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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】物標計測装置および物標計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/96 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G01S15/96
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021508836
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007590
(87)【国際公開番号】W WO2020195467
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019058147
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅紀
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-341028(JP,A)
【文献】特開2008-267834(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163904(WO,A1)
【文献】特開2011-52990(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106371100(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 15/00-15/96、
7/52-7/64
A01K 61/00-61/65、
61/80-63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に送信波を送波し、前記送信波の反射波を受波する送受波器と、
前記反射波の受信信号から物標のエコー信号を抽出する物標エコー信号抽出部と、
同一の前記送信波から生じた前記エコー信号に含まれる複数のピークをそれぞれ検出するピーク検出部と、
前記複数のピークのうち第1ピークの強度と前記第1ピークとは異なる第2ピークの強度との強度差を算出する強度差算出部と、
前記強度差に基づいて前記物標の大きさおよび/または重さに関するデータを取得する物標計測部と、を備える、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物標計測装置において、
前記強度差算出部は、
前記エコー信号に含まれる前記複数のピークのうち最も高い強度を持つ最高ピークを特定し、
前記最高ピークを前記第1ピークとして前記強度差を算出する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物標計測装置において、
前記第1ピークと前記第2ピークが現れるタイミングの時間差を算出する時間差算出部をさらに備え、
前記物標計測部は、前記時間差に基づいて前記物標の大きさおよび/または重さに関する前記データを取得する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物標計測装置において、
前記物標計測部は、複数のエコー信号に対し算出された前記強度差および前記時間差のヒストグラムに基づいて、前記物標の大きさおよび/または重さに関する前記データを取得する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の物標計測装置において、
前記物標計測部は、前記ヒストグラムにおいて前記強度差および前記時間差の代表値を取得し、前記代表値に基づいて、前記物標の大きさおよび/または重さに関する前記データを取得する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の物標計測装置において、
前記送受波器は、前記送信波を実質的に下向きで送波し、
前記第2ピークは、前記エコー信号に含まれる前記複数のピークのうち、前記第1ピークのタイミングよりも早く現れるピークである、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の物標計測装置において、
前記反射波に基づいて、前記エコー信号に含まれる前記複数のピークのそれぞれの到来方向を算出するピーク到来方向算出部をさらに備え、
前記第2ピークは、前記複数のピークのうち前記第1ピークに対して所定閾値よりも到来方向の差が小さいピークである、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の物標計測装置において、
前記送受波器は、前記反射波を受波する受信チャンネルを4つ以上有しており、
前記ピーク到来方向算出部は、それぞれの前記受信チャンネルが前記反射波を受波するタイミングの差に基づいて、前記到来方向を算出する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項9】
請求項7に記載の物標計測装置において、
前記送受波器は、前記反射波を受波する受信チャンネルを2つ有しており、
前記ピーク到来方向算出部は、それぞれの前記受信チャンネルが受波する前記反射波の強度の差に基づいて、前記到来方向を算出する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の物標計測装置において、
前記物標は、養魚場で飼育される魚である、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項11】
請求項10に記載の物標計測装置において、
前記送受波器は、前記送信波を実質的に鉛直方向に送波し、
前記物標計測部は、物標の大きさおよび/または重さに関する前記データとして、魚体幅を取得する、
ことを特徴とする物標計測装置。
【請求項12】
水中に送信波を送波し、
前記送信波の反射波を受波し、
前記反射波の受信信号から物標のエコー信号を抽出し、
同一の前記送信波から生じた前記エコー信号に含まれる複数のピークをそれぞれ検出し、
前記複数のピークのうち第1ピークの強度と前記第1ピークとは異なる第2ピークの強度との強度差を算出し、
前記強度差に基づいて前記物標の大きさおよび/または重さに関するデータを取得する、
ことを特徴とする物標計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に送信波を送波し、その反射波に基づいて、物標を計測する物標計測装置および物標計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に送信波を送波し、その反射波に基づいて、物標を計測する物標計測装置が知られている。たとえば、音波を用いて、生簀内の魚の体長が計測される。送受波器から水中に音波が送波される。音波の反射波が送受波器により受波され、受波信号に基づいて、魚のターゲットストレングスが測定される。ターゲットストレングスと体長との関係式に基づいて、魚のサイズが推定される。特許文献1には、この種の物標計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2006/0018197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚の大きさは、体長のみならず、肥満度によっても大きく変わり得る。同じ体長の魚であっても、その肥満度によって、大きさや重さが大きく相違する。このため、上記のように、ターゲットストレングスと体長との関係式に基づいて、魚のサイズが推定される場合は、推定結果に誤差が含まれ得る。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、物標の大きさおよび/または重さをより正確に推定することが可能な物標計測装置および物標計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は物標計測装置に関する。この態様に係る物標計測装置は、水中に送信波を送波し、前記送信波の反射波を受波する送受波器と、前記反射波の受信信号から物標のエコー信号を抽出する物標エコー信号抽出部と、同一の前記送信波から生じた前記エコー信号に含まれる複数のピークをそれぞれ検出するピーク検出部と、前記複数のピークのうち第1ピークの強度と前記第1ピークとは異なる第2ピークの強度との強度差を算出する強度差算出部と、前記強度差に基づいて前記物標の大きさおよび/または重さに関するデータを取得する物標計測部と、を備える。
