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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】トランスおよび電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240228BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20240228BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240228BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240228BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01F30/10 A
H01F30/10 C
H01F27/24 E
H01F27/28 K
H02J7/00 A
H02M3/28 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021011520
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114991
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶田 玲彦
(72)【発明者】
【氏名】井出 一正
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁史
(72)【発明者】
【氏名】須藤 哲也
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-114063(JP,A)
【文献】特開2019-030058(JP,A)
【文献】特開平08-017658(JP,A)
【文献】実公昭47-002561(JP,Y1)
【文献】特開2019-004531(JP,A)
【文献】特開2019-110145(JP,A)
【文献】特開2005-094901(JP,A)
【文献】特開2014-107899(JP,A)
【文献】中国実用新案第218783633(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/166589(US,A1)
【文献】特開平4-255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/24
H01F 27/28
H02J 7/00
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の第1の円筒部と、前記第1の円筒部の周面から突出する複数の第1の突起部と、を有する第1の鉄心と、
円筒状の第2の円筒部と、前記第2の円筒部の周面から突出する複数の第2の突起部と、を有し、前記第1の鉄心に対して同軸に配置された第2の鉄心と、
前記第1の突起部に巻回された第1の巻線と、
前記第2の突起部に巻回された第2の巻線と、
各々の前記第1の突起部と、対応する各々の前記第2の突起部との間に磁路を形成する接続鉄心と、を備える
ことを特徴とするトランス。
【請求項2】
前記第1の巻線は、3本の巻線に分割され、前記第2の巻線は、他の3本の巻線に分割されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記第1の鉄心と前記接続鉄心とを密着させ、前記第2の鉄心と前記接続鉄心とを密着させる密着部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトランス。
【請求項4】
前記第1の巻線の巻回数と、前記第2の巻線の巻回数とが異なる
ことを特徴とする請求項3に記載のトランス。
【請求項5】
円筒状の第1の円筒部と、前記第1の円筒部の周面から突出する複数の第1の突起部と、を有する第1の鉄心と、
円筒状の第2の円筒部と、前記第2の円筒部の周面から突出する複数の第2の突起部と、を有し、前記第1の鉄心に対して同軸に配置された第2の鉄心と、
前記第1の突起部に巻回された第1の巻線と、
前記第2の突起部に巻回された第2の巻線と、
各々の前記第1の突起部と、対応する各々の前記第2の突起部との間に磁路を形成する接続鉄心と、
前記第1の巻線に接続された第1の回路と、
前記第2の巻線に接続された第2の回路と、を備え、
前記第1の回路および前記第2の回路は、前記第1の鉄心または前記第2の鉄心の内側の空間に設けられている
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項6】
前記第1の鉄心と前記第2の鉄心とは、縦方向に固定され、
前記第1の回路と前記第2の回路とは、縦向きに配置され、
前記第1の鉄心または前記第2の鉄心の内側に設けられ、下から上に向かって送風することにより前記第1の回路および前記第2の回路を冷却する冷却ファンをさらに備える
