(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】環境形成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2021090471
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴之
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-092700(JP,U)
【文献】特開平04-115138(JP,A)
【文献】特開平06-272355(JP,A)
【文献】実開平04-001923(JP,U)
【文献】中国実用新案第211718079(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 - 17/04
E06B 7/14
E06B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と扉とに囲まれた領域の一部又は全部であって、物品を配置する物品配置室を有し、当該物品配置室を所定の環境に調節可能な環境形成装置において、
前記扉に取り付けられた掻き出し部材及び露受け部材を有し、
前記掻き出し部材が、前記本体部の天井及び/又は前記天井に付着する水に当たる様に配置されていることを特徴とする環境形成装置。
【請求項2】
前記扉は、開き戸であることを特徴とする請求項1に記載の環境形成装置。
【請求項3】
前記露受け部材は、前記物品配置室の幅方向の略全域に渡る長さを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境形成装置。
【請求項4】
前記露受け部材と前記扉とによって形成される溝、又は前記露受け部材によって形成される溝を有し、
前記扉には、前記本体部への取付け側の辺と、自由端側の辺があり、
前記溝の底は、前記自由端側から前記取付け側に向かって下方向に傾斜した姿勢であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品配置室の内部に所望の環境を形成することができる環境形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境形成装置の一例として、環境試験装置が知られている。環境試験装置は、試験室(物品配置室)を有しており、温度環境(例えば、高温や低温)や湿度環境(例えば、高湿度や低湿度)等の所定の環境を試験室内に人工的に作り出すことができるものである。
一般に、環境試験装置には扉があり、当該扉によって試験室が開閉される。そして扉を開いて物品を出し入れする。
即ち一般的な環境試験装置は、本体部と扉とを有し、試験室は本体部と扉によって囲まれた空間の一部又は全部である。本体部は、少なくとも一面が開放されており、当該開放部に扉が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境試験装置の試験室(物品配置室)は、一般に、断熱壁で構成される本体部と扉で囲われて構成されている。しかしながら、本体部と扉との境界部分は、構造上、断熱性能が他の領域に比べて劣る傾向にある。
そのため、扉の近傍に位置する本体部の一部分に、結露が生じる場合がある。例えば試験室内を高温高湿環境に調節した場合、本体部内の温度及び湿度は、外部よりも高いものとなる。そして本体部と扉との境界部分は断熱性が劣るので、外部の気温の影響により、境界部分近傍の本体部内壁の温度が他の領域よりも低くなり、境界部分の空気が境界部分近傍の本体部内壁で冷却される。その結果、本体部と扉との境界部分近傍の本体部内壁に結露が生じることとなる。
【0005】
そのため、使用者が扉を開いたときに、試験室の天井からしずくが落ちる場合があり、しずくが使用者に当たったり、しずくが目の前に落ちたりして、使用者に不快感を与える場合がある。また落下したしずくが、被試験物等の物品にかかる場合もある。
【0006】
本発明は、従来技術の上記した課題を解決するものであり、扉を開けた際におけるしずくの落下を抑制することができる環境形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、本体部と扉とに囲まれた領域の一部又は全部であって、物品を配置する物品配置室を有し、当該物品配置室を所定の環境に調節可能な環境形成装置において、前記扉に取り付けられた掻き出し部材及び露受け部材を有し、前記掻き出し部材が、前記本体部の天井及び/又は前記天井に付着する水に当たる様に配置されていることを特徴とする環境形成装置である。
