(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20240228BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F02M25/08 311A
F02M25/08 311D
F02M25/08 311J
B01D53/04 111
(21)【出願番号】P 2021185059
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019572(JP,A)
【文献】特開2006-214403(JP,A)
【文献】特開2010-007573(JP,A)
【文献】特開2018-071509(JP,A)
【文献】特開平11-276839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
B01D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
前記蒸発燃料を吸着する、1つの塊状に構成された吸着材と、
筒状の形状であって、内部に前記吸着材が挿入された状態で前記吸着材を保持する筒状体と、
大気に開放された大気ポートと、
を備え、
前記筒状体の内壁面のうち、中心軸の長さ方向における少なくとも一部の範囲である当接面は、挿入された前記吸着材の側面が当接することで、前記中心軸と直交する方向への前記吸着材の移動を抑制し、
前記筒状体は、前記吸着材を挿入可能な開口から前記当接面までの範囲における少なくとも一部の範囲において、内壁面が前記筒状体の前記中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面を有
し、
前記開口は、前記筒状体における前記大気ポート側の端部に形成され、
前記傾斜面は、前記開口側から前記開口の反対側に向かうに従って前記中心軸に直交する方向の断面積が小さくなる、キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記傾斜面は、前記当接面の少なくとも一部の範囲に形成されており、前記当接面における前記開口側から、前記当接面における前記中心軸の長さ方向に関して前記開口の反対側に向かうに従って前記中心軸に直交する方向の断面積が小さくなる、キャニスタ。
【請求項3】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記傾斜面は、前記開口と、前記当接面における前記開口側の端部と、の間における少なくとも一部の範囲に形成されており、前記開口側から、前記当接面における前記開口側の端部に向かうに従って前記中心軸に直交する方向の断面積が小さくなる、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記開口を塞ぐフィルタを更に備え、
前記開口を形成する壁面と前記フィルタとは溶着されている、キャニスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記筒状体を収納する外殻部材を更に備える、キャニスタ。
【請求項6】
請求項5に記載のキャニスタであって、
前記外殻部材は、前記吸着材と直接的又は間接的に当接して、前記吸着材が差し込まれる方向と逆の方向に前記吸着材が抜けるのを抑制する、キャニスタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記吸着材は、弾性変形可能な活性炭の塊である、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクには、蒸発した燃料の大気放出を防ぐキャニスタが装着される。キャニスタは、蒸発燃料を活性炭等の吸着材に吸着させると共に、吸引した空気により吸着材から燃料を脱離してパージを行い、エンジンに供給する。特許文献1には、ハニカム吸着材を収容するキャニスタが開示されている。具体的には、特許文献1に記載のキャニスタでは、円筒状に形成されたハウジングに、円柱状に形成されたハニカム吸着材が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のキャニスタでは、ハウジングにハニカム吸着材を挿入する際に、ハニカム吸着材がハウジングの開口に接触し、破損する可能性があった。
