(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ケイ素またはケイ素-グラファイト複合材電極のためのポリマー結合剤、および電気化学セルにおけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240228BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240228BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240228BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240228BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240228BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240228BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240228BHJP
C08F 220/16 20060101ALI20240228BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20240228BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240228BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240228BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240228BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240228BHJP
C08L 61/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M10/052
C08F220/16
C08F293/00
C08L33/14
C08L33/02
C08L53/00
C08K3/04
C08L61/04
(21)【出願番号】P 2021512486
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 CA2019051253
(87)【国際公開番号】W WO2020047674
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アスレサーニュ, ビルハニュ ドゥザレーニュ
(72)【発明者】
【氏名】浅川 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-113613(JP,A)
【文献】特開2016-171074(JP,A)
【文献】特開2001-279112(JP,A)
【文献】Polymers & Polymer Composites,2005年,Vol.13, No.8,p.807-814
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
H01M4
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に活性な物質、ポリマー、およびポリフェノールを含む電極材料であって、前記ポリマーが、式IおよびIIの化合物:
【化21】
の
共重合に由来するモノマーユニットを含む
コポリマーであり、ここで
R
1は、独立して各存在において、-OHおよび
OH含有基から選択され;そして
R
2およびR
3は、各々独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;
ここで、前記ポリマーは、好ましくは交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであ
る、
電極材料。
【請求項2】
前記ポリマーは、式IIIのコポリマー:
【化16】
であり、ここで
R
1、R
2およびR
3は、請求項1に規定されるとおりであり;そして
nおよびmは、数平均分子量が約2 000g/mol~約250 000g/molであり、好ましくは前記数平均分子量は、約10 000g/mol~約200 000g/mol、または約25 000g/mol~約200 000g/mol、または約25 000g/mol~約150 000g/mol、または約50 000g/mol~約150 000g/mol、または約75 000g/mol~約125 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である、
請求項1に記載の
電極材料。
【請求項3】
R
1
における前記OH含有基が、必要に応じて置換されたC
1-6
アルキル-OHまたは-CO
2
C
1-6
アルキル-OHである、請求項1または2に記載の電極材料。
【請求項4】
前記ポリマーが、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項5】
結合剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項6】
前記コポリマーが、前記結合剤中に含まれる、請求項5に記載の電極材料。
【請求項7】
前記ポリフェノールが、前記結合剤中に含まれる、請求項5または6に記載の電極材料。
【請求項8】
前記結合剤は、1重量%~5重量%または1重量%~3重量%の前記ポリフェノールを含む、請求項
7に記載の電極材料。
【請求項9】
前記電気化学的に活性な物質は、ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質であり、好ましくはケイ素、一酸化ケイ素(SiO)、ケイ素亜酸化物(SiO
x)およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、より好ましくはケイ素亜酸化物(SiO
x、xは0<x<2)である、請求項
1から8のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項10】
前記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、グラファイトまたはグラフェンをさらに含み、好ましくはここで前記グラファイトは、人工グラファイト(例えば、SCMG)であるか、または前記ケイ素対グラファイト比は、50:50重量%までであるか、または5:95重量%~95:5重量%である、請求項
9に記載の電極材料。
【請求項11】
前記電極材料は、導電性材料をさらに含み、好ましくはカーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは前記導電性材料は、カーボンファイバーおよびカーボンブラックの組み合わせであるか、または前記カーボンファイバーは、気相成長カーボンファイバー(VGCF)であるか、または前記カーボンブラックは、Ketjen
TMブラックである、請求項
1~10のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項12】
前記ポリフェノールは、タンニン、カテコール、およびリグニンからなる群より選択されるか、または前記ポリフェノールは、ポリフェノール高分子であり、好ましくは前記ポリフェノール高分子はタンニン酸である、請求項
1~11のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項13】
集電体上に請求項
1~12のいずれか1項に規定されるとおりの電極材料を含む電極。
【請求項14】
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記負電極または正電極のうちの少なくとも一方は、請求項
13に規定されるとおりであり、好ましくは前記負電極は、請求項
13に規定されるとおりであり、前記電解質は、必要に応じて溶媒およびリチウム塩を含む、電気化学セル。
【請求項15】
請求項
14に規定されるとおりの少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用可能な法の下で、2018年9月7日出願の米国仮出願第62/728,531号(その内容は、全ての目的のためにその全体において本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
技術分野は、概して、ポリマー、ポリマー結合剤、これらを含むヒドロゲルポリマー結合剤組成物、これらを含む電極材料、これらの製造方法、および電気化学セルにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ケイ素は、Li15Si4の形成時に約4200mAh/gというその高い理論的比容量のために、将来的な充電式バッテリーの最も有望な負電極材料のうちの1つである。容量は、従来のグラファイト負電極(約372mAh/g)よりおよそ10倍大きい(Liu, Y.ら, Accounts of chemical research 2017, 50.12, 2895-2905;およびHays, K. A.ら, Journal of Power Sources 2018, 384, 136-144を参照のこと)。しかし、ケイ素負電極は、リチウム化の際にひどい体積膨張を経験する;それによって、それらの元の体積の300%超に達し、回復不能な失敗、細粉化および/またはひび割れを引き起こすので、急激な容量漸減および顕著なサイクル寿命低減がもたらされる。
【0004】
いくつかのアプローチが、従来のSiベースの負電極を使用することと関連する容量および安定性の問題を克服するために示唆されている。例えば、一酸化ケイ素および/またはその亜酸化物(すなわち、SiOx)の使用は、その体積膨張を軽減し、サイクル性(cyclability)を増強するために、溶液のうちの1つとして識別されている。しかし、容量は、酸素含有量の増大につれて有意に減少する。大部分の溶液は、ケイ素と炭素材料および/またはポリマー結合剤とを混合して、ケイ素を含めることを必要とした。例えば、SiまたはSiOxとグラファイトまたはグラフェンとを混合して、Si-グラファイトまたはSi-グラフェン複合材電極を形成することは、魅力的な容量を維持すると同時に体積変化に便宜をはかる解決策として提唱されている(Hays, K. A.ら, 前出; Guerfi, A.,ら, Journal of Power Sources 2011, 196.13, 5667-5673;およびLoveridge, M. J.,ら, Scientific Reports 2016, 6, 37787を参照のこと)。
【0005】
ポリ(ビニルジフルオリド)(PVdF)は、市販のバッテリーにおいて、特に、負電極としてグラファイトを含むバッテリーのために最も一般に使用される結合剤のうちの1つである。しかし、PVdFは、Siベースの負電極には不適切である(Hays, K. A.ら, 前出; Guerfi, A.ら, 前出;およびYoo, M.ら, Polymer 2003, 44.15, 4197-4204を参照のこと)。いくつかの結合剤が、リチウム化の間の体積変化を緩和するために使用されている;例えば、アルギネート(セルロースのポリサッカリド誘導体)(Kovalenko, I.ら, Science 2011, 334. 6052, 75-79を参照のこと)、ポリ(アクリル酸)(PAA)(Hays, K. A.ら, 前出;およびKomaba, S.ら, The Journal of Physical Chemistry C 2011, 115.27, 13487-13495を参照のこと)およびポリイミド(PI)(Guerfi, A.ら, 前出を参照のこと)が付与され、部分的に成功した。
【0006】
