(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】充電端末によってアキュムレータバッテリーを充電するための方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20240228BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240228BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20240228BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20240228BHJP
【FI】
H02J7/04 C
H02J7/00 P
B60L53/30
B60L53/63
(21)【出願番号】P 2021522000
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2019078317
(87)【国際公開番号】W WO2020083756
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アストルグ, マリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドリューモン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロラン, ティボー
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075903(JP,A)
【文献】特開2013-005679(JP,A)
【文献】特表2016-511627(JP,A)
【文献】特開2017-143634(JP,A)
【文献】特開2013-042569(JP,A)
【文献】特開2012-075281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0047862(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0191220(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ステーション(20)に電気的に接続される自動車両(10)が取り付けられるアキュムレータバッテリー(12)を充電するための方法であって、前記方法は、
a)前記充電ステーション(20)において利用可能な電力(P
20)と電気のコスト(C
20)との時間経過に伴う変化に関するデータを受信するステップと、
b)前記利用可能な電力(P
20)が0でなく、電気の前記コストが最低であるタイムスロット(δt
i)を選択するステップと
を含み、
前記方法は、
c)前記アキュムレータバッテリー(12)が前記タイムスロット(δt
i)の時間に示す温度(T
i)と、前記アキュムレータバッテリー(12)が前記タイムスロット(δt
i)の開始において示す充電状態(SОC
i)とを推定するステップと、
d)ステップc)において推定された前記温度(T
i)と前記充電状態(SОC
i)とに基づいて、前記充電ステーション(20)が前記タイムスロット(δt
i)中に前記アキュムレータバッテリー(12)に送ることが可能な電力(P
i)を決定するステップ
であって、前記電力(P
i
)は、前記温度(T
i
)が高くなればなるほど低くなる、決定するステップと、
e)ステップd)において決定された前記電力(P
i)に基づいて、前記タイムスロット(δt
i)の終了における前記アキュムレータバッテリー(12)の新しい充電状態(SОC
i+1)を導出するステップと、
f)前記新しい充電状態(SОC
i+1)をターゲット充電状態(SОC
N)と比較するステップと、次いで、前記新しい充電状態(SОC
i+1)が前記ターゲット充電状態(SОC
N)よりも高いかまたは前記ターゲット充電状態(SОC
N)に等しい場合、
g)前記タイムスロット(δt
i)中に前記充電ステーション(20)によって前記電力(P
i)で前記アキュムレータバッテリー(12)を充電するステップと
をさらに含むことを特徴と
し、
前記新しい充電状態(SОC
i+1
)が前記ターゲット充電状態(SОC
N
)よりも低い場合、
- 追加のタイムスロット(δt
j
)に関してステップb)~ステップe)が繰り返され、
- ステップf)において、前記ターゲット充電状態(SОC
N
)が、2つのタイムスロット(δt
i
、δt
j
)の後に前記アキュムレータバッテリー(12)が示す前記充電状態(SОC)と比較される、方法。
【請求項2】
ステップa)において、前記自動車両(10)が前記充電ステーション(20)から外されることがスケジュールされている出発時間が取得され、ステップb)において
、選択された
前記タイムスロットが前記出発時間より前である、請求項
1に記載の充電方法。
【請求項3】