【0007】
ここで、前記強度差算出部は、前記エコー信号に含まれる前記複数のピークのうち最も高い強度を持つ最高ピークを特定し、前記最高ピークを前記第1ピークとして前記強度差を算出するよう構成され得る。
【0008】
また、物標計測装置は、前記第1ピークと前記第2ピークが現れるタイミングの時間差を算出する時間差算出部をさらに備え、前記物標計測部は、前記時間差に基づいて物標の大きさおよび/または重さに関する前記データを取得するよう構成され得る。
【0009】
本発明の第2の態様は、物標計測方法に関する。この態様に係る物標計測方法は、水中に送信波を送波し、前記送信波の反射波を受波し、前記反射波の受信信号から物標のエコー信号を抽出し、同一の前記送信波から生じた前記エコー信号に含まれる複数のピークをそれぞれ検出し、前記複数のピークのうち第1ピークの強度と前記第1ピークとは異なる第2ピークの強度との強度差を算出し、前記強度差に基づいて前記物標の大きさおよび/または重さに関するデータを取得する。
【0010】
上記態様によれば、第1ピークと第2ピークの強度に差に基づいて物標の大きさおよび/または重さに関するデータが取得される。追って実施形態に示すように、強度差は、物標の体幅と体長の比に依存する。すなわち、強度差は、物標の肥満度を表す指標となり得る。したがって、上記態様によれば、物標の大きさおよび/または重さをより正確に推定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、本発明によれば、物標の大きさおよび/または重さをより正確に推定することが可能な物標計測装置および物標計測方法を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る、物標計測装置の使用形態を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る、物標計測装置1の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る、エコー信号の一例を示す図である。
図4図4(a)は、実施形態に係る、送信波が魚の鰾で反射された場合の反射波の状態を模式的に示す図である。図4(b)は、実施形態に係る、送信波が魚の背中で反射された場合の反射波の状態を模式的に示す図である。図4(c)は、実施形態に係る、送信波が魚の腹で反射された場合の反射波の状態を模式的に示す図である。図4(d)は、実施形態に係る、魚の体幅の算出に用いるパラメータを示す図である。
図5図5は、実施形態に係る、強度差と時間差を2軸とする2次元ヒストグラムの一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る、強度差と時間差を2軸とする2次元ヒストグラムの一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る、強度差と時間差を2軸とする2次元ヒストグラムの一例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る、強度差と時間差を2軸とする2次元ヒストグラムの一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る、物標計測装置における処理を示すフローチャートである。
図10図10(a)は、実施形態の検証例に係る、各測定日に取得された相対位置の変化を示すグラフである。図10(b)は、実施形態の検証例に係る、各測定日に取得された相対レベルの変化を示すグラフである。図10(c)は、実施形態の検証例に係る、各測定日に取得された背中の反射波に基づく第2ピークの数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態には、生簀に設置される物標計測装置に本発明を適用した例が示されている。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0015】
図1は、物標計測装置1の使用形態を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態では、水生生物の一種である魚の養殖のために海に設置された生簀2において、物標計測装置1が使用される。生簀2は、枠3と、浮き4と、網
5と、桟橋6と、を備える。
【0017】
枠3は、平面視でループ状となるように形成されている。枠3には、複数の浮き4が取り付けられている。浮き4の浮力により、枠3が水面に浮かぶ。枠3は、図示しない係留用のロープによって水底の重りに接続されている。
【0018】
網5の上端部が、枠3に固定されている。網5は、水中を仕切って閉鎖空間を形成するように枠3から吊り下げられている。この閉鎖空間の内部で魚が飼育される。枠3の上には、養殖において各種作業を行うための桟橋6が固定されている。
【0019】
枠3の内側のほぼ中央部に、フロート7が浮かべられている。フロート7は、桟橋6にロープで繋がれている。このフロート7に、物標計測装置1が配置されている。
【0020】
図2は、物標計測装置1の構成を示すブロック図である。
【0021】
物標計測装置1は、送受波器10と、送受信機20と、信号処理ユニット30と、操作ユニット40とを備える。なお、図1には、送受波器10と、送受信機20と、信号処理ユニット30が図示され、操作ユニット40は、省略されている。操作ユニット40は、物標計測装置1に対する操作入力のために用いられる。図2の各部には、図示しない電力供給部から電力が供給される。電力供給部は、たとえば、リチウムイオンバッテリー等の充電可能な二次電池を備える。
【0022】
送受波器10は、電気信号と超音波振動を相互に変換可能な素子を備える。送受波器10は、超音波である送信波を利用して水中を探知する。図1に示すように、送受波器10は、フロート7の下面中央に取り付けられる。送受波器10は、鉛直下向きに配置され、水面付近から水中に向かって下向きに超音波(送信波)を送波する。
【0023】
送受波器10は、送波器11と、受波器12とを備える。受波器12は、4つの受信チャンネルに分かれた複数の素子を有する。送波器11は、水中に向けてパルス状の送信波を送波する。奥行き方向の分解能を高めるためには、なるべく短いパルスで送信波を送波することが好ましい。受波器12のそれぞれの受信チャンネルは、水中の物標から反射する反射波を受波する。送受波器10は、受波した反射波に基づく電気信号を、送受信機20に送信する。
【0024】
ここで、送受波器10は、4つの受信チャンネルが反射波を受波するタイミングの差、すなわち、受波する反射波の位相差に基づいて、物標の位置を取得する。これにより、公知のスプリットビーム方式による3次元的な探知が実現される。なお、送受波器10の構造は、適宜変更可能である。たとえば、受波器12の素子により、送波と受波の両方を行うように、送受波器10が構成されてもよい。
【0025】