本開示の一局面は、吸着材を挿入する際に吸着材が破損することを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、キャニスタは、吸着材と、筒状体と、を備える。吸着材は、蒸発燃料を吸着する、1つの塊状に構成される。筒状体は、筒状の形状であって、内部に吸着材が挿入された状態で吸着材を保持する。筒状体の内壁面のうち、中心軸の長さ方向における少なくとも一部の範囲である当接面は、挿入された吸着材の側面が当接することで、中心軸と直交する方向への吸着材の移動を抑制する。筒状体は、吸着材を挿入可能な開口から当接面までの範囲における少なくとも一部の範囲において、内壁面が筒状体の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面を有する。
【0006】
このような構成によれば、筒状体における吸着材を挿入可能な開口が、吸着材の挿入側の先端よりも広くなっている。よって、吸着材を挿入する際に、吸着材が開口に接触することを抑制することができる。したがって、吸着材を挿入する際に吸着材が破損することを抑制することができる。
【0007】
上述したキャニスタにおいて、傾斜面は、当接面の少なくとも一部の範囲に形成されており、当接面における開口側から、当接面における中心軸の長さ方向に関して開口の反対側に向かうに従って中心軸に直交する方向の断面積が小さくなってもよい。このような構成によれば、当接面における開口側の部分が、吸着材の挿入側の先端よりも広くなっている。よって、吸着材を挿入する際に、吸着材が当接面における開口側の部分に接触することを抑制することができる。したがって、吸着材を挿入する際に吸着材が破損することを抑制することができる。
【0008】
上述したキャニスタにおいて、傾斜面は、開口と、当接面における開口側の端部と、の間における少なくとも一部の範囲に形成されており、開口側から、当接面における開口側の端部に向かうに従って中心軸に直交する方向の断面積が小さくなってもよい。このような構成によれば、開口が、吸着材の挿入側の先端よりも広くなっている。よって、吸着材を挿入する際に、吸着材が開口に接触することを抑制することができる。したがって、吸着材を挿入する際に吸着材が破損することを抑制することができる。
【0009】
上述したキャニスタにおいて、開口を塞ぐフィルタを更に備えてもよい。開口を形成する壁面とフィルタとは溶着されていてもよい。このような構成によれば、吸着材の、フィルタの方向への移動が抑制される。よって、吸着材が筒状体から抜けるのを抑制することができる。
【0010】
上述したキャニスタにおいて、筒状体を収納する外殻部材を更に備えてもよい。このような構成によれば、筒状体が破損するのを外殻部材により抑制することができる。
上述したキャニスタにおいて、外殻部材は、吸着材と直接的又は間接的に当接して、吸着材が差し込まれる方向と逆の方向に吸着材が抜けるのを抑制してもよい。このような構成によれば、吸着材が筒状体から抜けるのを抑制することができる。
【0011】
上述したキャニスタにおいて、吸着材は、弾性変形可能な活性炭の塊であってもよい。このような構成によれば、隙間ができないように筒状体に吸着材を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のキャニスタを側方から見た断面図である。
【
図2】第2室を側方から見た断面図と、第2吸着室を側方から見た断面図の拡大図である。
【
図3】吸着材を内側ケースに挿入するときの模式図である。
【
図4】内側ケースの中心軸に直交する方向の断面積が略同一である構成において、第2室を側方から見た断面図と、第2吸着室を側方から見た断面図の拡大図である。
【
図5】第2実施形態のキャニスタを側方から見た断面図である。
【
図6】内側ケースを備えないキャニスタを側方から見た断面図である。
【
図7】内側ケース及びフィルタを備えないキャニスタを側方から見た断面図である。
【
図8】フィルタを備えないキャニスタを側方から見た断面図である。
【
図9】第2吸着室の開口が側方を向くキャニスタを側方から見た断面図である。
【
図10】
図10A,Bは、第2実施形態の変形例におけるキャニスタを側方から見た断面図の拡大図である。
【
図11】
図11A~11Dは、変形例におけるキャニスタを側方から見た断面図の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すキャニスタ1は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。キャニスタ1は、外側ケース2と、内側ケース3と、吸着材4と、を備える。
【0014】
外側ケース2は、内部空間を有するケースである。外側ケース2は、合成樹脂製のケースである。なお、外側ケース2の材質はこれに限定されるものではない。
