(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
F02M25/08 311A
F02M25/08 311C
F02M25/08 301T
(21)【出願番号】P 2021185057
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】嶺澤 頌吾
(72)【発明者】
【氏名】木里 善樹
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 達哉
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149620(JP,A)
【文献】特開2013-151875(JP,A)
【文献】特開2021-017839(JP,A)
【文献】特開2011-214554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
前記蒸発燃料を取り込むチャージポートと、
前記蒸発燃料を排出するパージポートと、
大気に開放された大気ポートと、
前記チャージポート及び前記パージポートが接続された主室と、
前記大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続された副室と、
前記蒸発燃料の流路において前記主室と前記副室との間に配置されると共に、前記主室及び前記副室それぞれと接続された中間室と、
前記主室に収納された第1吸着材と、
前記副室に収納された第2吸着材と、
前記中間室に収納された第3吸着材と、
を備え、
前記第3吸着材全体の吸着能力は、前記第1吸着材全体の吸着能力、及び前記第2吸着材全体の吸着能力の双方よりも小さ
く、
前記主室の前記チャージポートとは反対側の端部に連結された流路構成部材と、
前記流路構成部材を前記主室に向けて押圧するスプリングと、
をさらに備え、
前記中間室は、前記流路構成部材の内部に配置される、キャニスタ。
【請求項2】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
前記蒸発燃料を取り込むチャージポートと、
前記蒸発燃料を排出するパージポートと、
大気に開放された大気ポートと、
前記チャージポート及び前記パージポートが接続された主室と、
前記大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続された副室と、
前記蒸発燃料の流路において前記主室と前記副室との間に配置されると共に、前記主室及び前記副室それぞれと接続された中間室と、
前記主室に収納された第1吸着材と、
前記副室に収納された第2吸着材と、
前記中間室に収納された第3吸着材と、
を備え、
前記第3吸着材全体の吸着能力は、前記第1吸着材全体の吸着能力、及び前記第2吸着材全体の吸着能力の双方よりも小さ
く、
前記主室と前記副室とを連通させる連通路をさらに備え、
前記連通路は、気体の流れ方向を曲げるS字状のクランク部を有し、
前記クランク部では、前記主室を通過した気体の流れ方向が、前記主室での気体の流れ方向に直交する前記主室の径方向から、前記主室における気体の流れ方向と平行な方向に曲げられた後、さらに前記主室の前記径方向に曲げられ、
前記中間室は、前記連通路の前記クランク部内で、前記気体の流れ方向が前記主室における気体の流れ方向と平行となる中間部分に配置され、
前記クランク部の前記中間部分は、前記主室の前記径方向において、前記主室と前記副室との間に配置されている、キャニスタ。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記中間室において、気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径D[mm]に対する、気体の流れ方向の長さL[mm]の比L/Dは、1以下である、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1
~請求項3の何れか1項に記載のキャニスタであって、
前記中間室の気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径は、前記副室の気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径以下であり、かつ、前記主室の気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径未満である、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクには、蒸発した燃料の大気放出を防ぐキャニスタが装着される。キャニスタは、蒸発燃料を吸着材に吸着させると共に、吸引した空気により吸着材から燃料を脱離してパージを行い、エンジンに供給する。
【0003】
キャニスタは、通常、チャージポートが接続された主室と、この主室に接続された副室とを少なくとも有する。主室及び副室には、それぞれ吸着材が収納される。このようなキャニスタにおいて、大量の蒸発燃料がチャージポートから供給されると、主室及び副室で吸着し切れなかった蒸発燃料が大気ポートから放出される可能性がある。