送受信機20は、電気ケーブルを介して送受波器10に接続される。送受信機20は、送受波器10に送信波を送波させるための電気信号を、電気ケーブルを介して送受波器10に出力する。また、送受信機20は、反射波に基づいて送受波器10が取得した電気信号を、電気ケーブルを介して取得する。そして、送受信機20は、送受波器10から取得した電気信号を、デジタル信号である受信信号に変換して、信号処理ユニット30に送信する。ここで、送受信機20は、上記4つの受信チャンネルにより取得される電気信号を、それぞれ、受信信号に変換して、信号処理ユニット30に送信する。
【0026】
信号処理ユニット30は、公知のコンピュータとして構成される。信号処理ユニット30は、通信ケーブルにより送受信機20に接続される。信号処理ユニット30は、通信ケ
ーブルを介して、送受信機20と通信を行う。信号処理ユニット30は、上記の通信により、送受信機20から受信信号を取得する。信号処理ユニット30は、得られた受信信号に対して物標計測のための処理を行う。
【0027】
信号処理ユニット30は、送信制御部31と、物標エコー信号抽出部32と、ピーク検出部33と、ピーク到来方向算出部34と、強度差算出部35と、時間差算出部36と、物標計測部37と、記憶制御部38と、を備える。
【0028】
信号処理ユニット30は、CPU(CentralProcessing Unit)等の演算処理回路と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備える。記憶媒体には、物標計測のための処理を実現するためのプログラムが記憶されている。信号処理ユニット30は、このプログラムにより、図2に示す各部の機能を実行する。すなわち、図2には、プログラムに基づき信号処理ユニット30が実行する機能ブロックが示されている。
【0029】
送信制御部31は、送受信機20を介して送波器11に送信波を出力させるための制御を行う。物標エコー信号抽出部32は、送受信機20から取得した受信信号に対して、魚からの反射波に基づくエコー信号を抽出する。具体的には、物標エコー信号抽出部32は、受波器12の4つの受信チャンネルによりそれぞれ受波された反射波に基づく受信信号を加算して加算信号を生成し、生成した加算信号を包絡線検波してエコー信号を生成する。そして、物標エコー信号抽出部32は、所定の閾値以上のエコー信号を魚からの反射波に基づくエコー信号として抽出する。
【0030】
図3は、エコー信号の一例を示す図である。なお、図3では、波形の反射位置が容易に把握できるように、横軸が水深に変換されて示されている。ここで、水深は、送信波の送波から反射波の受波までの時間に水中の音速を乗算した値を2で除することにより取得される。また、図3の縦軸には、エコー信号に基づくターゲットストレングスが設定されている。ターゲットストレングスは、超音波(送信波)が物標に当たって散乱する反射波の一部が入射方向に戻ってくる度合いを示すパラメータであり、エコー信号の強度と実質的に等価である。ターゲットストレングスは、デシベル値で表現される。
【0031】
図2に戻り、物標エコー信号抽出部32は、ターゲットストレングスの値が、図3に示す所定の閾値Th1以上であるエコー信号を、魚のエコー信号として抽出する。ただし、網5等からの反射波を除外するために、送波から受波までの時間が長過ぎる範囲のエコー信号は、魚のエコー信号の抽出の対象から除かれる。たとえば、水深が1~4mの範囲が、魚のエコー信号の抽出範囲に設定される。物標エコー信号抽出部32は、魚からの反射波に基づくエコー信号を、ピーク検出部33に出力する。
【0032】
ピーク検出部33は、物標エコー信号抽出部32により抽出された魚のエコー信号から、当該エコー信号に含まれるピークを検出する。一般的に、1匹の魚に由来するエコー信号において、信号レベルの時間推移を示す曲線は、たとえば図3に示すように、極大値と極小値が交互に現れる複雑な形状となる。ピーク検出部33は、魚のエコー信号に含まれる複数のピークをそれぞれ検出する。ピーク検出部33は、検出したそれぞれのピークに関するデータを、ピーク到来方向算出部34に出力する。
【0033】
ピーク到来方向算出部34は、各受信チャンネルが反射波を受波するタイミングのズレ(位相差)に基づいて、ピーク検出部33により検出された複数のピークの到来方向をそれぞれ算出する。到来方向の算出は、上述のスプリットビーム方式により行われる。ピーク到来方向算出部34は、算出した各ピークの到来方向を、強度差算出部35と時間差算出部36にそれぞれ出力する。
【0034】
強度差算出部35および時間差算出部36は、ピーク到来方向算出部34から入力された各ピークの到来方向に基づいて、同一の魚から生じたピークを抽出する。ここで、ピークの抽出は、以下の方法により行われる。
【0035】
一般的に、送受波器10から送波される送信波(超音波)は、魚の各部分(背中や腹等の各部分)のうち、鰾に対して最も強く反射することが知られている。したがって、図3において、魚のエコー信号に含まれる複数のピークP11、P21~P23のうち、信号強度が最も高いピークP11は、鰾で反射した反射波に由来するものと想定され得る。ここでは、当該ピークP11が、第1ピークP1に設定される。
【0036】
第1ピークP1の近傍のタイミングで現れる他のピーク、すなわち、魚のエコー信号に含まれる残りのピークのうち、到来方向が第1ピークP1と略同じであるピークは、第1ピークP1が取得された魚と同じ魚の背中や腹等の部位から得られたものと想定され得る。すなわち、第1ピークP1の到来方向と他のピークの到来方向との差が所定閾値よりも小さい場合、当該他のピークは、第1ピークP1が取得された魚と同じ魚の背中や腹等の部位から得られたものと想定され得る。
【0037】
以上の想定のもと、強度差算出部35および時間差算出部36は、ピーク到来方向算出部34から入力された各ピークの到来方向に基づいて、第1ピークP1との差が所定の閾値よりも小さい到来方向の他のピークを、第2ピークP2として抽出する。強度差算出部35および時間差算出部36は、こうして抽出した第1ピークP1および第2ピークP2を、同一の魚に由来するピークとして、強度差および時間差の算出処理に用いる。
【0038】
図3の例では、ピークP21~P23の到来方向と、第1ピークP1の到来方向との差分が所定閾値より小さい場合に、これらピークP21~P23が、第2ピークP2として抽出される。この場合、ピークP21、P22は、ピークP11よりも近い(受波タイミングが早い)ため、魚の背びれや背中等からの反射波に基づくピークであると想定される。また、ピークP23は、ピークP11よりも遠い(受波タイミングが遅い)ため、魚の腹等からの反射波に基づくピークであると想定される。
【0039】
強度差算出部35は、上記方法により抽出した第1ピークP1と第2ピークP2との強度差を算出し、算出した強度差を物標計測部37に送信する。たとえば、図3の例において、強度差算出部35は、ピークP11(第1ピークP1)とピークP21(第2ピークP2)との強度差L1と、ピークP11(第1ピークP1)とピークP22(第2ピークP2)との強度差L2と、ピークP11(第1ピークP1)とピークP23(第2ピークP2)との強度差L3とを算出し、算出した強度差L1~L3を物標計測部37に送信する。
【0040】
時間差算出部36は、上記方法により抽出した第1ピークP1と第2ピークP2との時間差を算出し、算出した時間差を物標計測部37に送信する。たとえば、図3の例において、時間差算出部36は、ピークP11(第1ピークP1)とピークP21(第2ピークP2)との時間差T1と、ピークP11(第1ピークP1)とピークP22(第2ピークP2)との時間差T2と、ピークP11(第1ピークP1)とピークP23(第2ピークP2)との時間差T3とを算出し、算出した時間差T1~T3を物標計測部37に送信する。
【0041】