極性基を有するポリマーは、機械的接着を増強し、結果として電極劣化を防止するために有用であると見出された(Kierzek, K., Journal of Materials Engineering and Performance 2016, 25.6, 2326-2330;およびRyou, M.H.ら, Advanced materials 2013, 25.11, 1571-1576を参照のこと)。例えば、PAAは、Si表面を中和して、副反応を防止し得る。Si表面上のヒドロキシル基はまた、例えば、エステル化反応による共有結合形成を介して中和され得る(Zhao, H.ら, Nano Letters 2014, 14 .11, 6704-6710)。
【0007】
別の解決策は、Siベースの材料を、例えば、自己修復ポリマーまたはヒドロゲルでコーティングすることである。例えば、自己修復ポリマーコーティングを使用すると、ひび割れおよび損傷は、自律的に修復され得る。自己修復ポリマー結合剤は、活性物質の低負荷を伴うSi負電極を作製するにあたって成功裡に付与されている(Wang, C.ら, Nature Chemistry 2013, 5, 1042)。負荷の低減は、負電極体積膨張における制限を可能にする(およそ1mg/cm2)。安定なSiベースの負電極をまた、Si表面に結合するコンフォーマルコーティングを形成するために、導電性ヒドロゲルのインサイチュ重合によって得た。しかし、このような材料における負荷は、なおも非常に低い(Wu, H.ら, Nature Communications 2013, 4, 1943)。
よって、ケイ素負電極のリチウム化の際の顕著な体積膨張にも関わらず、ケイ素ベースのバッテリーの容量および/または安定性を改善することは必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Liu, Y.ら, Accounts of chemical research 2017, 50.12, 2895-2905
【文献】Hays, K. A.ら, Journal of Power Sources 2018, 384, 136-144
【文献】Guerfi, A.,ら, Journal of Power Sources 2011, 196.13, 5667-5673
【文献】Loveridge, M. J.,ら, Scientific Reports 2016, 6, 37787
【文献】Yoo, M.ら, Polymer 2003, 44.15, 4197-4204
【文献】Kovalenko, I.ら, Science 2011, 334. 6052, 75-79
【文献】Komaba, S.ら, The Journal of Physical Chemistry C 2011, 115.27, 13487-13495
【文献】Kierzek, K., Journal of Materials Engineering and Performance 2016, 25.6, 2326-2330
【文献】Ryou, M.H.ら, Advanced materials 2013, 25.11, 1571-1576
【文献】Zhao, H.ら, Nano Letters 2014, 14 .11, 6704-6710
【文献】Wang, C.ら, Nature Chemistry 2013, 5, 1042
【文献】Wu, H.ら, Nature Communications 2013, 4, 1943
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
1つの局面によれば、本発明の技術は、式IおよびIIの化合物:
【化1】
の重合に由来するモノマーユニットを含むポリマーに関し、ここで
R
1は、独立して各存在において、-OHおよび必要に応じて置換されたC
1-6アルキル-OHまたは-CO
2C
1-6アルキル-OHのようなOH含有基から選択され;そして
R
2およびR
3は、各々独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択される。
【0010】
1つの実施形態において、上記ポリマーは、式IIIのコポリマー:
【化2】
であり、ここで
R
1、R
2およびR
3は、本明細書で定義されるとおりであり;そして
nおよびmは、数平均分子量が約2 000g/mol~約250 000g/molであるように選択される整数である。
【0011】
別の実施形態において、本明細書で定義されるとおりのコポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0012】
別の局面によれば、本発明の技術は、本明細書で定義されるとおりのポリマーを含む電極材料に関する。1つの実施形態において、上記電極材料は、電気化学的に活性な物質および上記ポリマーを含む結合剤をさらに含む。
【0013】
別の局面によれば、本発明の技術は、本明細書で定義されるとおりのポリマー、電気化学的に活性な物質、必要に応じて結合剤および必要に応じてポリフェノールを含む電極材料に関する。1つの実施形態において、上記電極材料は、上記結合剤を含み、上記結合剤は、本明細書で定義されるとおりのポリマーを含む。
【0014】
別の局面によれば、本発明の技術は、電気化学的に活性な物質、アミロペクチン、必要に応じて結合剤および必要に応じてポリフェノールを含む電極材料に関する。1つの実施形態において、上記電極材料は、上記結合剤を含み、上記結合剤は、アミロペクチンを含む。別の実施形態において、上記結合剤は、上記ポリフェノールをさらに含む。
【0015】
別の局面によれば、本発明の技術は、電気化学的に活性な物質および結合剤を含む電極材料であって、上記結合剤は、アミロペクチンを含む電極材料に関する。1つの実施形態において、上記結合剤は、ポリフェノールをさらに含む。
【0016】
別の局面によれば、本発明の技術は、電気化学的に活性な物質およびヒドロゲル結合剤を含む電極材料であって、上記ヒドロゲル結合剤は、水溶性ポリマー結合剤およびポリフェノールを含む電極材料に関する。
【0017】
1つの実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質である。例えば、上記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、ケイ素、一酸化ケイ素(SiO)、ケイ素亜酸化物(SiOx)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。例えば、上記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、ケイ素亜酸化物(SiOx)であって、ここでxは、0<x<2であるものである。
【0018】
別の実施形態において、上記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、グラファイトまたはグラフェンをさらに含む。
【0019】
別の実施形態において、上記ポリフェノールは、タンニン、カテコールおよびリグニンからなる群より選択される。例えば、上記ポリフェノールは、ポリフェノール高分子である。例えば、上記ポリフェノール高分子は、タンニン酸である。
【0020】
別の実施形態において、上記水溶性ポリマー結合剤は、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、アミン基、アミド基、およびヒドロキシル基からなる群より選択される官能基を含む。1つの例では、上記水溶性ポリマー結合剤はホモポリマーである。あるいは、上記水溶性ポリマー結合剤はコポリマーである。例えば、上記コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0021】
別の実施形態において、上記水溶性ポリマー結合剤は、式Vのモノマーユニット:
【化3】
を含み、ここで
R
4は、独立して各存在において、-CO
2H, -OH、必要に応じて置換された-CO
2C
1-6アルキル、必要に応じて置換されたC
5-6ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換された-OC
1-6アルキルおよび必要に応じて置換された-C
1-6アルキル-OHまたは-CO
2C
1-6アルキル-OHのようなOH含有官能基から選択され;
R
5は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;
R
6は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;そして
oは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000 g/mol~約240 000g/mol、または約27 000g/mol~約240 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である。
【0022】
別の実施形態において、上記水溶性ポリマー結合剤は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート-co-アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)(PAAMA) ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(PVMEMA)、ゼラチンおよびポリサッカリドからなる群より選択される。
【0023】
別の局面によれば、本発明の技術は、は、電極材料における使用のための結合剤組成物に関し、上記組成物は、ポリフェノールおよび水溶性ポリマーを含む。
【0024】
1つの実施形態において、上記ポリフェノールは、タンニン、カテコールおよびリグニンからなる群より選択される。例えば、上記ポリフェノールは、タンニン酸である。
【0025】
別の実施形態において、上記水溶性ポリマーは、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、アミン基、アミド基、およびヒドロキシル基からなる群より選択される官能基を含む。1つの例では、上記水溶性ポリマーはホモポリマーである。あるいは、上記水溶性ポリマーはコポリマーである。例えば、上記コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0026】
別の実施形態において、上記水溶性ポリマーは、式Vのモノマーユニット:
【化4】
を含み、ここで
R
4は、独立して各存在において、-CO
2H、-OH、必要に応じて置換された-CO
2C
1-6アルキル、必要に応じて置換されたC
5-6ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換された-OC
1-6アルキルおよび必要に応じて置換された-CO
2C
1-6アルキル-OHから選択され;
R
5は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;
R
6は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;そして
oは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000 g/mol~約240 000g/mol、または約27 000g/mol~約240 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である。
【0027】
別の実施形態において、上記水溶性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート-co-アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)(PAAMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(PVMEMA)、ゼラチンおよびポリサッカリドからなる群より選択される。
【0028】
別の局面によれば、本発明の技術は、明細書で定義されるとおりの結合剤組成物および電気化学的に活性な物質を含む電極材料に関する。
【0029】
別の局面によれば、本発明の技術は、集電体上の本明細書で定義されるとおりの電極材料に関する。
【0030】
1つの実施形態において、上記電極は、負電極である。あるいは、上記電極は、正電極である。
【0031】