【0008】
本態様の環境形成装置は、物品を配置する物品配置室を有し、当該物品配置室を所定の環境に調節することができる。
物品配置室は、本体部と扉とに囲まれた領域の一部又は全部であり、扉を開くことによって内部を開放することができる。
本態様の環境形成装置は、扉に、掻き出し部材と露受け部材が設けられている。そして掻き出し部材が、本体部の天井や、天井に付着する水に当たる様に配置されている。
そのため、扉を開く際に扉と共に掻き出し部材が移動し、掻き出し部材が天井や天井に付着する水を撫でる。その結果、天井に付着していたしずくが掻き出し部材によって掻き落とされ、露受け部材に入る。
【0009】
上記した態様において、前記扉は、開き戸であることが望ましい。
【0010】
ここで開き戸は、扉が揺動する構造となっているものである。開き戸は、例えば一辺側がヒンジ等によって本体部側に取り付けられており、他端側が本体部から近接・離反する方向に移動する構造の扉である。
【0011】
上記した各態様において、前記露受け部材は、前記物品配置室の幅方向の略全域に渡る長さを有していることが望ましい。
【0012】
本態様によると、天井の全幅に付着したしずくを受け入れることができる。
【0013】
上記した各態様において、前記露受け部材と前記扉とによって形成される溝、又は前記露受け部材によって形成される溝を有し、前記扉には、前記本体部への取付け側の辺と、自由端側の辺があり、前記溝の底は、前記自由端側から前記取付け側に向かって下る方向に傾斜した姿勢であることが望ましい。
【0014】
本態様によると、集められたしずく(水)を、扉の取付け側に集めて排水することができる。
扉の取付け側は、扉を開閉する際の移動量が少なく、使用者が注目する機会が少ない。言い換えると、扉の取付け側は、目立たない。本態様の環境形成装置は、目立たない様に結露水を排水することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の環境形成装置は、扉を開けた際におけるしずくの落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の環境形成装置の斜視図である。
【
図2】
図1の環境形成装置の物品配置室周辺を概念的に示す断面図である。
【
図4】(a)は、
図1の環境形成装置の導水部材の一部断面斜視図であり、(b)は、そのA方向の端面図である。
【
図5】(a)乃至(c)は、
図1の環境形成装置の扉と本体部の境界近傍の断面図であり、扉を開く際における天井壁近傍の様子を示す。
【
図6】(a)乃至(d)は、導水部材の変形例の断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態の環境形成装置の本体部と扉の境界部分を物品配置室側から観察した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の環境形成装置1について説明する。本実施形態の環境形成装置1は、具体的には環境試験装置である。
図1、
図2、
図3に示すように、本実施形態の環境形成装置1は、断熱壁2で形成された本体部3を有している。本体部3は、天井壁5、底壁6、奥壁7、及び左側壁8、右側壁10を有し、前面側が開放されている。本体部3は、前面側に開口11を有する筐体である。
本体部3の開口11を覆う扉15が設けられている。扉15についても断熱性を有している。
【0018】
扉15は、四角形の開き戸であり、
図1の様に、一辺側がヒンジ16を介して本体部3に支持されている。扉15は、ヒンジ16側が取付け側辺17であり、他方側が自由端側辺18である。扉15は、取付け側辺17側がヒンジ16を介して本体部3に固定され、自由端側辺18側が大きく揺動する。
【0019】
本実施形態では、本体部3及び扉15によって断熱槽が形成されている。断熱槽の内部には
図2の様に仕切り壁20があり、仕切り壁20によって、断熱槽内が物品配置室22と空調部25に分かれている。なお本実施形態の環境形成装置1は、環境試験装置として使用されるものであり、物品配置室22は、試験室として使用される。物品配置室22には、被試験物(物品)が載置される。
図1、
図3の様に、物品配置室22の底壁6であって、扉15の取付け側辺17の近傍に、排水孔40が設けられている。
【0020】
本実施形態では、本体部3と扉15とに囲まれた領域の一部が、物品を配置する物品配置室22となっている。より具体的には、断熱槽内であって、扉15と仕切り壁20の間の空間が物品配置室22である。
