IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーディーエム28 フランスの特許一覧

<>
  • 特許-パルス放電装置 図1
  • 特許-パルス放電装置 図2
  • 特許-パルス放電装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】パルス放電装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 3/53 20060101AFI20240228BHJP
   B02C 19/18 20060101ALI20240228BHJP
   A61B 17/22 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
H03K3/53
B02C19/18 C
A61B17/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021503158
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069462
(87)【国際公開番号】W WO2020020760
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】1856859
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521462576
【氏名又は名称】エーディーエム28 フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドスタ フレデリック
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094003(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/017918(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/00-3/86
B02C 19/18
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中のパルス放電装置(1A、1B)であって、
少なくとも一対の電極(10)であり、前記液体中に浸漬され、前記電極(10)間に所定の電圧が印加されたときに前記液体中に電気アークを生成するように構成された、少なくとも一対の電極(10)と、
加熱時間にわたって、前記液体を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱ユニット(20)と、
前記少なくとも一対の電極(10)の前記電極(10)間に放電電圧を印加するように構成された少なくとも1つの放電ユニット(30)と、
前記少なくとも1つの加熱ユニット(20)を制御し、これにより、前記加熱ユニット(20)が加熱時間にわたって、前記液体を加熱するように、及び前記加熱時間の終了時に、前記少なくとも1つの放電ユニット(30)を制御し、これにより、前記少なくとも1つの放電ユニット(30)が前記少なくとも一対の電極(10)の前記電極(10)間に所定の電圧を印加し、それによって前記液体中に放電を生成するように構成された少なくとも1つの制御ユニット(40)と、
を備えることを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1A、1B)であって、
前記加熱時間が予め定められている、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(1A、1B)であって、
前記少なくとも1つの制御ユニット(40)がカウンタを備え、
前記少なくとも1つの制御ユニット(40)が前記少なくとも1つの加熱ユニット(20)を作動させたときに前記カウンタをトリガし、
前記カウンタが前記加熱時間に達したときに前記少なくとも1つの放電ユニット(30)を作動させるように構成されている、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の装置(1A、1B)であって、
前記加熱時間が5~500ミリ秒である、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の装置(1A、1B)であって、
前記少なくとも1つの加熱ユニット(20)が、前記液体を加熱するために、前記電極(10)間に加熱電圧を供給するように構成されている、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(1A、1B)であって、