ステップb)~ステップe)の前記繰り返しの間、前記充電ステーション(20)が前記タイムスロット(δt
i、δt
j)の各々中に前記アキュムレータバッテリー(12)に送ることが可能な電力(P)が決定され、次いで、そこから、前記出発時間までの前記アキュムレータバッテリー(12)の前記充電状態(SОC)の変化が導出される、請求項
2に記載の充電方法。
【請求項4】
ステップb)において、いくつかのタイムスロットにおいて電気の前記コストが最低である場合、これらのタイムスロットの中から選択される前記タイムスロット(δt
i)が最も早いタイムスロットである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の充電方法。
【請求項5】
ステップa)の前に、
- 前記アキュムレータバッテリー(12)の瞬時充電状態(SОC
0)を決定するため
のステップと、
- 前記瞬時充電状態(SОC
0)を充電状態しきい値(SОC
min)と比較するため
のステップと、前記瞬時充電状態(SОC
0)が前記充電状態しきい値(SОC
min)よりも低い場合、
- 前記利用可能な電力(P
20)が0でない最初のタイムスロットにおいて前記アキュムレータバッテリー(12)を充電するため
のステップと
を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の充電方法。
【請求項6】
ステップc)において、前記アキュムレータバッテリー(12)の前記温度(T
i)が、所定の数学モデルまたは所定のマップに基づいて推定される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の充電方法。
【請求項7】
ステップd)において、前記電力(P
i)を決定するために、
-
選択された
前記タイムスロット(δt
i)中に前記充電ステーション(20)において利用可能な電力(P
20)と、
- 前記自動車両(10)によって許容できる最大電力であって、ステップc)において推定された温度(T
i)と前記充電状態(SОC
i)とに基づいて決定される最大許容電力と
の中から最も低い電力
が選択
される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の充電方法。
【請求項8】
ステップe)において、前記タイムスロット(δt
i)の終了において前記アキュムレータバッテリー(12)中に蓄えられることになるエネルギー(E
i+1)
が計算
され、次いで、そこから前記新しい充電状態(SОC
i+1)
が導出
される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の充電方法。
【請求項9】
少なくとも1つの電気駆動モーター(11)と、各電気モーター(11)に電流を供給するように設計されたアキュムレータバッテリー(12)とを含む自動車両(10)であって、請求項1から
8のいずれか一項に記載の充電方法を実装するようにプログラムされたコンピュータ(15)を含むことを特徴とする自動車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気車両のアキュムレータバッテリーを充電することに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、自動車両に取り付けられたアキュムレータバッテリーを充電ステーションによって充電するための方法に関する。
【0003】
本発明はまた、この充電方法を実装するように設計された自動車両に関する。
【0004】
本発明は、より詳細には、電気自動車に適用される。
【背景技術】
【0005】
電気自動車は、通常、車両を推進するために与えられた電気モーターに電流を供給することを可能にする大容量アキュムレータバッテリーを含む。
【0006】
この種類のアキュムレータバッテリーは一定の間隔で充電されなければならない。このための1つのソリューションは、車を公共充電ステーションに電気的に接続することにある。
【0007】
ISO15118規格は、したがって、充電ステーションと充電ステーションに接続されることが可能な任意の自動車との間の標準通信プロトコルを定義するために開発された。
【0008】
電気グリッドにおいてエネルギー管理を最適化するために、車両は、したがって、この規格によって与えられる可能性を、3つの主要な制約に準拠する様式で使用しなければならない。第1の制約は、ユーザが出発したい時間にユーザのバッテリーが十分に充電されていることを保証することにある。第2の制約は、充電ステーションにおいて利用可能な電力を不必要に独占しないようにユーザのニーズを過大評価しないことにある。第3の制約は、充電ステーションへの自動車の接続後に、自動車にかなり短い時間フレームを課することにあり、その時間フレームの終了において、自動車は、充電ステーションが自動車のアキュムレータバッテリーを充電しなければならないときと、電力とを充電ステーションに通信しなければならない。
【0009】