さらなる局面によれば、本発明の技術は、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルに関し、ここで上記負電極または正電極のうちの少なくとも一方は、本明細書で定義されるとおりである。
【0032】
さらなる局面によれば、本発明の技術は、少なくとも1つの本明細書で定義されるとおりの電気化学セルを含むバッテリーに関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル1に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1C(点線)で行った。
【0034】
【
図2】
図2は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル2に関して、第1のサイクルは0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルは0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルは0.1Cで行った(点線)。
【0035】
【
図3】
図3は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル3に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0036】
【
図4】
図4は、実施例4に記載されるとおりのセル1(白丸の線)およびセル2(黒丸の線)に関して、サイクル数に対する容量保持(%)を表すグラフを示す。
【0037】
【
図5】
図5は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル4に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0038】
【
図6】
図6は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル5に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0039】
【
図7】
図7は、4回の充放電サイクルを示す。実施例4に記載されるとおりのセル6に関して、第1のサイクルを25℃の温度において0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを25℃の温度において0.1Cで行い(破線)、第3のサイクルを45℃の温度において0.2Cで行い(一点短鎖線)、第4のサイクルを45℃の温度において0.2Cで行った(点線)。
【0040】
【
図8】
図8は、4回の充放電サイクルを示す。実施例4に記載されるとおりのセル7に関して、第1のサイクルを25℃の温度において0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを25℃の温度において0.1Cで行い(破線)、第3のサイクルを45℃の温度において0.2Cで行い(一点短鎖線)、第4のサイクルを45℃の温度において0.2Cで行った(点線)。
【0041】
【
図9】
図9は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル8に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0042】
【
図10】
図10は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、実施例4に記載されるとおりのセル9に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0043】
【
図11】
図11は、4回の充放電サイクルを示す。実施例4に記載されるとおりのセル10に関して、第1のサイクルを25℃の温度において0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを25℃の温度において0.1Cで行い(破線)、第3のサイクルを45℃の温度において0.2Cで行い(一点短鎖線)、第4のサイクルを45℃の温度において0.2Cで行った(点線)。
【0044】
【
図12】
図12は、実施例4に記載されるとおりのセル4(白三角の線)、セル5(黒三角の線)、セル8(白丸の線)およびセル9(黒丸の線)に関して、サイクル数に対する容量保持(%)を表すグラフを示す。
【0045】
【
図13】
図13は、実施例4に記載されるとおりのセル4(白三角の線)、セル5(黒三角の線)、セル8(白丸の線)およびセル9(黒丸の線)に関して、サイクル数に対する容量(mAh/g)を表すグラフを示す。
【0046】
【
図14】
図14は、実施例4に記載されるとおりのセル7(黒三角の線)、セル4(白三角の線)、セル1(白四角の線)およびセル2(黒四角の線)に関して、サイクル数に対する容量保持(%)を表すグラフを示す。
【0047】
【
図15】
図15は、実施例4に記載されるとおりのセル1(白四角の線)、セル2(黒四角の線)、セル4(白三角の線)、およびセル7(黒三角の線)に関して、サイクル数に対する容量(mAh/g)を表すグラフを示す。
【0048】
【
図16】
図16は、実施例4に記載されるとおりのセル10(黒丸の線)およびセル6(黒三角の線)に関して、サイクル数に対する容量保持(%)を表すグラフを示す。
【0049】
【
図17】
図17は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、セル11に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0050】
【
図18】
図18は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、セル12に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0051】
【
図19】
図19は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、セル13に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0052】
【
図20】
図20は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、セル14に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0053】
【
図21】
図21は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、セル15に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【0054】
【
図22】
図22は、3回の充放電サイクルを示す。25℃の温度において、セル16に関して、第1のサイクルを0.05Cで行い(実線)、第2のサイクルを0.05Cで行い(破線)、第3のサイクルを0.1Cで行った(点線)。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
以下の詳細な説明及び実施例は例証であって、本発明の範囲をさらに限定すると解釈されるべきではない。
【0056】
本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語および表現は、本発明の技術に関する場合、当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。本明細書で使用されるいくつかの用語および表現の定義は、それにもかかわらず、目的を明瞭にするために以下に提供される。
【0057】
用語「およそ(approximately)」またはその等価な用語「約(about)」が本明細書で使用される場合、それは、およそまたは~の辺り(in the region of)、および周囲(around)を意味する。用語「およそ」または「約」が数値に関連して使用される場合、それは、その数値を修飾する;例えば、その額面上の数字の±10%の変動によって修飾する。この用語はまた、例えば、機器の制限に起因して、数字のまるめまたは実験測定における確率誤差(random error)の確率を考慮し得る。
【0058】
より明瞭にするために、表現「に由来するモノマーユニット(monomeric units derived from)」および等価な表現は、本明細書で使用される場合、その重合後に重合可能なモノマーから生じるポリマー反復ユニットをいう。
【0059】
本明細書で記載される化学構造は、従来の標準に従って書かれる。また、原子(例えば、書かれるとおりの炭素原子)が不完全な結合価を含むようである場合、その結合価は、明示的に必ずしも書かれているわけではないとしても、1個またはこれより多くの水素原子によって満たされていると想定される。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル(alkyl)」とは、1~6個の炭素原子を有する飽和炭化水素(直線状または分枝状のアルキル基を含む)をいう。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tertブチル、secブチル、イソブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基が2個の官能基の間に位置する場合、用語アルキルはまた、メチレン、エチレン、ピロピレンなどのようなアルキレン基を包含する。用語「C1-Cnアルキル」とは、1個から示された「n」個までの炭素原子数を有するアルキル基をいう。
【0061】
用語「ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)」および等価な表現は、5~6個の環員を有する単環系にある飽和または部分不飽和の(非芳香族の)炭素環式環を含む基であって、ここで1個またはこれより多くの環員が、置換されたかもしくは置換されていないヘテロ原子(例えば、N、O、S、P)またはこのようなヘテロ原子を含む基(例えば、NH、NRx(ここでRxはアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリールもしくはシクロアルキルである)、PO2、SO、SO2など)であるものをいう。ヘテロシクロアルキル基は、このようなことが可能である場合に、Cに結合していてもよいし、ヘテロ原子に(例えば、窒素原子を介して)結合していてもよい。
【0062】
第1の局面によれば、本発明の技術は、r式IおよびIIの化合物:
【化5】
の重合に由来するモノマーユニットを含むポリマーに関し、ここで
R
1は、独立して各存在において、-OHおよびOH含有基(例えば、必要に応じて置換されたC
1-6アルキル-OHまたは-CO
2C
1-6アルキル-OH)から選択され;そして
R
2およびR
3は、各々独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択される。
【0063】
例えば、上記ポリマーは、式IIIのコポリマー:
【化6】
であり、ここでR
1、R
2およびR
3は、本明細書で定義されるとおりであり;そしてnおよびmは、数平均分子量が約2 000 g/mol~約250 000g/molである、例えば、約10 000g/mol~約200 000g/mol、または約25 000g/mol~約200 000g/mol、またはさらに約25 000g/mol~約150 000g/mol、または約50 000g/mol~約150 000g/mol、または約75 000g/mol~約125 000g/mol(境界を含む)の数平均分子量であるように選択される整数である。
【0064】
いくつかの実施形態において、式IIIのコポリマーは、例えば、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。例えば、上記コポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0065】