前記加熱電圧が0.1~5kVである、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の装置(1A、1B)であって、
前記放電電圧が1~40kVである、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(1A、1B)であって、
単一対の電極(10)、単一の加熱ユニット、単一の放電ユニット、及び単一の制御ユニットを備える、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置(1A、1B)であって、
単一対の電極(10)、複数の加熱ユニット、複数の放電ユニット、及び単一の制御ユニットを備える、
ことを特徴とする装置(1A、1B)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電気パルス放電装置(1A、1B)から液体中に放電を生成するための方法であって、
加熱時間にわたって、前記液体を加熱するステップ(E1)であって、前記加熱時間の終了時に前記液体が所定の温度に達する、ステップ(E1)と、
前記加熱時間が経過すると、パルス放電をトリガするステップ(E2)と、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーエレクトロニクスの分野に関し、より詳細には、液体中でのパルス放電のための装置及び方法に関する。このような方法及び装置は、特に、電気油圧成形、地震ツール、油井刺激、又は結石破壊に応用可能である。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスでは、液体中に浸漬させた2つの電極間で、非常に高い電圧の下で非常に高い強度の電流を瞬時に伝達することを可能にするパルス放電装置を使用することが知られている。両電極間の電圧は、電気エネルギーを蓄積し、これを非常に高い電圧の下で非常に高い電流として復元するための容量性モジュールを含む外部電源によって、例えば1~40kVで供給される。
【0003】
知られている方法では、水中での高電圧パルス放電の場合、2つの段階、すなわち、第1のいわゆる「予備放電」段階と、それに続く第2のいわゆる「絶縁破壊」段階とがある。予備放電段階は、一方の電極を第1の高電圧値、例えば20kVでスイッチオンすることによってトリガされ、もう一方の電極は、電位基準を設定する接地、例えば0kVに接続されている。予備放電段階中に、両電極間に規定された電圧により、水が沸点まで加熱されて、絶縁破壊条件を作り出すためのガスチャネルを作り出すことができる。この水温の上昇中に、電極の両端間の電圧は、絶縁破壊段階が生じる第2の電圧値までゆっくりと低下する。この絶縁破壊段階は、ガスチャネル内を伝搬し、両電極間に電流が流れることを可能にする電気アークを生成する放電に対応する。
【0004】
しかしながら、このタイプの装置は、特に金属部品の電気油圧成形への適用において、いくつかの欠点を有する。第1に、アーク発生時の電圧レベルが制御されない。したがって、電極間に集中し、次いで圧力波に変換されるエネルギーは、ショットごとに一定ではない。その結果、ワークピースに加えられる成形圧力は、試験ごとに同一ではない。しかし、このような成形の違いは、大きすぎる場合があり、これにより、製造される部品の一部は適合しない。加えて、いくつかの対の電極を使用して成形する場合、アークを生成するために必要な時間枠は、衝撃波の伝播のオーダーである。しかし、絶縁破壊時間の平均偏差がかなり大きいことが判明する可能性があるため、異なる衝撃波のトリガの同期が確保されず、部品の成形が不均一性を示す可能性があり、これが大きな欠点となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単で信頼性が高く効率的な電力増幅装置の解決策を提供することによって、これらの欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の1つの対象は、第1に、液体中、好ましくは水中でのパルス放電装置であり、前記装置は、
前記液体中に浸漬され、前記電極間に所定の電圧が印加されたときに前記液体中に電気アークを生成するように構成された少なくとも一対の電極と、
いわゆる「加熱」時間にわたって、前記液体を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱ユニットと、
少なくとも一対の電極の電極間に放電電圧を印加するように構成された少なくとも1つの放電ユニットと、
少なくとも1つの加熱ユニットを制御し、これにより、前記加熱ユニットが加熱時間にわたって、液体を加熱するように、及び前記加熱時間の終了時に、少なくとも1つの放電ユニットを制御し、これにより、前記少なくとも1つの放電ユニットが少なくとも一対の電極の電極間に所定の電圧を印加し、それによって液体中に放電を生成するように構成された少なくとも1つの制御ユニットと、