使用されるプロトコルは、充電ステーションが、自動車両の接続時に、充電ステーションにおいて利用可能な電力と、電気のための価格レベル(一般にオフピーク時間/ピーク時間情報アイテム)との時間経過に伴う変化に関する情報を送信することを規定している。
【0010】
充電ステーションがその間にバッテリーを充電しなければならないタイムスロットを選択するための知られている方法は、したがって、最も近いオフピークタイムスロットを選択することにある。
【0011】
この方法は、残念ながら、ユーザの車両が所望の時間に出発する準備ができていることを保証することを可能にしない。
【0012】
この欠点を克服するための1つのソリューションは、ユーザがいつ出発したいかをユーザに尋ね、充電コストができる限り低く、出発時間に車両が十分に充電されているようなタイムスロットを選択することであり得る。
【0013】
このソリューションでは、しかしながら、車両が、選択されたタイムスロットに基づくバッテリーの充電状態の進行と、これらのタイムスロットの各々中に利用可能な電力の進行とを予測することが可能であることが必要である。
【0014】
この目的で、バッテリーの充電状態の進行を計算するための方法が文献CN103020445から知られているが、この方法は、ISO15118規格によって割り当てられた時間中に、確保するべきタイムスロットと、予約するべき電力とを決定することが可能であるために、高い計算能力をもつコンピュータを使用する必要がある。このソリューションは、したがって、実装するのに極めてコストがかかる。
【発明の概要】
【0015】
従来技術の上述の欠点を克服するために、本発明は、時間に応じた充電電力の変化を計算するためのより簡単な方法を提案する。
【0016】
より詳細には、充電方法が本発明によって提案され、前記方法は、
a)充電ステーションにおいて利用可能な電力と電気のコストとの時間経過に伴う変化に関するデータを受信するステップと、
b)利用可能な電力が0でなく、電気のコストが最低であるタイムスロットを選択するステップと、
c)アキュムレータバッテリーがタイムスロットの時間に示す温度と、タイムスロットの開始におけるアキュムレータバッテリーの充電状態とを推定するステップと、
d)ステップc)において推定された温度と充電状態とに基づいて、充電ステーションがタイムスロット中にアキュムレータバッテリーに送ることが可能な電力を決定するステップと、
e)ステップd)において決定された電力に基づいて、タイムスロットの終了におけるアキュムレータバッテリーの新しい充電状態を導出するステップと、
f)新しい充電状態をターゲット充電状態と比較し、次いで、新しい充電状態がターゲット充電状態よりも高いかまたはターゲット充電状態に等しい場合、
g)タイムスロット中に充電ステーションによって前記電力でアキュムレータバッテリーを充電するステップ
とを含む。
【0017】
したがって、本発明は、実装が簡単であり、計算能力をほとんど必要とせず、車両のスケジュールされた出発時間と、充電ステーションから利用可能な電力とを所与として、充電ができる限り安価であることを保証するために、充電ステーションで予約されるべきタイムスロットを、必要とされる正確さで評価することを可能にする方法を提案する。
【0018】
本発明による充電方法の他の有利な、非限定的な特徴は以下のとおりである。
- 新しい充電状態がターゲット充電状態よりも低い場合、追加のタイムスロットに関してステップb)~ステップe)が繰り返され、ステップf)において、ターゲット充電状態が、2つのタイムスロットの後にアキュムレータバッテリーが示す充電状態と比較される。
- ステップa)において、自動車両が充電ステーションから外されることがスケジュールされている出発時間が取得され、ステップb)において、選択されたタイムスロットは出発時間より前である。
- ステップb)~ステップe)の繰り返しの間、充電ステーションがタイムスロットの各々中にアキュムレータバッテリーに送ることが可能な電力が決定され、次いで、そこから、出発時間までのアキュムレータバッテリーの充電状態の変化が導出される。
- ステップb)において、いくつかのタイムスロットにおいて電気のコストが最低である場合、これらのタイムスロットの中から選択されるタイムスロットは最も早いタイムスロットである。
- ステップa)の前に、アキュムレータバッテリーの瞬時充電状態を決定するためと、瞬時充電状態を充電状態しきい値と比較するためと、瞬時充電状態が充電状態しきい値よりも低い場合、利用可能な電力が0でない最初のタイムスロットにおいてアキュムレータバッテリーを充電するためとの準備が行われる。
- ステップc)において、アキュムレータバッテリーの温度が、所定の数学モデルまたは所定のマップに基づいて推定される。
- ステップd)において、電力を決定するために、選択されたタイムスロット中に充電ステーションにおいて利用可能な電力と、自動車両によって許容できる最大電力であって、ステップc)において推定された温度と充電状態とに基づいて決定される最大許容電力との中から最も低い電力を選択するための準備が行われる。
