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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用電圧波形生成器
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240228BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101C
C23C16/50
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021524442
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019080405
(87)【国際公開番号】W WO2020094723
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】18205472.6
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2022222
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521460608
【氏名又は名称】プロドライヴ・テクノロジーズ・イノヴェーション・サービシーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス・ウィルヘルムス・ヘンドリクス・ヨハネス・ドリーセン
(72)【発明者】
【氏名】ウーター・ヨハン・ヘンドリク・ファン・ヘニップ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0009479(US,A1)
【文献】特開2012-050296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
C23C 16/50
H01J 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生成するための手段と、
処理されるべき基板(101)を支持するための処理プラットフォーム(105)と、
前記処理プラットフォーム(105)に電気的に結合された出力(19)を備える電圧波形生成器(10)と
を備えるプラズマ処理装置(100)であって、
前記電圧波形生成器(10)が、
並列に配置され、前記出力(19)に結合された複数の第1の降圧変換器(11)であって、前記第1の降圧変換器(11)がアクティブにスイッチング可能な半導体スイッチ(111)を備える、複数の第1の降圧変換器(11)と、
パルス幅変調信号を介して前記アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチ(111)を動作させるように構成された制御ユニット(16)と
を備え、
前記制御ユニット(16)が、前記複数の第1の降圧変換器(11)をインターリーブ方式において動作させるように構成される、
ことを特徴とする、プラズマ処理装置(100)。
【請求項2】
各降圧変換器内の前記アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチが、ハーフブリッジ構成において配置された第1の半導体スイッチと第2の半導体スイッチとを備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御ユニットが、前記複数の第1の降圧変換器に適用される位相シフトされたパルス幅変調信号を生成するように構成される、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電圧波形生成器が、並列に配置され、前記出力に結合された複数の第2の降圧変換器を備え、前記第2の降圧変換器が、アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチを備え、
前記制御ユニットが、パルス幅変調信号を介して前記第2の降圧変換器の前記アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチを動作するように構成され、前記複数の第2の降圧変換器をインターリーブ方式において動作させるように構成され、
前記複数の第1の降圧変換器および前記複数の第2の降圧変換器が並列に配置された、