を備える。
【0007】
本発明による装置は、放電がショットごとに同じように再現可能となるように、所定の瞬間に電極間の放電をトリガすることを可能にする。したがって、本発明は、電気油圧成形へのその適用において、製品間の均一性を達成するために、ショットごとの信頼性及び精度を確保することを可能にする。本発明は、例えば、エネルギー供給の品質を向上させるために電極間距離を増大させること、又は電気アークのトリガをより安定させるために液体媒体の導電率を低下させることなど、放電効率を最適化するために異なるパラメータを設定することを可能にする。本発明による装置は、複雑な外部配線を必要とせず、したがって、オンボード用途、例えば、地震用途のためのダウンホールで使用することができる。
【0008】
加熱ユニットの数は、放電ユニットの数と等しいことが好ましい。代替として、装置は、加熱ユニットの数よりも多い数の放電ユニットを備えることができる。
【0009】
装置は、装置のアーキテクチャを単純化するために、すべての加熱ユニット及び放電ユニットに接続された単一の制御ユニットを備えることがさらに好ましい。
【0010】
一実施形態では、各加熱ユニットは、少なくとも一対の電極の一方の電極に接続された、例えば1つ以上のコンデンサを含む、容量性モジュールと、一方では前記容量性モジュールに、他方ではこの一対の電極のもう一方の電極に接続された、いわゆる「加熱」スイッチと、を備える。
【0011】
一実施形態では、各放電ユニットは、少なくとも一対の電極の一方の電極に接続された、例えば1つ以上のコンデンサを含む、容量性モジュールと、一方では前記容量性モジュールに、他方ではこの一対の電極のもう一方の電極に接続された、いわゆる「放電」スイッチと、を備える。
【0012】
加熱時間は、放電トリガをショットごとに固定し、装置を単純かつ効率的に保つために予め決定されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によると、少なくとも1つの制御ユニットは、カウンタを備え、前記少なくとも1つの制御ユニットが少なくとも1つの加熱ユニットを作動させたときに、前記カウンタをトリガし、前記カウンタが加熱時間に達したときに、少なくとも1つの放電ユニットを作動させるように構成されている。このようなカウンタは、所定の加熱時間を測定するための簡単な手段を表す。
【0014】
放電を確実かつ効率的にトリガすることを可能にするために、加熱時間は、5~500ミリ秒であることが有利である。
【0015】
代替的に又は追加的に、装置、特に少なくとも1つの制御ユニットは、加熱電圧の変動を監視し、加熱電圧が、電極間で沸騰温度に達するのに必要なエネルギーと同等のエネルギー伝達を反映する所定のしきい値に達したときに、少なくとも1つの加熱ユニットによる電極間の液体の加熱を中断し、パルス放電の生成を可能にするように構成することができる。必要なエネルギーは、加熱される水の体積の関数であり、電極の幾何学的形状に依存する。このエネルギー値は、次式を使用して求めることができる。
E=ρ×Cp×V×(Te-Ti)
ここで、Eは電極間で沸騰温度に達するのに必要なエネルギーであり、ρは液体の密度であり、Cpは液体の等圧熱容量であり、Vは電極間で加熱される水の体積であり、Teは液体の沸騰温度であり、Tiは液体の初期温度(すなわち、加熱前の)である。
【0016】
代替的に又は追加的に、装置、特に少なくとも1つの制御ユニットは、少なくとも一対の電極の電極間を流れる電流の強度の変動を監視し、前記電流の強度が、前述したように、電極間で沸騰温度に達するのに必要なエネルギーと同等のエネルギー伝達を反映する所定のしきい値に達したときに、少なくとも1つの加熱ユニットによる前記電極間の液体の加熱を中断し、パルス放電の生成を可能にするように構成することができる。
【0017】
本発明の特徴によると、少なくとも1つの加熱ユニットは、液体を加熱するために電極間に加熱電圧を供給するように構成され、電極間に印加される電圧の使用は、液体を加熱するための単純かつ効果的な手段である。
【0018】
加熱電圧は、0.1~5kVであるのが有利である。
【0019】
放電電圧は、1~40kVであるのが有利である。
【0020】
本発明の一態様によると、装置は、単一対の電極を備える。
【0021】
装置の一実施形態では、装置は、単一対の電極、単一の加熱ユニット、単一の放電ユニット、及び単一の制御ユニットを備える。
【0022】