物標計測部37は、強度差算出部35から入力された第1ピークP1と第2ピークP2との強度差および時間差算出部36から入力された第1ピークP1と第2ピークP2との時間差に基づいて、魚の大きさおよび/または重さに関するデータを取得する。具体的に
は、物標計測部37は、時間差に基づいて、魚の体高に関するデータを取得し、取得した体高に関するデータと強度差とに基づいて、魚の重さに関するデータを取得する。以下、これらデータの取得方法について説明する。
【0042】
図4(a)~図4(c)は、第1ピークP1と第2ピークP2との時間差と魚の体高との関係を示す図である。
【0043】
図4(a)は、送信波(超音波)が魚の鰾で反射された場合の反射波R1の状態を示し、図4(b)、(c)は、それぞれ、送信波(超音波)が魚の背中および腹で反射された場合の反射波R2、R3の状態を示している。上記のように、送受波器10から送波される送信波(超音波)は、魚の各部分(背中や腹等の各部分)のうち、鰾に対して最も強く反射することが知られている。したがって、反射波R1に基づくエコー信号のピークは、上記第1ピークP1に相当し、反射波R2、R3に基づくエコー信号のピークは、それぞれ、上記第2ピークP2に相当する。
【0044】
ここで、魚の背中からの反射波に基づく第2ピークP2と第1ピークP1との時間差は、図4(b)に示すように、鰾から背中までの距離Haに対応する。すなわち、この時間差に魚体内の音速を乗じて2で除することにより、距離Haを算出できる。また、魚の腹からの反射波に基づく第2ピークP2と第1ピークP1との時間差は、図4(c)に示すように、鰾から腹までの距離Hbに対応する。すなわち、この時間差に魚体内の音速を乗じて2で除することにより、距離Hbを算出できる。
【0045】
したがって、背中からの反射波R2または腹からの反射波R3に基づく第2ピークP2と、鰾からの反射波に基づく第1ピークP1との時間差によって、魚の体高を算出できる。たとえば、魚の背中からの反射波R2に基づく第2ピークP2と、鰾からの反射波に基づく第1ピークP1との時間差を所定の関係式(魚の体内の音速と、距離Haと体高との関係とを考慮した関係式)に適用することにより、魚の体高を算出できる。ここで、魚の背中からの反射波R2に基づく第2ピークP2は、閾値Th1以上のエコー信号のピークのうち、最も早く現れる第2ピークP2(図3では水深が最も小さいピークP22)が相当する。したがって、この第2ピークP2と第1ピークとの時間差(図3では時間差T2)を、体高の算出に用いればよい。
【0046】
なお、この体高をH(単位:cm)とすると、魚の重さW(単位:g)は、たとえば、以下の関係式で表され得る。
【0047】
W = a × H …(1)
【0048】
式(1)の両辺に対して対数をとることにより、以下の関係式が成り立つ。
【0049】
logW = loga + b× logH …(2)
【0050】
したがって、重さWと体高Hに対し共に対数をとり、回帰直線を計算することで、回帰直線の切片と傾きから係数a、bを求めることができる。求めた係数a、bを上記式(1)に適用することにより、体高Hから魚の重さWを算出できる。
【0051】
しかしながら、魚の重さWは、体高Hだけでなく魚の体幅Dの影響も受けるものと考えられる。したがって、体幅D(単位:cm)を用いて、上記式(1)は、次式のように修正され得る。
【0052】
W = a × H× D …(3)
【0053】
しかしながら、魚のエコー信号から体幅Dを直接求めることができない。
【0054】
そこで、発明者は、上記第1ピークP1と第2ピークP2との強度差を用いて、魚の体幅Dを算出することを検討した。第2ピークP2は、たとえば、上記と同様、魚の背中からの反射波に基づくエコー信号のピーク(図3では、ピークP22)を用い得る。
【0055】
図4(d)は、体幅Dの算出に用いるパラメータを示す図である。
【0056】
図4(d)において、Lbは、魚の体長、Lsは、鰾の長さである。鰾は、魚の成長に伴い略同様に成長する。すなわち、体長Lbと鰾の長さLsとは比例関係にある。したがって、以下の関係式が成り立つ。
【0057】
Ls = k × Lb …(4)
【0058】
式(4)の両辺に対し対数をとることにより、以下の関係式が成り立つ。
【0059】
logLs = logLb +logk …(5)
【0060】
ここで、鰾の幅は鰾の長さで決まると考えられるため、鰾の反射強度は、鰾の長さLsの2乗(面積)に比例する。また、魚体の反射強度は、体長Lbと体幅Dの積(魚体の面積)に比例すると考えられる。したがって、鰾からの反射波のピーク強度をTs(P1)とし、背中からの反射波のピーク強度をTs(P2)とすると、以下の関係式が成り立つ。
【0061】
Ts(P1) = ks × Ls2 …(6)
Ts(P2) = kb × Lb × D …(7)
【0062】
式(6)、(7)の両辺に対し対数をとってデシベル換算することにより、以下の関係式が成り立つ。
【0063】
TS(P1) =20logLs + 10logks …(8)
TS(P2) =10logLb + 10logD + 10logkb …(9)
【0064】
上記式(8)、(9)において、TS(P1)、TS(P2)は、式(6)、(7)の左辺をデシベル換算する際に、次式で置換されている。
【0065】
TS(P1) = 10logTs(P1) …(10)
TS(P2) = 10logTs(P2) …(11)
【0066】
TS(P1)は、上記第1ピークP1(鰾に基づくエコー信号のピーク)の強度に相当し、TS(P2)は、上記第2ピークP2(背中に基づくエコー信号のピーク)に相当する。
【0067】
ここで、式(10)、(11)の差を計算すると、次の関係式が成り立つ。
【0068】
TS(P2) - TS(P1)= 10logLb + 10logD - 20logLs + TScmb - TScms …(12)
【0069】
ただし、TScmb、TScmsは、以下の式で表される。
【0070】
TScmb = 10logkb …(13)
TScms = 10logks …(14)
【0071】
上記式(12)に式(5)を適用すると、以下の関係式が得られる。
【0072】
TS(P2) - TS(P1)= - 10logLb + 10logD + α = 10log(D/Lb) + α …(15)
【0073】
ただし、定数αは、次式で表される。
【0074】
α = TScmb -TScms - 20logk …(16)
【0075】
関係式(15)から、第1ピークP1と第2ピークP2の強度差が、魚の体幅Dと体長Lbに依存することが分かる。すなわち、第1ピークP1と第2ピークP2の強度差は、魚の肥満度を表す指標になると考えられる。関係式(15)を用いることにより、魚の体幅Dを第1ピークP1と第2ピークP2の強度差から魚の体幅Dを算出できる。こうして、上記関係式(3)の体幅Dが取得され得る。
【0076】
ここで、体長Lbと体高Hが比例関係にあるとすると、関係式(3)は、次式に変形される。
【0077】
W = a × H× Lb × (D/Lb) …(17)
【0078】
ここで、関係式(17)の両辺に対数をとった関係式に上記関係式(15)を適用して、係数および指数を整理すると、次式が得られる。
【0079】
logW = a' + b'logH+ c'ΔTS …(18)
【0080】
ここで、ΔTSは、第1ピークP1と第2ピークP2の強度差(単位:dB)である。
【0081】
したがって、logW、logH、ΔTSから、重回帰分析を行って、係数a'、b'、c'を求めることにより、魚の重さWを以下の式で算出できる。
【0082】
W = 10a'× Hb' × 10c'ΔTS …(19)
【0083】