【0004】
そこで、副室からの蒸発燃料の大気放出を防止するため、吹き抜け防止部を設けたキャニスタが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のキャニスタでは、吹き抜け防止部が大気ポートに隣接して配置されている。そのため、蒸発燃料が大気放出されるおそれがある。
【0007】
本開示の一局面は、蒸発燃料の大気放出を抑制できるキャニスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタである。キャニスタは、蒸発燃料を取り込むチャージポートと、蒸発燃料を排出するパージポートと、大気に開放された大気ポートと、チャージポート及びパージポートが接続された主室と、大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続された副室と、蒸発燃料の流路において主室と副室との間に配置されると共に、主室及び副室それぞれと接続された中間室と、主室に収納された第1吸着材と、副室に収納された第2吸着材と、中間室に収納された第3吸着材と、を備える。第3吸着材全体の吸着能力は、第1吸着材全体の吸着能力、及び第2吸着材全体の吸着能力の双方よりも小さい。
【0009】
このような構成によれば、中間室によって、主室で吸着し切れなかった蒸発燃料の副室への移行を遅延させることができる。そのため、蒸発燃料の大気放出を抑制できる。また、中間室における第3吸着材全体の吸着能力が第1吸着材全体の吸着能力及び第2吸着材全体の吸着能力よりも小さくされているため、中間室をコンパクトにすることができる。その結果、蒸発燃料の大気放出を抑制しつつ、キャニスタの大型化が抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、中間室において、気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径D[mm]に対する、気体の流れ方向の長さL[mm]の比L/Dは、1以下であってもよい。このような構成によれば、中間室の通気抵抗を低減できる。また、中間室の長さを低減できるため、キャニスタの大型化の抑制効果を促進できる。
【0011】
本開示の一態様では、中間室の気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径は、副室の気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径以下であり、かつ、主室の気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径未満であってもよい。このような構成によれば、中間室における第3吸着材の脱離性を高めることができる。その結果、蒸発燃料の再吸着時における中間室の吸着効果が高まり、蒸発燃料の大気放出の抑制効果を促進できる。
【0012】
本開示の一態様は、主室のチャージポートとは反対側の端部に連結された流路構成部材と、流路構成部材を主室に向けて押圧するスプリングと、をさらに備えてもよい。中間室は、流路構成部材の内部に配置されてもよい。このような構成によれば、流路の構造の一部を利用して中間室を形成できる。そのため、キャニスタの大型化の抑制効果を促進できる。
【0013】
本開示の一態様は、主室と副室とを連通させる連通路をさらに備えてもよい。中間室は、連通路内に配置されてもよい。このような構成によれば、連通路の一部を利用して中間室を形成できる。そのため、キャニスタの大型化の抑制効果を促進できる。
【0014】
本開示の一態様では、連通路は、気体の流れ方向を曲げるクランク部を有してもよい。中間室は、クランク部内に配置されてもよい。このような構成によれば、主室及び副室の構造を従来と同様とすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、連通路は、直線状に副室と並んで配置される直線部を有してもよい。中間室は、直線部内に配置されてもよい。このような構成によれば、中間室の配置及び第3吸着材の保持が容易となる。
【0016】
なお、「気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径」とは、各部屋の気体の流れ方向と垂直な断面と同じ面積Sの真円の直径(D=(S/π)1/2×2)を各部屋の気体の流れ方向で平均した値を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図2】
図2Aは、
図1のキャニスタにおける流路構成部材の模式的な斜視図であり、
図2Bは、
図2AのIIB-IIB線での模式的な断面図である。
【
図3】
図3Aは、
図1のIIIA-IIIA線での模式的な断面図であり、
図3Bは、
