を通って、遠位位置へと延出し、ここで、前記チップガード24は、ニードルカニューラ28の前記遠端部42を保護的に包囲する。前記チップガード24の両側から一対のウイング60が側方に延出して、屈曲可能アーム62を介して前記ハブ44に接続されている。前記ウイング対60は、第1位置と第2位置との間で移行可能であり、ここで、前記ウイング対60の前記第1位置から第2位置への移行によって、チップガード24が、図1-5に図示されている近位位置から図6-8に図示の遠位位置へと進行される。
【0023】
前記ウイング60は、それらから延出して前記ニードルカニューラ28に接触する、突起66を備えたタブ64を備えている。前記タブ64は、前記ウイング60から鉛直に延出する平坦な部材とすることができる。前記突起66は、前記タブから垂直に延出することができ、テーパされたまたは傾斜した部分67を備えることができ、これにより、図5A及び5Bに図示されているように、前記ウイング60と突起66とがニードルカニューラ28の長さに沿って移動すると、前記チップガードのニードルカニューラ28に沿った進行中に、前記突起66とテーパ部分67がニードルカニューラ28に対して徐々に力を加え、ニードルカニューラ28の長手軸心を、チップガード24の前記開口部52から、“O”によって示すようにオフセットさせる。図8-9に図示されているように、ニードルカニューラ28のオフセット位置(OP)へのこのオフセット(O)により、図5に図示のように、ニードルカニューラの遠端部42が、チップガード24の内面25に隣接して位置して、チップガード24が前記遠位位置へと移行された後で、ニードルカニューラ28が、チップガード24の前記開口部52を通して再挿入されることを防止する。
【0024】
図1-4に図示されているように、前記収集セット10の使用前及び使用中において、前記チップガード24は、ニードルカニューラ28を付勢し、これにより、チップガード24が前記近位位置にある時に、ニードルカニューラ28の少なくとも遠端部42が、前記チップガード24を通って延出する。前記収集セット10の使用前に、医療作業者はカニューラガード30を取り外し、次に、前記血液収集セット10を、ドーサル・フィンの形状とすることが可能な前記グリップ22を保持して、ニードルカニューラ28を標的の血管内に案内することによって実質的に従来式に使用する。前記ドーサル・フィン又はグリップ22は、その上に、摩擦を提供して、前記血液収集セット10の把持と操作とを補助するリッジを備えることができる。前記医療処置の完了後、前記医療作業者は、血管からニードルカニューラ28を引き抜き、ウイング60に対してスクイーズ力“F”を加える。スクイーズ力“F”を加える前に、ウイングは第1の位置にあり、ここで、ウイングは、ニードルカニューラ28の長手方向の長さ“L”に対して横方向に延びる。このウイング60に対して与えられるスクイーズ力Fは、前記チップガード24を近位位置に維持している保持力に打ち勝って、横方向に延びるウイング60を、図1-4に図示の前記第1位置から、図6-9に図示の前記第2位置へと、図5A及び5Bに図示されているように、移行させるのに十分なものでなければならない。これにより、前記ウイング60は、図4に図示されているように前記ニードルカニューラ28の長手方向長さLに対して実質的に平行にかつそれに沿って延出する近位位置に延出し、チップガード24はニードルカニューラ28の遠端部42をシールドする。前記ウイング60にはグリップチップ又はパッド61を設けることができる。収集セット10の操作をより容易にするために、前記グリップチップ又はパッド61に、リッジ61a又はその他の触覚強化手段も提供することができる。
【0025】
上述したように、又は、図5B及び7を引き続き参照すると、前記ウイング対の内の少なくとも一方又はこれらウイング60の両方は、前記チップガード24が前記遠位位置にある時に、前記ニードルカニューラ28に接触して、このニードルカニューラを、図5に図示されているように前記オフセット位置“OP”へと付勢するテーパ又は傾斜部分67を備えるそこから延出する少なくとも一つの突起66を有するタブ64から構成される。前記オフセット位置は、前記ニードルカニューラを、開口部52とのアライメント状態から、図7-9に図示の、チップガード24の内面25に隣接した状態へと移行させ、チップガード24が一旦前記近位位置から前記遠位位置へと移行した後において前記ニードルカニューラ28の遠端部42が前記チップガード24の開口部52を通じて再度挿入されることを防止する。一実施例によれば、前記ウイング60対のうちの第1のもの60aのタブ64上に、前記チップガード24からの第1距離D1、で第1突起66aを設けることができ、前記ウイング対60のうちの他方60bのタブ64上に、前記チップガード24からの第2距離D2に、第2の突起66bを設けることができる。前記第1距離D1は、前記第2距離D2と異なるものとすることができる。更に、ここで、前記第1突起66aと前記第2突起66bとの少なくとも一方が、前記ニードルカニューラの一部上にロックするためのロック構造を備えることも考えられる。
