(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】モジュラー切削ツールボディの製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20240228BHJP
B23B 51/06 20060101ALI20240228BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20240228BHJP
B23D 77/00 20060101ALI20240228BHJP
B23G 5/06 20060101ALI20240228BHJP
B23G 5/18 20060101ALI20240228BHJP
B23P 15/32 20060101ALI20240228BHJP
B23P 15/34 20060101ALI20240228BHJP
B23P 15/36 20060101ALI20240228BHJP
B23P 15/52 20060101ALI20240228BHJP
B23P 15/46 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B23B51/00 H
B23B51/06 Z
B23C5/10 Z
B23D77/00
B23G5/06 Z
B23G5/18
B23P15/32
B23P15/34
B23P15/36
B23P15/52
B23P15/46
(21)【出願番号】P 2020568593
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2019054834
(87)【国際公開番号】W WO2019166479
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー, ラファエル
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00240765(EP,A2)
【文献】特開2016-147326(JP,A)
【文献】特開昭60-141415(JP,A)
【文献】特表2013-505141(JP,A)
【文献】実開平07-017412(JP,U)
【文献】独国実用新案第20101101(DE,U1)
【文献】国際公開第2018/166889(WO,A1)
【文献】特開2010-201551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00 - 51/06
B23P 15/28 - 15/52
B23C 5/10
B23D 77/00
B23G 5/06
B23G 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材(101)、第2の部材(102)、及び遷移部材(103)を製造するステップであって、前記遷移部材(103)を製造するステップは、付加製造方法を含み、前記第1の部材(101)及び前記第2の部材(102)の双方が実質的な円筒形状を有し、前記第1の部材(101)は、第1の大きさのツール特性を有し、前記第2の部材(102)は、前記第1の大きさとは異なる第2の大きさの前記ツール特性を有し、前記遷移部材(103)における前記ツール特性は、第1の端(106)にて前記第1の大きさであり、第2の端(107)にて前記第2の大きさであり、前記遷移部材(103)は、前記第1の端と前記第2の端(106、107)の間に遷移領域(108)を含み、ここでは、前記ツール特性が、前記第1の大きさから前記第2の大きさに変わる、第1の部材(101)、第2の部材(102)、及び遷移部材(103)を製造するステップと、
前記第1の部材及び前記第2の部材のそれぞれの中心軸(L1、L2)と一致するツールボディの中心軸(T)を有する切削ツールボディを作製するように、前記遷移部材の前記第1の端を前記第1の部材
の1つの端に接続し、前記遷移部材の前記第2の端を前記第2の部材の
1つの端に接続するステップと、を含む、切削ツールボディを製造する方法。
【請求項2】
少なくとも1つのフルート、及び/又は、1つ以上の切削エッジを、前記切削ツールボディ内に形成するステップをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記製造するステップは、焼結炭化物の前記部材を製造するステップを含む、請求項
