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▶ ヤンマーホールディングス株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
E02F9/22 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021005553
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110268
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173803(JP,A)
【文献】特開2011-196436(JP,A)
【文献】特開2020-067111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置と、作業装置と、を備える建設機械において、前記建設機械は、油圧ポンプと、前記油圧ポンプによって圧送される圧油が流入し、走行装置を走行させる走行モーターと、前記油圧ポンプによって圧送される圧油が流入し前記作業装置を動かす作業機アクチュエーターと、
前記走行モーターに流入する圧油に係る物理量に基づき前記走行装置の走行を検知する走行検知手段と、
前記作業機アクチュエーターの作動を検知する作業検知手段と、前記走行検知手段の走行検知により、前記作業検知手段の作業検知時に、前記作業機アクチュエーターの駆動速度を減少させる制限をし、前記走行検知手段の走行非検知により前記制限を解除する作業機速度制限手段と、
前記物理量に応じて前記作業機速度制限手段を制御する制御部と、を有し、
前記物理量の減少に応じて、走行モーターに流入する圧油の量は減少するものであり、前記制御部は、前記物理量の減少と共に、前記作業機速度制限手段によるアクチュエーターの駆動速度の減少幅を小さくするように制御することを特徴とする建設機械
【請求項2】
前記作業機速度制限手段が前記作業機アクチュエーターに流入する圧油の方向と流量を制御する方向切換弁にパイロット圧を出力するリモコン弁と前記リモコン弁に入力されるパイロット圧の油圧源たるパイロットポンプの間にある電磁比例弁であり、前記制御部が前記電磁比例弁の出力する値を、前記走行の検知と共に前記電磁比例弁の上流の圧力である基準圧より小さい第1指定圧とし、前記走行の検知中に前記作業検知がされると、前記第1指定圧を第2指定圧まで上昇させ、前記物理量の大きさに基づき前記第1指定圧と前記第2指定圧を設定することを特徴とする請求項記載の建設機械。
【請求項3】
前記物理量の減少と共に前記第1指定圧及び前記第2指定圧が増加することを特徴とする請求項記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械である油圧ショベルにおいて、走行のみの操作から、走行の操作と共に、作業機を動かす複合操作に移行する際に、油圧ポンプから走行用アクチュエーターに供給される圧油の流量の一部が、作業機用アクチュエーターに流入することにより発生する走行速度の急激な低下を防止する技術として、走行操作を検知すると、作業機の操作装置のパイロット圧油の1次圧力を基準圧まで減圧させた後、作業機の操作装置が操作されている間、パイロット圧油の1次圧力を基準圧から漸増させることにより、複合動作時に、走行用アクチュエーターに供給される圧油の流量の一部が急激に作業機用アクチュエーターに流入することを防止し、走行速度の急激な低下を防止する油圧ショベルが知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-173803公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような油圧ショベルにおいては、走行操作の検知により一律に作業機の操作装置の1次圧力を基準圧まで減圧するため、走行操作の操作量が小さい場合であっても、走行操作の操作量が大きい場合と同様に作業機用アクチュエーターに流入する圧油の流量は制限される。
【0005】