装置の別の実施形態では、装置は、単一対の電極、複数の加熱ユニット、複数の放電ユニット、及び単一の制御ユニットを備える。複数の加熱ユニットを使用することで、加熱時間を短縮することができる。複数の放電ユニットを使用することで、特に複雑な金属部品を正確かつ効率的に形成するために、電極間で電流放電の電力を増大させることができる。
【0023】
特定の一実施形態では、装置は、一対の電極、2つの加熱ユニット、2つの放電ユニット、及び制御ユニットを備える。
【0024】
別の特定の実施形態では、装置は、一対の電極、3つの加熱ユニット、3つの放電ユニット、及び1つの制御ユニットを備える。
【0025】
本発明は、パルス放電装置から液体中で放電を生成するための方法にも関し、前記方法は、加熱時間にわたって、前記液体を加熱するステップであって、加熱時間の終了時に液体が所定の温度に達する、ステップと、加熱時間が経過すると、パルス放電をトリガするステップと、を含む。
【0026】
本発明のさらなる特徴及び利点は、非限定的な例として与えられる、同じ参照番号が同様の対象物に与えられている添付の図に関連してなされる以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるパルス放電装置の第1の実施形態の概略図である。
図2】本発明による電気パルス放電装置の第2の実施形態の概略図である。
図3】本発明による方法の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による装置は、液体中で、例えば、水中(成形、石油探査など)又は血液中(結石破壊)でパルス放電を行うことを可能にする。本発明による装置は、特に、電気油圧成形を行うために、地震波を生成することによって地球物理学的探査を行うために、油井の生産を向上させるために、又は結石破壊によって腎臓結石を治療するために使用することができる。
【0029】
本発明による装置は、少なくとも一対の電極、少なくとも1つの加熱ユニット、少なくとも1つの放電ユニット、及び少なくとも1つの制御ユニットを備える。
【0030】
各対の電極は、液体に浸漬され、前記対の電極間に所定の電圧が印加されたときに前記液体中に電気アークを生成するように構成されている。
【0031】
各加熱ユニットは、各対の電極の電極両端間に電圧を供給することによって、いわゆる「加熱」時間にわたって、液体を加熱するように構成されている。
【0032】
各放電ユニットは、少なくとも一対の電極の電極間に放電電圧を印加するように構成されている。
【0033】
装置は、単一の制御ユニットを備えるのが好ましいが、これに限定されない。制御ユニットは、加熱ユニットを同時に制御し、これにより、前記加熱ユニットが加熱時間にわたって、液体を加熱するように構成されている。制御ユニットは、前記加熱時間の終了時に放電ユニットを制御し、これにより、前記放電ユニットが少なくとも一対の電極の電極間に所定の電圧を印加し、それによって液体中に放電を生成するようにも構成されている。
【0034】
いくつかの加熱ユニット及びいくつかの放電ユニットが存在する場合、少なくとも1つの制御ユニットは、一方では加熱ユニットを同期して制御し、他方では放電ユニットを同期して制御するように構成されているのが好ましい。
【0035】
本発明による装置1Aの第1の実施形態が図1に表され、本発明による装置1Bの第2の実施形態が図2に表されている。第1の実施形態では、装置1Aは、単一対の電極10、単一の加熱ユニット20、単一の放電ユニット30、及び単一の制御ユニット40を備え、第2の実施形態では、装置1Bは、単一対の電極10、2つの加熱ユニット20、2つの放電ユニット30、及び単一の制御ユニット40を備える。
【0036】
対の電極10は、1つ以上のパルス放電が実行されることが望まれる液体中に浸漬されるように構成されている。具体的には、対の電極10は、以下に説明するように、いくつかの条件が満たされたときに液体中に電気アークを生成するために、対の電極10の両電極10間に印加される電圧を受けるように構成されている。
【0037】
ショット中、電荷は、対の一方の電極10の端部からもう一方の電極10の端部まで、端部間の液体及び気体の体積中を伝播する。電極10は、例えば、概して中空の円筒状の回転対称の形状であってもよい。電極10は、「端部と端部が」一直線に整列し、すなわち、電極10のそれぞれの長手方向軸(図示せず)が一致し、これらの電極10が所定の固定距離だけ、例えば1~50mm、好ましくは、1~25mm(電極10間の距離の増加により、前記電極10間に蓄積されるエネルギーを増加させることが可能)離間した、軸方向(対称軸の方向)に互いに対向する自由端を有するように配置されているのが好ましい。パルス放電中、電気アークは、これらの自由端間で発生し、これら自由端の対向する環状端面は、実質的に平面(横断面において)である。図1及び図2に示すように、接続端部と呼ばれる電極の軸方向両端部は、それぞれ、一方では少なくとも1つの加熱ユニット20に接続され、他方では少なくとも1つの放電ユニット30に接続されている。