- ステップe)において、タイムスロットの終了においてアキュムレータバッテリー中に蓄えられているエネルギーを計算するためと、次いで、そこから新しい充電状態を導出するためとの準備が行われる。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1つの電気駆動モーターと、各電気モーターに電流を供給するように設計されたアキュムレータバッテリーと、上記で説明したような充電方法を実装するようにプログラムされたコンピュータとを含む自動車両に関する。
【0020】
非限定的な例として与えられた、添付の図面に関する以下の説明は、本発明の内容と、本発明がどのように実装され得るかとについての十分な理解を与えるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による、充電ステーションと自動車両との概略図である。
【
図2A】充電ステーションにおいて利用可能な電力の時間経過に伴う変化の例を示すグラフである。
【
図2B-2C】
図2Aに示されたグラフに対応し、充電ステーションを用いてタイムスロットがどのように選択されるかを示すグラフである。
【
図3A】充電ステーションにおいて利用可能な電気のコストの時間経過に伴う変化の例を示すグラフである。
【
図3B-3C】
図3Aに示されたグラフに対応し、充電ステーションを用いてタイムスロットがどのように選択されるかを示すグラフである。
【
図4A-4D】充電ステーションを用いた4つのタイムスロットの連続予約を示すグラフである。
【
図5】
図1に示された車両のアキュムレータバッテリーがアキュムレータバッテリーの充電状態に応じて受け取ることが可能である最大電力の変化を示すグラフであり、また、充電ステーションが供給することが可能である最大電力と、自動車両の充電器が受け取ることが可能である最大電力とを示すグラフである。
【
図6A-6C】それぞれ、充電ステーションから利用可能な電気のコストと、自動車両のアキュムレータバッテリーの充電状態と、充電ステーションから消費される電力との時間経過に伴う変化を示すグラフである。
【
図7】本発明による充電方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
【0023】
本ケースにおいて、電気自動車両は自動車であるが、電気自動車両は別のタイプの自動車両(オートバイ、トラック、ボートなど)であり得る。
【0024】
この自動車は、ここでは、自動車が内燃機関を含まないという意味で、電気式であるとして説明される。変形態として、自動車はプラグインハイブリッド車両であり得る。
【0025】
電気自動車10は、従来、シャシーとホイールとを含む。より詳細には、本ケースにおいて、電気自動車は、
- 電気自動車10を始動させることを可能にする、少なくとも1つの電気モーター11と、
- 電気モーターに電流を供給するように各電気モーター11に接続された(以下トラクションバッテリー12と呼ぶ)アキュムレータバッテリーと、
- (空調、マルチメディアコンソールなど)電流を消費する補助デバイス13と、
- 充電器14と、
- コンピュータ15と
を含む。
【0026】
充電器14は、充電ステーション20の電源プラグが接続され得る電力ソケットを含む。
【0027】
充電器14は、トラクションバッテリーを充電するためにトラクションバッテリー12に接続される。充電器14はまた、本ケースにおいて、電気自動車10が充電ステーション20に接続されたときに補助デバイス13に電流を供給することが可能であるように、補助デバイス13に接続される。
【0028】
コンピュータ15は、今度は、プロセッサ(CPU)と、メモリと、様々な入力および出力インターフェースとを含む。
【0029】
コンピュータは、コンピュータの入力および出力インターフェースによって、センサーまたは他のデバイスからの入力信号を受信するように設計される。コンピュータは、特に、トラクションバッテリー12の瞬時充電状態SOC0を受信するように設計される。
【0030】
コンピュータはまた、充電ステーション20において利用可能な電力P20と電気のコストC20との時間経過に伴う変化に関するデータを受信するために、充電器14を介して充電ステーション20と通信するように設計される。
【0031】
コンピュータはまた、充電電力を選択することによって、車両を充電するためのタイムスロットを予約するために、この同じ充電ステーション20と通信するように設計される。
【0032】
コンピュータのメモリによって、コンピュータ15は、以下で説明する方法中に使用されるデータを記憶する。
【0033】
特に、コンピュータは、プロセッサによって実行されると、
図7に示され、以下で説明する充電方法をコンピュータ15が実装することを可能にする命令を備えるコンピュータプログラムからなる計算アプリケーションを記憶する。
【0034】
この