1又は請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記部材を接続するステップは、焼結フュージングを含む、請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ツールボディに関し、同じく、そのような切削ツールボディを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
焼結炭化物製の、ドリル又はエンドミルなどの切削ツールは一般的に、ツールブランク(例えば、円筒状のロッド)を加工することにより製造される。この加工は、切り屑フルート及び切削エッジの研削に関連する場合がある。異なる直径を有する様々な部分を有するステップドリルなどの、複雑なジオメトリを有する切削ツールを製造するには、ツールブランクの、広範かつ時間のかかる加工が必要となる。そのようなツールを製造することはしたがって難しく、費用がかかることが多い。複雑なジオメトリによっては、従来の技術を使用しても製造できない。US9498824B2は、異なるサイズ及び形状を有する焼結部品が結合されて単一のツールを形成する、複雑な内部プロファイルを有するツールの製造を可能とする方法を開示する。個別に製造された部品を結合することは、製造できる、可能なツールジオメトリの数を増やすであろう。しかし、従来のツール部品を使用する際に、製造できるツールジオメトリの種類は依然として制限される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の欠点を軽減し、フレキシブルな製造方法を使用して、複雑なジオメトリを有する、高性能で信頼性の高い切削ツールを提供することである。
【0004】
したがって、第1の態様によると、本発明は、双方が実質的な円筒形状を有する第1の部材及び第2の部材を含み、ツールボディの中心軸が、第1及び第2の部材のそれぞれの中心軸と一致するよう配置されている切削ツールボディに関する。第1の部材は、第1の大きさのツール特性を有し、第2の部材は、第1の大きさとは異なる第2の大きさのツール特性を有する。切削ツールボディは、第1の部材と第2の部材の間に配置された遷移部材であって、第1の端にて第1の部材に接続されかつ第2の端にて第2の部材に接続されている遷移部材を含む。遷移部材におけるツール特性は、第1の端にて第1の大きさであり、第2の端にて第2の大きさである。遷移部材は、第1の端と第2の端の間に遷移領域を含み、ここでは、ツール特性が、第1の大きさから第2の大きさに変わる。
【0005】
ツール特性の第1及び第2の大きさはそれぞれ、第1及び第2の部材の軸方向の全長にわたって一定であってよい。
【0006】
切削ツールボディは切削ツールであってよく、ここでは、例えば、少なくとも1つの切り屑フルート、及び、1つ以上の切削エッジが形成されているか、又は、1つ以上の切削インサート、若しくは、交換可能な切削ヘッドが取り付け可能である。代替的に、切削ツールボディはツールブランクであってよく、ここでは、フルート又は切削エッジなどの特徴はまだ形成されていない。
【0007】
切削ツールボディを切削ツールと呼ぶ場合、第1の部材、第2の部材、及び遷移部材は、好ましくは、最終形状にまだ加工されていない、つまり、フルート及びいずれの切削エッジが形成される前の状態にて結合されている。換言すると、部材のそれぞれは、ツールブランクの部品として接続されてよく、その後、ブランクは、研削されて後処理されるなど、他の方法にて処理され、切削ツールを形成する。しかし、部材のそれぞれは、互いに接続される前に、最終形状に処理されることもまた考えられる。
【0008】
切削ツールボディの個別の部材のそれぞれは、同様又は異なる製造方法を使用して製造されてよい。第1及び第2の部材は、好ましくは、従来の製造方法を使用して製造される。遷移部材は、好ましくは、複雑なジオメトリを製造することにより適した、異なる製造方法を使用して製造される。しかし、すべての部材に同じ製造方法を使用することもまた可能である。
【0009】