本発明はこの構成に限定されるものではなく、仕切り壁20がなく、本体部3と扉15とに囲まれた領域の全部が物品配置室であってもよい。この場合、別途の空調機器から、温度等が調節された空気が、物品配置室に供給されることとなる。
仕切り壁20には、上下の端部に開口が設けられている。上部の開口は空気吹き出し部26として機能し、下部の開口は、空気導入部23として機能する。
物品配置室22と空調部25は、空気吹き出し部26と空気導入部23の二か所で連通している。
【0021】
空調部25は、物品配置室22と環状に連通する空調通風路であり、内部に空調機器(環境調整機器)27と送風機30が配置されている。空調機器27は、加湿装置31、冷却装置32及び加熱装置33によって構成されている。
送風機30を起動すると、物品配置室22内の空気が空気導入部23から空調部25内に導入される。そして空調部25が通風状態となり、空調機器27に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、空気吹き出し部26から物品配置室22内に調整後の空気が吹き出される。
【0022】
また空気吹き出し部26の近傍に、温度センサー37と湿度センサー38が設けられている。
温度センサー37と湿度センサー38の信号は、図示しない制御装置に入力される。そして制御装置で、温度センサー37と湿度センサー38の各検出値と各設定値が比較される。
環境形成装置1を使用する際には、送風機30を運転して空調部25内を通風状態とし、温度センサー37及び湿度センサー38の検出値が、設定環境の温度及び湿度に近づく様に、空調機器27が制御される。
即ち送風機30を運転することによって、物品配置室22内の空気が、空気導入部23から空調部25に導入され、空調部25内の空調機器27を通過して温度・湿度が整えられる。そして温度・湿度が調整された空気が、空気吹き出し部26から物品配置室22に戻され、物品配置室22内に所望の温度・湿度の環境が作られる。
【0023】
次に、本実施形態の環境形成装置1の特徴的構成について説明する。
本実施形態の環境形成装置1は、扉15の内面側に、導水部材50が設けられている。
導水部材50は、
図4の様に、露受け部材51と、掻き出し部材52によって構成されている。
露受け部材51は、
図5の様に、天井から落下する結露を受け止めて集め、扉15の幅方向に水を流す溝70を構成する部材であり、取付け姿勢を基準として垂直壁となる縦壁53と、縦壁53に連続し水平壁となる底壁55と、底壁55に連続し垂直壁となる取り付け壁56を有している。
【0024】
図4(a)の様に、露受け部材51の長手方向の一端には封鎖壁57がある。
図4(b)の様に、露受け部材51の長手方向の他端は開放部61となっている。
露受け部材51の全長Lは、本体部3の開口11の幅WAよりもわずかに短い(
図1参照)。即ち、露受け部材51は、物品配置室22の幅方向の略全域に渡る長さを有している。露受け部材51の全長Lは、本体部3の開口11の幅WA(物品配置室22の幅と同じ)の80パーセント以上であることが望ましく、より望ましくは、90パーセント以上である。
【0025】
掻き出し部材52は、帯状の部材である。掻き出し部材52の全長は、露受け部材51の全長と略等しい。掻き出し部材52の上端は、露受け部材51の上端よりも上方に突出するよう設けられている。
掻き出し部材52の素材は限定されるものではないが、軟質の素材であり、且つ吸水性を有しないものであることが望ましい。本実施形態の掻き出し部材52は、ゴムによって作られている。
【0026】
掻き出し部材52は、
図4(a)の様に、露受け部材51の縦壁53に固定されている。掻き出し部材52は、露受け部材51の長手方向に沿って、縦壁53に取り付けられている。掻き出し部材52の一部が、露受け部材51の縦壁53から上に突出する。掻き出し部材52の露受け部材51から上方に突出する部分の長さは、露受け部材51の上端と天井壁5の距離以上である。
【0027】
導水部材50は、
図1、
図2の様に扉15の内壁60に取り付けられている。導水部材50は、露受け部材51の上端が本体部3の天井壁5よりもやや低い位置になるように、扉15の内壁60に取り付けられている。また、導水部材50は、掻き出し部材52の露受け部材51から上方に突出する部分の上端側が、本体部3の天井壁5に接する位置になるように、扉15の内壁60に取り付けられている。
また導水部材50の扉15の幅方向の取り付け位置は、扉15を閉じた際に、導水部材50が、本体部3の開口11内に入り込む位置である。