関係式(19)において、ΔTSは、第1ピークP1と第2ピークP2の強度差であり、体高Hは、第1ピークP1と第2ピークP2との時間差により算出できる。よって、図2の強度差算出部35により算出された強度差と、時間差算出部36により算出された時間差とによって、魚の重さWを取得することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、魚ごとの重さWを取得する処理は行われず、生簀2に収容されている魚の平均的な重さを取得する処理が行われる。ただし、魚の平均的な重さを取得する処理に代えて、あるいは、この処理とともに、魚ごとの重さWを取得する処理が行われてもよい。以下、魚の平均的な重さを取得する処理について説明する。
【0085】
物標計測部37は、多数の魚から得られた強度差および時間差に基づいて、強度差と時間差とを2軸とする2次元ヒストグラムを生成する。2次元ヒストグラムの生成には、ある程度の時間(数時間~数十時間)継続してエコー信号を観測することにより得られた多数のエコー信号が利用される。
【0086】
図5図8は、強度差と時間差を2軸とする2次元ヒストグラムの一例を示す図である
図5図8において、縦軸は強度差(相対レベル)であり、横軸は時間差(相対位置)である。ここでは、時間差が、第1ピークP1が取得された水深に対する第2ピークP2が取得された水深の相対位置に変換されて横軸に規定されている。
【0087】
図5図8の2次元ヒストグラムは、上記構成を備える物標計測装置1を実際に生簀2に設置して得られた受信信号に基づいて生成されたものである。図5および図6は、それぞれ、ブリから得られた2次元ヒストグラムであり、図7および図8は、それぞれ、真鯛から得られた2次元ヒストグラムである。図6のヒストグラムは、図5のヒストグラムよりもブリが成長した段階で取得されたデータに基づくものであり、図8のヒストグラムは、図7のヒストグラムよりも真鯛が成長した段階で取得されたデータに基づくものである。
【0088】
物標計測部37は、たとえば、2次元ヒストグラムから、魚の鰾から反射された反射波に基づく第1ピークP1と魚の背中から反射された反射波に基づく第2ピークP2との強度差および時間差の代表値をそれぞれ取得する。図5図8において、一点鎖線で囲まれた領域に、第1ピークP1(鰾)と第2ピークP2(背中)との強度差および時間差のデータ群が含まれている。物標計測部37は、2次元ヒストグラムに対して、これらデータ群が存在し得る抽出範囲を設定する。ここでは、抽出範囲として、魚の種類ごとに予め決められた範囲が用いられ得る。物標計測部37は、抽出範囲において、度数が集中する位置の強度差と時間差を、代表値として取得する。
【0089】
たとえば、物標計測部37は、矩形の抽出範囲を2次元ヒストグラムに設定し、当該抽出範囲に含まれるデータ群に対して、縦軸(強度差)および横軸(時間差)ごとにカーネル密度推定の処理を適用する。これにより、物標計測部37は、抽出範囲に含まれるデータ群に対して、平滑化された度数分布曲線を、縦軸(強度差)と横軸(時間差)のそれぞれについて取得する。そして、物標計測部37は、取得した各度数分布曲線において、度数が最大となる強度差および時間差を取得し、取得した強度差および時間差を、当該生簀2に収容された魚群に対する強度差および時間差の代表値に設定する。
【0090】
なお、代表値の取得方法は、これに限られるものではなく、平均的な強度差および時間差が代表値に設定される限りにおいて、他の方法が用いられてもよい。たとえば、物標計測部37は、抽出範囲に対してカーネル密度推定を適用することなく、抽出範囲に含まれるデータから、強度差および時間差のモード(最高度数の強度差および時間差)を取得し、取得したモードを、当該生簀2に収容された魚群に対する強度差および時間差の代表値に設定してもよい。あるいは、物標計測部37は、抽出範囲における度数分布の重心位置を求め、当該重心位置に対応する強度差および時間差を、当該生簀2に収容された魚群に対する強度差および時間差の代表値に設定してもよい。この他、抽出範囲における強度差および時間差の平均値や中間値等が、当該生簀2に収容された魚群に対する強度差および時間差の代表値に設定されてもよい。
【0091】
図5および図6の例(ブリ)では、それぞれ、強度差(相対レベル)の代表値として-18デシベル付近の値と-14デシベル付近の値が取得され、時間差(相対位置)の代表値として-0.05m付近の値と-0.06m付近の値が取得される。また、図7および図8の例(真鯛)では、それぞれ、強度差(相対レベル)の代表値として-21デシベル付近の値と-19デシベル付近の値が取得され、時間差(相対位置)の代表値として-0.03m付近の値と-0.05m付近の値が取得される。これら代表値は、何れも、物標(ブリ、真鯛)の成長に伴う変化となっている。
【0092】
物標計測部37は、取得した強度差および時間差の代表値を上記関係式(19)に適用して、当該生簀2に収容されている魚の平均的な重さWを算出する。こうして、魚の平均
的な重さWが取得される。
【0093】
図9は、物標計測装置1における処理を示すフローチャートである。
【0094】
処理が開始されると、まず、送信制御部31が、送受信機20に送信波の送波を実行させる(S11)。これにより、送受波器10からパルス状の送信波が所定周期で送波される。この送波に応じて、送受信機20は、周期ごとに、送受波器10の各受信チャンネルから入力される受波信号に基づいて受信信号を生成し、生成した受信信号を物標エコー信号抽出部32に送信する(S12)。
【0095】
物標エコー信号抽出部32は、各受信チャンネルの受信信号を加算してエコー信号を生成し、閾値Th1以上の範囲のエコー信号を魚のエコー信号として抽出する(S13)。物標エコー信号抽出部32は、抽出した魚のエコー信号を、ピーク検出部33に送信する。ピーク検出部33は、魚のエコー信号に含まれる複数のピークを検出し、検出結果をピーク到来方向算出部34に送信する(S14)。ピーク到来方向算出部34は、送受波器10の4つの受信チャンネルの受波タイミングの差(位相差)に基づいて、各ピークの到来方向を算出し、算出結果を強度差算出部35および時間差算出部36に送信する(S15)。
【0096】
強度差算出部35は、ピーク検出部33により検出された複数のピークのうち、最高強度のピークを第1ピークP1に設定し、当該第1ピークP1に対して到来方向の差が所定閾値よりも小さいピークを第2ピークP2に設定する。そして、強度差算出部35は、第1ピークP1と第2ピークP2との強度差を算出し、算出した強度差を物標計測部37に送信する(S16)。
【0097】
時間差算出部36は、強度差算出部35と同様の処理により、第1ピークP1と第2ピークP2を設定する。そして、時間差算出部36は、第1ピークP1と第2ピークP2との時間差を算出し、算出した時間差を物標計測部37に送信する(S17)。
【0098】
物標計測部37は、強度差算出部35および時間差算出部36から入力される強度差および時間差を集積し、集積した強度差および時間差により、上記のように、強度差および時間差を2軸とする2次元ヒストグラムを生成する。そして、物標計測部37は、生成した2次元ヒストグラムに基づき、上記のように、強度差および時間差の代表値を取得し、取得した代表値を上記関係式(19)に適用して当該生簀2に収容されている魚の平均的な重さWを算出する(S18)。物標計測部37は、算出した重さWを、記憶制御部38に送信する。
【0099】
記憶制御部38は、受信した重さWを、自身の記憶媒体に記憶させるとともに、物標計測装置1に着脱可能に装着された外部メモリ50に記憶させる(S19)。これにより、物標計測装置1における処理が終了する。使用者は、外部メモリ50を物標計測装置1から取り外して、外部のコンピュータ等に装着することにより、魚の平均的な重さWを参照できる。これにより、使用者は、生簀2内の魚の成長具合を把握することができる。
【0100】
<検証例>