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2の降圧変換器の前記アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチが、前記第2の降圧変換器の各々において、ハーフブリッジ構成において配置された第3の半導体スイッチと第4の半導体スイッチとを備える、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記電圧波形生成器が、前記複数の第1の降圧変換器と前記出力との間に変圧器を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電圧波形生成器が、前記第1の降圧変換器と前記出力との間にDC遮断キャパシタを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記DC遮断キャパシタが、前記変圧器の二次側と前記出力との間に結合された、請求項6と併せた請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記電圧波形生成器が、前記出力に結合された線形電力増幅器を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記制御ユニットが、前記線形電力増幅器の動作を制御するように動作可能である、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記線形電力増幅器が、前記第1の降圧変換器と並列に結合された、請求項9または10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1の降圧変換器とフィルタとが直列に形成されるように、前記第1の降圧変換器と直列に配置されたフィルタを備え前記フィルタは、前記出力に結合され、前記線形電力増幅器が、前記第1の降圧変換器ならびに前記フィルタと並列に結合された、請求項9または10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記電圧波形生成器が、前記基板の露出面に電圧バイアスを提供するように動作可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記制御ユニットが、前記出力において所定の電圧波形を生成するために、前記第1の降圧変換器の前記アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチを動作させるように構成された、請求項1から13のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記電圧波形生成器が、前記出力においてAC電圧を生成するように動作可能である、請求項1から14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記制御ユニットには、前記電圧波形生成器の複数の動作モードが実装された、請求項1から15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記複数の動作モードが、異なる出力電圧レベルをもたらす動作モードを含む、請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記複数の動作モードが、異なる出力電流レベルをもたらす動作モードを含む、請求項16または17に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
前記複数の動作モードのうちの少なくとも1つの動作モードは、制限された出力電流および/または制限された出力電圧において動作することを含む、請求項16から18のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
前記複数の動作モードが、前記アクティブにスイッチング可能な半導体スイッチの異なるスイッチング周波数によって区別される、請求項16から19のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項21】
イオンエネルギー密度、および前記基板を通るイオン電流のうちの1つまたは複数であるプロセスパラメータを測定するように配置され、前記電圧波形生成器が、前記測定されたプロセスパラメータに基づく制御ループを備える、請求項1から20のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項22】
ドライエッチング装置である、請求項1から21のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項23】
プラズマ支援層堆積装置である、請求項1から21のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプラズマ処理されるべき基板上に電圧バイアスを生成するための、電圧波形生成器を備えるプラズマ処理装置に関する。電圧バイアスは、プラズマ支援エッチングまたはプラズマ支援層堆積におけるイオンエネルギーを制御するために有利に使用される。
【背景技術】
【0002】