ことを特徴とする請求項5に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスおよび電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で電動化が加速している。特に移動体については、電気自動車に続き、バス、トラック、建設機械、船舶、航空機の電動化が実用化段階に移行しつつある。一方、これらの電動化移動体に地上側から電気エネルギーを供給する充電システムについても需要が高まっている。電動化移動体を導入するためには地上側の充電システムも充実することが望まれる。充電時の感電を防止するために、充電システムは商用交流電源と電気的に絶縁することが好ましい。また、ユーザの利便性を確保するために充電システムの設置スペースを小さくすることが好ましい。
【0003】
例えば、下記特許文献1の請求項2には、「前記ACインレットと前記DCコネクタとの間に位置する絶縁回路と、前記ACインレットと前記DCコネクタとの間で電流の異常が検知されたときに、前記ACインレットと前記DCコネクタとの間において電流の遮断を行なう遮断装置とをさらに備える、請求項1に記載の電力変換ユニット」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-72494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、電動化移動体を導入して円滑に運用するためには地上側の充電システムも充実することが望まれるため、充電システムの初期導入費用を低減することが望まれる。そして、充電システムが高周波トランス等のトランスを含む場合は、そのトランスの製造コストが初期導入費用の相当部分を占めるため、トランスの製造コストを低減することが望まれる。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減できるトランスおよび電力変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明のトランスは、円筒状の第1の円筒部と、前記第1の円筒部の周面から突出する複数の第1の突起部と、を有する第1の鉄心と、円筒状の第2の円筒部と、前記第2の円筒部の周面から突出する複数の第2の突起部と、を有し、前記第1の鉄心に対して同軸に配置された第2の鉄心と、前記第1の突起部に巻回された第1の巻線と、前記第2の突起部に巻回された第2の巻線と、各々の前記第1の突起部と、対応する各々の前記第2の突起部との間に磁路を形成する接続鉄心と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トランスの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】好適な第1実施形態によるトランスの斜視図である。
図2図1の要部の模式的な拡大図である。
図3】第2実施形態による電力変換器の斜視図である。
図4】第2実施形態による電力変換器の回路図である。
図5】第3実施形態による電力変換器の模式的な断面図である。
図6】第4実施形態によるトランスの要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、好適な第1実施形態によるトランス10の斜視図である。
図1においてトランス10は、一次側コア111(第1の鉄心)と、一次側コイル112(第1の巻線)と、二次側コア121(第2の鉄心)と、二次側コイル122(第2の巻線)と、複数の一・二次間コア131(接続鉄心)と、一対の結束板5と、を備えている。
【0010】
一次側コア111は、磁性体を略円筒平歯車状に形成したものである。すなわち、一次側コア111の外周面には、放射方向に突出し上下方向に沿って延在する、縦長状の複数の突起部113(第1の突起部)が形成されている。一次側コア111のうち突起部113以外の部分を一次側円筒部115(第1の円筒部)と呼ぶ。一次側コイル112は被覆導体を突起部113に沿って巻回したものである。
【0011】
二次側コア121および二次側コイル122は、上述した一次側コア111および二次側コイル122と同様に形成されている。すなわち、二次側コア121の外周面には、突起部113と同数の突起部123(第2の突起部)が形成されている。また、二次側コア121のうち突起部123以外の部分を二次側円筒部125(第2の円筒部)と呼ぶ。一次側コア111および二次側コア121は、若干の間隔を隔てて同軸を成すように、かつ各突起部113,123の端部が相互に対向するように、上下方向に沿って配置されている。
【0012】
一・二次間コア131は、磁性体を長尺の長方形板状に形成したものであり、対向する突起部113,123の双方に接触している。一対の結束板5は、それぞれ略円筒状に形成され、複数の一・二次間コア131を外周側から押圧することによって、一・二次間コア131を突起部113,123に密着させる。但し、図1において角度範囲Aの部分については結束板5および一・二次間コア131を取り除いた状態を示す。
【0013】
図2は、図1の要部の模式的な拡大図である。
図2において、突起部113,123は、略直方体ブロック状に形成されている。また、一・二次間コア131は、上下方向に対向する突起部113,123の双方の外周面を覆い、両者を磁気的に接続するように配置されている。
【0014】
〈第1実施形態の動作〉
次に、本実施形態の動作を説明する。