部材のそれぞれは、好ましくは、恒久的に、つまり、取り外し不可に、互いに接続される。いくつかのジオメトリについては、異なる部材のそれぞれは、互いに接続された際に、軸方向にだけでなく、回転方向にも正しく整列されることが重要である。遷移部材の端のそれぞれ、及び、それらに接続された第1及び第2の部材の端のそれぞれは、一般的に平らである。したがって、互いに接続された端面のそれぞれは、正確に同じジオメトリを有してよい。しかし、端のそれぞれはまた、平らでなくともよく、互いに補完するジオメトリを有してよい。例えば、遷移部材の端面は、部分的に凸状であるか、又は、いくらかの突出を有してよく、遷移部材に接続される、第1又は第2の部材の端面は、その突出を補完する、部分的に凹状であるか、又は、リセスを有してよく、それらの表面のそれぞれが、回転位置の数が制限された状態で、互いに一致できるようになっていてよい。これは、複数の(及び、したがって、非中央に配置された)クーラントチャネル、又は、回転方向への正しい整列が必要な他の特徴を有するツールボディの組み立てを促進してよい。そのような実施形態では、互いに接続された端面のそれぞれは、正確に同じジオメトリを有しない場合がある(しかし、補完的なジオメトリを有する場合がある)。それでもなお、変換の対象となるツール特性は、互いに接続された端の双方にて同じである。
【0010】
「実質的な円筒形状」という表現は、少なくとも部分的に、本質的に円筒状であるものとして解釈され、例えば、切削ツールボディ内に形成されたいずれの切削エッジが、ツールボディが回された際に、円筒状の外殻を生成するようになっている。したがって、この表現は、他の円筒状の外面に形成された切り屑フルート又は他のリセスを有する部材を含み、その部材のそれぞれは、一端が、例えば、ドリル先端を画定するために、テーパ状になっている。
【0011】
遷移部材は、部材のそれぞれが接続された際に、第1及び第2の部材のそれぞれの中心軸とも一致する中心軸を有してよい。第1及び第2の部材と同様に、遷移部材は、実質的な円筒状であってよい。遷移部材はまた、その軸方向の延長線の全体又は一部に沿う、実質的な円錐形状、つまり、テーパ状とされてもよい。
【0012】
切削ツールボディの個別に製造された部材のそれぞれを使用することの利点は、非常に多彩なツールを製造できることである。異なる「標準」ピースとみなすことができる、相対的に少数の異なる第1及び第2の部材、及び、より複雑なジオメトリを有する異なる遷移部材のセットにより、非常に多くの異なるツールを製造できる。したがって、改善された柔軟性が達成される。なぜなら、相対的に少数の異なるコンポーネントのストックは、多くの異なる切削ツールを製造することに十分だからである。切削ツールを製造するための、この「モジュラー」アプローチは、複雑なジオメトリを有するツールを製造することに特に適している。遷移部材は、第1及び第2の部材の異なるジオメトリの間のスムーズな遷移を提供してよい。遷移部材の使用は、ツールの製造性を改善し、改善された性能を有する切削ツールをもたらす。
【0013】
ツール特性は、
ツールボディの直径と、
フルートのらせん角度と、
内部クーラントチャネルの断面積と、
内部クーラントチャネルの数と、
内部クーラントチャネルのらせん角度と、
ツールボディの中心軸とクーラントチャネルの中心の間の半径方向の距離と、の内の1つ、又は、2つ以上の組み合わせにより画定されてよい。
【0014】
したがって、ツール特性は、少なくとも部分的に、切削ツールボディ内に形成された1つ以上のクーラントチャネルの設計に関連してよい。ツール特性はまた、少なくとも部分的に、切削ツールボディの外径、又は、ツールボディ内のフルートのらせん角度により画定されてもよい。ツール特性はしばしば、ツールボディの直径、及び、1つ以上のクーラントチャネルの設計に関する態様の組み合わせなど、複数の態様の組み合わせとして画定される。例えば、ツール特性は、ツールボディの直径とさらに組み合わせて、又は、組み合わせることなく、クーラントチャネル(単一又は複数)の設計に関する、2つ以上の態様の組み合わせとして画定されてよい。一般的に、フルートのらせん角度は、いずれの内部クーラントチャネルのらせん角度に対応し、したがって、それらのパラメータは一般的に、遷移部材内において同期して変わる。クーラントチャネルの断面積は、クーラントチャネルの延長線と直角をなす(つまり、らせん状のクーラントチャネルに対するそれではなく、真っ直ぐなクーラントチャネルに対するツール中心軸と直角をなす)平面において取得された断面での、クーラントチャネルの面積として解釈される。クーラントチャネルは、円形断面を有してよいが、他の形状もまた可能である。遷移部材は、第1の部材におけるクーラントチャネルの第1の形状を、第2の部材におけるクーラントチャネルの第2の形状に変えてよい。
【0015】