この結果、オペレーターは、走行の速度を下げることにより、作業機の速度が上がることを期待しているのに対し、走行の速度を下げたとしても作業機の速度は上がらず、作業機の速度を上げるためには、完全に走行を停止した後に作業機を動かす必要があり、作業性を損なうという問題があった。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、油圧ショベルに代表される建設機械において、走行の単独操作から走行の操作と作業機の操作を同時に行う複合操作に移行する際の走行速度の急激な低下を防止しつつ、作業機の操作性を損なわない建設機械に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため本発明は、走行装置と、作業装置と、を備える建設機械において、前記建設機械は、油圧ポンプと、前記油圧ポンプによって圧送される圧油が流入し、走行装置を走行させる走行モーターと、前記油圧ポンプによって圧送される圧油が流入し前記作業装置を動かす作業機アクチュエーターと、前記走行モーターに流入する圧油に係る物理量に基づき前記走行装置の走行を検知する走行検知手段と、前記作業機アクチュエーターの作動を検知する作業検知手段と、前記走行検知手段の走行検知により、前記作業検知手段の作業検知時に、前記作業機アクチュエーターの駆動速度を減少させる制限をし、前記走行検知手段の走行非検知により前記制限を解除する作業機速度制限手段と、前記物理量に応じて前記作業機速度制限手段を制御する制御部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
走行の単独操作から走行と作業機の複合操作に移行する際、建設機械の作業性を損なうことなく、走行速度の急激な低下を防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用される建設機械の代表例である油圧ショベルの側面図である。
図2】本発明の油圧ショベルが備える油圧回路を示す図である。
図3】本発明の油圧回路を制御する油圧制御システムのブロック図である。
図4】走行単独操作から複合操作に移行した後、走行及び作業機操作を停止した時のパイロット1次圧力を出力する電磁比例弁の指令値の推移例を示すグラフ
図5】走行単独操作から複合操作に移行した後、走行及び作業機操作を停止した時のパイロット1次圧力の推移例を示すグラフ
図6】走行操作圧と、第1指令値及び第2指令値の関係を示すマップ
【0010】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態について本発明が適用される油圧ショベル100を例に挙げ図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体200と、下部走行体200上に旋回可能に支持された上部旋回体300と、上部旋回体300の前方に回動可能に支持された作業装置400と、を備えている。
【0012】
下部走行体200は、センターフレーム(図示せず)とセンターフレームに左右対称に対をなし前後方向に延びるサイドフレーム210(左側のみ図示)を有しており、サイドフレーム210は、後方一端側には走行モーター220により駆動する駆動輪211(左側のみ図示)が設置され、前方一端に向け複数の遊動輪212(左側のみ図示)が設置されている。そして駆動輪211と遊動輪212は、履帯213(左側のみ図示)が巻装されている。センターフレームには、ブレードシリンダー230によって昇降するブレード231がブレードアーム232を介して回動自在に支持されている。
【0013】
上部旋回体300は、旋回ベアリング(図示せず)を介し、旋回モーター330により旋回し、上部旋回体300の上方には、運転室600が配置されている。
【0014】
運転室600にはシート610と、シート610の左右両隣りに設置され、旋回操作及び作業機400を操作する一対のサイドレバー620,621(左側のみ図示)と、ブレード231を操作するブレードレバー622と、運転室600の前方の床面から立設し、走行ペダルと一体となっている走行操作を行うための左右一対の走行レバー623,624(左側のみ図示)が配置されている。
【0015】
さらに上部旋回体300には、運転室600を後方から右側方に取り囲むように設置されたボンネット310とシート610を支持するシートマウント630によって構成される機関室311が配置されている。さらに機関室311には、原動機としてエンジンが配置され、エンジンの出力軸に装着された油圧ポンプ511,521,531から作動油を圧送し、油圧回路500を介して油圧ショベル100に装着されたアクチュエーターの動きを制御させる。なお本実施例では、原動機は、エンジンであるがこれに限定されるものでなく、電動モーターであってもよい。
【0016】