【0038】
図1及び図2の実施形態のそれぞれにおいて、各加熱ユニット20は、いわゆる「加熱」時間にわたって、前記液体を加熱するように構成されている。この加熱時間は、例えば、液体に応じて選択されることによって予め決定されてもよく、又は、例えば、電極10の両端間の電圧の変動を監視することによって、リアルタイムで適合されてもよい。
【0039】
加熱時間は、少なくとも1つの放電ユニット30によって、いわゆる「放電」電圧が印加されたときに、両電極10間にパルス放電を生成するのに液体が十分に高温であることを確実にする。例えば、加熱時間は、電極間の液体の体積が蒸発するまで加熱するのに必要な時間として選択されてもよい。
【0040】
液体の加熱は、加熱時間を決定するために、以下のパラメータ、すなわち、時間、電流、又は電圧のうちの1つ以上によって駆動されてもよい。同様に、加熱時間は、液体を気相に変換するのに、例えば、液体の水を水蒸気に変換するのに必要な時間に相当してもよい。これは、液体から気体への相変化が媒体の抵抗率を変化させ、したがって電極間を流れる電流を変化させるためである。
【0041】
図1及び図2の実施形態のそれぞれにおいて、制御ユニット40、例えば、計算機又はマイクロコントローラは、例えば、電極10間を流れる電流又は電極10の両端間に規定される電圧を監視し、前記電流又は前記電圧の強度が、電極10間の液体の温度が前記2つの電極10間にパルス放電を生成するのに十分な所定のしきい値、例えば、1kA又は5kVに達すると、少なくとも1つの放電ユニット30を制御することができる。
【0042】
この目的のために、各加熱ユニット20は、液体を加熱するために、対の電極10の電極間にいわゆる「加熱」電圧を供給するように構成された加熱発生器21を備えるのが好ましい。この加熱発生器21は、複数のコンデンサ、又は定電流電圧発生器の形態であってもよい。複数のコンデンサは、非常に短い時間で、例えば10ミリ秒のオーダーで数キロボルトのオーダーの電圧を供給することを可能にし、一方、定電流電圧発生器は、より長い時間、例えば100ミリ秒のオーダーで数百ボルトのオーダーのより低い電圧を生成することを可能にする。加熱電圧は、例えば、100V~5kVであってもよい。各加熱ユニット20は、制御ユニット40によって開閉するように制御される、いわゆる「加熱」スイッチ22も備える。
【0043】
図1及び図2の実施形態のそれぞれにおいて、各放電ユニット30は、対の電極10の端子両端間に放電電圧を印加するように構成されている。この放電電圧は、両電極10間のパルス放電の生成をトリガする。放電電圧の値は、例えば、20kVの範囲であってもよい。放電電圧を生成するために、各放電ユニット30は、例えば複数のコンデンサの形態の放電発生器31と、制御ユニット40によって開閉されるいわゆる「放電スイッチ」32と、を備える。
【0044】
加熱発生器21及び放電発生器31は、2つの別個の物理的実体であってもよく、又は液体を加熱すること、及び前記液体中にパルス放電を生成することをそれぞれ行うために、異なる値の電圧を供給するように構成された単一の実体であってもよいことに留意されたい。
【0045】
加熱ユニット20及び放電ユニット30は、制御ユニット40によって制御される。より正確には、制御ユニット40は、加熱ユニット20を制御し、これにより、前記加熱ユニット20が加熱時間にわたって、液体を加熱するように、及び前記加熱時間の終了時に放電ユニット30を制御し、これにより、前記放電ユニット30が電極10の両端間に所定の電圧を印加して、液体中に電気アークを生成するように構成されている。
【0046】
したがって、言い換えると、制御ユニット40は、液体がパルス放電の生成を可能にするのに十分な温度に達するまで、すなわち加熱時間にわたって、加熱ユニット20をまず作動させ、次いで、液体が加熱されると、加熱ユニット20の動作を中断し、好ましくは同時に、両電極10間にパルス放電を生成するために、放電ユニット30をトリガする。
【0047】
加熱時間が予め定められている場合、制御ユニット40は、制御ユニット40が加熱ユニット20を作動させたときに、及びカウンタが加熱時間に達したときに加熱ユニット20の動作を停止するように制御ユニット40が監視したときにトリガされるカウンタ(図示せず)を備えることができる。加熱時間が予め定められていない場合、制御ユニット40は、加熱ユニット20が作動すると、加熱電圧の変動を監視し、加熱電圧が、電極間で沸騰温度に達するのに必要なエネルギーと同等のエネルギー伝達を反映し、放電ユニット30が電極10間の放電電圧に達するとすぐにパルス放電の生成を可能にする、所定のしきい値に達したときに、加熱ユニット20の動作を停止することができる。