プラズマ支援エッチングおよびプラズマ支援層堆積において、イオンエネルギーを制御するためのバイアス電圧を生成するために無線周波数(RF)生成器が使用される。プロセス制御を改善するために、バイアス電圧および結果として生じるイオンエネルギー分布の正確な制御が重要である。このバイアス電圧を生成することは、効率が制限された(広帯域)線形増幅器を用いて、または柔軟性が制限された(狭帯域)スイッチモード増幅器もしくは専用パルス生成増幅器を用いて行われる。大部分の増幅器は、出力電圧波形を間接的にしか制御していない(例えば、出力電力を制御するか、または較正に依存している)。システムにおける非理想性とパラメータの変動とにより、この手法は、制限されたパフォーマンス(生成される波形は、所望の出力電圧波形にあまり近づかず、結果としてあまり望ましくないイオンエネルギー分布を生じる)と、制限された再現性(ウェーハ間の変動およびシステム間の変動)とを結果として生じる。
【0003】
米国特許第9208992号は、処理されるべき基板の露出面において周期的電圧関数を形成するためのスイッチモード電源を備えるプラズマ処理装置を記載している。周期的電圧関数は、基板のエッチングまたは基板上のプラズマ堆積を実行するために、所望のイオンエネルギー強度分布を実現する。スイッチモード電源は、降圧、昇圧、および/または昇降圧タイプの電源技術によって実現され得る。スイッチモード電源は、ハーフブリッジにおいて結合され、コントローラによって生成された駆動信号に基づいて制御される2つのスイッチ構成要素を備える。
【0004】
上記のスイッチモード電源の欠点は、イオン電流を補償するために、DC電流を用いてブロック状の波形しか生成することができないことである(図14参照)。しかしながら、現在のプラズマベースの処理装置では、調整された波形によるバイアスの直接電圧制御を適用する傾向がある。したがって、おそらく高帯域幅を有する任意波形を提供するために所望の柔軟性を有する電圧波形生成器が当該技術分野において求められている。しかしながら、上記の電源を用いてそのような高帯域幅を得るためには、スイッチング構成要素に対して非常に高いスイッチング周波数を課すことになり、それは、実行不可能である。
【0005】
正弦波バイアス電圧波形を生成するために使用されるRF増幅器は、典型的には50オームの出力インピーダンスを有する。複素プラズマインピーダンスを実際の50オームインピーダンスに変換するために、マッチングネットワーク(業界ではマッチボックスと呼ばれ、増幅器と基板テーブルとの間に配置される)が使用される。プロセス条件に応じて、この結果、マッチングネットワークに大きい無効電流が流れ、それは、大きい損失を生じる。このことは、マッチングボックスを高価なシステム構成要素にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9208992号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラズマの助けを借りて、様々な化学プロセスが実行され、そのうちのいくつかは、高い精度を必要とし、他のものは、高電力を必要とする。現在のプラズマ処理装置は、両方の必要性に対処するのに十分な柔軟性を与えないか、または増加したコストにおいて、もしくは動作効率を犠牲にしてそのような柔軟性を提供する。
【0008】
本発明の目的は、上記の欠点を解消することである。本発明の目的は、効率損失がないか、または限定された効率損失で所望の電圧波形の大きい変動を生成することを可能にする、プラズマ処理装置などにおける電圧波形生成器を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、一方で高精度、他方で高電力の上記の必要性に対処するために様々な動作モードで使用されることを可能にするプラズマ処理装置を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、プラズマインピーダンスを50オームインピーダンスに変換するためのマッチングネットワークに対する必要性を排除することである。本発明の目的は、そのようなマッチングネットワークを必要とせず、したがってそのようなマッチングネットワークが存在しないプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されているプラズマ処理装置が提供される。プラズマ支援エッチングまたはプラズマ支援層堆積用に構成され得るプラズマ処理装置は、プラズマを生成するための手段と、処理されるべき基板を支持するための処理プラットフォームと、例えば、プラットフォームにバイアス電圧を提供するための、処理プラットフォームに電気的に結合された出力を備える電圧波形生成器とを備える。電圧波形生成器は、並列に配置され、出力に結合された複数の第1の降圧変換器(本明細書では、降圧セルと呼ばれる)であって、第1の降圧変換器がアクティブにスイッチング可能な半導体スイッチを備える、複数の第1の降圧変換器と、パルス幅変調信号を介してアクティブにスイッチング可能な半導体スイッチを動作させるように構成された制御ユニットとを備える。制御ユニットは、複数の第1の降圧変換器をインターリーブ方式において動作させるように構成される。