図1のIIIB-IIIB線での模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図1とは異なる実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図1とは異なる実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のキャニスタにおける隔離グリッドの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1Aに示すキャニスタ1は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。
【0019】
キャニスタ1は、チャージポート2Aと、パージポート2Bと、大気ポート2Cと、主室3と、副室4と、中間室5と、連通路6と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0020】
<ポート>
チャージポート2Aは、配管によって車両の燃料タンクに接続される。チャージポート2Aは、燃料タンクで発生した蒸発燃料をキャニスタ1内に取り込むように構成されている。
【0021】
パージポート2Bは、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管に接続される。パージポート2Bは、キャニスタ1内の蒸発燃料をキャニスタ1から排出し、エンジンに供給するように構成されている。
【0022】
大気ポート2Cは、配管を介して車両の給油口に接続され、大気に開放される。大気ポート2Cは、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート2Cは、外部空気(つまりパージ空気)を取り込むことで、キャニスタ1が吸着した蒸発燃料を脱離(つまりパージ)する。
【0023】
<主室>
主室3は、第1吸着材7を収納し、チャージポート2Aから取り込んだ蒸発燃料を吸着する。また、主室3は、吸着した蒸発燃料をパージポート2Bから排出する。
【0024】
主室3は、キャニスタ1の筐体10の内部に配置された第1フィルタ3Aと、第2フィルタ3Bと、第3フィルタ3Cとによって画定されている。第1フィルタ3Aは、主室3に接続されたチャージポート2Aと主室3の吸着材収納空間とを区画している。第2フィルタ3Bは、主室3に接続されたパージポート2Bと主室3の吸着材収納空間とを区画している。
【0025】
第3フィルタ3Cは、主室3に連結された流路構成部材11の内部空間と主室3の吸着材収納空間とを区画している。第3フィルタ3Cは、流路構成部材11を介して、第1スプリング12によってチャージポート2A及びパージポート2Bに向かって押圧されている。
【0026】
第1フィルタ3A、第2フィルタ3B、及び第3フィルタ3Cは、第1吸着材7を通過させない一方で、気体を通過させるように構成されている。つまり、フィルタ3A,3B,3Cは、第1吸着材7を主室3内に挟持している。
【0027】
<副室>
副室4は、第2吸着材8を収納し、中間室5及び連通路6を介して、主室3との間で気体の流通が自在となるように主室3に連通している。副室4は、気体の流れ方向が主室3と平行となるように、主室3の径方向において主室3と並ぶように配置されている。
【0028】
副室4は、キャニスタ1の筐体10の内部に配置された第1フィルタ4Aと、第2フィルタ4Bとによって画定されている。第1フィルタ4Aは、副室4に接続された大気ポート2Cと副室4の吸着材収納空間とを区画している。第2フィルタ4Bは、連通路6と副室4の吸着材収納空間とを区画している。
【0029】
第2フィルタ4Bは、樹脂製の格子状のグリッド13を介して、第2スプリング14によって大気ポート2Cに向かって押圧されている。副室4を画定する第1フィルタ4A及び第2フィルタ4Bは、主室3のフィルタ3A,3B,3Cと同様の機能を有する。
【0030】
<中間室>
中間室5は、第3吸着材9を収納し、蒸発燃料の流路において主室3と副室4との間に配置されている。
【0031】
中間室5は、主室3のチャージポート2Aとは反対側の端部(つまり第3フィルタ3C)に連結された樹脂製の流路構成部材11の内部に配置された第1フィルタ5A及び第2フィルタ5Bによって画定されている。つまり、中間室5は、流路構成部材11の内部に配置されている。流路構成部材11は、
図2A及び
図2Bに示すように、テーパ部11Aと、筒部11Bとを有する。
【0032】
テーパ部11Aは、主室3とは反対側に向かって縮径する内部空間11Cを有する部位である。テーパ部11Aは、第1スプリング12によって第3フィルタ3Cに押圧されている(
図1参照)。つまり、第1スプリング12は、流路構成部材11を主室3に向けて押圧している。
【0033】
テーパ部11Aの内部空間11Cには、リブ11Dが配置されている。リブ11Dは、蒸発燃料Fが通過可能な格子状に形成されている。リブ11Dは、第1フィルタ5Aを支持している。
【0034】
筒部11Bは、テーパ部11Aの主室3とは反対側の端部に接続されている。筒部11Bは、断面が円形の管体である。中間室5は、筒部11Bの内部空間の一部によって構成されている。