すべての異なる部材のそれぞれのツール直径は、好ましくは、3から35mmの範囲内にある。部材のそれぞれ内のいずれのクーラントチャネルの断面積は、好ましくは、0.01から28mm2の範囲内にある(つまり、円形断面を有するチャネルに対して、約0.1から6mmの間の直径に対応する)。いずれのフルート、及び/又は、いずれの内部クーラントチャネルのらせん角度は、好ましくは、0°から60°の範囲内にあり、ここで0°は、ツール中心軸に平行な方向に伸長する真っ直ぐなフルート、及び/又は、クーラントチャネルに対応する。
【0016】
切削ツールボディの遷移部材は、付加製造により作られてよい。付加製造は、複雑なジオメトリを有する遷移部材を製造する、より大きな可能性を提供し、クーラントチャネル構成などの内部構造が異なる遷移部材を製造することに特に適している。例えば、選択的レーザ焼結又は電子ビーム溶解など、各種の付加製造方法が使用され得る。部材のそれぞれが、最終形状に処理される前に接続される場合、遷移部材は、好ましくは、第1及び第2の部材と共に続いて研削されるツールブランク部品として製造される。しかし、部材のそれぞれが、最終形状に処理された後に接続される場合、遷移部材は、必要とされるフルート及び他の特徴を伴って直接製造でき、これは、後加工の必要性を最小化する。第1及び第2の部材は、同様に、付加製造により作ることができるが、一般的には、従来の製造方法により製造される。
【0017】
遷移部材の遷移領域の軸方向の長さは、遷移部材の軸方向の長さに対応してよい。したがって、遷移領域は、遷移部材の全体を覆い、遷移が、第1の部材及び遷移部材の間の境界面にてすぐに始まり、遷移部材及び第2の部材の間の境界面にて終わるようにできる。代替的に、遷移領域の軸方向の長さは、遷移部材の軸方向の長さより短く、遷移領域が、遷移部材の一部のみを覆うようになっている。そのような実施形態では、遷移部材は、ゼロでない軸方向の延長線を含む領域を、第1の端に有し、ここでは、ツール特性が第1の大きさを有し、及び/又は、ゼロでない軸方向の延長線を含む領域を、第2の端に有し、ここでは、ツール特性が第2の大きさを有することとなる。
【0018】
ツール特性の、第1の大きさから第2の大きさへの変換は、ツール特性の少なくとも一部に対して連続しており、均一であってよい。連続しており、均一である遷移は、ツール特性が、ジオメトリにおけるいずれの突発的な変化なく、第1の大きさから第2の大きさにスムーズに変えられることを意味する。これにより、例えば、クーラントフローに関する悪影響を回避することができる。変換の対象となる、ツール特性のすべての態様は、連続して均一に変わってよい。代替的に、ツール特性の態様のサブセットのみが、連続して均一に変わってよく、他の態様は、不均一に変わってよい。
【0019】
遷移部材は、互いに接続された、2つ以上の異なる遷移部材の部品を含んでよい。したがって、非常に多彩な遷移部材を、少数の、あらかじめ定められた遷移部材の部品のセットを使用して取得することができる。1つ以上のらせん状のクーラントチャネルを有する遷移部材について、チャネルのそれぞれは、単一の、中央に配置された、真っ直ぐなクーラントチャネル構成に、遷移部材の異なる部品の間の接合点において、一時的に変えられてよい。これは、異なる遷移部材の部品を、いくつかのツール特性を特定の方法において変える各種の遷移部材に組み合わせることを促進する。そのような単一のクーラント構成の別の利点はまた、らせん状のクーラントチャネルを有する第1及び第2の部材の間の、少量の角度オフセットを可能にすることであってもよく、これは、ツールボディを組み立てることを促進する。
【0020】
遷移部材は、遷移部材の周面において開いている少なくとも1つのクーラントチャネルを含んでよい。したがって、遷移部材は、クーラントをツールボディの外側に運ぶさらなる効果を提供できる。換言すると、ツール特性の、第1の大きさから第2の大きさへのいずれの変換に加えて、1つ以上の追加的クーラントチャネルが、遷移部材内に、メインフローから枝分かれして形成され、クーラントを、ツールボディの外側に供給してよい。このようにして、クーラントの分配が、そのような遷移部材により、第1又は第2の部材を改修する必要なく、取得できる。これは、好適となり得る。なぜなら、第1及び第2の部材は、好ましくは、モジュラー切削ツールボディの標準化されたピースであるためである。
【0021】
部材は、いずれのツール特性を、第1の部材における第1の大きさから、第2の部材における第2の大きさに変えることなく、クーラントを、ツールボディの外側に提供するために、ツールボディ内に単体で使用されることもまた考えられる。
【0022】