図2において、一次側コイル112に高周波の交流電流を通流させると、発生した磁束Φは、突起部113および一次側円筒部115に鎖交する。さらに、磁束Φは、一・二次間コア131を介して突起部123および二次側円筒部125に伝達される。ここで、隣接する一対の突起部113においては、一次側コイル112の巻回方向が逆になるため、双方の突起部113には、逆方向の磁束Φが発生する。これは、二次側コア121の突起部123においても同様である。
【0015】
従って、ある一・二次間コア131を介して一次側コア111から二次側コア121に伝達された磁束Φは、隣接する一・二次間コア131を介して一次側コア111に戻り、閉磁路を形成する。この結果として、二次側コイル122には、この閉磁路に流れる磁束Φによって誘導電流が発生し、一次側コイル112に通流した高周波電流とは電気的に絶縁された高周波電流が二次側コイル122から得られる。
【0016】
図1および図2においては、略円筒状の一次側コア111および二次側コア121の全周に一系統ずつの一次側コイル112および二次側コイル122をそれぞれ巻回した例を示した。しかし、一次側コア111および二次側コア121の全周を1/3毎(すなわち120°毎)の領域に分割し、各領域毎に個別のコイルを巻回してもよい。すなわち、トランス10を三相の高周波トランスとしてもよい。また、一次側コイル112および二次側コイル122に通流させる交流電流の周波数は、可聴周波を超える20kHz以上の周波数であることが望ましいが、それ以下の周波数であってもよい。
【0017】
ところで、近年、インホイールモータを採用した電気自動車等の開発が進んでおり、インホイールモータには、アウターローター型モータを適用することが有望視されている。図1および図2に示した一次側コア111および二次側コア121の形状は、この種のアウターローター型モータの固定子鉄心の形状と同様である。アウターローター型モータの固定子鉄心は、今後の量産効果により、コストダウンしてゆくと考えられる。本実施形態においては、このようなアウターローター型モータの固定子鉄心を一次側コア111および二次側コア121として流用できるため、トランス10を安価に構成することができる。
【0018】
[第2実施形態]
図3は、好適な第2実施形態による電力変換器20の斜視図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図3において電力変換器20は、トランス10と、一次回路103(第1の回路)と、二次回路203(第2の回路)と、を備えている。ここで、トランス10は、上述した第1実施形態において、三相の高周波トランスとして説明した構成の物である。なお、図3においては、図1と同様に、一・二次間コア131および結束板5を部分的に省略している。
【0019】
一次回路103および二次回路203は略長方形板状の形状を有し、本実施形態においては、水平方向に沿って配置されている。すなわち、一次回路103は、一次側コア111の中央部の空間に配置され、二次回路203は、二次側コア121の中央部の空間に配置されている。
【0020】
図4は、第2実施形態による電力変換器20の回路図である。
図4において、一次回路103は、平滑キャパシタ105と、パワーモジュール104と、コントローラ108と、インダクタ2と、を備えている。また、二次回路203は、平滑キャパシタ205と、パワーモジュール204と、コントローラ208と、を備えている。
【0021】
一次側コイル112は3組の巻線(符号なし)に分割され、各巻線の一端はパワーモジュール104に接続され、他端は相互に接続され中性点(符号なし)を形成している。同様に、二次側コイル122も3組の巻線(符号なし)に分割され、各巻線の一端はパワーモジュール204に接続され、他端は相互に接続され中性点(符号なし)を形成している。
【0022】
一次回路103には直流電圧が印加され、平滑キャパシタ105は、該直流電圧を平滑化する。パワーモジュール104は、6個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、符号なし)をブリッジ状に接続し、各IGBTに逆並列にダイオード(符号なし)を接続したものである。コントローラ108は、パワーモジュール104内の各IGBTのオン/オフ状態を制御するスイッチングパルスを出力する。
【0023】
例えば、電力が一次側から二次側に向かう場合、コントローラ108は、パワーモジュール104をインバータとして機能させるように上述したスイッチングパルスを出力する。この場合、パワーモジュール104は、高周波の三相交流電圧をトランス10の一次側コイル112に印加する。その際、トランス10は、一次側コイル112に通流される高周波交流電流を磁気エネルギーに変換し、一次側コア111(図2参照)から一・二次間コア131を介して二次側コア121に伝達する。これにより、二次側コイル122には、三相高周波交流の誘導電流が発生する。
【0024】
二次回路203におけるパワーモジュール204は、一次回路103におけるパワーモジュール104と同様に構成されている。二次回路203におけるコントローラ208は、パワーモジュール204内の各IGBTのオン/オフ状態を制御するスイッチングパルスを出力する。
【0025】
例えば、電力が一次側から二次側に向かう場合、コントローラ208は、パワーモジュール204を同期整流回路として機能させるように上述したスイッチングパルスを出力する。これにより、パワーモジュール204は、誘起された三相交流電圧を直流電圧に変換する。その際、インダクタ2は、パワーモジュール104およびパワーモジュール204におけるIGBTのスイッチング損失を低減する役割を担う。平滑キャパシタ205は、パワーモジュール204から出力された直流電圧を平滑化する。