作業装置400は、上部旋回体300の先端に設けられたスウイングポスト320に、支持されるスウイングブラケット410と、スウイングブラケット410に上下に回動可能に支持されたブーム420と、ブーム420の先端に上下に回動可能に装着されたアーム430と、アーム430の先端に回動可能に装着されたバケット440とからなり、作業装置400は、上部旋回体300の下方に設置されたスウイングシリンダー321により水平方向に回動し、スウイングブラケット410に一端が枢支され、他端をブーム420の折れ部に枢結された、ブーム420を動かすブームシリンダー421と、ブーム420の上方に設置され、アーム430を動かすアームシリンダー431と、アーム430の上方に設置され、バケットリンク441を介してバケット440を動かすバケットシリンダー442と、を備えている。
【0017】
図2は、本発明の油圧ショベルが備える油圧回路であり、図2に基づき油圧ショベル100の油圧制御について説明する。
【0018】
油圧回路500は、エンジンの駆動力によって駆動する油圧ポンプ511,521,531,541によって圧油が供給される。
【0019】
油圧ポンプ541は、パイロットポンプであってサイドレバー620,621、ブレードレバー622、走行レバー623,624の操作に基づき油圧ショベル100の各アクチュエーターに流れる圧油の方向と流量を制御する方向切換弁V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8,V9(以下一体としての総称をコントロールバルブとする)の入力ポートV1a,V1b,V2a,V2b,V3a,V3b,V4a,V4b,V5a,V5b,V6a,V6b,V7a,V7b,V8a,V8b,V9a, V9bにパイロット圧を出力するリモコン弁及び後述する合流弁532の入力ポート532aに出力するパイロット圧の元圧を発生させる固定容量型ポンプである。
【0020】
油圧ポンプ511,521,531は、コントロールバルブを介して油圧ショベル100の各アクチュエーターに油を圧送し、油圧ポンプ511,521は、可変容量型ポンプである。
【0021】
本実施例では、ポンプの構成は上記のような構成をとっているがこれに限定されるものでなく、油圧ポンプ511,521をスプリットフロータイプの可変容量型ポンプとして油圧ポンプ531を固定容量型ポンプとする構成でもよく、またこの構成から固定容量型ポンプを除外する構成でもよい。その際固定容量型ポンプが圧油を供給していたアクチュエーターに対する圧油の供給はスプリットフロータイプの可変容量型ポンプの2つの出力ポートの内一つのポートが担うことになる。ここでスプリットフロータイプの可変容量型ポンプの2つの出力ポートは、独立した2つのポンプと見なすことができ、本件発明においてその作用効果は同一である。
【0022】
油圧回路500は、第1油圧回路510と、第2油圧回路520と、第3油圧回路530とから構成されている。
【0023】
第1油圧回路510は、油圧ポンプ511からタンク550に延びるセンターバイパス流路に接続する方向切換弁V1,V2,V3から構成されている。
【0024】
方向切換弁V3は、左走行モーター220に接続し、方向切換弁V2は、ブームシリンダー421に接続し、方向切換弁V1は、バケットシリンダー442に接続しそれぞれ、アクチュエーターに流れる圧油の方向と流量を制御している。
【0025】
ここで方向切換弁と油圧アクチュエーターの組み合わせは、上記実施例に限定されるものでなく、例えば方向切換弁V1をアームシリンダー431に接続してもよく、さらにアクチュエーターと方向切換弁の配置は、建設機械の種類に応じて適宜決定することができる。
【0026】
第2油圧回路520は、油圧ポンプ521からタンク550に延びるセンターバイパス流路に接続する方向切換弁V4,V5,V6から構成されている。
【0027】
方向切換弁V4は、走行モーター221に接続し、方向切換弁V5は、PTO配管に接続し、用途に応じて様々な種類のアタッチメントに圧油を送ることができる。方向切換弁V6は、アームシリンダー431に接続しそれぞれ、アクチュエーターに流れる圧油の方向と流量を制御している。
【0028】
ここで方向切換弁と油圧アクチュエーターの組み合わせは、上記実施例に限定されるものでなく、例えば方向切換弁V6をバケットシリンダー442に接続させてもよく、さらにアクチュエーターと方向切換弁の配置は、建設機械の種類に応じて適宜決定することができる。
【0029】
第3油圧回路530は、油圧ポンプ531から合流弁532に延びるセンターバイパス流路に接続する方向切換弁V9,V8,V7から構成されている。
【0030】
方向切換弁V9は、スウイングシリンダー321に接続し、方向切換弁V8は、旋回モーター330に接続し、方向切換弁V7は、ブレードシリンダー230に接続しそれぞれ、アクチュエーターに流れる圧油の方向と流量を制御している。
【0031】