好ましくは、遷移部材と、第1及び第2の部材と、の双方は、焼結炭化物製である。代替的に、スチールなどの異なる材料を、1つ以上の部材に使用することができる。切削ツールボディが、追加的な部品を含む場合、そのような部品もまた、異なる材料製とすることもできる。例えば、スチール部品を、ねじ接続を使用して、(遷移部材に接続されていない端にて)第1の部材に接続することができる。
【0023】
焼結炭化物は、すべての部材に対して同じ組成であってよい。しかし、遷移部材はまた、第1及び/又は第2の部材の焼結炭化物とは異なる組成を有する焼結炭化物製であってもよい。したがって、部材のそれぞれは、2つ以上の異なる組成であり、グレード、及び/又は、粒子サイズなどに関して異なることができる。
【0024】
切削ツールボディは、第3の部材及び第2の遷移部材を含んでよく、ここでは、第2の遷移部材は、第2及び第3の部材の間に位置し、第1の端にて、第2の部材に接続されており、第2の端にて、第3の部材に接続されている。第3の部材を接続するために第2の遷移部材を使用することは、ステップや、クーラントチャネルジオメトリの異なる位置での変化を有するドリルなど、さらにより複雑なツールジオメトリの製造を促進する。例えば、そのようなツールでは、第1の遷移は、ツールボディの外部ジオメトリにおける変化に関連でき、第2の遷移は、クーラントチャネルのピッチ、及び/又は、直径における変化に関連できる。さらに、複数の遷移部材の使用はまた、例えば、第1の遷移が、フルート及びクーラントチャネルのらせん角度を変えるためのものとでき、第2の遷移が、クーラントチャネルの数又はクーラントチャネルの直径を変えるためのものとできる、一定の直径を有するツールボディに対して好適にもできる。
【0025】
遷移の対象となるツール特性は、遷移部材のそれぞれに対して同じであることもまた可能である。この場合、第1の遷移部材により、第1の部材から第2の部材への、変えられたツール特性の第2の大きさは、第2の遷移部材により、第2の部材から第3の部材への、変えられたツール特性の第1の大きさと等しくなるであろう。
【0026】
本発明は、使用される部材のいずれの数に限定されない。一例として、2つを超えるステップを有するステップドリルを作るために、追加的遷移部材が必要とされる。例えば、4つのステップを有するステップドリルを作るには、少なくとも5つの一般部材及び4つの遷移部材が必要となるであろう。
【0027】
切削ツールボディは、
ドリル、
エンドミル、
リーマ、
スレッドタップ、
スレッドミル、
カウンタシンクカッタ、
又は、そのような切削ツールを製造することに対応するツールブランク、の内の1つなどの、いずれの種類の回転可能な切削ツールとすることができる。切削ツールボディは、複雑な内部又は外部ジオメトリを有してよく、例えば、複雑なクーラントチャネルジオメトリを有するドリル若しくはエンドミル、又は、異なるツールボディの直径を有するツールの異なる部品を有する、内部クーラントチャネルを有する、若しくは有しないステップドリルとすることができる。
【0028】
別の態様によると、本発明は、
第1の部材、第2の部材、及び遷移部材を製造するステップと、
遷移部材の第1の端を第1の部材に接続し、遷移部材の第2の端を第2の部材に接続して、切削ツールボディを作成するステップと、を含む、切削ツールボディを製造する方法に関する。
【0029】
後続のステップとして、少なくとも1つのフルート、及び/又は、1つ以上の切削エッジが、切削ツールボディ内に、例えば研削により、形成されてよい。モジュール(つまり、第1の部材、第2の部材、及び遷移部材)が、互いに接続された際に、ツールブランク部品の形態である、そのような方法は、特に便利であり、複雑なジオメトリを有する切削ツールの効率的な製造を促進する。
【0030】
代替案として、しかし、これらのモジュールは、接続される前に、それらそれぞれの最終形状に加工できる。つまり、第1の部材、第2の部材、及び遷移部材を製造することのステップは、例えば、研削により、少なくとも1つのフルート、及び/又は、1つ以上の切削エッジを、少なくとも1つの部材内に形成することに関連してよい。
【0031】
部材は、焼結フュージングを使用して接続されてよい。焼結フュージングを使用することにより、あらかじめ焼結された部材を、しっかりと、そして容易に、互いに接続することができる。焼結フュージングは、US9498824B2にてさらに述べられており、これは参照によりここに組み込まれる。焼結フュージングに対する代替案として、部材のそれぞれは、ろう付け、溶接、又は、いずれの他の適した方法にて結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A-C】