いくつかの実施形態において、式Iのモノマーユニットは、ビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびこれらの誘導体から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、式IIのモノマーユニットは、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)および/またはこれらの誘導体から選択される。
【0067】
目的の変形によれば、上記ポリマーは、ビニルアルコールに由来する、およびAAに由来するモノマーユニットを含むコポリマーである。目的の別の変形によれば、上記コポリマーは、HEMAに由来する、およびAAに由来するモノマーユニットを含む。
【0068】
例えば、上記ポリマーは、式III(a)またはIII(b):
【化7】
のコポリマーであり、ここでmおよびnは、本明細書で定義されるとおりである。
【0069】
モノマーの重合は、任意の公知の手順および開始方法によって、例えば、ラジカル重合によって達成され得る。
【0070】
ラジカル開始剤は、任意の適切な重合開始剤、例えば、アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))であり得る。重合は、光分解、熱処理、および任意の他の適切な手段によってさらに開始され得る。例えば、上記開始剤はAIBNである。
【0071】
上記コポリマーがブロックコポリマーである場合、その合成は、可逆的付加-開裂連鎖移動重合(またはRAFT)によって達成され得る。
【0072】
別の局面によれば、本発明の技術は、本明細書で定義されるとおりのポリマーを含む電極材料に関する。いくつかの実施形態において、上記電極材料は、電気化学的に活性な物質を含み、さらに必要に応じて結合剤を含む。いくつかの実施形態において、上記電極材料は、ポリフェノールをさらに含む。例えば、上記結合剤は、本明細書で定義されるとおりのポリマーおよび/またはポリフェノールを含む。上記結合剤が上記ポリマーを含むといわれる場合、それはまた、上記ポリマーが上記結合剤として働くという可能性を含むことが理解される。
【0073】
別の局面によれば、本発明の技術は、電気化学的に活性な物質およびアミロペクチンを含む電極材料に関する。いくつかの実施形態において、上記電極材料は、さらに必要に応じて結合剤を含む。いくつかの実施形態において、上記電極材料は、ポリフェノールをさらに含む。例えば、上記結合剤は、アミロペクチンおよび/またはポリフェノールを含む。
【0074】
別の局面によれば、本発明の技術は、ポリフェノールおよび水溶性ポリマーを含む結合剤組成物に関する。
【0075】
別の局面によれば、本発明の技術は、電気化学的に活性な物質およびヒドロゲル結合剤を含む電極材料であって、上記ヒドロゲル結合剤は、水溶性ポリマー結合剤およびポリフェノールを含むものに関する。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質である。例えば、上記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、ケイ素、または一酸化ケイ素(SiO)、またはケイ素酸化物、またはケイ素亜酸化物(SiOx)、またはこれらの組み合わせを含み得る。例えば、上記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、SiOxを含み、xは、0<x<2、または0.1<x<1.9、または0.1<x<1.8、または0.1<x<1.7、または0.1<x<1.6、または0.1<x<1.5、または0.1<x<1.4、または0.1<x<1.3、または0.1<x<1.2、または0.1<x<1.1、または0.1<x<1.0(境界を含む)である。例えば、xは、0.1、または0.2、または0.3、または0.4、または0.5、または0.6、または0.7、または0.8である。SiOx中の酸素原子の濃度が高いほど、電気化学的に活性な物質はまた、リチウム化の際にその体積膨張を低減し得るが、いくらかの容量喪失を引き起こし得ると考えられ得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、炭素材料(例えば、炭素、グラファイトおよびグラフェン)をさらに含む。例えば、上記グラファイトは、天然または人工のグラファイト、例えば、負電極材料として使用される人工グラファイト(例えば、SCMGTM)である。例えば、上記電気化学的に活性な物質は、ケイ素炭素複合材、またはケイ素グラファイト複合材またはケイ素グラフェン複合材である。目的の1つの変形において、上記電気化学的に活性な物質は、SiOxグラファイト複合材である。いくつかの実施形態において、上記SiOxグラファイト複合材は、SiOxおよびグラファイトの総重量において約100重量%まで、もしくは約95重量%まで、もしくは約90重量%まで、もしく約75重量%まで、約50重量%、または約5重量%~約100重量%の間、もしくは約5重量%~約95重量%の間、もしくは約5重量%~約90重量%の間、もしくは約5重量%~約90重量%の間、もしくは約5重量%~約85重量%の間、もしくは約5重量%~約80重量%の間、もしくは約5重量%~約75重量%の間、もしくは約5重量%~約70重量%の間、もしくは約5重量%~約65重量%の間、もしくは約5重量%~約60重量%の間、もしくは約5重量%~約55重量%の間、もしくは約5重量%~約50重量%の間、もしくは約5重量%~約45重量%の間、約5重量%~約40重量%の間、もしくは約5重量%~約35重量%の間、もしくは約5重量%~約30重量%の間、もしくは約5重量%~約25重量%の間、もしくは約5重量%~約20重量%の間、もしくは約5重量%~約15重量%の間、もしくは約5重量%~約10重量%の間(境界を含む)の範囲のSiOxを含む。同じ濃度がまた、グラファイトを別の炭素材料で置き換えると同時に付与され得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、コーティング材料をさらに含み得る。例えば、上記電気化学的に活性な物質は、炭素コーティングを含み得る。あるいは、上記コーティング材料はまた、本明細書で記載されるとおりのポリマー、アミロペクチンおよび本明細書で定義されるとおりの水溶性ポリマーのうちの少なくとも1つを含み得、ポリフェノールをさらに含む。あるいは、上記コーティング材料は、本明細書で定義されるとおりのヒドロゲル結合剤を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記ポリフェノールは、ヒドロゲル形成のためのゲル化剤であり得る。上記ポリフェノールは、多数のポリフェノール基(例えば、ジヒドロキシフェニル、トリヒドロキシフェニル、およびそれらの誘導体)に連結された糖または糖様部分を含む高分子であってもよいし、ポリマーであってもよい。例えば、上記ポリフェノールは、水素結合、三次元(3D)ネットワークへと効果的に複合体化するポリマー鎖を通じて、多数の結合部位においてポリマーまたは高分子をゲル化することができてもよい。
【0080】
本明細書で記載されるとおりのヒドロゲル結合剤は、強い相互作用または物理的架橋点として働き、それによって、3D複合体を形成する、水溶性ポリマー結合剤とポリフェノールとの間のH結合を通じて主に形成される。
【0081】
ポリフェノールの非限定的な例としては、タンニン、リグニン、カテコールおよびタンニン酸(TA)が挙げられる。例えば、上記ポリフェノールは、ポリフェノール高分子である。目的の1つの変形において、上記ポリフェノール高分子は、タンニン、例えば、TAである。TAは、モノサッカリド(グルコース)を囲む10個の没食子酸に相当する天然のポリフェノールである(式IVを参照のこと)。例えば、TAの25個のフェノールのヒドロキシルおよび10個のエステル基は、TAベースのヒドロゲル結合剤を形成するために、例えば、ヒドロキシル基を有する種々の水溶性ポリマー結合剤鎖との水素結合を形成するために多数の結合部位を提供する。
【化8】
【0082】
1つの実施形態において、上記水溶性ポリマー結合剤は、ポリフェノールとの水素結合を形成するために、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、アミン基、アミド基、またはヒドロキシル基を含み得る。水溶性ポリマー結合剤の非限定的な例としては、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(PVMEMA)、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)(PAAMA)、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)、ポリサッカリド、アミロペクチン、アルギネート、ゼラチン、およびこれらの誘導体が挙げられる。別の実施形態において、上記水溶性ポリマーは、例えば、酸素原子または窒素原子上に不安定な水素原子を含む(例えば、OHまたはCO2H基)。例えば、上記水溶性ポリマー結合剤は、PVOH、アミロペクチンまたはPAAである。
【0083】
例えば、上記水溶性ポリマー結合剤は、式Vのポリマー:
【化9】
を含み、ここで
R
4は、独立して各存在において、-CO
2H、-OH、必要に応じて置換された-CO
2C
1-6アルキル、必要に応じて置換されたC
5-6ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換された-OC
1-6アルキルおよび必要に応じて置換された-C
1-6アルキル-OHまたは-CO
2C
1-6アルキル-OHのようなOH含有官能基から選択され;
R
5は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;
R
6は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6アルキルから選択され;そして
oは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000g/mol~約250 000g/mol、または約27 000g/mol~約250 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である。
【0084】
例えば、上記水溶性ポリマー結合剤は、式V(a)、V(b)またはV(c)のポリマー:
【化10】
を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記水溶性ポリマー結合剤はホモポリマーである。あるいは、上記水溶性ポリマー結合剤はコポリマーである。例えば、上記ポリマーがコポリマーである場合、そのコポリマーは、例えば、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。1つの変形において、上記コポリマーはランダムコポリマーである。別の変形において、上記コポリマーはブロックコポリマーである。
【0086】
あるいは、上記水溶性ポリマー結合剤は、式VI(a)、VI(b)またはVI(c)のポリマー:
【化11】
を含み、ここでpおよびqは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000g/mol~約250 000g/mol、または約27 000g/mol~約250 000g/mol(境界を含む)であるように独立して選択される整数である。
【0087】
あるいは、上記水溶性ポリマー結合剤は、ポリサッカリドを含む。例えば、上記水溶性ポリマー結合剤は、式VIIのポリマー:
【化12】