【0035】
第1フィルタ5Aは、テーパ部11Aの内部空間11Cと中間室5の吸着材収納空間とを区画している。第2フィルタ5Bは、連通路6と中間室5の吸着材収納空間とを区画している。
【0036】
第1フィルタ5A及び第2フィルタ5Bは、それぞれ、筒部11Bの内部に配置されている。また、第2フィルタ5Bは、樹脂製の格子状のグリッド15を介して、第3スプリング16によって主室3に向かって押圧されている。中間室5を画定する第1フィルタ5A及び第2フィルタ5Bは、主室3のフィルタ3A,3B,3Cと同様の機能を有する。
【0037】
中間室5は、テーパ部11Aの内部空間11Cを介して主室3と接続されている。また、中間室5は、連通路6を構成する空間を介して副室4と接続されている。つまり、中間室5と主室3との間、及び中間室5と副室4との間には、吸着材が配置されていないバッファ空間が存在する。このバッファ空間により、蒸発燃料の大気放出を遅延できる。
【0038】
<連通路>
連通路6は、中間室5と副室4とを連通させる空間である。副室4は、中間室5及び連通路6を介して主室3に連通されている。主室3と副室4とを接続する流路は、中間室5及び連通路6によって構成された流路のみである。
【0039】
チャージポート2Aから取り込まれた蒸発燃料は、主室3において第1吸着材7に吸着される。主室3で吸着しきれなかった蒸発燃料は、流路構成部材11のテーパ部11Aを通過して中間室5に移動し、中間室5において第3吸着材9に吸着される。
【0040】
さらに、中間室5で吸着しきれなかった蒸発燃料は、連通路6を通過して副室4に移動し、副室4において第2吸着材8に吸着される。蒸発燃料が吸着された気体は、大気ポート2Cから放出される。
【0041】
また、大気ポート2Cから給気することで、副室4、中間室5、及び主室3それぞれにおいて吸着材に吸着されていた蒸発燃料は、パージポート2Bからエンジンに排出される。その結果、蒸発燃料を含んだ空気がエンジンに供給される。
【0042】
<各部屋の寸法>
図1に示す、主室3における気体の流れ方向の長さL1、副室4における気体の流れ方向の長さL2、及び中間室5における気体の流れ方向の長さL3の関係は下記式(1)の通りである。
L2>L3、L1>L3 ・・・(1)
【0043】
つまり、中間室5の長さL3は、副室4の長さL2未満以下であり、かつ、主室3の長さL1未満である。なお、本実施形態では、L2<L1であるが、L2≧L1であってもよい。
【0044】
また、
図3A及び
図3Bに示す、主室3における気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径D1、副室4における気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径D2、及び中間室5における気体の流れ方向と垂直な断面における相当直径D3の関係は下記式(2)の通りである。
D2≧D3、D1>D3 ・・・(2)
【0045】
つまり、中間室5の相当直径D3は、副室4の相当直径D2以下であり、かつ、主室3の相当直径D1未満である。なお、本実施形態では、D2<D1であるが、D2≧D1であってもよい。
【0046】
中間室5において、相当直径D3[mm]に対する長さL3[mm]の比L3/D3は、1以下である。一方、副室4における相当直径D2[mm]に対する長さL2[mm]の比L2/D2、及び主室3における相当直径D1[mm]に対する長さL1[mm]の比L1/D1は、いずれも1より大きい。
【0047】
<吸着材>
第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9は、それぞれ、空気等と共にキャニスタ1に供給された蒸発燃料やブタンを吸着する。また、外部空気の導入により蒸発燃料やブタンを脱離する。脱離された蒸発燃料は、エンジンに供給される。
【0048】
第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9の素材としては、例えば活性炭等の公知のものが使用できる。活性炭としては、例えば、粒状の活性炭の集合体、ハニカム形状等に成形された成形活性炭、繊維状活性炭をシート状、直方体上、円柱状、角柱状に成形したもの等が用いられる。
【0049】
中間室5に収納されている第3吸着材9全体の吸着能力は、主室3に収納されている第1吸着材7全体の吸着能力、及び副室4に収納されている第2吸着材8全体の吸着能力の双方よりも小さい。
【0050】
ここで、「吸着材全体の吸着能力」は、吸着材における単位体積当たりの蒸発燃料の吸着可能量に、各部屋に収納されている吸着材の体積を乗じたものである。したがって、各部屋の吸着材を単位体積当たりの吸着量が異なるものに変えること、及び/又は各部屋に収納される吸着材の体積を変えることで、各部屋の吸着材全体の吸着能力を調整できる。
【0051】
したがって、第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9として、同種の吸着材が用いられてもよいし、異種の吸着材が用いられてもよい。