図7に示されているように、この充電方法は、ループにおいて繰り返され得る11個の主要なステップを含む。
【0035】
この方法は、特に、ユーザが必要とするときに、ユーザの電気車両10のトラクションバッテリー12が十分に充電されることを保証し、この充電動作のコストが最小化されることを可能にするタイムスロットにおいて、充電ステーション20によってトラクションバッテリー12が充電されることを可能にするように設計される。
【0036】
この方法は、電気自動車10が充電ステーション20に接続されたときに、自動的に開始される。
【0037】
この方法の第1のステップEA0は、トラクションバッテリー12が過大に放電されないことを検査することにあり、過大な放電は、このバッテリーが早期に消耗することを生じ得る。
【0038】
この目的で、この第1のステップEA0中に、コンピュータ15はトラクションバッテリー12の瞬時充電状態SОC0を記録する。本ケースにおいて、この瞬時充電状態SОC0は、この充電状態の計算を担当するサードパーティプロセッサによってコンピュータ15に送信される。変形態として、瞬時充電状態SОC0は、トラクションバッテリー12の端子間の電圧に基づいてコンピュータ15によって計算され得る。
【0039】
コンピュータ15は、次いで、この瞬時充電状態SОC0を、固定され、コンピュータの読取り専用メモリ中に記録された所定の充電状態しきい値SОCminと比較する。この充電状態しきい値SОCminは、好ましくは10%と30%の間である。本ケースにおいて、充電状態しきい値SОCminは20%に等しい。
【0040】
瞬時充電状態SОC0が充電状態しきい値SОCminよりも高いか、または充電状態しきい値SОCminに等しい場合、そのことは、トラクションバッテリー12が早期に消耗する危険がないことを意味し、本方法は、以下で説明するステップEA1に進む。
【0041】
他の場合、コンピュータ15は、瞬時充電状態SОC0が充電状態しきい値SОCminに達するまで、第1の利用可能なタイムスロットにおいてトラクションバッテリー12を充電するように充電ステーション20に要求を送る。このしきい値に達すると、本方法はステップEA1に進む。
【0042】
第2のステップEA1中に、コンピュータ15は、電気車両10の出発時間、すなわち、電気車両10が充電ステーション20から外されるべき時間を収集する。
【0043】
本ケースにおいて、コンピュータ15は、この出発時間だけでなく、トラクションバッテリー12がその時間までに達していなければならないターゲット充電状態SОCNも収集する。
【0044】
この目的で、コンピュータ15は、たとえば、専用ヒューマンマシンインターフェースを介して、ユーザらがいつ出発したいかと、所望の目的地ポイントはどこかとをユーザに尋ね得る。
【0045】
所望の目的地ポイントを考慮に入れて、コンピュータ15は、ユーザがこの目的地ポイントに到達することを可能にするためにトラクションバッテリー12が達していなければならないターゲット充電状態SОCNを決定することが可能である。
【0046】
変形態として、コンピュータ15は、たとえば、ユーザが毎平日仕事に行くために常にユーザらの電気自動車10を使用することを検出することによって、車両が出発する時間と目的地ポイントとを自動的に決定し得る。
【0047】
ステップEA1中に、コンピュータ15は、充電ステーション20から、充電ステーション20において利用可能な電力P20と電気のコストC20との時間経過に伴う変化に関するデータをさらに受信する。
【0048】
たとえば、コンピュータ15は、充電ステーション20において利用可能な電力P
20の時間経過に伴う変化を示すテーブルを受信する。そのようなテーブルは
図3Aに図式的に示されている。
【0049】
コンピュータ15はまた、充電ステーション20から利用可能な電気の価格レベルの時間経過に伴う変化を示すテーブルを受信する。そのようなテーブルは
図2Aで図式的に示されている。本ケースにおいて、価格レベルは4つの異なる値の間で変化することが観測され得る。価格レベルの数は電気供給業者ごとに異なり得ることは言うまでもない。
【0050】
本ケースにおいて、コンピュータ15によって受信されたテーブルは、24時間にわたるこれらの変化を示す。変形態として、テーブルは、異なる周期にわたる(たとえば、車両の出発時間までの)これらの変化を示し得る。
【0051】
コンピュータ15によって受信されると、これらのテーブルは、ここで15分ステップにおいて離散化される。この目的で、各15分ステップ内の電気のコストC20の最も高い値が、この15分ステップ中の電気のコストC20の唯一の値として使用される。各15分ステップ内で利用可能な電力P20の最も低い値が、その上、この15分ステップ中に利用可能な電力P20の唯一の値として使用される。
【0052】
次いで、出発時間が24時間超先である場合、本方法は、以下で説明するステップEB1に進む。
【0053】
他の場合、テーブルは、この出発時間後のタイムスロットが、電気自動車10を充電するために選択されることが可能になることを回避するように再定義される。