を含み、ここでrは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000g/mol~約250 000g/mol、または約27 000g/mol~約250 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である。いくつかの例では、ポリサッカリドはまた、その誘導体、例えば、カルボキシメチル置換されたポリサッカリド(例えば、カルボキシメチルセルロース)をさらに含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、上記水溶性ポリマー結合剤は、約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000g/mol~約250 000g/mol、または約27 000g/mol~約250 000g/mol(境界を含む)の数平均分子量を有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、上記ヒドロゲル結合剤は、約10重量%までのポリフェノールを含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、ヒドロゲル結合剤の総重量(電極形成後に除去され得る水を含む総重量)において、約1重量%~約10重量%の間、または約1重量%~約9重量%の間、または約1重量%~約8重量%の間、または約1重量%~約7重量%の間、または約1重量%~約6重量%の間、1重量%~約5重量%の間、または約1重量%~約4重量%の間、または約1重量%~約3重量%の間、または約1重量%~約2重量%の間のポリフェノールを含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、ヒドロゲル結合剤の総重量において、約2重量%のポリフェノールを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記ヒドロゲル結合剤は、ポリフェノールおよびポリマーの総重量に関して約1重量%~約30重量%の間、または約5重量%~約25重量%の間、または約10重量%~約25重量%の間、または約10重量%~約20重量%の間、または約15重量%~約20重量%の間、または約15重量%~約17重量%の間のポリフェノールを含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、約10:2のポリマー 対 ポリフェノール重量比を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記ヒドロゲル結合剤は、約20重量%までの水溶性ポリマー結合剤を含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、ヒドロゲル結合剤の総重量(総重量は、電極形成後に除去され得る水を含む)において、約1重量%~約15重量%の間、または約5重量%~約15重量%の間、または約7重量%~約15重量%の間、または約8重量%~約15重量%の間、または約9重量%~約15重量%の間、または約9重量%~約13重量%の間、または約9重量%~約12重量%の間、または約9重量%~約11重量%の間(境界を含む)の水溶性ポリマー結合剤を含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、約10重量%の水溶性ポリマー結合剤を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、上記ヒドロゲル結合剤は、水を含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、選択肢的な乾燥工程の前に、少なくとも約60重量%の水を含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、選択肢的な乾燥工程の前に、約60重量%~約98重量%の間、または約60重量%~約98重量%の間、または約64重量%~約98重量%の間、または約70重量%~約98重量%の間、または約75重量%~約98重量%の間、または約80重量%~約98重量%の間、または約80重量%~約95重量%の間、または約82重量%~約95重量%の間、または約83重量%~約94重量%の間、または約84重量%~約93重量%の間、または約85重量%~約92重量%の間、または約86重量%~約91重量%の間、または約87重量%~約90重量%の間(境界を含む)の水を含む。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、選択肢的な乾燥工程の前に、約88重量%の水を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、上記ヒドロゲルは、バイオベースのヒドロゲルである。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、例えば、改善された機械的性能、改善された可撓性、改善された弾性、改善された伸縮性、改善された自己修復特性、改善された接着特性、および/または改善された形状記憶特性を示す。例えば、上記ヒドロゲル結合剤は、改善された引張り強さおよび/または伸長および/または弾性率を示し得る。さらに、上記ヒドロゲル結合剤は、容易に商業化され得る。なぜなら多量のヒドロゲル結合剤は、複雑な合成手順が関わらないということを考えれば、容易に調製され得るからである。このようなバイオベースのヒドロゲルにおいて、上記ポリマーは、例えば、アミロペクチンまたはゼラチンである。目的の1つの変形において、上記ヒドロゲルはアミロペクチンを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの電極材料は、導電性材料をさらに含み得る。上記電極材料はまた、必要に応じて、塩、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子などのような、さらなる構成要素または添加剤を含み得る。
【0095】
導電性材料の非限定的例としては、カーボンブラック(例えば、KetjenTMブラック)、アセチレンブラック(例えば、ShawiniganブラックおよびDenkaTMブラック)、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー(例えば、気相成長カーボンファイバー(VGCF))、カーボンナノチューブ(CNT)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、上記導電性材料は、KetjenTMブラックおよびVGCFの組み合わせである。
【0096】
別の局面によれば、本発明の技術は、集電体上に本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極に関する。例えば、上記電極は、負電極または正電極である。目的の1つの変形において、上記電極は、負電極である。
【0097】
さらなる局面によれば、本発明の技術は、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで上記負電極または正電極のうちの少なくとも一方は、本明細書で定義されるとおりであるものに関する。例えば、上記負電極は、本明細書で定義されるとおりである。
【0098】
いくつかの実施形態において、上記電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質、または溶媒和化しているポリマーをさらに含み得る溶媒中に塩を含むゲル電解質、または溶媒和化しているポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質であり得る。目的の1つの変形において、上記塩は、リチウム塩である。
【0099】
リチウム塩の非限定的な例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、リチウムのシュウ化物(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウム Li[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、リチウムテトラキス(トリフルオロアセトキシ)ボレート Li[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、リチウムビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ボレート [B(C6O2)2](LBBB)およびこれらの組み合わせが挙げられる。目的の1つの変形によれば、上記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)である。
【0100】
例えば、上記溶媒は、非水性溶媒である。非水性溶媒の非限定的な例としては、環式カーボネート(例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、および炭酸ビニレン(VC));非環式カーボネート(例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、および炭酸ジプロピル(DPC));ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL));チェーンエーテル(chain ether)(例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、トリメトキシメタン、およびエチルモノグライム);環式エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよびジオキソラン誘導体);および他の溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、炭酸プロピレン誘導体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。目的の1つの変形によれば、上記溶媒は、アルキルカーボネート(非環式または環式)または2種もしくはこれより多くのカーボネートの混合物(例えば、EC/EMC/DEC(4:3:3))である。
【0101】
いくつかの実施形態において、上記電解質はまた、例えば、安定な固体電解質界面(SEI)を形成するために、および/またはケイ素ベースの電気化学的に活性な物質のサイクル性を改善するために、少なくとも1種の電解質添加剤を含み得る。目的の変形において、上記電解質添加剤は、炭酸フルオロエチレン(FEC)である。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書で定義されるとおりの電気化学セルは、改善された電気化学的性能(例えば、改善されたサイクル性)を有し得る。
【0103】
さらなる局面によれば、本発明の技術は、少なくとも1つの本明細書で定義されるとおりの電気化学セルを含むバッテリーに関する。例えば、上記バッテリーは、リチウムバッテリー、リチウム-硫黄バッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、およびマグネシウムバッテリーから選択される。目的の1つの変形において、上記バッテリーは、リチウムイオンバッテリーである。
【実施例】
【0104】
以下の非限定的な実施例は、例証的実施形態であり、本発明の範囲をさらに限定すると解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照する場合によりよく理解される。
【0105】
実施例1: ポリマー合成
a)AAおよびHEMAのランダム共重合
ランダムコポリマーを、スキーム1に図示されるとおりの共重合プロセスに従って調製した:
【化13】
ここでnおよびmは、本明細書で定義されるとおりである。
【0106】
スキーム1のプロセスに従って、HEMAを、先ず、塩基性酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)を通して濾過し、AAを減圧下で蒸留した。この共重合を行うために、7.2gのHEMA、4.0gのAAおよび100mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を丸底フラスコの中に導入した。次いで、その溶液に窒素を30分間通気して、酸素を除去した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、48mg)を添加し、その溶液を、窒素下で少なくとも12時間、70℃へと加熱した。次いで、そのポリマーを、10体積のトルエンまたはジエチルエーテル中での沈殿によって精製し、分離し、真空下で12時間乾燥させた。
【0107】
b)AAおよびHEMAのブロック共重合