【0012】
上記の種類の電圧波形を用いて、スイッチング効率を高レベルに保ちながら、所望の電圧波形の大きい変動を生成することが可能になる。
【0013】
有利には、電圧波形生成器は、並列に配置され、出力に結合された複数の第2の降圧変換器を備え、第2の降圧変換器は、制御ユニットによって動作されるアクティブにスイッチング可能な半導体スイッチを備える。有利には、複数の第1の降圧変換器および複数の第2の降圧変換器は、並列に配置される。結果として、n個のインターリーブされた降圧変換器の複数(2つ以上)のセットの並列配置が得られ、電流を分配し、したがって、個々の降圧変換器の半導体スイッチに対する負荷を低減することを可能にする。
【0014】
降圧変換器は、電流または電圧を介して結合され得る。電圧結合の場合、電圧波形生成器は、有利には、入力フィルタとして機能するキャパシタを備える。
【0015】
オプションで、降圧変換器の出力電圧を上昇させるか、または代替的には低下させるために、(RFなどの高周波)変圧器が、降圧変換器と出力との間に結合される。
【0016】
有利には、DC遮断キャパシタが、降圧変換器と出力との間に結合される。上記のように変圧器が設けられている場合、DC遮断キャパシタは、有利には、変圧器の二次側において結合される。DC遮断キャパシタは、有利には、約10pFと約200nFとの間、有利には約100pFと約100nFとの間の範囲の静電容量を有する。そのようなDC遮断キャパシタは、有利には、変圧器の飽和を防止し、変圧器が省略された場合でも、DCバイアス電圧が半導体上の代わりに遮断キャパシタ上に配置されるので、降圧変換器の半導体スイッチに対する電圧ストレスを低減し、より経済的な半導体スイッチの使用を可能にし、したがって、より経済的な電圧波形生成器を得る。
【0017】
有利には、電圧波形生成器は、有利には、第1の降圧変換器と並列に、出力に結合された線形電力増幅器を備える。インターリーブされた降圧変換器の各セット(例えば、第1および第2の降圧変換器)は、並列に結合された別個の線形電力増幅器を有することができる。線形電力増幅器は、有利には、制御ユニットを介して動作される。そのような線形電力増幅器は、電圧波形生成器の帯域幅を増加させること、および/または降圧変換器の半導体スイッチのスイッチング速度を低下させることを可能にする。したがって、より経済的な半導体スイッチが使用され得、および/または高周波の電圧波形が生成され得る。
【0018】
別の態様によれば、プラズマ処理装置を制御または動作する方法について本明細書で説明されている。
【0019】
ここで、本発明の態様について、添付図面を参照してより詳細に説明し、ここで、同じ参照番号は、同じ特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の態様による、ICP(誘導結合プラズマ)反応器のためのバイアス生成器として使用される電圧波形生成器の例を表す図である。
図2】本発明による電圧波形生成器のブロック図である。
図3】線形電力増幅器がインターリーブされた降圧セルと並列に追加されているという点で図2の図とは異なる、本発明による別の電圧波形生成器の第2のブロック図である。
図4】インターリーブされた降圧セルの1つのセットのみが変圧器に対して非対称に設けられているという点で図2または図3の図とは異なる、本発明によるさらに別の電圧波形生成器の第3のブロック図である。
図5】線形電力増幅器がインターリーブされた降圧セルおよび(一次)フィルタと並列に結合されているという点で図3の図とは異なる、本発明によるさらに別の電圧波形生成器の第4のブロック図である。
図6】インターリーブされた降圧セルのセットがキャパシタを介して結合されているという点で図2の図とは異なる、本発明によるさらに別の電圧波形生成器の第5のブロック図である。
図7図2図6において使用され得る単一の降圧セルの電気スキームを表す図である。
図8】様々な動作モードに従って電圧波形生成器を動作させるための制御方法のフロー図である。
図9】過電流検出用保護回路を含む、図2図6に関連して説明した電圧波形生成器のいずれか1つであり得る電圧波形生成器のブロック図である。
図10】電流制限用の保護回路を含む、図2図6に関連して説明した電圧波形生成器のいずれか1つであり得る電圧波形生成器のブロック図である。
図11】基板電圧、結果として生じる任意電圧波形生成器(ABVG)出力電流、および最適な場合に目標基板電圧を達成するために必要な理想的なABVG出力電圧のグラフである。
図12】基板電圧、結果として生じるABVG出力電流、および準最適な場合に目標基板電圧を達成するために必要なABVG出力電圧のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