外側ケース2は、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23と、を備える。これらのポートは同一の方向を向くように、ケースの同じ側に配置されている。以後、外側ケース2におけるチャージポート21、パージポート22、及び、大気ポート23が設けられた側を、ポート側と記載する。また、外側ケース2は、ポート側の反対側に開口を有している。当該開口は、蓋部材31により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材31が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0015】
チャージポート21は、配管によって車両の燃料タンクに接続される。チャージポート21は、燃料タンクで発生した蒸発燃料をキャニスタ1内に取り込むように構成されている。
【0016】
パージポート22は、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管に接続される。パージポート22は、キャニスタ1内の蒸発燃料をキャニスタ1から排出し、エンジンに供給するように構成されている。
【0017】
大気ポート23は、配管を介して車両の給油口に接続され、大気に開放される。大気ポート23は、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート23は、外部空気(つまりパージ空気)を取り込むことで、キャニスタ1が吸着した蒸発燃料を脱離(つまりパージ)させる。
【0018】
外側ケース2の内部空間は、第1室25と、第2室26とに仕切り部材27により仕切られている。
第1室25は、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。第1室25は、ポート側の端部が、チャージポート21及びパージポート22に繋がっている。また、第1室25のポート側の端部には、フィルタ32が配されている。第1室25の蓋側の端部には、フィルタ33が配されている。フィルタ32とフィルタ33との間には、吸着材40が配されている。吸着材40は、一例として、複数のペレットの集合体である。ペレットとは、粒状の活性炭である。ペレットは、粉状の活性炭をバインダと共に混練し、所定の形状に成形することで生成される。なお、第1室25には、例えば、粉状の活性炭等、ペレット以外の吸着材が配されてもよい。
【0019】
また、第1室25は、蓋側の端部が連通路34に繋がっている。連通路34は、蓋部材31に沿って延び、第1室25と第2室26とを繋ぐ。そして、第1室25の蓋側のフィルタ33と連通路34との間には、透過性を有する多孔板36が配されている。また、多孔板36と蓋部材31との間には、コイルばね37が配されている。コイルばね37は、多孔板36をポート側に向けて押し付けている。キャニスタ1の内部では、流体は、連通路34を介して、第1室25と第2室26とを往来できる。
【0020】
第2室26は、連通路34から大気ポート23に延びる細長い形状を有する。第2室26は、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。第2室26は、ポート側の端部が大気ポート23に繋がっている。また、第2室26の蓋側の端部には、フィルタ38が配されている。第2室26のポート側の端部には、フィルタ39が配されている。そして、第2室26におけるフィルタ39と蓋部材31との間には、内側ケース3が配されている。フィルタ39は、内側ケース3のポート側の端部に例えば超音波溶着によって固定されている。
【0021】
また、第2室26の蓋側に配されたフィルタ38と連通路34との間には、透過性を有する多孔板41が配されている。そして、多孔板41と蓋部材31との間には、コイルばね42が配されている。コイルばね42は、多孔板41をポート側に向けて押し付けている。
【0022】
内側ケース3は、外側ケース2の内部に収納されている。内側ケース3は、筒状の形状である。より詳細には、内側ケース3は、中心軸80の長さ方向全体で内径が一定ではない円筒形状である。内側ケース3の上端近傍はポート側に向かって内径が大きく変化しており、その他の大部分は蓋側に向かって徐々に内径が変化する。内側ケース3は、中心軸80の長さ方向に関していずれの位置においても断面形状は円形である。すなわち、内側ケース3は中心軸80を中心とする回転体の形状を有する。内側ケース3は、例えば金型を用いた樹脂の成形によって得られる。内側ケース3は、流体の流れ方向に並べられる第1吸着室51と、第2吸着室52とに、仕切り板53により仕切られている。仕切り板53は、内側ケース3と一体に形成される。仕切り板53は、通気孔を有している。よって、内側ケース3の内部では、流体は、仕切り板53を介して、第1吸着室51と第2吸着室52とを往来できる。また、仕切り板53の蓋側の面には、仕切り板53と隣接してフィルタ54が配されている。フィルタ38とフィルタ54との間、つまり第1吸着室51には、吸着材40が配されている。