【0026】
また、電力が二次側から一次側に向かう場合、上述した動作とは逆に、コントローラ208はパワーモジュール204をインバータとして機能させ、コントローラ108はパワーモジュール104を同期整流回路として機能させる。そして、トランス10は、二次側コイル122に通流される高周波交流を磁気エネルギーに変換し、二次側コア121から一・二次間コア131を介して一次側コア111に伝達する。これにより、一次側コイル112に三相高周波交流の誘導電流が発生する。
【0027】
このように、電力変換器20は、三相DAB(Dual Active Bridge)として機能する。すなわち、一次回路103のコントローラ108が出力するスイッチングパルスを基準として、二次回路203のコントローラ208は、パワーモジュール204に供給するスイッチングパルスの位相を設定する。これにより、一次回路103と二次回路203の間で変換される電力の絶対値および電力の向きを自在に設定することができ、電力変換器20は、双方向絶縁DC/DCコンバータとしての機能を有する。
【0028】
図4に示した例においては、パワーモジュール104,204にスイッチング素子としてIGBTを適用したが、IGBT以外のスイッチング素子、例えばSiC MOSFET(Silicon Carbide Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やGaN等を適用してもよい。また、電力変換器20の回路トポロジに関しても、三相DABに限定されない。例えば、二次側のパワーモジュール204に代えて、ダイオードブリッジによる整流回路を適用してもよい。また、単相フルブリッジ回路や単相ハーフブリッジ回路、フォワードコンバータ構成等を適用することもできる。本実施形態によれば、トランス10の中央部の空間を有効利用して一次回路103および二次回路203を実装できるため、電力変換器20全体の体積を小さくすることが可能である。
【0029】
[第3実施形態]
図5は、好適な第3実施形態による電力変換器30の模式的な断面図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図5において、電力変換器30は、トランス10と、冷却ファン3と、複数の支持具4と、底板6と、一次回路103と、二次回路203と、を備えている。
【0030】
トランス10、一次回路103および二次回路203の構成は上述した第2実施形態のものと同様である。すなわち、これらの要素は三相DABとして機能する。但し、本実施形態において、一次回路103および二次回路203は鉛直方向に立設されている。支持具4は略L字状の部材であり、トランス10の底部に周回方向に沿って断続的に装着され、トランス10を底板6に固定する。これにより、トランス10と底板6との間には空隙(符号なし)が形成される。
【0031】
上述のように、一次側コイル112および二次側コイル122は共に三相のコイルである。従って、一次側コイル112と一次回路103とは、3本の出力線(符号なし)によって接続されている。同様に、二次側コイル122と二次回路203とは、3本の出力線(符号なし)によって接続されている。また、一次回路103に直流電力を伝送する入力ケーブル(符号なし)と、二次回路203から直流電力を取り出す出力ケーブル(符号なし)とは、それぞれトランス10と底板6の空隙から引き出される。
【0032】
冷却ファン3は、一次回路103の上方に配置されている。冷却ファン3を駆動すると、白抜きの矢印で示す向きに気流が発生する。すなわち、トランス10と底板6の空隙から流入した空気は、二次回路203、一次回路103、冷却ファン3を順次介して上方に排気される。ヒートシンク106,206は、パワーモジュール104,204にそれぞれ密着する長方形板状の基材(符号なし)と、基材の表面に鉛直方向に沿って形成された板状のフィン(符号なし)と、を有している。
【0033】
上記構成において、冷却ファン3が回転すると、トランス10と底板6の間の空隙から流れ込んだ風はヒートシンク206およびヒートシンク106に形成されたフィンに沿って上方向に流れ、パワーモジュール104,204において生じた発熱を効率良く冷却することが可能である。
【0034】
[第4実施形態]
図6は、好適な第4実施形態によるトランス40の要部の模式図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
トランス40の全体構成は第1実施形態のもの(図1図2参照)と同様である。但し、本実施形態において、一次側コイル112および二次側コイル122は図6に示すように構成されている。なお、同図は一点鎖線で示す一・二次間コア131を取り外した状態を示す。
【0035】
図6において、一次側コア111の各突起部113には一次側コイル112が3ターンずつ巻回されている。一方、二次側コア121の突起部123には、二次側コイル122が2ターンずつ巻回されている。図6の構成によれば、トランス40の一次:二次の巻数比は3:2となるため、一次側印加電圧に対し二次側に一次側の2/3の電圧を出力することができる。なお、図6に示した例では巻線比を3:2としたが、他の巻数比を採用してもよい。