【0048】
図2に示す第2の実施形態では、両方の加熱ユニット20は、並列に接続され、一方では制御ユニット40に接続され、他方では対の電極10に接続されている。同様に、両方の放電ユニット30は、並列に接続され、一方では制御ユニット40に接続され、他方では対の電極10に接続されている。各加熱ユニット20は、加熱発生器21及び加熱スイッチ22を備える。各放電ユニット30は、放電発生器31及び放電スイッチ32を備える。
【0049】
加熱ユニット20を互いに並列に接続することによって、液体をより迅速に加熱することができる。放電ユニット30を互いに並列に接続することによって、電極10間に同時に電力を供給することを確実にしながら、対の電極10に供給される電力を容易かつ可変的に増大させることができ、したがって放電ユニット30は、互いに同期している。
【0050】
必要に応じて電力をさらに増大させるために、例えば、既存の装置の1つ以上の加熱ユニット20及び1つ以上の放電ユニット30にそれぞれ、加熱ユニット20及び放電ユニット30を追加することによって、3つ以上の加熱ユニット20、また3つ以上の放電ユニット30を容易に並列に接続することが可能であることに留意されたい。本発明の範囲を限定することなく、同じ数の加熱ユニット及び放電ユニットが使用されるのが好ましい。
【0051】
このような装置1Bは、成形に必要な電力が非常に高く、いくつかの放電ユニット30を並列に配置する必要がある油圧成形への用途において特に効果的である。
【0052】
ここで、本発明は、前記装置1A、1Bが液体中に浸漬されている場合の、装置1A、1Bの第1の実施形態及び第2の実施形態について図3を参照して、その実施態様において説明される。
【0053】
まず、パルス放電を行う場合、制御ユニット40は、加熱ユニット20を制御し、これにより、前記加熱ユニット20が、ステップE1において電極10間の液体を加熱するようにする。
【0054】
この目的のために、制御ユニット40は、加熱ユニット20の加熱スイッチ22を閉じ、これにより、加熱発生器21が、加熱時間にわたって、対の電極10に加熱電圧を供給するようにする。
【0055】
加熱時間が予め定められている場合、制御ユニット40は、加熱ユニット20の加熱スイッチ22を閉じるのと同時にカウンタをトリガし、次いで、加熱時間が経過すると、加熱スイッチ22を開く。加熱時間が前もって分かっていない場合、制御ユニット40は、観察された電圧が放電を可能にするのに十分な電極10間の液体中のエネルギー蓄積を特徴付ける所定の電圧しきい値に達したときに放電ユニット30を作動させるために、それぞれの対の電極10の両端間の電圧を監視する。制御ユニット40は、実際に液体中に蓄積される、例えば数百ジュール~10kJのオーダーのエネルギーを計算するために、及び必要なエネルギーに達したときに放電ユニット30を作動させるために、例えば100V~5kVの電圧及び例えば10A~1kAの電流を監視することもできる。
【0056】
加熱時間が経過すると(すなわち、所定の時間が経過するか、又は所定の電圧しきい値に達すると)、制御ユニット40は、放電ユニット30を作動させ、これによりステップE2において、前記放電ユニット30が電極10間でパルス放電をトリガするようにする。
【0057】
この目的のために、加熱ユニット20の加熱スイッチ22の開放と同時に、又はその直後に、例えば、前記開放後5~500ミリ秒に(例えば、コンデンサを再充電するために、数秒待つ必要があり得ることを念頭に置いて)、制御ユニット40は、放電ユニット30の放電スイッチ32を閉じ、これにより、放電ユニット30の放電発生器31が、対の電極10の両電極10間にパルス放電を生成するために、電極10間に、例えば20kVのオーダーの放電電圧を印加するようにする。
【0058】
次いで、この放電によって生成された波は、意図された用途のために、例えば金属又はプラスチック材料であり得る部品を形成するために使用される。
【0059】
したがって、本発明は、有利には、予測可能な瞬間にパルス放電をトリガするために、液体が正確に加熱されることを確実にし、したがって、本方法を反復可能で同じように再現可能にする。特に、いくつかの放電ユニットを有する装置1Bにおいて、本発明は、複雑かつ不正確であることが判明し得る同期を必要とする先行技術のいくつかの対の電極を有する装置とは異なり、このような方法で、単一の瞬間に単一の高出力パルス放電をトリガすることを可能にする。
【0060】
本発明は、上述した例に限定されず、当業者が利用可能な多数の代替形態が可能であることに留意されたい。
図1
図2
図3