【0023】
第2吸着室52は、第2吸着室52の内壁面が内側ケース3の中心軸80から離れる方向に傾斜する傾斜面を有する。その結果、第2吸着室52は、部分的にテーパ状に構成されている。より詳細には、第2吸着室52は、第2吸着室52のポート側の端部から一定の範囲で、第2吸着室52の蓋側の端部に向かうに従って、内側ケース3の中心軸80に直交する方向の断面積が小さくなる。ここで中心軸80とは、内側ケース3の各部分における円形の断面の重心を通過する直線のことである。第2吸着室52には、吸着材4が配されている。吸着材4は、弾性変形可能な活性炭の塊である。一例として、吸着材4は、スポンジに活性炭を混合した、1つのブロック状の集塊である。吸着材4は、第2吸着室52におけるテーパ状に構成されている部分の形状と略同一の形状に構成されている。より詳しくは、吸着材4は、円錐台状に構成されている。第2吸着室52は、内部に吸着材4が挿入された状態で吸着材4を保持する。
【0024】
図2に示されるように、第2吸着室52のポート側の端部には、吸着材4を挿入可能な開口62が形成されている。第2吸着室52の蓋側の端部にも開口63が形成されている。第2吸着室52は、当接面60を有する。当接面60は、第2吸着室52の内壁面、つまり内側の側面のことである。当接面60は、挿入された吸着材4の外側の側面が当接することで、内側ケース3の中心軸80と直交する方向への吸着材4の移動を抑制する。また、外側ケース2は、吸着材4と間接的に当接して、吸着材4が差し込まれる方向と逆の方向に吸着材4が抜けるのを抑制する。本実施形態では、当接面60が傾斜面に相当する。
【0025】
図1に戻り、第2吸着室52の蓋側には、バッファ空間61が設けられている。このバッファ空間61には、吸着材4及び吸着材40は配置されていない。
[1-2.内側ケースを外側ケースに組み付ける方法について]
図3に示されるように、まず、吸着材4が内側ケース3のポート側の開口62から内側ケース3の第2吸着室52に挿入される。
【0026】
続いて、フィルタ39が、内側ケース3のポート側の端部に超音波溶着によって固定される。
続いて、内側ケース3が外側ケース2の蓋側の開口から外側ケース2の第2室26に挿入される。内側ケース3は、吸着材4が充填されたカートリッジの状態で、外側ケース2に組み付けられる。内側ケース3の組付け後、外側ケース2の蓋部材31が外側ケース2に組み付けられる。
【0027】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第2吸着室52は、第2吸着室52のポート側の端部から、第2吸着室52の蓋側の端部に向かうに従って、内側ケース3の中心軸80に直交する方向の断面積が小さくなる。ここで、
図4に示されるように、ポート側端において内部空間(第2吸着室182)の直径が変化しない内側ケース3aを想定する。上記内部空間と断面形状が同一である吸着材74を内側ケース3aに挿入すると、内側ケース3aのポート側の開口に吸着材74が当たって削れてしまい、破損する可能性がある。しかし、第1実施形態の構成によれば、内側ケース3aの吸着材4を挿入可能な開口が、吸着材4の挿入側の先端よりも広くなっている。よって、吸着材4を挿入する際に、吸着材4が開口に接触することを抑制することができる。したがって、吸着材4を挿入する際に吸着材4が破損することを抑制することができる。
【0028】
また、
図4に示されるように、仮に第2吸着室182が、傾斜面を備えずに、吸着材74が第2吸着室182の蓋側に落ちないように支持する支持部75を備える構成であったとする。すると、支持部75付近で、蒸発燃料の流れが悪くなる可能性がある。流路の断面積が急激に変化すると、渦流が発生し、それによりスムーズな流れが阻害されてしまうためである。しかし、第1実施形態の構成によれば、蒸発燃料は傾斜面に沿ってまっすぐに流れることができる。よって、蒸発燃料の流れを改善することができる。
【0029】
(1b)フィルタ39は、内側ケース3のポート側の端部に超音波溶着によって固定されている。このような構成によれば、吸着材4の、フィルタ39の方向への移動が抑制される。よって、吸着材4が内側ケース3から抜けるのを抑制することができる。
【0030】
(1c)キャニスタ1は、外側ケース2の内部に内側ケース3が収納されている。このような構成によれば、内側ケース3が破損するのを外側ケース2により抑制することができる。
【0031】