【0054】
この目的で、出発時間後の各タイムスロットの電気のコストC
20は極めて高い値、たとえば10
10ユーロに固定される(
図2B参照)。さらに、または変形態として、出発時間後の各タイムスロットについての充電ステーション20から利用可能な電力P
20は0値に固定される(
図3B参照)。
【0055】
変形態として、車両が、スケジュールされた出発時間の1時間前に充電されることを保証するように考慮に入れて、テーブルは、たとえば、1時間の安全マージンを用いて再定義されていることがあり得る。
【0056】
テーブルが再定義されると、本方法はステップEB1に進む。
【0057】
この第3のステップEB1は、トラクションバッテリー12を充電することが賢明である最も近いタイムスロットδtiを選択することにある。
【0058】
この目的で、コンピュータ15は、利用可能な電力P20が0でなく、電気のコストC20が最低である、最も近いタイムスロットδtiを選択する。
【0059】
第4のステップEB2中に、コンピュータ15は、次いで、この同じタイムスロットδtiがその後再選択されることを回避するようにテーブルを更新する。
【0060】
この目的で、このタイムスロットδt
i中の電気のコストC
20は、極めて高い値、たとえば10
10ユーロに固定される(
図2C参照)。さらに、または変形態として、このタイムスロットδt
i中に充電ステーション20から利用可能な電力P
20は0値に固定される(
図3C参照)。
【0061】
以下のステップは、その場合、選択されたタイムスロットδti中にのみトラクションバッテリー12を充電することによって、ユーザが所望の目的地ポイントに到達することが可能であるかどうかを検査するために、トラクションバッテリー12がこのタイムスロットδtiの終了において示すべきである充電状態SОCi+1を推定することにある。
【0062】
この目的で、第5のステップEC1中に、コンピュータ15は、トラクションバッテリー12が、選択されたタイムスロットδtiの時間(考えられる時間は、タイムスロットの開始であるか、そうでなければ、タイムスロットの中間など、このスロット中の任意の他の時間であり得る)に示す温度Tiを推定する。
【0063】
この温度Tiは、所定の数学モデル、またはテストベンチ上で生成される所定のマップに基づいて推定され得る。
【0064】
本ケースにおいて、コンピュータ15は、以下の数学モデルを使用して温度T
iを計算する。
ここで、
- MCp、R、RthextおよびRth(Qm)は、トラクションバッテリー12の化学的性質に依存する熱定数であり、
- テキストは周囲温度であり、
- Tairは、前記システムがアクティブ化される場合にトラクションバッテリー12を加熱/冷却するためのシステムの温度であり、
- Iはトラクションバッテリー12の電流強度である。
【0065】
コンピュータ15は、次いで、トラクションバッテリー12がタイムスロットδtiの開始において示す充電状態SОCiを推定する。
【0066】
本ケースにおいて、この充電状態SОCiは瞬時充電状態SОC0に等しいと考えられる。変形態として、トラクションバッテリー12が、電流を消費する補助デバイス13に電力を供給するために使用されるように意図されている場合、充電状態SОCiは異なり得る。
【0067】
第6のステップED1中に、コンピュータ15は、タイムスロットδti中にトラクションバッテリー12によって許容できる電力Pmax12を計算する。
【0068】
この許容電力Pmax12は、前に推定された温度Tiと充電状態SОCiとに基づいて決定される。
【0069】
図5で曲線C1によって示されているように、この電力は、事実上、トラクションバッテリー12の充電状態SОCに応じて変動し、充電状態SОCが高くなればなるほど低くなる。
【0070】
許容電力Pmax12はまた、トラクションバッテリー12の温度に応じて変動し、この電力は、温度Tが高くなればなるほど低くなる。
【0071】
許容電力Pmax12を決定するために、コンピュータ15は、許容電力Pmax12が、前に推定された温度Tiと充電状態SОCiとに基づいて決定されることを可能にする値のテーブルをコンピュータ15のメモリ中に記憶する。
【0072】
第7のステップED2中に、コンピュータ15は、そのメモリから、
図5において直線C2によって表される所定の定数である、充電器12によって許容できる最大電力P
max14を読み取る。
【0073】
コンピュータ15はまた、
図5において直線C3によって表される、選択されたタイムスロットδt
i中に充電ステーション20において利用可能な電力P
20を読み取る。
【0074】
コンピュータ15は、次いで、3つの電力、Pmax12、Pmax14、P20の中から、最も低く、したがって、トラクションバッテリー12が充電されることが可能である電力を制限するファクタを構成する1つの電力を選択する。
【0075】