発明者は、上記実施形態における処理を、実際に、生簀で養殖されているブリに対して行って、ブリの平均的な重さを計測した。データの測定は、2018年の7月末~11月末までの間に、4回実施した。
【0101】
(1)1回目:7月30日、31日、8月1日
(2)2回目:10月1日、2日
(3)3回目:10月30日、31日、11月1日
(4)4回目:11月28日、29日、30日
【0102】
各回の計測において、ブリの体重の実測も行った。実測値(平均値)は以下の通りであった。
【0103】
(1)1回目:370g
(2)2回目:1040g
(3)3回目:1290g
(4)4回目:1650g
【0104】
図10(a)は、各測定日に取得された相対位置(第1ピークP1と第2ピークP2の時間差を両者の水深の差に変換したもの)の変化を示すグラフである。また、図10(b)は、各測定日に取得された相対レベル(第1ピークP1と第2ピークP2の強度差)の変化を示すグラフである。ここでは、第2ピークP2として、上記実施形態と同様、魚(ブリ)の背中からの反射波に基づくピークが用いられた。
【0105】
図10(c)は、各測定日に取得された背中の反射波に基づく第2ピークP2の数を示すグラフである。測定日ごとに測定時間が異なるため、第2ピークP2の検出数が異なっている。最短の測定時間は、11月28日の3時間半であり、最長の測定時間は、8月1日の24時間であった。
【0106】
上記計測により取得されたデータに基づき、上述の回帰直線の計算により、上記関係式(1)の係数a、bを求めたところ、係数aは2.93であり、係数bは4.35であった。これらの値を用いて、上記関係式(1)に基づき各回の測定における魚(ブリ)の平均的な重さWを求めたところ、実測値に対する重さWの誤差率の平均値は5.8%であった。特に、測定時間が短く十分なデータ量を確保できなかった11月28日を除くと、誤差率の平均値は4.5%であった。したがって、上記関係式(1)によっても、魚(ブリ)の平均的な重さを、低い誤差率で取得できた。
【0107】
次に、上記計測により取得されたデータに基づき、上述の重回帰分析により、上記関係式(19)の係数a'、b'、c'を求めたところ、係数a'は1.38、係数b'は3.30、係数c'は0.0146であった。これらの値を用いて、上記関係式(19)に基づき各回の測定における魚(ブリ)の平均的な重さWを求めたところ、実測値に対する重さWの誤差率の平均値は4.9%であった。特に、測定時間が短く十分なデータ量を確保できなかった11月28日を除くと、誤差率の平均値は3.4%であった。このように、上記関係式(19)を用いることにより、魚(ブリ)の平均的な重さの誤差率を顕著に抑制でき、また、上記関係式(1)を用いた場合に比べて誤差率を大幅に改善できた。これにより、上記実施形態による処理の効果を確認できた。
【0108】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0109】
第1ピークP1と第2ピークP2の強度差に基づいて物標(魚)の重さに関するデータが取得される。上記関係式(15)に示したように、強度差は、物標(魚)の体幅Dと体長Lbの比に依存する。すなわち、強度差は、物標(魚)の肥満度を表す指標となり得る。したがって、第1ピークP1と第2ピークP2の強度差を用いることにより、物標(魚)の重さをより正確に推定することができる。
【0110】
また、物標計測部37は、第1ピークP1と第2ピークP2の時間差をさらに用いて物
標(魚)の重さに関するデータを取得する。具体的には、物標計測部37は、第1ピークP1と第2ピークP2の時間差に基づいて物標(魚)の体高Hを算出し、算出した体高Hと強度差とを関係式(19)に適用して、物標(魚)の重さを算出する。これにより、物標(魚)の重さに関するデータを精度良く取得することができる。
【0111】
また、物標計測部37は、複数のエコー信号に対し算出された強度差および時間差のヒストグラムに基づいて、物標(魚)の重さに関するデータを取得する。より詳細には、物標計測部37は、このヒストグラムにおいて強度差および時間差の代表値を取得し、取得した代表値に基づいて、物標(魚)の平均的な重さを取得する。これにより、上記検証例において示したとおり、誤差率が顕著に抑制された物標(魚)の平均的な重さを取得できる。よって、物標(魚)の平均的な重さに関するデータを、精度良く取得することができる。
【0112】
なお、物標(魚)の重さに関するデータをより精度良く取得するためには、上記実施形態で示したように、エコー信号に含まれる複数のピークのうち、第1ピークP1のタイミングよりも早く現れる第2ピークP2に対して、強度差および時間差を取得して、物標(魚)の重さに関するデータを取得することが好ましい。
【0113】
すなわち、上記実施形態のように、送信波が下向きに送波される場合、第1ピークP1のタイミングよりも遅い範囲には、鰾からの2次エコーや3次エコーに基づくピークが現れ得る。このため、これらのピークと腹等からの反射波に基づくピークとが重なり合いやすく、腹等からの反射波に基づくピークを第2ピークP2として精度良く取得することが困難である。
【0114】
これに対し、第1ピークP1のタイミングよりも早い範囲には、鰾からの2次エコーや3次エコーに基づくピークが存在しないため、背中等からの反射波に基づく第2ピークP2を精度良く取得できる。よって、第1ピークP1のタイミングよりも早く現れる第2ピークP2から取得された強度差および時間差を用いることにより、物標(魚)の重さに関するデータをより精度良く取得することができる。
【0115】
なお、上記実施形態のように、送信波が下向きに送波される場合、背中からの反射波に基づくピークは、通常、図3の閾値Th1以上のエコー信号に含まれる複数のピークのうち最も早く現れるピークである。このため、これら複数のピークのうち最も早く現れるピークは、略間違いなく、物標(魚)の背中に基づくピークであると想定され得る。よって、上記実施形態のように、最も早く現れるピークを、魚の重さの取得処理に用いる第2ピークP2に設定することにより、物標(魚)の重さに関するデータをより精度良く取得することができる。
【0116】
また、上記実施形態では、ピーク到来方向算出部34により第1ピークP1と他のピークの到来方向が算出され、第1ピークP1の到来方向に対して所定閾値よりも到来方向の差が小さい他のピークが第2ピークP2に設定されている。これにより、同一の物標(魚)からの第1ピークP1および第2ピークP2が魚の重さの取得処理に用いられ、他の魚からのエコーに基づくピークや突発的なノイズ等に基づくピークは、処理対象から除かれる。よって、物標(魚)の重さに関するデータをより精度良く取得することができる。
【0117】
ここで、ピーク到来方向算出部34は、送受波器10の4つの受信チャンネルが反射波を受波するタイミングの差(位相差)に基づいて、各ピークの到来方向を算出する。これにより、スプリットビーム方式に基づいて、各ピークの到来方向を円滑かつ精度良く算出することができる。
【0118】
<変更例>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではない。また、本発明の実施形態は、上記構成の他に種々の変更が可能である。
【0119】
たとえば、図9のステップS18では、必ずしも、魚の平均的な重さWが算出されなくてもよい。たとえば、ステップS18において、上記関係式(15)に基づき、魚の平均的な体幅Dあるいは平均的な体幅Dと体長Lbとの割合(D/Lb)が、魚の大きさおよび/または重さに関するデータとして算出されてもよい。これらのデータによっても、物標(魚)の大きさや肥満度を把握できる。この場合、ステップS19では、算出された平均的な体幅Dあるいは割合(D/Lb)と、時間差をもとに算出された魚の体高Hとが、外部メモリ50に記憶される。魚の平均的な重さを求める場合は、たとえば、外部メモリ50が装着された外部のコンピュータにおいて、これらのデータに基づき重さを算出すればよい。この場合も、上記実施形態と同様、魚の平均的な重さを精度良く取得できる。