ここで油圧ポンプ531から延びるセンターバイパス流路は、分岐部533より方向切換弁V7に圧油を入力する流路を形成している。
【0032】
また油圧
ポンプ531から延びるセンターバイパス流路は、分岐部534より方向切換弁V8に圧油を入力する流路を形成している。
【0033】
このように油圧回路530は、センターバイパスから直列的に圧油を方向切換弁V9,V8,V7に分配するほか、センターバイパスの上流に設置された分岐部533及び分岐部534から直接方向切換弁V7、V8に圧油を送ることによって、ブームシンダー230、旋回モーター330及びスウイングシリンダー321にバランスよく圧油を配分することができる。
【0034】
分岐部533及び分岐部534の設置は、各アクチュエーターに流入する圧油の設計流量に応じて何れか一つもしくは全てをなくすことができる。
【0035】
パイロットポンプ541の圧力は、電磁比例弁710によって任意に減圧されパイロット1次圧力として操作レバー620の動きに対応してリモコン弁543により減圧され、方向切換弁V6の入力ポートV6a又は V6b入力され、方向切換弁V6のスプールを摺動させアームシリンダー431の動きを制御する。
【0036】
パイロットポンプ541の圧力は、電磁比例弁711によって任意に減圧されパイロット1次圧力として操作レバー621の動きに対応してリモコン弁542により減圧され、方向切換弁V2の入力ポートV2a又は V2b入力され、方向切換弁V2のスプールを摺動させブームシリンダー421の動きを制御する。
【0037】
パイロットポンプ541の圧力は、操作レバー623の動きに対応してリモコン弁544により減圧され、方向切換弁V3の入力ポートV3a又は V3b入力され、方向切換弁V3のスプールを摺動させ左走行モーター220の動きを制御する。
【0038】
パイロットポンプ541の圧力は、操作レバー624の動きに対応してリモコン弁545により減圧され、方向切換弁V4の入力ポートV4a又は V4b入力され、方向切換弁V4のスプールを摺動させ右走行モーター221の動きを制御する。
【0039】
ここでリモコン弁544の圧力とリモコン弁545の圧力は、それぞれシャトル弁546の入力ポートに入力され、入力された圧力のうち高い方の圧力(以下走行操作圧力と称する。)が出力し、圧力センサー720で検知される。検知された走行操作圧力は、方向切換弁V3または、方向切換弁V4のスプールの開口量つまり左走行モーター220又は右走行モーター221に流入した圧油の流量に関する物理量に該当し、検知された走行操作圧力の大きさにより、左走行モーター220又は右走行モーター221に流入した圧油の流量のうち多く流れた走行モーターの圧油の流量を推定することができる。
【0040】
パイロットポンプ541から絞り547を通り方向切換弁V6のスプールと、方向切換弁V2のスプールを貫き、タンク550に延びる流路は、分岐部548を介して合流弁532の入力ポート532aと繋がっており、分岐部548と入力ポート532aの間には、圧力センサー721が設置されている。
【0041】
サイドレバー620によるアーム操作もしくは、サイドレバー621によるブーム操作により、方向切換弁V6もしくは方向切換弁V2のスプールが摺動し、絞り547を通り、タンク550に延びる流路は遮断され、分岐部548から入力ポート532aにパイロット圧力は、入力される。そして合流弁516は、ポンプ531からセンターバイパスを通ってタンク550に圧油が流れる流路を形成する中立位置から方向切換弁V2及び方向切換弁V5に圧油が流れる流路を形成する切換位置に切り替わる。その際圧力センサー721は、パイロット圧力を検知し、作業機であるブーム421とアーム431の何れかが操作されたことを検知することができる。
【0042】
サイドレバー620によるアーム操作もしくは、サイドレバー621によるブーム操作の何れもされなくなると、合流弁532は、切換位置から中立位置に切り替わる。その際圧力センサー721は、パイロット圧力が下がったことを検知し、作業機であるブーム421とアーム431の操作がされていないことを検知する。
【0043】
図3は、油圧回路を制御する油圧制御システム700のブロック図であり、図3に基づき油圧制御システム700を説明する。
【0044】
油圧制御システム700は、統合ECU701と、統合ECU701に検知した値を入力する圧力センサー720と、統合ECU701に検知した値を入力する圧力センサー721と、統合ECU701から出力される指令値に従い、パイロットポンプ541からの圧力を減圧しパイロット1次圧力を出力する電磁比例弁711,710から構成される。