図5に示されているように、この制限ファクタは、トラクションバッテリー12の充電状態SОCに応じて(およびバッテリーの温度に応じて)異なる。
【0076】
選択された電力Piは、次いで、トラクションバッテリー12を充電するために(および、場合によっては、補助デバイス13に電力を供給するためにも)充電ステーション20から必要とされる電力としてタイムスロットδtiに関連する。
【0077】
コンピュータ15は、次いで、アキュムレータバッテリー12がタイムスロットδtiの終了において示す新しい充電状態SОCi+1を決定する。
【0078】
この充電状態SОCi+1の値は、タイムスロットδti中に充電ステーション20によって供給される電力Piから導出される。充電状態SОCi+1の値はまた、補助デバイス13によって消費される電力(その電力は、簡潔のために以下では0であると考えられる)から導出される。
【0079】
より正確には、本ケースにおいて、第8のステップEE1中に、コンピュータ15は、選択されたタイムスロットδtiの前にトラクションバッテリー12中に蓄えられた電気エネルギーEiを決定することによって始動する。
【0080】
電気エネルギーEiの値は、本ケースにおいて、以下の数式によって瞬時充電状態SОC0から導出される。
Ei=SОC0.Emax.SOH/100
ここで、
- Emaxは、コンピュータ15のメモリ中に記録され、トラクションバッテリー12が記憶することができる最大電気エネルギーに対応する、所定の定数であり、
- SOHは、サードパーティコンピュータによってコンピュータ15に送信される、トラクションバッテリー12の健康状態である。
【0081】
次いで、コンピュータ15は、選択されたタイムスロットδtiの終了においてトラクションバッテリー12中に蓄えられることになる電気エネルギーEi+1を以下の数式によって決定する。
Ei+1=Ei+Pi.Δt
Δtは、本ケースにおいて、15分に等しい。
【0082】
第9のステップEE2中に、コンピュータ15は、そこから、トラクションバッテリー12が、選択されたタイムスロットδtiの終了において示す新しい充電状態SОCi+1を以下の数式によって導出する。
SОCi+1=100.Ei+1/(Emax.SOH)
【0083】
第10のステップEF1中に、コンピュータ15はこの新しい充電状態SОCi+1をターゲット充電状態SОCNと比較する。
【0084】
新しい充電状態SОCi+1がターゲット充電状態SОCNよりも高いか、またはターゲット充電状態SОCNに等しい場合、本方法は第11のステップEG1に進み、その中で、コンピュータ15は、選択されたタイムスロットδti中に電力Piを予約する要求を充電ステーションに送る。
【0085】
他の場合、すなわち、このタイムスロットδtiのみが、ターゲット充電状態SОCNが達せられることを可能にしない場合、本方法は、単一のタイムスロットだけでなく、2つのタイムスロットを選択することによってトラクションバッテリー12を十分に充電することが可能であるかどうか検査するように、第3のステップEB1から繰り返される。
【0086】
図4A~
図4Dに示されているように、本方法は必要なだけ何回も繰り返され得、ターゲット充電状態SОC
Nに達するために必要とされるだけの追加のタイムスロットが選択される。
【0087】
本方法が繰り返される様式は、このようにして手短に説明することができる。
【0088】
本方法が最初に第3のステップEB1を繰り返すとき、コンピュータ15は、利用可能な電力P20が0でなく、電気のコストC20が最低である、最も近いタイムスロットδtjを選択する。テーブルが更新されたので、タイムスロットδtiはここでは再選択されない。
【0089】
次いで、第4のステップEB2中に、コンピュータ15は、この新しいタイムスロットδtjがその後再選択されることを回避するようにテーブルを更新する。
【0090】
以下のステップは、次いで、トラクションバッテリー12が2つの選択されたタイムスロットδti、δtjの終了において示すべきである充電状態を推定することにある。
【0091】
この目的で、コンピュータは、最初に、2つの選択されたタイムスロットδti、δtjのうち、現在の瞬間に最も近いタイムスロットを考える。
【0092】
たとえば、これが(j<iと述べることが可能であるように)タイムスロットδtjであると考えることにする。
【0093】
次いで、第5のステップEC1中に、コンピュータ15は、トラクションバッテリー12がタイムスロットδtjの時間において示す温度Tjを、上述の数学モデルを使用して推定する。
【0094】
コンピュータ15はまた、トラクションバッテリー12がタイムスロットδtjの開始において示す充電状態SОCiを推定する。この充電状態SОCjは、本ケースにおいて、瞬時充電状態SОC0に等しいと考えられる。
【0095】
第6のステップED1中に、コンピュータ15は、前に説明したのと同様の方法で、このタイムスロットδtj中にトラクションバッテリー12によって許容できる電力Pmax12を計算する。