そのため、扉15を閉じると、導水部材50が本体部3内に入り込み、露受け部材51及び扉15の内壁60によって構成される溝70が、本体部3の天井壁5の下であって、開口11近傍に位置する。
導水部材50は、自由端側辺18から取付け側辺17側に向かってわずかに下方向に傾斜した姿勢で取り付けられている。
【0028】
導水部材50が扉15の内壁60に取り付けられた状態では、
図5の様に、扉15の内壁60と、導水部材50の底壁55及び縦壁53によって、3面が覆われた溝70が形成される。
具体的には、導水部材50の取り付け壁56が、図示しないネジ等によって扉15の内壁60に固定されている。縦壁53と取り付け壁56との間に縦壁53と取り付け壁56と直交する底壁55があるので、縦壁53は、底壁55を挟んで扉15の内壁60に対して対向する平行姿勢となる。
露受け部材51の底壁55は、溝70の底壁として機能する。
溝70は、扉15の内壁60の幅方向にのびる。溝70の上面は開放されている。
前記したように、導水部材50は、自由端側辺18から取付け側辺17側に向かってわずかに下方向に傾斜した姿勢で取り付けられているため、溝70は、自由端側辺18から取付け側辺17側に向かってわずかに下方向に傾斜した姿勢となっている。言い換えると、溝70の底壁55は、自由端側辺18から取付け側辺17側に向かってわずかに下方向に傾斜した姿勢となっている。そのため露受け部材51には、扉15の自由端側から取付け側に向かって水が流れる勾配がある。
【0029】
溝70は、本体部3の天井壁5の幅方向にのび、溝70の開放面が天井壁5に面する。
掻き出し部材52は折れ曲がった状態又は圧縮された状態となり、掻き出し部材52の上端側は天井壁5と接する。
【0030】
この状態で環境試験を実施すべく、物品配置室22内を高温高湿環境に調節する。
前記した様に、本体部3と扉15との境界部分は断熱性が劣るので、外部の気温の影響により、物品配置室22の境界部分の内壁の温度が低くなり、境界部分の空気が冷却される。その結果、
図5(a)の様に、本体部3と扉15との境界部分の天井壁5に結露100が生じる。
結露100が成長すると、天井壁5から離れて落下し、下の露受け部材51で構成される溝70に捕捉される。また、成長した結露100の一部は、扉15の内壁60を伝って溝70に捕捉される。
【0031】
扉15を開く動作を行うと、
図5(b)の様に、掻き出し部材52が扉15と共に開き方向に移動する。ここで、掻き出し部材52の上端が、天井壁5と接しているので、掻き出し部材52が移動することによって、天井壁5が撫でられ、天井に付着していた結露100のしずくが掻き出し部材52によって掻き落とされる。掻き落とされたしずくは、下の露受け部材51で構成される溝70に捕捉される。
前記したように、掻き出し部材52の上端側が本体部3の天井壁5に接する位置になるように、掻き出し部材52は配置されている。掻き出し部材52の上端側が天井壁5と接しているので、掻き出し部材52に荷重が掛かる。
ここで本実施形態では、露受け部材51から突出していない掻き出し部材52の下部領域が、露受け部材51の縦壁53で支持されているから、掻き出し部材52の露受け部材51から突出している部分に荷重がかかる。そのため、扉を開く際に、掻き出し部材52の上端側が天井壁5に沿って移動し、掻き出し部材52が天井壁5に付着した結露100のしずくを掻き出すことができる。
【0032】
図5(c)の様に、扉15の開く動作が進むと、開口11近傍の天井壁5の結露100は、すっかり拭い落とされ、露受け部材51と扉15で構成された溝70に入る。
【0033】
そしてしずくが集まった水101は、傾斜に従って溝70の長手方向に流れ、扉15の取付け側辺17の近傍に至る。露受け部材51の取付け側辺17側の端部は、開放部61となっている。
そのため、集められた水101の一部は、扉15の取付け側辺17側から流れ出し、下に落下し、図示しない受け皿等で受けられる。排水されずに残った水101は、扉15が閉じられた後、
図3の様に本体部3の左側壁8を伝って下に流れ落ちる。
なお、扉15が閉じられた状態で集められた水101は、
図3の様に本体部3の左側壁8を伝って下に流れ落ちる。
本実施形態では、物品配置室22の底壁6であって、扉15の取付け側辺17の近傍に、排水孔40が設けられている。
取付け側辺17側から流れ出した水101のうち、左側壁8を伝って下方へ流れた水は、排水孔40の近傍に流れ落ち、排水孔40から排水される。
【0034】