プラズマは、複雑である可能性があり、異なるレシピ(使用される化学物質およびプロセス設定)は、IEDにおいて、したがって所望のバイアス電圧波形において異なる要件を有する。本発明において、高効率のスイッチモードアーキテクチャを有する柔軟な広帯域任意電圧波形生成器(ABVG)が提案される。ABVGは、オプションで、パフォーマンスを向上させる線形増幅器で支援され得る(結果としてシステム全体のより高い帯域幅をもたらす)。
【0022】
図1は、誘導結合プラズマ(ICP)装置100におけるABVG10の典型的な使用法の1つを示し、ABVG10は、基板ステージ電圧を制御することによって基板101(典型的にはウェーハ)の電圧を制御している。プラズマ反応器102において、誘導コイル107によって囲まれた誘導管108内にプラズマ形成ガス104を導入することによってプラズマ103が生成される。この配置は、基板101が配置されたステージまたはプラットフォーム105にプラズマ103を向けるプラズマトーチを形成する。RF電圧が、当該技術分野において知られているように、RF電源120とマッチングネットワーク121とを介して誘導コイル107に印加される。オプションで、前駆体109が、プラズマ反応器102内に導入され得る。RF電源120およびABVG10は、システムホストコントローラ130によって制御され得る。
【0023】
ABVG10は、
- 容量結合プラズマ(CCP)リアクタ内、
- 電源電力生成器(RF電源)とABVGとの間の制御信号の直接相互接続(システムホストを介さない)が可能である、
のような他の構成においても使用され得る。プラズマを生成するために、別のソースが使用され得る(例えば、容量結合プラズマ、電子サイクロトロン共鳴、マグネトロン、DC電圧など)。
【0024】
本発明による電圧波形生成器の可能なシステムアーキテクチャを図2図6に示す。図4は、最も基本的なスキームである。
【0025】
図2図6を参照すると、電圧波形生成器10の出力端子19における所望の出力電圧は、パルス幅変調(PWM)制御の降圧セル11によって生成される。1つのそのような降圧セル11の可能な実装形態は、図7に示すようにアクティブにスイッチング可能な半導体スイッチ111を備えるハーフブリッジである。PWMは、典型的には、PWM生成器12、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって生成される。電流を分配するために、複数の降圧セル11が並列に配置され得る。降圧セルのPWMは、リップル電流を低減し、実効スイッチング周波数fsw_effを上昇させるために、位相がずれて適用される(すなわち、インターリーブ動作)。降圧セル出力電圧は、高調波成分を除去するためにフィルタ13によってフィルタリングされる。
【0026】
降圧セル電流共有は、降圧セルのコイル電流を測定し、電流が降圧セル間で均等に分配されるように、降圧セルを制御するPWM信号を調整することによって対処され得る。
【0027】
変圧器14は、フィルタリングされた降圧セル出力電圧を変圧器の巻数比によってシステムに必要なレベルに上昇させている(低下させることもできる)。基板テーブル電位のDCバイアス電圧は、変圧器14の後のDC遮断キャパシタ15上に自動的に配置される。これは、変圧器14および降圧セル11に対する電圧ストレスを低減している。DC遮断キャパシタ15はまた、(例えば、プラズマのDC電位による)二次DC電流が変圧器を飽和させることを防止している。一次側における変圧器の飽和の防止は、例えば、コントローラ16によって、電流を測定し、変圧器の一次側におけるDC電圧を防止するために、生成されたPWM信号を調整することによって行われ得る。(オプション)のEMCフィルタ17が、基準に準拠するために、ABVGで発生した高周波成分をフィルタリングするために使用される。
【0028】
より複雑な変圧器構成により、3つ以上のインターリーブされたハーフブリッジ(降圧セル11)を並列に配置することが可能である。
【0029】
降圧セル電源における適切な電圧レベル、および所望のバイアス電圧の適切な電圧レベルにより、変圧器14を省略することが可能である。可能な降圧セル電圧レベルは、利用可能な半導体スイッチ111によって制限されることに留意されたい。
【0030】
変圧器の出力側は、ユーザが変圧器の巻数比と、したがって出力電圧範囲とを選択することを可能にする複数のタブを備えることができる。代替的には、ABVGは、複数の出力電圧設定を切り替えるための(内部)リレーを備えることができる。
【0031】
利用可能な半導体スイッチ111のスイッチング速度には制限がある。これは、より高い帯域幅を有することができる線形増幅器18によって解消され得る。ABVG帯域幅を増加させるために、いくらかの効率損失を犠牲にして、いくらかより高い高調波(典型的にはより少ないエネルギーを含む)を発生させるために線形電力増幅器18が追加され得る。ABVG内のコントローラ16は、PWM生成器12と(オプションの)線形電力増幅器18の両方を制御することができる。コントローラ16によって供給されるデジタル出力は、線形電力増幅器18に供給される前に、D/A変換器28を介してアナログ信号に変換される。