ブロックコポリマーを、スキーム2に図示されるとおりの2工程のRAFT共重合プロセスによって調製した:
【化14】
ここでnおよびmは、本明細書で定義されるとおりである。
【0108】
PAAブロックの形成
第1の工程は、AAモノマーユニットを含む第1のブロックを形成するためのRAFT重合によるAAの重合を含む。この第1の工程において、10.0gのAA、38.5mgのS,S-ジベンジルトリチオカーボネート(RAFT CTA)および100mLのジオキサンを、丸底フラスコの中に導入した。次いで、その溶液を室温において撹拌し、窒素を30分間通気して、酸素を除去した。77.0mgのAIBNを添加し、その溶液を、窒素下で少なくとも3時間、85℃の温度へと加熱した。
【0109】
次いで、そのポリマーを、10体積のトルエンでの沈殿によって精製し、真空下で12時間、80℃において乾燥させた。この手順の第1の工程において得られた標準的な生産収量は、約7.6gであった。
【0110】
ポリ(HEMA)ブロックの形成および共重合
第2の工程は、HEMAモノマーユニットを含む第2のブロックの形成を含む。この第2の工程において、6.0gの先のポリマー(PAA-RAFT)、13.0gのHEMAおよび250mlのDMFを丸底フラスコの中に添加した。その溶液を室温において撹拌し、窒素を30分間通気して、酸素を除去した。次いで、75mgのAIBNを、反応混合物に添加し、その溶液を、窒素下で少なくとも12時間、65℃の温度へと加熱した。次いで、そのポリマーを、10体積のジエチルエーテルおよびヘキサン(3:1)での沈殿によって精製し、真空下で12時間乾燥させた。
【0111】
実施例2: 水溶性ポリマー-TAヒドロゲル結合剤調製
a)PVOH-TAヒドロゲル結合剤調製
この実施例は、TAおよびPVOHのヒドロゲル結合剤調製を例証する。水性結合剤溶液を、10重量%の、Millipore SigmaTMのPVOH(M.W. 約27 000g/mol)および2重量%のTAを60℃の温度の水の中に溶解することによって調製した。次いで、その混合物を室温へと冷却し、それによって、TAとPVOHとの間に強いH結合をおよびPVOH鎖の間により弱いH結合を効果的に作り、PVOH-TAヒドロゲルを形成した。
【0112】
b)ランダムポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)-TAヒドロゲル結合剤調製
この実施例は、TAおよび実施例1(a)のコポリマーのヒドロゲル結合剤調製を例証する。水性結合剤溶液を、12重量%の実施例1(a)のコポリマーおよび4重量%のTAを、60℃の温度の水性エタノール混合物(20重量%)に溶解することによって調製した(エタノールは、TAの添加の前に添加される)。次いで、その混合物を室温へと冷却し、それによって、TAと実施例1(a)のコポリマーとの間に強いH結合を、および実施例1(a)のコポリマー鎖間により弱いH結合を効果的に作り、ヒドロゲルを形成した。
【0113】
c)ブロックポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)-TAヒドロゲル結合剤調製
この実施例は、TAおよび実施例1(b)のコポリマーのヒドロゲル結合剤調製を例証する。水性結合剤溶液を、12重量%の実施例1(b)のコポリマーおよび4重量%のTAを60℃の温度の水性エタノール混合物(20重量%)に溶解することによって調製した(エタノールは、TAの添加の前に添加される)。その混合物を室温へと冷却し、それによって、TAと実施例1(b)のコポリマーとの間に強いH結合を、および実施例1(b)のコポリマー鎖間により弱いH結合を効果的に作り、ヒドロゲルを形成した。
【0114】
d)PAA-TAヒドロゲル結合剤調製
この実施例は、TAおよびPAAのヒドロゲル結合剤調製を例証する。水性結合剤溶液を、60℃の温度の水に10重量%の、Acros OrganicsTMのPAA(25重量% 水溶液;M.W.約240 000g/mol)および5重量%のTAを溶解することによって調製した。次いで、その混合物を、室温へと冷却し、それによって、TAとPAAとの間で強いH結合を、およびPAA鎖の間でより弱いH結合を効果的に作り、PAA-TAヒドロゲルを形成した。
【0115】
10重量%のPAAおよび2重量%のTAを含むヒドロゲル結合剤組成物、ならびに10重量%のPAAおよび1重量%のTAを含むヒドロゲル結合剤組成物をまた、実施例1(d)に記載される方法を使用して調製した。
【0116】
e)PVP-TAヒドロゲル結合剤調製
この実施例は、TAおよびPVPのヒドロゲル調製を例証する。水性結合剤溶液を、10重量%の、Millipore SigmaTMのPVP(M.W. 約29 000g/mol)および1重量%のTAを60℃の温度の水に溶解することによって調製した。次いで、その混合物を室温へと冷却し、それによって、TAとPVPとの間で強いH結合を、およびPVP鎖の間により弱いH結合を効果的に作り、PVP-TAヒドロゲルを形成した。
【0117】
f)アミロペクチン-TAヒドロゲル結合剤調製
この実施例は、TAおよびアミロペクチンのヒドロゲル結合剤調製を例証する。水性結合剤溶液を、7重量%のアミロペクチンおよび1重量%のTAを60℃の温度の水に溶解することによって調製した。次いで、その混合物を室温へと冷却し、それによって、TAとアミロペクチンとの間に強いH結合をおよびアミロペクチン鎖の間により弱いH結合を効果的に作り、アミロペクチン-TAヒドロゲルを形成した。
【0118】
実施例3: ヒドロゲル結合剤を有するSiOx-グラファイト電極
実施例2の手順に従って調製したヒドロゲル結合剤を、異なるセル(各々、銅集電体上にSiOx-グラファイト電極およびリチウム金属対電極を含む)において使用した。種々のSiOx-グラファイト電極において使用したグラファイトは、Showa DenkoのSCMGTMであった。異なるSiOx 対 グラファイト比を有する電極を調製した(約5重量%、約10重量%、約25重量%および約50重量%)。
【0119】
SiO
x-グラファイト電極材料を、2 000rpmにおいて30秒、固体(すなわち、SiO
x、SCMG
TMおよび導電性材料)を混合することによって調製した。次いで、PVOH-TA水性結合剤溶液(実施例2(a)から)を、異なる固体混合物に添加した。次いで、その異なる混合物を、3回(各回、2 000rpmで1分間)混合した。次いで、水を3回に分けてその異なる混合物に添加して、適切な粘性を有する異なるスラリーを得た。各々水を添加した後に、そのスラリーを2 000rpmにおいて1分間混合した。次いで、得られたスラリーを、ドクターブレード法を使用して銅集電体上に各々キャストし、80℃の温度において15分間乾燥させた。
表1. 50重量%比(SiO
x:Grは50:50)に関する電極材料重量濃度
【表1】
* 実施例2(a)からのPVOH-TA水性結合剤溶液
表2. 25重量%比(SiO
x:Grは25:75)に関する電極材料重量濃度
【表2】
*実施例2(a)からのPVOH-TA水性結合剤溶液
表3. 10重量%比(SiO
x:Grは10:90)に関する電極材料重量濃度
【表3】
* 実施例2(a)からのPVOH-TA水性結合剤溶液
表4. 5重量%比(SiO
x:Grは5:95)に関する電極材料重量濃度
【表4】
* 実施例2(a)からのPVOH-TA水性結合剤溶液
【0120】
全ての電極は、約8.0~約10.0 mg/cm2の範囲の質量負荷(mass loading)および約1.2~約1.4g/cm3の範囲の電極容積質量密度(electrode volumetric mass density)を有した。
【0121】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に結合剤として5重量% 濃度のPVdF(M.W.約9400g/mol)を含む参照電極を、比較目的で調製した。その参照電極を、PVOH-TA水性結合剤溶液をPVdF結合剤で単純に置き換えて、表1~4に詳述される同じ重量比で調製した。
【0122】
実施例4: 電気化学的特性
表5~7はそれぞれ、電気化学的に活性な物質E1~E3の重量濃度、ヒドロゲル結合剤B1~B6の重量濃度、およびセル1~15の各々に関する電極組成を示す。これらは、この実施例において測定した電気化学的特性を考察する場合に参照される。
表5. 電気化学的に活性な物質の重量濃度
【表5】
表6. ヒドロゲル結合剤の重量濃度
【表6-1】
【表6-2】
表7. セル1~15における電極材料組成
【表7】
【0123】
全てのセルを、標準的なステンレス鋼ボタン型電池キャスティング、液体電解質としてEC/EMC/DEC(4:3:3)および5% FEC中の1M LiPF6溶液で含浸したポリエチレン-ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレン(PE/PET/PE)ベースのセパレーター、銅集電体上のSiOx-グラファイト電極およびリチウム金属対電極でアセンブリした。
【0124】
a)50重量%比に関する電極材料重量濃度
水溶性ポリマー結合剤の選択およびヒドロゲル結合剤中のポリフェノールの存在の影響を、
図1~4、17および18に示す。50重量%Si比に関しては、予測容量は、1036mAh g
-1であった。
【0125】
図1は、セル1(比較セル)に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、25℃の温度において、それぞれ、0.05C、0.05Cおよび0.1C(点線)において行った。
図1は、その予測される容量より有意に低い容量およびサイクルするにつれて顕著な容量喪失を示す。
【0126】
図2は、セル2に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cにおいて行った。
図1におけるほど顕著ではないが、小さな容量喪失がまた、サイクルするにつれて観察され得る。さらに、その容量は、予測される容量よりわずかに低い。これらの結果は、アミロペクチンおよびTAを含むヒドロゲル結合剤が、ケイ素-グラファイト複合材電極に関して適切な結合剤選択であり得ることを効果的に示す。
【0127】
図3は、セル3に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cにおいて行った。
図1におけるほど顕著ではないが、小さな容量喪失がまた、サイクルするにつれて観察され得る。さらに、その容量は、予測される容量に近く、PVOHおよびTAを含むヒドロゲル結合剤が、ケイ素-グラファイト複合材電極に関して適切な結合剤選択であり得ることを効果的に示す。
【0128】
図17は、セル11に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1C(点線)で行った。セル11は、実施例1(a)において調製したとおりのランダムポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)コポリマーおよびTAを含む、実施例2(b)において調製したとおりのヒドロゲル結合剤を含む。
図1~3に類似して、容量喪失がまた、
図17においてサイクルするにつれて観察され得る。しかし、セル1と比較して、セル11は、その予測される容量の顕著により近い容量を有する。これらの結果は、ランダムポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)コポリマーおよびTAを含むヒドロゲル結合剤が、ケイ素-グラファイト複合材電極に関して適切な結合剤選択であり得ることを効果的に示す。
【0129】
図18は、セル12に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cで行った。セル12は、実施例1(b)において調製したとおりのブロックポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)コポリマーおよびTAを含む、実施例2(c)において調製したとおりのヒドロゲル結合剤を含む。セル1と比較して、セル12はまた、その予測される容量に顕著により近い容量を有し、ブロックポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート‐co‐アクリル酸)コポリマーおよびTAを含むヒドロゲル結合剤がまた、ケイ素-グラファイト複合材電極に関して適切な結合剤選択であり得ることを効果的に示す。