【0120】
また、ステップS18の処理が、外部のコンピュータにより行われてもよい。この場合、図9のフローチャートからステップS18が省略される。また、ステップS19では、ステップS16、S17で算出された強度差および時間差のデータ群が外部メモリ50に記憶される。そして、外部メモリ50が装着された外部のコンピュータにおいて、外部メモリ50からデータ群が読み出されて、ステップS18と同様の処理が行われる。これにより、魚の平均的な重さが算出される。この場合も、上記実施形態と同様、魚の平均的な重さWを精度良く取得できる。
【0121】
また、送受波器10の受信チャンネルは、4つに限らず、5つ以上設けられてもよい。この場合も、スプリットビーム方式に基づく処理により、各ピークの到来方向を算出できる。
【0122】
また、送受波器10の受信チャンネルが、2つであってもよい。この場合、この送受波器10は、公知のデュアルビーム方式の送受波器に置き換えられ得る。送受波器10は、送波器11と、2つの受信チャンネルを有する受波器12と、を備える。送波器11は、上記実施形態と同様、水中に向けて送信波を送波する。受波器12の2つの受信チャンネルは、指向性が互いに異なる受信チャンネルであって、それぞれ、水中の物標から反射する反射波を受波する。そして、送受波器10は、受波した反射波に関するデータを電気信号に変換する。
【0123】
デュアルビーム方式が用いられる場合、ピーク到来方向算出部34は、2つの受信チャンネルが受波するエコー強度の差に基づいて、反射波の到来方向が送信波の中心軸の方向となす角度を求める。これにより、第1ピークP1と第2ピークP2が同一の魚に由来するものか否かを判定することができる。
【0124】
指向性が異なる2つの受信チャンネルを実現するために、たとえば、寸法が異なる2つの素子を受波器12に配置し、それぞれの素子で受信することで、2つの受信チャンネルを形成ことができる。これに限らず、たとえば、1つの素子を使って、低周波と高周波の2周波で受信し、2つの受信チャンネルを形成することもできる。なお、送受波器10の構造は、適宜変更可能である。たとえば、送波器11として、受波器12の素子を使って、送波と受波を同じ素子によって行う構成としてもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、デシベル換算されたエコー信号(ターゲットストレングス)により処理が行われるため、図3に示すように、第1ピークP1の強度と第2ピークP2の強度との差分として強度差が取得された。しかしながら、デシベル変換される前の値(線形値)で処理が行われる場合は、第1ピークP1の強度と第2ピークP2の強度との比
として、強度差が取得されればよい。この場合も、比である強度差を用いて上記実施形態と同様の処理がなされることにより、物標(魚)の大きさおよび/または重さに関するデータが取得され得る。
【0126】
また、信号処理ユニット30は、物標の大きさや重さに関するデータを表示するための表示データを生成してもよい。この場合、信号処理ユニット30は、当該信号処理ユニット30に接続される表示装置に、当該表示データを出力してもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、第1ピークP1と第2ピークP2の強度差および時間差に基づいて、物標の重さに関するデータが取得されたが、物標の体高Hや体長Lbに対する体幅Dの割合(D/Lb)等、物標の大きさに関するデータが取得されてもよい。物標の体高Hは、図4(a)~(c)を参照して説明したとおり、第1ピークP1と第2ピークP2の時間差に基づいて所得され、物標の体高Hや体長Lbに対する体幅Dの割合(D/Lb)は、上記関係式(15)に第1ピークP1と第2ピークP2の強度差を適用して取得され得る。この他、物標の体幅Dが、物標の大きさに関するデータが取得されてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、強度差および時間差を2軸とする2次元ヒストグラムにより、生簀2に収容された魚の平均的な重さが取得されたが、魚ごとに取得される強度差および時間差に基づいて、1匹ずつ、魚の重さや大きさに関するデータが取得されてもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、水面側から水中に向かって下向きに送信波(超音波)が送波されるよう、送受波器10が鉛直下向きに設けられたが、送受波器10を網5の底部に配置して、上方の水面に向かって鉛直上向きに送信波(超音波)を送波してもよい。この場合、魚の背中からの反射波に基づく第2ピークP2は、第1ピークP1より遅く現れ、腹からの反射波に基づく第2ピークP2は、第1ピークP1より早く現れることになる。この場合も、鰾からの2次エコーや3次エコーの影響を回避するために、第1ピークP1よりも早く現れる腹からの反射波に基づく第2ピークP2を、物標の大きさおよび/または重さを取得するための第2ピークP2として用いることが好ましい。
【0130】
なお、上記実施形態では、説明の便宜上、強度差と時間差を2軸とする2次元ヒストグラムが図5図8に示されたが、このような2次元ヒストグラムは、必ずしも生成されなくてもよく、データ群に対するデータ処理により、図5図8を参照して説明した処理と同様の処理が行われてもよい。たとえば、上記実施形態において、強度差および時間差の代表値を取得するための抽出範囲(強度差の範囲と時間差の範囲)に含まれるデータ群のみを抽出し、抽出したデータ群に対して強度差および時間差ごとにカーネル密度推定の処理を適用して度数分布曲線を求め、求めた度数分布曲線において度数が最高となる強度差および時間差を、強度差および時間差の代表値として取得してもよい。あるいは、抽出したデータ群に対し、強度差および時間差ごとに、出現頻度が最大となる強度差および時間差を求め、求めた強度差および時間差を、強度差および時間差の代表値として取得してもよい。
【0131】
また、グラフとしてのヒストグラムが生成されなくともよく、データ処理により、ヒストグラムに基づく処理が行われればよい。請求項4、5の構成は、グラフとしてのヒストグラムが生成されることを限定するものではなく、データ処理によりヒストグラムを想定した処理が行われることを含むものである。
【0132】
また、上述のように、送受波器10は、奥行き方向の分解能を高めるためには、なるべく短いパルスで送信波(超音波)を送波することが好ましい。しかしながら、短いパルスを用いる代わりに、チャープ信号と称される周波数を時間的に変化させるパルスを用いて、受信信号に対してパルス圧縮を適用してもよい。
【0133】
また、データ取得の対象とされる物標は、養殖場(たとえば、生簀2)で養殖される魚に限定されない。たとえば、送受波器10を漁船に取り付けて、海で泳ぐ略同一の大きさや重さの魚の群れについて重さや大きさを計測するようにしてもよい。
【0134】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 物標計測装置
10 送受波器
32 物標エコー信号抽出部
33 ピーク検出部
34 ピーク到来方向算出部
35 強度差算出部
36 時間差算出部
37 物標計測部
【用語】
【0136】
必ずしも全ての目的または効果・利点が、本明細書中に記載される任意の特定の実施形態に則って達成され得るわけではない。従って、例えば当業者であれば、特定の実施形態は、本明細書中で教示または示唆されるような他の目的または効果・利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つまたは複数の効果・利点を達成または最適化するように動作するように構成され得ることを想到するであろう。