(1d)外側ケース2は、吸着材4と間接的に当接して、吸着材4が差し込まれる方向と逆の方向に吸着材4が抜けるのを抑制する。このような構成によれば、吸着材4が内側ケース3から抜けるのを抑制することができる。
【0032】
(1e)吸着材4は、弾性変形可能な活性炭の塊である。このような構成によれば、隙間ができないように内側ケース3に吸着材4を配置することができる。
[1-4.対応関係]
本実施形態では、内側ケース3が筒状体に相当し、外側ケース2が外殻部材に相当する。
【0033】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0034】
第1実施形態では、キャニスタ1は、内側ケース3を備えていた。一方、
図5に示す第2実施形態では、キャニスタ101は、内側ケース3を備えていない。吸着材140は、第2室126の蓋側の開口から挿入され、キャニスタ101における大気ポート23の近傍に形成された筒体71の内部に配置される。筒体71は、断面が円形の直管状の部分である直管部72と、直管部72よりも蓋側に配置されるテーパ部73と、を有する。テーパ部73の蓋側が、吸着材140を挿入する開口65である。テーパ部73の内壁面は、開口65側から、当接面60における開口65側の端部に向かうに従って直管部72の中心軸81に直交する方向の断面積が小さくなる傾斜面である。ここで中心軸81とは、直管部72の各部分における円形の断面の重心を通過する直線のことである。傾斜面は、吸着材140を挿入する開口65と、当接面60における開口65側の端部との間に形成される。傾斜面は、テーパ状に構成されている。
【0035】
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0036】
(2a)傾斜面は、開口65側から、当接面60における開口65側の端部に向かうに従って直管部72の中心軸81に直交する方向の断面積が小さくなる。このような構成によれば、吸着材140を挿入可能な開口65が、吸着材140の挿入側の先端よりも広くなっている。よって、吸着材140を挿入する際に、吸着材140が開口65に接触することを抑制することができる。したがって、吸着材140を挿入する際に吸着材140が破損することを抑制することができる。
[2-3.対応関係]
本実施形態では、筒体71が筒状体に相当する。
【0037】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
(3a)上記第2実施形態では、直管部72とテーパ部73とを備える構成を例示した。しかし、
図6に示されるように、キャニスタ201は、第2室226のポート側の端部が、テーパ状に構成されていてもよい。換言すれば、第2室226のポート側の端部には、吸着材4が配置される円錐台状の空間を構成する筒部91が形成されており、その筒部91の中心軸82に直交する平面における断面積は、ポート側の端部に向かうに従って小さくなってもよい。ここで中心軸82とは、筒部91が形成する円錐台状の空間の中心軸であり、上記空間の断面の重心を通過する。吸着材4は、フィルタ211とフィルタ212とによって挟まれる。本変形例では、筒部91が筒状体に相当する。
【0038】
また、
図7に示されるように、キャニスタ301は、フィルタ211を備えなくてもよい。この場合でも、吸着材4は第2室226に敷き詰められた吸着材40によって、蓋側に落ちないように支持される。
また、
図8に示されるように、キャニスタ401が内側ケース403を備えている場合に、吸着材4の蓋側にはフィルタを備えなくてもよい。
【0039】
(3b)上記第1実施形態では、第2吸着室52の、吸着材4を挿入するための開口は蓋側からポート側に平行に流体が流れるように開いている構成を例示した。しかし、
図9に示されるように、第2吸着室552の、吸着材4を挿入するための開口は、蓋側からポート側に向かう方向に対して垂直になる向きである交差方向に流体が流れるように開いていてもよい。換言すれば、第2室26のポート側の端部には、上述した交差方向に長さを有し、吸着材4が配置される円錐台状の空間を構成する筒部92が形成されていてもよい。また、その筒部92の中心軸83に直交する平面における断面積は、上述した交差方向において、開口から内側ケース3の内部に向かうに従って小さくなってもよい。ここで中心軸83とは、筒部92が形成する円錐台状の空間の中心軸であり、上記空間の断面の重心を通過する。本変形例では、筒部92が筒状体に相当する。
【0040】
(3c)上記第2実施形態では、断面形状が直線状であるテーパ状に構成されている傾斜面を例示した。しかし、傾斜面の断面形状は直線状でなくてもよい。例えば、