【0130】
図4は、セル1(白丸の線)およびセル2(黒丸の線)に関する、サイクル数に対する容量保持(%)のグラフである。
図4は、PVdF結合剤(セル1)でサイクルする場合に、容量保持において顕著な喪失を示す。アミロペクチンおよびTAを含む結合剤でサイクルする場合の容量保持における喪失がまた、観察され得る。しかし、その喪失は、セル1でよりセル2でそれほど顕著ではなく、アミロペクチンとTAとが、ケイ素-グラファイト複合材電極の良好な結合剤候補であり得ることを効果的に示す。
【0131】
b)25重量%比に関する電極材料重量濃度
TAおよび水溶性ポリマーの影響は、
図5~8、19および20にさらに示される。25重量%Si比に関して、その予測される容量は、704mAh g
-1であった。
【0132】
図5は、TAなしの、比較目的で調製したセル4に関して、3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cで行った。
図5は、その予測される容量より顕著に低い容量およびサイクルするにつれて顕著な容量喪失を示す。
【0133】
結合剤中のTAの存在の影響は、セル5に関して3回の充放電サイクルを示す
図6に示される。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cで行った。
図6は、セル4のものより高い容量を示す。
【0134】
結合剤中のTAの影響はまた、セル6に関して4回の充放電サイクルを示す
図7に示される。第1のサイクル(実線)を、25℃の温度において0.05Cで行い、第2のサイクル(破線)を、25℃の温度において0.1Cで行い、第3のサイクル(一点短鎖線)を、45℃の温度において0.2Cで行い、第4のサイクル(点線)を、45℃の温度において0.2Cで行った。
図7は、第1のサイクルの後に、容量喪失がそれほど顕著でなくなることを示す。
【0135】
TAの影響は、セル7に関して4回の充放電サイクルを示す
図8にさらに示される。第1のサイクル(実線)を、25℃の温度において0.05Cで行い、第2のサイクル(破線)を、25℃の温度において0.1Cで行い、第3のサイクル(一点短鎖線)を、45℃の温度において0.2Cで行い、第4のサイクル(点線)を、45℃の温度において0.2Cで行った。
図8は、第1のサイクル後に、容量喪失がそれほど顕著でなくなることを示す。温度の影響がまた、示される。
【0136】
図19は、セル13に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1C(点線)で行った。
【0137】
図20は、セル14に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cで行った。
【0138】
c)10重量%比に関する電極材料重量濃度
TAおよび水溶性ポリマーの影響は、
図9~11、21および22にさらに示される。10重量%Si比に関して、その予測される容量は、505mAh g
-1であった。
【0139】
図9は、TAなしの、比較目的で調製したセル8に関して、3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、それぞれ、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cで行った。
図9は、サイクルするにつれて顕著な容量喪失を示す。
【0140】
図10は、セル9に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルを、25℃の温度において、0.05C、0.05C、0.1Cで行った。
図10は、サイクルするにつれて顕著な容量喪失を全く示さない。PVOHおよびTAを含む結合剤は、ケイ素-グラファイト複合材電極に関して適切な結合剤候補であり得ることが効果的に示される。
【0141】
図11は、セル10に関して4回の充放電サイクルを示す。第1のサイクルを、25℃の温度において0.05C(実線)で行い、第2のサイクルを、25℃の温度において0.1Cで行い(破線)、第3のサイクルを、45℃の温度において0.2Cで行い(一点短鎖線)、第4のサイクルを、45℃の温度において0.2Cで行った(点線)。
図11は、第1のサイクル後に、容量喪失がそれほど顕著でなくなることを示す。温度の影響がまた、示される。
【0142】
図21は、セル15に関して3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルは、25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cであった。セル13(
図19)およびセル11(
図17)と比較して、セル15は、より低い容量を有する。しかし、セル15は、サイクルするにつれてより低い容量を有する。
【0143】
図22は、3回の充放電サイクルを示す。第1(実線)、第2(破線)および第3(点線)のサイクルは、セル16に関して25℃の温度において、0.05C、0.05Cおよび0.1Cであった。セル14(
図20)およびセル12(
図18)と比較して、セル16は、より低い容量を有する。しかし、セル16は、他の2つ(すなわち、セル14および12)と比較して、サイクルするにつれて改善された容量保持を有する。
【0144】
d)サイクル数に対するPVOH容量保持(%)
容量保持に対するTAのおよび電気化学的に活性な物質の組成物の効果を、
図12に示す。
図12は、セル4(白三角の線)、セル5(黒三角の線)、セル8(白丸の線)およびセル9(黒丸の線)に関して、サイクル数に対する容量保持(%)を表すグラフを示す。
図12は、TAの存在が、サイクルするにつれて、容量保持に積極的な影響を与えることを効果的に示す。
図12はまた、電気化学的に活性な物質中のSiのより低い重量%が、改善された容量保持を生じることを立証する。
【0145】
e)サイクル数に対するPVOH容量(mAh/g)
容量に対するTAのおよび電気化学的に活性な物質の組成物の影響を、
図13に示す。
図13は、セル4(白三角の線)、セル5(黒三角の線)、セル8(白丸の線)およびセル9(黒丸の線)に関して、サイクル数に対する容量(mAh g
-1)を表すグラフを示す。
図13は、結合剤中のTAの存在が、容量に積極的な影響を与えることを効果的に示す。
【0146】
f)サイクル数に対するアミロペクチン-TA容量保持(%)
図14は、セル7(黒三角の線)、セル4(白三角の線)、セル1(白四角の線)およびセル2(黒四角の線)に関して、サイクル数の関数として容量保持(%)を示す。予測されるように、容量保持(%)は、電気化学的に活性な物質の組成物中のSiO
xの含有量(重量%)が増大するにつれて、より急激に減少する。ヒドロゲル結合剤中のTAの存在は、容量に積極的な影響を与える。
【0147】
g)サイクル数に対するアミロペクチン-TA容量(mAh/g)
セル1(白四角の線)、セル2(黒四角の線)、セル4(白三角の線)、およびセル7(黒三角の線)に関して、サイクル数の関数として測定した容量(mAh/g)を、
図15に示す。これらの結果は、結合剤中のTAの存在が、容量に積極的な影響を与えることを示す。容量は、電気化学的に活性な物質の組成物中のSiO
x(重量%)が増大するにつれて減少し、これは予測される。
【0148】
h)サイクル数に対するPAA-TA容量保持(%)
図16は、セル10(黒丸の線)およびセル6(黒三角の線)に関して、サイクル数に対する容量保持(%)を示す。予測されるように、容量保持(%)は、電気化学的に活性な物質の組成物中のSiO
x(重量%)が増大するにつれてより激しく減少する。
【0149】
多くの改変は、本発明の範囲から離れることなく、上記で記載される実施形態のうちのいずれかに対して行われ得る。本出願において言及される任意の参考文献、特許または科学論文の文献は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式IおよびIIの化合物:
【化15】
の重合に由来するモノマーユニットを含むポリマーであって、ここで
R
1
は、独立して各存在において、-OHおよび必要に応じて置換されたC
1-6
アルキル-OHまたは-CO
2
C
1-6
アルキル-OHのようなOH含有基から選択され;そして
R
2
およびR
3
は、各々独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6
アルキルから選択される、
ポリマー。
(項目2)
前記ポリマーは、式IIIのコポリマー:
【化16】
であり、ここで
R
1
、R
2
およびR
3
は、項目1に規定されるとおりであり;そして
nおよびmは、数平均分子量が約2 000g/mol~約250 000g/molであるように選択される整数である、
項目1に記載のポリマー。
(項目3)
前記数平均分子量は、約10 000g/mol~約200 000g/mol、または約25 000g/mol~約200 000g/mol、または約25 000g/mol~約150 000g/mol、または約50 000g/mol~約150 000g/mol、または約75 000g/mol~約125 000g/mol(境界を含む)である、項目2に記載のポリマー。
(項目4)
前記ポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである、項目1~3のいずれか1項に記載のポリマー。
(項目5)
前記ポリマーはランダムコポリマーである、項目4に記載のポリマー。
(項目6)
前記ポリマーはブロックコポリマーである、項目4に記載のポリマー。
(項目7)
項目1~6のいずれか1項に規定されるとおりのポリマー、電気化学的に活性な物質、必要に応じて結合剤、および必要に応じてポリフェノールを含む電極材料。
(項目8)
前記結合剤は、前記ポリマーを含む、項目7に記載の電極材料。
(項目9)
前記結合剤は前記ポリフェノールを含む、項目7または8に記載の電極材料。
(項目10)
電気化学的に活性な物質、アミロペクチン、必要に応じて結合剤および必要に応じてポリフェノールを含む、電極材料。
(項目11)
前記結合剤は、前記アミロペクチンを含む、項目10に記載の電極材料。
(項目12)
前記結合剤は、前記ポリフェノールを含む、項目10または11に記載の電極材料。
(項目13)
電気化学的に活性な物質およびヒドロゲル結合剤を含む電極材料であって、前記ヒドロゲル結合剤は、水溶性ポリマー結合剤およびポリフェノールを含む、電極材料。
(項目14)
前記水溶性ポリマー結合剤は、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、アミン基、アミド基、およびヒドロキシル基からなる群より選択される官能基を含む、項目13に記載の電極材料。
(項目15)
前記水溶性ポリマー結合剤はホモポリマーである、項目13または14に記載の電極材料。
(項目16)
前記水溶性ポリマー結合剤はコポリマーである、項目13~15のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目17)
前記コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである、項目16に記載の電極材料。
(項目18)
前記コポリマーはランダムコポリマーである、項目17に記載の電極材料。
(項目19)
前記コポリマーはブロックコポリマーである、項目17に記載の電極材料。
(項目20)
前記水溶性ポリマー結合剤は、約2 000g/mol~約400 000 g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000
g/mol~約240 000g/mol、または約27 000g/mol~約240 000g/mol(境界を含む)の数平均分子量を有する、項目13~19のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目21)
前記水溶性ポリマー結合剤は、式Vのモノマーユニット:
【化17】
を含み、ここで