【0045】
統合ECU701は、記憶部702と、記憶部702に記憶されたマップと圧力センサー720と圧力センサー721の検知する値に基づき電磁比例弁711,710に入力する指令値を演算する演算部703から構成される。
【0046】
統合ECU701は、本機に設置された12ボルト電池と接続し、統合ECU701内の各ブロックに安定した電圧を供給する電源と、演算部703に該当し、各種入力信号から制御量を演算し出力するマイコンと、デジタル入力信号をマイコンに入力できる信号レベルに変換する入力バッファーと、アナログ信号をマイコンに入力できるデジタル値に変換するADコンバータと、記憶部702に該当し、電源から電力が供給されなくなっても、データを記憶するメモリーであるEEPROM(ELectronically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、マイコンの出力信号に従い、アクチュエーターが駆動できる信号の形態に変換したり電圧を増幅したりする出力ドライバと、マイコンの出力データを通信規格に適した通信信号に変換する通信ドライバと、他のECUが送信する信号をマイコンに入力できるレベルに変換する通信レシーバから構成されている。
【0047】
図4は、走行単独操作から複合操作に移行した後、走行及び作業機操作を停止した時のパイロット1次圧力を出力する電磁比例弁の指令値を示すグラフで、図5は、走行単独操作から複合操作に移行した後、走行及び作業機操作を停止した時のパイロット1次圧力の推移例を示すグラフである。又図6は、走行操作圧と、任意に定められたパイロット1次圧力を出力する電磁比例弁710,711の指令値である第1指令値A1及び第2指令圧A2の関係を示すマップ800である。
【0048】
ここで、図3図4図5及び図6に基づき走行の単独操作から走行の操作と作業機の操作を同時に行う複合操作に移行する操作を含む油圧ショベル100の操作時の制御について説明する。
【0049】
図4及び図5に示す例において、時刻Aで、走行レバー623,624を大きく回動させた場合、統合ECU701に圧力センサー720が検出した走行操作圧力が入力される。マップ800に基づき演算部703にて走行操作圧力に対応する第1指令値A1の値A1αを算出し、電磁比例弁710,711に出力する。(図4参照)そして電磁比例弁710,711は、第1規定圧として、パイロット1次圧力の標準規定圧P0より低いP1αを出力する。(図5参照)この結果走行中にサイドレバー620もしくはサイドレバー621を大きく操作をしても、アーム400もしくは、ブーム420の速度は、減速される。したがってアームシリンダー431又はブームシリンダー421に急激に走行モーター220,221の油が流入しないため、走行操作から複合操作に移っても、走行速度の急激な低下を防止できる。
【0050】
また時刻Aで、走行レバー623,624を小さく回動させた場合、統合ECU701に圧力センサー720が検出した走行操作圧力が入力される。マップ800に基づき演算部703にて走行操作圧力に対応する第1指令値A1の値A1βを算出し、電磁比例弁710,711に出力し(図4参照)、電磁比例弁710,711は、第1規定圧として、P1αより大きいP1βを出力する。(図5参照)この結果サイドレバー620もしくはサイドレバー621を大きく操作しても、アーム400もしくは、ブーム420の速度は、減速されるが走行レバー623,624を大きく回動させた場合に比べ緩やかにアーム400もしくは、ブーム420の速度は、減速される。つまり走行操作量(走行モーターに流入する圧油の流量)に従い作業機速度の制限の制御量を制御することにより、走行操作から複合操作に移っても作業機の操作性を損なうことなく走行速度の急激な低下を防止できる。
【0051】
ここで、時刻Bにおいて走行レバー623,624を大きく回動させた状態を保持したまま、サイドレバー620もしくはサイドレバー621を回動させアーム400もしくは、ブーム420を操作すると、圧力センサー721の圧力信号が統合ECU701に入力され、マップ800に基づき演算部703にて走行操作圧力に対応する第2指令値A2の値A2αを算出し、電磁比例弁710,711に入力しているA1αを時刻CでA2αになるように減少させ、(図4参照)電磁比例弁710,711は、第1規定圧P1αからパイロット1次圧力の標準規定圧P0より低い第2規定圧P2αに上昇させる。(図5参照)この結果アーム400もしくは、ブーム420の速度を減速しつつ速度の立ち上がりを緩やかにすることにより、アームシリンダー431又はブームシリンダー421に急激に走行モーター220,221の油が流入しないため、走行速度の急激な低下を防止しできる。