本実施形態の環境形成装置1によると、扉15を開いたときには、開口11の近傍の天井壁5の結露が拭い去れており、使用者にしずくが落下することが抑制される。また内部の物品に水がかかることも抑制される。
また一般に、開き戸のヒンジ側は、注目されにくい。本実施形態の環境形成装置1は、扉15の取付け側辺17側に結露水を集めて伝い落すので、水が目立たない。
【0035】
以上説明した導水部材50では、扉15の内壁60を溝70の一部として利用したが、
図6(a)の様に、露受け部材だけで溝70を構成してもよい。
即ち、
図6(a)に示す導水部材71は、第1縦壁72と、底壁55と、第2縦壁73を有し、これらによって溝70が形成されている。
【0036】
以上説明した導水部材50では、掻き出し部材52の形状が帯状である。導水部材50では、掻き出し部材52の当接ラインが線状であり、線状の部位が天井壁5と接して結露100を除去する。
掻き出し部材52は、必ずしも帯状である必要はなく、櫛状やはけ状であってもよい。
図6(b)に示す導水部材75では、はけ状の掻き出し部材76が採用されている。
導水部材75では、多数の繊維77が天井壁5と接して結露100を除去する。また結露100は、分子間力によって重力に抗して天井壁5に付着しているので、結露100に繊維77が触れると、繊維77に導かれて天井壁5を離れ、溝70に流れ込む。
【0037】
溝70の断面形状は、限定されるものではなく、
図6(c)の様な傾斜面であってもよい。即ち、露受け部材の底壁85は、縦壁53から扉15の内壁60に向かって傾斜するように形成されてもよい。
また、溝70の断面形状は、
図6(d)の様な段状であってもよい。即ち、露受け部材の底壁86は、縦壁53から扉15の内壁60に向かって階段状に形成されていてもよい。
図6(c)、
図6(d)に示した溝70においては、捕捉された水101が、下部の断面積が狭い領域に集められるので、水位が高くなり、流れやすい。
【0038】
以上説明した実施形態では、導水部材50、71、75を傾斜姿勢で取り付けることによって溝70を扉15の幅方向に傾斜させた。
一方、掻き出し部材52、76は、全長に渡ってその上端が天井壁5と接することが望ましい。ここで溝70の傾斜角度が大きい場合は、傾斜の上部側に位置する部分と下部側に位置する部分で、掻き出し部材52の天井壁5との接触量が過度に異なってしまう場合がある。
このような場合には、掻き出し部材52の露受け部材51からの出しろ(突出量)を長手方向で変え、傾斜の下部側の出しろを、上部側の出しろよりも大きくすることが望ましい。
あるいは掻き出し部材52、76自体の上下方向の幅を長手方向で変え、傾斜の下部側の幅を上部側の幅よりも大きくしてもよい。
あるいは縦に長い長孔等を介して掻き出し部材52、76を取り付けるなどして、掻き出し部材52の露受け部材51からの出しろ(突出量)を調節することができる構成を採用することも推奨される。
【0039】
以上説明した実施形態では、導水部材50、71、75を傾斜姿勢で取り付けることによって溝70を傾斜させたが、導水部材50、71、75の底自体が長手方向に傾斜していてもよい。
露受け部材51の全長Lは、本体部3の開口11の幅WAよりも数mmから数十mmだけ短くてもよい。
【0040】
以上説明した実施形態の扉15は、いずれも開き戸であるが、形状を工夫することにより、引き戸にも応用することができる。
図7は、引き戸80に導水部材81を取り付けた例を示す。
引き戸80が、図示しないレールに沿って矢印の方向に移動されることにより、本体部3の開口が開かれる。
導水部材81は、溝状の露受け部材82を有し、当該の露受け部材82の長手方向の端部に、短い掻き出し部材83が設けられている。
引き戸80を開くべく矢印方向に移動させると、掻き出し部材83が直線的に移動し、天井壁5の結露を除去する。
以上説明した実施形態においては、掻き出し部材52、76、83が、天井壁5に接触して結露を除去するものであったが、本発明はこの構成には限られない。掻き出し部材52、76、83の上端側が、天井壁5に付着した結露のしずくに触れる位置になるように掻き出し部材を取り付け、掻き出し部材がしずくに触れることにより、しずくを落下させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 環境形成装置
2 断熱壁
3 本体部
5 天井壁
11 開口
15 扉
16 ヒンジ
17 取付け側辺
18 自由端側辺
22 物品配置室
40 排水孔
50、71、75、81 導水部材
51、82 露受け部材
52、76、83 掻き出し部材
70 溝
76 掻き出し部材
100 結露