R
4
は、独立して各存在において、-CO
2
H、-OH、必要に応じて置換された-CO
2
C
1-6
アルキル、必要に応じて置換されたC
5-6
ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換された-OC
1-6
アルキルおよび必要に応じて置換された-C
1-6
アルキル-OHまたは-CO
2
C
1-6
アルキル-OHのようなOH含有官能基から選択され;
R
5
は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6
アルキルから選択され;
R
6
は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6
アルキルから選択され;そして
oは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000 g/mol~約240 000g/mol、または約27 000g/mol~約240 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である、
項目13~20のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目22)
前記水溶性ポリマー結合剤は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート-co-アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)およびポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)(PAAMA)からなる群より選択される、項目13~21のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目23)
前記水溶性ポリマー結合剤は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)である、項目22に記載の電極材料。
(項目24)
前記水溶性ポリマー結合剤は、ポリ(アクリル酸)(PAA)である、項目22に記載の電極材料。
(項目25)
前記水溶性ポリマー結合剤は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(PVMEMA)、ゼラチンおよびポリサッカリドからなる群より選択される、項目13~21のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目26)
前記ポリサッカリドは、アミロペクチンおよびアルギネートからなる群より選択される、項目25に記載の電極材料。
(項目27)
前記水溶性ポリマー結合剤は、アミロペクチンである、項目25に記載の電極材料。
(項目28)
前記ヒドロゲル結合剤は、1重量%~5重量%の前記ポリフェノールを含む、項目13~27のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目29)
前記ヒドロゲル結合剤は、1重量%~3重量%の前記ポリフェノールを含む、項目28に記載の電極材料。
(項目30)
前記電気化学的に活性な物質は、ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質である、項目7~29のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目31)
前記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、ケイ素、一酸化ケイ素(SiO)、ケイ素亜酸化物(SiO
x
)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目30に記載の電極材料。
(項目32)
前記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、ケイ素亜酸化物(SiO
x
)でありかつxは0<x<2である、項目30または31に記載の電極材料。
(項目33)
前記ケイ素ベースの電気化学的に活性な物質は、グラファイトまたはグラフェンをさらに含む、項目30~32のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目34)
前記グラファイトは、人工グラファイト(例えば、SCMG)である、項目33に記載の電極材料。
(項目35)
前記ケイ素 対 グラファイト比は、50:50重量%までである、項目33または34に記載の電極材料。
(項目36)
前記ケイ素 対 グラファイト比は、5:95重量%~95:5重量%である、項目33または34に記載の電極材料。
(項目37)
前記電極材料は、導電性材料をさらに含む、項目7~36のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目38)
前記導電性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目37に記載の電極材料。
(項目39)
前記導電性材料は、カーボンファイバーおよびカーボンブラックの組み合わせである、項目37または38に記載の電極材料。
(項目40)
前記カーボンファイバーは、気相成長カーボンファイバー(VGCF)である、項目38または39に記載の電極材料。
(項目41)
前記カーボンブラックは、Ketjen
TM
ブラックである、項目38~40のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目42)
前記ポリフェノールは、タンニン、カテコール、およびリグニンからなる群より選択される、項目7~41のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目43)
前記ポリフェノールは、ポリフェノール高分子である、項目7~42のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目44)
前記ポリフェノール高分子はタンニン酸である、項目43に記載の電極材料。
(項目45)
電極材料における使用のための結合剤組成物であって、前記組成物は、ポリフェノールおよび水溶性ポリマーを含む、結合剤組成物。
(項目46)
前記ポリフェノールは、タンニン、カテコール、およびリグニンからなる群より選択される、項目45に記載の結合剤組成物。
(項目47)
前記ポリフェノールはタンニン酸である、項目46に記載の結合剤組成物。
(項目48)
前記水溶性ポリマーは、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、アミン基、アミド基、およびヒドロキシル基からなる群より選択される官能基を含む、項目45~47のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目49)
前記水溶性ポリマーはホモポリマーである、項目45~48のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目50)
前記水溶性ポリマーはコポリマーである、項目45~48のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目51)
前記コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである、項目50に記載の結合剤組成物。
(項目52)
前記コポリマーは、ランダムコポリマーである、項目51に記載の結合剤組成物。
(項目53)
前記コポリマーはブロックコポリマーである、項目51に記載の結合剤組成物。
(項目54)
前記水溶性ポリマーは、式Vのモノマーユニット:
【化18】
を含み、ここで
R
4
は、独立して各存在において、-CO
2
H、-OH、必要に応じて置換された-CO
2
C
1-6
アルキル、必要に応じて置換されたC
5-6
ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換された-OC
1-6
アルキルおよび必要に応じて置換された-CO
2
C
1-6
アルキル-OHから選択され;
R
5
は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6
アルキルから選択され;
R
6
は、独立して各存在において、水素原子および必要に応じて置換されたC
1-6
アルキルから選択され;そして
oは、数平均分子量が約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000 g/mol~約240 000g/mol、または約27 000g/mol~約240 000g/mol(境界を含む)であるように選択される整数である、
項目45~53のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目55)
前記水溶性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート-co-アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)およびポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)(PAAMA)からなる群より選択される、項目54に記載の結合剤組成物。
(項目56)
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(PVMEMA)、ゼラチンおよびポリサッカリドからなる群より選択される、項目45~53のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目57)
前記ポリサッカリドは、アミロペクチンおよびアルギネートからなる群より選択される、項目56に記載の結合剤組成物。
(項目58)
前記結合剤はヒドロゲル結合剤である、項目45~57のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目59)
前記結合剤組成物は、1重量%~5重量%の前記ポリフェノールを含む、項目45~58のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目60)
前記結合剤組成物は、1重量%~3重量%の前記ポリフェノールを含む、項目59に記載の結合剤組成物。
(項目61)
前記水溶性ポリマーは、約2 000g/mol~約400 000g/mol、または約2 000g/mol~約250 000g/mol、または約25 000g/mol~約240 000g/mol、または約27 000g/mol~約240 000g/mol(境界を含む)の数平均分子量を有する、項目45~60のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目62)
項目45~61のいずれか1項に記載の結合剤組成物および電気化学的に活性な物質を含む、電極材料。
(項目63)
集電体上に項目7~44および62のいずれか1項に規定されるとおりの電極材料を含む電極。
(項目64)
前記電極は、負電極である、項目63に記載の電極。
(項目65)
前記電極は、正電極である、項目63に記載の電極。
(項目66)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記負電極または正電極のうちの少なくとも一方は、項目63~65のいずれか1項に規定されるとおりである、電気化学セル。
(項目67)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記負電極は、項目64に規定されるとおりである、電気化学セル。
(項目68)
前記電解質は、溶媒およびリチウム塩を含む、項目66または項目67のいずれかに記載の電気化学セル。
(項目69)
項目66~68のいずれか1項に規定されるとおりの少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー。
(項目70)
前記バッテリーは、リチウムイオンバッテリーである、項目69に記載のバッテリー。