【0096】
第7のステップED2中に、コンピュータ15は、そこから、このタイムスロットδtj中にトラクションバッテリー12を充電することが可能な電力Pjを導出する。
【0097】
第8のステップEE1中および第9のステップEE2中に、コンピュータ15は、アキュムレータバッテリー12がタイムスロットδtjの終了において示す新しい充電状態SОCj+1を決定する。
【0098】
次いで、コンピュータは、今回は他のタイムスロットδtiに関してステップEC1~EE2を繰り返す。
【0099】
この目的で、第5のステップEC1中に、コンピュータ15は、トラクションバッテリー12がタイムスロットδtiの時間において示す温度Tiを、上述の数学モデルを使用して推定する。
【0100】
次いで、コンピュータ15は、トラクションバッテリー12がタイムスロットδtiの開始において示す充電状態SОCiを推定する。この充電状態SОCiは、本ケースにおいて、充電状態SОCj+1に等しいと考えられる。
【0101】
第6のステップED1中に、コンピュータ15は、前に説明したのと同様の方法で、このタイムスロットδti中にトラクションバッテリー12によって許容できる電力Pmax12を計算する。
【0102】
第7のステップED2中に、コンピュータ15は、そこから、このタイムスロットδti中にトラクションバッテリー12を充電することが可能な電力Piを導出する。
【0103】
第8のステップEE1中および第9のステップEE2中に、コンピュータ15は、アキュムレータバッテリー12がタイムスロットδtiの終了において示す新しい充電状態SОCi+1を決定する。
【0104】
最後に、第10のステップEF1中に、コンピュータ15は、この新しい充電状態SОCi+1をターゲット充電状態SОCNと比較する。
【0105】
新しい充電状態SОCi+1がターゲット充電状態SОCNよりも高いか、またはターゲット充電状態SОCNに等しい場合、コンピュータ15は、2つの選択されたタイムスロットδti、δtjの時間において選択された電力Pi、Pjを予約する要求を充電ステーションに送る。
【0106】
さもなければ、本方法は、この場合も第3のステップEB1から繰り返され、今回は、(2つのタイムスロットδti、δtjを含む)3つのタイムスロットが選択される。
【0107】
図6Aは、充電ステーション20から利用可能な電気のコストC
20の時間経過に伴う変化の例を示す。
【0108】
図6Bは、出発時間までのトラクションバッテリー12の充電状態SОCの予測される変化を(付随して)示す。
【0109】
図6Cは、充電ステーション20で各タイムスロットにおいて予約された電力Pの時間経過に伴う変動を(付随して)示す。
【0110】
図6Bにおいて、本方法の最初に、その値を超えるともはやトラクションバッテリー12が早期に消耗する危険がなくなる充電状態しきい値に達するまで、トラクションバッテリー12を充電するための準備が行われることが観測され得る。
【0111】
次いで、電気のコストが低いタイムスロット中にバッテリーを充電するための準備が行われる。最後に、出発時間において、トラクションバッテリー12の充電状態が、本ケースにおいて60%であるターゲット充電状態に達しているための準備が行われることが観測され得る。
【0112】
説明した方法によって、コンピュータ15は、したがって、予約されたタイムスロットと、各タイムスロットにおいて必要とされる電力とを含んでいる要求を充電ステーション20に迅速に送ることが可能である。
【0113】
この方法は、本方法を実装するために必要とされる計算能力を低減するために、トラクションバッテリー12の充電状態SОCの変化の簡略化された推定に基づく。
【0114】
推定は、したがって、わずかに誤り得る。
【0115】
充電問題を回避するために、充電が開始すると、好ましくは、トラクションバッテリー12の充電状態SОCの変化を監視する動作を実装するための準備が行われる。
【0116】
この目的で、コンピュータは、毎時、トラクションバッテリー12の充電状態SОCの瞬時値を記録し、次いで、この値を予想された値と比較する。
【0117】
これらの2つの値の間の差が所定のしきい値より低いままである限り、補正は行われない。
【0118】
しかしながら、この差がしきい値を超える場合、コンピュータは、特に、電気のコストと、ステーションから利用可能な電力とのための新しいテーブルを見つけ出す要求を充電ステーションに送ることによって、上記で説明した方法を再初期化する。
【0119】
本方法の実装中に、しかしながら、本ケースにおいて、トラクションバッテリー12によって許容できる電力Pmax12の計算に補正係数が適用される。
【0120】
この補正係数の値は、好ましくは、充電状態の瞬時値が充電状態の予想された値からそれた速度に応じて調整される。
【0121】
本方法が完了すると、コンピュータ15は、新しいタイムスロットを予約するための新しい要求を充電ステーション20に送る。これは「再ネゴシエーション」として知られている。