【0036】
[実施形態の効果]
以上のように好適な実施形態によるトランス10,40は、円筒状の第1の円筒部(115)と、第1の円筒部(115)の周面から突出する複数の第1の突起部(113)と、を有する第1の鉄心(111)と、円筒状の第2の円筒部(125)と、第2の円筒部(125)の周面から突出する複数の第2の突起部(123)と、を有し、第1の鉄心(111)に対して同軸に配置された第2の鉄心(121)と、第1の突起部(113)に巻回された第1の巻線(112)と、第2の突起部(123)に巻回された第2の巻線(122)と、各々の第1の突起部(113)と、対応する各々の第2の突起部(123)との間に磁路を形成する接続鉄心(131)と、を備える。これにより、モータの固定子鉄心を流用してトランス10,40を構成できるため、トランス10,40の製造コストを低減できる。
【0037】
また、第1の巻線(112)は、3本の巻線に分割され、第2の巻線(122)は、他の3本の巻線に分割されていると一層好ましい。これにより、三相モータ用の固定子鉄心を一層流用しやすくなる。
【0038】
また、トランス10,40は、第1の鉄心(111)と接続鉄心(131)とを密着させ、第2の鉄心(121)と接続鉄心(131)とを密着させる密着部材(5)をさらに備えると一層好ましい。これにより、トランス10,40の磁気回路における磁気抵抗を低減し、損失を低減できる。
【0039】
また、第1の巻線(112)の巻回数と、第2の巻線(122)の巻回数とを異ならせても好ましい。これにより、トランス10,40の一次側および二次側の電圧比を任意に設定できる。
【0040】
また、電力変換器20,30は、上述のトランス10,40と、第1の巻線(112)に接続された第1の回路(103)と、第2の巻線(122)に接続された第2の回路(203)と、を備え、第1の回路(103)および第2の回路(203)は、第1の鉄心(111)または第2の鉄心(121)の内側の空間に設けられている。これにより、電力変換器20,30の体積を小さくすることができる。
【0041】
また、電力変換器30において第1の鉄心(111)と第2の鉄心(121)とは、縦方向に固定され、第1の回路(103)と第2の回路(203)とは、縦向きに配置され、第1の鉄心(111)または第2の鉄心(121)の内側に設けられ、下から上に向かって送風することにより第1の回路(103)および第2の回路(203)を冷却する冷却ファン3をさらに備えると一層好ましい。これにより、第1の回路(103)と第2の回路(203)とを効率的に冷却でき、電力変換器30の体積を一層小さくすることができる。
【0042】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0043】
(1)上記各実施形態においては、アウターローター型モータの固定子鉄心を一次側コア111および二次側コア121として適用可能にするため、図2に示したように突起部113,123は、一次側円筒部115および二次側円筒部125の外周側に形成されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、インナーローター型モータの固定子鉄心を一次側コア111および二次側コア121として適用してもよい。すなわち、突起部113,123を、一次側円筒部115および二次側円筒部125の内周側に形成してもよい。
【0044】
(2)上記各実施形態においては、図2に示したように、上下方向に対向する突起部113,123のペア毎に、一枚の一・二次間コア131を配置するため、複数の一・二次間コア131が必要であった。しかし、全ての突起部113,123の外周面に接する一個の円筒状磁性体によって一・二次間コアを構成してもよい。この場合、左右方向(図1における周回方向)への磁束の漏れを抑制するため、円筒状磁性体には上下方向に沿ってスリットを形成するとよい。
【0045】
(3)また、第1,第4実施形態のトランス10,40は、第2,第3実施形態の電力変換器20,30のみならず、冷凍機、空気調和機、工業機械、電気自動車、鉄道車両、船舶、エレベータ、エスカレータ等、種々の電気機器に適用することができる。これにより、これらの電気機器においては、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
2 インダクタ
3 冷却ファン
4 支持具
5 結束板(密着部材)
6 底板
10 トランス
10,40 トランス
20 電力変換器
20,30 電力変換器
30 電力変換器
40 トランス
103 一次回路(第1の回路)
104,204 パワーモジュール
105,205 平滑キャパシタ
106,206 ヒートシンク
108,208 コントローラ
111 一次側コア(第1の鉄心)
111 一次側コア(第1の鉄心)
112 一次側コイル(第1の巻線)
113 突起部(第1の突起部)
115 一次側円筒部(第1の円筒部)
121 二次側コア(第2の鉄心)
122 二次側コイル(第2の巻線)
123 突起部(第2の突起部)
125 二次側円筒部(第2の円筒部)
131 一・二次間コア(接続鉄心)
203 二次回路(第2の回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6