図1Aから1Cはそれぞれ、第1の部材、第2の部材、及び遷移部材を示す。
【
図2A】
図2Aは、複数の遷移部材を有するツールブランクの形態である切削ツールボディを示す。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aのツールブランクから製造された、切削ツールの形態である切削ツールボディを示す。
【
図4A】
図4Aは、ツールブランクの形態である切削ツールボディを示す。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aのツールブランクから製造された、切削ツールの形態である切削ツールボディを示す。
【
図5】
図5は、切削ツールを製造する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1Aは、中心軸L
1を有する円筒状の第1の部材101を示す。第1の部材は、2つのらせん状の内部クーラントチャネル104及び105を有し、それぞれは、その中心からツールボディの中心軸までの半径方向の距離d
1、らせん角度α
1、及び断面積A
1を有する。
図1Bは、中心軸L
2を有する円筒状の第2の部材を示す。第2の部材102は、2つのらせん状の内部クーラントチャネル104’及び105’を有し、それぞれは、その中心からツールボディの中心軸までの半径方向の距離d
2、らせん角度α
2、及び断面積A
2を有する。
図1Cは、第1の端106に、そのそれぞれが、その中心からツールボディの中心軸までの半径方向の距離d
1、らせん角度α
1、及び断面積A
1を有する2つのらせん状の内部クーラントチャネルと、第2の端107に、そのそれぞれが、その中心からツールボディの中心軸までの半径方向の距離d
2、らせん角度α
2、及び断面積A
2を有する2つのらせん状の内部クーラントチャネルと、を有する遷移部材を示す。したがって、距離d
1、らせん角度α
1、及び面積A
1はそれぞれ、遷移部材の第1の端106から第2の端107への移動の際に、距離d
2、らせん角度α
2、及び面積A
2に連続して均一に変わる。つまり、遷移部材内のクーラントチャネルのそれぞれのジオメトリは、第1の端106にて、第1の部材101内のクーラントチャネル104及び105のジオメトリに対応し、第2の端107にて、第2の部材102内のクーラントチャネル104’及び105’のジオメトリに対応する。
【0034】
遷移部材103は、遷移領域108を含む。遷移領域108の軸方向の長さは、遷移部材103の軸方向の長さに対応する。換言すると、遷移領域108は、遷移部材の全長にわたって伸長する。
【0035】
図1Dは、互いに接続された、
図1Aから1Cに示す部材を含む、ツールブランクの形態である切削ツールボディ109を示す。遷移部材103の第1の端106は、第1の部材101に接続されており、遷移部材103の第2の端107は、第2のツールブランク部材102に接続されており、切削ツールボディ109のツールボディの中心軸Tが、第1及び第2の部材101及び102の中心軸L
1及びL
2と(及び、その結果として、遷移部材103の中心軸とも)一致するようになっている。例示を目的として、図面では、部材の間境界面を明確に示している。しかし、実際のツールについては、これらの境界面は見えない場合がある。
【0036】
遷移部材によって変えられるツール特性は、ツールボディの中心軸及び各クーラントチャネルの中心の間の距離、らせん角度、及びクーラントチャネルの断面積の組み合わせである。このツール特性は、距離d1、角度α1、及び面積A1により画定される、第1の部材における第1の大きさと、距離d2、角度α2、及び面積A2により画定される、第2の部材における第2の大きさと、を有する。
【0037】
図1Aから1Cに示すツールブランク部材のそれぞれは、好ましくは、焼結炭化物製であり、接続される前に焼結される。部材のそれぞれは、例えば、焼結フュージング又はろう付けにより接続されてよい。
【0038】
ツイストドリルなどの切削ツール(図示せず)は、
図1Dのツールブランクから製造されてよく、そのような製造は、例えば、ツールブランクにおける、フルートの研削及び切削エッジの形成に関連してよい。そのような切削ツールボディは、
図1Dのツールブランク109の部材101、102、及び103にそれぞれ対応する、第1の部材、第2の部材、及び遷移部材を有するであろう。そのような切削ツールのフルートは、好ましくは、内部クーラントチャネルのらせん角度に対応するらせん角度を有するであろう。