【0137】
本明細書中に記載される全ての処理は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサを含むコンピューティングシステムによって実行されるソフトウェアコードモジュールにより具現化され、完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶装置に記憶することができる。一部または全ての方法は、専用のコンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0138】
本明細書中に記載されるもの以外でも、多くの他の変形例があることは、本開示から明らかである。例えば、実施形態に応じて、本明細書中に記載されるアルゴリズムのいずれかの特定の動作、イベント、または機能は、異なるシーケンスで実行することができ、追加、併合、または完全に除外することができる (例えば、記述された全ての行為または事象がアルゴリズムの実行に必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態では、動作またはイベントは、例えば、マルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサまたはプロセッサコアを介して、または他の並列アーキテクチャ上で、逐次ではなく、並列に実行することができる。さらに、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能し得る異なるマシンおよび/またはコンピューティングシステムによっても実行され得る。
【0139】
本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。
【0140】
特に明記しない限り、「できる」「できた」「だろう」または「可能性がある」などの条件付き言語は、特定の実施形態が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝達するために一般に使用される文脈内での意味で理解される。従って、このような条件付き言語は、一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要とされる任意の方法であること、または1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するという訳ではない。
【0141】
語句「X、Y、Zの少なくとも1つ」のような選言的言語は、特に別段の記載がない限り、項目、用語等が X, Y, Z、のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであり得ることを示すために一般的に使用されている文脈で理解される(例: X、Y、Z)。従って、このような選言的言語は、一般的には、特定の実施形態がそれぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、またはZの少なくとも1つ、の各々を必要とすることを意味するものではない。
【0142】
本明細書中に記載されかつ/または添付の図面に示されたフロー図における任意のプロセス記述、要素またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能または要素を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、潜在的にモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すものとして理解されるべきである。代替の実施形態は、本明細書中に記載された実施形態の範囲内に含まれ、ここでは、要素または機能は、当業者に理解されるように、関連する機能性に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序で、図示または説明されたものから削除、順不同で実行され得る。
【0143】
特に明示されていない限り、「一つ」のような数詞は、一般的に、1つ以上の記述された項目を含むと解釈されるべきである。従って、「~するように設定された一つのデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことを意図している。このような1つまたは複数の列挙されたデバイスは、記載された引用を実行するように集合的に構成することもできる。例えば、「以下のA、BおよびCを実行するように構成されたプロセッサ」は、Aを実行するように構成された第1のプロセッサと、BおよびCを実行するように構成された第2のプロセッサとを含むことができる。加えて、導入された実施例の具体的な数の列挙が明示的に列挙されたとしても、当業者は、このような列挙が典型的には少なくとも列挙された数(例えば、他の修飾語を用いない「2つの列挙と」の単なる列挙は、通常、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)を意味すると解釈されるべきである。
【0144】
一般に、本明細書中で使用される用語は、一般に、「非限定」用語(例えば、「~を含む」という用語は「それだけでなく、少なくとも~を含む」と解釈すべきであり、「~を持つ」という用語は「少なくとも~を持っている」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「以下を含むが、これらに限定されない。」などと解釈すべきである。) を意図していると、当業者には判断される。
【0145】
説明の目的のために、本明細書中で使用される「水平」という用語は、その方向に関係なく、説明されるシステムが使用される領域の床の平面または表面に平行な平面、または説明される方法が実施される平面として定義される。「床」という用語は、「地面」または「水面」という用語と置き換えることができる。「垂直/鉛直」という用語は、定義された水平線に垂直/鉛直な方向を指します。「上側」「下側」「下」「上」「側面」「より高く」「より低く」「上の方に」「~を越えて」「下の」などの用語は水平面に対して定義されている。
【0146】
本明細書中で使用される用語の「付着する」、「接続する」、「対になる」及び他の関連用語は、別段の注記がない限り、取り外し可能、移動可能、固定、調節可能、及び/または、取り外し可能な接続または連結を含むと解釈されるべきである。接続/連結は、直接接続及び/または説明した2つの構成要素間の中間構造を有する接続を含む。
【0147】
特に明示されていない限り、本明細書中で使用される、「およそ」、「約」、および「実質的に」のような用語が先行する数は、列挙された数を含み、また、さらに所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」及び「実質的に」とは、特に明示されていない限り、記載された数値の10%未満の値をいう。本明細書中で使用されているように、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が先行して開示されている実施形態の特徴は、さらに所望の機能を実行するか、またはその特徴について所望の結果を達成するいくつかの可変性を有する特徴を表す。
【0148】
上述した実施形態には、多くの変形例および修正例を加えることができ、それらの要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されるべきである。そのような全ての修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることを意図し、以下の請求の範囲によって保護される。
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