【0026】
前記ウイング60のそれぞれは、屈曲可能アーム62によって前記ハブに接続することができる。図3及び4に図示されているように、各屈曲可能アーム62は、前記ハブ44の両側から側方に延出している。前記ウイング60、屈曲可能アーム62、タブ64及び突起66は、前記ニードルを偏向して、前記チップガード24を前記延出近位位置に維持するための十分な強度を有する任意の公知の材料から形成することができると理解される。前記屈曲可能アーム62の少なくとも一つにはロックエッジ70が設けられる。一実施例によれば、第1ロックエッジ70aを第1の屈曲可能アーム62aに設け、第2ロックエッジ70bを第2の屈曲可能アーム62bに設けることができる。一実施例によれば、前記屈曲可能アーム62は、前記チップガード24が前記近位位置にある時には、前記ハブ44から側方に延出し、前記チップガード24が前記遠位位置にある時には、前記ニードルカニューラ28の長手軸心Lに向けてかつそれに沿って折り畳まれる。
【0027】
前記ハブ44は、更に、各ロックエッジ70と係合して、前記ウイング60対を前記第2位置にロックするように構成されたロック部材72を備えることができる。一実施例によれば、前記ロック部材72は、前記ロックエッジ70内での受け入れのための一方通行バーブを備える突起から構成することができる。前記ニードル装置は、前記ロック部材72が、前記ロックエッジ70に係合した時に、前記ロック部材72が前記ウイング60対に対して近位側の位置において、前記屈曲可能アーム62のうちの少なくとも一方に対してロックされるように構成されている。一実施例によれば、前記第1屈曲可能アーム62aは第1ロック部材72aと係合するように構成された第1ロックエッジ70aを備えることができ、前記第2屈曲可能アーム62bは、第2ロック部材72bと係合するように構成された第2ロックエッジ70bを備え、前記第1及び第2ウイング60a,60bを前記第2位置にロックする。前記両ウイング60の前記両ロックエッジ70は、前記ウイング60ではなく、前記ハブ44自身に位置するロック部材72と協働するので、ニードルカニューラ28へのロック、又は互いに対するロックによって、前記チップガード24が延出された時の、前記血液収集セット10全体の強度が増大する。
【0028】
使用前、前記チップガード24は、当該チップガード24が前記近位位置にある時に、前記ハブ44に対して解除可能に接続することができる。一実施例によれば、前記ハブ44は、前記チップガード24が前記近位位置にある時に、当該チップガード24に形成された凹部76内に摩擦取り付け可能な延出部45を備えている。一構成によれば、前記ウイング60と前記屈曲可能アーム62とは、前記チップガード24が前記近位位置にある時に、フランジブルタブ78を介して互いに接続することができる。図5A及び5Bを参照すると、前記ウイング60対に対する十分な量の内向きの力Fの付与により、このフランジブルタブ78が、図6-8において78a及び78bによって示されているように、破られ、両ウイング60と屈曲可能アーム62とが軸心方向延出位置から近位側延出位置へと移行することが可能となり、前記チップガード24が、退避位置から前記延出位置へと移動し、チップガード24が前記ニードルカニューラ28の遠端部42回りで延出する。両ウイング60が延出又は移行すると、前記突起66のテーパ部67が前記ニードルカニューラ28に沿ってスライドし、このニードルカニューラ28を強制的に、前記初期長手軸心Lに対して、図5に示す最終付勢オフセット位置OPへとオフセットさせる。この最終オフセット位置OPは、前記チップガード24の前記開口部52とのアライメントから外れており、前記テーパ部67がニードルカニューラ28に対する前記付勢を維持して、これによりカニューラ28の遠端部42は、図7-9に図示されているように、前記チップガード24の内面25の近傍に位置し、これがニードルカニューラ28の遠端部42が前記開口部52に再び入ることを防止する。このことによって、前記チップガード24が、前記近位方向にスライドしてニードルカニューラ28の遠端部42を不意に露出させることが防止され、したがって、針刺し傷の発生を低減する。
【0029】
以上、本開示を具体的な構成を備えるものとして記載したが、本開示は本開示の要旨及び範囲内において更に改変することが可能である。したがって、本出願は、その一般原理を使用して本開示のすべてのバリエーション、利用法及び適合をカバーすることが意図されている。更に、本開示は、本開示が関連する技術における公知又は慣例内に属し、添付の請求項の範囲内に属する、本開示からのそのような逸脱をカバーすることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9