【0039】
距離d1、角度α1、及び面積A1の、距離d2、角度α2、及び面積A2への、切削ツールにおける変換は、均一であり、連続する。したがって、変換はスムーズであり、突発的な変化がないため、そのような変化により引き起こされる、クーラントフローにおけるいずれの悪影響も最小化される。
【0040】
図2Aから2Cは、
図2Aのツールブランク201の形態であり、
図2B及び2Cのステップドリル202の形態である、切削ツールボディの別の例を示す。
【0041】
図2Aでは、内部クーラントチャネル212、212a、及び212bが点線で示されている。ツールブランク201の異なる部材203’、204’、205’、及び206’、及び、遷移部材207’、208’、及び209’の間の境界面が実線で示されている。しかし、実際のツールについては、これらの境界面は必ずしも見えるわけではない。
【0042】
図2Bは、
図2Aに示すツールブランクから作られた切削ツール202の側面図である。切削ツール202は、マルチステップドリルである。ステップドリル202は、2つの真っ直ぐなフルート213(このうちの1つを図に示す)と、6つの切削エッジ214(前部に2つ、各「ステップ」に2つ)と、を有する。
【0043】
図2Cに最良に見えるように、ステップドリル202は、第1、第2の、第3、及び第4の部材203、204、205、及び206と、第1、第2、及び第3の遷移部材207、208、及び209と、を、各ツール特性を変えるために有する。この例では、変えられたツール特性は、
図2Aのツールブランクの対応する部材203’、204’、205’、及び206’と、遷移部材207’、208’、及び209’と、に対するものと同じである。この例ではドリルのシャンクである第1の部材203は、ツールボディの直径D
1と、断面積A
1を有し、その中心からツールボディの中心軸Tまでの半径方向の距離d
1にて位置する(d
1=0、なぜなら、クーラントチャネルは中央に配置されているからである)1つのクーラントチャネル210により特徴付けられている。第2の部材204は、ツールボディの直径D
2と、断面積A
2をそれぞれが有し、その中心からツールボディの中心軸Tまでの半径方向の距離d
2にて位置する2つのクーラントチャネル(210a及び210b)により特徴付けられている。第3の部材205は、ツールボディの直径D
3と、断面積A
3をそれぞれが有し、その中心からツールボディの中心軸Tまでの半径方向の距離d
3にて位置する2つのクーラントチャネルにより特徴付けられている。第4の部材206は、ツールボディの直径D
4と、断面積A
4をそれぞれが有し、その中心からツールボディの中心軸Tまでの半径方向の距離d
4にて位置する2つのクーラントチャネルにより特徴付けられている。
【0044】
第1の遷移部材207は、チャネルの数、チャネルの断面積、及びクーラントチャネルの中心及びツールボディの中心軸の間の半径方向の距離の組み合わせにより画定されるツール特性の変換、つまり、距離d1、面積A1、及びクーラントチャネルの第1の数(1つ)により画定される第1の大きさから、距離d2、面積A2、及びクーラントチャネルの第2の数(2つ)により画定される第2の大きさへの変換、を提供する。しかし、ツールボディの直径は即座に変わり、これは、第1の遷移部材207により変えられるツール特性の一部ではない。遷移領域の軸方向の長さは、遷移部材207の軸方向の長さに対応する。換言すると、遷移領域は、遷移部材の全長にわたって伸長する。距離d1及び面積A1の、距離d2及び面積A2への変換は均一であり、連続する。
【0045】
第2の遷移部材208は、ツールボディの直径、クーラントチャネルの断面積、及びクーラントチャネルの中心及びツールボディの中心軸の間の半径方向の距離の組み合わせにより画定されるツール特性の変換、つまり、直径D2、距離d2、及び面積A2により画定される第1の大きさから、直径D3、距離d3、及び面積A3により画定される第2の大きさへの変換、を提供する。距離d2及び面積A2はそれぞれ、距離d3及び面積A3に、遷移領域の第1のセクション内にて変わり、直径D2は、直径D3に、遷移領域の第2のセクション内にて変わり、第1のセクションに部分的に重なる。したがって、第2の遷移部材208では、ツール特性のすべての態様が、遷移領域の全長にわたって連続して変えられるわけではない。
【0046】