【0052】
中間室5はパージ後、蒸発燃料が吸着されていない状態にすることが求められる。そのため、中間室5の吸着能力が高過ぎるとパージ後に蒸発燃料が残り、その後の吸着性能に影響する。また、キャニスタ1の小型化の観点から、中間室5をコンパクトにすることも求められる。これらの観点から、中間室5の吸着能力が主室3よりも小さくされる。さらに、中間室5の吸着能力が小さくされることで、蒸発燃料の吸着材からの脱離性が向上する。
【0053】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)中間室5によって、主室3で吸着し切れなかった蒸発燃料の副室4への移行を遅延させることができる。そのため、蒸発燃料の大気放出を抑制できる。また、中間室5における第3吸着材9全体の吸着能力が第1吸着材7全体の吸着能力及び第2吸着材8全体の吸着能力よりも小さくされているため、中間室5をコンパクトにすることができる。その結果、蒸発燃料の大気放出を抑制しつつ、キャニスタ1の大型化が抑制できる。
【0054】
(1b)中間室5におけるL3/D3が1以下であることで、中間室5の通気抵抗を低減できる。また、中間室5の長さを低減できるため、キャニスタ1の大型化の抑制効果を促進できる。
【0055】
(1c)中間室5の相当直径D3が副室4の相当直径D2以下であり、かつ、主室3の相当直径D1未満であることで、中間室5における第3吸着材9の脱離性を高めることができる。その結果、蒸発燃料の再吸着時における中間室5の吸着効果が高まり、蒸発燃料の大気放出の抑制効果を促進できる。
【0056】
(1d)中間室5が流路構成部材11の内部に配置されることで、流路の構造の一部を利用して中間室5を形成できる。そのため、キャニスタ1の大型化の抑制効果を促進できる。
【0057】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図4に示すキャニスタ101は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。キャニスタ101は、チャージポート2Aと、パージポート2Bと、大気ポート2Cと、主室3と、副室4と、中間室105と、連通路106と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0058】
キャニスタ101のチャージポート2A、パージポート2B、大気ポート2C、主室3、副室4、及び吸着材7,8,9は、
図1のキャニスタ1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態では、主室3を区画する第3フィルタ3Cは、
図1の流路構成部材11に替えて、樹脂製の格子状のグリッド111によって押圧されている。
【0059】
<中間室>
中間室105は、蒸発燃料の流路において主室3と副室4との間に配置されると共に、主室3及び副室4それぞれと空間を介して接続されている。
【0060】
中間室105は、連通路106のクランク部106A内に配置されている。具体的には、中間室105は、クランク部106A内の中間部分に配置された第1フィルタ105Aと、第2フィルタ105Bとによって区画されている。
【0061】
第1フィルタ105Aは、連通路106の主室3に近い領域と中間室105の吸着材収納空間とを区画している。第2フィルタ105Bは、連通路106の副室4に近い領域と中間室105の吸着材収納空間とを区画している。
【0062】
第1フィルタ105Aは、樹脂製の格子状のグリッド115を介して、第3スプリング116によって第2フィルタ105Bに向かって押圧されている。第2フィルタ105Bは、連通路106のクランク部106Aを構成する内壁に支持されている。
【0063】
中間室105には、第1実施形態と同じ第3吸着材9が収納されている。中間室105の長さ及び相当直径と、主室3及び副室4それぞれの長さ及び相当直径との関係は、第1実施形態と同じである。
【0064】
<連通路>
連通路106は、主室3と副室4とを連通させる空間である。連通路106は、S字状のクランク部106Aを有する。
【0065】
クランク部106Aでは、主室3を通過した気体の流れ方向が主室3の径方向(つまり
図4の上下方向)から主室3における気体の流れ方向と平行な方向(つまり
図4の左右方向)に曲げられた後、さらに主室3の径方向に曲げられる。
【0066】
クランク部106Aのうち、気体の流れ方向が主室3における気体の流れ方向と平行となる中間部分には、上述したように中間室105が配置されている。クランク部106Aの中間部分(つまり中間室105)は、主室3の径方向において、主室3と副室4との間に配置されている。
【0067】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)連通路106の一部を利用して中間室105を形成できる。そのため、キャニスタ101の大型化の抑制効果を促進できる。また、連通路106のクランク部106Aに中間室105を設けることで、主室3及び副室4の構造を従来と同様とすることができる。