図10Aに示されるように、吸着材140を挿入可能な開口65と、当接面60における開口65側の端部との間の部分が、第2室126の内部空間に向かって凸となるように構成されていてもよい。また例えば、
図10Bに示されるように、吸着材140を挿入可能な開口65と、当接面60における開口65側の端部との間の部分が、第2室126の外側に向かって凸となるように構成されていてもよい。
【0041】
(3d)上記第1実施形態では、当接面60の全面に傾斜面が形成された構成を例示した。また、上記第2実施形態では、吸着材140を挿入可能な開口65と、当接面60における開口65側の端部との間の部分の全面に傾斜面が形成された構成を例示した。しかし、傾斜面が形成される範囲はこれに限定されるものではない。傾斜面は、吸着材を挿入可能な開口から当接面までの範囲における少なくとも一部の範囲において形成されていればよい。第1実施形態における変形例として、
図11A~
図11Cに示されるように、傾斜面は、当接面60のうち、少なくとも一部の範囲に形成されていればよい。
図11Aに示されるように、当接面60における一部の範囲は、傾斜していなくてもよい。また、中心軸84は内側ケース3の長さ方向に対して傾斜していてもよい。なお、中心軸84とは、吸着材4が配される空間の、主たる部分の断面の重心を通過する直線であってもよい。また、
図11Bに示されるように、内側ケース3の長さ方向において、当接面60よりも短い範囲において傾斜面が形成されていてもよい。また、
図11Cに示されるように、内側ケース3の長さ方向において、当接面60よりも長い範囲において傾斜面が形成されていてもよい。
【0042】
また、第2実施形態の変形例として、
図11Dに示されるように、傾斜面は、吸着材140を挿入する開口65と、当接面60における開口65側の端部との間の部分のうち、少なくとも一部の範囲に形成されていればよい。吸着材140を挿入する開口65と、当接面60における開口65側の端部との間の部分のうち、一部の範囲は、傾斜していなくてもよい。
【0043】
(3e)上記実施形態では、吸着材4が弾性変形可能な活性炭の塊である構成を例示した。しかし、吸着材4の構成はこれに限定されるものではない。例えば、吸着材は、弾性変形不能であってもよいし、活性炭でなくてもよい。また、吸着材は、ハニカム構造を有していてもよい。
【0044】
(3f)上記第1実施形態では、外側ケース2が、吸着材4と間接的に当接して、吸着材4が差し込まれる方向と逆の方向に吸着材4が抜けるのを抑制する構成を例示した。しかし、外側ケース2は、吸着材4と直接的に当接して、吸着材4が差し込まれる方向と逆の方向に吸着材4が抜けるのを抑制してもよい。
【0045】
(3g)上記実施形態では、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23とは同一の方向を向くように、ケースの同じ側に配置されている構成を例示した。しかし、これらのポートの向く向きは、これに限定されるものではない。例えば、いずれかのポートが、他のポートに対して直交する向きに配置されていてもよい。また例えば、いずれかのポートが、他のポートとはケースの反対側に配置されていてもよい。
【0046】
(3h)上記第1実施形態では、内側ケース3は円筒形状であり、内側ケース3の断面形状が円形である構成を例示した。また、吸着材4は、円錐台状に構成されていた。しかし、内側ケース3の形状はこれに限定されるものではない。また、吸着材4の形状もこれに限定されるものではない。例えば、内側ケースは多角形状であってもよく、吸着材は角錐又は角錐台であってもよい。
【0047】
また、上記第2実施形態では、直管部72の断面が円形である構成を例示した。しかし、直管部72の形状はこれに限定されるものではない。例えば、直管部は、多角形状であってもよい。
【0048】
(3i)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,101,201,301,401…キャニスタ、2…外側ケース、3,3a,403,503…内側ケース、4,40,74,140…吸着材、21…チャージポート、22…パージポート、23…大気ポート、25…第1室、26,126,226…第2室、27…仕切り部材、31…蓋部材、32,33,38,39,54,211,212…フィルタ、34…連通路、36,41…多孔板、37,42…コイルばね、51…第1吸着室、52,182,552,582…第2吸着室、53…仕切り板、60…当接面、61…バッファ空間、62,63,65…開口、71…筒体、72…直管部、73…テーパ部、75…支持部、80,81,82,83,84…中心軸、91,92…筒部。