第3の遷移部材209は、ツールボディの直径、クーラントチャネルの断面積、及びクーラントチャネルの中心及びツールボディの中心軸の間の半径方向の距離の組み合わせにより画定されるツール特性の変換、つまり、直径D3、距離d3、及び面積A3により画定される第1の大きさから、直径D4、距離d4、及び面積A4により画定される第2の大きさへの変換、を提供する。第3の遷移部材は、2つの個別の遷移部材の部分211及び212を含む。第1の部分211は、距離d3及び面積A3を、距離d4及び面積A4にそれぞれ変える。第2の部分212は、直径D3を直径D4に変える。遷移部材のこれらの部分は、好ましくは、加工中に、他のすべての部材が接続される間に、互いに接続される。したがって、遷移部材は、切削ツールボディの他のすべての部材を接続する前に組み立てる必要はない。
【0047】
図3Aは、単一の、中央に配置されたクーラントチャネルを、2つが、第1の断面直径及び中心軸からの距離を有し、2つが、第2の、異なる断面直径及び中心軸からの距離を有する、4つの個別のクーラントチャネルに変えるための遷移部材301の一例を示す。遷移領域302の軸方向の長さは、遷移部材301の軸方向の長さより短い。したがって、遷移部材301の端のそれぞれに領域303があり、ここでは、クーラントチャネル(単一又は複数)のジオメトリは変わらない。
【0048】
図3Bは、2つのクーラントチャネルを、単一の中央クーラントチャネルに変え、また、切削ツールボディの直径を変える(小さくする)ための遷移部材304の一例を示す。
【0049】
図3A及び3Bに示すそれらのような遷移部材は、単一の遷移部材を形成するように組み合わされてよい。そのような配置では、遷移部材301及び304はそれぞれ、遷移部材の一部とみなされるであろう。部品301と304の間の接合点において、単一のクーラントチャネルへの「一時的な」変換の利点は、そのような構成が、異なる出力及び入力ジオメトリを有する異なる部品の組み合わせを容易にできることである。したがって、部品は非常に高い程度にて組み合わせ可能となるため、多くの異なる変換が、相対的に少数の、異なる遷移部材の部分のセットを使用して取得可能となる。
【0050】
図4Aは、遷移部材402’を有する、ツールブランクの形態である切削ツールボディ401の別の実施形態を示す。この遷移部材は、単一の真っ直ぐなクーラントチャネルを、2つのらせん状のクーラントチャネルに変え、また、ツールボディの直径を変える。さらに、遷移部材は、内部クーラントチャネルから枝分かれする2つの追加的クーラントチャネル403を含み、クーラントを、切削ツールボディの外側に提供する。
【0051】
図4Bは、
図4Aのツールブランクから作られた切削ツール404(ステップドリル)を示す。追加的クーラントチャネル403は、遷移部材402(これは、
図4Aのツールブランクの遷移部材402’に対応する)の外側において開いている。クーラントチャネル403(その1つを
図4Bに見ることができる)は、直径が遷移する領域において、つまり、ドリルのステップの切削エッジ付近にて開いている。したがって、クーラントは、それが必要とされる領域に効率的に分配される。ツールボディの直径をもまた変える、又は、変えることのない、同様の構成もまた、クーラントを周辺の切削エッジに運ぶことが有益な、エンドミルなどの、他の種類のツールに対しても好適となり得る。
【0052】
図5は、本発明に係る切削ツールボディを製造する方法を示すフローチャートである。
【0053】
ステップ501にて、第1の部材、第2の部材、及び遷移部材を含む、切削ツールボディの部材がそれぞれ製造される。好ましくは、第1の部材及び第2の部材は、例えば、焼結炭化物ロッドを、特定の直径に加工(旋削)し、クーラント孔を穴あけし、これに焼結が続く従来の製造方法を使用して作られる。遷移部材は、好ましくは、複雑なジオメトリを作成することにより適した、付加製造などの、代替的な製造方法を使用して製造される。
【0054】
ステップ502にて、遷移部材の第1の端が、第1の部材に接続され、遷移部材の第2の端が、第2の部材に接続される。遷移部材が、2つ以上の部分を含む場合、これらもまた接続される。部材及び部材の部分のすべての接続は、焼結フュージング、ろう付け、又は、いずれの他の、部分の結合に適した方法を使用して行われてよい。
【0055】
任意のステップ503にて、ツールボディが加工され、切削ツールの最終形状を形成する。そのような加工は、例えば、研削により、切り屑フルート及び切削エッジを形成することに関連してよい。