【0068】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
図5に示すキャニスタ201は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。キャニスタ201は、チャージポート2Aと、パージポート2Bと、大気ポート2Cと、主室3と、副室4と、中間室205と、連通路206と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0069】
キャニスタ201のチャージポート2A、パージポート2B、大気ポート2C、主室3、副室4、及び吸着材7,8,9は、
図4のキャニスタ101と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
<中間室>
中間室205は、蒸発燃料の流路において主室3と副室4との間に配置されると共に、主室3及び副室4それぞれと空間を介して接続されている。
【0071】
中間室205は、連通路206の直線部206A内に配置されている。具体的には、中間室205は、直線部206A内に配置された第1フィルタ205Aと、第2フィルタ205Bとによって区画されている。
【0072】
第1フィルタ205Aは、直線部206Aの主室3に近い領域と中間室205の吸着材収納空間とを区画している。第2フィルタ205Bは、直線部206Aの副室4に近い領域と中間室205の吸着材収納空間とを区画している。
【0073】
第1フィルタ205Aは、樹脂製の格子状のグリッド215を介して、第3スプリング216によって副室4に向かって押圧されている。本実施形態では、第3スプリング216は、副室4を画定する第2フィルタ4Bを押圧するスプリング(つまり、
図4における第2スプリング14)を兼ねている。
【0074】
第2フィルタ205Bは、副室4と中間室205との間に配置された樹脂製の隔離グリッド213に押圧されている。
図6に示すように、隔離グリッド213は、立体的な格子形状を有する。
【0075】
隔離グリッド213は、副室4における気体の流れ方向と同じ向きに蒸発燃料を通過させる。隔離グリッド213によって、副室4と中間室205との間に吸着材が配置されていないバッファ空間が設けられる。このバッファ空間により、蒸発燃料の大気放出を遅延できる。
【0076】
図5に示すように、中間室205には、第1実施形態と同じ第3吸着材9が配置されている。中間室205の長さ及び相当直径と、主室3及び副室4それぞれの長さ及び相当直径との関係は、第1実施形態と同じである。
【0077】
<連通路>
連通路206は、主室3と副室4とを連通させる空間である。連通路206は、副室4の大気ポート2Cとは反対側において、直線状に副室4と並んで配置される直線部206Aを有する。
【0078】
直線部206Aにおける気体の流れ方向は、副室4の気体の流れ方向と平行である。また、直線部206Aは、副室4の気体の流れ方向(つまり
図5の左右方向)において副室4と重なっている。直線部206Aには、上述したように中間室205と隔離グリッド213とが配置されている。中間室205は、主室3の径方向において、主室3とずれて配置されている。
【0079】
[3-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)連通路206の一部を利用して中間室205を形成できる。そのため、キャニスタ201の大型化の抑制効果を促進できる。また、連通路206の直線部206Aに中間室205を設けることで、中間室205の配置及び第3吸着材9の保持が容易となる。
【0080】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0081】
(4a)上記実施形態のキャニスタにおいて、副室と大気ポートとの間に、吸着材を収容する補助室がさらに設けられてもよい。つまり、大気ポートは、他の部屋(つまり補助室)を介して副室に接続されてもよい。
【0082】
(4b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0083】
1…キャニスタ、2A…チャージポート、2B…パージポート、2C…大気ポート、
3…主室、3A,3B,3C…フィルタ、4…副室、4A,4B…フィルタ、
5…中間室、5A,5B…フィルタ、6…連通路、7…第1吸着材、8…第2吸着材、
9…第3吸着材、10…筐体、11…流路構成部材、11A…テーパ部、
11B…筒部、11C…内部空間、11D…リブ、12,14,16…スプリング、
13,15…グリッド、101…キャニスタ、105…中間室、
105A,105B…フィルタ、106…連通路、106A…クランク部、
111,115…グリッド、116…スプリング、201…キャニスタ、
205…中間室、205A,205B…フィルタ、206…連通路、
206A…直線部、213…隔離グリッド、215…グリッド、216…スプリング。