【0032】
図4における変圧器のDCバイアス/飽和を防止するために、DC遮断キャパシタ15が設けられる。代替的には、変圧器の一次側は、グランドの代わりにスプリットバス(降圧セル11と共有される)に接続され得る。図4におけるEMCフィルタは、オプションである。
【0033】
複数の降圧セルを並列に動作させるための位相シフトされたPWM信号の発生によって、実効スイッチング周波数fsw_eff(fsw_eff=n*2*1つの降圧セルのスイッチング周波数)が上昇され得る。このトポロジーにより、対応するPWM信号の発生によって任意の波形が合成され得る。繰り返し波形が、そのフーリエ成分の合計として見られ得る。経験則として、このABVGトポロジーによって生成され得る最高周波数は、fsw_eff/5である。作成され得るフーリエ成分が多いほど、所望の電圧波形がより良く再現される。このトポロジーにより、約fsw_eff/5までのフーリエ成分を有する任意の波形が生成され得る。
【0034】
このトポロジーにより、降圧セルは、最先端の最高クラスの半導体スイッチ(これを書いている時点でGaN HEMTデバイス)を用いて実装され得る。これらのスイッチは、非常に高速に切り替わることができ、結果として、低いターンオンおよびターンオフ損失と、したがって高効率とをもたらす。効率をさらに高めるために、変換器は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)において動作され得る。これは、降圧セルインダクタ112のインダクタンス値を減少させることによって行われ得る。
【0035】
内部センサとオプションの外部センサとを有する閉ループ電圧制御システムを実装することは、電圧波形の生成と再現性とをさらに改善することができる。バイアス電圧の直接制御、したがってイオン速度の直接制御は、最新技術によって示されるものと比較して、システムレベルにおいてはるかにより低い(おそらく、最大で一桁低い)電力消費を結果としてもたらすことができる。
【0036】
プラズマチャンバ102内のプロセスに応じて、高精度(例えば、原子層エッチング)または高電力(例えば、スパッタリング)が必要とされる。スパッタリングのような高電力プロセスでは、より低い精度が許容される可能性がある。結果として、ABVGコントローラ16は、そのような動作モードにおいて、より少ない帯域幅を必要とし、より低い実効スイッチング周波数を可能にする。一態様によれば、コントローラ16は、ABVGの異なる動作モードを選択することを可能にするように構成された制御プログラムまたは方法を用いて実装される。例として、図8のフローチャートは、可能な選択を示す。有利には、少なくとも2つの、有利には少なくとも3つの動作モードが、異なる電力レベルおよび/またはスイッチング周波数の異なるレベルに対応して、コントローラ16において実装され、低電力、高電力、および場合によっては中電力が、それぞれ低スイッチング周波数、高スイッチング周波数、または中スイッチング周波数に対応する。動作モードは、少なくとも2つの電圧レベルおよび/または少なくとも2つの電流レベル間の選択に基づいて選択され得る。
【0037】
低電圧を選択することは、より低いバス電圧(降圧セルの電源電圧)をもたらす。低電流を選択することは、ABVG保護回路のより低い電流レベルをもたらす。この保護回路は、2つの方法において動作するように構成され得る。第1の場合、図9を参照すると、保護回路161は、(変圧器14の二次側における)出力電流を測定するように構成された過電流検出回路として構成され、電流が高すぎると、保護回路161は、ABVG電力段を無効にするために無効信号を発し、エラーが発生される。第2の場合、図10を参照すると、保護回路162は、(例えば、変圧器14の二次側における)出力電流を測定するように構成された電流制限回路として構成され、電流が高すぎると、保護回路162は、出力電流を低減/制限する出力電圧を低下させる(典型的な実験室電源のような挙動)。
【0038】
図9および図10を参照すると、コントローラ16、PWM生成器12、波形生成器26、D/Aコンバータ(例えば、線形増幅器用)、制御(フィードバック)ループ、および保護回路161、162は、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)36に統合され得ることに留意することが便利である。波形生成器26は、オプションでプレディストーションを用いて、出力電圧設定値を提供するように構成され得る。コントローラ16は、フィードバックを伴う制御ループを備えることができる。
【0039】