【0052】
また時刻Bにおいて走行レバー623,624を小さく回動させた状態を保持したまま、サイドレバー620もしくはサイドレバー621を回動させアーム400もしくは、ブーム420を操作すると、圧力センサー721の圧力信号が統合ECU701に入力され、マップ800に基づき演算部703にて走行操作圧力に対応する第2指令値A2の値A2βを算出し、電磁比例弁710,711に入力しているA1βを時刻CでA2βになるように減少させ(図4参照)、電磁比例弁710,711は、第1規定圧P1βからパイロット1次圧力の規定圧P0より低い第2規定圧P2βに上昇させる。(図5参照)この結果アーム400もしくは、ブーム420の速度の減速を制限しつつ速度の立ち上がりを緩やかにすることによりアーム400及びブーム420の操作性を維持しつつ走行速度の急激な低下を防止しできる。つまり走行操作量(走行モータに流入する圧油の流量)に従い作業機速度の制限の制御量を制御することにより、複合操作に移っても作業機の操作性を損なうことなく走行速度の急激な低下を防止しできる。
【0053】
そして時刻Dにおいて、走行レバー623,624を大きく回動させた状態で、サイドレバー620もしくはサイドレバー621の操作を停止すると、圧力センサー721の圧力信号が統合ECU701で規定値以下と判定され、統合ECU701は、電磁比例弁710,711に入力しているA2αを時刻Eで演算部703により演算されたA1αになるように上昇させ、(図4参照)電磁比例弁710,711は、第2規定圧P2αから第1規定圧P1αに下降させる。(図5参照)さらに時刻Fで統合ECU701が圧力センサー720の操作圧力の消失を判定すると、電磁比例弁710,711の入力を停止させ(図4参照)、電磁比例弁710,711は、パイロット1次圧力の標準規定圧P0を出力する。(図5参照)その結果走行操作をさせることなくサイドレバー620もしくはサイドレバー621を回動させアーム400もしくは、ブーム420を操作すると、アーム400もしくは、ブーム420の速度は標準に設定されている速度となる。
【0054】
又同様に時刻Dにおいて、走行レバー623,624を小さく回動させた状態で、サイドレバー620もしくはサイドレバー621の操作を停止すると、圧力センサー721の圧力信号が統合ECU701で規定値以下と判定され、統合ECU701は、電磁比例弁710,711に入力しているA2βを時刻Eで演算部703により演算されたA1βになるように上昇させ、(図4参照)電磁比例弁710,711は、第2規定圧P2βから第1規定圧P1βに下降させる。(図5参照)時刻F
で統合ECU701が圧力センサー720の操作圧力の消失を判定すると、電磁比例弁710,711の入力を停止させ(図4参照)、電磁比例弁710,711は、パイロット1次圧力の標準規定圧P0を出力し、(図5参照)走行操作をさせることなくサイドレバー620もしくはサイドレバー621を回動させアーム400もしくは、ブーム420を操作させると、アーム400もしくは、ブーム420の速度は標準に設定されている速度となる。
【0055】
そして本発明は、油圧ショベルに限定されるものでなく、スキッドステアローダ及びコンパクトトラックローダなどの建設機械に適用でき、本発明は、説明した上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更をすることができる。
【0056】
例えば、走行モーターに流入する圧油に係る物理量を検出する手段として、走行モーターの方向切換弁にパイロット圧信号を出力するリモコン弁のパイロット圧信号を検出しているがこれに限定されるものでない。
【0057】
例えば、パイロット圧信号に替え走行モーターの回転数を検出してもよい。
【0058】
またリモコン弁に替え、電気式ジョイスティックの出力する電気信号に基づき、電磁比例弁を介して走行モーターの方向切換弁を制御する場合は、電気式ジョイスティックの出力する電気信号を検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、建設機械に関するものであり産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0060】
701 統合ECU(制御部)710 電磁比例弁(作業機速度制限手段)711 電磁比例弁(作業機速度制限手段)720 圧力センサー(走行検知手段)721 圧力センサー(作業検知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6