狭いイオンエネルギー分布(IED)では、基板電圧は、有利には、図11に示すように、tONの間、平坦であるべきである。これを達成するために、基板(およびホルダ)の容量性充電は、有利には、tONの間、ABVG出力電圧dVOUT/dtを調整することによって補償される。tON中の平坦な基板電圧は、tON中の連続的なイオン電流と、したがって、連続的なABVG出力電流とをもたらす。これは、ABVG出力電圧を測定するように構成され、tONの間にdVOUT/dtを調整するように構成されたコントローラに結合された電流測定ユニットを設けることによって、ABVGによって取得され得る。これは、ABVG出力電圧を調整するために使用される間接的に測定されたプロセスパラメータの一例である。これは、プロセスパフォーマンスを改善し、この場合、IEDのより良好な制御をもたらす。図12を参照すると、基板電圧、結果として生じるABVG出力電流、および準最適な場合に目標基板電圧を達成するために必要なABVG出力電圧が示されている。
【0040】
他の例において、ABVGは、イオンフラックスまたはIEDを測定し、ABVG出力電圧(設定値)の制御のためにこの情報を使用するように構成される。
【0041】
一態様において、ABVGおよび/またはプラズマ処理装置を動作させる方法は、複数の動作モードを含む制御プログラムの実装を含む。第1の動作モードは、高電力モードに対応することができる。第2の動作モードは、高精度モードに対応することができる。複数の動作モードは、異なるスイッチング周波数、異なる出力電圧、異なる出力電流のうちの1つまたは組合せによって区別することができる。
【0042】
高電力モードに対応する第1の動作モードは、有利には、スイッチング周波数が低く、出力電圧および電流が高い、例えば、それらが最大レベルにあるモードに対応する。低いスイッチング周波数は、有利には、低いスイッチング損失をもたらし、次に、より高い伝導損失が許容され得、したがって、出力電流レベルが増加され得る。スイッチング損失を制限するために高い出力電圧を使用する場合、低いスイッチング周波数が有利である。
【0043】
高精度モードに対応する第2の動作モードは、様々な方法において取得され得る。あるいは、これらの方法の各々は、異なる動作モードであり得る。第1のオプションにおいて、出力電流は、制限され得、より低い伝導損失をもたらす。より低い伝導損失は、第1のモードに対してスイッチング周波数を上昇させることを可能にし得る。このオプションにおいて、スイッチング周波数および出力電圧は、高レベルに維持され得る。高いスイッチング周波数は、高い帯域幅と、したがってより高い精度とをもたらす。
【0044】
第2のモードに関する第2のオプションにおいて、出力電圧が制限される。第1のモードに対して出力電圧を低下させることは、スイッチング損失を低減し、それは、第1のモードに対してスイッチング周波数を上昇させることを可能にし得る。したがって、より高い精度が得られ得る。
【0045】
第2のモードに関する第3のオプションにおいて、出力電圧と出力電流の両方が、第1のモード(高電力モード)に対して制限される。これは、(より低い電流による)伝導損失と(より低い出力電圧による)スイッチング損失の両方を低減し、したがって、スイッチング周波数を最大レベルまで上昇させることを可能にする。このオプションは、最高精度の動作モードをもたらし得る。
【0046】
第3のオプションにおいて、出力電力は、最低であり得る。第1および/または第2のオプションにおいて、出力電力は、第1のモードにおいて得られる出力電力と第3のオプションにおいて得られる出力電力との間の中間であり得る。
【0047】
装置は、オペレータが異なる動作モード間で選択することを可能にするユーザインターフェースを備え得る。第1から第3のオプションのいずれかが、ABVGの明確な動作モードとして制御ユニット内に実装され得る。
【0048】
フィードバックが装置内に実装され得る。フィードバックは、電流および/または電圧フィードバックに基づき得る。有利には、フィードバック制御ループは、イオンエネルギー密度および/または基板を通るイオン電流などの測定されたプロセスパラメータに基づき得る。
【符号の説明】
【0049】
10 ABVG、電圧波形生成器
11 降圧セル
12 PWM生成器
13 フィルタ
14 変圧器
15 DC遮断キャパシタ
16 コントローラ、ABVGコントローラ
17 EMCフィルタ
18 線形増幅器、線形電力増幅器
19 出力端子
26 波形生成器
28 D/A変換器
36 フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)
100 誘導結合プラズマ(ICP)装置
101 基板
102 プラズマ反応器、プラズマチャンバ
103 プラズマ
104 プラズマ形成ガス
105 ステージまたはプラットフォーム
107 誘導コイル
108 誘導管
109 前駆体
111 半導体スイッチ
112 降圧セルインダクタ
120 RF電源
121 マッチングネットワーク
130 システムホストコントローラ
161 保護回路
162 保護回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12